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OECD各国のGDPにおける社会的支出割合(公費および私費)[1]
OECD各国のGDPにおける社会的支出割合(%、種類別)

日本福祉(にほんのふくし、英語: Welfare in Japan)は厚生労働省が所管しており、社会的支出のGDP比は公私あわせて26.3%、うち私費は4.0%であった[1]。日本の社会保障支出は65歳以上の高齢者に集中している(47%[2][3]。 2014年の社会保障給付額は121兆円であり、国民所得(NNI)359兆円のうち32%を占めていた[4]。これは一人あたりでは88万円、世帯あたりでは219万円に相当する[4]

日本の福祉レジームについて厚生労働白書では「エスピン=アンデルセンは、日本の現状の福祉システムは、自由主義レジームと保守主義レジーム双方の主要要素を均等に組み合わせているが、いまだ発展途上であり、独自のレジームを形成するかどうかについては結論を留保している」と述べられている[5]

目次

領域編集

日本一般政府歳出(%, 2015年)[6]

  一般公共サービス (10.44%)
  防衛 (2.34%)
  公共秩序・安全 (3.21%)
  経済業務 (9.48%)
  環境保護 (2.93%)
  住宅・地域アメニティ (1.74%)
  保健 (19.45%)
  地域・文化・宗教 (0.94%)
  教育 (8.72%)
  社会的保護 (40.74%)

日本における福祉とは、一般的には福祉六法やそれに派生・関連した政策を指すが、広義には狭義の社会福祉に加えて、社会保障公衆衛生の政策を含む(=公共の福祉)。かつての社会保障制度審議会の分類によれば、主として社会保険公的扶助社会福祉公衆衛生及び医療老人保健の5部門に分れており、広義ではこれらに恩給、戦争犠牲者援護を加えている[* 1]

 
日本における租税再分配(2009年, 年齢別)
橙は納税額、青は給付額、緑はトータル再分配額[7]


OECD分類による項目一覧編集

日本の公費社会的支出(OECD各国との比較、2011年)[1]
支出額 GDPに
占める割合
政府一般歳出に
占める割合
高齢者 49兆1551億円 10.4% 24.9%
遺族 6兆8102億円 1.4% 3.4%
障害者 4兆7991億円 1.0% 2.4%
保健 36兆2866億円 7.7% 18.4%
家族 6兆3889億円 1.4% 3.2%
積極的労働政策 9144億円 0.2% 0.5%
失業 1兆4048億円 0.3% 0.7%
住宅 5469億円 0.1% 0.3%
その他 2兆5505億円 0.5% 1.3%
総計 108兆8569億円 23.1% 55.1%
(参考)OECD平均 N/A 21.4% 47.9%

国立社会保障・人口問題研究所 2013による。

高齢
遺族
障害者
保健
家族
積極的労働市場政策

  • 雇用保険等:職業紹介事業等実施費、教育訓練給付、職業能力開発強化費、高齢者雇用安定・促進費、障害者等職業能力開発支援費、若年者等職業能力開発支援費等

失業

住宅

その他

所管編集

社会政策の所管は厚生労働省である。うち、社会保障部分については同省の外局である社会保険庁が所管していたが、2008年10月に政府管掌健康保険の事業運営を分離し、新しく全国健康保険協会(非公務員型公法人)が設立された。また、2010年1月に公的年金の事業運営を行うため、新しく日本年金機構(非公務員型公法人)が設立された。

根拠法編集

日本での福祉は日本国憲法第25条第2項(生存権)を保障する政策として取り組まれている。同条では「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定されており、社会福祉は、慈善や相互扶助のみではなく、国の責任で向上・増進させるべきとの規定がなされている。

社会保障審議会編集

社会保障審議会厚生労働大臣の諮問機関である(厚生労働省設置法第7条)。厚生労働省発足に伴い、社会保障関連の8審議会を統合再編し2001年(平成13年)に設置された。実質審議は、政令で決められた分科会と、必要に応じ設置される部会で行われる。分科会は、医療(特定機能病院の承認)、介護給付費(介護報酬改定)、統計、福祉文化、医療保険保険料率の5分科会、部会が10部会、その他に特別部会がある。

歴史編集

日本の近代国家としての福祉政策は、明治時代の「恤救規則」を皮切りに大正時代から昭和初期にその発展が見られるが、当時は、貧民や弱者に対しては慈善的・救貧的・恩賜的要素が強く、その他の国民に対しては富国強兵政策としての要素が強かった。

明治初期に福祉の基礎と貧民や弱者の保護の為の福祉組合救貧組合相互扶助組合が作られたが当時の日本人は理解を示さず、明治の終わりごろには治安警察法の厳しい取締り、活動が小さく行われた。国家の責務として、本格的に始まったのは第二次世界大戦後で、まずは敗戦処理として始まった。まず復員軍人や遺族の経済問題に対処するため生活保護法が作られ、続いて戦争孤児のため児童福祉法が制定、児童養護施設が次々と民間でつくられた。次に傷痍軍人などを救済するため1950年身体障害者福祉法が施行されるなど、福祉政策として確立していくようになる。以上の3つの法律を「福祉三法」と呼ぶ。その後1960年代に現在の知的障害者福祉法老人福祉法、母子福祉法(のちの母子及び父子並びに寡婦福祉法)が制定された。これらを併せて「福祉六法」と呼ぶ。

本格的な少子高齢社会を背景に1997年児童福祉法が改正、2000年には、高齢者向けの保健・福祉サービスを統合した介護保険法が施行され、児童福祉や高齢者福祉サービスを皮切りに福祉政策はこれまでの措置制度から契約中心の制度へと大きく転換し、2006年には障害者自立支援法が施行されることとなったが、一連の改革を「社会福祉基礎構造改革」と呼んでいる。

戦前・戦中編集

日本の社会保障は、第二次世界大戦前にドイツのオットー・フォン・ビスマルクの社会政策にならい社会保険制度が作られた[8]

医療保険
日本で最初の社会保険は、1922年に施行された健康保険法である[9]。また、農村に対する救済策として1938年国民健康保険法が制定された[9]
年金
古くは明治時代から、官吏軍人に対する恩給、官業労働者に対する退職年金があったが、民間労働者に対する公的年金制度はなかった。1941年には、肉体労働者(ブルーカラー)を対象とした労働者年金保険法が創設され[9]、これは前年に発足した船員保険の年金制度とともに、最初の民間労働者を対象とする年金制度であった。

明治後半から昭和初期にかけて、日本の産業経済の形態が近代化した。それに伴い資本主義体制のもとでは必然的に発生してくる貧富の差の拡大、経済不況による失業者の増大等々の内部矛盾を和らげるため、つまり階級妥協を図る面から、労働者の生活安全対策として社会保険の必要性が高まり、労働者を対象に健康保険制度が創設された。

1940年には健康保険法の対象外だった本社職員等を対象に職員健康保険が実施されたが、1942年の健康保険法改正により翌1943年から健康保険に統合された。1938年から実施された国民健康保険制度は、労働者以外の住民を対象とし、当時の農村漁村不況対策の一環として発足した。もともと、日本の農村漁村の衛生状態は悪く、疾病も多発する状態にあったが、1929年に始まる世界恐慌は、地域住民を非常に不安な状態にした。その対策として国民健康制度が企画され、幾多の曲折の後実現した。さらに1944年には対象を職員や女子にも拡大する形で厚生年金保険法が制定された。

この頃は、日華事変が起こり日本が戦争体制に突入した時期でもあり、本来の目的とは別に、兵力供給源である 農村漁村の保健対策としての戦時政策の側面もあった。

日本国憲法の理念編集

第二次世界大戦後に緊急対策として求められたのは、引揚者や失業者などを中心とした生活困窮者に対する生活援護施策と劣悪な食糧事情や衛生環境に対応した栄養改善とコレラ等の伝染病予防だった。1946年生活保護法が制定され[9]、不完全ながらも国家責任の原則、無差別平等の原則、最低生活保障の原則という3原則に基づく公的扶助制度が確立された。

1946年に制定された日本国憲法第25条においては社会保障が以下のように記され、生存権の根拠とされている。

一、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
二、国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本国憲法の理念に基づき、各分野における施策展開の基礎となる基本法の制定や体制整備が進められ、1947年児童福祉法1949年身体障害者福祉法1950年に生活保護法の改正[9]1951年社会福祉事業法が制定された。

1950年に社会保障制度審議会(内閣総理大臣の諮問機関として 1949年(昭和24年)に設置された)が発表した「社会保障制度に関する勧告」中で[9]、社会保障制度を次のように規定している。

『社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。』
『このような生活保障の責任は国家にある。国家はこれに対する綜合的企画をたて、これを政府及び公共団体を通じて民主的能率的に実施しなければならない。この制度は、もちろん、すべての国民を対象とし、公平と機会均等とを原則としなくてはならぬ。またこれは健康と文化的な生活水準を維持する程度のものたらしめなければならない。そうして一方国家がこういう責任をとる以上は、他方国民もまたこれに応じ、社会連帯の精神に立って、それぞれその能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果さなければならない。』

—  (PDF) 社会保障制度に関する勧告 (Report). 社会保障制度審議会. (昭和25年10月16日). http://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/syakaifukushi/1.pdf. 

またGHQ答申を受け、総理府には首相所属の諮問機関として社会保障制度審議会が設置され、「内閣総理大臣及び関係各大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関して、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない」と定められた[10]

労災保険と雇用保険の創設編集

1947年労働基準法が制定され、業務上の災害について事業主の補償義務を明確にし、さらに労働者災害補償保険法が制定されて健康保険と屋外労働者を対象とする労働者災害扶助責任保険により保護されていた労働者の業務上の災害については、労働者災害補償保険制度(労災保険)として独立した。また、終戦による失業者の増大により、失業者の生活を安定させ、社会的混乱を防ぐ必要から1947年に失業保険法および失業手当法が制定された。その後、雇用構造の改善、労働者の能力開発・向上その他労働者の福祉の増進のために、1975年雇用保険法が施行され、失業保険法は廃止された。

国民皆保険・皆年金の確立編集

国民健康保険制度は、戦時中は相当の普及をみたが、戦後、財政事情の悪化に伴って多くの市町村で休廃止されていた。1955年頃は、農業、自営業などに従事する人々や零細企業従業員を中心に、国民の約3分の1に当たる約3000万人が医療保険の適用を受けない無保険者だった。しかし1955年に始まった大型景気により日本経済は本格的な経済成長過程に入り、急速に成長を遂げ国民生活も向上していく。このため、1957年度から4ヶ年計画により全市町村に普及せしめることとし、1961年に完全普及されてユニバーサルヘルスケア(国民皆保険)が達成された。

労働者年金保険制度についても、1944年に厚生年金保険に改称され対象が職員や女子にも拡大された。戦後、家族制度の動向や老齢人口の増加等を背景に地域住民に対する年金制度の要望が高まり、1959年国民年金法が制定され、1961年に国民年金制度が発足し、国民皆年金が確立された。さらに、1985年高齢化社会においても健全で安定した年金制度を樹立するための抜本的改革が行われ、国民年金は国民共通の基礎年金を支給する制度に改められた。

福祉元年編集

高度経済成長の中で革新自治体の誕生や参議院での保革伯仲などの当時の政治状況への危機感から、田中角栄内閣は1973年福祉元年と位置づけ、社会保障の大幅な制度拡充を実施した[11]。具体的には、老人医療費無料制度の創設(70歳以上の高齢者の自己負担無料化)[11]、健康保険の被扶養者の給付率の引き上げ[11]高額療養費制度の導入[11]、年金の給付水準の大幅な引き上げ、物価スライド・賃金スライドの導入[11]などが挙げられる。第一次石油危機を契機とした先進諸国が低成長化によって税収が減少、社会保障の抑制の必要性がされるようになる。高齢者への無償福祉や低額福祉導入後、先進諸国における人口の急激な高齢化・少子化は社会保障の役割と規模の拡大によって社会保障費が増大し続けている。

日本の社会保障給付費の推移[12][13]
年度 金額 国民所得比
1980年 24兆7736億円 12.15%
1985年 35兆6798億円 13.69%
1990年 47兆2203億円 13.61%
1995年 64兆7243億円 17.54%
2000年 78兆1191億円 21.01%
2005年 87兆7827億円 23.99%
2009年 99兆8507億円 29.44%
2012年 109兆5000億円
2015年 114兆8,596億円 30.69%
2020年
(2012年の予測[14]
134兆4000億円
2025年
(2012年の予測)
148兆9000億円
 
日本の社会的支出(兆円)。緑は医療、赤は年金、紫はその他[15]

財政規模は毎年約3兆円程度増え続けると予想されており、2025年度の社会保障給付費は141兆円(国民所得比26.1%)に達するとの見通しである(「社会保障の給付と負担の見通し」(2006年5月厚生労働省推計)の「並の経済成長」のケースによる)。

保障制度の見直し編集

1973年秋にオイルショックが勃発し、原油価格の高騰がインフレを招き企業収益を圧迫し、高度経済成長時代の終焉をもたらした。また、低成長化による税収減と同時に、インフレに対して給付水準を合わせていくため社会保障関係費が急増したため、財界(特に第二次臨時行政調査会の「増税なき財政再建」や「日本型福祉社会論」)や大蔵省からの抑制圧力が加わった。自民党政権は、選挙への影響を考慮して当初は「見直し論」を抑え込んでいたものの、1980年衆参同日選挙での自民党の大勝を受けて、安定成長への移行及び国の財政再建への対応、将来の超高齢化へ適合するよう、社会保障制度の見直しが行われた。

1982年に老人保健制度が創設され[16]、老人医療費に関して公費負担から社会保険への転換が行われ、患者本人の一部負担導入や全国民で公平に負担するための老人保健拠出金の仕組みが導入された。1984年には健康保険の本人負担を1割に引き上げ[16]、退職者医療制度を導入した。1985年には全国民共通の基礎年金制度が導入される一方で給付水準が引き下げられた。

少子高齢化への対応編集

日本は諸外国に比べ高齢化のスピードが速く、高齢化社会の定義である高齢化率7%からその倍の14%になるまでわずか24年(1970年-1994年)であったため、高齢者の介護問題が老後最大の不安要因として認識された。また、1989年合計特殊出生率ひのえうまの年を下回り、戦後最低となったことは「1.57ショック」と呼ばれた。

1989年ゴールドプラン1994年新ゴールドプラン及びエンゼルプラン1995年の障害者プラン、2000年新エンゼルプランにより保健福祉サービスの基盤が図られた[17]

日本の高齢化のスピードが速かったことから、高齢者の介護問題が老後最大の不安要因として認識されて、2000年介護保険制度が創設され、老人福祉と老人医療に分かれていた高齢者の介護制度を社会保険の仕組みで再編成した[18]。介護保険は、老人福祉と老人医療に分かれていた高齢者の介護制度を社会保険の仕組みで再編成したものであり、世界的にもドイツに続く創設であった。従来の社会福祉は、行政機関がサービス実施の可否、サービス内容、提供主体等を決定する措置制度の考え方であるのに対し、介護保険制度は、サービス利用者を中心に据えた利用者本位の考え方であり、利用者とサービス事業者が契約によりサービスを行う契約制度である。介護保険を契機に、障害福祉サービスや保育サービスも措置制度から契約制度へと考え方や仕組みが変更されてきている。

また、厚生年金の支給開始年齢の引き上げや医療費の患者負担の引き上げが行われた[18]

福祉の供給主体編集

福祉を担当する組織(行政機関)には以下のようなものをあげられる。

その他、老人福祉法による「在宅介護支援センター老人介護支援センター)」、介護保険法による「地域包括支援センター」などがある(こちらは多くが民間福祉事業者へ委託)。

福祉従事者編集

社会福祉士精神保健福祉士介護福祉士保育士公認心理師薬剤師精神科医社会保険労務士などの国家資格があるが、これらは一部を除き業務独占ではなく名称独占のため、職務の棲み分けが明確でなく、施設によっては国家資格を職名として使用しないところもある。

福祉に関わる資格編集

国家資格(国が定めたカリキュラムとトレーニングを積んだ後に国家試験受験資格が与えられて、国家試験に合格した者のみ与えられる資格)

公的資格 学歴、実務経験は問わず受験できる試験、資格もあるが介護支援専門員は一定の条件を満たさなければ受験資格の発生しない資格もある。なお、厚生労働省による介護職員の研修体系見直しで『介護職員基礎研修』と『訪問介護員1級養成研修』は2012年度末で廃止され、改正社会福祉士及び介護福祉士法で導入される『実務者研修』に一本化された。

任用資格(教育機関で特定の科目を履修するか、一定の実務経験があれば自然に発生する資格だが、実際に業務をおこなう際にしか発動しない資格)

財政編集

日本の社会保障給付費の推移[20][21]
年度 金額 国民所得比
1980年 24兆7736億円 12.15%
1985年 35兆6798億円 13.69%
1990年 47兆2203億円 13.61%
1995年 64兆7243億円 17.54%
2000年 78兆1191億円 21.01%
2005年 87兆7827億円 23.99%
2010年 105兆3646億円 29.11%
2015年 115兆4007億円 29.57%
2016年 116兆9027億円 29.84%
2025年
(2018年の予測[22][23]
140兆8000億円
2040年
(2018年の予測)
188兆5000億円

社会保障給付費の対GDP比は、2018年度の21.5%(名目額121.3兆円)から、2025年度に21.7~21.8%(同140.2~140.6兆円)となる。その後15年間で2.1~2.2%ポイント上昇し、2040年度には23.8~24.0%(同188.2~190.0兆円)となる[22]

社会保障負担の対GDP比は、2018年度の20.8%(名目額117.2兆円)から、2025年度に21.5~21.6%(同139.0~139.4兆円)となり、2040年度は23.5~23.7%(同185.6~187.3兆円)へと上昇する。その内訳をみると、保険料負担は2018年度の12.4%(同70.2兆円)から、2025年度に12.6%(同81.2~81.4兆円)となり、2040年度には13.4~13.5%(同106.1~107.0兆円)へと上昇、公費負担は2018年度の8.3%(同46.9兆円)から、2025年度に9.0%(同57.8~58.0兆円)となり、2040年度には10.1~10.2%(同79.5~80.3兆円)へと上昇する。(「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」(2018年5月厚生労働省推計)[22]の「計画ベース・経済ベースラインケースによる」のケースによる)。

社会保障の収入編集

日本の税収構造(2014年) [24]

  社会保険 (39.7%)
  給与税 (0%)
  資産税 (8.5%)
  消費税 (27.0%)
  その他 (0.3%)

社会保障財源の収入総額は、2016年度では134兆9,177億円であり、内訳は社会保険料が51.1%、税収が35.4%、資産運用による収入が7.7%、その他5.9%であった[25]

項目別 社会保障財源(2016年度)[25]
社会保険料
68兆8,875億円(51.1%)
被保険者拠出 36兆4,949億円(27.0%)
事業主拠出 32兆3,926億円(24.0%)

47兆7,480億円(35.4%)
政府一般会計より 33兆1,906億円(24.6%)
地方自治体一般会計より 14兆5,575億円(10.8%)
他の収入 資産収入 10兆3,224億円(7.7%)
その他 7兆9,597億円(5.9%)
134兆9,177億円(100%)

社会保障の給付編集

社会保障給付費は、2016年には 116兆9,027億円で、GDP比にして21.68%であった[25]。また高齢者関係給付費は55兆5,820億円となり同給付費の47.5%を占めている[25]

日本の社会保障給付費(2016年度)[25]
分類 給付費 GDP比率
医療 38兆3,965億円(32.8%) 7.12%
年金 54兆3,770億円(46.5%) 10.08%
その他の福祉 24兆1,291億円(20.6%) 4.47%
116兆9,027 億円 (100%) 21.68%

社会保障関係費編集

政府一般会計歳出に占める医療や年金、介護、生活保護などの社会保障分野の経費。一貫して増加し続けており、財政赤字の大きな原因となっている。2013年度決算の社会保障関係費は約29.2兆円であった。

日本一般会計 平成29年度決算(2017年)[26]
歳入概数 歳出概数
所得税 18兆8,815億円(18.2%) 社会保障関係費 32兆5,210億円(33.1%)
消費税 17兆5,138億円(16.9%) 地方交付税交付金等 15兆5,671億円(15.9%)
法人税 11兆9,953億円(11.6%) 公共事業関係費 6兆9,116億円(7.0%)
その他の税 9兆3,452億円(9.0%) 文教及び科学振興費 5兆7,030億円(5.8%)
公債金収入 33兆5,545億円(32.4%) 防衛関係費 5兆2,742億円(5.4%)
その他収入 6兆696億円(5.9%) 食料安定供給関係費 1兆1,809億円(1.2%)
前年度剰余金受入 5兆2,322億円(5.0%) その他の経費 8兆4,366億円(8.6%)
国債費 22兆5,208億円(23.0%)
歳入計 103兆6,440億円(100%) 歳出計 98兆1,156億円(100%)
歳入増減・支出不要
次年度繰越・その他
5兆5,284億円
平成29年度一般会計における社会保障関係費の内訳(2017年)[27]
社会保障関係費
年金給付費(35.4%) 11兆4,831億円
医療給付費(35.4%) 11兆5,010億円
介護給付費(9.3%) 3兆130億円
少子化対策費(6.5%) 2兆1,149億円
生活扶助等社会福祉費
4兆205億円(12.4%)
生活保護等対策費 1兆5,050億円
障害保健福祉費 1兆4,573億円
母子家庭等対策費 1,934億円
その他 6,864億円
保健衛生対策費 (0.9%) 3,042億円
雇用労災対策費 (0.1%) 368億円
32兆4,735億円(100%)

注:

  • 生活扶助等社会福祉費の費用別内訳は、当初予算額であるため、生活扶助等社会福祉費(当初予算額:3兆8,423億円)の合計と合わないことに注意する。
  • 2015年4月より「保育所運営費」及び「子どものための金銭の給付年金特別会計へ繰入」が内閣府へ移管されている。

課題編集

 
日本の人口統計。2009年現在(1872-2009)と将来予測(2010-)

1980年代後半から合計特殊出生率経済成長率の低下で「社会保障の危機」が言われた。日本の人口の高齢化は世界で最もスピードが速いと言われ、年々増大する高齢者医療や高齢者介護や老齢年金の財源をいかに確保するかが最大の課題と言える。2016年の高齢化率は27.3%[28]まで上昇し、高齢社会白書では「我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えている」と述べられている[29]

2009年のOECD対日審査報告では、医療制度改革に一節が割かされている[30]。日本はGDP増加を上回るペースで医療費が増加しており、老人医療費の上昇に対して若者世代の負担を抑えながら対応するかが鍵であるとOECDは報告している[31]

急速な少子高齢化編集

 
OECD各国の老人(65-歳)一人あたり、生産年齢(20-64歳)人口[32]
橙は2012年時点、茶は2050年の予想

日本はOECD諸国の中で最も少子高齢化が進んでおり、高齢者1人を現役世代2.3人で支えている(2015年時点)[33][32]。現在の社会保障給付は7割が高齢者に充てられており、人口の高齢化による給付の増加が現役世代の負担を年々増やしているため、給付と負担のバランスの確保や世代間の不公平の是正が求められている。

さらに約50年後の2050年には、少子高齢化が一層進み、65歳以上の高齢者が人口の約4割を占め、高齢者1人を1.3人で支える超高齢社会となる(OECD諸国にで最低)という厳しい見通しが示されている[32]。特定の世代に過重な負担とならないよう、現役世代はもちろん、高齢世代、企業など、幅広い支え手がバランスよく負担することが必要であるとされる。評論家の伊藤剛から6歳の日本人を22歳にする16年間にかける予算より、75歳の日本人を91歳にする16年間にかける予算のほうが大きい社会への懸念が指摘されている[34]

福祉人材の供給編集

介護保険法制定以降、高齢者福祉では介護支援専門員や介護福祉士、2級以上のホームヘルパーのニーズが高まっているが、労働条件が非常に劣悪(いわゆる3K職場の代表格でもある)であり、低賃金が故に介護人材の離職率が極めて高く、低賃金で雇えると考えられた発展途上国の外国人労働者の受け入れが始まった(しかし、実際に経済連携協定(EPA)に基づく人材受け入れを開始してみると、外国人への日本語教育の負担が重いことが敬遠され、福祉分野での外国人の雇用は減少している[35]

日本では超高齢化を反映し高齢者福祉施設は施設数が多いため、求人数も多いが、児童・障害施設は保育所を除くと施設数が少ないため求人数は少ない。特に高齢者福祉分野は民間企業が参入しやすいため、介護職や看護職の労働者派遣業が確立されたが、児童・障害分野は行政機関社会福祉法人主体のものが多い。また、児童養護施設児童相談所などでは配置人員の不足が指摘されている。また、介護福祉士は専門職であるにもかかわらず、他業種に比べ転職率が高いが、以下のような理由が考えられるとされる。

  • 入所型施設では変則勤務や夜勤、宿直が多い。また年末年始ゴールデンウィークお盆休みでも施設に人材は必要であるため、休暇も交替でとる。下記のような様々な問題がある割に待遇が悪い。
  • 雇用面では、常勤雇用が少なく、パートアルバイトが多いことが挙げられる。これは、労働集約型であり補助金や介護報酬などに依存しているという特性上、人件費抑制やサービスを向上すべく最低基準以上の人員を雇うために非常勤の比率を高めざるを得ないからである。また、女性が多い職場のため出産育児休業などによる代替雇用が多く、正規雇用に繋がらない場合がある。
  • 利用者との関係によるストレスで精神的に疲労してしまう。例えば高齢者施設では認知症、知的障害者施設では自閉症、精神障害者施設では精神障害を持つ利用者がいるが、それらの障害は、特有の行動や認知の傾向があるため、利用者と日々信頼関係を作っていくのに時間がかかり、利用者によっては暴力行為や不調、自傷他害、持病の発作など、突発的なことに対応していくことが要求される。
  • 個々の職員による支援方針の違いが、職場での意見の相違となり緊張感をもたらす。また、職員の大半が福祉職という同質的集団になるため、お互いに馴れ合いになりがちな傾向もあり、人権侵害と思われる行為を指摘しにくく、閉鎖的な緊張感も存在する為と考えられる。また長く勤続する職員ほど利用者のことをよく知っているために、従来のやり方が正しいという場の空気が生まれ、新人などが問題意識を持っていても指摘しにくい土壌もある。これらの原因で、誤った支援方針に異議を唱えることが難しいとの指摘もある。
  • 利用者だけでなく、その家族や病院行政機関学校など各種関係機関との連絡調整に忙殺される。特に入所施設では、利用者と家族との関係、利用者の金銭管理に時間を割くことが多い。
  • 居宅訪問介護の場合、ヘルパーの移動時間が労働時間として計算される事はほとんどないため、実質的な拘束時間が実労働時間よりも遥かに長いといった事態が起こりがちな為。

日本においては1990年代に入ってから福祉や介護へのニーズが高まり、福祉系大学の新規開学や学部の新設も始まった。福祉の資格取得者が増え社会的ニーズが高まっているが、雇用や労働条件は決して高いものとは言えない。また、有資格者が増える一方ですべての有資格者の力量が十分といえず、資格取得養成課程の見直しが検討されることになった。

財源の確保編集

社会保障に関して国民が負担する税・保険料の総額は2006年度で82兆8,000億円であるが、2025年度には143兆円に増加するとされている。潜在的国民負担率(租税負担率+社会保障負担率+財政赤字対国民所得比)については、「骨太の方針2004」でその目途を50%程度としつつ、政府の規模を抑制すると閣議決定されている。また、社会保障に要する国の負担は、2007年度は、21兆円を超え国の一般歳出の半分に近付きつつあるが、約775兆円にも及ぶ巨額な財政赤字の下では、社会保障給付を賄うための公費を含め、税負担は将来世代に先送りされている。

社会保障の給付について見直しを行い、必要な給付に対する公費負担については、将来世代に先送りすることがないよう、安定的な財源を確保する必要があるとされている。今後、少子高齢化の一層の進行が見込まれており、持続的な経済社会の活性化を実現する観点から、消費税を含む税制改革をし、世代内及び世代間の負担の公平を図ることが重要であるとされる[36][37]

2012年の消費税法改正では、社会保障と少子化対策に用途が規定された。

消費税法 第一条2
消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。

経済に与える影響編集

 
日本の社会保障供出負担の推移。
青はGDPに占める比率(%)、橙は総税収に占める比率(%)[38]

日本の社会保障制度は、労使折半で社会保険料を負担する社会保険方式(被用者保険)を基本にしている。社会保障制度の充実は保険料や税の上昇を伴うため、個人については労働意欲の減退を招き労働力供給を減少させるとともに、企業については雇用や投資の減少を招き、経済成長率を低下させるという意見がある。一方、日本の社会保障への保険料や税の負担はアメリカを除く先進諸国と比べ低く、社会保障制度の充実は雇用を創出し消費を増やす効果があり、経済に対する不況時の安定機能を果たしているという意見がある。制度の持続可能性の確保の観点と経済の活力の確保の観点がともに重要であるとされる。

OECDは医療費財政を社会保険料に頼ることは、労働コストを上昇させ労働市場に悪影響を及ぼすため(2009年現在は賃金の8%が保険料であるが、増税なき場合には2035年度の保険料は24%まで上昇するとの試算[36])、雇用投資へのゆがみをもたらしにくい付加価値税(消費税)がベストであるとしている[37]

社会保障制度改革編集

日本の総人口は、2004年をピークに2005年は死亡数が出生数を上回り約2万人の減少となり、人口減少社会を迎えた。急速な少子高齢化の進行により、年金、医療、介護等の社会保障制度は、給付の面でも負担の面でも国民の生活に大きなウエイトを占め、家計や企業の経済活動に与える影響も大きくなった。人口の高齢化や支え手の減少に対応した持続可能な社会保障制度改革が必要であり、給付と負担のバランスや世代間・世代内の公平性が求められているとされる[39]

2004年7月に「社会保障の在り方に関する懇談会(内閣官房長官主宰)」が、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行う必要があるとの問題意識の下で議論を開始し、2006年5月に取りまとめた「今後の社会保障の在り方について」が「骨太の方針2006」に盛り込まれた。

  • 自助・共助・公助や税・保険料の役割分担、世代間・世代内の公平性等に留意しつつ、社会保障制度全体を捉えた一体的見直しを推進する。
  • 社会保障の給付については、国民が負担可能な範囲となるよう不断の見直しを行う。
  • 社会保障のための安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りをやめる。

2007年には社会保障国民会議が設置され、また1月の閣議決定「日本経済の進路と戦略(経済財政運営の中期方針)」では、持続可能で信頼できる社会保障制度の構築のため、自助・共助・公助の適切な役割分担の下、世代間の公平を図るとともに、サービスの質の維持向上を図りつつ、効率化等により供給コストを低減させていくとされた。

社会保障強化のための必要財源額、および消費税率換算 (2013年 社会保障国民会議[40]
2015年度 見込み 2025年度見込み
年金 社会保険方式の場合 2.6兆円 (+1%弱) 2.9兆円 (+1%弱)
税方式の場合 12〜28兆円 (+3.5〜8.2%) 15-31兆円 (+3.5〜8%)
医療・介護 4兆円 (+1%強) 14兆円 (+4%弱)
少子化対策 1.3〜2.1兆円 (+0.4-0.6%) 1.6〜2.5兆円 (+0.4〜0.6%)
社会保険方式の場合 7.6〜8.3兆円 (+2.3〜2.5%) 19〜20兆円 (+5%)
税方式の場合 17〜34兆円 (+5〜10%) 31〜48兆円 (+8〜12%)

2012年民主党政権下では、三党合意において民主党・自由民主党・公明党の実務者間で「社会保障・税一体改革に関する確認書」が交わされ、提言は社会保障制度改革国民会議が行うとされた。

2013年の自民党政権下では、社会保障国民会議が復活し、そこでは社会保障の機能強化の充実のために2015年には消費税率換算で+2.3〜10%強、2025年度には+5〜12%ほどの財源が必要との最終報告がなされた[40](社会保障と税の一体改革)。

2014年4月には、消費税が8%に引上げられている。2015年からは社会保障・税番号制度(個人番号。通称:マイナンバー)が導入された。

2015年のOECD対日審査では、最優先事項として病院平均入院日数の短縮が挙げられており、OECD平均の4倍(31.2日)である状況を短縮し、彼らを在宅ケアや介護施設に移行するよう勧告されている[37]。介護受給者は年8%のペースで増加しているが、日本の介護施設はOECD平均の半分しかないため、病床を介護施設に転換することの利点を裏付けている[37]

政治史編集

戦後の低負担高福祉編集

 
1982年4月以降の日本の国債残高。日本銀行保有分を除く。 凡例 赤 - 内国債、黄 - 短期証券、青 - 借入金、紫- 過去12ヶ月の平均
 
日本銀行保有分を含めた1982年4月以降の日本の国債残高。凡例 赤 - 内国債、黄 - 短期証券、青 - 借入金、紫- 過去12ヶ月の平均

日本の国民負担率[41]は高負担高福祉の欧州、特に北欧の70%越えに比べて40%に満たないなど負担率は政府の社会保障費用に対して極めて低い。日本は「中給付・中負担」(中負担中福祉)を目指してきたが、後述の大きな政府を目指しているはずの野党による消費税の導入反対による遅延で公債費は平成25年度で歳入の40.9%の約43兆5000億円が政府の借金である公債金が占めているのに、歳出の内で公債金返済の国債費が約21兆円なのに29.1%の約29兆円を社会保障の政府支出が占めるという「高給付・低負担」(低負担高福祉)になっている。何故なら日本では国債で回している現行の国家財政を健全化させるために消費税増税を提言しようする与党に、増税無しで維持できるとの無責任な主張をする野党に選挙で負けて断念して先延ばしになってきたからである。

北欧の社民主義の左派政党の政権は企業や裕福な人の移動が簡単な時代に国内の雇用創出・維持してもらうために法人税や所得税を低い税率にしている代わりに、国内で生活していると必ず金持ちほど金額的には多く支払う消費税を高福祉国家を実現する社会保障費の最適な財源と社会民主主義者として理解していた。スウェーデンのような大きな政府を思考する高福祉国家では企業が進化し続け、国際競争に勝ち抜き、経済成長しないと、社会保障が支えられないという危機意識を企業・国民・政府が強く認識しているため、企業の国際競争力を高めるため、リーマン・ショック以降に法人税を50%台から26%に下げたが、28~34%の地方所得税(日本でいう住民税)、最高25%の付加価値税(消費税)の“高負担”はそのままであることに抵抗がない。しかし、旧日本社会党社会民主党日本共産党朝日新聞進歩的文化人のように大きな政府を主張している日本の左派は歳出を占める割合が圧倒的に少ない公共事業地方交付税[42]削減で福祉を充実すべきと80年代から2010年代に至るまで政策支持ではなくて単に地方への分配を拒絶する都市部の野党投票者を中心に支持されていた新自由主義の入口のような主張していた。そのため、自民党の地方分配政策の否定と脱却を唱えた小泉純一郎政権はそれまでの自民党投票者にだけでなく、野党の政策では無くて単に地方への分配を拒絶するために投票していた都市部の有権者の支持まで獲得したため、かなり長い間も高い支持率を誇った理由でもあった。

日本の左派政党のように企業や富裕層への極端に見返りの無い高負担は国内雇用、投資を辞めてシンガポールなどビジネスしやすい国に移転するためにおこる産業の空洞化の阻止で北欧含めた世界の法人税の引き下げしていることなど財政と経済の仕組みを分かっていない大衆への人気取りで左派政党が消費税反対の立場をとるのは世界に例のないことである。そのせいで高福祉からの転換と消費税導入や消費税増税で中負担中福祉を主張する政権が選挙では負けさせられてきたから低負担と特に高齢者に偏った高福祉が維持されてきたと指摘されている。所得税を納めない年金世代にも税金を納めて財政に貢献してもらうには消費税しかないと世界では認識されているため、高福祉国家では高い消費税や住民税の税収をによる大きな政府が北欧では実行されている。しかし、日本では消費税増税による再分配を拒絶する人が多く1974年からの財政赤字の再建と高齢者の無償医療など社会保障改革が進展せずに政府の借金が雪だるま式に増えてきた。社会保障財源の確保のために導入や増税を訴える政権は反対する野党に必ず地方か国政選挙で負ける度に先延ばしにされてきたため、多少の増税では国債返済への財政再建分に多くを回すしかなくなり余計に反対を生みやすい財政になった。

世界の選挙では高負担高福祉を左派政党が、低負担低福祉を右派が主張して競っていたが日本の場合は右派である自民党が福祉では中負担中福祉として社民主義に近い路線を採用していた。しかし、1967年に共産党、社会党など左派団体は更に財政無視の医療費無料対象の拡大などの低負担高福祉の主張で美濃部亮吉を都知事に当選させ、1969年12月21日から高齢者の医療費無償を行うなどして得票と支持をポピュリズム政策で増やしていた。東京都に続いて他のいくつか地方自治体も左派候補が当選して老人医療費の無料化が導入された。都内では老人医療費無料化で病院が高齢者のサロン化し、病院が溢れるようになった。高齢者の医療無料化を行った地方自治体の財政を圧迫していたため、国の負担への要求もあったが実施した自治体の責任だとして当初は相手にしなかった。自民党や官公は無償医療はのちに必ず財政赤字を招くと反対していたが、地方選挙で敗北が続くという世論に押される形で1973年1月1日から厚生省などに高齢者医療費無償化など社会保障支出増加には国民負担の増加によって賄われないと継続不可だと反対されていたが田中角栄政権の主導で70歳以上の老人医療費の無料化が実施された。高齢者の無償のための医療費負担は国が3分の2で地方自治体が3分の1を負担することになった。当時は高齢者は現役世代より圧倒的に少なく高度経済成長の只中だったが、1973年10月の第1次石油危機で高度経済成長が終わった翌1974年には戦後初のマイナス成長と増税なしの高福祉の社会保障支出で大幅な歳入不足の財政赤字になって戦後初の赤字国債を発行した。

1973年7月から美濃部都知事は国の無償制度の対象外だった都内の65歳以上70歳未満の医療費も無料化する「マル福」制度や高齢者の都営交通無料化というバラマキ政策や多額の税収を産んでいた公営ギャンブルに廃止を行ったため、東京都の財政は膨大な赤字を抱えるようになっていた。美濃部は他にも「ひとりでも反対者がいたら工事しない」として東京外郭環状道路の建設が凍結されたため、それ以前からの東名高速道路中央高速道路東北自動車道などと結ばれる各高速道路網の中心となって慢性的に渋滞するため都心部のバイパスとしての機能が失われてた首都高速道路とは別の道路を建設して都心部の渋滞緩和を行うことができなくなった。都心部の主要道路はさらに渋滞し、地元民以外の利用が想定されていなかった首都高を抜け道として利用する車が生活道路他を高速道路と同じ運転で突っ切る事態が常態化し、子供と高齢者が犠牲となる交通事故を多数引き起こされた。1979年に「美濃部都政のバラマキ福祉」を批判し鈴木俊一が当選し、後に漸く建設再開された東京外郭環状道路が中央道と東名高速と繋がるのが2014年にまで遅れている。

1972年度に3兆3,900億円だった歳出の内の医療費が、高齢者の無償化制度が始まった翌1973年度は、5兆3,700億円に激増した。1974年の初の赤字財政当時大蔵大臣で1978年に総理大臣になった大平正芳は、戦後のシャウプ勧告以来直接税中心だった日本の税体系を関接税主体に変更するために1960年代にヨーロッパで導入されていた「付加価値税」などを参考に「一般的消費税」導入で中負担にして財政赤字解消のために「一般消費税導入」を掲げて翌年の第35回衆議院議員総選挙を戦ったが、左派政党が大きな政府の政策である消費税導入に反対するという世界で類がない事態の発生と現在の福祉の維持のための財政赤字解消の必要性を有権者とマスコミに理解されずに批判的にされたことで敗北した。

社会保障関係費が歳出に占める割合1960年には11.5%で1970年には14.4%であったのが、無償化以降である1975年には18.5%へと急増し、1980年には19.3%に達していた。高齢者の医療費負担がなくなったことで医学的治療の必要がないのに病院に殺到するようになり、1974年には高齢者医療費のための社会保障支出は前年度比155.1%、1975年に前年度比130.3%になった。 高齢者の加入者の多かった国民健康保険では、加入者全体の7.7%である高齢者の為に集めた掛け金から27%を支出していた。高齢者の社会的入院や不必要な病院来診が増加して、高齢者医療費無償の矛盾は国民健康保険と財政赤字という形で露呈した。さらに高齢者医療無料化制度後、戦後の医療技術の上昇も相まって高齢者の寿命の伸長や価値観の変化による出生率の減少が高齢化が急速に進行した。高齢化率と少子化率のシミュレーションから、歳出の医療費総額が80兆円にも達することがわかった厚生省は1982年に高齢者の医療費負担の完全無償から何度診察を受けても一カ月400円に当初した後、数年ごとに段階的に引き上げていくことになった。

1987年の中曽根康弘首相も失敗したが、1988年12月に竹下内閣で消費税法成立して1989年4月に施行し消費税制度が導入された。財政赤字と増え続ける社会保障のための財源だった消費税が野党とマスコミの争点化と中負担による再分配をその度に反対してきた有権者のために約15年も遅れた上にバブル経済終了の直前に漸く導入された。1970年代から消費税導入や増税に反対してきた有権者らのための社会保障の増加を以後の現役世代が負担して、子供への社会保障には回されないという歪な構造を造り出した。それに対してスウェーデンでは高齢者向けの社会保障費である年金・医療・介護の割合は50%程度で残りは、保育・教育・子どもの医療・職業訓練・失業保険・育児休暇中の手当など「現役世代向け」に充てられている。“高負担高福祉”の前提条件は、国民が総出で働いて税金を納めることでだとして、北欧の税制は世帯単位ではなく、国民番号制度で自営業者を含めた個人単位での所得補足を徹底している。スウェーデンでは企業の国外移転を防ぐために法定実効税率[43]22.00%で日本の29.97%より企業への課税率は低い。更に2006年に一定所得層まで、所得に比例して税金還付額が高くなる勤労税額控除が導入されていて、働くほど恩恵を享受できる「勤労インセンティブ」を高める制度がある。

自営業者などで所得・就業形態が千差万別であり把握するのに必要な国民番号制度が日本では2016年まで導入できずに公平な所得把握がなかったため、国民年金加入者約2200万人に対して、税務所が把握できていた被保険者は約350万人ほどだった。国民年金保険料が定額制であるのはそのためであった。日本では国民健康保険への国保への税金注入は最大45%、サラリーマンが加入する被用者保険から高齢者の医療費用に出す拠出金などを含めると現役世代が高齢者医療費の6割以上を負担していたような税制で[44]ある。佐藤優は1994年に村山内閣で政権で財政の実態と経済の仕組みを把握したことで、5%に増税を閣議決定するなど歳入と歳出の歪み再建には消費税増税だと理解したのに、その後も「社会民主」党なのに再び連立前の社会党時代のように人気取りで反対に回ってきたことから党名の社会民主主義ではなくの只の護憲政党と批判している[45][46][47][48][49][50][51][52][53][54][55][56][57]川上和久教授は社会民主主義を掲げる欧州の左派政党は福祉を重視する大きな政府を志向しているため、国民に税の高負担を求めてきたと述べている。それに対して、日本の左派勢力は福祉重視を訴えてもそのために必要な税金負担増をこれまで国民にきちんと求めてこなかったと指摘している。更に、「外交安保分野で政権批判を繰り広げてきたが、高負担を前提とする現実的な社会像を描き、保守勢力との対立軸として国民に示せるかどうかが、今後の試金石となる」と語っている[58]

消費税と将来世代への分配編集

前原誠司は保育の無償化の場合、更に1.2兆円、54万円ほどの大学授業料を無償化するには1.6兆円という計2.8兆円という消費税1%分の負担でも全世代を分担すれば将来の世代を育てるお金に回せるという消費税の増税によって北欧のような社会保障や福祉の充実、保育士への補助金を訴えている。民主党政権時代に党政調会長として教育・医療・年金などの社会保障財源などに充てる消費税を8%、10%と二段階で引き上げる「税と社会保障の一体改革」を決めたが、増税額が少なかったために5%からの追加5%増税のうち、財政再建に4%、社会保障の機能強化には1%だったことから受益感が国民にあまりに国民に与えられなかったと述べている。

民主党が野党時代に主張していた行政の無駄を削るべきとの「身を切る改革」は社会保障を賄える兆円単位の財源には全くならないとの民主党政権での実体験から現役世代の福祉のための負担を全世代の国民に頼む「オール・フォー・オール」・「お互い様に支え合う社会」を理念として消費税増税から逃げないで主張すると述べている[59][60][61]。 2.8兆円という消費税1%分の負担でも全世代を分担すれば将来の世代を育てるお金に回せるという消費税の増税によって北欧のような社会保障や福祉の充実、保育士への補助金を訴えている。民主党政権時代に党政調会長として教育・医療・年金などの社会保障財源などに充てる消費税を8%、10%と二段階で引き上げる「税と社会保障の一体改革」を決めたが、増税額が少なかったために5%からの追加5%増税のうち、財政再建に4%、社会保障の機能強化には1%だったことから受益感が国民にあまりに国民に与えられなかったと述べている。民主党が野党時代に主張していた行政の無駄を削るべきとの「身を切る改革」は社会保障を賄える兆円単位の財源には全くならないとの民主党政権での実体験から現役世代の福祉のための負担を全世代の国民に頼む「オール・フォー・オール」・「お互い様に支え合う社会」を理念として消費税増税から逃げないで主張すると述べている[62][63][64]

脚注編集

  1. ^ 「社会保障将来像委員会 第一次報告」(平成5年 総理府社会保障制度審議会事務局)によれば、社会保障について次のように定義している。『まず第一に、社会保障は、国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民にすこやかで安心できる生活を保障する制度である。社会保障は、歴史的には救貧や防貧のためのものとして発展してきたが、今日ではそれより広く国民に安定した生活を保障するものとなっている。第二に、社会保障は、給付を行うことによって国民の生活を保障する制度である。各種の規制を行うことで国民の生活を健康で安全なものとするものもあるが、このような規制は他の多くの公共政策とかかわっており、必ずしも社会保障に限られるものではない。第三に、社会保障は、国や地方公共団体の責任として生活保障を行う制度である。国民が生活困難の状態に陥った場合、あるいは陥ろうとする場合、国民自身やその家族が自らの力でそれを克服しようと努めるだけでなく、社会のさまざまな人々や組織が手を差し延べて、困難な状態から抜け出すための援助を行うこともある。社会保障は、これらの中でも国や地方公共団体が公的責任として国民の生活を支えるものである。以上のことから、社会保障とは、「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民にすこやかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行うものである」ということができる。』

出典編集

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参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集