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あらすじ編集

弘化元年(1844年)、明石藩江戸家老の間宮図書が、筆頭老中土井利位邸の門前で自決した。明石藩主の松平斉韶(菅貫太郎)の異常性格と暴虐ぶりを訴えた訴状が残されていた。松平斉韶は将軍徳川家慶の弟であり、将軍家慶は次の年に老中に抜擢する意向を示していた。幕閣の知るところとなった斉韶の愚行に老中・土井利位(丹波哲郎)は、幕府としての処罰ができないことから暴君斉韶を密かに排除することを決意する。

苦慮した老中の土井利位は最も信頼のおける旗本・島田新左衛門(片岡千恵蔵)に明石藩主・松平斉韶の暗殺を命じる。新佐衛門は生きて還ることなくこれが最後のご奉公と心に期して、相当の武者十三人を集めて藩主暗殺の計画を練る。その中には甥である島田新六郎(里見浩太朗)、徒目付組頭の倉永左平太(嵐寛寿郎)、島田家食客の平山九十郎(西村晃)、浪人の佐原平蔵(水島道太郎)、襲撃場所とした木曽落合宿の郷士木賀小弥太(山城新伍)などが参加した。

参勤交代により帰国途上の斉韶一行を中山道落合宿で待ち構えることとしたが、明石藩の軍師・鬼頭半兵衛(内田良平)は藩主暗殺の陰謀があることを察知して知略を労す。途中、斉韶一行を尾張藩内を通せずとして尾張藩家老・牧野靭負(月形龍之介)は一行の通過を拒否した。先年子息の牧野妥女(河原崎長一郎)が斉韶によって惨殺され、その妻(三島ゆり子)が犯されたことで遺恨があった彼は島田新左衛門に協力して一行の行程を木曾落合宿に向かわせたのである。その直後牧野靭負は切腹した。新佐衛門は一行の道中で策を講じ、この宿場に向かうしかないように仕向けていた。

その間に十三人の刺客は落合宿を要塞化して、自分達の集団の数倍の人数になる斉韶一行を迎え撃つ計画であった。そのため多勢に無勢の不利をカバーするために、宿のあらゆる所にさまざまな仕掛けを設けた。そして一行の動きがしばらく分からず焦燥感に苛まれたが、ついに早朝の朝靄をついて一団の馬蹄の音で一行が宿に近づいて来たことを察知した。ここから明石藩主一行と十三人の刺客との壮絶な死闘が始まった。

概要編集

  • 実録タッチの作風による集団抗争時代劇として有名で、約30分に及ぶクライマックスの13人対53騎の殺陣シーンは、時代劇映画史上最長とされた[1]
  • 集団抗争時代劇は1963年7月に封切られた『十七人の忍者』(長谷川安人監督)によって生まれ、その年の暮れに公開されたこの『十三人の刺客』によってジャンルとして確立されたといわれている。この両作品とも、天尾完次の企画によるものである。ただし集団抗争時代劇という言葉は、時代劇映画全般に適用されるものではなく、あくまでも東映京都撮影所で作られる時代劇のみに用いられたものである。集団抗争時代劇の特色としては、まず史実に基づいたリアリズム・タッチであること、モノクロ映像によってそのリアリズムを引き立てること、そして権力闘争の結果として集団による乱闘劇がクライマックスに用意されることが挙げられる。
  • 13人のプロフェッショナルが1つの目的を果たす。そのためには人と人との情けは「余計なもの」として全て捨てて如何なる困難があってもひたすら最後まで目的を遂行する。それが本作の狙いである。それがため描き方は即物的になり情緒的なものは極力排除された[2]
  • 本作の場合、「明石藩主松平斉韶暗殺」はフィクションではあるものの、その根底には徳川家斉大御所時代が招いた弊害という史実が据えられている。こうした集団抗争時代劇が生まれた背景には、今井正監督の『武士道残酷物語』や、松竹作品で小林正樹監督『切腹』などのリアリズム時代劇のヒットがあった。また、テレビの登場によって映画界全体が衰退する中で、スターを大量に抱える撮影所が彼らを有効活用するために『忠臣蔵』のようなオールスターキャストによる集団劇を模索した結果であるという説もある。
  • クライマックスである、罠を仕掛けられた木曽落合宿での13人対53人の殺陣シーンは、映画のテーマである「平和な時代に人を斬ったことのない侍が刀を持った時の殺陣」を表現するために、1対1の対決を極力避け、集団戦をメインに据えている。撮影にあたっては、殺陣師が殺陣を綿密に指示するのではなく、ヨーイドンの掛け声と共に刀を持った明石藩側の俳優たちを自由に動かし、そこに刺客側の俳優が現われると一斉に斬りかかるというラフな演出を行うことで、斬り合いの混乱をリアリスティックに再現した。また、この作品では手持ちカメラによる移動撮影が採用され、逃げ惑う侍たちや、大人数を相手に修羅場を駆け回る刺客たちの姿をダイナミックに捉えている。

エピソード編集

  • 「倉永左平太」役の嵐寛寿郎は、大映京都での『竜虎伝』以来、片岡千恵蔵と16年ぶりの共演であった。当時は時代劇の不振が始まった時期で、プロデューサーの玉木潤一郎も「チャンバラは滅びず、この映画で時代劇挽回や」と張り切っていたという。嵐は本作について「実に傑作だった」と評し、35分間の殺陣は「『七人の侍』よりも迫力おました」と語ったが、興行としては惨敗だった。「時代劇アカンと、東映が見切りをつけたのはこのあたりでおますな」と語っている。興行成功ならず、嵐は「タマジュン残念やったと思います。それから間もなくあの世へ行ってもうた」と玉木を偲んでいる[3]
  • 「松平斉韶」役の菅貫太郎は、本作での「酷薄な馬鹿殿さま」が十八番になり、『柳生一族の陰謀』、『必殺シリーズ』、『大江戸捜査網』、『暴れん坊将軍』など、多くのテレビ時代劇作品で類似の役柄を演じた。
  • 文春文庫ビジュアル版の『洋・邦名画ベスト150 中・上級篇』(1992年刊)では1位に選ばれている。

スタッフ編集

キャスト編集

刺客
明石藩
幕府
尾張藩
その他

関連作品編集

リメイク編集

2010年には同名のリメイク映画が公開され、また本作の脚本を元にした同名の小説が刊行されるなど、さまざまなリメイク作品や関連作品が生まれている。

1990年のテレビドラマ編集

1990年にテレビドラマとしてフジテレビ系「時代劇スペシャル」において、仕事映像京都松竹京都映画の製作でリメイクされた。オリジナル映画版を製作した東映が、企画協力としてクレジットされている。

スタッフ
キャスト

2010年の映画編集

三池崇史監督によるリメイク映画で、東宝の配給により2010年9月25日に公開された。島田新左衛門に役所広司、倉永左平太に松方弘樹、鬼頭半兵衛に市村正親、ほかに稲垣吾郎山田孝之伊勢谷友介高岡蒼甫伊原剛志などが出演する。

2012年の舞台編集

鈴木哲也マキノノゾミの脚本、マキノの演出により、2012年8月に赤坂ACTシアター新歌舞伎座にて公演。

ストーリー編集

  • 基本的なストーリーの流れはオリジナルの映画と同じであるが、冒頭に新左衛門と鬼頭の若き日(10年前)の姿を登場させている。また舞台版オリジナルのキャラクターとして新左衛門の妻・奈緒を登場させ、鬼頭との三角関係があったというエピソードや結婚10年にして新左衛門の子を宿すエピソードなどが加えられている。他にも、島田家の郎党である石塚利平が既に病で死んでおり、その代わりに利平の老父・平右衛門が刺客に加わるなどの改変がなされている。
  • 全2幕。第1幕は新六郎が12人目の刺客として加わるところまで、第2幕は川を渡る斉韶一行の襲撃計画から始まる。
  • クライマックスの大立ち回りの細かい展開はオリジナルの映画と異なるが、新左衛門が最後まで戦わずに陣に待機しており、斉韶を斬った後に、鬼頭にわざと斬られる流れはオリジナルと同じである。ただし、その後に鬼頭を斬るのは倉永ではなく、石塚平右衛門になっており、平右衛門は鬼頭に斬り返されて絶命する。なお、倉永はその前に鬼頭との一騎討ちに破れて絶命している(オリジナルでは生き残る)。

キャスト編集

テレビ放送編集

2012年8月13日15日の赤坂ACTシアターでの公演がWOWOWで放送された[4]

小説編集

小学館より刊行。映画の脚本を元にした、谺雄一郎によるノベライズ作品である。

この小説とは別に、大石直紀の著による2010年の映画のノベライズ『映画ノベライズ版 十三人の刺客』 が2010年8月に小学館文庫から刊行されている。

漫画編集

森秀樹による漫画が、リメイク版映画の公開に先立って『ビッグコミック増刊号』で連載(公開直前の2010年9月発売の号まで、全3回)された後、リメイク版公開に合わせて2010年9月25日に単行本が発売された(小学館ビッグコミックススペシャル ISBN 978-4091835741)。

脚注編集

  1. ^ 本作の2010年のリメイク映画における殺陣シーンは約50分に及んでいる。
  2. ^ 「時代劇ベスト100」40P 春日太一著 2014年10月発行 光文社
  3. ^ 『聞書アラカン一代 - 鞍馬天狗のおじさんは』(竹中労、白川書院)
  4. ^ 舞台「十三人の刺客」|ステージ”. WOWOW. 2012年12月20日閲覧。

関連項目編集

  • 明石藩
  • 松平斉韶 - 史実の明石藩主(1816年 - 1840年)。1840年に斉宣に家督を譲り、1868年に病没した。
  • 松平斉宣 - 史実の明石藩主(1840年 - 1844年)。将軍・家慶の弟であるという出自、また参勤交代中に尾張藩領であった木曽の中山道で行列を横切った幼児を切り捨てたために尾張藩の怒りを買って参勤交代の通行を拒否される(同時代の平戸藩松浦静山の『甲子夜話』)という不行跡が伝えられるなど、本作の「斉韶」に近い。
  • 徳川家斉
  • 中山道

外部リンク編集