卓球

球技のひとつ

卓球(たっきゅう、Table tennis)は、球技の一種である。競技者は向かい合い、プラスチック製のボールをラケットで打ち合って得点を競う。

卓球
Ishikawa and Fukuhara at Table Tennis Pro Tour Grand Finals 2011 (2).jpg
統括団体 国際卓球連盟
通称 ピンポン
起源

1880年代

発祥はゴッシマテニスというインドの遊戯。やがてイギリスに伝わり上流階級で広まった。当時ボールはワインのコルクから削り出したものを使用していたと言われる。
特徴
身体接触
選手数 1人(シングルス)2人(ダブルス)で行う
男女混合 有 男女混合ダブルス(ミックス)
カテゴリ 屋内競技 球技
ボール プラスチック40 mm(ラージボール44mm)
実施状況
オリンピック 1988年-
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歴史編集

卓球は、ジュ・ド・ポームなどの古代のテニスゲームをもとに、19世紀後半にイギリスで考案された[1]。考案者についてははっきりと分かっていないが、ジェームズ・デボンシャーが1885年に特許を申請していることが分かっている[1]。1887年、著名なゲーム用品スポーツ用品メーカーであるジャック・オブ・ロンドンがゴシマという名前でこれを発売した[1]。最初の製品は商業的成功には至らなかったが、1900年ごろ、ボールをコルク製からセルロイド製に改良した。その後、プラスチック製に改良したところ、適度な弾力性が得られるようになったが回転量が減少したためカットマン(守備メインとする戦型)が不利になった。ジャック・オブ・ロンドンが、セルロイド製ボールを打つときの音に基づいてピンポンと命名して売り出すと、すぐに一般に普及した[1]

 
日本で最初にピンポンをした場所にある碑(岡山市)

日本には1902年に東京高等師範学校教授の坪井玄道がフランスから用具一式を日本に持ち込んで普及を始めたことを契機に広まった[2]山田耕筰の著作によると、1886年生まれの耕筰が15歳の時(1901年)に岡山で卓球をしたという記録がある[3]。1929年7月12日、日本卓球会が創立された[4]

国際卓球連盟 (ITTF) は1926年に誕生した。同年、ロンドンで最初の世界選手権が開催された。

ルール編集

ここでは特に断りが無い限り、ITTFによる標準的なルール (40 mmボールを使用)のうち、非身体障害者を対象としたシングルスの競技ルールについて説明する。(ダブルスのルールについてはダブルスを、ラージボール (44 mmボール)を使用する競技についてはラージボール卓球を、障害者向けの競技ルールについてはパラ卓球あるいは車いすの部を参照)。

用具規定編集

卓球台は、上面が長さ2.74m、幅が1.525mの長方形の木製板であり、競技場の地面より76cmの高さに台平面を水平に保って設置される。卓球台の長辺をサイドライン、短辺をエンドラインと呼ぶ。卓球台の中央において、長辺に垂直向きにネットが張られており、このネットで台は2つのコートに等分されている。ネットは、台水平面から15.25cmの高さに、台の両端に取り付けられたサポートによって吊り下げられている。ネットの張り方としては、張られた状態のネットの中央に100gの錘を乗せ、ネットの下がりが1cm以内になるように張るよう定められている。ボールは直径40 mm(ラージボール卓球では44mm)のプラスチック製で、白色で無光沢のもの(ラージボールはオレンジ色で無光沢)[5]。他に、ラケットユニフォームについても、競技の円滑な実施のため規定が定められている(これらの詳細については用具の節を参照)。

試合進行編集

 
スコアボード。中央の大きな文字の数字が現在進行中のゲーム内での得点であり、両端の小さな文字の数字は各プレイヤーの勝利したゲーム数である。11点先取のゲームを規定回数勝利した者が試合の勝者となる。

試合は複数のゲームから構成される。たとえば、最大で7ゲームを行う試合は「7ゲームマッチ」等と呼ばれる。ひとつひとつのゲームは0-0でスタートし、各プレイヤーはルールで定める以下の要件等を満たすことで得点する。先に11点を取ったほうが1ゲームを取得する。ただし、双方のプレイヤーがともに10点を得た状態(10-10、いわゆるデュース)となった場合は、これより競技を進めて先に2点差を付けた者が、その時点でそのゲームの勝者となる。

  • サービスを含めて、相手コートへの正規の打球(返球)に失敗した場合は、自身の失点となる(対戦相手に1点が与えられる)。
  • 対戦相手が自身のコートへの正規の返球を試みる際において、まだ相手の打球が自身のコートに接触する前に、その飛球にラケット・身体を問わず触れてしまった場合は、自身の失点となり、相手に1点が与えられる(返球へのオブスタクル行為)。ただし、相手の返球がコート触れることなく自らのコートのエンドラインより後方に飛球した状態等であれば、地面に落球する前にボールを(手などで)捕球しても失点とはならない。

ひとつのゲームが終了すると、勝者にゲームポイントが付されて、エンドおよび最初のサーバーの交代(下記)をしたうえで次のゲームを行う。次のゲームでは再度0-0からスタートし、同様に、2点差以上をつけての11点先取か、10-10からの2点差以上の取得を行うことで、勝者を決め、ゲームポイントを与える。これを繰り返していき、ゲームポイントが規定の点数に達した時点で、そのプレイヤーが試合の勝者となる。たとえば、7ゲームマッチの場合、4ゲーム(最大ゲーム数の過半数)を先取することで勝者となれる。7ゲームマッチのほか、5ゲームマッチ(3ゲーム先取で勝利)などもよく実施される。また、練習的な意味合いで、3ゲームマッチや1ゲームのみの試合も行われることがある。

試合開始前
試合に先立ち、選手間でラケットの交換(対戦相手のラケットの双方による確認)とコイントスを行い、第一ゲーム開始時のサービス・レシーブ・使用コート等の試合の諸条件を定める。(日本では、コイントスに代えて、じゃんけんの実施も広く行われている)。一般的な試合では、ゲーム前に、ラリー練習を2分間程度行う(時間の関係により「練習はラリー数で○本」などに適宜変更されることがある)。とくに、公認審判がレフェリングするような大規模な大会では、挨拶、ラケット交換、コイントス(じゃんけん)を行い、このとき勝った選手は第一ゲーム開始時の「サービスあるいはレシーブ」もしくは「コート」のいずれかを選択することができる。(他に、使用ボールやユニフォーム等の取り決めが必要な場合は、これらも同じく選択される)
サービス
サービスを行うプレイヤー(サーバー)は、同じプレイヤーが正規のサービスを2本行うごとに交代する。ただし、10-10のデュースとなった降は、1本ごとの交代となる。
サーバーは次の手順に従ってサービスを行わなければならない。はじめに、ラケットを持っていない手(フリーハンド)の開いた手のひらの上にボールを静止させる(ボールの静止位置は、卓球台の自らのコートエンドより後方であり、かつ、卓球台の水平面より上でなくてはならない)。ここから、フリーハンドの手を開いたまま、ほぼ垂直に16 cm以上の高さに投げ上げる。このボールが上昇を止めて落ちて来るところを、サーバーは自身のラケットによって打球する(このときの打球位置は、エンドラインより後ろでなくてはならない)。サービスの打球においては、まず自分のコートに1度だけバウンドさせ、次にネットの上を越えて、相手のコートにバウンドさせなくてはならない。以上の手順を正規に行えなかった場合は、サービスの失敗とみなされ、サーバーの失点(レシーバーの得点)となる。
ただし、上記の手順通りにサービスを実施して相手のコートに打球が触れた場合であっても、ネットを越える際にネットにボールが接触していた場合は、即座に「レット」と宣告される。サービスでの「レット」宣告では、サーバー・レシーバーいずれの失点ともならず、プレイの再試行となる。このときサーバーは、試合進行上のいかなる不利益を負わずに、サービスのやり直しができる。もちろん、上記手順の通りでなかった場合(自身のコートと相手のコートに順番に打球が接触しなかった場合)は、打球がネットに触れていても、サービスミスになり、即座に相手(レシーバー)の得点になる。
サービスをするときには、サーバー選手の身体(フリーハンド等)やユニフォーム等で打球されるボールをレシーバー選手から視覚的に隠してはならない。また、サービスをする際に、トスが低かったり(16 cm未満のトス)、他に規定で定める違法 (illegal) なサービスではないかと審判が疑義を示した場合は、サーバーの選手に注意が与えられる。このときは、サービスのやり直しをするが、再度同様の疑わしいサービスは「フォルト」とされ、レシーバー選手の得点になる。一方で、ルール上明らかな違反サービスは(このような注意がなされることなく)フォルトとされ、レシーバーの得点となる。
レシーブ
レシーバーの選手は、相手のサービスボールが相手コートと自分のコートに1度ずつバウンドしてから、そのボールをラケットで打球して、相手コートにて1バウンド以上の接触が起こるように返球しなくてはならない。この返球が、レシーバーが打ったラケットから離れた後、直接(またはネットに接触した後)に、相手のコートに落ちた場合、正規の返球として認められる。正規の返球が出来なかった場合は、相手選手の得点になる。
レシーバーが正規の返球(レシーブ)に成功したのちは、サーバーの選手に打球の義務が生じ、同様に自身のコートに一度バウンドした返球を打球して相手選手のコートに返球しなくてはならない。あとは、繰り返し返球の成功と打球者の交代が発生する「ラリー」に移行し、ラリーの終了(主に、どちらかの選手の正規の返球の失敗・失点)まで繰り返される。
レシーブを含めた返球の際は、ボールを自分のコートで2バウンドさせてはならない。ボールを自分の身体やユニフォームに当てたり、一回の返球でラケットで2度に打球してもならない(ダブルヒット、二度打ち)。また、相手が返球したボールが自分の台にバウンドする前に、ボールを直接ラケットや身体・ユニフォームで触れてはならない(ボレー行為)。以上の違反に該当した場合は、相手の得点になる。ただし、一連の打球動作において、意図的なものでなければ、ダブルヒットは有効な返球として認められる。また、たとえば、ラケットを持つ手の手首よりも先(指など)にボールが当たったあと、ラケットやそのラバーに当たらずに、相手のコートに入った場合も返球として有効と認められる。一方で、プレー中にフリーハンドが台上に触れるなどした場合は、違反とみなされ、失点になる。
チェンジコート
いずれかのプレイヤーが2点差以上で11点を得るか、10-10の後に2点差を付けた時点で、そのゲームの勝者が決まり、1ゲームの終了となる。次のゲームでは、各プレイヤーは前のゲームと反対側のコートに移ってゲームを行う(チェンジコート、コートチェンジとも)。このゲームでは、コートの交代だけでなく、ゲーム開始時のサーバーも代わり、前のゲームにおいて最初にレシーブをした選手からサービスを始める。
また、最終ゲーム(7ゲームマッチの7ゲーム目等)では、いずれかのプレイヤーが5点を獲得した時点で、チェンジコートが実施される(ただし、かならずしもここではサーバーは交代せず、得点経過に従う)
カウントの取り方
スコアボードの点数を付ける審判は、点数が入る度にサーバー側の点数・レシーバー側の点数を英語で発声する。中国国内ではサーバー側の点数・対・レシーバー側の点数の順で中国語で発声する。
その他
ラリー中にボールが割れた場合は、そのラリーによる得点は無効となり、ラリー後にボールを拾ってボールが割れたのが判明した場合は、そのラリーでの得点は有効となる。審判からボールを交換してもらった上で練習打(ラリー)をした後、サービスのやり直しにてゲームが再開される。
他のコートからボールが飛んで来てラリーの妨害になった場合は、そのラリーによる得点は無効となり、サービスのやり直しにてゲームが再開される。しかし、審判の許可なくラリーを中断した場合は、ラリーの中断になり、中断したほうの失点になる。
ゲーム中のタイムアウトは、1試合につき1回のみ、ゲームを中断して取ることができる。但し、制限時間は60秒以内である。片方の選手がコートに戻った時には、もう片方の選手もコートに戻らなくてはならない。又、双方の選手が同じタイミングでタイムアウトを取った場合には双方のタイムアウトが消費され、その試合では双方がタイムアウトは使用できなくなる。
1ゲーム中、開始より10分が経過しても終わらず、双方の合計得点が18未満の時は促進ルールが適用される。または、双方が合意すれば最初から促進ルールが適用される。
バッドマナー(ラケットを台に投げつける、汚い言葉でののしる。フェンスを蹴飛ばす、台をラケットで叩くなど)の行為については警告として、イエローカードが提示される。2度目の同様な行為にはイエロー、レッドカードが提示され、相手に1点が与えられる。3度目の同様な行為には相手に2点が与えられる。4度目はレフェリー(審判長)に報告され、審判長が処断する。
ラリー中に体やラケットがネットに触れた場合には「タッチネット」となり、触れたほうが失点となる。

ダブルス編集

各チーム2名の計4名で試合が行われるダブルス競技では、基本的にはシングルスと同じルールで行われるが、以下に示すいくつかの規定・条件が加わる。

  • サービスは、サーバー側コートの右半面からレシーバー側コートの右半面へと、交差するようにバウンドさせなければならない。サービスの打球のバウンド位置がこの規定の面(各サイドの右半面)から逸脱した場合は、相手のポイントになる。
  • サービス後のラリーにおいて、各ペアの選手は必ず交互に打って返球しなければならない。相手ペアからの返球を同一のプレイヤー(最後に相手ペアに対して返球したプレイヤー)が二度続けて打っても正規の返球と認められず、相手のポイントになる。
  • サービス権の移動の際は、これまでサーバー側だったペアにおいては、サービスをしていなかった選手がレシーバーになる。また、レシーバー側だったペアにおいては、それまでレシーバーだった選手が次のサーバーになる。
    • これらの規定(交互返球、サービスの移動規則)から必然的に、ひとつのゲームにおいて、誰が誰の打球を返球しなくてはならないかは固定化されている。
  • 1ゲームが終わって次のゲームに入るときは、前のゲームで最初にレシーブをしたペアからサービスを始める。その際、最初にサーバーになるのはペアのどちらの選手でも良い。ただし、レシーバー側は、サーバーの打球を返球する者が前のゲームと異なる組み合わせとなるようにする。
  • フルゲームでどちらかが5点を取った場合はチェンジエンド(コートを入れ替わる)をする。ただし、ここでサーバーは変わらないが、そのボールを返球するレシーバーは変わる。

世界卓球選手権全日本卓球選手権などでは、男子2人または女子2人のペアで行われる通常のダブルスに加えて、男子1人、女子1人ずつのペアで行う混合ダブルスが行われている。

1ゲーム内におけるサーバー、レシーバーの交代例編集

以下に、A選手とB選手のペアと、それに対するX選手とY選手のペアの打球交代の例を示す。Nは0以上の整数であり、ここではサービスは第1球目、レシーブは第2球目と数えている。以下同じく、レシーブに対する打球は3球目であり、3球目打球の返球が4球目…とラリーが継続する。

ゲーム進行 サーバー(4N+1球目打者) レシーバー(4N+2球目打者) 4N+3球目打者 4N+4球目打者
第1, 2ラリー A選手 X選手 B選手 Y選手
第3, 4ラリー X選手 B選手 Y選手 A選手
第5, 6ラリー B選手 Y選手 A選手 X選手
第7, 8ラリー Y選手 A選手 X選手 B選手
第9, 10ラリー

(第1, 2ラリーと同じ)

A選手 X選手 B選手 Y選手
以下同様に継続

コートチェンジにおける各ゲーム開始時のサーバー、レシーバーの交代例編集

以下に、上記の選手構成におけるペアの打球交代の例を示す。上記の同じゲーム内における場合とは、異なり、コートチェンジ(ゲームの終了・開始、あるいは、最終ゲームでのいずれかのペアの5点先取)が起こると、返球するべき打球を打つ相手も交代する。

ゲーム進行 サーバー(4N+1球目打者) レシーバー(4N+2球目打者) 4N+3球目打者 4N+4球目打者
第1ゲーム A選手 X選手 B選手 Y選手
第2ゲーム X選手 A選手 Y選手 B選手
第3ゲーム B選手 Y選手 A選手 X選手
第4ゲーム Y選手 B選手 X選手 A選手
以下同様に継続

ここでは仮に第二ゲームのサーバーをX選手としたが、Y選手であってもよい。第三ゲーム以降も、各ペア内において、ゲーム開始時のサーバーは自由に選んでよい。各ゲーム内で固定し、かつ、コートチェンジごとに変更するべきは、返球するべき打球をする相手である。

団体戦方式編集

団体戦は場合により様々な方式が取られている。世界卓球選手権などでは、双方のチームが3人の選手でシングルスにより最大5回対戦し、先に3勝した側が勝ちとなる方式が採用されている。北京オリンピックの団体戦では、3人の選手で4シングルス、1ダブルスを戦う方式が採用された。

日本国内では、日本卓球リーグを始めとして4人の選手(中学生等では6人の選手)による4シングル1ダブルス方式が多い。この場合、同じ選手がシングルスとダブルスの両方に出ることができる。大会によっては6シングル1ダブルス(関東学生連盟)や3シングル2ダブルス(新日本スポーツ連盟)などの方式もある。さらにローカル大会になると2シングル1ダブルスやダブルスだけの団体戦や男女混成の団体戦もあり、多彩な方式で行われている。

ルールの変遷編集

卓球の世界的な公式ルールは、1926年に発足の国際卓球連盟(ITTF)が管理・管轄している。技術や用具の変遷に応じて、時代ごとに改正が行われてきている。

ITTF設立期
1900年代頃に欧州ゴム製のラバー(現在の1枚ラバーに相当するラバー)が開発され主流となったが[6]、それほど強い打球が打てなかったことやネットの高さが高かったこともあり[7]、守りに徹した方が有利であった期間が長く続き、1936年に行われた第10回世界卓球選手権では1点取るのに2時間以上もかかった試合の記録が残っている[7]1937年、日本初の国際試合が行われ、ハンガリーの元世界チャンピオンと対戦し、その際日本選手は初めてラバーに接した[6]。当時、日本選手のラケットには何も貼っていない状態(別称:木ベラ)でありながらも、好成績を収めた[6]
フィンガースピンサービスの禁止等
男子アメリカチームによって、指を使い、ボールに様々な回転を生み出すサービス「フィンガースピンサービス」が開発され、1937年に行われた第11回世界卓球選手権にて、強い回転をかけたプレーが持ち込まれた[7]。これを駆使したアメリカチームは好成績を収めたが、その反面、強い回転に慣れていない対戦相手がレシーブミスを連発し、ラリーが続かない展開となった[7]。一方ではラリーが長すぎ、一方では短すぎる、という両極端な展開となり、観客が退屈と感じる試合が続出した。これをうけて、国際卓球連盟はルールの改正を行い、ネットの高さの引き下げ、試合時間の制限、フィンガースピンサービスの禁止を決定した[7]。これらの影響で、再び守備型が有利な状況となり、1940年代から1950年代初頭までは欧州の選手によるカット主戦型が全盛であった[6][7][8]
用具の発展と近代卓球の基礎となる規則の制定
第二次世界大戦後、1950年代日本が新しい用具を続々と開発し、実戦に使用され結果を出しはじめた[6][7][8]。たとえば、従来のラバー(現在の1枚ラバーに相当する)を裏返しにして貼る「裏ラバー」が使われるようになった。これは従来のラバーと比較してボールとの接触面積が広いために摩擦の効果が大きく、強い回転をかけやすくなり、それを大きく活かした攻撃を行うことが可能となった。さらに、太平洋戦争時に航空機燃料タンク防弾用など、軍事用に用いられていた独立気泡スポンジが卓球の用具として使われるようになった。スポンジラバーは反発力が強く、従来のラバーと比べてて打球の威力が飛躍的に向上した[6][7][8]。スポンジをラケットの打球面に貼り付けた「スポンジラバー」[8]や、裏ラバーとスポンジを貼りあわせた「裏ソフトラバー」、一枚ラバー(表ラバー)とスポンジを貼りあわせた「表ソフトラバー」が開発されていき、さらに、表ソフトのツブを発展させた「ツブ高ラバー」も開発された。それらの特徴を大きく活かし、主にスマッシュ攻撃を武器に、1952年の第19回世界卓球選手権で日本は大会初参加ながら、女子団体・男子シングルス・男子ダブルス・女子ダブルスの4種目で優勝を果たした。これにより、日本卓球は黄金時代の口火を切り、1950年代の世界選手権において日本選手が各種目にて優勝者を多数輩出した[6][7][8]
1959年、この状況に国際卓球連盟は用具の制限に乗り出した。スポンジのみの使用は禁止され、スポンジラバーは姿を消した。その他のラバーについても、厚みが規定され、4 mmまでと制限された。
同色ラバーの禁止
1983年のルール改正により、両面同色ラバーの使用が禁止された。ラバーを貼った面の反対側の面には異なる色のラバーを貼るか、異なる色に着色しなければならない。これは、異なる性質の同色ラバーをそれぞれの面に貼った場合に、相手選手が見分けられなくなるためである。
ボール径の変更(38 mmボールから40 mmボールへ)
2000年より、競技に使用されるボールの直径が38 mmから40 mmへと変更された。これによって、ボールの空気抵抗が増し、従来よりもラリーが続くようになった。しかしその一方で、回転がかけにくくなり、またラバーが回転の影響を受けにくくなったために、カット型や前陣速攻型のような戦型は苦戦している[要出典]
1ゲームの勝利得点数の変更(11点制の導入)
2001年には、これまでの21点制から11点制に変更された。ともなって、サービスも5本ずつの交代であったが、2本ずつの交代に変更された。これにより、11点の取得(2点差以上を付けた状態)、あるいは、10-10からのデュースで2点差以上を付けることが、1ゲームの勝利の要件となった。
サービスルールの再改正
2002年には、サービス時にボールを隠す行為(ハンドハイドサービス、ボディーハイドサービス)が完全に禁止された。
有機溶剤等の使用禁止(ラバーの後加工の禁止)
2007年9月から、日本国内での主要大会において有機溶剤性接着剤の使用が禁止された。2008年9月から全面的に有機溶剤性接着剤の使用が禁止され、その1カ月後に補助剤を用いた後加工が禁止された。また、アンチ加工された粒高ラバーの使用も禁止された。
プラスチックボールの使用開始
2014年から、ボールの素材が変更となった。これまでのセルロイドボールに代わってプラスチックボールが登場し、2015年からは主要な国際大会においても使用された。(ボールの直径は40 mmのままで変更なし)
カラーラバーの解禁
1983年のルール改正以降、ラバー及び塗りつぶす面の色は一貫して赤と黒のみが認められていたが、2021年10月以降はブルー、ピンク、バイオレット、グリーンのカラーラバーの使用が解禁された。黒と赤、黒とカラーラバーの組み合わせであれば使用が認められるようになった。

用具編集

ラケット編集

卓球に使用するラケットは、主に木材から作られた板からなるもの(単一の木板あるいは合板)と特殊素材入りのもの(木材に特殊素材を複合化したもの)等がある。ラケットの打球表面にはラバーが張られる(ラバーを張る前の状態のラケットも同じく「ラケット」と呼称されることがあるが。区別のため以下ではこれを「ブレード」と呼ぶ)。ラバーはゴムスポンジ等から構成される。ラケット用具一式には様々な種類・特徴を持った製品が存在しており、選手はそれらの中から自分に合う用具を選択することができる。

世界的には様々な呼び方があり、日本や国際卓球連盟は「ラケット」、アメリカ合衆国ではパドル、ヨーロッパではバットと呼ばれる。また、欧米とアジアではラケット哲学が異なり、ヨーロッパではハードなラケットに柔らかいラバーを貼って使用することが多いため、ブレードに弾みや打球感を求め、ラバーに回転の掛けやすさやコントロールを求めることが多い。逆に、アジアではややハードないし中間くらいの硬さのラケットに硬いラバーを貼って使用することが多いため、ブレードに回転の掛けやすさやバウンド後の変化が大きいものを求め、ラバーに弾みや加速力を求めることが多い。

公式試合に使用できるラケットには、レジャー向けに低価格で販売されているラバー付きラケット(パッケージによってはボールや二個目のラケットが入っている)、競技レベルで用いられる市販製品ラケット(ラバーは付属していないブレードのみのもの。ラバーは販売店舗あるいは個人で別途貼り付ける必要がある)、プレイヤー自身の好みでカスタマイズできる特注ラケット等がある。公式試合で使用できないレジャー向けラケットも販売されている。いずれも、ラケットの保管には温度・湿度・日光などの条件に細心の注意を払う必要があり、保管に適したラケットケースが各メーカーから発売されている。

日本国内の公式試合に使用するラケットには、目視できる箇所にメーカー名、日本卓球協会の公認の表示 (JTTAA) が義務付けられている(JTTAAの刻印が入っていないラケットの使用については、大会主催者側への使用許可の届け出が必要)。

国際卓球連盟の規定では、ブレードの材質は85パーセント以上が天然の木でなくてはならないと定められている(ただしグリップ部を除く)。ブレード面は、平らで硬質であることが必須である。ブレードの大きさ(面積)は特に決められていない。面積が大きくなるほどボールを捉えられる領域が増えて有利になるが、一方で、重たさや空気の抵抗が増すといった不利がある[9]

グリップよるラケットの分類編集

卓球の他のラケット球技と異なる特色として、握り方の異なるシェークハンドペンホルダーという大きく分けて2種類のタイプのラケットが存在することである。

伝統的には、ヨーロッパ出身の選手は主にシェークハンドを使用している。

一方、アジアではペンホルダーが主流であったが、1990年代以降アジア各国においてもシェークハンドを使用する選手の割合が増加し、ペンホルダーを上回る状況になってきている。片面のみにラバーを張るペンホルダーは、シェークハンドと比べ総重量が軽いため、女子選手やフットワークに自信のある選手が選択するケースが多くあった。しかし、フォアハンドとバックハンドの両面(両ハンド)での攻防が重視されるにつれ、シェークハンドを選択する選手が多くなっている。

以上のように現在はシェークハンドが比較的多数を占めているが、中国式ペンホルダーを使っての両ハンド攻撃を得意とする選手が世界ランク上位に名を連ねることもあり、一概にどちらが技術的に優位であるかを結論付けることはできない。

シェークハンド
 
シェークハンドラケット
握手する様に握るタイプのラケット。両面にラバーを貼って使用する。ラバーの色は表面と裏面とで異なる色のものを貼らなければならない。グリップの形状は、ストレート(ST)、フレア(FL)、アナトミック(AN)など様々な形状があり、特に前二者のグリップの使用率が高い。一般的には、右図の形のような曲線的な円弧の形状のラケットが使われているが、サイバーシェイプと呼ばれる六角形のラケットなどある。フォアハンド面(手のひらの側)とバックハンド面(手の甲の側)とを、前腕を返すことで比較的容易に打球方向に向けることができる。
ペンホルダー
 
日本式ペンホルダーラケット(角丸型)
ペンを持つように握るタイプのラケット。ペンホルダーラケットはさらに、以下に示すように日本式ペンホルダーと中国式ペンホルダーに大別できる。
親指と人差し指で挟み込む側の面にラバーが張られる。片面のみにラバーを貼る場合、フォアハンド側もバックハンド側も、その面だけで打球する(ラバーがない面での打球は失点となる)。
打球の幅を広げることを目的として、ペンホルダーブレードの両面にラバーを貼るケースもある。たとえば、試合中あるいはラリー中に表裏を反転して打球したり、バックハンドの技術を補うために裏面打法をする選手が多くなってきている。
ラバーの色としては、シェークハンドと同様に、表面と裏面とで異なる色のラバーを貼らなければならない。また片面のみにラバーを貼る場合の裏面(木材面)は、表面と異なる色のシートを張るか、塗料やインク等で塗りつぶすかしなければならない。日本式ペンホルダーでは、購入時には既に塗りつぶされている製品が多い。
日本式ペンホルダー
主にコルク製の台形柱型のグリップが使用されているのが特色である。ブレードの形状によって角型・角丸型・丸型などのペンホルダー独自のバリエーションがある。日本・韓国・台湾などに使用選手が多く、主に片面のみにラバーを貼ることが多い。
反転式ペンホルダー
反転しても持ちやすいように、台形柱型のコルクのグリップを特殊形状に設計された日本式ペンホルダーも存在する。これは両面にラバーを貼れるようにしたブレードであり、上述の反転打法の使用を前提としている。
中国式ペンホルダー
日本式ペンホルダーと比べるとグリップ部に大きな構造体(コルク等)がなく、ちょうどシェークハンドの柄を短くしたような形状をしている。ブレードの形状・厚さ等は、シェークハンドの同コンセプトの製品とほぼ同じものが多い。
ハンドソウ
拳銃を握るように持つタイプのラケット[10]。その握り方から「ピストルタイプ」「ピストル型」と呼称されることもある。曲がるドライブが打ちやすいといわれるが、使用している選手は非常に稀である。グリップの特性上、サービスに変化をつけるのが難しい。フォア面あるいはバック面を異質にする選手はさらに少ない。

ブレード編集

上述の通り、ラケットのうち、ラバーを貼っていない状態、特に、グリップと板の部分のみをブレードと呼ぶ。

トップ選手などの競技レベルでは、寸分狂わないボールタッチやボールコントロールなどが要求され、ブレードの特性が打球感や弾性に少なからずの影響を与える。ブレードの特性のひとつは、反発力である。反発力は球を打ったときのスピードに反映される。もうひとつの特性は剛性である。剛性は打ったときのラケットに伝わる微小変形(振動)に反映される。一般的に、剛性が高いラケット、すなわち、硬いラケットは反発力が高く、弾離れが速くなり、スピードのある打球を可能にする[11]。逆に、剛性が低いラケット、すなわち、柔らかいラケットは、打球の衝撃を吸収しやすく反発力が抑えられるため、コントロールがしやすい。また、ブレード厚が厚いと板の剛性が高くなり、弾みやすく、球離れも速くなりやすい。ブレードが薄いと板がしなるので、弾みにくくなるが回転がかけやすくなる。打球音についてはラケットの性能よりも、使用される材質や重量によって左右される部分が大きい。

表記はまちまちだが、各メーカーはラケットの特性をパラメーターづけて表示している。たとえば、弾みやすさの指標として、OFF、ALL、DEF(および+や-の符号)といった記号が用いられて。類似の表記として、ファースト、ミッドファースト、ミッド、ミッドスロー、スローいった表記もある。上記の場合、最も硬いものは「OFF+」ないし「ファースト」、最も柔らかいものは「DEF」ないし「スロー」である。

単板と合板編集

ブレードの主要素材は木材を原料としており、一枚の板からなると単板と、複数枚の板を貼り合わせて作られる合板とに区別できる。単板ラケットは主に一枚の木板から作られるのに対し、合板ラケットでは異なる特性の板材を組み合わせることによって作られる。

ブレードの木材については材質によって使用用途が異なるが、使用する木材や製造工程、保管方法によってもラケットの特性は左右される。使用される木材については、単板ではが主に使用される。合板では和材や洋材など多種多様であるが、中芯にはバルサ材・シナ材・アバシ・アユース・サンバなどの比重が軽量な木材が使われ、添芯にはパイン・アネグレ・スプルース・染色材などが使われ、上板にはリンバ・コト・ウォルナット・檜・アユース・染色材が主に使用されるが、近年では黒檀紫檀・ウエンジ材・ブラッドウッド・ホワイトアッシュなどのハードウッドが上板に用いられている。

合板の中芯に使われている桐やバルサ材は軽量材なので、セルロイドボール時代では打球が軽くなるという欠点を抱えていた。特に、桐は箪笥などに使用されてきた木材なので、湿気を吸ってしまい打球感や弾性が狂いやすい特性があった。しかし、プラスチック製ボールが登場したことで、ボールの打球感も変わって状況が変化した。桐は、材質特有の球を掴む感覚と扱いやすさに加えて、高い弾性を有しているため、板厚が多少厚くてもプラスチックボールでは球威が出せるなど、湿気の問題点を除けば殆ど欠点が解消されている。バルサ材も、球威の軽さはボールの材質変更を機にほぼ解消している。このように、プラスチックボール時代に移って以降、回転量を増すための選択肢として合板ブレードの使い方がある。

単板
単板は、その名の通り一枚の檜板ないし桂板から作られており、吸い付くような独特の打球感が得られる。木目を縦横に組み合わせることで耐久性を上げられる合板に比べて、割れやすいという欠点がある。このため、木目を縦目に配置して板厚を厚くして耐久性を上げる必要がある。この仕様は、ラバーを両面に貼るシェークハンドでは、ラケットの総重量が大きくなってしまうためあまり用いられない。また、特性が板材の質に影響されるため、同じ種類のラケットであっても品質のばらつきが大きいが、高品質の檜を使った単板ラケットは独特の打球感に加えて反発力と剛性のバランスが良いため、特に角型ペンホルダーのドライブ主戦型選手に人気がある。そのため、高品質の檜単板を求めるプレイヤーの中には、特注単板ラケットを購入するケースも見られる。
合板
異なる特性の板材を木目を縦横に組み合わせることによって、反発力と剛性のバランスをとったブレードである。これにより、単板ラケットに比べて、多彩な特性のラケットが作られており、品質のばらつきも小さい。シェークハンドや中国式ペンホルダーなどに最も多く用いられており、3枚合板、5枚合板、6枚合板、7枚合板などに大別される。また、合板は特殊素材との併用が可能であることも特徴である。打球感や弾みに関して、使用する木材や特殊素材の組み合わせから、様々なタイプのブレードが製造可能である。そのため、構成板の数については、3枚のものから、多いものだと17枚のものも存在している。
基本的な合板の構成を5枚合板を例にして述べる。5枚合板では、中芯材を2枚の添材で挟み、さらに2枚の上板で挟む構造になっている。中芯材はブレードの基盤となる木材で、ブレード中に占める割合が高いため軽量材が主に使用されれている。中芯材の使用木材や厚さなどによって、弾みの度合いが異なる。一方、添材と上板は反発力と剛性のバランスをとるために用いられている。上板については、ラバーの交換時に木材が割れて剥がれるのを防ぐため、柔らかすぎる木材は用いられない。
3枚合板
中芯材と2枚の上板で構成されている。合板の枚数が少なく強度で劣るため、中芯材の厚さを確保したり特殊素材を入れることで高い弾みを有するラケットが登場している。合板の枚数が少なさから、ブレードの薄型化が困難であり、かつ、中芯材の木目が横目になる。この構造に由来する打球感の柔らかさを利用して、前陣速攻型ないしカット主戦型向けのラケットが存在する。
5枚合板
上記の通り、中芯材と2枚の添材、さらに2枚の上板で構成されている。中芯材の木目が縦目のため、反発力と剛性のバランスがよく、ブレードの薄型化も可能である。個々の製品によって特徴が異なり、バリエーションも多いため、戦型を問わず初心者から上級者まで広く扱われている。また、特殊素材を入れても中芯材が縦目になり硬いため、純木のものや特殊素材入りのものを問わず、5枚合板のブレードは最も主流となっている。
7枚合板
中芯材と4枚の添材、さらに2枚の上板で構成されている。個々の製品によって特徴が異なるが、ブレードが厚くなりやすいので反発力と剛性が強い。球離れは速いが、中芯材の木目が横目になるため、5枚合板と比べて中・後陣では弾みが上がってこないという欠点を抱えているため、専ら前陣に特化した仕様である。そのため、上級者向けないし純木材のブレードを好むプレイヤー向けのラケットとされてきた。さらに、上述のプラスチックボールの登場で、セルロイドボール時代以上に上級者向けの傾向が強くなっている。
特殊素材編集
 
カーボン(炭素繊維)を使ったラケットのイメージ

先述の通り、ブレードは、素材の15%以内であれば天然の木以外の材料を使用することが認められている。そこで、ブレード材の一部として、炭素繊維(カーボンファイバー)・アリレート(ベクトランファイバー)・ケブラーガラス繊維(グラスファイバー)・チタンザイロンなどの特殊素材が使用されている。他にも、カーボンファイバーとアリレートを合わせたアリレートカーボンや、ZLCと称されるザイロンとカーボンを合わせたもの、ケブラーとカーボンが使われたケブラーカーボンや、テキサリウム・シルバーカーボン・バサルトファイバー・テキストリームなど多種多様の特殊素材がある。

ブレードの合板構成のなかに特殊素材を配置することで、純木ラケットよりも弾みが高くなるだけでなく、ラケットのスイートスポットが広くなって、均一な弾みが実現した。一方で、特殊素材を用いることにより、木材本来の打球感とは異なる打球感になり、弾みの緩急が付けにくいという短所も抱えている。5枚合板における特殊素材の配置パターンは、上板と添芯の間に配置するもの(アウター型)、中芯と添芯の間に配置するもの(インナー型)がある。アウターは弾みと球離れが高くなり、インナーは木材寄りの打球感になる。

木材の加熱処理編集

フォアとバックの両ハンドでの攻防スタイルが確立された現代卓球では、ラバーの重量化に伴い軽いブレードが求められている。ラバーの反発力を向上させるグルーが禁止されて以降は、ラバーだけでなくラケットの反発力の向上が求められてきた。また、木製であるためラケットは湿気に弱い。さらに、メーカー側も卓球ラケットには適していなかった桐材を、有効利用とコストダウンを兼ねて模索していた。このような問題を解決するため、木材を手軽に乾燥させる製造方法が確立された。

これは、木材の沸点よりも低い温度で加熱処理することで木材に含有されている水分を取り除き、軽量化と吸湿性の低減をするものである。この方法で製造されたラケットは、均一的な弾みに加えて、5枚合板でありながら特殊素材を用いなくても従来より高い剛性と反発力を得ることが可能となった。2010年頃より登場した新しいタイプのラケットがこれにあたる。

しかしながら、この方法は木材に物理的な加工を施すために、木材本来の球を掴む感覚を失うこと、桐材などの軽量材では球威が落ちるといった欠点を持つ。ただし、後者についてはプラスチックボールであれば球威を補うことは可能である。

ラバー編集

卓球のラバーは、ゴム(英語ではラバー)製とスポンジ製のそれぞれのシートを接着剤で貼り合わせたものである。ラケットにおいて、最表面になるゴム部のシートのことを単に「シート」とも呼び、シートの部分でボールを打球する。一枚ラバーと呼ばれるラバーにおいては、ゴム製のシートのみからなる。

国際卓球連盟の規則によれば、ラバーの厚さについては、ラバーシート(ゴム部分)の厚さは2 mm以内でなくてはならない。また、ラバーシートとスポンジ層の厚さの合計は4 mm以内と定められている(接着層も含む)。他に、粒の形状やアスペクト比に関しても規定が詳細に定められている。

ラバーは以下に示す通り沢山の種類が存在するが、公式戦の出場には卓球連盟等の認証が必要である。これを明示するため、2008年以降発売の新製品ラバーには、国際卓球連盟の公認の表示 (ITTFA)、メーカー番号と登録番号(メーカー番号-登録番号)が縁で囲まれた形で表示されているものが多い。

国際大会等の公式大会では、国際卓球連盟の公認ラバーリストに掲載されているラバーに限り使用が認められており、このリストは毎年4月と10月に更新されている。日本国内での公式大会においては、2006年4月以降より日本卓球協会の公認の表示(JTTAA)がないラバーであっても、国際卓球連盟の公認ラバーリストに掲載されているラバーであれば使用が認められるようになった(それ以前の日本国内での公式大会では、目視可能な位置にメーカー名、ITTFAマーク、JTTAAマークの表示があるものの使用が義務付けられていた)。

なお、中国のメーカーからは、ラバーの後加工禁止ルール(上記)への対策として、製造段階でラバーのスポンジ面に補助剤グルーを塗布した「已打底」ラバーが発売されている。このような処置をしていないノングルーノン・ブースターラバーは「未打底」として区別されている。もちろん、「未打底」については、後述の公認接着剤の規定違反に触れるものではない。また、「已打底」についても、国際卓球連盟の公認ラバーリストに掲載されているものであれば、公式大会での使用が可能である。

ゴムシート
ラケット面の最表面となるゴム製のシート。天然ゴムまたは合成ゴムを主原料として、顔料を混ぜて色をつける。このとき顔料の赤・緑・青の比率を変えることでシートの色が決まる。顔料を赤のみ使用した場合は赤いシートとなり、全ての色の顔料を使用した場合は黒いシートとなる。
一般に、天然ゴムと合成ゴムの割合によって性能や寿命、シートの透明度が変わる。天然ゴムの比率が高いほど回転量が多く、寿命が長く、シートの透明度が低くなる。逆に、合成ゴムの比率が高いほど弾みが高くなり、寿命が短くなり、シートの透明度が高くなる。また、顔料の使用量が多い黒いシートは柔らかくなりやすく、球離れに至るまでの滞在時間が長くなるため、回転量が増えやすい。逆に、赤いシートは固くなりやすいために球離れが早い。それ以外の色のシートの性能は、顔料の比率によってバラツキが大きい。
ゴムシートの形状は、ゴムシートとブレードとの間にはさまるスポンジへの食い込みを考慮して設計されている。ゴムシートは、片面が平らで反対側の面には粒(あるいはイボ)と呼ばれる円柱状の突起があり、粒は平面六方格子状に規則的に密に配置されている。六方格子の配置は縦配列ないし横配列のものがそれぞれある。これらのゴムシートの構造は、ラバーの特性や重量等に大きく影響している。たとえば、ゴムシートの平面部分が厚いほど重量が重くなる傾向にある。
スポンジ
スポンジ製のシートは、上記のゴムシートを組み合わさって一枚のラバーとなる(スポンジ層のない「一枚ラバー」も存在する)。ラバーがラケットのブレードに貼り付けられる際は、このスポンジ層が接着剤を介して直接ブレードに触れる部分である。ボールの食い込みと食い込んでからの復元力に大きく関わっている。弾性が高いスポンジほど、復元力が速く強くなり、上記ゴムシートの引き連れ効果による回転量も多くなる。スポンジ層はゴムシートと比べて重量は軽い。「皮付き」と呼ばれる硬いものもある。
スポンジの厚さについては、厚いものは球が食い込みやすく、方向の狙いを付けやすい。スポンジ層が厚いほど復元力が高くなるので、ラバーの弾性が高くなると同時に、ボールとの接触時間が長くなり、ゴムシートの引き連れ効果で強い回転が掛かる。ただし、強い回転の打球は競技上威力がある球種だが、スポンジ層が厚いと反発時の弾性が高くなり、飛距離等の制御が一般に難しくなる。逆に、薄いスポンジは深く球が食い込まないので、強打の返球などに際しての弾みが低下し、ボールとの接触時間が短くなる。このため、薄いスポンジ層のラバーでは回転量が低下するいった特徴があるが、スマッシュや擦り打ちでの回転を掛けるのがやりやすくなるなど、必ずしも厚いスポンジ層がゴムシートやラバーの特性にとって良いわけではない。
スポンジの厚さは、メーカーごとに表記は異なるが、たとえば、2.2mmのものがMAX、2.3mmのものがULTRA MAXないしMAX+、MAX未満のものはスポンジ厚の数値で表記されるなどしている。日本では、これに準じて特厚、厚、中、薄、極薄等の表記がされている。基本的に、裏ソフトラバーはMAXや特厚のラインナップが多い。表ソフトラバーはプレイスタイルに応じて求められる特性が変わるため、スポンジ厚のバリエーションが豊富である。粒高ラバーについては、薄や極薄、スポンジ無しのOXが多い。このように、ラバーの種類・性質によってスポンジ厚の好まれる傾向には差異がある。
ラバー硬度
ラバーの硬さは「ラバー硬度」という数値で表記される。数値が高いほど硬いラバーである。回転系テンションラバーは、気泡スポンジを搭載しているために、表記数値よりも数度程柔らかいとされる。
ISOに準拠した硬度(日本硬度、中国球式硬度等)や中国針式硬度、あるいは、メーカー独自の硬度基準(ドイツ硬度、タマス(バタフライ)硬度)等が硬度計測で採用されている。このように、ラバー硬度の数値は製造国ごとに異なるため、ラバーを選ぶ際には硬度換算する必要がある。たとえば、日本硬度で40度の硬さのラバーと同じ硬さのラバーを選ぶ場合は、バタフライ硬度で-5度前後、ドイツ硬度で+5度前後、中国針式硬度で-10度前後(ドイツ硬度比-15度前後)の硬度数値を目安にしてラバーを選ぶことになる。ラバーを選ぶ際に基準とされるラバー硬度値は、日本硬度で40度、ドイツ硬度で47.5度が目安とされる。中国では、針式硬度と球式硬度の二種類の硬度基準があるため、ラバー選定時に混乱をきたさないように、メーカーによっては軟、中、硬等の表記がなされている。
硬いシート・スポンジのラバーは、相手の下回転に対してカット打ちがしやすく、威力のある打球を可能にする。一方で、球が食い込みにくいために打球のコントロールが難しい(回転の影響を受けやすい)。逆に、柔らかいシート・スポンジは、球が食い込むので打球のコントロールがしやすい(回転の影響を食い込みで相殺しやすい)。一方で、球が食い込んだ後の復元が遅く、強打時のエネルギーロスが大きい。
ラバーの特性
上記の通り、ラバーは主にゴムシートとスポンジから成る。ラバーの特性は、特に最表面のゴムシートの特性に大きく依存しているが、ゴムシートと組み合わさるスポンジ層の特性・厚さなどの条件の組み合わせによって総合的に決まる。たとえば、同じゴムシートの製品ラインナップでも、異なる特性のスポンジを組み合わせた製品がある。逆に、同じ種類のスポンジ層に異なるシートを組み合わせたラインナップが用意されることもある。これに加えて、ブレードの特性も影響するため、プレイヤーに合う組み合わせのラケット(ブレードとラバーを合わせたもの)を求めるには、情報収集や試行錯誤が必要となる。
ラバーの長期的な耐久性があまり高くない。放っておいても乾燥や酸化でゴムが劣化するうえ、球を食い込ませたり回転を掛けるために擦ったりするので、摩耗によりラバーの摩擦力や弾力は徐々に変化してくる。用具メーカーが推奨する交換寿命の目安は、一般の選手で1カ月、練習量が少ない選手でも2 - 3カ月である[12]。また、短期的な性能についてみると、打球するうちにラバーに埃などのゴミが付着し、摩擦力が落ちてくる。そのため、これらをふき取ってラバーの性能を回復するための専用のラバークリーナーが市販されている。

多くのラバーに共通する基本的な構成と特徴は以上の通りである。以下に、各タイプのラバーについてそれぞれ解説する。

裏ソフトラバー編集

裏ソフトラバーは、ゴムシートの平らな面を外向きにしてスポンジ層と貼り合わせたラバーである。ボールとの接触面積が大きくなるため、ボールに回転をかけやすく、一般的なほとんどの打法に対応しやすいため、現在においても最もよく使われているタイプのラバーである。

高弾性・高摩擦系
高弾性・高摩擦系裏ソフトラバーは、シートを薄くして粒をやや細くて高めに設計されたラバーである。粒がスポンジに食い込みやすく、スポンジの反発力でボールを飛ばすと同時に、シート表面の摩擦力を利用して引き連れ効果を起こしてボールに回転を掛けることで、高い弾性と摩擦力を実現する。弾道の安定性が良く、伸びのあるドライブを打つのに適している。40年以上もの長い歴史を持っているのでロングセラーラバーが多い。過去には、シートの合成ゴム比率を上げることで弾みを向上させたラバーや、高弾性・高摩擦系の特徴を生かしてテンション系ラバー並みの高い弾性を有する2.6mmの超極厚スポンジ採用のラバーなど個性的なラバーも開発された。かつては最もシェアの高いラバーであったが、ノングルー化に伴ってテンション系ラバーが普及したために使用者は減少している。近年に登場したラバーは、生産技術の改良で従来のものより高い弾性と摩擦力を実現している。日本のメーカーの得意分野である。
テンション系
テンション系裏ソフトラバーは、シート及びスポンジを構成するゴム分子に負荷(テンション)がかかった状態としたラバーである。メーカーによっては、ハイテンション型、エネルギー内蔵型などの様々な呼び名がある。ボールが食い込んでからの速い復元力と強烈なシートの引き連れ効果によって、従来の高弾性・高摩擦系と比べて高い弾性と摩擦力、高い打球音を実現している。一方で、ラバー寿命が短くなりやすい。シートの形状は、高弾性・高摩擦系ラバーに準ずるが、一部のラバーではシートが厚くて粒が低くて太く、粒の太さもルール上で認められているギリギリの太さにすることで、台上処理技術に適したテンション系ラバーも登場している。強打に際して、鋭く曲がったカーブドライブやシュートドライブ等を打つのに適している。一方で、競技者の技量水準の高さを要し、棒球となったり、回転量不足となったり、弾みの制御が難しいという側面も持ち合わせている。トップ選手の間では使用者が多く、グルーの使用が禁止となった2008年以降は、「回転系テンションラバー」が登場したことで、最も主流となっているラバーである。近年では、ラバーの高性能化と耐久性向上が図られるているも、価格は高騰化傾向にある。ドイツや日本のメーカーの得意分野である。
スピード系テンション
スピード系テンションラバーは、テンション系裏ソフトラバーのなかでは最も歴史が長い製品である。全般的にシートが柔らかいため、シートが変形しやすく、球が食い込んでからのレスポンスが非常に早い。そのため、軽打時でも高い弾みを有するが、強打時にはエネルギーをロスしやすい。早いレスポンスのため弾性は高いが、使用者が回転を掛ける技術に乏しいと、打球時に棒球が出やすい。一方、打法によっては、シートの引き連れ効果を巧く引き出して、強烈な回転を掛けることが可能である。シェークのバック面や中国式ペンの裏面に貼るのに適しているとされる。
回転系テンション
回転系テンションラバーは、天然ゴム比率が高いシートと気泡の大きいテンションスポンジを組み合わせたタイプのテンション系裏ソフトラバーである。スポンジがラバー硬度よりも若干柔らかいので、球が食い込みやすい。また、シートが通常のテンション系と比べて少し厚く、粒が若干太くて低い。これらの構造から、ゴムシート表面に高い摩擦力が生じて、回転を掛けやすい。シートの硬さとスポンジの柔らかさが適度に設計されており、軽打時、中打時、強打時で弾みと回転の緩急が付けやすい。全般的に球が食い込むレスポンスに優れている一方で、食い込んでからのレスポンスが非常に遅いので、手首主体の打法が比較的やりづらい傾向にある。特に、スポンジが柔らかいものは、食い込んでからのレスポンスがさらに遅くなるために、打球時に球が浮いてオーバーしやすい。このような特徴から、ノングルー時代以降では、最も主流となっているラバーである。
回転系テンションラバーのうち、いわゆる「曇り系」、「マット系」と言われている製品がある。これらは、天然ゴムで構成された硬いシートに強いテンションを掛けたものを指す。従来の回転系テンションよりも回転が多く掛かりやすいが、シートが硬いため重量が重く、スポンジが硬いものになると粘着系ラバーと遜色ない硬さとなる。シートが非常に硬いことから、シェークのバック面では扱いづらいが、カット主戦型や日本式ペンには好まれるラバーとされる。
粘着系
粘着系裏ソフトラバーは、シート表面に粘着性を付与したラバーである。シートが厚めで、粒が低くて太いものが多く、粒配列は縦目のものと横目のものがある。同じ厚さの他種のラバーと比べると、重量が重めで弾性が低いものが多い。粘着性能が強いラバーでは、静止したボールを表面に付けても持ち上げても、落ちないものもあるほどである。粒が低い上にスポンジが硬いものが多く、ボールが食い込みにくい。そのため、ラケットの面を添えて当て擦ることで、ボールに強烈な回転を掛けるのに適している。ボールがラバーに触れる時間が長いため、クセ球が出しやすく、回転量に変化もつけやすい。その反面、相手の回転の影響も受けやすい。また、他のラバーと比べて非常にデリケートであり、シート表面に粘着性能の保持のため、市販の一部のラバークリーナーが使えないというデメリットがある。各メーカーからは、粘着系ラバー保管用の粘着シートが発売されており、これを使用してラバーを保管することで、シートの粘着力を強化あるいは維持することが可能である。粘着系ラバーは、主に中国系の選手が使用しており、日本国内においてもドライブ主戦型やカット主戦型選手などに使用者が多い。中国のメーカーの得意分野である。
強粘着系、微粘着系、超微粘着系
シート表面の粘着性能の強さによって分類されることがある。粘着性が強いほど回転量が多くなりやすいが、打球スピードが低下しやすい傾向にある。
粘着系テンション
粘着系テンションラバーは、粘着系ラバーとテンション系ラバーの性能を併せた、従来の粘着系ラバーよりも高弾性であることを特徴とするタイプの裏ソフトラバーである。前述の気泡の大きいテンションスポンジを採用した粘着系回転系テンションラバーも、市販されている。粘着系ラバーの欠点であったボールの食い込みが改善されており、当て擦りのドライブ打法などが非常にやりやすい。
極薄系
粘着質のシートと粒が低いシート形状の特性を生かして、極薄スポンジと組み合わせることで「粒高ラバーもどき」の性能を実現した粘着系ラバーである。粘着ラバーの特徴である回転量とクセ球に加えて、粒高ラバーのような変化をつけることが可能であるが、弾みが非常に弱く回転の影響も大きいので、専らペン粒に向いた仕様のラバーである。
コントロール系
コントロール系裏ソフトラバーは、柔らかいスポンジとシートを用い、ボールコントロールがしやすいように設計されたラバーである。扱いやすく、安価で長寿命な事が多いため、初心者などを含め、技術を身につける際に使用されることもある。しかしながら、反発力と摩擦力は低いため、競技段階のレベルでの使用では、威力不足の感があり使用している人は少ない。

表ソフトラバー編集

表ソフトラバーは、ゴムシートの粒の面を外向きにして、スポンジと貼り合わせたラバーである。スポンジとゴムシートの接合部の構造上、スポンジに食い込みにくいため、裏ソフトよりも柔らかいスポンジが採用されている。シートの粒形状や特性により回転系・スピード系・変化系等に分類され、それぞれに適するよう粒配列は縦目と横目のパターンがラインナップされている。

粒の面が最表面であるために、ボールとの接触面積が小さく、球離れが早い。裏ソフトラバーと比べると、相手の打ったボールの回転の影響を受けにくいとされるが、その一方で、自発的に掛けられる回転量は小さい。基本的に前陣速攻型の選手やカット主戦型の選手が用いる場合が多い。

しかしながら近年では、ラケット両面に裏ソフトラバーを貼ったドライブ主戦型が全盛となっている影響もあり、裏ソフトラバーよりも製品のラインナップが圧倒的に少ないのが現状である。一方で、従来の表ソフトラバーよりも高弾性であることを特徴とした、テンション系表ソフトラバーが登場している。裏ソフトラバーと同様に気泡の大きいスポンジを採用した回転系テンション系表ソフトラバーも製品化されているなど、表ソフトラバーの特徴を活かして拡大するといった用具の開発自体は引き続き行われている。

後述のラージボール卓球の競技では、ルールにより表ソフトラバーのみが使用を認められている。ラージボール競技用に開発された表ソフトラバーも存在し、これらは硬式用と比べて柔らかいものが多く、ボールが変形しにくいという特徴を有している。

回転系表ソフト
回転系表ソフトラバーは、粒の形状が台形で、大きめのラバーである。表ソフトラバーのなかでも回転がかかりやすいが、スピード系表ソフトのように球離れは速くない。また、ナックルなどの変化した質の球も出しにくい。主に、スマッシュを主戦としながら、ドライブを織り交ぜるタイプの選手が多く使用している。
スピード系表ソフト
スピード系表ソフトラバーは、粒の形状が台形と円柱を組み合わせた小さめの形状のラバーである。表ソフトラバーの中では、もっとも球離れが速く、ナックル系の球も出しやすい。一方で、回転系表ソフトのような強い回転をかけるのは困難とされる。主に、ドライブはつなぎで使い、スマッシュを主戦とするタイプの選手が多く使用している。
変化系表ソフト
変化系表ソフトラバーは、円柱型の高めの粒をもったラバーである。ナックルなどの変化が出やすい設計になっている。かつては、表ソフトラバーの中では前2者と比べて使用者は少なかったが、福原愛がこのタイプのラバーを貼って実績を残したことに加えて、プラスチック製ボールの移行により粒高ラバー(後述)でのカットの威力が低下したことから、近年はカットマンを中心に使用者が増えている。

粒高ラバー編集

粒高ラバーは、構造上は上記の表ソフトラバーと類似している(粒を打球面側に向けた構造である)が、その名の通り、粒の高さが高く柔らかいといった特徴を有するラバーである。スポンジの有る粒高ラバーと、スポンジの無い粒高一枚ラバー (OX) の二種が主に市販されており、これらを総称して粒高ラバーと呼ぶ。日本語では「イボ高」とも呼ばれるが、イボという語感を避け、粒高ラバーと称されることが多い。従来の粒高ラバーよりも高弾性であることを売りにしたテンション系粒高ラバーも登場している。

粒高ラバーは、表ソフトラバーと比べて粒の形状がさらに高く、ゴムシートは水平面部分が薄い。粒配列は横に並んでいる横目のものが多い。打球時に大きく粒がしなるように変形するのが特徴である。このとき、粒が柔らかいほど打球に変化をつけやすい。粒の頂点部の加工(布目)の有無によっても粒高ラバーの性能は異なる。スポンジ有りの粒高ラバーであっても、スポンジが非常に薄いために、弾みは弱く、表ソフトラバーとは異なる弾道になる。

表ソフトラバー以上に、自発的にボールに回転を与えるのは難しい一方で、相手の回転の影響も受けにくい。そのため、相手の回転を利用したり、そのまま回転を残して返球することが可能という特性もある。打球の際に粒がボールを弾くため、自発的な回転をかけにくい反面、相手が打ち込んできた打球の回転を維持・残存させることができる(逆回転での返球)。粒高ラバーは、自身の打法と相手の打球の質の双方に打球が影響をうけるため、扱う側も予測しなかった回転や変化がでることもある。使用者の技量にもよるが、粒高ラバーによるドライブ打法等も可能である。

粒高ラバーは、主にカット型や前陣攻守型の選手が変化を付けるために用いる。反転型ペンホルダーラケットに貼って使用する場合もある。戦型によって用途が異なり、一般的に、カットの回転量と変化量を求めるカット型では粒が高くて細いものが好まれる。ブロックでの変化量とスピン反転能力を求めるペン粒などの守備型では、粒が低くて細いものが好まれる。ミドルが弱く粒高にも攻撃力が求められるシェーク前陣攻守型では、それらの中間くらいの性能のものが選ばれる傾向にある。

かつては、シート表面にアンチ加工された「アンチ粒高ラバー」が存在していた。2008年以降にアンチ粒高ラバーの使用が禁止されたことにより、以前と比べて粒高ラバーの性能は相対的に低下しており、プラスチック製ボールの移行後はさらに性能低下が顕著となっている。なお、2008年以降に発売されたラバーはITTF登録番号が表記されているものが多く、これらのITTF登録番号の表記は、使用している粒高ラバーが「アンチ粒高ラバーではない」という証明としても使用できる。

一枚ラバー編集

一枚ラバーは、表ソフトラバーからスポンジを除いた構造のラバーである(粒高ラバーのスポンジ層のないものとは異なる)。第二次世界大戦以前は、この一枚ラバーしかなかった。あまり弾まず、回転をかけにくいラバーであるが、安定した打球を打てるという利点がある。現在、このラバーを用いる選手は非常に少ない。かつては、この一枚ラバーの構造の表裏を裏返したラバー(裏ソフトラバーからスポンジを除いたものに相当)も存在したが、このラバーは現在はルールによって使用が禁止されている。

アンチラバー編集

アンチラバーは、一見しての外見は普通の裏ソフトラバーだが、摩擦が極端に少なくなるように設計されたラバーである(ラケット交換時などにラバーの製品名等の刻印を確認できるため、アンチラバーであること自体の確認は可能である)。アンチラバーを用いて裏ソフトラバーと同様の打法を試みても、ボールには回転がかかりにくい。かつては、同色の裏ソフトラバーと組み合わせることで、ラバー外観の酷似性とそれに反した性質差を利用し、ラケットを反転させて相手に打球の変化を分かりづらくさせるスタイルに主に使用されていた。しかし、1983年のルール改正(両面同色ラバーの使用禁止)の後は、アンチラバーの使用者は激減した。コントロール性を高めるため、やわらかいスポンジが使われていることも多いが、メーカーによっては折れないほどの硬いスポンジとシートで構成されているものもある。

ボール編集

一般的に卓球(硬式卓球)で使用されているボールは、直径が40 mmで質量が2.7 gである。ラージボール卓球用いられるものは直径が44 mm、質量は2.2 - 2.4 gである。ボールの色は白と橙色の二色がある。硬式卓球ではどちらの色のボールを使用してもよいが、ラージボール卓球では橙色のみが用いられる。周囲環境(照明・床・背景)、ユニフォームの色、卓球台の色によってボールを視認しづらい場合は、どちらか色のボールを使用するか選ぶことができる大会もある。完全な球形を精度よく大量に作ることは技術上難しいため、同じ製造工程で作られた球に対し、どの程度球形に近いかでグレード付けされている。最も真球度の高いものは「3スター(スリースター)」とグレード付けされ、最低ランクの無印まで4段階に分けられている。グレード分けは、ボールを坂路で転がしたときの軌跡のずれの大きさで実施している。完全な球ならば坂路をまっすぐ下り、ゆがみが大きいほどずれが大きくなる。通常、いわゆる公式戦が行われる大会では、3スターが使われる。ボールはプレイの精度に大きく影響する一方で、1つの大会の公式球に複数のメーカーが選ばれる例もあった[13]

 
ラケットとボール。左から40 mm, 44 mm, 54 mmである。

従来の硬式卓球の試合では直径38mmのボールが使われていたが、2000年のルール変更により直径40 mmのものが使われるようになった。このボールの大きさの変化による影響としては、空気抵抗が大きくなったために速く遠くへ飛びにくくなったこと、回転がかけにくくなったこと、ナックル等の変化性の打球の影響が小さくなったこと、それらの結果としてラリーが続きやすくなったことなどが挙げられる。

ボールの素材はかつてはセルロイドが主流だったが、2010年代に非セルロイドの材質のもの(プラスチック素材)に移行した。オリンピックの卓球競技では、2012年のロンドンオリンピックからプラスチックボールに変更されている[14]。この変更の背景として、セルロイド製のボールは燃えやすく、火災の危険性があったためである。このため、航空機への持込を断られた例(アテネ五輪の前)も出てくるなど、IOCがITTFに材質変更を求めたともいわれる[15]。ITTFはボールの素材の変更理由として、セルロイドは燃えやすく太陽光などにより劣化し耐久性に乏しいこと、良質のセルロイドの入手が難しくなっていること、プラスチック素材のほうが回転が少なく弾みを抑えることができラリー戦が続く、などの理由を挙げたとされる[14]。たとえば、セルロイドの公式球は製造に半年かかる(セルロイドを練り上げて板状にするのに3か月、丸く型抜きしてアルコール浸けで半月、自然乾燥に半月、半球体にするのに半月、一つの球体にして表面を研磨するのに半月、その後に乾燥、マーク押し、包装という工程を経て完成させていた)[16]

日本では、2014年から日本卓球教会の定めるルールとして、非セルロイド素材で製造する事が義務付けられ、直径40mmのプラスチックボールが登場した(つなぎ目のあるボールと、つなぎ目のないシームレスボールの双方が認められている)。プラスチックに材質が変わったことによる影響として、打球感が変化したこと、シボがつけられなくなったことで回転量が相対的に低下したこと、打球時の初速が速くなったこと、などの変化が挙げられる。それに加えて、シームレスボールでは、弾みのばらつきが減少したことで、打球が安定しやすいという特徴がある。一方で、プラスチックボールはメーカーによって性能のバラツキが激しく、壊れやすいという指摘もある[17]

サイドテープ編集

サイドテープは、競技中に予期せずラケットが卓球台にあたったときに、ラケットの側面(サイド)を破損しないためにつける保護テープである。ラケットのブレードのみを覆うように貼る競技者や、使用しているラケットのラバーのスポンジ部分まで覆うように貼る競技者もいる。一般的に、サイドテープ幅は6 mm、8 mm、10 mm、12 mm等のラインナップがある。金属製のサイドテープもあり、ラケットの総重量や重心位置を調節することも出来る。

接着剤編集

上述の通り、競技用のラケットの多くは、ブレードとラバーが別々に市販されており、両者を接着してラケットとして完成させる必要がある。ラバーとラケットを接着するために使用する接着剤について、現在使用が認められているのは、水溶性接着剤、接着シート、固形接着剤のものである。かつては、ゴム有機溶剤で溶かした接着剤が広く使用されていた。しかし、有機溶剤が人体に有害であるという理由から、日本国内の小学生の大会で2007年4月1日より使用が禁止されたのを皮切りに、有機溶剤を含む接着剤の使用は禁止され、2007年9月1日以降は日本国内の大会で完全に禁止されている。国際大会では2008年9月1日より禁止となった。

現在、日本国内においては、日本卓球協会公認の接着剤の使用が認められている。一方で、2009年時点おいて国際卓球連盟に公認された接着剤はない。また、塗った接着剤とラバーにわずかに含まれている残留溶剤が反応するおそれがある。たとえば、たとえ使用が認められている接着剤を用いたとしても、試合後のラケット検査で残留溶剤が検出された場合は失格となる。これを未然に防ぐために、ラバーのパッケージを開けてから72時間放置した後に、公認の接着剤を使用してラケットに貼ることが推奨されている。

スピードグルー編集

スピードグルーは、ラバーとラケットを接着するための有機溶剤性の接着剤の一つである。一般の接着剤よりも有機溶剤を多く含んでおり、ラバーに塗るとスポンジの中で拡散して、スポンジが膨張する。この状態でラバーをラケットに貼ると、スポンジの膨張分だけシート面が面方向に引っ張られた状態になるため、常にゴムに負荷がかかった状態となる。その結果、反発力と摩擦力が高くなり、「金属音」とも呼ばれるほどの高い打球音になる。スピードグルーによって、スポンジが柔らかくなるため、ゴムシートが引張圧で少し硬くなっていても、ラバー全体としては柔らかくなっている。ただし、スピードグルーを使用すると、常にゴムに負荷がかかっているため、一般の接着剤を使用した時よりもラバーの劣化が早い。

上記のグルー効果を最初に発見したのは、ハンガリーのティボル・クランパと言われている。日本では、1980年前半に元日本チャンピオンだった渡辺武弘がベルギー製のグルーを持ち帰って使用したのが最初であった。その後、スピードグルーが開発されて以降は世界的にグルーは普及し、主に攻撃型の選手に広く普及していった。

ルールの変遷で述べたように、スピードグルーは複数の理由から現在は使用が禁止されている。スピードグルーの使用を問題視したのは、当時国際卓球連盟の会長を務めていた荻村伊智朗であった。荻村は、卓球の普及という観点から、ボールスピードの減速、スピードグルーは「用具へのドーピング」でありスポーツ精神上好ましくないこと、多くのスピードグルーが含有するトルエンが人体に有害であること、シンナー遊び等の卓球以外の不適切な用途に使用されて社会問題化した経緯があることを説いた。これらの理由から、荻村はスピードグルーの使用禁止を提案したが、荻村の死去により一旦は白紙の状態となった。

これらの諸問題をうけて、スピードグルーのトルエン規制に乗り出した。ここでは、トルエンに代わってヘプタンが主成分となった。しかしながら、弾性と回転量が低下したために、これを補うために、スピードグルーの「重ね塗り」や「蒸らし」といった方法が確立されるに至った。こうして、スピードグルーの使用と規制は、イタチごっこの状態が長らく続いたのである。

やがて、スピードグルーは卓球用途での使用時においても、アナフィラキシーショックによる事故を起こし、これら健康上の問題が再度議論されるようになってきた。また、スピードグルー自体も揮発性・可燃性が高く、輸送の面で危険を伴っていた。こうした経緯から、国際卓球連盟はスピードグルーの使用禁止を決断するに至った。このスピードグルーの使用禁止を定めた規則は、当初2007年9月1日に施行される予定であったが、翌年に北京五輪を控えたこともあり、最終的には北京五輪終了後の2008年9月1日に施行されることとなった。

補助剤編集

前述の通り、有機溶剤を含む接着剤の使用が禁止されたことで、毒性のない水溶性接着剤(主成分は水、天然ゴム、アクリル)が普及した。しかし、スピードグルーの使用が禁止となることを見越して、「ブースター」とも呼ばれる接着力の無い「補助剤」や水溶性グルーが卓球用品メーカーから発表されるようになった。

スピードグルー同様に、補助剤はラバーへの使用によって、未使用の状態よりも弾性と回転量を向上させることができており、揮発性の有機溶剤を含まず鉱物油を主成分としているため取り扱いが比較的容易で、かつ、効果が持続しやすい、といったメリットがあった。一方で、揮発性が低いためラバーを剥がしての塗り直しがでかないこと、スピードグルーのような鋭いレスポンスは得られないこと、塗ることによって重量が重くなること、といったデメリットがあった。

これについて国際卓球連盟は、補助剤を塗る行為が(貼る前の)ラバーを加工・改造する行為であり「用具のドーピング」にあたるとして、ルール改正を行い、2008年10月1日以降において「後加工の禁止」という規定を加えた。事実上、補助剤が使用禁止となったのであった。これを受けて、日本卓球協会 (JTTA) は、国際卓球連盟のルール改定通知に基づき、2008年10月1日以降に開催される全ての大会において、ブースター等の接着補助剤やスピード補助剤についても使用禁止すると発表した[18][19]。また、対象の接着補助剤やスピード補助剤の販売を行っていた卓球用品メーカーは、2008年9月末をもって販売中止することを発表した。

このように、スピードグルーの禁止から僅か1ヶ月で補助剤も禁止されたため、グルーや補助剤を発売してきたメーカーは、多くの在庫を抱えるようになり経営を圧迫する要因にもなった。その一方で、禁止化の直後のヨーロッパ卓球選手権では、大会運営のラケット検査が新ルールに対応できなかったことから、従来通り補助剤を使用する選手もいる状況になっていた。

卓球台編集

 
青い卓球台

卓球競技を行うにあたって、卓球台は競技場の床面に設置される水平な台であり、サイズや高さ、材質、物性がルールで規定されている。卓球台は経年による反り返りを防ぐために3層構造になっており、三層の中心の層には、細長い板がフローリング床のように横の継ぎ目をずらして配置され、変形を防ぐ設計となっている。

卓球台は1980年代まで色(黒に近い深緑[20])をしていたが、当時の国際卓球連盟会長であった荻村伊智朗の発案により卓球のイメージチェンジを図って[21]、現在の色の卓球台を製作された。1991年千葉市で開催された第41回世界卓球選手権と翌1992年バルセロナオリンピックにこの青色の卓球台が使われたことから世界中に広まり、現在に至っている。また、この卓球台の改善事例の背景として、テレビ番組で出演者のタモリ織田哲郎に『あれ(卓球)って根暗だよね』と発言したことにより、翌年の中学生の卓球部の部員が激減した事がきっかけである、とも指摘されている[22]

ユニフォーム・シューズ編集

卓球におけるユニフォーム(試合着)は、上が付でポロシャツに類似した形状のものやTシャツ状のもの、下はハーフパンツ・スカートが基本である。日本国内の公式試合で使用が認められるのは、日本卓球協会の公認品のみで、その公認マークの表示が義務付けられている。非公認品あるいは打球が視認しづらいなど試合の妨げとなるデザインがされているものは、審判長の判断のもと使用不可とされる。また、選手同士が類似した色のユニフォームを着ていた場合は、片方の選手が着替えなければならない(その際に着替える選手は、サーバー・レシーバーや使用エンドの決定時と同様に、コイントス(じゃんけん)で決める)。

かつての卓球のユニフォームは、単色のポロシャツ形状のものが多かったが、近年はテニスやバドミントンと似た素材・デザインで軽く撥水性が向上したものが多い。ショーツは股下が短いものが多く、女性に不評であったが、近年では男性用でも太ももにかかるくらいのものが増えるなど、時代に応じて変化している。また、アンダーシャツやスパッツの着用も認められている。

また、事前の確認が必要であるが、個人がデザインしたユニフォームも、前述の要件を満たせば使用可能である。2007年1月に行われた全日本卓球選手権では、四元奈生美選手がワンショルダーとミニスカートという斬新なユニフォームで試合に出場し、注目を集めた。

シューズに関しては県大会まで規定が無く、体育館用シューズであれば何を履いてもよい。

打法編集

卓球における打法は、主にフォアハンドとバックハンドに大きく分類される。これに加えて、台上で球を処理する台上技術と台から離れた場所での打法の区別が存在するのが、卓球の特徴の一つである。

かつては、フォアハンド打法主体のプレイの全盛期もあった。しかしながら、スピードグルー類の使用や規制、40 mmボールへの変更等の度重なるルール変更で、打球のスピードやそれに応じた打法は絶えず変化してきた。こうした積み重ねの結果として、ルールは打球速度を抑える方向に改訂される傾向にあるも、打球スピードの低下を補う新打法の開発等により、ラリーのスピード自体は全体的に速くなってきている。近年は、この速いラリーに対応するために、フォアハンドとバックハンドの速やかな切り替えを念頭に、フォア・バックの両ハンドによる強打で攻める打法が発展している。

以下では、特に断りがない限り、右利きの競技者の打法について述べる。左利きの競技者については、下記内容において適宜左右を反転させて読解することで、同様の打法を説明・理解・実践できる。

ボールの回転編集

以下の各打法の説明に先立って、まず卓球における回転(スピン)について、概説する。卓球において、ボールのスピンは打球・返球ひいては得点・失点につながる重要な要素であり、以下に示す打法の多くはスピンの性質を活用する技術である。ボールのスピンは、縦回転(上回転/下回転)、横回転(順横回転/逆横回転)、ジャイロ回転(コークスクリュー回転: ヘッドコークスピン/フットコークスピン)の独立した3軸方向の回転に分類できる。練習や試合で行われる打法での実際のスピン状態は、これらのなかの単独の回転あるいは複合された回転となる。また、どの方向にもほとんど回転のかかっていない無回転(ナックル)の打球も存在する。

通常の質点重力の存在下で放物線の軌道を描くが、卓球のボールの飛跡はスピンの影響を顕著に受けるため、スピンと空気に由来する抗力揚力マグナス力等)によって、放物線からやや外れた軌道となる。また、スピンを有する飛球が卓球台やラケット面に反射すると、多くの場合は回転するボールと接触面の摩擦によって、逸れた方向へ飛び出すようにボールが跳ねる。たとえば、あるプレイヤーが上回転(角速度のベクトルの方向は打球者からみて左)をかける打球をすると、このボールは下方向(角速度ベクトルと速度ベクトルの外積の方向)に向かって徐々に放物線軌道よりもずれていく。このボールが相手コート上でバウンドすると、ボールは前進方向(角速度ベクトルと卓球台面の法線ベクトルの外積の方向)へ加速を受けて跳ねる。このボールを相手が正面から静止したラケットで返球しようとすると、ボールはラバーの表面で上方向(角速度ベクトルとラケット・ラバーの反射面の法線ベクトルの外積の方向)へ跳ね上がるように反射する。これは「ドライブ打法のボールは、伸びるように飛んだ後に弧線を描いて沈み込み、台上で加速するように跳ねる。これを返球しようとするとリターンボールは上方向に逸れる」という実践上の打球の挙動に相当する。打法によって生み出されるスピンは以上のような効果を有しており、また、打法によって正規の返球を試みる際はこれらの点に注意する必要がある。以下の表に、ボールの回転とその揚力による軌道・反射の変化についてまとめた(表中の「方向」は打法の打球者からみた方向である。また、まっすぐ正面への右利きのフォアハンド打法を、相手が正面から返球することを仮定している)。

球質 角速度の方向 飛跡の加速方向 台上バウンド時の加速 返球者が受ける球の加速
上回転

(ドライブ、トップスピン)

下回転

(カット、バックスピン)

右回転

(カーブ、逆横回転サーブ)

(無)
左回転

(シュート、順横回転サーブ)

(無)
ヘッドコークスピン (無) (無)
フットコークスピン (無) (無)
無回転

(ナックル)

(無) (無) (無) (無)

注意点として、どのようなスピンがかかっていても、それを上回るほどの球速がある場合は、かならずしも上記のようにはならない。たとえば、わずかに上回転がかかったボールであっても、非常に大きな前進速度を有する場合に台上でバウンドする際においては、後退する方向への加速を受ける。

フォアハンドとバックハンド編集

上述の通り、打法はフォアハンドとバックハンドに大別される。フォアハンド・バックハンドともに、前陣(台上や台に近い位置)・中陣(台から少し離れた位置)・後陣(台から離れた位置)の位置取りや相手の返球の質によって、各打法の詳細は異なる。

フォアハンド打法は、身体の利き腕側の飛球(右利きの場合、右側の飛球)に対して、ラケットを右外側から身体の中心に向けて弧を描くように振り、このスイング動作でボールを捉えて打球する技術である。利き腕を動かせる空間的あるいは身体的な自由度が高く、スイングを大きくできるので、威力のある打球が可能である。

一方、バックハンド打法は、身体の利き手とは逆側の飛球(右利きの場合は左側の飛球)を打つ打法である。ラケットを振り抜く方向は、ペンホルダーとシェイクハンドのラケットの違いや打法によって異なり、多様である。利き腕が体幹等と交差するため、フォアハンドと比べてスイングは小さくなる。打球の威力は出しにくいが、身体の前側で早い時点で打球しやすいといった特徴がある。相手の打球を返球して再度相手へ返すまでの時間を短縮しやすいため、速いラリー展開に持ち込む場合に有効である。

ペンホルダースタイルが全盛の時代には、利き手側の逆足(右利きの場合は左脚)をやや前に出して打球するのが基本であった。近年、シェークハンドが主流となり、フォアハンドとバックハンドによる「両ハンド打法」が求められるにつれ、両足をほぼ平行にしてフォアハンドとバックハンドを打ち、フォアハンドでストレートに打球する場合やバックハンドでクロスに打球する場合は従来のように利き手の逆足を前に出したり、バックハンドを振りやすくするために都度利き手側の足を前に出して打つのがデファクトスタンダードとなっている。(たとえば、シェークハンドラケットにおいて常に利き手の逆足を前に出して打つ打法では、フォアハンドで強打できるゾーンは広いものの、打球位置が後退してしまう。ほかにも、バックハンドが振りにくいことや、フォアハンドとの切り替えの難しさや、フォアハンドのクロスとストレートの打ち分けが難しいことなどの、デメリットが指摘される。)

ロング打法
ロング打法は、卓球台からそう離れていない位置(前陣・中陣)への飛球に対して、特に意識した強い回転をかけようとせずに、身体の外側から中心に向けてラケットを斜め上に振り抜き、ボールをやや摺り上げるようにして前方の相手コートへと返球する打法である。フォアハンドロング打法とバックハンドロング打法とがあり、それぞれ、後述の様々な打法の基礎となる標準的なスイングである。強振しないロング打法(特にフォアハンドロング)は、専ら練習においてラリーを長く続ける目的で行われることがあり、卓球入門者の基礎固めや中・上級者のウォーミングアップとして、利用される打法である。
この打法では、回転は特に強くかけないが、ボールを摺り上げて打つ結果として、ゆるやかな上回転がかかっている。
ドライブ
ドライブ打法は、ロング打法から派生した、ボールに強い前進回転(トップスピン)を与える打法である。ヨーロッパではドライブのことを「topspin」と呼んでいる。基本のロング打法をある程度身に付けてから習得する技術である。ドライブ打法で全身回転をかけるにあたっては、基本的に「擦る」あるいは「食い込ませる」といった2つの技術が重要である。一般的なドライブ打法においては、通常のロング打法よりもボールの上を擦るように打ち、かつ、落球しないように、より上に振り上げるようなスイングで打ち抜き、強い全身回転のボールとする。
以下に示した様々なドライブ打法(スピードとスピンのかけかた等)が確立されており、弱点とされたミドルへの打球の返球においても、それを克服する打法がトップ選手を中心にして普及している。また、用具やラケット、ラバーの進化や練習環境の変化に伴い、従来はパワーに難のあった女子選手においても、一通りの代表的なドライブ打法を習得する選手が増加し、多くの戦型の選手に幅広く用いられるようになった。
ドライブ打法によるボールは、放物線運動から下方向に沈み込むように加速を受ける(いわゆる「弧線の弾道」を描く)ため、強振しても、相手コートに安定して入りやすい。このように、回転量の少ないスマッシュより比較的安定性が高いほか、打法の多様さから、ドライブ打法を中心とした戦術は現在広く用いられている。
スピードドライブ
スピード重視で水平に近い軌道のドライブをいう。トップ選手になるとスマッシュ並みの速い打球になる。ラバーの性能が高くなったためコントロールするのが比較的容易で、早い打球点で捉えやすく連打しやすいことから、対上回転系のレシーブ強打において最も使用者が多い。
難点は、対下回転系のレシーブがやりにくく、回転を掛ける技量が無ければ棒球になりやすくスマッシュになりやすい。スマッシュとの大きな違いは打球音であり、スマッシュは打球音が鳴るのに対して、スピードドライブはスマッシュと比べて打球音が小さい。また、回転量についてはシートの引き連れ効果を利用して回転を掛けることで弾道の安定性を確保することが可能である。
ループドライブ
回転重視で山なりに近い軌道のドライブをいう。通常のドライブではバウンド後に伸びる軌道を描くのに対し、ループドライブは沈み込む。基本的に対下回転系のレシーブに対して使用することが多いが、スピードドライブよりも弾道の安定性が高いため対上回転系のレシーブ強打でも使用する。ただし、ループドライブの軌道が高くネットから遠くに着地すると遅いドライブになるため、反撃を受けることになる。
難点は弱い打ち方だと対下回転系のレシーブでもミスしやすく、打球スピードが遅くなりやすい点であるが、ラケットの振り抜き方次第では弧線を描いた打球スピードのあるドライブを打つことが可能。
ループドライブの研究が進むうちにつれ、相手側のネット近くに山なりの弧を描いた弾道でバウンドしたのち、さらに低い弾道で相手コート上でバウンドする、沈む様な軌道のループドライブが試合で使われるようになった。強い回転をかけながらもスピードを殺してネット近くに落とすコントロールが求められる。
カーブドライブ,シュートドライブ
ボールに横回転を与えるドライブをいう。右利きの選手がフォアハンドで打った場合、左回転のドライブをカーブドライブ、右回転のドライブをシュートドライブと言う。カーブドライブは(打球者からみて)利腕と反対側へ、シュートドライブは利腕側へ曲がる。野球の変化球のように、回転軸の向き、回転量、スピードによって多彩な変化をする。回転軸によって曲がる角度が変化し、バウンド時にもボールの飛ぶ方向が変化する。さらに返球時にも横回転の影響を受けて打球が左右方向に変化する。ドライブのスイングの癖で一定の横回転がかかる場合もあるが、上級者の選手は意識して回転を操ることができる。
パワードライブ
スピードドライブにスピンが掛かったドライブをいう。スマッシュ並みのスピードに加えて強烈な回転をかけるため、習得するには相応の練習量、筋力を必要とする。
カウンタードライブ
相手のドライブに対して打球の反発力や回転量を利用して打つドライブをいう。スピードのあるドライブを返球する場面もあるため、練習量だけでなく打球を判別する能力や返球するタイミングも要求される。上級者の選手がよく用いる。
スマッシュ
ボールを弾くように、フラットに叩き付ける打法。決定打として打つ選手が多い。ドライブより小さいスイングで速いボールを打つことができるが、弾道が直線的になるため、角度がずれると入らない可能性が高い。世界のトップ選手の中には初速が時速280km以上のスマッシュを打つ人もいる。スピードがあるためラケットに当てるのは難しいが、ラケットの角度を合わせて当てれば返球することは可能である。球離れの早い表ソフトラバー使用者や浮いた球のレシーブ、後述のロビングに対するレシーブ等で使用することが多い。
バックハンドスマッシュ(ペンホルダー)
ペンホルダー型のバックで、右足を前にしてフリーハンドを引き(右利きの場合)、肩を支点に腕を動かしながら体重を乗せ相手コートに強打する打法。少ない予備動作でコンパクトに振りぬくためコースを読まれにくい。

台上技術編集

台上技術は、競技場の構造に「台」が存在する卓球に特有の技術である。基本的には、相手側のコート内でそのままでは2度バウンドするような打球(「台上に収まる打球」とも表現される)へ対処する打法であり、相手のショートサービスをレシーブする場合やレシーブ側の短い返球に対して使用される技術である。

台上技術に共通していることは、台上でレシーブする位置に合わせて、相手の返球に近い側の足を動かして台の下まで移動し、そのうえで打球するという点である。脚を動かしての身体の移動と打球を同時に行なってしまうと、体重移動と打球が同時となり、余計な力が加わってネットミスやオーバーミスの原因となりやすい。このことから、ラリーで咄嗟に打球する場合を除いて、移動と同時の打球は基本的に推奨されていない。

台上技術自体は、台が構造上邪魔となって強く振り抜けないため、球威がなく、これを決定打とすることは難しい。そのため、ツッツキを使って相手側の甘いループドライブを誘発したり、チキータ等の台上強打で中陣ないし後陣での引き合いのラリーに持ち込んだりといった、戦術的な駆け引きもセットで考える必要がある。

ショート打法
ショート打法とは、台上(あるいは台上の近くを含む前陣)において、相手の打球のバウンド直後を身体の中心あたりで捉えて、ボールを押し返すように、ラケットを前に押し出して打球する技術である。ショート打法は、ペンホルダー・シェークハンドともに、バックハンドにおいて主体となる技術である。一方で、相手の球質によっては、フォアハンド側であっても、以下の応用技術を中心に、フォアハンドによるショート打法の派生技術が用いられる。
ショート打法は、後述の台上技術の基礎となる打法である。フォアロング打法と同様に、強振しないショート打法は、練習における基礎固めやウォーミングアップとして、専らに利用される。
ツッツキ
台上の短いボールに対して、カットよりもコンパクトなスイングで突くようにして打球する打法。台上から出ないやや長いボールに対して下回転を掛けて返すことが多い。ミスするリスクが少ないが、相手の3球目攻撃を受ける確率が高い。しかし、技術次第では強烈な下回転や横回転を入れたり、長短の変化をつけたりすることでミスを誘うこともできる。また、回転を掛けない無回転系のツッツキのことをナックルと呼ぶ場合がある。
ストップ
主に相手の短い下回転系のボールに対し、バウンド直後の打球を捉えて相手コートに2バウンド以上するように小さく返す打法。台上の短いサーブに対するレシーブなどで主に使われる。低いストップに対しては物理的にドライブが打てないため、防御技術として有効。しかし浮いてしまうと相手のチャンスボールとなる。上級者のレシーブになると短い上回転系のボールに対してもストップで返したり、強烈な下回転を掛けることが可能である。ストップをストップで返すことをダブルストップという。また、下がった相手に対してネット際に小さく落とすようなストップを繰り出すことを、ドロップショットと呼ぶ場合もある。
フリック
相手のショートサービスまたは台上の球に対して、台上で前進回転を与えて払うように返球する打法のこと。カウンターされた際のリスクが高いので、テイクバック無しの非常にコンパクトな打法である。技術が向上すれば台上強打ともいえるスピードのある打球を打つことも可能で、レシーブから直接得点を狙うこともできる。
プッシュ
押し出すように打つ打法で、主にペンホルダーのバック側の攻撃に使う。シェークハンドのバックハンドに比べて威力を出しにくいが、やり方によっては同等以上に打ち合うこともできる。
台上ドライブ(台上フォアハンドドライブ)
台上から出ない打球に対して当て擦りで打球する方法。フォアハンドフリックとの大きな違いは、打球時にテイクバックが必要でスイングが大きい点である。元々は、中国で開発された粘着系ラバーの特性を活かすための台上技術であり、使用する用具の制約を受けるという短所がある。
チキータ
場合によりチキータ・レシーブなどという場合もある。ピーター・コルベル(チェコ)が発案した打法で、バックハンドの横回転系のフリックのことを言う。この打法を応用したドライブ打法もある。基本的にシェークハンドの選手が使用するが、ペンでも裏面打法を使えば可能である。チキータバナナ(バナナのブランド名の一つ)のようなカーブを描くことから、このように呼ばれるようになった。また、チキータのスイングから打球する逆横回転系のチキータは「逆チキータ」と呼ばれており打法は様々であるが、加藤美優が多用する逆チキータは「ミユータ」、シモン・ゴジが多用する逆チキータは「ゴジータ」と呼ばれている。
台上バックハンドドライブ(台上BD)
台上ドライブのバックハンドバージョン。台上ドライブと比べてチキータ同様に速い打球点でボールを捉えやすく、ボールの横を捉えるチキータに対して台上BDはボールの上を捉えるため、スピードが出て一発で抜き去ることが可能である。また、スイングがコンパクトなので台上では弾み過ぎない上に用具の制約を受けにくいというメリットがある。しかし、ボールの上を捉えるということは相手のサービスの回転(特に下回転)の影響を受けやすいということであり、ある程度のスイングスピードに加えて、フリーハンドや体の動かし方や打球時の体重移動が必要である。中国の張継科が多用し世界選手権で2連覇を飾ったことから、近年世界中のトップ選手のみならずジュニアや小中学生クラスにも広く流行している。

応用技術編集

ブロック
相手のスマッシュやドライブに対して、前 - 中陣でバウンドの上昇期や頂点で当てるように返球する守備技術。裏ソフトでブロックする場合、ラケット角度を的確に調整する必要がある。ブロックは相手の強打を返すことが目的のため、スイングはあまり大きくとらない。相手の球の威力を「殺して返す」、「そのまま返す」、「自分の力を上乗せして返す」など、返球に変化をつける技術もある。技術レベルにもよるが、選手によっては相手強打に対して台上で2バウンドさせるほど威力を殺すブロックをすることが可能である。サイドスピンブロックなどで回転をかけて変化させてミスを誘ったり、相手が打ってきた球を全てブロックしてつなぎ球を狙い撃ちするという戦術を取る選手もいる。粒高ラバー使用者になると、カット性ブロックやサイドスピンブロック等の粒高ラバー特有のスピン反転能力を利用したブロック技術を使用することがある。
カウンター
相手の強打を強打で返す技術全般を指す。体勢が整わない相手を打ち抜くことや、相手の球威を利用することが目的であるため、固定的な打ち方はなく、カウンタードライブのような強打からカウンターブロックのような守備的な側面をもった技術も含まれている。相手の強打を狙い打つため難度は高いが得点力も高い、ハイリスク・ハイリターンな戦法である。
みまパンチ・はりパンチ
伊藤美誠張本智和が使用しているカウンター技術の総称。卓球の打法の中では難易度の高い部類に入る。共通しているのは、肩関節内旋2ndポジションのスイングによる打法となっており、肩関節内旋1stポジションのスイングである一般的なカウンター打法とは全く別の技術として区別されている。一般的なカウンターと比べて腕の可動域が大きいために威力が出しやすく、ナックルが出しやすいため重い球質となる。
カット
カット型の選手が使う中・後陣での大きいスイングでの打法を言い、ツッツキと区別される。フォア、バックの打法があるが、バック側に粒高ないし表ソフトを貼って使用することから、一般的には使用頻度が高いバックでのカットのことを指すことが多い。上級レベルになると、下回転(バックスピン)のほかにも、斜め下回転、横回転も織り交ぜる選手もいる。
ミート打ち
主に表ソフトラバーの選手が使う攻撃方法で、回転がかかったボールをスマッシュのように強くはじいてレシーブする打法。相手の回転に合わせてラケットの角度を微調整する打法を角度打ちと言うこともある。これらを厳密に区別するかどうかは判断の分かれるところである。ラケットをコンパクトに振り切り、ボールを擦らないので、あまり回転がかからず威力自体はそれほどでもないが、早く高い打点で打つため相手の防御が間に合わず決定打になることがある。
カット打ち
ツッツキやカットの下回転を利用して返球する技術である。相手の下回転を利用するため、打点やタイミングが要求される。これを利用しつつドライブ回転を掛けて返球する方法もある。難点は打球スピードが遅く、浮いてしまうと相手にレシーブ強打されやすいが、後に高島規郎によって「8の字打法[注釈 1]」が考案されたことにより、従来のカット打ちの欠点がほぼ解消し、ドライブ打法にも応用されている。
ロビング
ボールを高く打ち上げて時間を稼ぎ返球する打法。相手のミスを誘うものだが、相手の強打を受けやすい。しかし、打球が高い分、バウンド時に回転の影響を受けやすいので、強烈な回転をかけて打つことで、相手にとって打ちにくい球として返球することも可能である。
フィッシュ
中、後陣でロビングよりも低い弾道で相手のボールを返す技術。ブロックの打球点より遅く、フィッシュの打球点は頂点を過ぎたものとされている。いわゆる相手の攻撃をしのぐ為のつなぎ球だが、ロビングに比べて打ちにくい。相手の攻撃をフィッシュでしのいで、相手が攻めあぐねたところで一気に反撃をするといった戦法も用いられる。

サービス(サーブ)編集

卓球ではサービスからラリーが始まる。攻撃の起点としてゲームを組み立てるので、トップ選手になるとレットによるサービスのやり直しを利用して、打球ミスしたサービスをレットで逃げることで無駄な失点を防いだり、相手のレシーブタイミングを外したり、相手のペースを乱す、などの目的で高度なサービス戦術を採る選手が多い。

サービスでは、フォアサービスとバックサービスに大きく分類され、それぞれショートサービスとロングサービスがある。広義でのショートサービスは相手コート上で2バウンド以上する軌道となるサービスのことを指し、ロングサービスは相手コート上で1バウンドして卓球台の外へ出る軌道のサービスのことを指す。また、卓球において、特にサービスでは回転は非常に重要な要素であり、縦回転(上回転/下回転)、横回転(順横回転/逆横回転)、ジャイロ回転(ヘッドコークスピン/フットコークスピン)や、これらの複合回転(斜め回転: 順横上回転/順横下回転/逆横上回転/逆横下回転)、あるいは無回転(ナックル)のサービスといったバリエーションが存在する。但し、斜め回転はラケットの角度や向き、サービスモーションなどで縦横の比率を変えることが可能であるため、同じ回転であっても縦横の比率や回転量、スピードなどによって変化量も異なる。

ハンドハイドサービス、ボディーハイドサービスが完全に禁止された2002年以降は、相手にサービスが見抜かれやすくなったことで、高度なサービス技術が発達した。代表的なものはフェイクモーション、打球前後のラケットを隠す行為、フォロースルー、バーティカルサービス等である。

サービス(サーブ)の種類編集

フォアサービス
自分の体に対して利き腕側でラケットのフォア面を使って出すサービスのこと。コントロールを付けやすくする、強い回転を掛けるために手首の可動範囲をひろげる、サービスを出した後の戻りを早くする、など目的の選択があり選手によってグリップが異なる。場合によっては似たようなグリップになることもある。シングルスの試合では、基本的に自陣のバック側の位置からサービスを出すことが多く、試合展開や戦術によっては中央付近でサービスする場合もある。
アップダウンサービス
フォアサービスの一種で、同じスイング軌道からラケットを上または下に振って上回転と下回転を使い分けるサービスのこと。技術が上がれば横回転系を混ぜることも、後述のバーティカルサービスにすることも、フェイクモーションを加えることも可能である。
YG(ヤングジェネレーション)サービス
フォアサービスの一種で、体の内側から外側にスイングして回転をかけるため、逆横回転系のサービスで主に使われている。ルール改正以前は、打球のインパクトを隠すことが可能だったために通常のフォアサービスと共によく用いられた。ボディーハイド・ハンドハイドサービス禁止以降も回転のバリエーションを増やしたり、サービス戦術やラリー展開を変える目的等で用いられている。通称YG、ヤンジェネと呼ばれる。
巻き込みサービス
フォアサービスの一種で、ラケットのヘッドをやや上向きに立てて出すサービス。YGサービスと同様に逆横回転系のサービスで回転量は劣るが、ラケットのグリップを変える必要がないため、速い戻りを必要とする女子選手を中心に使用者が多い。
バーティカルサービス
横回転サービスの一種だが、順横系、逆横系のサービスが可能である。ボディーハイド・ハンドハイドサービスの禁止に伴い、フォアハンドサービスを発展させたもので、トップ選手を中心に用いられる。インパクト時にラケットを立ててラケットの面を相手に見せるため、どの方向に回転を掛けたのかが相手にわかりづらいという特徴がある。特性上必ず横回転が掛かるため、純粋な下回転サービスと上回転サービスが出来ないという短所もある。バックサービスとして用いることも技術的に可能である。
バックサービス
ラケットのバック面を使って出すサービスのこと。自分の体に対してどのような位置でサービスを出すかは選手によって異なる。早く体勢を戻すことが出来る。
しゃがみ込みサービス
サーブを出す際に、膝を曲げてしゃがみ込みながら出すサーブのこと。強い回転をかけることが可能だが、元の体勢に戻るのが遅くなると、返球に対して反応が遅くなる欠点もある。
王子サーブ
しゃがみ込みサービスの一種で、下へ屈伸しながらラケットを縦に振り下ろしてラケットの裏面で球を切り回転をかけるサーブである。
スピードロングサービス
ロングサービスの一種で、スピードをつけて、2バウンド目を相手コートのエンドライン付近にバウンドさせるサービスである。サービスエースを狙いやすく、相手に充分な体勢で打球させない目的でも使用されるが、カウンターを受けるとサーバーが早く体勢を戻せずに失点につながるという欠点もある。
投げ上げサービス(ハイトスサービス)
サーブのトスをする際に、ボールを高く投げ上げて出すサーブ。慣れないと落ちてくる球の軌道が打球ポイントからずれてミスも出るが、回転やスピードが増す。また、照明の光が被るのでサービス前に確認する必要がある。世界には、7 - 8メートルものトスを上げる選手もいる。
フェイクモーション・フォロースルー
サービスでの打球前、打球後において、相手を幻惑させることができるサービスに付随する技術の一種である。
通常のサービスではサービスの回転パターンが見抜かれやすいため、競技レベルになるとサービス時にフェイクを入れるフェイクモーションが用いられる。また、サービスを打った直後のフォロースルーでは、肘を上げたり、ラケットのスイング軌道とは異なる動きを入れたり、肘を上げてラケットの向きを変えたり、ラケットを隠す等の行為をすることで、相手を惑わすための手段として用いられる。トップ選手を中心に使用者が多い。

戦型編集

シェークハンド
ドライブ主戦型
現在は多くの戦型のなかで主流となっている戦型。卓球台から少し距離をとり、前後左右のフットワークを駆使し、ボールに強いドライブをかけてつねに積極的・攻撃的に試合にのぞむ。ドライブ主戦型どうしのラリー戦は、力強く迫力があることに定評がある。
前陣速攻型
その名のとおり、常に卓球台に近い位置でプレーする戦型。相手の打球の種類やコースを瞬時に見てとり、早いタイミングで攻撃を仕掛けていくプレースタイル。判断の速さと動体視力がもっとも必要とされる戦型といえ、小柄な選手でも強さを発揮することができるため、日本人でこの戦型をとるトップ選手も多い。
カット主戦型
卓球台から離れた位置で、相手の強打に対して強い下回転をかけたボールで対応しながら、チャンスと見ると一気に前に出て反撃するダイナミックな戦型。守備的な戦型と思われがちだが、シェークハンド自体ミドルに弱く守備的なスタイルが無理なので、実際はカットも使う攻撃的な戦型である。ドライブ主戦型や前陣速攻型の技術に加えて、動作範囲の広いフットワークとねばり強いカットの技術、そして攻めに転じたときのパワーとスピードが要求されるため、専ら上級者向けである。[23]
異質攻守型
台から離れずショートに対しての相手のミスで点を取る戦型。一般的にラケットのバック側に粒高ラバーを貼り、それによる変化ボールやコースの緩急で相手のミスを誘う。たいていフォア側には裏ソフトラバーや表ソフトラバーを貼り、フォアに来たボールはスマッシュやドライブで攻撃する。また、打球に緩急をつける場合に、ラリー中にラケットを反転させて攻撃することがある。
ペン粒と呼ばれている異質ショート型に対して、異質攻守型はシェーク粒と呼ばれている。異質ショート型とは異なり、ミドルに弱いためブロックで変化を付ける守備的なスタイルが取れないため、攻撃的な粒高ラバーを貼ることが多い。日本の福岡春菜が有名。
オールラウンド型
両面に裏ソフトラバーを張り、ドライブ・ロビングなど多くの技術を駆使して点を取る戦型。戦術の柔軟性や高い身体能力、前陣・中陣・後陣全てで戦うことができる技術力が求められる。スウェーデンのワルドナーや日本の水谷隼が有名。
ペンホルダー
ドライブ主戦型
通称ペンドラ。主にフォアハンドドライブによって攻める。回り込みや飛びつきなど、フットワークを活かしたダイナミックなプレーをする選手が多い。構造上シェークハンドドライブ型ほど強いバックハンドドライブを打つのは難しいといわれるが、それを十二分に補えるだけの得点力のある快速プッシュや、バックハンドスマッシュを得意とする選手もいる。しかし、基本的にペンホルダーの弱点はバックである。それ故、回り込んだところに逆コースを突かれて守勢に回ってしまうことも多い。しかし、最近は中国を中心に、裏面打法によって強力なバックハンドドライブ(いわゆる裏面ドライブ)を打つ選手もいる。韓国の柳承敏金擇洙、中国の王皓馬琳・許昕、日本の吉田海偉が有名。
表ソフト速攻型
表ソフトラバーを用いてできるだけ短い手数で攻撃につなげ、積極的に攻める戦型。主にスマッシュを決定打として用いる。ドライブ主戦型と同じく裏面打法でバックハンドドライブを打つ選手もいる。日本の田崎俊雄、中国の劉国梁(元中国ナショナルチームコーチ、現中国卓球協会会長)などが有名。
異質ショート型
主に反転式や中国式のペンホルダーラケットを用いて両面にラバーを貼り、このうち片面には粒高ラバーを貼るタイプを指す。通称ペン粒と呼ばれる。裏ソフト+粒高、表ソフト+粒高の組み合わせが一般的。試合中は台の近くでプレーし、粒高ラバーによるブロックの変化で相手のタイミングを崩し、相手に隙が出来たら攻撃するのに加え、ラケットを反転し異なった球質の打球を出して相手のミスを誘うなど、守備的な戦型である。ラバーの基準変更やルールの変遷の中で、粒高ラバーの威力が昔より減少していることもあり、この戦型を採用しているトッププレーヤーは非常に少ない。女子では中国の陳晴や元中国代表でルクセンブルク倪夏蓮が有名。

他の競技ルール編集

ラージボール卓球編集

概要編集

ラージボール卓球(2012 (平成24)年4月1日以前は新卓球と呼ばれていた)は、日本卓球協会が卓球の普及を目的として考案、ルール・用具規格等を1988年に制定した。

一般的な卓球(硬式卓球)で使われているボール(直径40 mm)よりも大きなボールを使って行われる卓球競技である。ボールが大きく空気抵抗の影響が増大するため、ボールの速度および回転量が従来の卓球よりも減り、ラリーが続きやすくなるなどの特徴がある。

日本では高齢者でも手軽にできる生涯スポーツとして主に中高年に人気があり、近年はラージボール卓球へ参入する硬式卓球経験者が多くなっている状況にある。競技者人口の増加に伴い、全国各地で多くの大会が開催されている。

硬式卓球との違い編集

硬式卓球との主な違いは、

  • 使用するボールが大きく(直径44 mm)て軽い
  • ラバーは表ソフトラバーのみ使用可。但し粒高ラバーは不可
  • ネットの高さが2 cm高い
  • 促進ルールは8分

などである。

歴史編集

2012年4月1日より現在の名称に変更され、基本ルールと競技ルールが制定された。

2018年3月31日までは、3セット11点制で12:12以降は13ポイント先取で1セット先取、サービスのトスの高さ(硬式では16 cm)の規定がなかった。

2018年4月1日より競技ルールは「競技大会ルール」に変更され、硬式卓球の基本ルールに合わせるかたちで、デュース以降は2ポイント差とする、サービスルールは2〜3秒静止、トスの高さは16 cm以上上げる、といったルールが追加された。また、基本ルールは「レクリエーションルール」に名称変更された。

2019年1月1日より、競技大会ルールでは、競技用服装、アドバイスに関する規程が硬式卓球と同様のルールとなった。競技用服装の色は「ボールの色とは関係なく任意」から「使用するボールの色と明らかに違う色」に、アドバイスについては「ラリー中を除いていつでも」に変更された。

2022年4月1日より、競技大会ルール、レクリエーションルール共に、黒と赤のみだったラバールールは「片方は黒、もう片方はボールの色とはっきり区別できる明るい色」に変更され、硬式同様にカラーラバーの使用が可能となった。

軟式(日本式)卓球編集

日本にて初めて卓球が伝来したのは、1902年東京高等師範学校坪井玄道イギリスから卓球用具を持ち帰ったのが最初とされる[6]。そこからしばらくの間は日本独自の用具とルールの発展があり[6]、初の卓球統轄機関として大日本卓球協会が創立された1921年(大正10年)頃は軟式(日本式)卓球にて競技が行われていた。硬式卓球との主な違いは

  • 使用するボールの直径は36.9 mm以上38.9 mm以下
  • ボールの重さは2 g以上2.13 g以下
  • ネットの高さが2 cm高い17.25 cm

などである。

ラージボール卓球の普及や硬式卓球のルール変更に伴い日本独自の軟式(日本式)卓球は2001年(平成13年)度を最後に幕を閉じた。

卓球用語編集

ここまでの節で特に解説のなかった卓球関連用語を本節に示す。

タオリング (towelling)
競技中にタオルをふくこと。以下の場合に、短時間のタオリングが認められる。
各ゲームの開始から6ポイントごと(つまり競技者両方のポイント数の合計が6の倍数の時)[24]
最終ゲームでチェンジエンド(コートの交代)をしたとき
ラケットの表面が汗でぬれたり、メガネに汗がついたりして審判員の許可があったとき
クロスとストレート
クロスは対角線上の相手コート側を指し、ストレートは自陣のいる場所から真正面の相手コート側を指す。
エッジ(エッジボール)
卓球台の端(エッジ)に触れて落ちたボール[25][26]
レット
プレーをもう一度やり直させる事。サーブのボールがネットに触れて相手コートに入ったり、相手が準備が出来ていない状態でサーブを打った時などが該当する[27]
ラブゲーム
相手に一点も取られず、セットを取ること。
国際大会では、10-0になった時に勝っている側はわざとミスをし相手に1点を与え、負けている側は勝とうとせず次にミスをする、ということが「マナー」となっている。これはルールではなく、「マナー」に従わず完封を行う選手もいる[28][29]

卓球の盛んな国々編集

日本
1950年代 - 1970年代には、日本は世界のトップクラスであった。日本式ペンの豪快なフォアハンドを武器に、過去シングルスの世界チャンピオンを男女計13人輩出している。しかし、80年代以降はシェークハンドの普及でプレイスタイルの変更を余儀なくされ、それに伴う世代交代の失敗等により長い間停滞が続いていた。
2000年代以降は、日本卓球協会主導の強化方針が実を結び、女子が世界選手権団体で5大会連続銅メダル、2014年と2016年には銀メダルを獲得し、五輪では2012年に団体で銀メダル、2016年に団体で銅メダル、2021年に団体で銀メダルを獲得した。男子においても2005年世界ジュニア選手権団体戦で優勝、2008年以降の世界卓球選手権団体で4大会連続で銅メダル、オリンピックでは2016年は団体で銀メダル、2021年は団体で銅メダルを獲得。2021年の東京五輪での新種目となった混合ダブルスでは史上初の金メダルを獲得した。
また個人では、リオデジャネイロオリンピックでは男子団体で銀メダル、男子シングルスで水谷隼が銅メダルを獲得、2017年のアジア選手権平野美宇が3人の中国選手を破って優勝し、2017年の世界選手権平野美宇が48年ぶりに女子シングルスで銅メダル、2021年の東京五輪で伊藤美誠が女子シングルスで銅メダルを獲得。
尚、伊藤は水谷とのペアで参加した混合ダブルスでの日本卓球史上初の金メダル獲得を皮切りに、女子シングルスで銅メダル獲得、女子団体で銀メダル獲得したことにより、一大会におけるオリンピックでの金銀銅の3メダルコンプリート達成となり、オリンピックでは卓球史上初の達成者となった。一大会におけるオリンピックでの金銀銅のメダルコンプリート達成者は日本人選手では9人目(体操では小野喬、中山彰規、監物永三、笠松茂、塚原光男、具志堅幸司、森末慎二、競泳では萩野公介)、夏季オリンピックに限れば日本女子では初(冬季オリンピックを含めると高木美帆に続いて2人目)の達成。
中華人民共和国
世界最大の卓球大国。歴史的に前陣速攻を軸とした台上卓球を得意とし、かつては表ソフトを使用する選手が多かったが、近年では粘着系ラバーを使用する選手が圧倒的に多い。男子・女子いずれも選手層が厚く、行き場の無くなった強豪選手が数多く海外に流出し、結果的に世界中に帰化選手を送り込んでいる。2008年北京オリンピックでは、男女個人で表彰台を独占したり、団体では男女共に金メダルを獲得している。2019年に『ラリーズ』が報じたところによると、選手が小学校くらいから学校に行かず1年中卓球に打ち込んでナショナルチームを目指すというシステムが強豪卓球選手を輩出しているという[30]
香港
国としては中国の一部だが、卓球の国際試合には地域として参加する。当然ながら中国と似たプレースタイルの選手が多い。代表選手のほとんどが中国の帰化選手。
大韓民国
フットワークを生かしたダイナミックなプレーをする選手が多い。ソウルオリンピックアテネオリンピックでは男子単の金メダルを獲得。
朝鮮民主主義人民共和国
男子は韓国の選手と比べてストイックなプレーを得意としており、女子は粒高や表ソフトを使った異質選手が多い。また、中国選手と練習を行うこともあり2002年のアジア競技大会の決勝で中国を破ったり、アテネ五輪ではキム・ヒャンミが中国系選手を倒して銀メダルを獲得したり、2016年の世界卓球選手権団体で女子が銅メダルを獲得する等、強い面を見せることもある。リオデジャネイロオリンピックではキム・ソンイがシングルスで銅メダルを獲得した。
台湾、日本、韓国に近いプレースタイルの選手が多い。中国ほどの強さはないが、ランク上位に顔を出すことがある。
シンガポール
代表選手は中国の帰化選手が多く、プレースタイルも中国と類似している。女子は、2008年世界選手権と2008年北京オリンピックの団体でいずれも銀メダルを獲得しており、2010年の世界選手権(団体)では中国を破り金メダルを獲得した。
ドイツ
卓球のプロリーグ(ブンデスリーガ)があり、男子では世界中から有力な選手が集まっている。男子は2008年北京オリンピック団体で銀メダルを獲得、2012年ロンドンオリンピック団体で銀メダルを獲得、2016年リオデジャネイロオリンピック団体で銅メダルを獲得、女子においても2016年のリオデジャネイロオリンピックで団体銀メダルを獲得するなど、ヨーロッパでは強豪国である。
スウェーデン
1980年代後半から1990年代にかけて、スウェーデンは男子の卓球の頂点を占めていた。最近はまた復活してきており、2018年の世界選手権団体戦で銅メダル、2019年の世界選手権個人戦でシングルスで銀メダルを獲得している。
フランス
卓球のプロリーグがあり、かつてはヨーロッパではドイツ、スウェーデンと並ぶ強豪国。しかし、世代交代の失敗により2000年代までは低迷していた。
イングランド
イギリスの一部であるが、卓球の国際試合には地域として参加する。島国でかつ過去に香港を統治した歴史的背景から、他のヨーロッパ諸国とは異なるプレイスタイルの選手が多い。長らくは低迷が続いていたが、男子は2016年の世界卓球選手権大会で銅メダルを獲得。
ロシア
卓球のプロリーグ(プレミアリーグ)があり、男子では世界中から有力な選手が集まっている。また、そこで若手が育っており今後が楽しみである。
オーストリア
世界選手権団体戦では近年ほとんど決勝トーナメントに進出しており、安定した強さを誇っている。2003年の世界選手権個人戦ではヴェルナー・シュラガーがシングルスで金メダルを獲得した。
ヨーロッパ諸国
スウェーデン、ドイツ、フランス以外のヨーロッパの様々な国においても卓球は盛んである。比較的小国が多いため世代交代による浮き沈みが激しいが、有力選手がいる国では国際大会において好成績を残すことがある。
北アメリカ
上述の国々ほど盛んとは言えないが、中国の帰化選手が代表になってレベルの底上げがなされている。
ブラジル
リオデジャネイロオリンピック以降、卓球が盛んになってきており2018年の世界選手権団体戦では初のベスト8に入った。

一般的にアジアとヨーロッパで盛んだが、前述したように中国の帰化選手が世界各地に散っているため、中国人の代表選手が多い国もある。

娯楽・文化としての卓球編集

卓球は、他のスポーツと比べ、ゲームをプレイする条件(ルールの理解/スキル/場所・道具・プレイヤーの確保)を満たすことが容易なため、老若男女問わず親しみやすく、実践的、生涯スポーツとして広く日本人に愛されている。しかし卓球部員はいわゆるジョック陽キャ)ではなくナード陰キャ)として扱われる(これは偏見であり、タモリ根暗発言が原因でこのような状況が出来てしまったとの意見がある)ことが一般的であるが、北米やヨーロッパではこのような偏見は無い。ただし、欧米でも前述のように中国人をはじめとした黄色人種に人気のあるスポーツであるというイメージはある

1993年に漫画『行け!稲中卓球部』がベストセラー、ほぼ同時期に福原愛が「天才卓球少女」として脚光を浴び、2002年に映画『ピンポン』(窪塚洋介主演)が上映されて以降、ブームが若者の間にも広まった。服装を問わず、力のない女性や子供でもできること、ケガの心配も少ないことから、気軽に遊ぶことが出来るスポーツの一つである。

卓球組織・団体編集

運営機構・育成組織等編集

上記機構等による賞・段級制度編集

各国代表編集

主要な卓球大会・リーグ戦機構編集

主要な国際大会編集

主な卓球リーグ編集

各国の卓球大会編集

主要な日本国内大会編集

その他大会編集

卓球に関連する商業組織編集

卓球用具メーカー編集

卓球メディア編集

脚注編集

注釈編集

  1. ^ 高島自身が提唱した「肩甲骨打法」や「楕円打法」を発展させたもので、利き手側の肘の軌道が「8の字」を描くことから命名された打法である。ラケットのスイング軌道が8の字を描くわけではない。
  2. ^ 2020年10月から「TSP」と「VICTAS」がブランド統合しており「VICTAS」ブランドのみとなっている

出典編集

  1. ^ a b c d HistoryofTableTennis”. International Table Tennis Federation. 2020年3月30日閲覧。
  2. ^ 卓球 知識の泉 藤井基男 2003年 株式会社卓球王国 P23
  3. ^ 山田耕筰著作全集3 株式会社 岩波書店 2001年 P667
  4. ^ 日本体育協会五十年史
  5. ^ SO Summer Sports Rules June 2016 (PDF) スペシャルオリンピックス日本
  6. ^ a b c d e f g h i 日本卓球栄光の歴史(2009年1月22日時点のアーカイブ) 2009年世界卓球選手権横浜大会公式サイト
  7. ^ a b c d e f g h i 世界卓球選手権の歴史(2009年1月22日時点のアーカイブ) 2009年世界卓球選手権横浜大会公式サイト
  8. ^ a b c d e 白髭隆幸・SPORTS 21、第三十回 卓球ニッポンを支えた名選手・荻村伊知朗インターネットアーカイブ) Japan Senior Online
  9. ^ フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 6』講談社、2004年。 
  10. ^ ハンドソウラケットの一例 ヤサカ公式サイト
  11. ^ よくある質問/Q.ラケットに表示されている打球感のハード、ソフトとはどういう意味ですか?(2008年8月11日時点のアーカイブ) バタフライ卓球用品/タマス公式サイト
  12. ^ よくある質問/Q.ラケットにもラバー同様に寿命はありますか?(2008年8月11日時点のアーカイブ) バタフライ卓球用品/タマス公式サイト
  13. ^ 【スポーツ異聞】「照明暗すぎる」「大会使用球を統一して」卓球“モノ言う王者・水谷隼”の問題提起 - 産経ニュース 2015年2月13日
  14. ^ a b プラスチックの材質分析例~ピンポン球の材質”. プラスチックス・ジャパン・ドットコム. 2020年1月15日閲覧。
  15. ^ 卓球ボールが変わる…「プラスチックボール」は選手にとって毒か、薬か - 東亜日報
  16. ^ フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 2』講談社、2003年。 
  17. ^ 【卓球】思わぬ“洗礼”試合球6球だけ!美誠「気をつけて使わないと」 - スポーツ報知、2016年8月2日
  18. ^ 今後の接着剤の使用とラケット検査について(日本卓球協会 平成19年6月11日) (PDF) 徳島県卓球協会
  19. ^ ルール変更について (PDF) (2008年9月15日時点のアーカイブ日本卓球協会 2008年(平成20年)9月13日
  20. ^ 「理念と経営」2016年8月号
  21. ^ 【アスリートを支える】青い卓球台 復興願って - 朝日新聞 2016年4月8日
  22. ^ Narinari.com 2015年9月8日付 2017年2月22日閲覧
  23. ^ 『みるみる上達スポーツ練習メニュー5卓球』ポプラ社、106頁。 
  24. ^ テレビ朝日日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』 2016年8月7日放送分より
  25. ^ エッジボール とは - コトバンク
  26. ^ 「観戦必携/すぐわかる スポーツ用語辞典」1998年1月20日発行、発行人・中山俊介、50頁。
  27. ^ レットとは - コトバンク、2016年6月24日閲覧
  28. ^ https://number.bunshun.jp/articles/-/832627
  29. ^ https://www.tv-tokyo.co.jp/tabletennis/news/2020/03/010022.html
  30. ^ なぜ中国は卓球が強いのか?<Vol1.水谷隼> ラリーズ 2019.08.02 (2020年8月17日閲覧)

関連項目編集

映画編集

テレビ編集

漫画編集

ライトノベル編集

ゲーム編集

外部リンク編集