1960年のFIAフォーミュラ1
世界選手権
前年: 1959 翌年: 1961
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1960年のF1世界選手権(1960ねんのエフワンせかいせんしゅけん)は、FIAフォーミュラ1世界選手権の第11回大会である[1]1960年2月7日アルゼンチンで開幕し、11月20日アメリカ合衆国で開催される最終戦まで、全10戦で争われた。

1960年のF1世界選手権

シーズン概要 編集

2.5リットルカーで争われた最後のシーズンである1960年は、クーパーを駆るジャック・ブラバムがタイトルを獲得し、ロータス、フェラーリ、BRMはリアエンジン車でシーズンを戦った。アストンマーティンやそれとよく似たランス・リヴェントロウのスカラブも参戦したが、フロントエンジン車ではもはや上位進出はできなかった。スターリング・モスのロブ・ウォーカー・ロータスはコーリン・チャップマンにモナコでのグランプリ初勝利をもたらし、アメリカグランプリでも優勝した。傾斜したモンツァサーキットではイギリスのコンストラクターがボイコットし、フェラーリが優勝したが、他のグランプリはすべてクーパーが優勝した。アストンマーティンのF1参戦はさまざまな経営者の変更を経て、61年後の2021年に復活するまで途絶えた。

ポイントシステムが変更され、ファステストラップへのポイントは与えられないことになった。また、6位にポイントが与えられることとなった。ベスト6戦がランキングに数えられ、全シーズンまでのベスト5戦から増加することとなった。

今シーズンはまたインディ500が選手権に数えられた最後のシーズンとなった。また、F1においてフロントエンジン車が勝利した最後のシーズンとなった。

開催地及び勝者 編集

ラウンド レース サーキット 開催日 ポールポジション ファステストラップ 優勝者 コンストラクター タイヤ レポート
1   アルゼンチングランプリ オスカル・ガルベス 2月7日   スターリング・モス   スターリング・モス   ブルース・マクラーレン   クーパー-クライマックス D 詳細
2   モナコグランプリ モナコ 5月29日   スターリング・モス   ブルース・マクラーレン   スターリング・モス   ロータス-クライマックス D 詳細
3   インディ500 インディアナポリス 5月30日   エディ・ザックス   ジム・ラスマン   ジム・ラスマン   ワトソン-オッフェンハウザー F 詳細
4   オランダグランプリ ザントフォールト 6月6日   スターリング・モス   スターリング・モス   ジャック・ブラバム   クーパー-クライマックス D 詳細
5   ベルギーグランプリ スパ・フランコルシャン 6月19日   ジャック・ブラバム   ジャック・ブラバム   ジャック・ブラバム   クーパー-クライマックス D 詳細
6   フランスグランプリ ランス 7月3日   ジャック・ブラバム   ジャック・ブラバム   ジャック・ブラバム   クーパー-クライマックス D 詳細
7   イギリスグランプリ シルバーストン 7月16日   ジャック・ブラバム   グラハム・ヒル   ジャック・ブラバム   クーパー-クライマックス D 詳細
8   ポルトガルグランプリ ボアビスタ 8月14日   ジョン・サーティース   ジョン・サーティース   ジャック・ブラバム   クーパー-クライマックス D 詳細
9   イタリアグランプリ モンツァ 9月4日   フィル・ヒル   フィル・ヒル   フィル・ヒル   フェラーリ D 詳細
10   アメリカグランプリ リバーサイド 11月20日   スターリング・モス   ジャック・ブラバム   スターリング・モス   ロータス-クライマックス D 詳細

エントリーリスト 編集

チーム コンストラクター シャシー エンジン タイヤ ドライバー 出場ラウンド
  カモラーディ・インターナショナル ベーラ・ポルシェ RSK ポルシェ F4 D   マステン・グレゴリー 1
  フレッド・ギャンブル 9
  スクーデリア・セントロ・スッド クーパー T51 マセラティ L4
クライマックス L4
D   ロベルト・ボノーミ 1
  カルロス・メンディテギー 1
  マステン・グレゴリー 2, 4, 6-8
  イアン・バージェス 2, 6-7, 10
  モーリス・トランティニアン 2, 4, 6, 10
  マリオ・カブラル 8
  アルフォンソ・シール 9
  ヴォルフガング・フォン・トリップス 10
  ジョルジオ・スカルラッティ マセラティ 250F マセラティ L6 D   ジョルジオ・スカルラッティ 1
  ナシフ・エステファーノ マセラティ 250F マセラティ L6 D   ナシフ・エステファーノ 1
  アントニオ・クレウス マセラティ 250F マセラティ L6 D   アントニオ・クレウス 1
  ジーノ・ムナロン マセラティ 250F マセラティ L6 D   ジーノ・ムナロン 1
  クーパー・カー・カンパニー クーパー T51
T53
クライマックス L4 D   ブルース・マクラーレン 1-2, 4-8, 10
  ジャック・ブラバム 1-2, 4-8, 10
  チャック・デイ 7
  ロン・フロックハート 10
  チーム・ロータス ロータス 18
16
クライマックス L4 D   イネス・アイルランド 1-2, 4-8, 10
  アラン・ステイシー 1-2, 4-5
  アルベルト・ロドリゲス・ラレッタ 1
  ジョン・サーティース 2, 7-8, 10
  ジム・クラーク 4-8, 10
  ロン・フロックハート 6
  スクーデリア・フェラーリ フェラーリ 246 フェラーリ V6 D   クリフ・アリソン 1-2
  フィル・ヒル 1-2, 4-9
  オリヴィエ・ジャンドビアン 1
  ヴォルフガング・フォン・トリップス 1-2, 4-9
  フロイラン・ゴンザレス 1
  リッチー・ギンサー 2, 4, 9
  ウィリー・メレス 5-6, 9
  エキュリー・ブルー クーパー T51 クライマックス L4 D   ハリー・シェル 1
  ロブ・ウォーカー・レーシングチーム ロータス 18 クライマックス L4 D   スターリング・モス 2, 4-5, 8, 10
1
クーパー T51
  モーリス・トランティニアン 1
  ランス・リヴェントロウ 7
  オーウェン・レーシング・オーガニゼーション BRM P25
P48
BRM L4 D   ヨアキム・ボニエ 1-2, 4-8, 10
  グラハム・ヒル 1-2, 4-8, 10
  ダン・ガーニー 2, 4-8, 10
  エットーレ・チメリ マセラティ 250F マセラティ L6 D   エットーレ・チメリ 1
  リヴェントロウ・オートモビルズ・インク スカラブ F1 スカラブ L4 D   チャック・デイ 1-2, 4-6, 10
  ランス・リヴェントロウ 2, 4-5
  リッチー・ギンサー 6
  フレッド・トラック・カーズ クーパー T51 クライマックス L4 D   ブルース・ハルフォード 2
  ルシアン・ビアンキ 7
  ハイ・エフィシエンシー・モータース クーパー T51 クライマックス L4 D   ロイ・サルヴァドーリ 2, 10
  ヨーマン・クレジット・レーシングチーム クーパー T51 クライマックス L4 D   クリス・ブリストウ 2, 4-5
  トニー・ブルックス 2, 4-5, 7-8, 10
  オリヴィエ・ジャンドビアン 5-8, 10
  ヘンリー・テイラー 6-8, 10
  ブルース・ハルフォード 6
  フィル・ヒル 10
  ブライアン・ネイラー JBW 59 マセラティ L4 D   ブライアン・ネイラー 2, 7, 9-10
  スクーデリア・カステロッティ クーパー T51 カステロッティ L4 D   ジーノ・ムナロン 2, 6-7, 9
  ジョルジオ・スカルラッティ 2, 6-7, 9
  ジュリオ・ガビアンカ 9
  レグ・パーネル クーパー T51 クライマックス L4 D   ヘンリー・テイラー 4
  デヴィッド・ブラウン・コーポレーション アストンマーティン DBR4
DBR5
アストンマーティン L6 D   ロイ・サルヴァドーリ 4, 7
  モーリス・トランティニアン 7
  エキュリー・マールスベルゲン クーパー T51 クライマックス L4 D   カレル・ゴダン・ド・ボーフォール 4-5
  テイラー=クロウリー・レーシングチーム ロータス 18 クライマックス L4 D   マイク・テイラー 5
  エキップ・ナツィオナーレ・ベルゲ クーパー T45 クライマックス L4 D   ルシアン・ビアンキ 5-6
  ヴァンウォール・プロダクツ・リミテッド ヴァンウォール VW 11 ヴァンウォール L4 D   トニー・ブルックス 6
  ロバート・ボドル・リミテッド ロータス 16 クライマックス L4 D   デヴィッド・パイパー 6-7
  ギルビー・エンジニアリング クーパー T45 マセラティ L4 D   キース・グリーン 7
  CT アトキンス クーパー T51 クライマックス L4 D   ジャック・フェアーマン 7
  アーサー・オーウェン クーパー T45 クライマックス L4 D   アーサー・オーウェン 9
  ヴォルフガング・ザイデル クーパー T45 クライマックス L4 D   ヴォルフガング・ザイデル 9
  スクーデリア・コロニア クーパー T43 クライマックス L4 D   ピエロ・ドロゴ 9
  ホレース・グールド マセラティ 250F マセラティ L6 D   ホレース・グールド 9
  ポルシェ KG
  ポルシェ・システム・エンジニアリング
ポルシェ 718 ポルシェ F4 D   エドガー・バース 9
  ハンス・ヘルマン 9
  エキップ・プリドー クーパー T43 クライマックス L4 D   ヴィク・ウィルソン 9
  ジョー・ルービン マセラティ 250F マセラティ L4 D   ボブ・ドレーク 10
  モモ・コーポレーション ロータス 18 クライマックス L4 D   ウォルター・ハンセン 10
  ジム・ホール ロータス 18 クライマックス L4 D   ジム・ホール 10
  フレッド・アームブラスター クーパー T45 フェラーリ L4 D   ピート・ラヴリー 10

1960年のドライバーズランキング 編集

ポイントは1位から順に6位まで 8-6-4-3-2-1 が与えられた。ベスト6戦がポイントランキングに数えられた。

順位 ドライバー ARG
 
MON
 
500
 
NED
 
BEL
 
FRA
 
GBR
 
POR
 
ITA
 
USA
 
ポイント[2]
1   ジャック・ブラバム Ret DSQ 1 1 1 1 1 4 43
2   ブルース・マクラーレン 1 2 Ret 2 3 4 2 3 34 (37)
3   スターリング・モス 3† / Ret 1 4 DNS DSQ 1 19
4   イネス・アイルランド 6 9 2 Ret 7 3 6 2 18
5   フィル・ヒル 8 3 Ret 4 12 7 Ret 1 6 16
6   オリヴィエ・ジャンドビアン 3 2 9 7 12 10
7   ヴォルフガング・フォン・トリップス 5 8 5 Ret 11 6 4 5 9 10
8   ジム・ラスマン 1 8
9   リッチー・ギンサー 6 6 Ret 2 8
10   ジム・クラーク Ret 5 5 16 3 16 8
11   トニー・ブルックス 4 Ret Ret Ret 5 5 Ret 7
12   ジョン・サーティース Ret 2 Ret Ret 6
13   クリフ・アリソン 2 DNQ 6
14   ロジャー・ワード 2 6
15   グラハム・ヒル Ret 7 3 Ret Ret Ret Ret Ret 4
16   ウィリー・メレス Ret Ret 3 4
17   ポール・ゴールドスミス 3 4
18   ヨアキム・ボニエ 7 5 Ret Ret Ret Ret Ret 5 4
19   ヘンリー・テイラー 7 4 8 14 3
20   カルロス・メンディテギー 4 3
21   ドン・ブランソン 4 3
22   ジュリオ・ガビアンカ 4 3
23   ジョニー・トムソン 5 2
24   ルシアン・ビアンキ 6 Ret Ret 1
25   ロン・フロックハート 6 Ret 1
26   エディー・ジョンソン 6 1
27   ハンス・ヘルマン 6 1
-   モーリス・トランティニアン 3† Ret Ret Ret 11 15 0
-   ロイド・ラビー 7 0
-   エドガー・バース 7 0
-   ジム・ホール 7 0
-   ロイ・サルヴァドーリ Ret DNS Ret 8 0
-   ブルース・ハルフォード DNQ 8 0
-   ボブ・ヴェイス 8 0
-   カレル・ゴダン・ド・ボーフォール 8 0
-   ピエロ・ドロゴ 8 0
-   マステン・グレゴリー 12 DNQ DNS 9 14 Ret 0
-   アルベルト・ロドリゲス・ラレッタ 9 0
-   バド・ティングルスタッド 9 0
-   ヴォルフガング・ザイデル 9 0
-   ダン・ガーニー Ret Ret Ret Ret 10 Ret 0
-   チャック・デイ DNQ DNS Ret Ret Ret 10 0
-   イアン・バージェス DNQ 10 Ret Ret 0
-   フロイラン・ゴンザレス 10 0
-   ボブ・クリスティ 10 0
-   フレッド・ギャンブル 10 0
-   ロベルト・ボノーミ 11 0
-   レッド・アミック 11 0
-   ピート・ラヴリー 11 0
-   デヴィッド・パイパー Ret 12 0
-   デュアン・カーター 12 0
-   ジーノ・ムナロン 13 Ret 15 Ret 0
-   ブライアン・ネイラー DNQ 13 Ret Ret 0
-   ビル・ホメイヤー 13 0
-   ボブ・ドレーク 13 0
-   ナシフ・エステファーノ 14 0
-   ジーン・ハートレイ 14 0
-   チャック・スティーヴンソン 15 0
-   ボビー・グリム 16 0
-   アラン・ステイシー Ret Ret Ret Ret 0
-   クリス・ブリストウ Ret Ret Ret 0
-   ジョルジオ・スカルラッティ Ret DNQ Ret 0
-   ランス・リヴェントロウ DNQ DNS Ret 0
-   ハリー・シェル Ret 0
-   エットーレ・チメリ Ret 0
-   アントニオ・クレウス Ret 0
-   ショーティ・テンプルマン Ret 0
-   ジム・ハーツバイス Ret 0
-   ジミー・ブライアン Ret 0
-   トロイ・ラットマン Ret 0
-   エディ・ザックス Ret 0
-   ドン・フリーランド Ret 0
-   トニー・ベッテンハウゼン Ret 0
-   ウェイン・ワイラー Ret 0
-   A.J.フォイト Ret 0
-   エディ・ルッソ Ret 0
-   ジョニー・ボイド Ret 0
-   ジーン・フォース Ret 0
-   ジム・マクウィゼイ Ret 0
-   レン・サットン Ret 0
-   アル・ハーマン Ret 0
-   デンプシー・ウィルソン Ret 0
-   ディック・ラスマン Ret 0
-   ジャック・フェアーマン Ret 0
-   キース・グリーン Ret 0
-   マリオ・カブラル Ret 0
-   アルフォンソ・シール Ret 0
-   ヴィク・ウィルソン Ret 0
-   アーサー・オーウェン Ret 0
-   マイク・テイラー DNS 0
順位 ドライバー ARG
 
MON
 
500
 
NED
 
BEL
 
FRA
 
GBR
 
POR
 
ITA
 
USA
 
ポイント
結果
金色 勝者
銀色 2位
銅色 3位
ポイント獲得
完走
完走扱い(全周回数の90%以上走行)
規定周回数不足(NC)
リタイア(Ret)
予選不通過(DNQ)
予備予選不通過(DNPQ)
失格(DSQ)
スタートせず(DNS)
レース中止(C)
水色 プラクティスのみ(PO)
金曜日テストドライバー(TD)
2003年以降
空欄 プラクティス出走せず(DNP)
除外 (EX)
到着せず (DNA)
欠場 (WD)
  • † 順位は同じ車両のドライバーに分配された。ポイントは与えられなかった。
  • 斜体:ファステストラップ
  • 太字ポールポジション

1960年のコンストラクターズランキング 編集

ポイントは1位から順に6位まで 8-6-4-3-2-1 が与えられた(インディ500を除く)。ベスト6戦がポイントランキングに数えられた。各コンストラクターとも最上位の車両にポイントが与えられた。

順位 マニファクチャラー ARG
 
MON
 
NED
 
BEL
 
FRA
 
GBR
 
POR
 
ITA
 
USA
 
ポイント[2]
1   クーパー-クライマックス 1 2 1 1 1 1 1 8 3 48 (58)
2   ロータス-クライマックス 6 1 2 5 5 2 3 1 34 (37)
3   フェラーリ 2 3 5 4 11 6 4 1 26 (27)
4   BRM 7 5 3 Ret Ret 10 Ret 5 8
5   クーパー-マセラティ 4 Ret Ret 9 14 Ret Ret 9 3
6   クーパー-カステロッティ DNQ Ret 15 4 11 3
7   ポルシェ 6 1
-   ベーラ・ポルシェ-ポルシェ 12 10 0
-   スカラブ WD DNQ DNS Ret DNS 10 0
-   アストンマーティン DNS 11 0
-   マセラティ 13 DNS 13 0
-   JBW-マセラティ DNQ 13 Ret 0
-   ヴァンウォール Ret 0
順位 マニファクチャラー ARG
 
MON
 
NED
 
BEL
 
FRA
 
GBR
 
POR
 
ITA
 
USA
 
ポイント
  • 太字はカウントされたポイント

ノンタイトル戦結果 編集

レース サーキット 開催日 優勝者 コンストラクター レポート
  VIII グローヴァー・トロフィー グッドウッド 4月18日   イネス・アイルランド   ロータス-クライマックス 詳細
  XII BRDC インターナショナル・トロフィー シルバーストン 5月14日   イネス・アイルランド   ロータス-クライマックス 詳細
  V シルバーシティ・トロフィー ブランズ・ハッチ 8月1日   ジャック・ブラバム   クーパー-クライマックス 詳細
  I ロンバンク・トロフィー スネッタートン 9月17日   イネス・アイルランド   ロータス-クライマックス 詳細
  VII インターナショナル・ゴールドカップ オールトン・パーク 9月24日   スターリング・モス   ロータス-クライマックス 詳細

参照 編集

  1. ^ FIA Yearbook, 1974 page 119
  2. ^ a b ベスト6戦がポイントランキングに数えられた。ポイントは有効ポイント、括弧内は総獲得ポイント。

外部リンク 編集