Shall we ダンス?

1996年公開の日本映画

Shall we ダンス?』(シャル ウィ ダンス?)は、1996年(平成8年)1月27日に公開された周防正行監督日本映画主演役所広司草刈民代大映(現:KADOKAWA)製作。東京都調布市角川大映スタジオで製作された。

Shall we ダンス?
Shall We Dance?
監督 周防正行
脚本 周防正行
製作 桝井省志
小形雄二
製作総指揮 徳間康快
出演者 役所広司
草刈民代
原日出子
竹中直人
田口浩正
徳井優
渡辺えり子
草村礼子
柄本明
音楽 周防義和
撮影 栢野直樹
編集 菊池純一
配給 東宝
公開 日本の旗 1996年1月27日
アメリカ合衆国の旗 1997年7月11日
上映時間 日本の旗 136分
アメリカ合衆国の旗 119分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 アメリカ合衆国の旗 950万ドル
配給収入 日本の旗 16億円
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社交ダンス教室を舞台としたハートフルコメディ日本アカデミー賞独占をはじめ数々の映画賞に輝いた。配給収入は16億円で1996年の日本映画第2位を記録[1]。本作の人気を受け、日本では「時代遅れ」と思われがちであった社交ダンスが見直され新たなブームとなった。

概要編集

世界19か国で公開され高い評価を得ており、アメリカ合衆国においては200万人を動員し、当時のアニメ映画を除く米国での日本映画の興行収入記録を作った。興行収入は約950万米ドル[2]。第14回ゴールデングロス賞優秀銀賞を受賞。

アカデミー外国語映画賞のノミネートを有力視する声もあったが、日本映画代表の一本に選ばれなかった[注釈 1]ため叶わなかった。また日本国内でのテレビ放送がアメリカ合衆国での映画公開前だったため、当時のアカデミー賞のノミネート規定に抵触し(アカデミー賞#基準も参照)、他の部門にエントリーする資格も得られなかった[3]

この作品に対し、映画監督のビリー・ワイルダーがコメントを残している。

「大好きな映画だ。あれは他の映画のまったく正反対を行っている。妻が夫に不審の念を抱く。探偵を雇い、…略…すばらしくおかしい。それに主人公が男としてしだいに美しくなっていくそのプロセスがいい」 — キャメロン・クロウ『ワイルダーならどうする?』宮本高晴訳、キネマ旬報

また周防監督は、キャロル・リード監督の恋愛映画フォロー・ミー』へのオマージュとして、探偵事務所のシーンでその映画のポスターを飾っている。

この映画のヒットを受けて、風俗営業法(風営法)でのダンス規制の見直しがなされた。劇中で22時にダンス教室が閉まるのは、当時の風営法による営業時間規制のためである。

なお、この映画の撮影終了直後の1996年3月9日に、周防監督と岸川舞役の草刈民代が結婚した。

アメリカ版とリメイク版編集

アメリカ映画版では、アメリカ合衆国における本作の配給を担当したミラマックスが「上映時間が2時間を超える作品はアメリカではヒットしない」と主張し、一時は独自編集版を公開しようと動くほどだった。最終的にミラマックスと周防の話し合いの結果、周防自らの編集により一部シーンがカットされ、上映時間が2時間以内(正確には1時間58分34秒[4])に収められている。周防はアメリカ映画版について、自著において「あくまでもアメリカであることを配慮した編集バージョンであるから、オリジナルを知る日本の方には観て欲しくない、というのが僕の本音である」と記している[4]

2004年には、ピーター・チェルソム監督、リチャード・ギア主演によるリメイク版『Shall We Dance?』が公開された。

テレビ放送と派生番組編集

地上波テレビでは、日本テレビの映画放送番組『金曜ロードショー』枠で1997年3月28日に初放送された(水野晴郎が番組最後の出演)。以降は数年に1回の頻度で放送されるようになり、1999年2月19日、2001年2月2日、2004年1月23日、2005年5月6日、2006年3月24日と、合計6回放送された。視聴率は、1997年3月28日では27.4%、1999年2月19日放送分では26.7%と2回、20%超えを果たした。

また、“Shall we ダンス?”は社交ダンスの代名詞ともなり、テレビ番組ではこの語句を冠した様々な社交ダンス企画や番組が派生した。最近では本作品名に近いタイトルの社交ダンス番組『“シャル・ウィ・ダンス?”』も登場した。

ストーリー編集

ボタン会社の経理課課長として、優しい妻やちょっぴり生意気だが可愛い一人娘にも恵まれ、念願だった庭付き一軒家も手に入れて、仕事や家庭に何の不満もない杉山正平。しかし、彼には満ち足りない何かがあった。正平はある日の会社の帰り、電車の中から見えるダンス教室の窓辺で物憂げに佇む女性岸川舞を見つける。その美しさに目を奪われた彼は、数日後そのダンス教室を訪れ、密かに社交ダンスを習い始めることにした。

家族にも会社にも内緒でダンスを習い始めた正平であったが、指導はベテランのたま子先生から受けることとなり当てが外れる。しかし偶然5年前から同じダンス教室を利用していた会社の同僚青木富夫、プライドが高く有閑マダム然とした高橋豊子といった個性的な仲間との交流を通じて、正平は次第に社交ダンスにのめり込んでいく。また、ある事件から周囲に心を閉ざしていた舞であったが、正平のダンスへのひたむきな姿を見るうちに、だんだんと心を開いてゆく。その一方で急に夫の帰宅が遅くなったことを心配した正平の妻は、私立探偵を雇い正平の浮気調査を始める。

舞らの後押しで、正平は豊子とペアを組んで「東関東アマチュアスポーツダンス大会」に出場し、観衆の前で特訓の成果を披露することになった。しかしクイックステップを踊っている最中、探偵に提案され会場に来ていた妻と娘の姿を見つけた正平は、動揺のあまり動きが止まり、直後に他のダンサーと衝突、転倒しかけたため身を挺して豊子を守った。しかしその際に正平が豊子の衣装を踏んだためスカートがはだけてしまい、周囲は静寂に包まれた。明らかに減点となり合格しないことを悟った豊子は茫然自失となりレオタードのままその場から立ち去ろうとしたが、正平は豊子のことを無意識に気にかけ、落ちて破れたスカートで豊子の下半身を隠すように勧めた。その姿を見た妻と娘も会場から立ち去る。

大会後に正平は妻から「かなり前からダンスをやっていることに気づいていたものの、怖くて告げられなかった」と伝えられる。正平は「ダンスは浮気じゃなかった。本気だった」と妻に謝罪し、もうダンスはやらないと告げる。

正平は意気消沈してダンス教室にも行かなくなっていたが、しばらくして正平の家に青木と豊子が訪問した。豊子は正平がドレスを踏んでしまった件を気にしていないことと、舞が教室を辞めて海外で再び社交ダンスをする決意をしたことを告げ、舞からの手紙を正平に渡す。妻は浮気調査をしていたことを詫びた上で、舞の送別会に行くよう、またダンスを続けるよう正平に勧める。正平は拒否するが、娘に「ダンスを踊るパパカッコよかったよ」と言われ、娘のサポートで庭に出て初めて妻とダンスを踊る。そして夫婦・親子の絆の大切さを知る。

それでも正平は、舞のお別れ会には行かないつもりでパチンコ店で時間を潰してから帰宅しようとするが、電車の中から社交ダンス教室を見上げると、窓に「Shall we ダンス?杉山さん」というメッセージが貼られているのを発見する。舞のラストダンスは舞が相手を決めることになった。そこに電車でメッセージを見かけたサラリーマンスーツ姿の正平が現れ、舞は笑顔で正平に「Shall we dance?」と尋ね、ラストのダンスシーンへと至る。

主題歌編集

ロケ地編集

キャスト編集

  • 役所広司(杉山正平)
  • 草刈民代(岸川舞)
  • 竹中直人(青木富夫:杉山の会社の同僚、ドニー・バーンズ(en)にあこがれている)
  • 渡辺えり子(高橋豊子:シングルマザーの中年女性ダンサー。大会出場の際、正平に亡夫のタキシードを貸す。)
  • 柄本明(三輪徹:三輪探偵事務所所長、昌子の依頼を受ける)
  • 原日出子(杉山昌子:正平の妻)
  • 仲村綾乃(杉山千景:正平・昌子の中学生の娘)
  • 森山周一郎(岸川良:舞の父親、岸川ダンス教室の経営者にして元全日本チャンピオン)
  • 徳井優(服部藤吉:正平と同じグループレッスン受講者、妻に誘われダンスを始める。小柄で講釈好き)
  • 田口浩正(田中正浩:正平と同じグループレッスン受講者、医者に運動を薦められた)
  • 草村礼子(田村たま子:ダンス教師「たま子先生」、『王様と私』を見たことをきっかけにダンスを始めたベテラン。グループレッスン担当)
  • 池村太郎(川合豊:ダンス教師、豊子の個人レッスンを担当)
  • 松阪隆子(服部房子:服部の妻、服部のダンスパートナー)
  • 原英美子(服部秋子:服部の姪、田中正浩のダンスパートナー)
  • 西野まり(高橋和歌子:豊子の娘、大学生)
  • 三澤理恵(小川鈴音:青木に頼まれて引き受けていたパートナーだったがすぐに解消する)
  • 宮坂ひろし(倉高健:通称マッチョ、青木のパートナーだったまりかと組む。大会で青木ペアを妨害し失格、まりかに平手打ちを受ける。)
  • 河内ゆり(北条まりか:青木のパートナーだったが「踊りが気持ち悪い」とペアを解消し倉高に乗り換える)
  • 井田国彦(金子貞二:正平の会社の経理課の部下)
  • 東城亜美枝(本田久子:正平の会社の経理課の部下)
  • 小形雄二(正平の会社の経理課の部下)
  • 長沢ひろこ(正平の会社の経理課の部下)
  • 下村敦子(正平の会社の経理課の部下)
  • 名越志保(正平の会社の経理課の部下)
  • 香川真沙紀(正平の会社の経理課の部下)
  • 伊藤葉子(正平の会社の経理課の部下)
  • 伊藤清道(正平の会社の経理課の部下)
  • 藤原豊志(正平の会社の経理課の部下)
  • 平山真一(正平の会社の経理課の部下)
  • 峰野勝成(正平の会社の経理課の部下)
  • よしきくりん(正平の会社の事務員)
  • 石井トミコ(原口春子:ダンスサークルで正平にダンスの相手を申し出る女性)
  • 川村真樹(三好栄子:ダンスサークルで田口にダンスの相手を申し出る女性)
  • 野間洋子(間宮文子:ダンスサークルで服部と踊った女性)
  • 香川京子(岸川恵子:舞の母親、2年前に他界)
  • 上田耕一(熊田寅吉:舞の生徒、豊子曰く舞目当て)
  • 代田勝久(坂本忠:舞の生徒)
  • 篠田薫(斎藤慎二:たま子の生徒)
  • 大貫花子(ダンス教室の生徒)
  • 久保田寧子(階段ですれ違う女)
  • 田中英和(岡田時彦、舞の元パートナー)
  • 田中陽子(岸川陽子:舞のいとこ)
  • 木原みずえ(鈴木奈美:ダンス教室アシスタント)
  • 畠山明子(小松亜矢:三輪探偵事務所デスク)
  • 峰野勝成(平山真一:三輪探偵事務所所員、三輪の助手)
  • 佐藤恒治(山田:豊子の配達先の花屋の若旦那)
  • 馬渕英里何(川内尚子:ダンスショップの女性店員)
  • 飯田晃子(ダンスショップ女性店員)
  • 高橋克美(スーパーマーケット主任)
  • 本木雅弘(木本弘雅、トップクラスのダンサー)
  • 清水美砂(歌姫ナツコ:ダンスホールの歌手)
  • 橋本一成(マンボの鉄:ダンスホールの参加者)
  • 宝井誠明(ダンスホールの参加者)
  • 片岡五郎(ブルースの丈:ダンスホールの参加者)
  • 石山雄大(ジルバの浜:ダンスホールの参加者)
  • 大杉漣(杉浦:ダンスホールのフロアダンスマネージャー)
  • 鷹西美佳(西鷹:ダンスホールのダンス教師)
  • 中川謙二(ホールの客)
  • パラダイス山元(ホールのダンスバンド、リーダー)
  • 東京ラテンムードデラックス(ホールのダンスバンド)
  • 園田ルリ子(ホールのダンスバンド)
  • 竹村孝(ダンス競技会のアナウンサー)
  • 本田博太郎(さよならパーティ司会者)
  • 岩田利典(特別講師・石田プロ)
  • 菅田貴恵(子供時代の舞)

製作スタッフ編集

舞台化編集

2013年宝塚歌劇団雪組によって初めてミュージカル化された。脚本・演出は小柳奈穂子

ダンス振付の著作権をめぐる訴訟編集

本作で振付を担当したわたりとしおは、映画の二次媒体での利用は振付の著作権を侵害しているとして、2008年4月に角川映画(現・KADOKAWA)を相手取り、損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こした[7][8]。2012年2月、東京地裁は振付の著作権を認めず、原告の請求を退ける判決を下した[8]

参考文献編集

  • 横森文・永野寿彦 編『Shall we ダンス? 周防正行の世界』(ワイズ出版、1996年) ISBN 4-948735-43-4
  • 周防正行 著、二見文子 訳『Shall we ダンス? シナリオ対訳』(愛育社、1999年) ISBN 4-7500-0042-6

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ 選出されたのは山田洋次監督の『学校II』であった
  2. ^ 映画『いつでも夢を』は日活調布撮影所で撮影された。
  3. ^ 撮影時に1階にあった江古田駅改札は、西武池袋線の高架化による駅舎改築で2階へ移設され、当時とは景観が異なっている。

出典編集

  1. ^ 1996年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  2. ^ Box Office Mojoより
  3. ^ 周防正行『「Shall we ダンス?」アメリカを行く』
  4. ^ a b 周防正行『「Shall we ダンス?」アメリカを行く』p.64
  5. ^ a b c “布田駅・京王多摩川駅の列車接近メロディーが映画の主題歌に変わります!” (PDF) (プレスリリース), 京王電鉄/調布市, (2020年2月6日), https://www.keio.co.jp/news/update/news_release/news_release2019/nr20200206_melody.pdf 2020年2月13日閲覧。 
  6. ^ (2月6日発表)布田駅・京王多摩川駅の列車接近メロディーが映画の主題歌に” (日本語). 調布市ホームページ (2020年2月6日). 2020年7月27日閲覧。
  7. ^ 産経新聞2008年5月25日
  8. ^ a b 東京地裁判決文

関連項目編集

外部リンク編集