夏季オリンピック

4年に一度開催される、スポーツの世界的な総合競技大会
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夏季オリンピック(かきオリンピック、:Jeux olympiques d'été、:Summer Olympic Games)は、近代オリンピックのうち夏期に行われるもの。オリンピズムに基づき行われる祭典であり、オリンピズムを人々に広めるための祭典である[1]。オリンピズム(オリンピック哲学)が目指しているのは、平和な世界を実現し人間尊厳を護るためには人類の調和的な成長が必要なので、そのためにスポーツを役立てることである[2]平和の祭典であり[1][3][4]、単なる総合スポーツ大会ではない[1][5]国際オリンピック委員会(略称: IOC)が開催する。正式名称はオリンピアード競技大会(オリンピアードきょうぎたいかい、英:Games of the Olympiad)。日本語では「夏季五輪」と呼ぶこともある。

夏季五輪の開催国。数字は開催年。
  • 緑色の国は過去に1回開催された国。青色の国は過去に2回以上開催された国(同一都市であるか、その国の別々の都市であるかを問わず)。
  • ●は開催された都市で、黒色は1回、オレンジ色は2回、赤色は3回開催された都市。

4年単位のオリンピアードの第1年に開催される。

第一回夏季オリンピックは1896年アテネで開催された。過去3回夏季五輪の開催が取りやめとなった例があるが、この場合でも「回次」(第○○回の「○○」の部分)はそのまま残る。

なお、第1回大会から全て参加しているのは、ギリシャイギリスフランススイスオーストラリア(ただし1908年1912年のオリンピックではオーストララシアとして参加)の5か国のみである。

大会一覧

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  • 「国」は参加した国・地域数、「種」は行われた種目数
開催都市 開催当時の開催国 大州 開会 閉会 参加選手数 メインスタジアム
1896 I アテネ   ギリシャ王国 ヨーロッパ 4月6日 4月15日 14 241 241 0 43 パナシナイコスタジアム
1900 II パリ   フランス 5月14日 10月28日 24 997 975 22 85 ヴェロドローム・ド・ヴァンセンヌ
1904 III シカゴセントルイス   アメリカ合衆国 北アメリカ 7月1日 11月23日 12 651 645 6 94 フランシス・フィールド [注 1]
1906 IIII アテネ   ギリシャ王国 ヨーロッパ 4月22日 5月2日 21 854 848 6 78 パナシナイコスタジアム [注 2]
1908 IV ローマロンドン   イギリス  イタリア王国  イギリス 4月27日 10月31日 22 2008 1971 37 110 ホワイトシティ・スタジアム [注 3]
1912 V ストックホルム   スウェーデン 7月6日 7月22日 28 2407 2359 48 102 ストックホルム・スタディオン
1916 VI ベルリン   ドイツ帝国 ヨーロッパ 中止 [注 4]
1920 VII アントワープ   ベルギー ヨーロッパ 8月14日 9月12日 29 2626 2561 65 156 オリンピスフ・スタディオン(アントワープ) [注 5]
1924 VIII パリ   フランス 7月5日 7月27日 44 3089 2954 135 126 スタッド・オランピック・イヴ=デュ=マノワール
1928 VIX アムステルダム   オランダ 7月28日 8月12日 46 2883 2606 277 109 オリンピスフ・スタディオン(アムステルダム)
1932 X ロサンゼルス   アメリカ合衆国 北アメリカ 7月30日 8月14日 37 1332 1206 126 117 ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム
1936 XI ベルリン   ドイツ国 ヨーロッパ 8月1日 8月16日 49 3963 3632 331 129 ベルリン・オリンピアシュタディオン
1940 XII 東京ヘルシンキ   日本  フィンランド アジア → ヨーロッパ 中止 [注 6]
1944 XIII ロンドン   イギリス ヨーロッパ [注 7]
1948 XIV ロンドン   イギリス ヨーロッパ 7月29日 8月14日 59 4104 3714 390 136 ウェンブリー・スタジアム
1952 XV ヘルシンキ   フィンランド 7月19日 8月3日 69 4955 4436 519 149 ヘルシンキ・オリンピックスタジアム
1956 XVI メルボルン
ストックホルム
  オーストラリア
  スウェーデン
オセアニア
ヨーロッパ
11月22日
6月10日
12月8日
6月17日
72 3155 2791 364 151 メルボルン・クリケット・グラウンド [注 8]
1960 XVII ローマ   イタリア ヨーロッパ 8月25日 9月11日 83 5338 4727 611 150 スタディオ・オリンピコ・ディ・ローマ
1964 XVIII 東京   日本 アジア 10月10日 10月24日 93 5151 4473 678 163 国立霞ヶ丘競技場陸上競技場
1968 XVXIX メキシコシティー   メキシコ 北アメリカ 10月12日 10月27日 112 5516 4735 781 172 エスタディオ・オリンピコ・ウニベルシタリオ
1972 XX ミュンヘン   西ドイツ ヨーロッパ 8月26日 9月11日 121 7134 6075 1059 195 ミュンヘン・オリンピアシュタディオン
1976 XXI モントリオール   カナダ 北アメリカ 7月17日 8月1日 92 6084 4824 1260 198 オリンピック・スタジアム
1980 XXII モスクワ   ソビエト連邦 ヨーロッパ 7月19日 8月3日 80 5179 4064 1115 203 ルジニキ・スタジアム
1984 XXIII ロサンゼルス   アメリカ合衆国 北アメリカ 7月28日 8月12日 140 6829 5263 1566 221 ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム
1988 XXIV ソウル   韓国 アジア 9月17日 10月2日 159 8391 6197 2194 237 ソウルオリンピック主競技場
1992 XXV バルセロナ   スペイン ヨーロッパ 7月25日 8月9日 169 9356 6652 2704 257 エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス
1996 XXVI アトランタ   アメリカ合衆国 北アメリカ 7月19日 8月4日 197 10318 6806 3512 271 センテニアル・オリンピックスタジアム
2000 XXVII シドニー   オーストラリア オセアニア 9月15日 10月1日 199 10651 6582 4069 300 スタジアム・オーストラリア
2004 XXVIII アテネ   ギリシャ ヨーロッパ 8月13日 8月29日 201 10625 6296 4329 301 アテネ・オリンピックスタジアム
2008 XXVXXIX 北京   中国 アジア 8月8日 8月24日 204 10942 6305 4637 302 北京国家体育場 [注 9]
2012 XXX ロンドン   イギリス ヨーロッパ 7月27日 8月12日 204 10568 5892 4676 302 ロンドン・スタジアム
2016 XXXI リオデジャネイロ   ブラジル 南アメリカ 8月5日 8月21日 206 11237 6179 5059 306 エスタジオ・ド・マラカナン
2021 XXXII 東京   日本 アジア 7月23日 8月8日 206 11656 5982 5494 339 東京オリンピックスタジアム国立競技場 [注 10]
2024 XXXIII パリ   フランス ヨーロッパ 7月26日 8月11日 206 329 スタッド・ド・フランス [注 11]
2028 XXXIV ロサンゼルス   アメリカ合衆国 北アメリカ 7月14日 7月30日 ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム
2032 XXXV ブリスベン   オーストラリア オセアニア 7月23日 8月8日 ブリスベン・クリケット・グラウンド
2036 XXXVI 開催地未定   開催国未定 未定

正式競技

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夏季オリンピック国際競技連盟連合(ASOIF)に国際競技連盟(IF)が加盟している競技が正式競技とされ、本大会の7年前の国際オリンピック委員会(IOC)総会で最終決定する。競技数の上限は28である。競技・種目数は一貫して増え続け、2000年のシドニー五輪では28競技・300種目に達したことから五輪の肥大化が問題視され、2012年のロンドン五輪では野球とソフトボールが外され、26競技・302種目に減らされた[注 12]。2007年には中核競技制度が導入され、2016年のリオデジャネイロ五輪ではロンドンで実施された26競技(2020年大会では25競技)は除外されない。リオ大会ではゴルフとラグビー(7人制)が加わり、28競技で実施された[6]

水泳

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格闘技

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射的

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球技

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複合競技

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その他

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競技人気

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IOCは、夏季オリンピック競技を人気度に基づいて5つのカテゴリー(A-E)に分け、テレビ視聴数(40%)、インターネット人気(20%)、公的調査(15%)、チケット要求(10%)、報道報道(10%)、全国連盟数(5%)の6つの基準で測定している。スポーツのカテゴリは、そのスポーツ競技の国際連盟が受け取るオリンピック収入のシェアを決定する[7][8]。2016年、オリンピックに新たに登場した競技(ラグビーとゴルフ)がカテゴリーEに入れられた。

現在のカテゴリは次のとおり。

Cat. 競技数 競技種
A 4 陸上競技、水泳、体操、ダンススポーツ
B 5 バスケットボール, バレーボール, サッカー, テニス, 自転車競技
C 8 アーチェリー, バドミントン, ボクシング, 柔道, ボート, 卓球, 射撃, ウエイトリフティング
D 9 カヌー, 馬術, フェンシング, ハンドボール, ホッケー, セーリング, テコンドー, トライアスロン, レスリング
E 3 近代五種, ゴルフ, 7人制ラグビー
F 6 野球/ソフトボール, 空手, スケートボード, スポーツクライミング, サーフィン

水泳は、競泳、飛込、アーティスティックスイミング、水球、マラソンスイミングを含む。

開催都市選考

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メダルと入賞

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メダル授与と入賞

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各競技種目の一位となった競技者には金メダル、二位には銀メダル、三位には銅メダルの授与が行われ、4位以下は「入賞」となる。「入賞」は最大8位まで。

失格者が出た場合、永年において可能な限り剥奪・回収および繰上げ者には返還・授与を行っており、近年、ドーピング検査・鑑定によって10年を越える剥奪・授与が実現している。例えば、二位競技者Aが失格の場合、Aの記録抹消とAから銀メダル剥奪が行われ、繰上げ二位の新二位競技者Bに銀メダル授与と銅メダル返還請求が行われ、新三位競技者Cに銅メダル授与が行われる。


国別メダル獲得数

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なお誤解の無いように説明しておかなければならないが、オリンピックのメダルはあくまで「競技者個人」(やチーム)に対して授与されているのであって、「国」に対して授与されているのではない。

以下の表は、IOCが提供する公式データを使用しています。[9]

(2016年リオデジャネイロ大会終了時)

   廃止国家
順位 総計 競技数
1   アメリカ合衆国 (USA) 1,075 846 752 2,673 28
2   ソビエト連邦 (URS) 395 319 296 1,010 10
3   イギリス (GBR) 263 295 293 851 28
4   中国 (CHN) 224 167 155 546 10
5   フランス (FRA) 212 241 263 716 28
6   イタリア (ITA) 206 178 193 577 27
7   ドイツ (GER) 191 194 230 615 16
8   ハンガリー (HUN) 175 147 169 491 26
9   オーストラリア (AUS) 164 177 213 554 28
10   東ドイツ (GDR) 153 129 127 409 5
11   ロシア (RUS) 149 125 152 426 6
12   スウェーデン (SWE) 145 170 179 494 27
13   日本 (JPN) 142 136 161 439 22
14   フィンランド (FIN) 101 85 117 303 25
15   韓国 (KOR) 90 87 90 267 17
16   ルーマニア (ROU) 89 95 122 306 21
17   オランダ (NED) 85 92 108 285 26
18   キューバ (CUB) 78 68 80 226 20
19   ポーランド (POL) 68 84 132 284 21
20   カナダ (CAN) 64 102 136 302 26

脚注

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注釈

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  1. ^ 当初はシカゴで開催される予定だったが、セントルイス万国博覧会との同時開催のため、セントルイスに変更された。
  2. ^ 通常の大会の中間年に開催された特別大会。国際オリンピック委員会はこの大会を正式な大会として認めていない。
  3. ^ 当初はローマで開催される予定だったが、ヴェスヴィオ山の噴火の影響により、ロンドンに変更された。
  4. ^ 第一次世界大戦のため開催中止。
  5. ^ セーリング競技はオランダアムステルダムでも行われた。
  6. ^ 日中戦争第二次世界大戦のため開催中止。
  7. ^ 第二次世界大戦のため開催中止。
  8. ^ 検疫の関係により、馬術競技のみストックホルムで開催され、独自の開会式、閉会式が行われた。
  9. ^ 馬術競技は中国の特別行政区である香港で行われた。
  10. ^ 当初は2020年に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で、2021年に1年延期された。ただし大会名称は変更されず、「2020」が使用された。
  11. ^ サーフィン競技はフランスの海外領土である仏領ポリネシア タヒチ島で行われる予定。
  12. ^ 北京五輪ではこれまでで最大の28競技・302種目だった。

出典

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  1. ^ a b c オリンピックスポーツ文化研究所
  2. ^ International Olympic Comitee, "What is Olympism?"
  3. ^ 舛本直文『オリンピックは平和の祭典 』大修館書店、2019年
  4. ^ 『オリンピックの事典―平和と青春の祭典』三省堂、1984年
  5. ^ [1]
  6. ^ 産経新聞 2012年7月25日
  7. ^ “Athletics to share limelight as one of top Olympic sports”. The Queensland Times. (2013年5月31日). http://www.qt.com.au/news/atheltics-share-limelight-one-top-olympic-sports/1889097/ 2013年7月18日閲覧。 
  8. ^ Winners Include Gymnastics, Swimming - and Wrestling - as IOC Announces New Funding Distribution Groupings”. The Association of Summer Olympic International Federations. 2013年7月18日閲覧。
  9. ^ “RESULTS” (英語). olympic.org. https://www.olympic.org/olympic-results 2017年11月13日閲覧。 

関連項目

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外部リンク

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