トヨタ・AE86
AE86(エーイーハチロク)とは、1983年(昭和58年)にトヨタ自動車が発売したカローラとスプリンターのスポーツモデル(スポーツクーペ)である4代目[注釈 2]カローラレビン/スプリンタートレノの共通車両型式番号。
トヨタ・カローラレビン(4代目) トヨタ・スプリンタートレノ(4代目) AE85 / AE86型 | |
---|---|
AE86型カローラレビン2ドア (1983年5月登場型) AE86型スプリンタートレノ3ドア (1983年5月登場型)「頭文字D」仕様車 | |
販売期間 |
1983年5月-1987年5月 ※北米市場は1988年1月まで販売 |
設計統括 | 揚妻文夫 |
乗車定員 | 5人 |
ボディタイプ |
2ドアノッチバッククーペ 2ドアコンバーチブル 3ドアハッチバッククーペ |
エンジン |
4A-GEU型:1.587 L 直4 4A-GEC型:1.587 L 直4※北米仕様 4A-C型:1.587 L 直4 ※北米仕様 3A-U型:1.452 L 直4 ※北米市場除く |
駆動方式 | FR |
最高出力 |
4A-GEU: 130 PS(グロス)/6,600 rpm 4A-C: 90 PS(グロス)/4,800 rpm 3A-U: 83 PS(グロス)/5,600 rpm(前期型) 85 PS(グロス)/5,600 rpm(後期型) |
変速機 |
5速MT 4速AT (AE86は後期型のみ) |
サスペンション |
前:ストラット 後:5リンクリジット |
全長 | 4,180 mm (トレノ4,215 mm) |
全幅 | 1,625 mm |
全高 | 1,335 mm |
ホイールベース | 2,400 mm |
車両重量 |
900 - 925 kg(2ドア) 935 - 940 kg(3ドア) |
総生産台数 |
トレノ 3万5949台[1] レビン 約6万6000台 |
別名 |
北米:カローラスポーツ[注釈 1] 欧州:カローラクーペGT |
先代 | カローラレビン/スプリンタートレノ(TE71型) |
後継 | カローラレビン/スプリンタートレノ(前期AE91型、後期AE92型) |
-自動車のスペック表- |
この型式番号のカローラレビンとスプリンタートレノに対し、俗に“ハチロク”という呼称が付けられている。
なお、当項目では同系列の1.5 LのSOHC・シングルキャブレター仕様のエンジン(3A-U型エンジン)を搭載した車種(型式名AE85:通称“ハチゴー”)についても便宜上記述する。
当時トヨタと提携関係のあった英国ロータス社の「エスプリ」に、AE86前期型レビンのリアコンビネーションランプが使用されていた。
2009年(平成21年)の第41回東京モーターショーに先立って、AE86を最後にトヨタのラインナップから途絶えていたライトウェイトFRスポーツクーペとして、トヨタ・FT-86というコンセプトカーが発表され、2012年(平成24年)2月にトヨタ・86の名前で市販化された。

評価編集
発売当時は、ターボ(過給)等による高出力化[注釈 3]、あるいは軽自動車〜リッターカー程度の小型車では一般的だった前輪駆動(FF)の普通乗用車への適用[注釈 4]による居住性等の向上といった指向が日本車のトレンドであり、基幹車種のカローラ/スプリンターのセダン・リフトバックは前輪駆動でデビュー[注釈 5]した一方、レビン/トレノは従来と同じ自然吸気(NA)の1.6 Lエンジンと後輪駆動(FR)の組み合わせ、そして先代の「TE71型」から流用した旧態的なフロントストラット、リヤラテラルロッド付きの5リンクリジッドアクスルサスペンションを採用しており、当時のレベルからしても単純な構造であり、同時期に発売されていた国産スポーツカーと比較して見劣りした。
しかし、基本的なサスペンション仕様が先述した先代「TE71型」と同様だった為、サスペンションの改造が容易であったこと、そして新規開発の4A-GEUエンジンはチューニング志向の強い層の支持を受け、その後の人気が続く理由になっていった(発売から1週間後にはジムカーナ仕様車やラリー仕様車が完成したと言われている)。
1987年(昭和62年)5月、レビン/トレノが次代の「AE92型」へとモデルチェンジを果たして駆動方式が前輪駆動に変更されたことで、日本車として希少となった軽量後輪駆動車として存在が再認識され、新車による販売当時以上にモータースポーツ関係者やドリフト走行愛好者の間で注目されるようになった。
またプロレーサーの土屋圭市が、当時から現在に至るまで所有し取り上げ続けたことで注目を集めるようになる。土屋はドリフトを極められたのはAE86のおかげと語っており、その理由にボディ剛性の高さと応答性の良さを挙げている。『ドリフトキング』の異名は、雨の富士フレッシュマンレースで、100RをAE86でドリフトしながら走行していた様子からつけられたという[2]。
1990年代後半からはしげの秀一の漫画『頭文字D』の主人公藤原拓海(正確には父 藤原文太の愛車で、後に譲り受ける)の搭乗車種であるという理由で、漫画に影響された若者の間でAE86トレノの白黒、3ドアが人気となった。それまで、新車/中古車問わず人気の中心はレビンであり、AE86といえばレビンのことを指すのが一般的であった。一方のトレノは新車時の販売台数も少なく、中古車としての流通も少なかった為、漫画での紹介以降、旧式のメカニズムを持つ中古車としては異常なほどのプレミアム価格で取引され、カルト的な人気を博すことになった。FR車であるが、現在の安価な軽自動車やコンパクトカーの4WD車と同様のリジッドアクスル式リアサスペンションのため、重量配分がリア寄りであることから他のFR車と比較して雪道に強く、長きに渡り人気のため多くの中古車販売店や整備工場でレストア技術が確立されており、その様子がインターネット上に動画で公開されるといったことも人気が続く理由のひとつと考えられている。
生産終了から30年以上経過した現在も、他の国産スポーツカーと同様に日本国内のみならず海外でも需要があるため中古車価格は高騰し続けている。車齢が高いこと、スポーツ走行で使われることが多いため疲弊や事故などによる損傷した個体が非常に多いこと、上記の人気ゆえに絶版後も需要が相当数あったことにより状態の良い個体は軒並み数を減らしたこと、車両の性格やその人気と年式ゆえにワンオーナーの個体が少ないことなどが重なり、極めて状態の良い個体には新車並み、場合(フルレストア車等)によっては500万円といった超プレミア厶価格がつけられることもある。また、この車の性格上、他社の類似車種同様にメーカー側の想定外の事態として若者の無謀運転による死亡事故が全国各地で相次いだ。そのため、2020年現在でも国産車としては極めて任意保険料率の高い車種でもある。
この中古車人気を受け、北アメリカ等から北米仕様 Corolla Sport (カローラスポーツ、AE86L)を逆輸入して販売する業者も現れた。北米仕様は当時の北米の法規で、規格型シールドビームヘッドランプを使用することが義務付けられていた為、リトラクタブルヘッドライトを採用したトレノに似たマスク[注釈 6]のみであった。北米仕様左ハンドル車の注意点は、カローラ/スプリンターが実用車であるという性格上、足車として使われていた為走行距離が多い個体が多いこと、エアフロ方式[注釈 7]を採用しているので、インテークパイプに加工が必要であること、排気側もEGR(排ガス還流装置)があり、日本仕様や欧州仕様の物を無加工流用できないこと、等である。
それでも長年培った様々なノウハウや社外パーツでのチューニングに加え、後に登場したレビン/トレノに採用されたスーパーチャージャー、4連スロットルボディー、20バルブ4A-GEエンジン等を流用する純正品でのチューニングメニューも多い。さらには、他メーカーのエンジン(SR20DETやRB26DETT、F20C)、ロータリーエンジン等を搭載した例もある。
AE85(1.5L車)編集
同年式(E80型系)のレビン・トレノの3A-U型1.5L SOHCエンジン搭載車はその型式名(AE85)から「ハチゴー」と呼ばれる。
1,500ccで83PS(グロス値。後期モデルは85PS)のエンジンであるため非力でスポーツ走行には向かないとされ、AE86ほどの人気はないが、3ドアSRだけは、車両価格が安価であること、AE86より軽量であること、AE86と共通のスタビライザー付リアサスペンションを持つ(SRグレード以外にはAE85にリアスタビライザー装着設定が無い)こと等から、改造(あるいは「ハコ替え」[注釈 8])用のボディとして重宝される。特にエンジンスワップ車に使われ、ボルトオンターボやボルトオンスーパーチャージャーによって3A-Uの軽さを維持したまま強化するものや、4A-Gを搭載し「85改86」を制作するという改造が主流である。前述の『頭文字D』では、主人公の友人がAE86を購入しようとして誤ってAE85を購入してしまうエピソードが描かれた[注釈 9]。
なおAE85にもリセ・ライム(それぞれトレノ・レビン)といった当時流行した「女性仕様」なるものも存在し、タコメーター非装着・ピンク等明るい色のシート・AT仕様を選びやすくしたグレードもあった。これらのグレードは当時発売されていたトヨタの小型乗用車(カローラセダンやスターレット等)にも設定されており、仕様もほぼ共通していた。
AE85とAE86の違い編集
同じ車種のグレード違いである為、外観上ほとんど変わらず、下記のようにグレードのステッカーぐらいでしか見分けられない。補修・リペイント等で失われていたり色が変わったりしている場合、外観のみで見分けるのはきわめて困難となる。さらに市場に流通するAE86は改造車がきわめて多く、著しい外装変更[注釈 10]も間々あり「外観は当てにならない」傾向に拍車がかかり得る。
もっとも、形式名に関しては車検証、ボンネットを開ければモノコックに打刻された車体番号やコーションプレートといったものに書かれているので簡単に区別がつく。AE85とAE86では排気音にもかなり違いがあるので、これも区別するポイントになりうる。
- 外装
- リアトランクのステッカー(AE86の場合APEX、GT-V、GTと貼られており、AE85にはSR、SE、XL、GLと貼られている)
- 後期トレノに関しては、AE86にはコーナリングランプが標準装備だが、AE85には装備されていない
- シートの違い。AE85はAE86とは異なり、一般的な灰色のモケット地である(AE86はサイドサポート部分が茶色の革製)
一方で、内部は一般に知られるエンジンの違い以外にもかなり異なっている。実際にAE85改AE86を製作する場合は、前述の理由からエンジン、駆動系、足回りの総移植をし、改造車としての公認を取得しなければならない。
- 足回り
- 北米仕様のAE86LのSOHCエンジン(4A-C)搭載車を含むAE86のリアサスペンションにはスタビライザーが付くが、3ドアSR以外のAE85には付いていない
- フロントブレーキがAE86はベンチレーテッドなのに対し、AE85および北米仕様のAE86LのSOHCエンジン搭載車は共にソリッドディスク
- リアブレーキがAE86はディスクブレーキなのに対し、AE85および北米仕様のAE86LのSOHCエンジン搭載車はリーディング・トレーリング式のドラムブレーキ(ただしAE86の2ドア競技ベースモデル「1600GT」は例外的にリーディング・トレーリング式のドラムブレーキが装備される)
- 駆動系
- AE86のプロペラシャフトは2分割式だが、AE85および北米仕様のAE86LのSOHCエンジン搭載車は1本もの
- デフの大きさが異なる
- AE86のミッションはT50型であるが、AE85および北米仕様のAE86LのSOHCエンジン搭載車はKP61型スターレット等と同一のK50型
- AE86のクラッチは油圧式だが、AE85および北米仕様のAE86LのSOHCエンジン搭載車はワイヤー式
- 内装
- タコメーターのレッドゾーンがAE86は7,600rpmからだが、AE85および北米仕様のAE86LのSOHCエンジン仕様車は共に6,000rpmとなる
- AE86のアナログメーターにはタコメーター下に油圧計があるがAE85には無い
- AE86は3本スポークのスポーツステアリングにスポーツシートが装着されるが、AE85および北米仕様のAE86LのSOHCエンジン仕様車は共に2本スポークのベースのカローラ・スプリンターと同じステアリングとベースのカローラ・スプリンターと似たシートが装着される(ただしAE86の2ドア競技ベースであるGTのステアリングはカローラ・スプリンターと同じ物が装着される)
- エンジン・補機類
- エキゾースト系が逆になる(出口位置は同じ)
- エンジンがAE86は1.6ℓDOHCの4A-GEUおよび1.6ℓSOHCの4A-C(ただし北米仕様のAE86Lの廉価グレードのみ)が積まれているが、AE85は1.5ℓSOHCの3A-Uが積まれる
- 4A-GEUはインジェクションだが、3A-Uおよび北米仕様のAE86Lの4A-C搭載車は共にキャブレターである
- トレノ・2ドアSE
モータースポーツ編集
1985年から始まった、グループA規定の全日本ツーリングカー選手権(JTC)に参戦。2L以上の排気量を持つライバルの三菱・スタリオンや日産・スカイラインらを相手に善戦し、1985年と1986年にスポーツランドSUGOで総合優勝を飾っている。
1986年と1987年のBTCC(イギリスツーリングカー選手権)では、フォード・シエラやBMW・635CSiらを破り、クリス・ホジェッツがドライバーズチャンピオンを獲得している。またETC(ヨーロッパツーリングカー選手権)でもほぼ唯一の日本車勢として複数のエントラントの人気を集め、1983年スパ・フランコルシャン24時間レースのグループA・Div.1でクラス優勝を果たすなど、海外では特に大きな戦果を挙げた。
サーキットばかりではなくラリーやジムカーナでも人気を集め、現在でもさまざまな競技で活躍が見られる。国内ラリーについては、扱いやすく丈夫で安価な車体やバリエーションに富んだ安価なパーツが大量に供給されていた等の理由から、全日本選手権からローカルイベントまでプライベーターを中心に大量のAE86がエントリーしていた。そのためシェアは圧倒的であったが、トップカテゴリーである全日本ラリー選手権においては、一部の有力チームが使用していた1.8Lターボ車のランサーターボ(タスカ・エンジニアリング=ADVANラリーチーム)や3.0LターボのフェアレディZ(NISMO)の後塵を拝すことも多く、また圧倒的なシェアに起因するウイナーの分散もあり、タイトル獲得はならなかった。
また1984年と1985年に、市販車無改造の2輪駆動車でパリ・ダカール・ラリーへの挑戦を続けていた横田紀一郎が3代目カリーナの後継車としてレビン(2ドア)を選択。しかし結果はリタイアに終わっている。
全日本GT選手権(JGTC)のGT300クラスにもKRAFTが改造したAE86が参戦。エンジンは3S-GTEで、GT500クラス用をディチューンしたものである。足回りは規定上ノーマルのサスペンションを型式名の上では踏襲していたが、原形を留めないほどの改造が施されていた。最高5位で表彰台には手が届かなかったが、折からの頭文字D人気もあって大きな注目を集めた。2001年にスポーツランドSUGOで行われた引退レースは炎上、リタイアという形で終わった。
ホモロゲーションが切れた現在においてもJAF公式戦として岡山国際サーキットで行われているチャレンジカップレース等、AE86を使用したレースが行われている。生産終了から25年以上経過した車両が公式レースでのベース車として使用されることは稀なケースである。
D1グランプリでは車両重量の軽さを活かした走りを見せている。多くのD1選手が使用するシルビア、180SXとの大きな馬力差を埋める為にエンジンのターボ化やNOS搭載、AE101型やAE111型のエンジン換装、SRエンジンに換装等さまざまなAE86が参戦している。2002年には植尾勝浩のAE86がシリーズチャンピオンを獲得。2004年には日比野哲也が2位入賞を果たし、2005年には吉岡稔記が優勝を果たす。D1グランプリ2009シリーズでは日比野哲也が、5バルブエンジンには珍しい排気量アップ版5A-GにNOSを搭載したMAX370馬力のスプリンタートレノ2ドアクーペを駆り参戦。軽量で機敏な動き、ウェットコンディションでもアグレッシブな攻めの走りで、ライバルとの圧倒的なパワー差を翻し、シリーズ5位に入賞した。だが最近では馬力差が大きくなってきている為、AE86で参戦する選手は少なくなっている。
しかしAE86の功績はレースの結果以上に、土屋圭市、谷口信輝、織戸学、勝田範彦、飯田章、ヤリ=マティ・ラトバラ、ケン・グシ(具志健士郎、en:Ken Gushi)といった名ドライバーのモータースポーツキャリア初期を支えたり、四輪レースを始めるきっかけを作ったところが大きい。特に1984年の富士フレッシュマンレースで土屋はトレノに乗って6連勝(全勝)を果たしてシリーズチャンピオンを獲得し、翌年のグループAへのステップアップに繋がっている。またこの時、AE86でスカイラインを追い回すドリフト走法を見せたことで、土屋は「ドリフトキング」の称号を得た[3]。
アメリカでの人気編集
アメリカでは、前述したようにトレノに似たフロントマスクを持ったハチロクしか正規輸入されなかったが、頭文字Dの影響でハチロクの人気が再燃した。現地名はCOROLLA SPORT(カローラスポーツ)、グレードはSR5とGT-Sの2種類であった。またアメリカにおけるパワーアップの常套手段ともいえるV8エンジンの換装が行われている車両もある。シボレー・コルベットに搭載されるLS1型エンジンや、セルシオ(レクサス・LS)に搭載される4.0L V8エンジンが主に用いられる。
関連イベント編集
東京都江東区の臨海副都心にあるトヨタ自動車のショールームスペースMEGAWEBでは2005年10月18日から2006年2月19日まで、ヒストリーガレージにて「レビン&トレノ展」を開催し、頭文字D仕様のレプリカ等が展示していた。
また、2007年11月14日から2008年2月17日まで、同じくMEGAWEBのヒストリーガレージで「劇中車展」が開催されており、カーランドの頭文字D仕様のスプリンタートレノが展示されていた。
グレード編集
本稿では日本仕様車を基準に記述する。
AE86編集
- GT-APEX
- 1.6リッターモデルの最上級グレードで、リアワイパーやパワーステアリング(前期型3ドアのみパワーステアリング無しが選択できた)、デジタルメーターが標準装備(2ドア、後期型はオプション)され、2ドア3ドアのレビン・トレノに存在する。また前期型では2トーンカラーはこのモデルのみとなる。トランスミッションは前期型は5速MTのみだったが、後期型では5速MTのほか、電子制御(ECT-S)4速ATが設定されるようになった。
- GTV
- 1.6リッターモデルの競技ベース車両で、パワーステアリングとリアワイパーは非装備、メーターもアナログのみとなる。ステアリングギアのロックトゥロックが3.0回転となっており、ノンアシストであることも含め、他のグレードに比してダイレクトでクイックな操舵が可能。3ドアのレビン・トレノに存在する。トランスミッションは5速MTのみ。
- GT
- 1.6リッターの競技ベースモデルでGT-Vよりさらに装備が簡略化され、リアブレーキが自己サーボ機能で拘束力に優れるリーディング・トレーリング式ドラムとなり、ステアリングホイール、およびシート表皮などが後述するAE85の2ドアレビン・トレノの各SE系グレードにほぼ準拠したものとなる。2ドアレビン・トレノに存在する。トランスミッションは先述のGT-APEX同様、前期型は5速MTのみだったが、こちらも後期型では5速MTのほか、電子制御4速ATが設定されるようになった。
AE85編集
- SR[注釈 11]
- 1.5リッターモデルに存在したスポーツバージョンで、ストラットの構造やボディが1.6リッターモデルと共通である。3ドアレビン・トレノに存在する。トランスミッションは5速MTのみ。
- SE
- 1.5リッターモデルに存在したグレードで、カローラ / スプリンターのラグジュアリー系グレード用ステアリングホイールと、スポーツシート、そしてタコメーターなどが装着される。2ドアレビン・トレノに存在する。トランスミッションは5速MTのほか、油圧式4速ATが設定される(後述する下位グレードも同様)。
- XL-LIsse
- XLをベースに装備を豪華にし、パワーステアリングを標準装備した女性バージョンで、1.5リッターの2ドアトレノに存在する。またこのグレード、および下記のLime以下の下位グレードは全てタコメーターは非装備となる。
- GL-Lime
- 上記のLIsse同様、下級グレードのGLの装備を豪華にした女性バージョンで、1.5リッターの2ドアレビンに存在する。
- XL
- 1.6リッターモデルを含む80系トレノの最下級、かつ最も質素なグレードである。1.5リッターの2ドアトレノに存在する。
- GL
- 上記と同様、80系レビンの最下級グレード。1.5リッターの2ドアレビンに存在する。
特別仕様車編集
- ブラックリミテッド[注釈 12]
- 1986年1月、後期型トレノ3ドアの最上級グレード「GT APEX」をベースとしてモノトーンのブラック外装色にゴールドのエンブレムステッカー、及びドアサイドに張られた「BLACK LIMITED」のステッカーとピンストライプ、リアガーニッシュにプリントされた「BLACK LIMITED」の文字やゴールドに塗装された専用の14インチアルミホイール(GX70系マークIIと共通部品)が外観上の特徴となる。内装はメーターの照明や目盛りがオレンジ色に変更された専用品となり、フロントシート表皮の材質が一部変更され、オレンジ色で「APEX」の刺繍が入れられる。また、シートバック部分にはオプションでも設定のないネット状のポケットが装備されるなど、形状こそ「GT APEX」のものと共通となっているが、細かな部分で標準車と差別化を図っている。ステアリングのホーンパッドにはゴールドで「TWINCAM 16」の文字が入り、シフトノブのシフトパターンの文字もオレンジ色で統一、さらにワインレッドの専用フロアマットを装備するなど、内装・外装ともに隅々まで特別感を演出した。また、通常グレードではオプション設定だったパワーウインドウが唯一標準装備されている。
ポピュラー・カルチャー編集
- 走り屋を題材とする漫画作品『頭文字D』の人気を受け、90年代以降のドライビング・シミュレーションゲーム(グランツーリスモ、Forza Motorsport等)では、AE86が数多く収録されている。
- クライム・アクションゲームのグランド・セフト・オートIV、グランド・セフト・オートVでは、AE86のクーペ(トヨタ・カローラレビン)をモチーフにした「Futo」というモデルが登場している。初期段階では「Drift」となる予定が、プログラム段階で「Futo」になったと思われる。
出典編集
- ^ デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第3号9ページより。
- ^ 大衆車ではないカローラ オレがAE86に乗り続けるワケ
- ^ 大衆車ではないカローラ オレがAE86に乗り続けるワケトヨタ自動車公式サイト 50th Corolla 2016年11月8日
注釈編集
- ^ 2018年から日欧で発売されているZWE211H/NRE21型カローラスポーツとはまったくの無関係である。
- ^ ただし、カローラ/スプリンターシリーズ全般としては通算5代目。
- ^ レビン/トレノでも後のAE92/AE101にはスーパーチャージャー仕様が設定されている。
- ^ 当時のトヨタは前輪駆動化に際して慎重な姿勢を取っており、当時カローラとともに主力車種であったコロナも同時期に前輪駆動(T150/160型)にモデルチェンジしたが、前世代の後輪駆動車(T140型)も1987年のT170型モデルチェンジまで並行発売されている。
- ^ 1984年には、FFハッチバックモデルとしてカローラFXが追加投入されている。
- ^ 実際にはグリルやバンパーの形状が異なり、トレノとはかなり印象が異なる。
- ^ 欧州仕様等はハンドルの位置に関係なくDジェトロを採用していた。
- ^ 老朽化・損傷したモノコックの交換を目的として、同型車を用意し各種パーツを移植すること。
- ^ 単行本3巻においては「軽自動車にも劣るとも優らない超スーパーカメ車」等と書かれており、運転した拓海も「死ぬほど遅い」と酷評する描写があるが、後にターボチャージャーを取り付けて馬力を大幅に向上させている。なお、AE85=遅いというイメージは同時期の同クラス車が軒並みFFに移行した為、FRの本形式はプロペラシャフトのトルク損失の為にスロットルレスポンスが相対的に悪く感じられたことによる。
- ^ エアロパーツが装着されたり、レビン・トレノ、あるいは前期・後期間での外装変更等。
- ^ 20系カローラや30系パブリカでは、SRは「スポーツ&ラリー」の意とされている。
- ^ トヨタ自動車のスポーツモデルに設定されている特別仕様車の総称