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おくりびと

2008年公開の日本映画

概要編集

本木雅弘が、1996年に青木新門・著『納棺夫日記』を読んで感銘を受け、青木新門宅を自ら訪れ、映画化の許可を得た[4]。その後、脚本を青木に見せると、舞台・ロケ地が富山ではなく、山形になっていたことや物語の結末の相違、また本人の宗教観などが反映されていないことなどから当初は映画化を拒否される。

本木はその後、何度も青木宅を訪れた[4]が、映画化は許されなかった。「やるなら、全く別の作品としてやってほしい」との青木の意向を受け、『おくりびと』というタイトルで、『納棺夫日記』とは全く別の作品として映画化。映画公開に先立って、小学館さそうあきらにより漫画化されている。このコミック版では建築物の細部まで多くの描写が映画と共通しているが、主人公の妻の職業などいくつか差異がある。

映画の完成までには本木と、本木の所属事務所元社長の小口健二の働きは大きい。

地上波での初放送は2009年9月21日 21:00 - 23:3421.7%の高視聴率を記録したが、2012年1月4日の2回目の放送は3.4%の低視聴率となった。CS放送ではTBSチャンネルにて不定期で放送されている他、TBSオンデマンドに於いての動画配信も行っている。

あらすじ編集

プロのチェロ奏者として東京管弦楽団に職を得た小林大悟。しかし、ある日突然楽団が解散し、夢を諦め、妻の美香とともに田舎の山形県酒田市へ帰ることにする。

就職先を探していた大悟は、新聞で「旅のお手伝い」と書かれたNKエージェントの求人広告を見つける。てっきり旅行代理店の求人と思い込み「高給保障」や「実労時間僅か」などの条件にも惹かれた大悟は面接へと向かう。面接した社長は履歴書もろくに見ず「うちでどっぷり働ける?」の質問だけで即「採用」と告げ、名刺まで作らせる。大悟はその業務内容が実は「旅立ちのお手伝い」であり、具体的には納棺(=No-Kan)と知って困惑するが、強引な社長に押し切られる形で就職することになる。しかし妻には「冠婚葬祭関係」としか言えず、結婚式場に就職したものと勘違いされてしまう。

出社早々、納棺の解説DVD遺体役をさせられ散々な目に遭い、さらに最初の現場では夏、孤独死後二週間経過した高齢女性の腐乱屍体の処理を任され、大悟は仕事の厳しさを知る。

それでも少しずつ納棺師の仕事に充実感を見出し始めていた大悟であったが、噂で彼の仕事を知った幼馴染の銭湯の息子の山下から「もっとましな仕事に就け」と白い目で見られ、美香にも「そんな汚らわしい仕事は辞めて」と懇願される。大悟は態度を決めきれず、それに腹を立てた美香は実家に帰ってしまう。さらに、ある現場で不良学生を更生させようとした列席者が大悟を指差しつつ「この人みたいな仕事して一生償うのか?」と発言したのを聞いたことを機会に、ついに退職の意を社長に伝えようとするが、社長のこの仕事を始めたきっかけや独特の死生観を聞き、思いとどまる。

場数をこなしそろそろ一人前になった頃、突然美香が大悟の元に戻ってくる。妊娠を告げられ、再び納棺師を辞めるよう迫られた大悟に仕事の電話が入る。それは、一人で銭湯を切り盛りしていた山下の母、ツヤ子の納棺の依頼であった。山下とその妻子、そして自らの妻の前でツヤ子を納棺する大悟。その細やかで心のこもった仕事ぶりによって、彼は妻の理解も得、山下とも和解した。

そんなある日、大悟の元に亡き母宛ての電報が届く。それは大悟が子供の時に家庭を捨て出て行った父、淑希の死を伝えるものであった。「今さら父親と言われても…」と当初は遺体の引き取りすら拒否しようとする大悟に、自らも帯広に息子を残して男に走った過去があることを告白した同僚の上村は「最後の姿を見てあげて」と説得する。美香の勧めもあり、社長に車を借りて遺体の安置場所に向かった大悟は、30年ぶりに対面した父親の納棺を自ら手掛ける。

登場人物編集

小林 大悟:本木雅弘(幼少時:内田琳)
元チェロ奏者。東京の管弦楽団で働いていたが、興行不振などが重なり所属楽団が解散してしまい、それに伴って山形への帰省を決意。求職中、偶然見つけた求人広告をきっかけに納棺師として働くことになる。はじめは納棺師という仕事に戸惑いを感じていたが、次第に誇りを持って仕事をするようになる。6歳のころに父親と絶縁、母は海外の演奏旅行中に死亡している。

小林 美香:広末涼子
大悟の妻。ウェブデザイナー。大悟のことを「だいちゃん」と呼ぶ。大悟が再就職先として納棺師を選択したことに最初は嫌悪感を示していたが、ツヤ子が亡くなった際の納棺作業を見て、納棺師としての大悟を受け入れる。

山下 ツヤ子:吉行和子
山下の母親。亡き夫が遺した銭湯「鶴の湯」を一人で切り盛りする。息子とは、常々銭湯をマンションに建て替える計画について揉めていた。その際ツヤ子は「ここを潰す気は一切ない」と言い切っている。しかし仕事中に倒れ急逝、その後大悟の手により納棺される。

佐々木 生栄:山崎努
NKエージェント社長。妻(今本洋子)とは9年前に死別している。直感で動くことが多い。

上村 百合子:余貴美子
NKエージェント事務員。出身の帯広市に一人息子を残し酒田に住んでいる。お世話になっていた飲み屋の主人が脳溢血で亡くなった際に佐々木と出会い、「自分が死んだら、この人に納棺してもらいたい」という思いからNKエージェントへの入社を決意した。
平田 正吉:笹野高史
「鶴の湯」の50年にわたる常連客。その仕事は火葬場の職員。その長年の経験から、「死は門である」という信念を持つ。ツヤ子の火葬も担当する。

山下:杉本哲太
大悟の同級生。役所勤めで、ツヤ子の経営する銭湯をマンションに建て替える計画を勧めていた。その件ではツヤ子と度々揉めていた。
山下 理恵:橘ゆかり
山下の妻。
山下 詩織:飯塚百花
山下の娘

小林 淑希:峰岸徹
大悟の実父。大悟が幼い頃に離婚し家を出たまま行方がわからなくなっていた。大悟はウェイトレスとの駆け落ちと勘違いしていたが、実際はずっと独り身だった。家を出たあとはとある漁港に身を寄せ、空き家で生活しながら港の仕事を手伝っていた。なお、峰岸はこの映画の上映期間中に亡くなっている。
ツヤ子の孫娘:松田七星
富樫 直美:宮田早苗
佐々木に納棺された女性。
富樫:山田辰夫
直美の夫。大悟らの到着が予定より5分遅いことに文句を言うものの、納棺後、妻について「あいつ、今までで一番綺麗でした」と感謝を述べる。山田は滝田監督の高校の同級生であり、監督自ら出演を依頼している。
曽根崎:石田太郎
大悟が所属していたオーケストラのオーナー。
大悟が所属していたオーケストラの指揮者飯森範親
小林 和子:星野光代
大悟の母(回想のみ)
留男:白井小百合
大悟が納棺したニューハーフ
留男の母:小柳友貴美
留男の父:大谷亮介

撮影現場編集

 
演奏会の場面の撮影が行われた酒田市民会館「希望ホール」
 
美香が帰郷する場面の撮影が行われた余目駅(山形県東田川郡庄内町

概要の項の通り原案となった納棺夫日記の舞台は富山県であるが、本作のロケーション場所には酒田ロケーションボックス[リンク切れ]などの施設が整っていることから山形県が選ばれている。舞台設定は庄内地方であるが、撮影箇所は山形県内各所に点在しており、代表的なものを記す。

NKエージェント事務所
旧割烹小幡。山形県酒田市日吉町2丁目。2009年4月20日より内部が一般にも公開されている[1]
管弦楽演奏会場
酒田市民会館「希望ホール」。山形県酒田市本町2丁目。
「納棺の手引き」撮影場所
酒田港座。山形県酒田市日吉町1丁目。2002年に閉鎖された映画館だったが、この撮影が行われたことによって再び脚光を浴び、2009年6月12日より営業を再開。現在は映画上映のみならず様々な催しを行っている。
鶴乃湯
山形県鶴岡市本町2丁目。2009年9月1日に廃業し、2010年4月より庄内映画村のオープンセットに移築されている。
スナック和
山形県上山市栄町1丁目。現在は「上山コンチェルト館」として公開されている[2]
余目駅
美香が故郷に帰るシーンが撮影された。
火葬場(酒田市斎場)
日本建築学会賞受賞の八木澤壮一設計によるものである。

他方、原作の舞台でありながらも映画版のロケ地とならなかった富山県では、本作の日本アカデミー賞とアカデミー賞の受賞後、県議会の委員会で議員が映画ロケ誘致について富山県庁の消極的な姿勢を問い質し、県の担当課長が後悔の答弁を述べる一幕があった[5]

スタッフ編集

注目された演出編集

  • 納棺DVDに出演するときの大悟の格好 - この場面では紙おむつに白塗りという格好で登場。撮影中に剃刀で顔を傷つけられるという設定。
  • 咀嚼音 - 社長の佐々木がふぐの白子をチュウチュウと吸うように食べるシーンや、硬い干し柿をクチャクチャと噛むシーン、フライドチキンをしゃぶりつくように食べるシーンなど、決して上品ではない食事シーンがいくつかある。
  • 美香の「汚らわしい!」発言 - この映画では遺体を素手で触るシーンが多く、物語をわかりやすくするためか消毒するシーンも無い。不衛生という意味で医学的には間違いではないとの指摘もある[3][リンク切れ]が、この場合は納棺に対する偏見から出た発言という設定である。

受賞歴編集

日本国内編集

日本国外編集

舞台化編集

赤坂ACTシアター他で舞台化作品が2010年5月29日より上演された。映画から7年後の大悟達を描く[11]

配役(舞台)編集

スタッフ(舞台)編集

公演日程編集

公演 公演日 劇場
東京公演 2010年5月29日 - 6月6日 赤坂ACTシアター
大阪公演 2010年6月9日 - 6月13日 イオン化粧品 シアターBRAVA!
名古屋公演 2010年6月16日 - 6月24日 御園座

その他編集

  • 本作では、一連の死後の処置(エンジェルメイク)を納棺師が行っているが、現在では、臨終全体の8割が病院死であり、実際には、看護師が病院で行うことが多い[12]

脚注編集

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  1. ^ 2008年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
  2. ^ 本作は、“日本映画初のアカデミー外国語映画賞受賞作品”などと報道されることが多いが、同賞の前身である名誉賞時代にすでに3本の日本映画が受賞しており、公式にも過去の名誉賞は外国語映画賞と同列の扱いとなっている点には注意が必要である。また、ソ連映画ではあるが、1975年に黒澤明監督の「デルス・ウザーラ」が外国語映画賞を受賞している。
  3. ^ a b 外部リンクに映像
  4. ^ a b テレビ朝日ワイド!スクランブル」2009年2月24日(火)11:25―13:05 青木新門インタビュー
  5. ^ 隠れた名所「発掘に力」-マイタウン富山 - 朝日新聞社 2010年04月04日付
  6. ^ 久石譲によるメインテーマにAI自身が歌詞をつけたもの。
  7. ^ 第32回 日本アカデミー賞最優秀賞発表[リンク切れ] 日本アカデミー賞公式サイト 2009年2月20日付
  8. ^ “東京スポーツ映画大賞”. 東京スポーツ. (2013年1月29日). http://www.tokyo-sports.co.jp/tospo_movie/ 2013年1月29日閲覧。 
  9. ^ The Academy of Foreign Language Film (2009年). “WINNERS - Foreign Language Film” (英語). 2009年2月23日閲覧。
  10. ^ 「おくりびと」がグランプリ モントリオール世界映画祭[リンク切れ]、MSN、産経ニュース、2008年9月2日、2008年9月閲覧。
  11. ^ 舞台「おくりびと」公式サイト2010年6月閲覧
  12. ^ 小林光恵著『死化粧の時』洋泉社

関連項目編集

外部リンク編集