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ダウンサイジングコンセプト[1]Engine downsizing)とは、自動車においてターボチャージャースーパーチャージャーなどの過給機を使うことにより、従来エンジンと同等の動力性能を確保したまま排気量を小型化し、巡航時の燃費を向上させるエンジン設計コンセプトのことを指す。ダウンサイジングコンセプトはガソリンエンジンディーゼルエンジンの両方に適用される。和製英語であり、英語では Engine downsizing という(外寸の縮小ではない)。最近では通常「エンジンのダウンサイジング」などと言われているので注意が必要である。

目次

概要編集

過給機を用いる事により同等の出力を維持しつつ、排気量を減らすという概念自体は目新しいものではなく、各国で古くからあり、日本でも、乗用車[2]として1979年昭和54年)10月に初めて認可された当時、ターボは省燃費が主目的であり[3]1990年代初頭には兼坂弘によって提案されていた。 旧来の過給機付きガソリンエンジン(ターボエンジンなど)は速度や最高出力を追求する目的で設計されていた。低圧縮比のエンジンに大型の過給機を組み込むことで非常に高スペックなエンジンを生み出したが、一方で同等排気量の自然吸気エンジンと比べて燃費が大変悪かった。ダウンサイジングコンセプトは大前提として省エネ(燃費を向上させるため)の設計思想がある。そのため燃費向上のためエンジンの小型化を行い、次いで動力性能を従来と同等レベルに維持することを基本に目標とする動力性能を達成するための手段としてツインチャージャー(やターボチャージャー)を用いている。また、ダウンサイジングコンセプトは燃費向上の手法として、直噴技術を用い、圧縮比の低下を最低限に抑えている。ダウンサイジングコンセプトを採用したエンジンの特性としては、コンパクトなターボチャージャーを用いたりターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせることによって、最高速度・最高出力の向上よりも実用トルク(低回転域におけるトルク)とレスポンスを向上させ日常使用に適したエンジンに仕上げている。ここで燃費が何故下がるのかという説明が遠のいたが、それは小型化をしながら様々な技術を使い出力を維持することで、機械の摩擦の総面積を小さくしているというところにある。特に気筒あたりの排気量に限度のあるガソリンエンジンにおいては排気量低減は気筒削減に繋がる。これは例えば従来6気筒を用いていた所に4気筒、4気筒を用いていた所には3気筒エンジン、場合によっては2気筒[4]とする事も可能となり、フリクションの低減幅が大きくなる。

ただし、低回転域におけるトルクは過給機(ターボ)付きでも小型のエンジンの方が大型の自然吸気エンジンよりも劣ってしまうため、同じ力を出すにしてもアクセルを強く踏んで(エンジン回転数を上げて)しまいがちになる。結果、例えば上り坂や急発進時、急加速時等の特定状況下において燃費が大型のものと変わらないかむしろ劣ってしまうといったことが起こりうる。その解決のため、低回転域に向いたスーパーチャージャーと併用したり低回転域に適応した可変容量ターボを使用することもあるが、原理的な欠点であり根本的な解決には至っていない。

日本のように自動車税排気量によって決まりかつ過給器の有無が税額に影響しない地域においては、ダウンサイジングコンセプトは同程度の走行性能を割安な自動車税額で享受できるメリットがある。1,000 ccクラスのコンパクトカーと同等以上の動力性能を持つ一部の660 ccターボ付き(あるいはスーパーチャージャー付き)軽自動車は、車体サイズが異なるとはいえ、(燃費の向上を目指していない点でダウンサイジングコンセプトとは方向性が異なるが)一種のダウンサイジングと見なすこともできる[5]

ダウンサイジングの概念は以前からあったが、フォルクスワーゲンが2006年からTSIエンジンゴルフに搭載して以降、再びダウンサイジングの有効性に注目が集まることになった[6]

ガソリンエンジンへの適用編集

ガソリンエンジンでは、自然吸気エンジンから小排気量の過給エンジンへの変更することを指すことが一般的である。エンジンの小型化により、ポンピングロス低減による巡行時の燃費低減・エンジン重量およびサイズの低減が図られている。 過給機付きエンジンの弊害は耐ノック性の悪化による燃費・出力低下であるが、ガソリン直噴エンジンを用いることにより、対策している。 また過給器による加圧により吸気温度が上がり、それによって空気密度が下がったりノッキングの原因となり効率低下するため、大抵は加圧された空気を冷やすためのインタークーラーが装備されている。 その他メーカーから見た弊害としては、増大する熱を処理するための冷却装置の強化や上記インタークーラーなどの補器類が増えたり、ブローオフやノッキング制御などの各種制御が増えることでコスト高になりやすい点が挙げられるが、 過給機つき車の普及によるコストダウンや、現在は自然吸気でも過給機つきエンジンと同等程度まで制御が高度になっており転用できる部分が多いためさほど深刻ではない。

欧州のメーカーではフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツBMWルノーPSAグループフィアットなどの自動車メーカーが推進している。日本のメーカーでは1993年にマツダミラーサイクルを搭載するユーノス800にダウンサイジングコンセプトを適用、2014年に富士重工業スバル)がレヴォーグにダウンサイジングターボを搭載している[7]トヨタにおいても「8AR-FTS」2Lターボ(14代目クラウン、NX、3代目ISなど)や「8NR-FTS」1.2Lターボ(2代目オーリス後期、C-HR、12代目カローラシリーズ(現時点では初代カローラスポーツが該当)など)が登場している。日産では13代目スカイラインセダンに2.0L・4気筒ターボエンジン(ダイムラー製)車を、ホンダでは5代目ステップワゴンに1.5L・4気筒ターボエンジンを、スズキではバレーノ、およびクロスビー、4代目スイフト、3代目スイフトスポーツ、4代目エスクード(輸出名称ビラータ)に、ダイハツではトール(そのOEMトヨタ・ルーミー、およびトヨタ・タンク、日本国内向け2代目スバル・ジャスティを含む)にそれぞれ1.0L・3気筒ターボエンジンをそれぞれ搭載している。このほか、日産ではスーパーチャージャーによる過給で2代目ノートに搭載している1.2L・3気筒エンジンもダウンサイジングエンジンといえる。

一方で、日本車の場合、マーケティングイメージ(ターボ車は燃費が悪い、排気量の大きい車ほど高級、など)からダウンサイジングコンセプトの導入に慎重との見方がある[7]。 特に日本では交通環境の厳しさで実際の燃費が悪くなることが多く、税制面では有利に見えるが日本特有の「エコカー減免」の対象になりづらいことからいまだに人気が低い。 そのほか、マツダは高圧縮比で低燃費を実現したSKYACTIV-Gの開発を手がけた人見光夫執行役員が、(アクセルを踏み込む)中高負荷時の性能ではダウンサイジングターボよりも高圧縮(高膨張)比エンジンの方が優れていること、ダウンサイジングターボ車が高オクタン価ガソリン(無鉛プレミアムガソリン、以下ハイオク)仕様になっていることなどを指摘し、ダウンサイジングターボの導入に否定的見解を示していた(2013年12月当時)[8]。 ただし、高膨張比のミラーサイクルと過給によるダウンサイジングは相反するものではなく、過給によるダウンサイジングを行いつつ可変バルブタイミング機構によりミラーサイクルを行う事も可能であり、実際に国内のダウンサイジングエンジンでは採用している。またレギュラー仕様で圧縮比を高めるのは困難ではあるものの、ハイオク(プレミアムガソリン)が必須というわけではなくスバルやホンダのダウンサイジングターボはレギュラー仕様ながら高い圧縮比を確保している。ダウンサイジングに否定的であったマツダだが2016年には2代目モデルのCX-9に3.7Lからの置き換えとして2.5Lのダウンサイジングターボを投入する。投入にあたって人見氏は“意味のない”過給ダウンサイジングに対して疑問を示していたのであり、“意味ある”過給ダウンサイジングの条件がそろったから、としている[9]

車両としてのダウンサイジングコンセプトはエンジン単体ではなく、車体との組合せで従来エンジンと比べ排気量を低減しているかによって評されるため、たとえダウンサイジングコンセプトを考慮して開発されたエンジンであっても従来のエンジンと排気量があまり大差のない車体に搭載された場合はダウンサイジングとは見做されず、単なる高出力モデルと扱われる。例としては日産・ジュークに搭載されたMR16DDT(DIG-T)型エンジン[10]、および4代目モデルの日産・マイクラ(日本名:マーチ)2代目モデルの日産・ノートに搭載されたHR12DDR(DIG-S)型エンジン、ダイハツ・トール(そのOEMのトヨタ・ルーミー/タンク、日本国内向け2代目スバル・ジャスティを含む)に搭載された1KR-VET型エンジンでは前者が概ね2.5Lの自然吸気仕様の4気筒エンジン並みの出力で1.8L並みの燃費を、中者と後者が概ね1.4Lの自然吸気仕様の4気筒エンジン並みの出力で軽自動車並みの燃費を目指したダウンサイジングエンジンとして開発されたが、それぞれが相応の排気量であるためダウンサイジングとはみなされず高出力モデルという扱いである。尤も、MR16DDT型エンジンはもし早い段階で車格の大きい車両に搭載されれば国内初の直噴ターボによるダウンサイジングエンジンとみなされた可能性もあるが、国内では車格の大きい車両に搭載される事は無かったためダウンサイジングエンジンとして扱われる事は少ない。

ディーゼルエンジンへの適用編集

ディーゼルエンジンでは、過給圧をさらに上げることにより、より少ない気筒数・より小さいシリンダサイズのエンジンへ変更することが一般的である。気筒数削減・小型化により、メカニカルフリクション低減による巡行時の燃費低減・材料費低減・重量軽減が図られている。バスの例として1995年にはハイブリッド仕様日野・ブルーリボンで従来の大型車と共通のM10U型エンジンから、中型車用のJ08C型 (240ps) に過給器を取り付けたがあり、非ハイブリッド車においてはKL-規制の頃(2000年頃)より大型車用エンジンにターボを装着する例が増え始め、PJ-規制の頃(2004年頃)から中型車用エンジンにターボを組み合わせるのが定着した。QxG-(QRG-/QPG-/QKG-/QDG-)規制の頃(2015年頃)より大型車に小型車用エンジンを組み合わせた例もみられるようになった。路線バス用のエンジンでは6気筒から4気筒が主流になりつつある[11]

ディーゼルエンジンは予混合燃焼ではない為プレイグニッションによるノッキングが発生しないことから過給器との相性がよく、また日本の自動車用ディーゼルエンジンは自動車NOx・PM法公布以後、排ガス性能と運動性能の両立の為に殆どが過給器付きとなり、同等の出力を確保した上でのダウンサイジングが図られている。

ディーゼルエンジンは(ガソリンエンジン比で)爆発圧力が強く、低回転域でのトルク特性に優れる為、過給機が作動する回転数に達するまで排気量相応の出力に限られ低回転トルクが不足する問題(ターボラグ)はガソリンエンジンに比べて少ないが[12]ツインターボ可変ノズルターボなどを用いることによってさらなる高効率化が図られている。他に高過給化による耐久性の問題や排気量の削減による排気ブレーキエンジンブレーキ力の低下[13]など克服すべき点が指摘されている。近年はターボが不得意な低速時の出力を補うハイブリッド化も進みつつある。

ダウンサイジングの例(いすゞ自動車
車種 2000年頃 2010年頃
エンジン型式 シリンダ配列 排気量(cc) 過給 圧縮比 エンジン型式 シリンダ配列 排気量(cc) 過給 圧縮比
ギガ 6×4トラクタ 10TD1 V型10気筒 30,390 18.0 6WG1 直列6気筒 15,681 16.5
ギガ 10-15t車 6WF1 直列6気筒 14,256 16.0 6UZ1 直列6気筒 9,839 16.2
フォワード 4t車 6HL1 直列6気筒 7,166 18.5 4HK1 直列4気筒 5,193 16.5
エルフ 2t車 4HG1 直列4気筒 4,570 18.5 4JJ1 直列4気筒 2,999 17.5

関連項目編集

脚注編集

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  1. ^ 鈴木孝 『ディーゼルエンジンと自動車』 ISBN 978-4895225090 三樹書房、2008年、108頁
  2. ^ 日本での過給器付きエンジンはディーゼルエンジンの方が歴史が長く、ルーツブロワー付きは1955年(昭和30年)の民生UDエンジンシリーズ、ターボチャージャーも大型自動車鉄道車両DMF31系エンジンDML30系エンジン)、船舶用、産業用などで1960年代後半から1970年代にかけてすでに実用化されている。
  3. ^ 国産乗用車初のターボ車は430型系日産・セドリック/グロリアで、エンジンは共にL20ET型巡航時の燃費(60 km/h低地燃費)を改善すべく、自然吸気仕様に比べて歯車比が小さくされていた。
  4. ^ フィアット500のツインエアなど
  5. ^ 軽自動車そのものが最小の資源で最大の効率を求めた商品である。
  6. ^ フォルクスワーゲン Technology & Concepts>TSIとダウンサイジング
  7. ^ a b “自動車ライター注目のクルマ 24 スバル レヴォーグ - "日本車初"ダウンサイジングターボ、実力はいかに?”. マイナビニュース. (2014年8月16日). http://news.mynavi.jp/series/pickupcar/024/ 2015年1月14日閲覧。 
  8. ^ “マツダ人見執行役員、ダウンサイズせずにSKYACTIV-Gの燃費向上図る”. Response.. (2013年12月20日). http://response.jp/article/2013/12/20/213452.html 2015年1月14日閲覧。 
  9. ^ エコカー技術:マツダのSKYACTIVターボエンジンは“意味ある”過給ダウンサイジング (1/3) - MONOist(モノイスト)
  10. ^ 日産技報-ダウンサイジング直噴ガソリンターボエンジン(MR16DDT)の開発 (特集:ニッサン・グリーンプログラム2012を支えるパワートレイン技術)
  11. ^ 【モンスターエンジンに昂ぶる】いすゞの大型路線バス、エルガはなんと直4搭載【第18回】”. 2018年12月30日閲覧。
  12. ^ 乗用車やSUVなどでは、特にターボ化の際に変速機の1速やデフの最終減速比を高めるなど、ギアリングが変更されることが多く、これがドライバビリティに大きく影響する
  13. ^ 強まる流体式リターダの装着 小排気量で見直される制動対策 トラクタの安全対策 - 株式会社ニッポンリターダシステム

参考文献編集

  • 兼坂弘著 『新・究極のエンジンを求めて-兼坂弘の毒舌評論』 三栄書房、1994年、ISBN 4-87904-031-2

外部リンク編集