ガールズバンド
ガールズバンド(girls band、英語: All-female band)とは、女性だけで構成されているバンドのことである[1]。楽器を演奏しない歌だけのガール・グループとは区別される[1]。ガールズ・バンドとも表記され、また女子バンド、フィメール・グループ、ギャルバンとも呼ばれる[1]。

呼称編集
日本では、プリンセス プリンセスのようにオーディションでメンバーが選ばれたバンドや、初期のZONEのように楽器を持っているだけで演奏していないユニットのことをガールズグループとの差別化を図るためにガールズバンドと呼ぶ場合もあった。一方でアイドルっぽさやポップさを基調にしていない、技術や音楽性を重視するバンドの事を特に「ガールズロックバンド」と呼ぶこともある。
日本のガールズバンドは、「ガール」を「ギャル」と俗称し、「ギャルバン」と略称されることもある。
歴史編集
北米編集
アメリカ合衆国における初期のガールズバンドとしては、1950年代の「International Sweethearts of Rhythm」が挙げられる。彼女らは第二次世界大戦の時期に最大17人を誇るビッグバンドとして名を馳せ、現在でもその名を残している。その後は1960年代のガレージロック・ブームに多くの女性バンドが登場した。中には、女性ロックミュージシャンの草分け的存在であるスージー・クアトロが在籍していたガールズバンド「プレジャー・シーカーズ」、ビルボードホット100のトップ40入りを果たし、ガールズバンドとして最初に商業的成功をした「ファニー」などがいる。
1975年、近年のガールズロック・スタイルの元祖ともいえるバンド「ザ・ランナウェイズ」[2]が結成される。
1978年には「Go-Go's」が、1981年には「バングルス」が結成される。
ガールズメタルの分野では、1980年に「ヴィクセン」が登場。
パンクにおいては、1990年代初頭にフェミニズムと結びつきライオット・ガールと呼ばれるムーブメントに発展した[3]。
ヨーロッパ編集
1975年、英国にて「Painted Lady」が発足し、1978年にガールズメタルの草分け的存在「ガールスクール」へと発展。
日本編集
1970年代に日本ではメンバーが女性だけのガールズバンドが結成されはじめる。詳細は後述。
日本のガールズバンド編集
日本においては1975年前後より女性だけのアマチュア・バンドがいくつか登場したものの、本格的なガール・ロック・バンドとしては1977年にメジャーデビューしたガールズが最初のものであるとされる[4]。その後、ZELDA、水玉消防団、タンゴ・ヨーロッパなどによりガールズ・バンドのステイタスが確立されていった[5]。
1981年に結成された少年ナイフは1980年代に海外進出を果たし高い評価を受けた[6]。1985年にはSHOW-YA、1986年にはプリンセス プリンセスがメジャーデビューし、ガールズバンドブームを起こす[7]。1988年にはGO-BANG'Sがメジャーデビュー。1989年からTBSテレビで放送された三宅裕司のいかすバンド天国にも、PINK SAPPHIRE、NORMA JEAN、THE NEWS、マサ子さん等のガールズバンドが出場した。1991年には女性版B'zのようなハードロックデュオとして、ビーイングからKIX-SやMANISHがデビューした。
1997年にはガールズバンド専門レーベル「ベンテン・レーベル」が設立され、ロリータ18号、つしまみれ等が所属する。1990年代は少年ナイフ、チボ・マット、Buffalo Daughter等のガールズバンドは日本国外で高評価を受けた[8]。
2000年代前半には、THE★SCANTY、Whiteberry、ZONE等が活動していた。特にZONEはもともと「演奏するふりをしながら踊る」というグループであったが、3枚目のシングル「secret base 〜君がくれたもの〜」より実際にメンバーが演奏するようになり、アイドル性も兼ね備えたガールズバンドを意味する「バンドル」としての地位を確立[9]。同作から解散後に発売されたベストアルバム『E 〜Complete A side Singles〜』までの全てのCDでオリコンチャート10位以内を記録した。2005年には中ノ森BANDがデビューし、「Oh My Darlin'」で第47回日本レコード大賞新人賞、「Fly High」で第48回日本レコード大賞金賞を受賞するも、2008年に解散する。
またこの頃、チャットモンチー、SCANDALなど後のガールズバンドブームをけん引するバンドが結成された。2000年結成のチャットモンチーは2008年にはガールズバンド史上最速のメジャーデビューから2年4か月での日本武道館2days公演『チャットモンチーのすごい2日間 in 日本武道館』を開催。2006年結成のSCANDALは2008年にメジャーデビューし、第51回日本レコード大賞新人賞を受賞する。2012年にはガールズバンド史上最速の結成から5年7か月での日本武道館公演『SCANDAL JAPAN TITLE MATCH LIVE 2012 -SCANDAL vs BUDOKAN-』を開催。
2010年代にはSCANDALやアニメ『けいおん!』の影響でガールズバンドブームが再来[8] チャットモンチー、SCANDALを筆頭に、赤い公園、ねごと、FLiP、LoVendoЯ、tricot、Chelsy、がんばれ!Victory、Poppin'Party、SILENT SIREN(旧:Silent Siren)、SHISHAMO等様々な音楽性のガールズバンドが活躍する。 特にSilent Sirenは、『Silent Siren Live Tour 2014→2015冬 ~武道館へ GO! サイレン GO!~』のファイナルとして、メジャーデビューから2年2か月での日本武道館公演を行う。Poppin'Partyも、『BanG Dream! 4th☆LIVE Miracle PARTY 2017! at 日本武道館』として、ガールズバンド史上最速のメジャーデビューから1年6か月での日本武道館公演を行った。なお、Poppin'Partyが初の武道館公演を行う以前は、SILENT SIRENが最速だった。2019年には、SILENT SIRENとPoppin'Partyが共に初のドーム公演となる対バンライブをメットライフドームにて行われた。
また、SCANDALは2010年から2015年まで年1回、女子中高生のみ、あるいは女子高生が所属する男女混成バンド限定の『コピーバンド・ヴォーカリストコンテスト』を開催、決勝進出者のうちたんこぶちん、KANIKAPILAは後にメジャーデビューした[10][11]。その後もかつてメンバーが通っていたダンス&ヴォーカルスクールからGIRLFRIENDがメジャーデビューを果たすなど、SCANDALはガールズバンドシーンの拡大に大きな影響を与えたバンドとなっている[12]。また、この時期にはアイドルとバンドの接近も進み、SILENT SIRENやLoVendoЯなどTOKYO IDOL FESTIVALに出場したガールズバンドもある[13][14]。
一方でCyntia、Mary's BloodなどHR/HMを専門とするガールズバンドは「ガールズメタル」または「嬢メタル」とも呼ばれる新たなジャンルを形成しており、海外のHR/HM界には見られない日本独自のスタイルとして成長。特にBAND-MAIDはメイド服を着用してハードロックを演奏するというギャップが話題となり、主に海外において高い評価を受けている[15][16]。また2018年にはLOVEBITESが、日本のガールズバンドとしては初めて欧州最大級のメタルフェス「ヴァッケン・オープン・エア 2018」への出演を果たした[17]。
ガールズバンドという呼び方への否定的な意見編集
以下のように、性別でバンドを括ることについて否定的な考えを持つ人たちも存在している。
- BRATSは、インタビューにおいて「ガールズバンドという言葉で括られたくない」「ガールズバンドというルックスを中心に見られるような、それで判断されるようなバンドにはなりたくない」「ガールズバンドと普通のバンドと何が違うのかわからない。バンドはバンドなのになんで男か女かで区別されなければいけないの」「性別で見方を変えているのはちょっと違うと思う」「普通に"ロックバンド"でいいと思う」と発言している[18]。
- LOVEBITESは、インタビューにおいて「なんだよ、ガールズ・メタル・バンドっていうジャンルって」「"女性ヴォーカルのバンドなんだ? 日本人なんだ?"くらいに思ってもらえればいい」「"ガールズ"っていうのを排除したい」と発言している[19]。
ガールズバンドをテーマにした作品編集
- Ladies and Gentlemen, The Fabulous Stains[20] - 1982年のアメリカ合衆国の映画。
- イカれた主婦の反乱 - 1991年4月26日に2時間ドラマでフジテレビにて放映。夫に不満の妻たちが日ごろのうっぷん晴らしにロックバンドを結成する。
- プッシーキャッツ[20] - 2001年のアメリカ合衆国の映画。
- リンダリンダリンダ[21] - 2005年公開の日本映画。
- サイダースファンクラブ[22] - 小坂俊史作の4コマ漫画。
- キラ☆キラ[23] - OVERDRIVE作のアダルトゲームに登場する架空のバンド「第二文芸部」は、実際にCD・DVDをリリースしている。
- PLAY![24] - 花見沢Q太郎作の漫画。
- けいおん![25] - かきふらい作の4コマ漫画。および、同作を原作とするアニメーション作品。上記するように2010年代のガールズバンドブームの火付け役ともなった[8]。バンド名は放課後ティータイム。担当声優らによる同名バンドも2009年から2012年初頭にかけて活動した。
- プレイ・フォー・ラケンロゥル - ジーナ・ガーションが主演した、2003年公開のアメリカ合衆国の映画 (日本劇場未公開)
- パセリ - 2007年に制作された日本のテレビドラマ(UHFドラマ)。
- 1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター - 五十嵐貴久作の小説。富樫じゅん作画のコミック版もあり。2009年には「輝け!主婦バンドFOUR RIVERS スモーク・オン・ザ・ウォーター2009」のタイトルで舞台化された。
- ランナウェイズ (映画)[26] - 2010年に公開されたアメリカ合衆国の映画。ザ・ランナウェイズの伝記映画。
- SHOW BY ROCK!![27]
- BanG Dream![28] - 月刊ブシロードで2015年2月号から2016年1月号まで連載されていた漫画「BanG_Dream! [星の鼓動]」および同誌でのイラスト連載を原作とするメディアミックス作品。2010年代後半のガールズバンドの火付け役となっている。「キャラクターとリアルライブがリンクする! 次世代のガールズバンド・プロジェクト」と銘打って、各キャラクターを担当する声優が実際にバンドを組み、定期的にライブを開催、2016年よりシングルCDをリリースしている。2017年からはテレビアニメが放送されたほか、アプリゲームも配信されている。
- ぼっち・ざ・ろっく! - はまじあき作の4コマ漫画。および、同作を原作とするアニメーション作品。
- 絶叫パンクス レディパーツ![29] - 2021年のイギリスのドラマ。
脚注編集
- ^ a b c ガールズ・バンド | 時事用語事典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス. 2021年10月22日閲覧
- ^ “元ザ・ランナウェイズのシェリー・カーリー、がんと闘病中のバンドの恩人を自宅で看護”. RO69. 2015年3月8日閲覧。
- ^ ““Riot Grrrl(ライオット・ガール)”とは?”. CDJournal (2006年3月31日). 2021年1月7日閲覧。
- ^ 篠原章『J-ROCKベスト123 1968-1996』講談社文庫、1996年、226頁
- ^ 『Jロック&ポップスCD名盤ガイド』立風書房、2001年、203頁
- ^ 少年ナイフ、FACT、Taffy、BO NINGEN……海外で評価されている“逆輸入バンド”まとめ - Real Sound|リアルサウンド(2014年1月29日). 2021年10月25日閲覧
- ^ “SHOW-YA・寺田恵子が明かすプリプリとの本当の仲~80年代バンドブームの実情”. ORICONSTYLE. 2015年3月8日閲覧。
- ^ a b c “ガールズロックが世界を変える! ぴあ的ガールズバンドのススメ 2013”. チケットぴあ. 2015年3月8日閲覧。
- ^ ZONEからSCANDAL、BABYMETALへ…人気急上昇中のバンドアイドル=バンドルを徹底解説![リンク切れ]
- ^ SCANDAL、今年で最後の「SCANDALコピーバンド/ヴォーカリスト・コンテスト」応募概要を発表. OKMusic. (2015年07月10日).2021年10月24日閲覧
- ^ CANDAL、コピバンコンテスト最終回で「またやりたいね」 | BARKS(2015年11月5日). 2021年10月24日閲覧
- ^ 平均年齢16歳のバンド"GIRLFRIEND"が語る、シングル、楽器、メンバー全員好きなこと[リンク切れ]
- ^ 【TIF2014】ロックがTIFに残した足跡 田中れいな率いるLoVendoЯに熱狂. KAI-YOU. (2014年8月4日). 2021年10月24日閲覧
- ^ 総勢154組出演「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」終幕. 音楽ナタリー. (2015年8月8日). 2021年10月24日閲覧
- ^ 今“ガールズメタル”がキテる!欧米メタル界とはひと味違う 日本産の華やかで刺激的なバンドを徹底解剖![リンク切れ]
- ^ ギャップ萌えは世界共通だった?BAND-MAIDが海外でウケたワケ. CINRA.(2016年5月20日). 2021年10月24日閲覧
- ^ LOVEBITES、世界最大級のメタルフェスティバルに出演「この場に立てて本当に幸せです!」. BARKS.(2018年8月6日). 2021年10月24日閲覧
- ^ “強烈な個性を放つBRATSに直撃インタビュー「私たちはガールズバンドじゃない」”. SPICE(スパイス) (2017年6月16日). 2017年6月23日閲覧。
- ^ “華やかに、テクニカルに、メガトン級のパンチでヘヴィ・メタル・シーンど真ん中を射抜く超正統派!”. 檄ロック (2017年10月17日). 2017年10月17日閲覧。
- ^ a b “Six of the best films featuring all-female rock bands”. Little White Lies. 2022年6月23日閲覧。
- ^ 即席ガールズバンドがブルーハーツをコピー! ――「リンダ リンダ リンダ」. ITmedia NEWS. (2006年2月2日). 2021年10月23日閲覧
- ^ サイダースファンクラブ(1)|コミック|竹書房 -TAKESHOBO-. 2021年10月23日閲覧
- ^ PCで人気を博した泣きゲー『キラ☆キラ』がiPhoneに登場! もう涙が止まりません. ファミ通App. (2012年4月15日). 2021年10月23日閲覧
- ^ PLAY! 第1巻( 花見沢Q太郎 ) | 少年画報社. 2021年10月23日閲覧
- ^ 「けいおん!は生きがい」 最終回前に盛り上がり、実写版作るファンも. ITmedia NEWS. (2009年6月16日). 2021年10月23日閲覧
- ^ 1970年代の日本で女性に大人気!元祖ガールズバンドのザ・ランナウェイズ|シネマトゥデイ.(2010年3月26日). 2021年10月23日閲覧
- ^ サンリオ発インディーズバンドあるあるアニメ「SHOW BY ROCK!!」 - エキサイトニュース. (2015年5月10日). 2021年10月23日閲覧
- ^ BAND-MAID、LOVEBITES、RAISE A SUILEN……ハードなロックサウンドで世界を狙うガールズバンドの活況 - Real Sound|リアルサウンド(2021年9月27日). 2021年10月23日閲覧
- ^ “ドラマ『絶叫パンクス レディパーツ! We Are Lady Parts』感想”. シネマンドレイク (2022年6月13日). 2022年6月23日閲覧。
関連項目編集
- NAONのYAON
- バンドル (アイドル)
- ピンキー・チックス - 1960年代後半に活躍した女性だけのグループサウンズ・バンド。
- ボーイ・バンド