赤い星

国旗、旗、勲章、モニュメント、ロゴなどに使用されている図形

赤い星ロシア語: Красная звезда クラスナヤ・ズヴェズダ英語: Red star)は、一般的な赤色の五点星(五光星)の図案である。色々な政治的または宗教的な意味を込めて、国旗勲章モニュメントロゴなどに使用されている。

赤い星
ソビエト連邦の国旗に存在した「赤い星」

20世紀以降、「赤い星」は特にレーニン主義に基づく共産主義シンボルとして広く使われており、「黄金の星」(ゴールドスター)とも呼ばれる黄色の星(中華人民共和国の国旗などで使用)も共産主義のシンボルとして使用される場合は「赤い星」と呼ばれる。

なお、「赤い星」は他の意味でも使われている場合があり、類似の図案としてアメリカ合衆国の国旗などの「銀の星」(シルバースター)とも呼ばれる白い星などがある。

共産主義のシンボル 編集

「赤い星」は共産主義社会主義などのシンボルとしても用いられている。

意味 編集

共産主義のシンボルとして使われる場合、以下の意味を表しているとされる。五つの頂点は、ヒトを、花冠の五つ弁を、 労働者の手の五本のを、また世界の五大陸を表す。その他の解釈としては、五つの頂点がそれぞれ共産主義を指導する五つの社会集団青年兵士産業労働者、農業労働者、インテリゲンチャ)を表す。一般的に、赤い星は、共産党の支配と指導の下での社会の新秩序の正しさを表す象徴とされていた。

起源 編集

現在へつながる赤い星の始まりは、帝政ロシア時代にまでさかのぼる。1827年将官クラスの階級章に赤い五芒星が使われるようになった。ローマ神話の戦神マールスにちなんで「マルスの星」と呼ばれ、以来ロシアの軍事的象徴として使われた。後に帝政の象徴である双頭の鷲が赤い星の中へ入れられている。なおマールスは古代ローマにおいて、農民(とくに農業労働者)の守護神でもあった[1]

第一次世界大戦の終わり頃からロシア内戦(1918年 - 1922年)の時期、これがボリシェヴィキでも大々的に導入された。1917年ドイツ帝国およびオーストリア・ハンガリー二重帝国との戦闘で撤退を迫られたロシア軍はモスクワまで退却し、モスクワ守備隊と混ざり合う状態になった。モスクワに殺到するロシア軍部隊と地元の守備隊とを区別するため、守備隊の将校たちは兵士達にブリキの星を与えて帽子に付けさせた。このモスクワ守備隊が後に赤軍ボリシェヴィキ政府に合流した際、兵士達はブリキの星を共産主義を象徴する赤色で塗り、これが赤い星の起源とされる。

その他の説として、赤い星は赤軍にいたユダヤ人兵士が取り入れたというものもある。この説ではユダヤ人兵士らは、ロシア革命がロシアに「約束の地」を作るものだと信じて彼らのシンボルである星を赤く塗ったとされるが、この説の真偽は疑わしい。この推測の元には、反ユダヤ主義反共主義との両方によくある、ユダヤ人のダビデの星六芒星)と共産主義者の赤い星(五芒星)は同じものなのではないかという誤解と混同がある。

また別の説には、レオン・トロツキーニコライ・クリレンコ(Nikolai Krylenko)との出会いが赤い星の誕生のきっかけだと主張するものもある。ボリシェヴィキのメンバーで1917年に赤軍総司令官となったクリレンコはエスペランティストでもあったが、彼はエスペラントの象徴である緑の星緑星旗参照)のバッジを身に着けていた。トロツキーはその星の意味を尋ね、クリレンコから星のそれぞれの頂点が五大陸のそれぞれを指すという説明を受けた。これを聞き、トロツキーは赤軍兵士には赤い星を付けさせようと考えたという説である。この説も、彼らの間にこのような出会いがあったかどうか定かではないため真偽は不明である。

使用例 編集

赤い星は、共産主義国家の国旗国章に使われていた。例えば、ソビエト連邦の国章ユーゴスラビアの国旗には、赤い星があしらわれていた。またスペインカタルーニャ語圏エステラーダ旗など、分離主義社会主義のシンボルにも使われている。

「赤地に黄色い星」も、中華人民共和国の国旗ベトナム社会主義共和国などで同様の意味合いで用いられている。なお、中華人民共和国の国旗は「五星紅旗」、ベトナム社会主義共和国の国旗は「金星紅旗」という。極東共和国では人民革命軍の軍服に赤い星と同じ意味を込めて黄色い星を使っていた。また、鎌と槌のマークが、赤い星の中や下に表されることもある。なおキューバの国旗では赤地に白い星だが、これはキューバ革命以前から使用されている。

1989年東欧民主化革命によって共産党国家が崩壊すると、新く成立した国家では「赤い星」が国旗や国章から消去された。又、「赤い星」を使用していたソビエト連邦1991年末日解体)やユーゴスラビア社会主義連邦共和国1992年4月27日解体)は解体され、分離独立したマケドニア共和国の国旗国章では赤い星を使用し続けていたが、1991年から2009年にかけて消去された。

更に、いくつかの国では「赤い星」の使用が禁止されるようになった。ハンガリーでは、1993年の改正刑法により、赤い星を公的に使用したり見せたりすることは違法行為となる。しかし、ソビエト連邦軍の継承軍であるロシア連邦軍は、「脱共産化」とは裏腹に、今でも赤い星をシンボルとして使用している。又、ソビエト連邦構成国家だった現国家には、国籍識別標、軍の装備等に赤い星が残っている。ロシア連邦軍の新聞は、『クラスナヤ・ズヴェズダ』という名前のままである。

東ヨーロッパには、共産党時代(1945年 - 1989年)に創立されたプロスポーツクラブに、「赤い星」を称するチームもある。ベオグラードの『FKツルヴェナ・ズヴェズダ』、『KKツルヴェナ・ズヴェズダ』、『OKツルヴェナ・ズヴェズダ』などはその例である。

赤い星は、アメリカ合衆国など、冷戦の西側諸国社会主義者の間でも使われていた。また1990年代に活躍したミクスチャーロックバンドレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンも彼らの急進的思想を表現するために赤い星を使用した。

マケドニア国章の変遷 編集

旧ソビエト連邦構成国の国籍識別標 編集

共産主義や社会主義のシンボル 編集

ソビエト連邦 編集

ユーゴスラビア社会主義連邦共和国 編集

ソビエト連邦やユーゴスラビア以外の社会主義国 編集

赤以外の「赤い星」 編集

実際には赤色以外だが、共産主義のシンボルとして使用され「赤い星」とも呼ばれるものには以下がある。

派生 編集

その他に、社会主義や共産主義を意味するものには以下がある。

その他の使用例 編集

共産主義の意味以外での赤い星は、以下画像の他、北海道開拓使の徽章、サッポロラガービール、ビールのハイネケン、百貨店のメイシーズ、WebブラウザのMozillaなどのシンボルに使われている。

脚注 編集

  1. ^ The Soviet flag EXPLAINED.” (英語) (2021年6月21日). 2021年6月25日閲覧。

関連項目 編集