土用の丑の日

土用の時期中の、十二支が丑の日

土用の丑の日(どようのうしのひ)は、土用の間のうち十二支である。「土用」とは五行思想に基づく季節の変わり目を意味する雑節(ざっせつ)で、四季の四立(立春、立夏、立秋、立冬)の直前の約18日間を指す。この期間中の丑の日は、年に平均6.09日あることになる。

一般には、夏の土用の丑の日のことを、単に土用丑の日と言うことが多い。夏の土用には丑の日が年に1日か2日(平均1.57日)あり、2日ある場合はそれぞれ一の丑二の丑という。以下、夏の土用の丑の日のことを単に土用の丑の日と呼ぶこととする。平気法では土用の定義が異なる(ただし丑の定義は同じ)ため土用の丑の日が異なる年もあるが、ここでは太陰暦以来普及している定気法での土用を用いる。

日付編集

一の丑 二の丑
2001年平成13年) 7月25日 8月6日
2002年(平成14年) 7月20日 8月1日
2003年(平成15年) 7月27日 なし
2004年(平成16年) 7月21日 8月2日
2005年(平成17年) 7月28日 なし
2006年(平成18年) 7月23日 8月4日
2007年(平成19年) 7月30日 なし
2008年(平成20年) 7月24日 8月5日
2009年(平成21年) 7月19日 7月31日
2010年(平成22年) 7月26日 なし
2011年(平成23年) 7月21日 8月2日
2012年(平成24年) 7月27日 なし
2013年(平成25年) 7月22日 8月3日
2014年(平成26年) 7月29日 なし
2015年(平成27年) 7月24日 8月5日
2016年(平成28年) 7月30日 なし
2017年(平成29年) 7月25日 8月6日
2018年(平成30年) 7月20日 8月1日
2019年令和元年[1] 7月27日 なし
2020年(令和02年) 7月21日 8月2日

土用の丑の日になることがある日は、夏の土用になることがある7月19日 - 8月7日である。毎年夏の土用となる7月19日 - 8月7日は、いずれも等しく12年に1回の割合(12年間隔という意味ではない)で土用の丑の日となる。

1900年(明治33年) - 2099年(令和81年)の間は土用の日付が少しずつ前倒しになるため、土用の丑の日になりうる日も変化する。1907年(明治40年)には、明治の改暦から現在までで唯一、8月8日が土用の丑の日(二の丑)となった。2096年(令和78年)には改暦以来初めて、7月18日が土用の丑の日(一の丑)となると予想される。

二の丑編集

前節のように、土用の丑の日が2回となる場合が多々ある。

夏の土用は太陽黄経が117度から135度(立秋)の前日までと定義され、平均18.82日間(18日:19日=18%:82%)ある。19日の年の場合、土用の入りから7日以内に丑の日があると(すなわち土用入りの日がから丑の間のだと)、土用のうちにもう一度丑の日が巡ってくる。これが二の丑であり、57%の年にある。

夏の土用の入りは7月19日 - 20日なので、最も早い二の丑は入りが7月19日で丑の日だった場合の7月31日となり、7月に2回土用の丑の日が来る。2009年(平成21年)、明治改暦以来初めて(改暦前も新暦で計算すれば213年ぶりに)7月の二の丑となった。ただし、7月の二の丑はこれ以降21世紀の間はそれほど珍しくなく、2025年(令和7年)・2041年(令和23年)・2057年(令和39年)・2073年(令和55年)・2089年(令和71年)と16年周期で7月31日が二の丑となり、2096年(令和78年)には7月30日が二の丑になると予想される。

土用の丑の日の鰻(うなぎ)編集

日本で「暑い時期を乗り切るために、栄養価の高いウナギを食べる」という習慣は万葉集にも詠まれているように古代に端を発するとされるが、土用の丑の日に食べる習慣となったのは、文政5年(1822年 - 1823年)当時の話題を集めた『明和誌』(青山白峰著)によれば、安永天明の頃(1772年 - 1788年)よりの風習であるという。

農林水産省の広報用Webマガジンでは、鰻には夏バテ予防に必要な栄養素が豊富に含まれていると紹介されている[2]

しかし、日本における疲労研究の第一人者である[3][4][5]大阪市立大学大学院特任教授の梶本修身によれば、「栄養価の高いものを食することが当たり前になった現代はエネルギーやビタミン等の栄養不足が原因で夏バテになることは考えにくく、現代において夏バテ防止のためにうなぎを食べるという行為は医学的根拠に乏しいとされ、効果があまりない」としている[3][6]

由来編集

 
鰻の蒲焼(うな重)

通説(平賀源内説)編集

鰻を食べる習慣についての由来には諸説あり、「讃岐国出身の平賀源内が発案した」という説が最もよく知られている[7]。しかし、平賀源内説の出典は不明で、前述の『明和誌』にあると説明するケースもあるが、『明和誌』には記されていない[8]。源内説は細かなバリエーション違いがあるが、要約すれば「商売がうまく行かない鰻屋(知り合いの鰻屋というパターンもある)が、夏に売れない鰻を何とか売るため源内の元に相談に赴いた。源内は、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、その鰻屋は大変繁盛した。その後、他の鰻屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着した」というもの。丑の日と書かれた貼り紙が効力を奏した理由は諸説あり定かではないが、一説によれば「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という風習があったとされ、鰻以外には梅干うどんうさぎ馬肉(うま)、牛肉(うし)などを食する習慣もあったようだが、今日においては殆ど見られない。

実際にも鰻にはビタミンAB群が豊富に含まれているため、夏バテ、食欲減退防止の効果が期待できるとされているが、前述の通り、栄養価の高い食品で溢れる現代においてはあまり効果は期待できないとされる[3][6]。そもそも、鰻の旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期であり、夏のものは味が落ちるとされる。

その他の説編集

  • 春木屋善兵衛説 - 同じ文政年間(1818年 - 1831年)の『江戸買物独案内』による。「土用に大量の蒲焼の注文を受けた鰻屋、春木屋善兵衛が、子の日、丑の日、寅の日の3日間で作って土甕に入れて保存しておいたところ、丑の日に作った物だけが悪くなっていなかったから」という説。但し、この説は前述の『江戸買物独案内』には記されていない。
  • 蜀山人説 - 鰻屋に相談をもちかけられた蜀山人こと大田南畝が、「『丑の日に鰻を食べると薬になる』という内容の狂歌をキャッチコピーとして考え出したという話が天保10年(1839年 - 1840年)の『天保佳話』(劉会山大辺甫篇の狂詩集)に載せられている」と説明するケースがあるが、同書にそのような記載は一切ない。また、天保8年に刊行された同名の随筆集『天保佳話』を出典にあげることもあるが、同書にも大田南畝と土用丑の日を結びつける記述は一切ない。ただし、大田南畝の作品を集めた『紅梅集』(全集第二巻所収)には、土用丑の日とは関連付けていないが、鰻屋の「高橋」を讃えた狂歌と狂詩が掲載されている[8]
  • 丑=鰻二匹説 - 「平仮名で墨汁を使って毛筆で書いた『うし』と言う文字が、まるで2匹の鰻のように見えたから」と言う説。

最近の動き編集

  • 鰻の養殖業者らが中心となって、「夏以外の土用の丑の日にも、鰻を食べる習慣を普及させよう」という動きがある。スーパーマーケットコンビニエンスストアでもこの動きが見られる。土用は季節の変わり目でもあるため、「栄養価の高いウナギを食べて、精を付けよう」という趣旨に一応の妥当性はある。
  • 鰻の産地である長野県岡谷市の岡谷商工会議所が、冬の土用の丑の日を「寒の土用の丑の日」として商標登録(出願番号:商願平11-39161号、登録番号:登録商標第4525842号)したほか、1998年(平成10年)には「うなぎのまち岡谷の会」が日本記念日協会に記念日として登録した。

その他の風習編集

脚注編集

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  1. ^ 同年5月1日から12月31日までの和暦(元号)。1月1日から4月30日までは「平成31年」。
  2. ^ 特集2 鰻”. 農林水産省Webマガジン aff(あふ). 農林水産省 (2016年7月). 2020年7月21日閲覧。 “Q.ウナギはどうして夏バテ予防に効くの? ウナギには、ビタミンA、B1、B2、E、Dのほか、カルシウム、鉄分、亜鉛、脂質(DHA、EPA)、コラーゲンなど、夏バテ予防に必要な栄養素が豊富に含まれています。特にビタミンAは、100グラム食べれば成人の一日に必要な摂取量に達します。”
  3. ^ a b c ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系列、2016年8月3日放送分)「間違えだらけの夏の習慣 / 夏バテは自律神経の乱れにより脳が疲れて起こる」
  4. ^ “日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く”. 日刊ゲンダイ. (2016年6月30日). http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/184711 2016年8月5日閲覧。 
  5. ^ “疲労と睡眠研究の第一人者・梶本修身医師による 健康情報記事一覧”. YUMBLE. http://www.yumble.com/kajimoto_lineup.html 2016年8月5日閲覧。 
  6. ^ a b 週プレNEWS (2016年6月8日). “日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く”. Livedoor News. http://news.livedoor.com/article/detail/11617468/ 2016年8月5日閲覧。 
  7. ^ 伊藤春夫「鰻の蒲焼考」『家事と衛生』第12巻第6号、大阪生活衛生協会、1936年、 82-85頁、 doi:10.11468/seikatsueisei1925.12.6_82
  8. ^ a b 石川博編「鰻」(皓星社、2017年)の解説268ページ以下を参照。同解説によれば源内説も南畝説も比較的新しくできた「伝説」と思われる。
  9. ^ 鈴木晋一 『たべもの噺』 平凡社、1986年、pp88-93
  10. ^ 角川学芸出版編『角川俳句大歳時記 夏』 角川書店、2006年、pp148

関連項目編集

外部リンク編集