ペコロスの母に会いに行く』(ペコロスのははにあいにいく)は、岡野雄一による日本漫画西日本新聞連載の後、東京新聞月曜朝刊にて『続・ペコロスの母に会いに行く』を連載中。

ペコロスの母に会いに行く
ジャンル ファミリー
漫画
作者 岡野雄一
出版社 西日本新聞社
発行日 2012年7月7日
テンプレート - ノート

作者である岡野雄一と、認知症を患った母の交流を描くエッセイ漫画で、切ないながらもユーモラスで温かみのある作風が特徴。なお「ペコロス」とは「小さな玉ねぎ」という意味で、作中では頭のはげかかった中年男性である主人公(作者)の愛称として用いられている。

あらすじ 編集

ゆういち(愛称ペコロス)は62歳の漫画家。89歳の母みつえが振り込め詐欺にひっかかりそうになったり、死んだ夫のために酒を買いに行こうとしたり、子どもの世話をして轢かれそうになったり、古い下着を大量に溜めていたり、認知症の症状を見せはじめる。ケアマネージャーの勧めでグループホームに入居させる。面会に来た息子が分からず、ハゲた頭を見てようやく息子を思い出すみつえ。夫が亡くなったことを忘れ、見えない夫と話すみつえ。原爆に奪われた幼い妹の幻を見て、妹をあやすみつえ。少しずつ認知症の症状が進み、少女に戻り無邪気な様子を見せるみつえ。そんな母を優しく見守りながら、過ぎ去った日々に思いを馳せる。10人兄弟の長女で、畑仕事でボロボロになった弟や妹たちの服を「ふせ」(あて布)するのがみつえの日常だった。みつえはさとるや幼なじみのちえこ、8歳で亡くなった妹のたかよが会いに来たとゆういちに語る。 「死んだ父ちゃんに会えるのなら、ボケるのも悪いことばかりじゃないね」と思うゆういちとみつえの日々は、思い出と現実が交錯しながら淡々と過ぎていく。

評価 編集

認知症の母親の介護体験[1]を題材とする漫画として、2012年に『ハートネットTV』で紹介され[2]、2013年に朝日新聞で取り上げられる[3]

図書新聞のベイベー関根は、本作の抒情性を評価した[4]。一方、朝日新聞の永江朗は、ユーモラスで感動的なだけではなく、介護の困難を感じさせる作品でもあると指摘した[5]

2013年、第42回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞[6]

テレビドラマ 編集

2013年2月17日22時00分 - 23時00分、『ペコロス、母に会いに行く』(ペコロス、ははにあいにいく)のタイトルでNHK BSプレミアムプレミアムドラマ」枠にてドキュメンタリードラマとして放送された[7][8]

キャスト(テレビドラマ) 編集

スタッフ(テレビドラマ) 編集

  • 脚本:青島武
  • 演出:坂部康二
  • プロデューサー:三好保洋
  • 制作統括:堤啓介、松井奈緒子
  • 資料提供:岡野雄一「ペコロスの玉手箱」「ペコロスの母に会いに行く」、西日本新聞社、吉田隆
  • 撮影協力:長崎フィルムコミッション
  • 制作・著作:東北新社NHK
NHK BSプレミアム 日曜22:00枠
前番組 番組名 次番組
人生は“サイテーおやじ”から教わった
〜漫画家・西原理恵子
(2013.2.10)
ペコロス、母に会いに行く
(2013.2.17)
ただいま母さん
(2013.2.24)

映画 編集

ペコロスの母に会いに行く
監督 森崎東
脚本 阿久根知昭
原作 岡野雄一
製作 井之原尊
出演者 岩松了
赤木春恵※遺作
原田貴和子
加瀬亮
音楽 星勝
林有三
主題歌 一青窈「霞道(かすみじ)」
撮影 浜田毅
編集 森崎荘三
製作会社 素浪人
「ペコロスの母に会いに行く」製作委員会
配給 東風
公開   2013年11月16日
上映時間 113分
製作国   日本
言語 日本語
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2013年11月16日より全国公開(舞台となった長崎県では11月9日に先行公開)。監督は森崎東2013年 第87回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・ワン作品。

主人公ゆういちを演じるのは岩松了、もうひとりの主人公みつえ役の赤木春恵は88歳と175日(クランクイン日の2012年9月5日時点)にして本作が映画初主演となり、この出演でギネス世界記録に「世界最高齢での映画初主演女優」として認定された[9]

このほか若き日のみつえに原田貴和子、夫のさとるに加瀬亮。このほか原田知世竹中直人宇崎竜童温水洋一、などが出演する。

撮影監督に浜田毅、音楽プロデューサーに大川正義(『千と千尋の神隠し』などを手がけた)。一青窈が主題歌「霞道(かすみじ)」を書き下ろしている。

あらすじ(映画) 編集

キャスト(映画) 編集

スタッフ(映画) 編集

受賞 編集

舞台 編集

同タイトルの舞台が、2016年に天王洲 銀河劇場中日劇場[18]など全国8会場で上演される[19]

キャスト(舞台) 編集

スタッフ(舞台) 編集

脚注 編集

  1. ^ モデルとなった母は2014年8月24日死去。“「ペコロスの母」岡野光江さん死去 漫画のモデルに”. 朝日新聞DIGITAL. (2014年8月25日). オリジナルの2014年8月24日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20140824162202/http://www.asahi.com/articles/ASG8T00V5G8STIPE01H.html 2014年9月19日閲覧。 
  2. ^ 笠間睦 (2013年5月17日). “介護しているとき鬼になる自分が辛い”. 朝日新聞. オリジナルの2013年9月24日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20130924173646/http://apital.asahi.com/article/kasama/2013050200015.html 2016年5月19日閲覧。 
  3. ^ 諸橋泰樹 (2013年6月9日). “男性が老親と向き合うとき 諸橋泰樹さんが選ぶ本”. 朝日新聞. 2013年8月26日閲覧。
  4. ^ ベイベー関根 (2013年4月6日). “大正生まれのエロかわ(ゆるかわ?)ギャルズ登場!”. 図書新聞. 2013年8月26日閲覧。
  5. ^ 永江朗 (2012年9月28日). “ペコロスの母に会いに行く 岡野雄一”. 朝日新聞. 2013年8月26日閲覧。
  6. ^ 共同 (2013年5月11日). “「静かなるドン」に漫画家協会大賞”. 日本経済新聞. 2013年8月26日閲覧。
  7. ^ NHKオンデマンド プレミアムドラマ「ペコロス、母に会いに行く」”. NHK. 2013年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月19日閲覧。
  8. ^ ドラマ「ペコロス-」主演 イッセー尾形さんに聞く 母子のつながり 別次元 日常こそドラマチック”. 西日本新聞 (2013年1月24日). 2013年10月10日閲覧。
  9. ^ 赤木春恵、ギネス世界記録!世界最高齢映画初主演女優に認定”. 映画.com (2013年11月20日). 2013年11月20日閲覧。
  10. ^ 赤木は2018年11月29日に逝去しており、この主演作が映画作品としての遺作となった。
  11. ^ 2013年日本映画個人賞”. 第35回ヨコハマ映画祭. 2013年12月7日閲覧。
  12. ^ 2013年日本映画ベストテン”. ヨコハマ映画祭. 2013年12月7日閲覧。
  13. ^ 2013年 第87回キネマ旬報ベスト・テン「日本映画ベスト・テン」”. KINENOTE. 2014年1月9日閲覧。
  14. ^ 第68回毎日映画コンクール発表!『舟を編む』が日本映画大賞 シネマトゥデイ 2014年1月21日
  15. ^ “第28回高崎映画祭の受賞者発表”. 高崎新聞. (2014年1月18日). http://www.takasakiweb.jp/news/article/2014/01/1801.html 2016年5月19日閲覧。 
  16. ^ 「映画芸術」2013年日本映画ベストテン&ワーストテン決定!!(2014年1月17日)、映画芸術、2014年1月28日閲覧。
  17. ^ 「くちびるに歌を」が第八回東京新聞映画賞受賞!三木孝浩監督が喜び語る”. 映画.com (2016年3月2日). 2016年3月2日閲覧。
  18. ^ ペコロスの母に会いに行く”. 中日劇場. 2016年3月8日閲覧。
  19. ^ “舞台「ペコロスの母に会いに行く」 東国原、88歳の母の認知症告白”. 中日スポーツ. (2016年5月17日). https://web.archive.org/web/20160517095224/http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2016051702000145.html 2016年5月19日閲覧。 
  20. ^ a b ペコロスの母に会いに行く”. HORIPRO TICKET. 2016年3月8日閲覧。
  21. ^ 2018年5月1日中日劇場(中日新聞文化芸能局)発行「中日劇場全記録」
  22. ^ a b c d e f g h i j ペコロスの母に会いに行く”. 中日劇場. 2016年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月25日閲覧。

外部リンク 編集