安全地帯II』(あんぜんちたいツー)は、日本のロックバンド・安全地帯の2枚目のオリジナル・アルバムである。

安全地帯II
安全地帯スタジオ・アルバム
リリース
録音 1983年6月 - 1984年3月
KRSスタジオ
伊豆スタジオ
ジャンル ロック
ポップス
AOR
時間
レーベル Kitty Records
プロデュース 星勝
金子章平
チャート最高順位
  • 2位(オリコン
  • 1984年度年間19位(オリコン)
安全地帯 アルバム 年表
安全地帯I Remember to Remember
1983年
安全地帯II
(1984年)
安全地帯III〜抱きしめたい
1984年
EANコード
『安全地帯II』収録のシングル
  1. ワインレッドの心
    リリース: 1983年11月25日
  2. 真夜中すぎの恋
    リリース: 1984年4月16日
  3. マスカレード
    リリース: 1984年7月25日
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1984年5月1日Kitty Recordsよりリリースされた。前作『安全地帯I Remember to Remember』より1年4ヶ月振りにリリースされた作品。

作詞は井上陽水および松井五郎、作曲は全曲共に玉置浩二、プロデューサーは星勝および金子章平。本作以降、安全地帯の楽曲の大半の作詞は松井が主に担当していく事になる。

先行シングルでありオリコンチャート1位を獲得し大ヒットとなった「ワインレッドの心」、同じく先行シングル「真夜中すぎの恋」を収録。後に「マスカレード」がシングルバージョンとしてリカットされた。

レコーディングは1983年6月から1984年3月までKRSスタジオ、伊豆スタジオにて行われた。「ワインレッドの心」の大ヒットにより一躍脚光を浴び始めた時期にリリースされた作品で、玉置による歌謡曲を意識した曲と松井による都会の恋愛を想起させる歌詞とで構成された曲が多く収録されている。

オリコンでは最高位2位を記録、さらに1984年度年間で19位を獲得した。

背景編集

安全地帯は1982年2月25日にシングル「萠黄色のスナップ」でデビュー、以降2ndシングル「オン・マイ・ウェイ」(1982年)、3rdシングル「ラスベガス・タイフーン」(1983年)をリリースするも売り上げが伸びず、世間での認知度も低い状態となっていた[1]。ヒット曲が出ない事を問題視したプロデューサーの星勝より作曲を井上陽水に依頼する事を打診された玉置は、その提案に対し「曲は俺が自分で作る。それができないんならバンド辞めて北海道に帰ります」と自身での作曲に固執した[1]。本来はドゥービー・ブラザーズのようなロックバンドを目指して活動していた同バンドであったが、ヒットが確実視されるような「歌謡曲っぽくて売れそうな感じの曲」の製作のため玉置は1週間自宅に閉じこもる事となった[2]。その後玉置は「ワインレッドの心」を完成させ、同曲を聴いたギタリストの矢萩渉は「それまでの曲とは全然違っていた」と応えた[3]

自信作であった「ワインレッドの心」だが、1983年11月25日のリリース直後は売り上げが伸びず、B面曲であった「We're alive」が東北地方でブリヂストンのコマーシャルソングとして使用された事で売り上げが伸びはじめ、後に「ワインレッドの心」の方でも話題となり、オリコンチャートで20位圏内にランクインする事となった[4]。またランクインを切っ掛けにフジテレビ系音楽番組『夜のヒットスタジオ』(1968年 - 1985年)に出演した事でさらに売り上げが伸び、1984年3月にオリコンチャートで最高位1位を獲得、売り上げ枚数は71.4万枚と大ヒットを記録した[4]

録音、制作編集

レコーディングは1983年6月から1984年3月まで、9ヶ月間と長期に亘ってKRSスタジオおよび伊豆スタジオにて行われた。これに関しベースの六土開正は「2枚目は早く作ろうっていいながら、結局レコーディングに1年くらいかかっちゃった」と述べている[5]

本作ではシングルとしてリリースされた「ワインレッドの心」、「真夜中すぎの恋」以外の曲の作詞は全て松井五郎が手掛けている。松井と玉置の共作は1983年11月1日にリリースされた本田恭章のシングル「サヨナラのSEXY BELL」のB面曲であった「ONE NIGHT HEAVEN」が初であり、デモテープを聴いた松井は玉置に対して「ずいぶん良い曲を書くヤツだな」という印象を受けたという[6]。また松井は自身の信条として「松井五郎という名前を覚えられるよりも、歌そのものが残っていったり、歌が人に伝わっていくことのほうが重要」と語り、「その人に一番似合う、その人そのものになっていく言葉、それが僕にとっては一番の目標」であるとも語っている[7]。そのため後に週刊誌を賑わす事の多くなる玉置に対しては、アーティストとしての生活感を生々しく表現する事を目的に、難解な言葉は使用せずリアリティを重視して言葉を選定していたという[8]

さらに松井は「僕にとっては浩二のメロディと声は特別なんです」とも語り、「アーティストの生き様とか肉声というパーソナルな部分を大事にするやり方を、僕に一番植え付けてくれたのは浩二だった」と自身の方向性が玉置によって定められた事を述べている[9]。松井は玉置の声の響きやメロディに絶大な信頼を感じており、ありふれた言葉であっても玉置が歌う事で異なる意味合いを持たせる事ができると述べている[10]。松井は後にリリースされるシングル「恋の予感」の作詞も手掛けたが、30回ほど書き直した末に没となり、採用された井上陽水の歌詞を見て「書かないことの美学、美しさというのがあって。あ、これで良いんだって解答を見せられた感じがすごくあった」と述べている[10]

音楽性編集

玉置浩二の自伝本『玉置浩二 幸せになるために生まれてきたんだから』では、松井による歌詞に関して「それまでの歌謡曲で重視されていた具体的な状況設定や物語性を、きれいに省略し、代わりに、歌詞の中で描かれている人物の感情を象徴的な言葉で大胆にクローズアップするもの」、「細部の丁寧な描写よりも、印象に残りやすい鮮烈なキーワードを求めるロックのフィールドにおいても貴重な手法だった」、「都会的な恋愛を描くことによって、ロマンチックなメロディを巧みに印象づけていった」と表記されている[7]。また、本作収録曲「マスカレード」での「嘘つきな薔薇」という歌詞に関しては「恋心と裏腹な行動を取る不安定なキャラクターをシンボライズさせる手法」と表記している[8]

音楽情報サイト『OKMusic』にてライターの帆苅智之は、ファーストアルバムと比較して「このバンド独特のウェットさが増している」と指摘、さらにギターサウンドの多彩さを挙げた上でハードロックやアメリカンロック、ソウルミュージックファンクなどの要素が盛り込まれており、ニュー・ウェイヴからオールドスクールなロックに至るまで幅広いオマージュが感じられると指摘した[11]。またその多彩な要素が楽曲によってではなく1曲の中に集約して表現されている点を指摘し、「ワインレッドの心」のアウトロにはスパニッシュな音色が使用されている事、「真夜中すぎの恋」は後のヴィジュアル系の音楽性に通ずる「アップテンポで骨太なリズムに繊細なギター」という組み合わせになっており、Bメロにおいてはウルトラヴォックスのような「乾いたノイジーなカッティング」の後に間奏ではハードロックのようなアプローチになっている事を指摘した[11]。その他、本作から参加した作詞家の松井五郎による歌詞がその後の安全地帯のイメージを決定づけたと指摘し、松井が後にBOØWY氷室京介吉川晃司などの作品を手掛けた事を挙げ、それらのミュージシャンを彷彿させる歌詞が多いとした他、「真夏のマリア」のサウンドがニューウェイヴの要素を持ちギターが跳ねている事から「一時期のBOØWYのようである」と指摘した[11]

リリース編集

1984年5月1日LPCTCDの3形態でリリースされた。

その後1990年7月25日1992年11月21日2007年3月7日にはCDのみ再リリースされ、2010年3月3日には完全復活を記念してSHM-CDにて[12]2017年11月22日にはデビュー35周年を記念してLP盤を再現した紙ジャケット、SHM-CDにて再リリースされた[13][14][15]

それ以外にも1996年10月2日にはCD-BOX安全地帯 メモリアル・コレクション』に収録され、2010年6月23日にはCD-BOX『安全地帯BOX 1982-1993』に収録されて再リリースされた[16]

アートワーク編集

前作で使用されている写真ではメンバーそれぞれが自前の衣装であったが、「ワインレッドの心」の大ヒットによりビジュアル面のプロデュースも行われるようになり、メンバー全員が髪型を変更してブランドもののスーツを着用し、都会的な洗練されたイメージの下ファッショナブルな路線で売り出される事となった[17]。これは、ロックバンドが商業音楽としてまだ普及しきれていない当時の状況下で、安全地帯をメジャーで流通させるためにスタッフが選択した戦略であった[17]。しかしこの路線に関して玉置は「このまま行って大丈夫か?」と懸念していたという[18]

批評編集

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
CDジャーナル肯定的[19]
TOWER RECORDS ONLINE肯定的[20][21]
OKMusic肯定的[11]
  • 音楽情報サイト『CDジャーナル』では、玉置のメロディメイカーとしての才能を肯定的に評価した他、「歌手としてもこの時点ですでに完成していることにあらためて感服した」と歌唱力を絶賛した[19]
  • 音楽情報サイト『TOWER RECORDS ONLINE』では、同バンドの当時の状況に関して「玉置浩二の大人の色気と歌唱力で一気にスターダムにのし上がった[20]」と表現し、「3曲のシングルが並ぶLPA面は圧巻[21]」と収録曲に関して絶賛した。
  • 音楽情報サイト『OKMusic』にてライターの帆苅智之は、玉置浩二のボーカルに関して「圧倒的な存在感」と指摘しメロディーラインが「歌声の艶っぽさを最大限に引き出している」と称賛した他、様々なジャンルの要素が1曲の中に注入されている事に関して「バンドのポテンシャルが高く、プロデュース能力が確かな証拠」と指摘、ファーストアルバムではハードロックの要素が強かった安全地帯が80年代に製作した音である事を加味して「さらに味わい深く感じられるのではないか」と評価した[11]。その他、松井による歌詞に関しては、後の安全地帯のイメージを決定づけた事を指摘した上で、井上陽水による作詞にあった妖艶さは残しながらも職業作家としての巧みさやプロフェッショナルな仕事ぶりを発揮したとした上で「安全地帯楽曲の奥行きを広げていったと言える」と肯定的に評価した[11]

チャート成績編集

オリコンチャートではLP盤が最高位2位、登場回数52回、売り上げ枚数28.7万枚、CT版は最高位2位、登場回数75回、売り上げ枚数は25.8万枚、売り上げ枚数の累計では54.5万枚となった。

収録曲編集

全作詞:松井五郎(注記を除く)、全作曲:玉置浩二、全編曲:星勝安全地帯

SIDE 1
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.ワインレッドの心(作詞: 井上陽水)  
2.真夜中すぎの恋(作詞: 井上陽水)  
3.眠れない隣人  
4.マスカレード  
5.あなたに  
合計時間:
SIDE 2
#タイトル作詞作曲・編曲時間
6.…ふたり…  
7.真夏のマリア  
8.つり下がったハート  
9.ダンサー  
10.La-La-La  
合計時間:

スタッフ・クレジット編集

安全地帯編集

スタッフ編集

  • 星勝 - プロデューサー
  • 金子章平 - プロデューサー
  • 近藤由紀夫 - ディレクター
  • 酒井祐司 - アーティスト・マネージメント
  • 諸鍜治辰也(KRSスタジオ) - レコーディング・エンジニア、リミックス・エンジニア
  • 丸山光晴(KRSスタジオ) - アシスタント・エンジニア
  • 福田雅一(KRSスタジオ) - アシスタント・エンジニア
  • 田中裕 - A&Rマネージメント
  • 斎藤テツ - パブリック・リレーションズ
  • 井上陽水 - スペシャル・サンクス
  • 大森昭男 - スペシャル・サンクス
  • 高橋健樹 - スペシャル・サンクス
  • 八木浩 - スペシャル・サンクス
  • ローランド・ギターシンセサイザー - スペシャル・サンクス
  • 流行通信 - スペシャル・サンクス

リリース履歴編集

No. 日付 レーベル 規格 規格品番 最高順位 備考
1 1984年5月1日 Kitty Records LP
CT
CD
28MS 0055
28CS 0035
3133-12
2位
2 1990年7月25日 Kitty Records CD KTCR-1031 -
3 1992年11月21日 Kitty Records CD KTCR-1202 -
4 1996年10月2日 Kitty Records CD KTCR-1602 - CD-BOX『安全地帯 メモリアル・コレクション』に収録
5 2007年3月7日 ユニバーサル CD UPCY-6329 -
6 2010年3月3日 ユニバーサル SHM-CD UPCY-6571 -
7 2010年6月23日 ユニバーサル SHM-CD UPCY-9197 - CD-BOX『安全地帯BOX 1982-1993』に収録
8 2017年11月22日 ユニバーサル SHM-CD UPCY-9707 - 紙ジャケット仕様

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 志田歩 2006, p. 53- 「第3章 ワインレッドの心」より
  2. ^ 志田歩 2006, pp. 53–54- 「第3章 ワインレッドの心」より
  3. ^ 志田歩 2006, p. 54- 「第3章 ワインレッドの心」より
  4. ^ a b 志田歩 2006, p. 57- 「第3章 ワインレッドの心」より
  5. ^ 志田歩 2006, p. 74- 「第4章 スターダム」より
  6. ^ 志田歩 2006, pp. 69–70- 「第4章 スターダム」より
  7. ^ a b 志田歩 2006, p. 70- 「第4章 スターダム」より
  8. ^ a b 志田歩 2006, p. 71- 「第4章 スターダム」より
  9. ^ 志田歩 2006, p. 72- 「第4章 スターダム」より
  10. ^ a b 志田歩 2006, p. 73- 「第4章 スターダム」より
  11. ^ a b c d e f 帆苅智之 (2017年12月20日). “安全地帯の出世作『安全地帯II』にバンドの矜持と時代の変遷を見る”. OKMusic. ジャパンミュージックネットワーク. 2019年4月29日閲覧。
  12. ^ 安全地帯 / 安全地帯2 [SHM-CD]”. CDジャーナル. 音楽出版. 2019年8月10日閲覧。
  13. ^ 安全地帯、これまでの全オリジナルアルバムを紙ジャケット仕様にして再販決定!”. OKMusic. ジャパンミュージックネットワーク (2017年9月15日). 2019年3月30日閲覧。
  14. ^ 安全地帯デビュー35周年、オリジナルアルバム14タイトルを紙ジャケで一挙再発”. Musicman-net. エフ・ビー・コミュニケーションズ (2017年9月15日). 2019年8月12日閲覧。
  15. ^ 安全地帯、1983~2013年発表の14タイトルが紙ジャケで一挙再発”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2017年9月19日). 2019年3月30日閲覧。
  16. ^ 安全地帯 / 安全地帯BOX 1982-1993 [12CD+DVD] [SHM-CD]”. CDジャーナル. 音楽出版. 2019年3月30日閲覧。
  17. ^ a b 志田歩 2006, p. 67- 「第4章 スターダム」より
  18. ^ 志田歩 2006, pp. 67–68- 「第4章 スターダム」より
  19. ^ a b 安全地帯 / 安全地帯2 [紙ジャケット仕様] [SHM-CD] [限定]”. CDジャーナル. 音楽出版. 2019年8月10日閲覧。
  20. ^ a b JMD (2010年6月14日). “安全地帯/安全地帯II” (日本語). TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード. 2019年8月10日閲覧。
  21. ^ a b JMD (2017年9月16日). “安全地帯/安全地帯II<生産限定盤>” (日本語). TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード. 2019年8月10日閲覧。

参考文献編集

  • 志田歩『玉置浩二 幸せになるために生まれてきたんだから』雲母書房、2006年4月30日、53 - 73頁。ISBN 9784876722006

外部リンク編集