ヒジキ鹿尾菜羊栖菜学名: Sargassum fusiforme)は、褐藻類ホンダワラ科ホンダワラ属海藻の1種である。波の荒い海岸近くの岩場の潮間帯付近に繁茂し、春から初夏に胞子嚢を付けて成熟する。

ヒジキ
Hijiki2.JPG
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryota
階級なし : ストラメノパイル Stramenopiles
: 不等毛植物門 Heterokontophyta
: 褐藻綱 Phaeophyceae
: ヒバマタ目 Fucales
: ホンダワラ科 Sargassaceae
: ホンダワラ属 Sargassum
: ヒジキ S. fusiforme
学名
Wikispecies-logo.svg Sargassum fusiforme
(Harv.) Setchell 1931[1][2]
シノニム

Hizikia fusiformis (Harvey) Okamura 1932[1][2]

日本では古くから「ひじきを食べると長生きする」と言われており、敬老の日にちなんで9月15日は「ひじきの日」となっている[3][4]

特徴編集

分布
日本では北海道から本州四国九州南西諸島奄美大島沖縄島)に、日本国外では朝鮮半島及び中国南部に分布する。
生育環境
潮間帯下部から低潮線の岩上に帯状分布する。
分類
ヒジキ属 Hizikia に含められていたが、(吉田 2001)による分子系統学的研究からホンダワラ属 Sargassum に含められた[5]
形態
長さは50センチメートルから100センチメートル。付着器は匍匐し糸状根となり、岩上に付着する。付着器からは1本-数本の主枝()を伸ばし、主枝からと小枝を出す。主枝は円柱状で太さ3ミリメートルから4ミリメートル。 葉はへら形で葉縁に鋸歯をもつ。ホンダワラ科に特徴的に見られる気胞はほとんど見られない。

保全状況評価編集

利用編集

日本国内で流通する食用ひじきの約90 %中国韓国[6]からの輸入品である。

2008年の統計では、乾物品が韓国から 25万5864キログラム、中国から 11万3313キログラム輸入された[7]

国内産ひじきはほぼ100 %天然産だが[8]、1990年代末頃から長崎県、徳島県、大分県などでワカメに代わる産物として養殖の為の技術開発が行われ[9][10][11]、2000年代前半には人工種苗をロープの撚りに挟み込む手法[12]などが確立され、2010年頃から市場流通している[13]

食用編集

ヒジキは主に食材として利用される。干ひじきほしひじきとして販売されることが多い。干ひじきは、水で戻してから醤油砂糖などで煮て食べる「ひじきの五目煮」が一般的である。近年はひじきご飯に加え、サラダ酢の物天ぷらなど幅広い料理に利用されている。

収穫編集

ひじきは通常3月から5月の大潮の干潮時に漁師や海女が磯にでて鎌などで刈り取って収穫する。地域によっては、寒中(11月から2月)に幼芽を収穫したひじきもある。

ひじきは、細長い茎の部分と葉や芽のように出ている部分を分離して製品化されることが多い。茎の部分だけにしたものを長ひじき茎ひじき糸ひじきなどという。芽の部分だけにしたものを芽ひじき姫ひじき米ひじきなどという。

加工編集

加工の方法は、主に伊勢方式と呼ばれる乾燥原藻を水戻しして蒸乾する蒸乾法と、煮乾法に大別される。煮乾法ではさらに、房州製法に代表される生原藻を煮乾する方法と、乾燥原藻を水戻しして煮乾する製法とに分かれる。なお、ヒジキは生きている間は茶色や褐色だが、加工するにつれて真黒になる。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)で加工において鉄釜だと58.2ミリグラムの鉄分を含むが、ステンレス釜だと6.2ミリグラムと発表された。しかし、文部科学省もこれらのデータは国産ひじきだけの数値であると発表しており、市場の9割近くを占める韓国産・中国産については触れていない。また、現状のひじき加工の主流である蒸乾法では加工時の容器の影響は受けにくいと考えられている。実際全てステンレス釜で加工した物で、国産:6.2ミリグラム、韓国産:59.7ミリグラム、中国産59.9ミリグラムとの数値である。市場シェアを加味した加重平均では、54.3ミリグラムの値が得られる。(国産(ステンレス釜):6.2ミリグラム × 9 %、国産(鉄釜):58.2ミリグラム × 4 %、韓国産:59.7ミリグラム × 40 %、中国産:59.9ミリグラム × 46 %)[17][18][19]

健康食品での利用編集

ひじきに微量に含まれるフコキサンチンは脂肪燃焼効果があることが解明されており、今後その利用が期待される。

無機ヒ素の含有率をめぐる動き編集

2001年10月カナダ食品検査庁 (CFIA)英語版 は、発癌性のある無機ヒ素の含有率が、ヒジキにおいて他の海藻類よりも非常に高いという報告を発表し、消費をひかえるよう勧告した[20]。これは複数の調査によって裏付けられ[21]イギリス[22]香港[23]ニュージーランドなどの食品安全関係当局も同様の勧告を発表した。

一方、日本厚生労働省は、2004年7月、調査結果のヒ素含有量からすると、継続的に毎週33グラム以上(水戻しした状態のヒジキ。体重50キログラムの成人の場合)を摂取しない限り世界保健機関 (WHO) の暫定的耐容週間摂取量を上回ることはなく、現在の日本人の平均的摂取量に照らすと、通常の食べ方では健康リスクが高まることはない、との見解を示した。また、海藻中のヒ素による健康被害があったとの報告はないとした[24](その他詳細は「ヒ素」を参照)。

参考文献編集

  • 千原光雄『標準原色図鑑全集 第15巻 海藻・海浜植物』保育社、1970年、47頁。NCID BN01960547
  • 吉田, 忠生「ヒジキの学名について」『藻類』第49巻第1号、2001年3月10日、 38-39頁、 NAID AN00134842
  • 香村, 眞徳『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』沖縄県文化環境部自然保護課編、2006年、419-420頁。NCID BA7370755X

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 吉田, 忠生、吉永, 一男「日本産海藻目録(2010年改訂版)」『藻類 Jpn.J.Phycol. (Sorui)』第58巻第2号、2010年7月10日、 69-122頁、 NAID 10026606743
  2. ^ a b Taxonomy browser (Sargassum fusiforme)”. NCBI. 2015年5月閲覧。
  3. ^ ひじきの日”. 日本ひじき協議会. 2020年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月25日閲覧。
  4. ^ 9月15日は三重県ひじき協同組合が制定したひじきの日。9月15日は旧敬老の日で、制定にあたってはミネラルや食物繊維が豊富なひじきを食べて健康に長生きをしてほしいという願いが込められたという。”. 日本食糧新聞電子版. 2021年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月25日閲覧。
  5. ^ (吉田 2001)(香村 2006より再引用)
  6. ^ “韓国における海藻養殖の現状”. 水産増殖 45 (4): 565-571. (1997). doi:10.11233/aquaculturesci1953.45.565. 
  7. ^ 農林水産物輸出入統計 貿易統計(輸入)2008年 政府統計の総合窓口 (e-Stat)
  8. ^ 産地日本ひじき協議会、2015年7月30日閲覧。
  9. ^ 伊藤龍星、褐藻ヒジキの挟み込み養殖と人工種苗生産に関する研究 長崎大学学位論文 (2010)
  10. ^ ヒジキ養殖試験への取り組み 北灘漁業共同組合
  11. ^ 難波信由ほか、岩手県越喜来湾における褐藻ヒジキの多回収穫型養殖 Sessile organisms 25(1), 17-23, 2008-02-29, NAID 10021215881
  12. ^ ヒジキ養殖マニュアル(平成27年3月) 愛媛県 農林水産研究所 水産研究センター
  13. ^ 鳥羽 種から養殖、ヒジキ収穫 若手漁業者ら手際よく 伊勢新聞 記事:2015/5/19
  14. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  15. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  16. ^ 吉江由美子「海藻の食物繊維に関する食品栄養学的研究」『日本水産学会誌』第67巻第4号、2001年、 doi:10.2331/suisan.67.619
  17. ^ 北村裕司「ひじきの鉄と国内市場の実態について」 (pdf) 『フードシステム研究』第23巻第3号、日本フードシステム学会、2016年、 295-298頁、 doi:10.5874/jfsr.23.3_1652018年9月13日閲覧。
  18. ^ ひじきの鉄分について”. 日本ひじき協議会. 2016年9月15日閲覧。
  19. ^ 柴山ロミオ (2016年2月21日). “ひじきの鉄分が9分の1に ?! 「ひじきは鉄分の王様」 は過去の話だったなんて…。”. tenki.jpサプリ. 2016年9月15日閲覧。
  20. ^ Canadian Food Inspection Agency (2001年10月). “INORGANIC ARSENIC AND HIJIKI SEAWEED CONSUMPTION”. 2008年10月20日閲覧。
  21. ^ Martin Rose; et al. (2007年1月18日). “Arsenic in seaweed—Forms, concentration and dietary exposure”. 2008年10月20日閲覧。
  22. ^ Food Standards Agency (2004年7月28日). “Arsenic in seaweed”. 2008年10月20日閲覧。
  23. ^ 食物環境衞生署 (2005年1月). “Issue No. 17: Hijiki and Arsenic”. 2006年9月1日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年10月20日閲覧。
  24. ^ 厚生労働省 (2008年7月30日). “ヒジキ中のヒ素に関するQ&A”. 2008年10月20日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集