スズメ

スズメ目スズメ科の鳥

スズメ、すずめ、学名 Passer montanus )は、スズメ目スズメ科スズメ属に分類される鳥類の1種。人家の近くに生息する小である。

スズメ
スズメ Passer montanus
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
: スズメ科 Passeridae
: スズメ属 Passer
: スズメ P. montanus
学名
Passer montanus
Linnaeus, 1758
和名
スズメ
英名
Tree Sparrow
Eurasian Tree Sparrow
亜種
  • P. m. montanus
  • P. m. transcaucasicus
  • P. m. dilutus
  • P. m. dybowskii
  • P. m. kansuensis
  • P. m. iubilaeus
  • P. m. obscuratus
  • P. m. saturatus スズメ[2]
  • P. m. malaccensis

分布 編集

 
     繁殖地      周年生息地      越冬地

西はポルトガルから東は日本までユーラシア大陸の広い範囲に分布する[1]。ただし北はあまり寒い地方にはおらず、北緯で言えば60数度が北限である。またインドにはほとんどいない。ボルネオ島スマトラ島ジャワ島などの熱帯または亜熱帯の地域にも分布域がある。

アメリカ合衆国では、19世紀半ばにミズーリ州セントルイス市に移入された。広範囲に分布するイエスズメとは対照的に、現在では同市と隣接するイリノイ州の一部にのみ生息し、スズメの分布域は広がっていない。

ヨーロッパでは英名の Tree sparrow からも分かるように、主に農耕地帯でみられ都市部にはほとんどいない。都市部にはイエスズメなど別のスズメがいる。一方、東アジアでは農耕地から都市部などのヒトの生活の傍で見られる。

分類 編集

分類体系上の位置の変化 編集

シブリー・アールキスト鳥類分類では、スズメ目・スズメ科・スズメ亜科に分類されていた。 日本鳥類目録では以下のように変わってきた。

  • 改訂3版(1942年)スズメ科(現在のアトリ科)
  • 改訂4版(1958年)キンパラ科
  • 改訂第5版(1975年)ハタオリドリ科
  • 改訂第6版(2000年)ハタオリドリ科
  • 改訂第7版(2012年)スズメ科

亜種 編集

近縁種 編集

形態 編集

 
スズメの喉元の黒い部分。
 
巣立ったばかりの雛の喉元はまだ黒くない。

全長は約14-15 cmで、体重は18-27 g[4]ホオジロより小さく、シジュウカラぐらいの大きさ[5]。日本では鳥の大きさ等を比較する場合の基準となる「ものさし鳥」と呼ばれる基本種となる(他に ムクドリキジバトハシブトガラスなど)。翼長6.7-7.4 cm、尾長4.3-4.9 cm[6]

雌雄同色[7]。成鳥は頭部が赤茶色、背中は褐色で縦に黒斑があり、翼に2本の細い白帯がある。から後頸、にかけては白色をしている。耳羽および目先から喉は黒い。くちばしの色は黒色であるが、幼鳥の時は淡黄色。ただし成鳥でも、繁殖期の終わりごろにはくちばしの根元が黄色になる個体が観察される[8]。全ての成鳥のくちばしの根元が黄色くなるかどうかは分からないが、若い個体と区別が付きにくいので注意が必要である。成鳥の頬にある大きな黒い斑は遠くからも目立ち、これが他の類似種との区別点でもある。幼鳥は全体に色が淡く、頬の黒斑やの黒斑がはっきりしない。

くちばしは短くて太い円錐形で、小さな餌をついばむために都合がよい構造となっている。嘴峰長は0.9-1.2 cm[6]。足は淡褐色で、跗蹠長は1.65-1.8 cm[6]

ヨーロッパなどユーラシアに広く分布し、アメリカ大陸オセアニアなどにも移入種として生息する別種イエスズメは、やや大きくて、雄の頭部に灰色の太いラインが入る[9]

生態 編集

地上では両足で飛び跳ねて(ホッピング、: hopping)素早く移動する。飛翔は直線的であるが、急に飛ぶ方向を変えたりすることもできる。

鳴き声は一般的に「ちゅんちゅん」と表される。「チュン」という声を基調に、変化のある鳴き声を続けて発したりするが、ときに「ジュクジュクジュク」と胸を反らせながら尾を上げて激しく鳴くことがある。それは、縄張りを守る威嚇行動と考えられる[10]。また、交尾の際に下の雌が、少し広げた翼を小刻みに震わせながら「ヒヨヒヨヒヨ」と細い声を発する[10]

 
草の若葉を啄ばむスズメ。背中の斑模様と羽の白帯が確認できる。

一般に留鳥とされているが、日本で1920年代から1940年代に行われた移動性を調べる調査[11]によれば、移動距離が25 km(キロメートル)以内(特に5 km以内)の真の留鳥集団と100 km以上を移動する移動性の高い集団が存在していることが明らかとなった。この調査に於いて、新潟県で標識放鳥された約5700個体のうち7個体が岡山県で、3個体が高知県で標識回収された事が記録されている[11]

食性 編集

食性雑食性で、イネ科を中心とした植物の種子を食べる。また、都市部に生息するスズメはの花の蜜、パン屑・菓子屑や生ゴミまで、何でも食料にする。桜の蜜を大変好むが、花の蜜だけ舐めることのできるメジロヒヨドリと違い花をちぎって蜜を舐めるため、桜にとっては花粉を運んでもらえない迷惑な鳥でもある。このような雑食性が、都市部での繁殖を可能にした理由の1つと考えられている。繁殖期には子育てのために虫を好んで捕獲する。からにかけてはに対する食害も起こすが、稲の害虫も食べることでも知られる。

親鳥の死亡など緊急な保護を目的などとして飼育する場合、ヒナ鳥は、和鳥用の練り餌のみならず、パンをぬるま湯で柔らかくしたものや植物性の練り餌[12]でも育雛が可能であるが、充分な知識がないと成長せずに死亡するケースも多い。

ヒナ鳥は通常充分に飛べない状態で巣立ちをするため、親鳥は近隣で見守っているもので、持ち帰って飼育していると親鳥が餌を運んでくる事例も確認されている。ヒナ鳥は拾い上げて持ち帰らず、そばの植え込み等に放っておけば親鳥が声で見付け出し育雛を続ける。

繁殖 編集

繁殖は春から夏頃(主に3-8月[13])にかけて行われる。1年に2回程度繁殖すると考えられている。人に対する警戒心は強いが、人の生活の傍で繁殖を行う。そうすることで天敵などから身を守る効果があると推測されている。一方、集団で繁殖する習性があり、20つがい以上がいないと繁殖しないという報告もある[10]

の材料として、イネ科の植物などの繊維状のものを用いるので、営巣時期にはそれらをくわえて飛ぶ様が見られる。巣の大きさや形状は営巣場所の穴の形や隙間によって変わる[14]。巣に人間などの外敵が近付くと「ヂヂヂヂヂヂ」と短く高い声で警告されるが、この場合、卵の有無は問わず、ある程度完成した巣であると警告を行うとされる。毎日1個の卵を産み[13]、1つの巣に産む卵の数は4-8個とされ[6]、5-6卵が75 を占める[15]。2010年には、秋田県大潟村で、9卵が産みこまれていた例が報告されている[16]。卵は灰白色で、紫褐色や灰色、黒褐色の斑があり鈍端側に多い[6]。卵の大きさは1.7-2.25 cm × 1.3-1.55 cm[6]。雌雄が抱卵し10-12日で孵化する(抱卵日数は10-14日)。ヒナは晩成性で14-18日で巣立つ。

営巣場所 編集

 
犬や猫などの毛も巣材として利用する。

巣は地面近くには作らず、人の身長よりも高い位置に作ることが多い。見た目には無理と思われるような隙間でも擦り抜けられるので、スズメの巣そのものは普段目に付かないが、巣の真下付近には枯草などの巣材の残骸が散らかっていることが多いので、それを頼りに見付け出すことができる。また、雛が餌をねだる高い周波数のチリチリという鳴き声で巣の存在に気付くこともある。

日本では人間の生活に密着しているので、多くはの下や雨樋屋根の隙間などの屋根の軒の隙間や、この他にも人の住んでいない家や集合住宅の換気扇カバーの中や煙突、プレハブの鉄骨の隙間や穴など直径3 cm または 2.5 cm × 4 cm ほどの隙間さえあれば入り込んで営巣することがある。人間が設置した巣箱も利用するが、この際は出入口の位置まで巣材を積み上げる習性がある。他に、電話線の分配ボックス、電柱トランス下のスペース、交通標識の横に伸びたパイプ、ガソリンスタンドの天井の照明の裏等でも営巣する。

自然にあるもので営巣する場合、木の洞(きのうろ)や、さらに樹木の枝の茂みに球形の巣を作ることもある[14]ツバメなど他の鳥の古巣を利用することもあり、造巣中のコシアカツバメの巣を奪って使った観察記録もある[14]。まれにスズメバチの古巣を利用した例も報告されている[17]。また、トビクマタカなど猛禽類の巣の下部裏側に営巣することもあり[14]、これは猛禽類の近くに外敵が来ないことを利用していると考えられる。

群れ 編集

 
群れで採餌中のスズメ

夏から秋にかけて、街路樹などに数十から数百羽が集まってねぐらを形成する。その年生まれの若鳥が多いとされるが[18]、若い個体だけでなく成鳥もまざっている。集まることで、体温の維持、翌日の餌場の探しやすさ、睡眠時の安全性の向上などの効果があると考えられている[19]。一方で、群れのねぐらに入らず個々の場所に定住する個体は成鳥が多いとされる[18]

近縁で主にヨーロッパに分布するイエスズメでは、喉元の黒い部分の大きさが、その個体のコンディションの良さを表しており、黒い部分が大きいほど、または黒さが強いほど群れの中で優位な個体であるという研究がある[20]。一方、スズメの頬および喉の黒い部分と社会的なランクについては、それほどはっきりした関係がないことが示されている[21]。ただし、イエスズメについても否定的な研究もあり、スズメについてもまだ十分調べられているわけではない。

寿命 編集

スズメの寿命はよく分かっていない。理由は、そのための調査があまり行われていないせいもあるが、巣立ち後に分散するので個体の寿命を把握しづらいためである。ヨーロッパの標識調査からのある推定[22]では、秋頃に捕獲された雛が、翌年の春を迎えるまでの生存率は0.49、その後の生存率は年あたり0.32となっている。これらの値が日本でも成り立つとすると、秋頃の当年生まれの個体の期待余命は1.4カ年ほど、1年目の春を迎えた個体の期待余命は1年ほどということになる。卵の段階から巣立つまで、そして巣立った直後から秋にかけては、かなり高い死亡率を持つと思われる。

日本における自然条件下の最長寿命は、2293日である[23]。これは初めて捕獲されて標識されてから、次に捕獲されたまでの日数なので、少なくともこれ以上生きたことは間違いない。飼育下では、一般に自然条件下よりも長く生き(生理的寿命)、最長15年という記録がある[24]

捕食者 編集

都市部では、ヘビカラスなどが捕食者になっている。農村部ではこれらに加え、中型以上の猛禽類(例えばノスリオオタカハヤブサフクロウ)やモズも捕食者になる。かつては、ヒトも影響力の大きな捕食者であった。

日本におけるスズメ 編集

分布 編集

北海道から沖縄まで見られる。北海道、南千島、本州、粟島佐渡隠岐見島、四国、九州、対馬五島列島屋久島伊豆諸島奄美大島琉球諸島大東諸島では留鳥であり、舳倉島男女群島種子島には旅鳥として、またトカラ列島にもまれに認められる[2]。ただし、いくつかの離島には分布していない。例えば、本州から1000 kmほどある小笠原諸島には生息していないが[25]、これは分散の機会がないからだと思われる。本州から最も距離があるのに分布しているのは、沖縄本島から400 kmほどの南大東島北大東島である。一方で、舳倉島など能登半島から50 kmほどだが留鳥として分布していない所もあるので、分布は単純に本州からの距離だけで決まるわけではないようである。

生息地は、都市、農村、里などの人の居住域付近であり、一年中見られる留鳥または漂鳥である[25][7]。典型的なシナントロープで、人間が住み始めた集落にはスズメも居着き、逆に人間が離れ集落が無人になるとスズメも見られなくなるという傾向がある。

個体数の変化 編集

都市部のスズメは公園や神社の境内で鳩の餌をやることが多かった時代に、鳩と共に多かった。その後鳩の糞害が深刻化したため、公園での鳩の餌やり風景が減少した。

2008年における日本本土のスズメの成鳥個体数は、約1800万羽と推定されている。ただしこの推定には誤差があるため、数千万羽の桁と考えるのが妥当と思われる[26]。この数千万羽は成鳥個体数の推定値なので、秋冬にはこの数倍になると思われる。

日本におけるスズメの個体数は減少傾向にあると言われている。鳥類の行動や生態を研究している三上修らの推定によると、2007年のスズメの個体数は1990年ごろに比べて少なくとも半減、減少率を高く見積もると5分の1になったと考えられている[27]。50年前の10分の1とも推定されている[28]。しかし減少原因についてはよくわかっていないが、気密性の高い住宅の普及によって営巣場所が減少したこと[29][30]、農村部でコンバインの普及によって落ち(もみ)が減少しそれによる冬季の餌が不足したこと[31]などが可能性として挙げられている。また農村部と比べて都市部において巣立っているヒナの数が少ない傾向が見られており、都市化に伴う餌不足も、減少原因の候補として挙げられている[32]。このように減少はしているが絶対的な個体数はまだ多く、現在の減少スピードであれば数十年後に絶滅してしまうことはないと言われている[33]

日本人との関係 編集

稲の食害 編集

夏から秋にかけては稲に対する食害も起こす。しかし、農村地帯で繁殖するスズメは、稲にとっての害虫も食べるため、コメ農家にとっては総合的に益鳥の面が大きいともされる[34]

一方ニュウナイスズメという別種のスズメは、繁殖期には森林または北方で繁殖し、夏の終わりから秋にかけて農村地帯に現れる。益鳥としての働きをしないので害鳥としての面が強いといわれている。この稲を食害するニュウナイスズメとスズメが、スズメとして一緒にくくられることで、スズメが必要以上に害鳥扱いされた可能性もある(ただし、理由はわかっていないが、ニュウナイスズメが大規模に農村地帯に出現することは現在ではほとんどなくなった)。

狩猟と飼育 編集

 
スズメの焼き鳥。伏見稲荷大社参道の日野屋にて。
 
人に懐いたスズメ。道に落ちていた弱った幼鳥を保護・育成したもの

スズメは鳥獣保護法狩猟鳥に指定されており[28]焼き鳥等に食用もされてきた。特に京都伏見稲荷大社では門前の名物になっている。しかし、現在は需要の低下、狩猟者の高齢化およびスズメの個体数減少により捕獲されるスズメの数は減ってきている[35]。一時、中国、韓国から食用のスズメが日本に輸入されていたが、鳥インフルエンザ対策のために現在ではほとんど輸入されていない。日本での狩猟期間は11月15日から2月15日の間とされ銃や罠を使用しない方法であれば誰でも捕獲できる[36]

スズメの捕獲法はいくつかあるが、古くはねぐらになっている藪の周囲に大型の網(袋網という)を張り、勢子とよばれる役割のものが、音を立てたり藪を棒などで叩いて網に追い込む猟法も行われていた。この猟法は大量捕獲が可能なので地獄網とも呼ばれる。現在ではこのような猟法は禁止されており、スズメの捕獲は、スズメが集まるところに網を立てておいてスズメが来たら網を倒して採るむそう網という方法で行われている。

4月前後には巣立ちに失敗したり弱ったりした幼鳥が人間に保護されることも多く[37][38]、保護ボランティアが募集される自治体もある[39][40]。日本野鳥の会などでは、弱ったりしていない場合は安易に保護せず2-3時間ほど、その場所で親が来ないか離れて観察するように指導しており[41]、衰弱している場合や親鳥が現れない場合は保護して専門家に預けるようにとしている[41]

古くから身近な鳥なのに他の鳥のようにペット化されない理由としては、飛翔力が強くカゴ内で激突して傷付き易いことや、餌を大量に食べるので糞も他の飼い鳥と比べ量が多いこと、砂浴び好きな習性のためカゴ内で餌や新聞紙に身体を激しくこすりつけ周囲に大量の餌や糞を跳ね飛ばすことが挙げられる。一方で平安時代の枕草子にも源氏物語にも雀の子飼いについて記述があり、江戸時代の俳人小林一茶の一連の俳句作品からも、雀を子飼いした形跡が窺えることから、古くからしばしば飼われていたことがあるのも確かで、いつも人の傍に寄り添っていてあまりに身近過ぎ、珍奇性に乏しかったからとも考えられる。

なお、飼ったことのある人の証言では、非常に人懐こく賢いことがしばしば言及され、清少納言も心ときめきするもの[42]として他のどれより文頭に「雀の子飼ひ」を挙げているほどである。個体によっては人語を学習して、単語を話す事例も確認されている。

芸に使われることのある鳥の種類として、タカスズメジュウシマツヤマガラシジュウカラを挙げている資料[43]があり、同資料においてこの中でスズメはもっとも利口だが飼育が困難、ヤマガラの方が飼育に適し、また調教が楽なので非常に流行ったとの記述がある。

親しみ 編集

春先は苗の害虫を食べる益鳥として扱われ、秋には稲の籾米(もみごめ)を食害する害鳥となり[28]、古来からスズメを追い払うため、「スズメ追い」「鳥追い」などという風習が各地にあり、それに関する民謡民話なども伝えられている。かかしもスズメ追いの道具として作られたものである。害鳥としてスズメを追い払う行為が行われる一方、スズメの恩返しなどの報恩譚では親しみを持って描かれてきた。雀はチュンチュンとよく囀るため、噂話を好む人を雀に例えることがある。

神聖視 編集

日本においては、神聖視されてきた歴史もある。

日本文化 編集

俳句 編集

  • 我と来て遊べや親のない雀
  • 雀の子そこのけそこのけ御馬が通る(小林一茶)
  • 子雀や遠く遊ばぬ庭の隅(尾崎紅葉

物語 編集

民話
映画

童謡 編集

芸能 編集

家紋 編集

雀紋(すずめもん)は、雀を図案化した家紋である。勧修寺家などが用いた。

雀の添えられた笹・竹紋から派生した家紋で、図案には、「ふくら雀」「飛び雀」「脹雀」「丸に対い雀」「三羽追い雀」などがある。

勧修寺家は「雀の丸」を用いていたが、後に竹輪で囲った。こちらは「勧修寺笹」という笹・竹紋である。その派生には、上杉氏の「上杉笹」、その派生である伊達氏の「仙台笹」「宇和島笹」などがある。これらは、まとめて「竹に雀」と呼ばれる。柳生氏の定紋である「地楡に雀(われもこうにすずめ)」は地楡紋である。

日本語彙・日本語句 編集

語源・表記・意味 編集

スズメの語源については、「スズ」は鳴き声を、「メ」はカモやツバのように群れをなすことを指している[45]

  • 日本語ではスズメを漢字で「」と書き、雀色という色がある。少ない金額を「雀の涙ほど」や小さい弓を「雀小弓」といって、雀程度という意味で少ないことや小さいことを形容する。
  • 中文(中国語)では「麻雀」と表記する。麻雀(スズメ)は中国の古典では小さな鳥の総称のように用いられた。
  • 英語では「 Sparrow 」となる。ただし、Sparrow はスズメ科に分類される鳥の総称として用いられる。
  • 学名のPasser montanusは、passerがスズメ科(: sparrow)、montanusは山の意味だが、この種(スズメ)の生息地を表す適切な表現ではなく、: Feldsperling: field sparrow) の方が相応しい[46]

スズメという名のつく別種 編集

日本語の慣用句 編集

  • 雀の涙 - 「小さい」「ごくわずか」などの形容として用いられる。
  • 雀百まで踊り忘れず - 幼い頃からの習慣は容易に変わらないことの例え。
  • 欣喜雀躍 - ヒトが喜びのあまり小躍りする様を、両足を揃えてぴょんぴょんと跳ね歩くスズメに例えたもの。
  • 雀の踊り足 - 筆跡の拙さの形容。
  • 雀脅して鶴失う - 細部にこだわって全体をだめにしてしまうことのたとえ。
  • 雀海中に入って蛤となる - 物事が変化しやすいことのたとえ。
  • 雀の千声鶴の一声 - つまらない者の千言よりも、すぐれた者の一言の方がまさっているということ
  • 雀の巣も構うに溜まる - 量が僅かでも積もり積もれば大きくなることの例え(「塵も積もれば山となる」と同義)。
  • 雀の角 - 弱い者が武装したところで恐れるには及ばない。恐れるに足りない武器のたとえ。
  • 雀の糠喜び - 喜んだ後に当てがはずれることのたとえ。(「ぬか喜び」と同義)。
  • 雀に毬 - 価値がわからない者にとっては、何の値打ちもないものであるというたとえ。(「猫に小判」と同義)。
  • すずめ焼き - 同じ具材を幾つも並べて串焼きにした料理を、電線に多数並ぶ雀の姿になぞらえた呼び名。
  • 雀刺し - 将棋の戦法のひとつ。
  • 雀色時 - 夕方。夕暮れ。黄昏時。

栄養 編集

すずめ (肉骨皮付き、生) 栄養価
すずめ (肉骨皮付き、生)[47]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 552 kJ (132 kcal)
0.1 g
5.9 g
飽和脂肪酸 1.84 g
一価不飽和 1.53 g
多価不飽和 1.01 g
18.1 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(2%)
15 µg
チアミン (B1)
(24%)
0.28 mg
リボフラビン (B2)
(67%)
0.80 mg
ナイアシン (B3)
(19%)
2.8 mg
パントテン酸 (B5)
(91%)
4.56 mg
ビタミンB6
(45%)
0.59 mg
葉酸 (B9)
(4%)
16.0 µg
ビタミンB12
(208%)
5.0 µg
ビタミンC
(0%)
0 mg
ビタミンD
(1%)
0.2 µg
ビタミンE
(1%)
0.2 mg
ビタミンK
(4%)
4 µg
ミネラル
ナトリウム
(5%)
80 mg
カリウム
(3%)
160 mg
カルシウム
(110%)
1100 mg
マグネシウム
(12%)
42 mg
リン
(94%)
660 mg
鉄分
(62%)
8.0 mg
亜鉛
(28%)
2.7 mg
(21%)
0.41 mg
マンガン
(6%)
0.12 mg
他の成分
水分 72.2 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

その他 編集

  • 和文通話表で、「」を送る際には「スズメのス」という。
  • 漫画などの作中で、夜が明けて朝になったことを表す描写として、部屋の中のシーンで窓などのスペースに「チュンチュン」と小さく文字を書くだけで、時計を描かなくても読者に朝になったことが伝わる。この「チュンチュン」は、朝に活動的となるスズメの鳴き声を表している。
    • ベッドの中で男女のキャラクターが目覚めるシーンに、この「チュンチュン」の描写があるだけで、昨夜に性行為があったことを(実際の描写がなくても)読者に想像させる。この表現方法は俗に朝チュンと称されており[48][49]、作品名にも用いられている[50]
  • 西東京バスのマスコットキャラクターに使用されている[51]
  • 仙台市交通局が導入したICカード乗車券icscaのキャラクターに使用されている[52]
  • NHK連続テレビ小説半分、青い。』の主人公楡野鈴愛の名前は、母の晴が病院でスズメが鳴いている様子を見たことから付けた設定になっている。

中国におけるスズメ 編集

大戴禮記では「鳥魚皆生於陰而屬於陽;故鳥魚皆卵;魚游於水,鳥飛於雲。故冬燕雀入於海,化而為蚧。」[53]とし、七十二候の寒露の次候でも「雀入大水為蛤」とする。これに因み日本の俳句でも「雀蛤となる」が秋の季語として採用されている。

中国においては、1955年、大躍進政策の一環として行われた「四害追放運動」において、スズメを稲をついばむ害鳥とし、ネズミハエとともにスズメを撲滅させるという計画が実施され、大規模な人海戦術で、年間11億羽以上も駆除したと言われている[54]。しかし、1960年にはスズメは対象から外され、代わってナンキンムシが加えられた[45]。スズメが外された理由は中国側が発表していないので良く分かっていない。一説には、スズメの激減で農作物の害虫が増え、稲だけでなく野菜など他の農作物にも甚大な被害が及び、全国的に凶作となったためとも言われている[54]

食用スズメ 編集

京都府伏見稲荷名物として知られている。国産スズメを使用しているため数に限りがある[55]

韓国でも出している飲食店が多数ある[56]。串刺しにして焼き鳥のように調理するのがポピュラー。味は香ばしくて淡泊で、しっかり焼けば骨までカリカリにできる。調理方法は、お湯に浸して毛を毟り取り、内蔵を抜き取る。下ごしらえが済んだスズメを串に刺して焼く。味付けは、塩やスパイスを付けるとなお良い。ちなみに韓国では狩猟制限法により、一部地域を除きスズメの狩猟が禁止されている。このような事情により韓国産のスズメを求めるのは困難であるため、主に中国産スズメを輸入したものが多い。似た料理として、ホオジロ焼き、ヒヨコ焼き、ウズラ焼きなどもある[57]

北朝鮮では、冬になるとスズメ猟が盛んになり、スズメ焼きがよく食されている。11月から翌年2月にかけて、寒い時期に捕れたスズメが最も美味であるとされる。言い伝えでは、冬のスズメ焼きを子供が食すと、天然痘の予防になると云われている[58]

関連画像 編集

脚注 編集

  1. ^ a b IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2. (Passer montanus)” (英語). IUCN. 2012年1月2日閲覧。
  2. ^ a b 日本鳥学会(目録編集委員会) 編『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会、2012年、343頁。ISBN 978-4-930975-00-3 
  3. ^ a b c d e f g h i Clements, James (2007). The Clements Checklist of the Birds of the World (6th ed.). Ithaca, NY: Cornell University Press. p. 603. ISBN 978-0-8014-4501-9 
  4. ^ Brazil, Mark (2009). Birds of East Asia. Princeton University Press. p. 446. ISBN 978-0-691-13926-5 
  5. ^ 日本の鳥550 山野の鳥 (2004)、264頁、325頁
  6. ^ a b c d e f 高野伸二 『カラー写真による 日本産鳥類図鑑』、東海大学出版会、1981年、382頁。
  7. ^ a b 野山の鳥 (2000)、149頁
  8. ^ 橋本太郎「農村地帯に於けるスズメ群の生態 第一報 野外個体群の年令及び性の識別について」『鳥』第17巻第79号、日本鳥学会、1962年12月、163-171頁、NAID 40018168848 
  9. ^ 日本の鳥550 山野の鳥 (2004)、323-325頁
  10. ^ a b c 蒲谷鶴彦、松田道夫 『日本野鳥大鑑 鳴き声333 (下)』、小学館、1996年、136-137頁。
  11. ^ a b スズメの標識回収の検討(1924~'43) 山階鳥類研究所研究報告 Vol.4 (1964-1966) No.5 P397-402
  12. ^ 釣具店で売っているフナ釣り用の練り餌でもよい。
  13. ^ a b 三省堂編修所・吉井正 『三省堂 世界鳥名事典』、三省堂、2005年、290頁。ISBN 4-385-15378-7
  14. ^ a b c d 小海途銀治郎、和田岳 『日本 鳥の巣図鑑 - 小海途銀次郎コレクション』、東海大学出版会、2011年、294-295頁。ISBN 978-4-486-01911-4
  15. ^ 農商務省農務局「雀類ニ関スル調査成績」『鳥獣調査報告 第一號』農商務省、1923年
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  17. ^ 広島県にて発見された事例
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参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集