グループAは、自動車レースに使用する競技車両のカテゴリーの1つ。

日産・R32型 スカイライン GT-R

概要 編集

 
フォード・シエラ RS500
 
ホンダ・シビックSi
 
2006年ラリージャパントヨタ・ヴィッツ

1982年国際自動車連盟(FIA)の下部組織だった国際自動車スポーツ連盟(FISA)によって、それまで1から8の数字によって形成されていたレギュレーション(FIA国際競技規則・付則J項)を改正し、AからF・N・Tなど8つのアルファベットへ簡略化されたものの1つである。グループAは部門I(量産車部門)に所属し、ツーリングカーと定義される。

連続する12か月間に2,500台以上(1992年以前は5,000台以上)生産された4座席以上の車両がホモロゲーション(公認)の対象となる。また改良型の公認取得として、変形オプション(VO)には2,500台、サーキットレース用のスポーツエボリューション(ES)には、250台(1992年以前は500台)以上の追加生産が必要となっており、これらはエボリューションモデル、あるいは正常進化モデルと呼ばれる。グループBグループN同様、一般の市販車に改造を施したものだが、改造範囲はグループBより狭く、グループNより広い。エンジンに限れば改造の自由度は高く、日産・スカイラインGT-Rは市販車で280馬力のエンジンを全日本向けでは550馬力から600馬力、アブガスが利用出来たマカオ向けの仕様では700馬力近くにチューニングして用いられていた。

公認を取得しないで改良する手段として、変型(バリアント)がある。コストの問題などで部品供給メーカーを変更する場合、ホモロゲーションデータを持ち越すことができるが、この時部品の生産量について求められることはない(供給変型、VF)。また特定のパーツ、例えばLSDやサスペンションなど、規則で認められている範囲の改造パーツについても生産量の証明は必要ない(オプション変型、VO)。さらにミスの記載を修正するための誤記訂正(エラッタ、ER)も認められるなど、抜け道は多く用意されていた[1]。1995年のF2キットカー導入の際には、競技改造キット用の変型(キット変型、VK)も追加された[2]。他には量産をクリアした部品の変型(プロダクション変型、VP)もある。なお変型ではない書式としては、型式そのものを更新する正常進化(ET)がある。

以前は排気量により1,400cc以下のA5、1,401~1,600ccのA6、1,601~2,000ccのA7、2,000cc以上のA8と分類されていた。なおターボ車は排気量に1.7倍(1987年以前は1.4倍)を乗じた数を適用する。なおラリーで用いられたスーパー1600規定はA6に、WRカー規定はA8にそれぞれ分類されていた[3]

市販車に近い車両ということでファンからの人気は高かったが、強力な戦闘力を持つ(=高価・高維持費で趣味性が強く、実用性に乏しいため販売台数が限られる)市販車両や競技レベルの市販部品を一定数量産して公認を取得する必要があったため、メーカーの負担が増大して撤退が相次いだ。そのため現在のトップカテゴリでは純粋なグループA規定車両を頂点としたレースは皆無である。

ただし4座席の市販車をベースに用いる競技車両の規則としては依然機能しており、世界ラリー選手権(WRC/WRC2/WRC3/JWRC)や世界ラリークロス選手権(World RX)、世界ツーリングカーカップ(WTCR)などのビッグカテゴリでも、グループAの派生・特例となる規定で総合優勝を争っている。またFIA主催のラリーの下位クラスでは、排気量2.0L未満で二輪駆動のグループA車両が2022年現在も参戦可能となっている[4]

参戦可能カテゴリ 編集

純粋なグループA規定 編集

グループAの発展・特例となる規定 編集

主な車種 編集

 
ランチア・デルタ HFインテグラーレ エボルツィオーネ (スーパーデルタ)
 
トヨタ・セリカ GT Four ST165
 
スバル・インプレッサ
 
トラバント・P800RS
 
日産・プリメーラ

[5]

脚注 編集

  1. ^ 『Racing On N.567』P68 三栄書房刊行 2020年7月15日発行
  2. ^ 『RALLY CARS vol.12』P40 三栄書房刊
  3. ^ 困ったときの用語集RALLY Plus.net 2010年11月28日時点のアーカイブ
  4. ^ FIA RALLY CAR PYRAMID
  5. ^ FIA Historic Data Base

関連項目 編集