ドクター・ストレンジ

アメリカの漫画作品に登場する架空のヒーロー

ドクター・ストレンジ(Doctor Strange、略称はDr.ストレンジ)は、アメリカ合衆国マーベルコミックスが刊行しているアメコミに登場する架空のスーパーヒーロー

ドクター・ストレンジ
出版の情報
出版者 マーベルコミックス
初登場 Strange Tales #110 (July 1963年6月)
クリエイター スタン・リー
スティーヴ・ディッコ
作中の情報
本名 スティーヴン・ヴィンセント・ストレンジ
所属チーム ニューアベンジャーズ
イルミナティ
ディフェンダーズ
ナイトストーカーズ
ミッドナイト・サンズ
能力 魔法

マーベルが発行する『Strange Tales』の118号(1964年)から初掲載。掲載誌が168号(1968年)以降の169号から雑誌名を『DOCTOR STRANGE』に改めて単独刊行された。

概要編集

本名はスティーヴン・ヴィンセント・ストレンジ (Stephen Vincent Strange)。

天才的な脳外科医として全米に名声を轟かせていたストレンジは、自動車事故で両腕に大怪我を負ってしまい精密な腕の動きができなくなってしまう。脳外科医を辞めたが、キャリアが原因でプライドが高くなりすぎて普通の勤務医になれず、失業し貧困に苦しめられていた。そんな時、どんな傷をも治せる魔術師がチベットに居ることを聞きつけた彼は、藁にもすがる思いでチベットに赴く。

チベットの魔術師エンシェント・ワンは、紛れも無く本物の魔法・魔術を扱う魔術師であった。ストレンジの中に何かを感じ取ったエンシェント・ワンは、治療の代償としてストレンジに弟子入りを持ちかける。最初はそれを断ったストレンジだったが、ブリザードによる足止めの最中、エンシェント・ワンの弟子・モルド男爵が、師に向けてスケルトンを召喚し嗾(けしか)ける様子を目撃する。

すぐにエンシェント・ワンにそのことを知らせようとしたストレンジだったが、モルドの魔法で身動きがとれなくなる。ところが、エンシェント・ワンはスケルトンの攻撃をあっさり退けてみせた。エンシェント・ワンの力に驚き、同時にモルドの悪意ある魔術に落胆するストレンジ。しかし、「自らの師を襲う」というモルドの行動に疑問を抱いたストレンジは、その理由の中にこそ彼を止める方法があると考え、エンシェント・ワンの弟子として魔術を学ぶことを決意する。

7年間の修行の末に魔術を会得したストレンジは、魔術を正しきことに使うため「ドクター・ストレンジ」を名乗ってヒーロー活動を開始する。

その後、エンシェント・ワンが魔神シュマゴラスと刺し違えて死亡したため、現在ではマーベル最高の魔術師「ソーサラー・スプリーム」となっている。

能力編集

魔術
ストレンジの最大の力。魔力によって様々な超常的現象を起こすことができる。
具体例
  • 魔法によるバリア
  • 空間跳躍による瞬間移動
  • 飛行能力
  • 催眠術
  • 念動力
  • 黒魔術
通常の魔法では起こせない程の超常現象を扱うことができる強力な黒魔術。使用には強い副作用が生じ、現世への悪影響も大きい為、ストレンジは滅多に使おうとはしない。ストレンジ自身もこれを嫌っている節がある。
人柄
自らの努力で長い修行の末に力を手に入れただけあって「人生経験」が豊富で、リーダーとしての資質を備えている。多くのヒーロー達の相談相手となっており、彼らが様々な困難に直面した際には彼らを導く存在として頼りにされている。
格闘術
魔法を使わずとも、普通の人間では最高レベルと言えるほどのそれを有している。魔法が使えなくなった時の為にエンシェント・ワンが教えた。
不老
魔法の修行のおかげでストレンジは歳をとらなくなっている。しかし、不死ではない。マーベルユニバースの在り得たかも知れない未来を描くシリーズ『アースX』では、意識不明の昏睡状態のまま生き続けていた。
テレパシー
魔法を使わずとも、思念を飛ばして離れた人間と会話することが可能。
可視光線以外の光線を視認することができ、また透視能力によって隠された罠等を見破ることもできる。
占星術
近い未来を予知出来るレベル。

他のバージョン編集

プロトタイプ編集

スタン・リーの『テイルズ・オブ・サスペンス』で、ロバート・バーンスタインとジャック・カービーは「カール・ストレンジ」という犯罪者の科学者を紹介した。落雷の影響によってそのキャラクターは、高い知能を獲得し、世界征服を試みたが、アイアンマンによって倒された。そのストーリーはドクター・ストレンジがデビューする2カ月前に描かれた[1]

1602編集

リミテッド・シリーズの『マーベル1602』で、「スティーブン・ストレンジ卿」は専属医師兼魔術師としてエリザベス1世に仕えた[2]

マーベル2099編集

スパイダーマン2099』では身体を悪霊と共有する女性のストレンジとして登場した[3]

ドクター・ストレンジの交友関係編集

エンシェント・ワン(Ancient One)
Dr.ストレンジの魔術の師匠。500歳以上の年齢で、長期にわたり地上を悪魔などの侵略から守ってきた偉大な魔道師「ソーサラー・スプリーム」。強力な魔術師である自身の身体を媒介にシュマゴラスが地球に侵入しようとした際に、エンシェント・ワンの精神世界で阻止しようとDr.ストレンジが苦戦を強いられる中、自らの提案でシュマゴラスを道連れにストレンジの手で自決。死の間際、Dr.ストレンジに「エンシェント・ワン」の称号とその力の一部を譲り渡し、大地と一体となる。その後、何度か霊的存在として姿を現している。
クレア(Clea)
ストレンジにとって、カオスディメンションにおける唯一の盟友である女性。同時に弟子であり恋人でもある。強敵ウマールの娘でドーマムゥの姪にあたり、元々は敵だった。その後、母に対して反旗を翻し、ストレンジに協力するようになった。後のカオスディメンションの女王として迎えられている。ディフェンダーズにも参加していたこともある。
ディフェンダーズ(Defenders)
Dr.ストレンジが中心となって、超自然の驚異からこの次元を守る為に結成したヒーローチーム。初期メンバーは、ハルクシルバーサーファーネイモアX-メンアイスマンやエンジェル、他にはハワード・ザ・ダックなどもかつて所属していた。
ファンタスティック・フォー(Fantastic Four)
マーベル最古のヒーローチーム。超科学を駆使するリーダーのMr.ファンタスティックは、Dr.ストレンジとは対極の力を駆使するヒーローであるが、互いを認め合う良き友人である。
アベンジャーズ(Avengers)
キャプテン・アメリカらが中心となって活躍する、マーベルで最も尊敬を集めるヒーローチーム。ストレンジはメンバーらに多岐に渡る助言をしており、ディフェンダーズとの共闘も多い。
X-MEN
ミュータントによるヒーローチーム。ストレンジとは様々な場面で協力し合っており、助言を求められることも多い。メンバーのひとりであるサイロックを治療した際に、魔力の影響で彼女が瞬間移動能力を得た。
イルミネイティ(Illuminati)
クリー=スクラル戦争(Kree-Skrull War)を契機として結成された影のコミュニティ。マーベルユニバースの大きな勢力を持つヒーロー達の長によって構成されており、大きな事変が起こった際に秘密裏に連絡を取り合い、それを正しい方向に導くべく活動している秘密結社的存在である。伝説的なクロスオーバー『インフィニティ・ガントレット』事件後に、絶大な力を秘めた6個の宝石「インフィニティ・ジェム」をそれぞれのメンバーが封印する役割を担った。
メンバーは以下の通り
  • ディフェンダーズのリーダー、Dr.ストレンジ
  • X-メンの創始者、プロフェッサーX
  • アベンジャーズのビッグ3、アイアンマンことトニー・スターク
  • ファンタスティック・フォーのリーダー、Mr.ファンタスティックことリード・リチャーズ
  • 月の超人類インヒューマンズのリーダー、ブラックボルト
  • 海底王国アトランティスの王子、ネイモア・ザ・サブマリナー

ヴィラン編集

モルド男爵(Baron Mordo)
本名:カール・アマデウス・モルド(Karl Amadeus Mordo)
ストレンジの兄弟子である、トランシルヴァニア人の貴族出身の男。最初からドーマムゥの手下であり、エンシェント・ワンに弟子入りした後も師の命を狙っていた。しかし、エンシェント・ワンはそのことを全て知った上でモルドを弟子におき、彼を改心させようとしていた。Dr.ストレンジがヒーロー活動を開始した後には、敵として何度も戦うことになった。ストレンジと同門であるが故に同じ魔法を扱うことができ、催眠術と占星術に特に優れている。また、ストレンジが滅多に使おうとはしなかった黒魔術や悪魔召喚等を積極的に使っていた。黒魔術の副作用と末期癌に侵されて死去。死の間際、自らの人生を思い返して悔い改め、悪の道から離れた。
ドルマムゥ/ドーマムゥ(Dormammu)
燃え盛る頭を持つ異次元のロボット。元々は、ファルティナと呼ばれるエネルギー集合体の一つだったが、実体を得てドルマムゥになった。エネルギー体であることを主体とするファルティナの中で肉体を得ようとしていた異質な存在であり、他のファルティナ達から異次元カオスディメンション[4]を追放されていたが、力を溜めて現実界への侵攻を繰り返すようになった。元々がエネルギー体である為、自らの質量を自由に変化させることが可能で、魔術に似た能力で爆発を引き起こしたり、時間移動することが可能。高い戦略的知識を持っている、Dr.ストレンジにとって最も古い強敵の一人。
ウマール(Umar)
ドーマムゥの妹でクレアの母。ドーマムゥと同質の存在である。
シュマゴラス(Shuma-Gorath)
異界カオスディメンションに棲まう混沌の神で、幾多もの次元を支配しており、太古の地球でも生物を捕食するなど絶対的な存在であった。見た者が恐ろしいと感じる姿をとる(作中の初出では、Dr.ストレンジには髭の生えた巨大な男の顔に見えた)。その正体は巨山のように巨大で、一つ目のある球体に無数の触手が生えている。
初登場時は捕らわれたエンシェント・ワンを媒介に現世に出現しようとする。Dr.ストレンジはエンシェント・ワンの精神世界で迎撃を試みるも苦戦し、最終的にエンシェント・ワンの犠牲で食い止める。3度目の登場でシュマゴラスが存在する常人が立ち入れない混沌の異界での戦いで互角の強さとなったDr.ストレンジを認め、シュマゴラスの作り出した「本物の地球に損害が反映される疑似地球」で防戦を強いるが、覚悟を決めたストレンジが逆にエネルギーに変換して直撃。それによる疑似地球からの地球への損害で多大な犠牲が出る中ようやく撃退される。以後のマーベル作品でも正体の姿で少ないながら登場しており、Dr.ストレンジ本編でも第388号(2018年)で4度目の再戦を果たす。
大元はクトゥルフ神話のグレード・オールド・ワンの神性の一体、シュブ=ニグラス(およびシュマ=ゴラスの書。これ自体はコナン・ザ・バーバリアンでも登場)。
ナイトメア(Nightmare)
死の女神 デス(Death)
死を司るコズミック・ビーイング。

出版物編集

シリーズ・ミニシリーズ編集

Strange Tales #110-111、114-168 (1963年7-8月、1963年11月-1968年5月)
Doctor Strange) #169-183 (1968年6月-1969年11月)
Doctor Strange (vol.2) #1-81 (1974年6月 - 1987年2月)
Strange Tale) #182-188 (1975年11月-1976年11月; reprints only)
Dr. Strange Annual (1976)
Doctor Strange Classics #1-4 (1984年3月-6月; reprints only)
Strange Tales (vol.2) #1-19 (1987年4月-1988年10月)
Doctor Strange (vol.3) #1-90 (1988年11月-1996年6月)
Doctor Strange: Sorcerer Supreme #1-4 and Dr. Strange: Sorcerer Supreme #5-90 (Note: Following issue #4, subtitle appears only sporadically)
Dr. Strange: Sorcerer Supreme Annual #2-3 & Doctor Strange: Sorcerer Supreme Annual #4 (1992年-1994年)
Doctor Strange: Sorcerer Supreme Special (1992年)
Secret Defenders #1-25 (1993年3月-1995年3月)
Doctor Strange: The Flight of Bones #1 - 4 (1999年2月-5月)
Witches #1-4 (2004年8月-11月)
Strange #1-6 (2004年11月-2005年6月)
X-Statix Presents Deadgirl #1-5 (2005年12月-2006年4月)
Doctor Strange: The Oath #1-5 (2006年10月-2007年5月)

読み切り・グラフィックノベル編集

Giant-Size Dr. Strange #1 (1975年; reprints only)
Doctor Strange Special Edition #1 または Dr. Strange/Silver Dagger Special Edition #1 (1983年3月)
Marvel Graphic Novel #23: Doctor Strange: Into Shamballa (1986年、グラフィックノベル)
Doctor Strange and Doctor Doom: Triumph and Torment (1989年、グラフィックノベル)
Doctor Strange & Ghost Rider Special #1 (1991年4月; reprints only)
Spider-Man / Dr. Strange: The Way To Dusty Death (no number; 1992年)
Dr. Strange vs. Dracula #1 (1994年3月; reprints only)
Dr. Strange: What is It that Disturbs You, Stephen? (no number; 1997年10月)
Custom: Lions Gate Dr. Strange #0 (prologue to the animated feature as well as four-page story by the "The Oath" team; came with the animated "Iron Man" DVD; Jan. 2007)

コレクテッドエディション編集

ソフトカバー
  • Doctor Strange (Vol. 1) (1963-1968) Strange Tales #110-111, 114-168 (2002). ISBN 0-7851-2316-4
  • Doctor Strange (Vol. 2) (1968-1974) Doctor Strange #169-178, 180-183, Avengers (vol. 1) #61, Sub-Mariner #22, Hulk (vol. 1) #126, Marvel Feature #1, Marvel Premiere #3-10, 12-14. (2005) ISBN 0-7851-1668-0
  • Doctor Strange (Vol. 3) (1974-1978) Doctor Strange #1-29, Annual #1, The Tomb of Dracula #44-45. (2007) ISBN 978-0785127338
  • Doctor Strange (Vol. 4) (1978-1981) Doctor Strange #30-56, Chamber of Chills #4, Man-Thing #4 (2009). ISBN 978-0785130628
ハードカバー

MCU版編集

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)では、ベネディクト・カンバーバッチが演じる。日本語吹替は三上哲が担当。

キャラクター像編集

『ドクター・ストレンジ』の前半までは神経外科医兼医学博士[5]として、中盤以降からは“マスター・オブ・ミスティック・アーツ”に属する魔術師として登場する。

物静かに振る舞いながらも、ジョークを飛ばしたりするユーモアや、来客に飲み物を振る舞うほどの心遣い[注釈 1]までを持ち合わせている反面、自身の呼び名に“ドクター”をつけて呼ぶようにと他者へ注文するほど強くこだわり[注釈 2]、上から目線な発言が多く、自分より医療技術が劣る同僚を揶揄うほど自信とプライドに満ち、疑り深く自分の常識に反するものを容易に信じようとせず、手術中にも嗜好する音楽を流し、オペへの参加を決められる権利から回復の見込みが高い患者の手術だけを行ない[5]、自分の利にならない案件は断っていたなどかなり傲慢な男で、その傲慢さはトニー・スターク/アイアンマンとよく似ている・もしくは彼以上である。

だが事故によって負傷した両手の治療のために訪ねた“カマー・タージ”で、自身の常識を覆されるほど魔術に魅了され、厳しい修行の末に魔術を習得し魔術師へと転身。門徒の頃から着用している青い道着に身を包み、恩師となったエンシェント・ワンからサンクタム・サンクトラム(ニューヨーク)の主にも任じられ、この次元を侵略しようとする外敵に対抗する使命に目覚める。

能力編集

予想外の出来事にも即応できる柔軟な対応力や、天才的頭脳から発揮される瞬間的記憶力を持つ。

外科医時代は難易度の高い数々の手術を成功させてきたほどのさまざまな医術と知識を持ち、その腕前は“神の手”とも称されていたが、交通事故により両手の神経が完治不能となるくらいに損なわれてしまったため、現在では医療に関する技術は失われてしまった。

魔術の修行に励んでからは、“マスター”の称号を1年足らずで取得して魔術師に転身し、同時期の“ゼロッツ”との戦いでは実戦経験が皆無だったことも手伝って相手と大きく距離をとりながら応戦するのがやっとだったが、その後も魔術師の使命を全うしながら修行を続けて多彩な魔術を覚えたことで、サノスらとの戦いの頃には「最強の魔術師」を自称し、正面切って戦いを挑むほど熟練の魔術師となった。

魔術/ミスティック・アーツ編集

古来より伝えられてきた、“多元宇宙(マルチバース)”にアクセスし強力なパワーを引き出すための技法。修行を積んでいくことによって、機能を失った身体の一部を魔力によって再び動かすことや他の次元に干渉できるほどの超常的なパワーを発現することも可能となる。

本項では、ストレンジが後述のレリックを使用せずに発動できる魔術を紹介する。

エルドリッチ・ライト
多次元宇宙のエネルギーを引き出して発する、魔術師たちの基本的な戦法でもある魔術。人の目には輝くオレンジ色の光として映り、魔術師は戦闘時にこの光で魔法円を展開し、それをさまざまな武器や防具の形に変えて装備する。
ストレンジは主に殴打・拘束のためのや、投げ込んで足場としても利用できるを作り上げて装備するほか、刀剣も作り上げて攻撃したことや、浮かび上がった多数の岩を飛び移りつつ敵へ向かうエネルギー波を放ったこともある。
アストラル投射
“アストラル体”と呼ばれる精神体を肉体から分離させて“アストラル次元”へ移す魔術。建物などの構造物を無視して自在に移動することができる。
瞬間移動
サンクタム・サンクトラムに案内したソーを館内の各所へ次々とワープさせた魔術。
衣服の瞬間着用
ストレンジ本人が現在着ている衣服から、別の服装に着替える際に行使する魔術。ブルース・バナー/ハルクがサンクタム・サンクトラムの階段に激突した際に披露し、パーカー姿だったストレンジは飛来した浮遊マントを身に纏うと同時に手作業無しで道着姿となった。
分身生成
質量を持つストレンジ自身の分身を無数に生み出す魔術。分身は本体と同等の動作を行う。惑星“タイタン”でのサノスとの戦いで、この魔術を発動させると、ストレンジの背後に彼の無数の分身が並列しながら現れてサノスを包囲し、エルドリッチ・ライトの鞭で一斉攻撃した。

レリック・その他のアイテム編集

“レリック”とは、マスター・オブ・ミスティック・アーツに属する魔術師たちが魔術と共に駆使する、強力な魔力を秘めた道具の総称である。

スリング・リング
使用する魔術師が望む行き先へのゲートウェイ(出入り口)の展開や、“ミラー次元”とこの次元の往来を行うための指輪。魔術師の基本的なレリックの一つである。
ストレンジは単に移動手段として利用するだけでなく、展開したゲートウェイやミラー次元への入り口で敵からの飛び道具攻撃を他の場所へ飛ばして無効化したり、ゲートウェイをスライドさせて他者も瞬時に他の場所へ送るなどの応用も披露する。
浮遊マント
サンクタム・サンクトラム(ニューヨーク)内の陳列室のガラスケースに収められていた赤いマント。その本体は日本製のウールを重ねたもので[6]、端には刺繍が、内側のライニングにはチェッカー模様のプリントがそれぞれ施されており、襟の前にはルビーがはめ込まれた金の装飾留め金があてがわれている[6]
レリックの一つであるものの、意思を持っており、モルドとエンシェント・ワンによれば、気まぐれな性格で他人にはなかなか懐かないというが、気に入られるとマント自身が魔術師へと取り付くように身に付けられる。
このマントを身につけると、空中を自在に浮遊飛行できるようになり、ストレンジがマントを身に付けた後に魔術の威力が増した描写があることから、魔力を増幅する力もある様子。また、戦闘中にマント単体が敵に巻きついて攻撃したり、助言するような行動を示したり、危険を探知してストレンジを窮地から遠ざけるなど、独自に支援する場合も多い[注釈 3]
カエシリウスに苦戦していたストレンジに突如として加勢し、以後彼の愛用品となった。
アガモットの目
至高の魔術師の初代であったアガモットの名を冠した首飾り。時間そのものを自在に操ることができ、使用時にはペンダント本体部分が駆動して内部の緑色の石が露出・発光し、独特の緑色の魔法円が展開する。これによって時間逆行や未来予知など、驚異的な魔術を発動させることができるが、並の魔術師には扱えない。
内部に収められている緑色の石は時間を操る“タイム・ストーン”である。
カマー・タージ内のサンクタム・サンクトラムへ繋がる扉の間のアンティチェンバーに置かれていたが、ゼロッツとの戦いの直前からストレンジが持ち出し、後に正式な保有・守護者として首に下げる。
ジャガー・ルクルト
マスター・ウルトラスリム・パーペチュアル[7]
ストレンジがクリスティーン・パーマーから貰った高級腕時計で、本体の裏には『Time will tell you how much I love you, Christine.』というメッセージが彫られている。事故後のストレンジは、両手の手術費用のために保有していたさまざまな高級品を売り払ったが、唯一この腕時計だけは売らなかった。しかし、カトマンズの路地裏で暴漢にこれを狙われた挙句、ストレンジが袋叩きにされたことで文字盤は割れてしまい、動かなくなってしまった。
それでもストレンジはこの腕時計を持ち続け、物語のラストでも修理することなく左手に巻く。まさにストレンジのクリスティーンに対する想いが込められた腕時計である。
グランド・レベルソ・ウルトラスリム 1931 ルージュ[7]
ストレンジがかつてニューヨークの自宅アパートの引き出しのケース内に仕込んだウォッチワインダーに収納していた高級腕時計コレクションの一つ。
このほかにもストレンジは、ロレックスの“コスモグラフデイトナ Ref.116520”[7]タグ・ホイヤーの“モナコ シルバーダイヤル”[7]など、複数の高級腕時計を事故に遭うまでコレクションしていたが、上記のクリスティーンから貰ったもの以外は劇中で巻いていない。

交通事故に遭うまでランボルギーニ・ウラカンを愛車としており、カエシリウスとの戦いではレリックの“ボムガリアスの火桶”や“サイトラックのクリムゾン・バンド”も投擲に使用した。

各作品での活躍編集

ドクター・ストレンジ
本作で『MCU』初登場。
天才的な医術を用いて治療困難な患者を救ってきた実績と、学界でも数々の講演を行う経歴を残すほど外科医としての高い人気を持ち[5]、ニューヨークの高級アパートに住み、音楽鑑賞や高級腕時計の収集、高級車の運転が趣味であったなど、富と名声を得ていた。
だが愛車で学術発表会に向かう途中に、夜の山道で脇見運転をしたことで交通事故を起こしてしまい、両手の神経を損傷し、その機能を失う[注釈 4]。一命を取り留め、医師として復帰することに固執し、さまざまな治療法を7回も試してみるものの両手の機能は治らず、莫大な時間と費用の浪費に終わって世界中の医師に見放されると共に外科医としての道を断たれた。これにより激しく荒んでしまい、元恋人のクリスティーンにまで立ち去られる結果となるが、下半身不随になったジョナサン・パングボーンがある治療施設に行ったのち平然と歩けるようになったという噂を知り、本人から話を聞くと、藁にもすがる思いでわずかな所持金をはたいて、治療のためにネパールのカトマンズにあるカマー・タージへ向かう。
暴漢から救ってくれたモルドに案内されてカマー・タージの門を叩き、自分に多元宇宙由来の魔術の存在と、これまでの世界の常識の範疇外の事象を見せつけたエンシェント・ワンに弟子入りした。入門して間もない頃は、ゲートウェイを開く修行にも苦労していたが、兄弟子となったモルドやウォンの指導も加え、瞬間的記憶と学習能力、旺盛な探究心や向上心をもって数ヶ月で魔術師としてのランクを上げていき、新たな魔術を会得しようとするあまり、やや規則を無視する傾向を見せたほど、魔術の道を究めようとした。しかし戦うことに関しては、人の命を助ける医者であったため、敵であっても殺生は好まず、困難を前にしても避けようとしていた[注釈 5]
だがアベンジャーズも関知できない別次元の脅威を知り、それを呼び起そうとするカエシリウスらゼロッツとの戦いに巻き込まれ、エンシェント・ワンの闇の魔術の行使を目の当たりにして、致命傷を負った彼女から最後の教えを受けながら、その最期を看取った。戦いの最中の負傷を応急処置してくれたクリスティーンとも別れることになるが、“暗黒次元”が出現した香港でゼロッツや“ドルマムゥ”に決戦を挑み、その結果、アガモットの目の力を使って、破壊された街中を修復し、ゼロッツとドルマムゥを撃退することに成功した。
魔術に失望したモルドとの別離を経て、アガモットの目を元の位置に戻すと、サンクタム・サンクトラムで両手が魔力によって上手く動きかける兆候に気づく。
マイティ・ソー バトルロイヤル
本作では両手に黄色い手袋をはめており、この世の脅威となるあらゆる存在について調べ、“サンクタム”を守護すると共に、ロキを容易くゲートウェイに閉じ込めて捕獲し、ソーすらも翻弄するほどの魔術の冴えを見せる。
アスガルド人が地球に来ると何かとトラブルを起こると危惧しているため、ソーとロキが地球に来た時にはいち早くその存在を察知。以前地球に危機をもたらしたロキを連れてきたソーの目的を聞き出すべく、ロキを異空間へ閉じ込めた上でソーをサンクタム・サンクトラムへ招き、オーディンを見つけたら直ちにアスガルドに帰ることを条件に、2人をオーディンがいるノルウェーへ導く[注釈 6][注釈 7]
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
本作ではタイム・ストーンを内包するアガモットの目を持っていることから、サノスの軍勢に狙われることになり、ストーンがサノスに渡れば宇宙が滅ぶことを懸念して、トニーたちの命よりタイム・ストーンを守ることを最優先事項としている。
サンクタム・サンクトラム(ニューヨーク)に落着したブルースから、サノスらがインフィニティ・ストーンを狙って直接動き始めたと知らされるとトニーを招き、ストーンの概要を伝えるが、自身の不遜な態度や発言も手伝って、非協力的な姿勢を見せるトニーといがみ合ってしまう。
そこへタイム・ストーンを狙って襲来したエボニー・マウとカル・オブシディアンに応戦するも、マウに捕まってQシップに乗せられて地球外へ連れ出され、ストーンを渡すよう拷問されてしまう。そこに現れたトニーとピーター・パーカー/スパイダーマンに救われ、サノスとの戦いを決意したトニーからの頼みにより、ストーンを守るだけでなくいざという時の戦力として行使することを決め、トニーやピーターとの共闘を承諾する。
Qシップでタイタンに到着すると、奇襲してきたガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの半数の面々との交戦後、サノス打倒を目的としている彼らとも手を組み、タイム・ストーンの力で1400万605通りものの未来を覗き、その結果である幾多ものの敗北の未来と1つの勝利を目撃して、タイタンに出現したサノスに先陣を切って立ちはだかった。そして仲間たちとの作戦や自らの多彩な魔術でサノスに挑むも、作戦は成功寸前で失敗し、自らの多彩な魔術も相手が持つ複数のインフィニティ・ストーンの力の前に一歩及ばずに終わって、トニーがサノスに追い詰められると、彼の命を救うために自らタイム・ストーンをサノスに渡した。その行為の理由を問うトニーに「ほかに方法が無かった」と答えると、地球にワープしてストーンを全て揃えたサノスが引き起こした“デシメーション”により、塵と化して消滅してしまう。

他のメディア編集

ゲーム編集

  • MARVEL SUPER HEROES
  • MARVEL SUPER HEROES VS. STREET FIGHTER
  • MARVEL VS. CAPCOM 2 NEW AGE OF HEROES
    シュマゴラスがプレイヤーキャラクターとして登場。登場回数の少ないマイナーなキャラクターだったことから、開発当初はMARVEL側も存在を忘れていた。また、特にMARVELからの制約もなかったため、本シリーズにおいて特色のあるキャラ付けが施された。
  • MARVEL VS. CAPCOM 3 Fate of Two Worlds
    ドーマムゥ、シュマゴラスがプレイヤーキャラクターとして登場。シュマゴラスはDLC配信。また、アレンジコスチュームでクォゴスが登場。
  • ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3
    上記2キャラクターに加え、ドクター・ストレンジもプレイヤーキャラクターとして登場。

アニメーション編集

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ ソーをサンクタム・サンクトラムに招いた時には、彼に自動で注ぎ足しされるビールジョッキを魔術で召喚し振る舞った。
  2. ^ 魔術師に転身してからも、自身を「マスターでもミスターでもなく、“ドクター・ストレンジ”だ」と豪語した。
  3. ^ その行為を見たトニーからは「主人思いの衣装だな」と評された。
  4. ^ 精密な動きが不可能となったのであって、ペンや髭剃りなどの物を持ったり、一時的に壁などに捕まる程度は出来る。
  5. ^ そんな姿勢をモルドには非難され、エンシェント・ワンも「柔軟で吸収力が有るが、弱い」と指摘した。
  6. ^ このノルウェーに通じるゲートウェイを開く時に、何故かソーから引き抜いた髪の毛1本をゲートウェイに混ぜていた。
  7. ^ ソーと共に椅子に腰掛けてから、オーディン探しの手伝いを承諾するまでのシーンは、『ドクター・ストレンジ』のミッド・クレジット・シーンでも描写された。

参考編集

  1. ^ Tales of Suspense #41 (May 1963)
  2. ^ Marvel 1602 #1 - 8 (Nov. 2003 - June 2004)
  3. ^ Spider-Man 2099 #33 (July 1995)
  4. ^ 単語自体は日本独自のもので、原点のコミックでは固有名詞では存在しない。正確には混沌の領域(chaos realm)、または同じ次元出身のシュマゴラスを指して彼の領域(his own dimension)。用語自体はシュマゴラスが出演した「マーベルスーパーヒーローズ」の日本版ステージ名。
  5. ^ a b c ビジュアル・ディクショナリー 2019, p. 156
  6. ^ a b ビジュアル・ディクショナリー 2019, p. 159
  7. ^ a b c d 映画『ドクター・ストレンジ』の時計コレクションを一挙公開”. 2018年10月9日閲覧。

参考文献編集

  • 『マーベル・スタジオ・ビジュアル・ディクショナリー』デアゴスティーニ・ジャパン、2019年。ISBN 978-4-8135-2270-6