社歌
社歌(しゃか)とは、一般に企業において、社員の労働意欲向上などを目的として作成される歌のこと。
通常は企業の公式行事(入社式、仕事始め、創立~周年式典など)や社内の朝礼などでのみ使用され、対外的に公表されることは少ないが、中には有名アーティストが作詞・作曲に関わっている、テレビ番組で話題になったなどの理由でCD化され、一般のCDショップで販売されるケースもある(特に放送局の社歌はインターネット上で話題になりやすく、放送マニアの間では有名のものも多い)。社会人野球の大会で応援団が社歌を歌うことがある。
一方で、社歌をもたない、あるいはもっていてもほとんど使用されることのない企業もある。歴史ある企業においても社歌の有無、及び使用頻度は様々である[1]。
さらに、社歌として正規に制定される以外に、制定はしたもののあえて社歌の名を冠さないもの、記録の散逸等で正式な社歌であるか否かや制定の経緯が曖昧なもの、広報目的の曲が世間一般に社歌だと思われているもの、およびこれらの変形や組み合わせなどさまざまな形態があり、定義づけには広狭がある。
日本初の社歌をどこの会社が制作したかという記録は残っていないが、1890年代頃に成立したという見方がある[1]。弓狩匡純の研究によれば、確認されている日本における最初期の例は、1917年(大正6年)に南満州鉄道が制作したものである(このときは正式採用はされなかった)[2]。
社歌は日本独自のものではなく、アメリカのIBMは1930年代に2曲の社歌が作られウェブサイトで公開している[1]。一方で同業者のマイクロソフトやアップルコンピュータには社歌がない[1]。
電通では2016年から子会社を通じて「中小企業社歌コンテスト」を行ってきた。2019年から日本経済新聞社などを交えて「NIKKEI全国社歌コンテスト」になり、大企業も参加できるようになった。
寺岡寛によれば、社歌の始まりは1917年の南満州鉄道の「満鉄の歌」と言われ、社歌ブームはこれまで4回あり、1回目は1930年代初めの大恐慌直後、2回目は太平洋戦争後、3回目は高度成長期、4回目はバブル期である[3]。
主な一般発売された社歌
編集- 日本ブレイク工業 - 日本ブレイク工業社歌(萬Z(量産型))
- 2003年に『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)内の企画「日本キャンペーンソング大賞」で大賞を受賞したことで話題となり一般発売。社歌としては史上初めてオリコンシングルチャートにチャートインした。
- 北海道旅客鉄道(JR北海道) - 北の大地(ダークダックス)
- 1988年、ダークダックスのシングル「一枚の切符から」のカップリングとしてCD発売。この曲は歌詞の若干違う2つの版があるといわれる。
- テンポラリーセンター(現:パソナ) - TAKE A FLIGHT(松崎しげる)
- EMIミュージック・ジャパン - 青い空に歌おうよ(SUPER BELL''Z)
- 南満州鉄道 - 満鉄社歌(東海林太郎)
- 同社の社員だった経歴を持つ東海林が歌唱したものが、2007年発売のCD『満洲のうた』に収録された。
- ヤマハ発動機 - ヤマハ発動機社歌(谷山浩子)
- 同社社員が作詞し、谷山浩子が作曲したもの。非売品EPで発表されており、入手は困難だったが、2008年9月に一般発売したアルバム『タマで弾き語り』に収録された。
- CBS・ソニー - MUSIC MAKES OUR FUTURE(南沙織)
- 1978年に発表した創立10周年記念社歌。非売品EPで発表されており、入手は困難だったが、2000年6月に一般発売したアルバム『CYNTHIA ANTHOLOGY』に収録された。
- 有限会社OZ(アニメ制作会社) - GOGOイソちゃん(山本正之)
- 山本正之シングル文庫『アニメがなんだ』収録。
- 島田紳助の経営する店 - 我が敵は我にあり(RYOEI)
- RYOEI以外に、羞恥心がカバーしている。
- 西原商会(業務用食品卸売企業) - 世界、西原商会の世界!(クレイジーケンバンド)
- 2014年6月18日発表[5]。同年9月に一般発売したアルバム『Spark Plug』に収録。
- 関西テレビ放送 - 超えろ。(槇原敬之)
- 2015年4月から使用。作詞・作曲も槇原による。同年5月27日にシングル発売。
- 日医工 - WITH ONE WISH〜ひとつの願い抱いて〜(Le Velvets)
- 名古屋鉄道 - しなやかな風
- ローソングループ - Heart to Heart(布袋寅泰)
- 2011年に制作[6]。2012年発売の布袋のシングル「Don't Give Up!」に収録。
- AYUMI ONE. - オリヒメヒコボシ AYUMI ONE.(山本正之&ピンク・ピッギーズ)
- 2023年4月1日発表[7]。2024年8月28日発売の山本のシングル「The 50th Anniv.燃えよドラゴンズ! 2024竜ノ理想郷」(ベラ・ボーエンタテイメント BXDA-2024)に収録。
正式な社歌でない曲
編集- マキタ - I Love You Japan(MR. BIG)
- 東陶機器(現・TOTO)- ととべんきのうた(坂田おさむ)
- JOYアグリス(太田油脂の子会社) - なめくじ逃げ〜!逃げ〜!ストロングVer.
アルバム「社歌」収録作品
編集キングレコードより2009年1月21日に発売されたCD「社歌」に収録された社歌。アルバムの監修は弓狩匡純。収録された社歌の範囲は広義にとられている。
- キヤノン - キヤノン社歌「共生のハーモニー」(東京混声合唱団)
- 九州旅客鉄道(JR九州) - 「浪漫鉄道」(ハイ・ファイ・セット)
- 1989年制定[11]。
- 資生堂 - 資生堂社歌(資生堂コーラス部)
- シャープ - コーポレートソング「ひかりを超えて」(ハイ・ファイ・セット)
- シャープ - イメージソング「地球にひとつの」(ハイ・ファイ・セット)
- 大同生命 - 大同生命キックオフソング「夢直行便」
- 大鵬薬品工業 - コーポレートソング「スマイル・フォー・ミー」(坪倉唯子)
- デンソー - 宇宙へのドア(井上あずみ)
- TOTO - ととべんきのうた(坂田おさむ)
- 東宝 - 東宝株式会社社歌(高島忠夫、草笛光子)
- 日産自動車 - 世界の恋人(シンガーズ・スリー)
- スキャットバージョン。グループのCMソングであり、正式な社歌ではない。
- 日本ブレイク工業 - 日本ブレイク工業「社歌」2007(萬Z(量産型))
- 北海道旅客鉄道(JR北海道) - 北の大地(ダーク・ダックス)
- マキタ - I Love You Japan(MR. BIG)
- ライブ音源
- ユニ・チャーム - ユニ・チャームグループ社歌(沖野グループ)
- ロート製薬 - ロート製薬企業キャラクターソング「Happy Surprise! ~よろこビックリの唄~」(鳥山あかね)
- ワコール - 新ワコール社歌「限りなき飛翔(友竹正則)
- キングレコード - キングレコード株式会社社歌(林伊佐緒、井口小夜子)
鉄道会社の社歌が含まれるCD
編集アルバム「鉄歌: 鉄道会社の歌」収録作品
編集キングレコードより2009年10月7日に発売されたCD「鉄歌: 鉄道会社の歌」に収録された鉄道会社の社歌。当初「社歌・応援歌集」なる仮の副題がついていた。収録17曲中5曲が社歌である。監修は弓狩匡純。
- 九州旅客鉄道(JR九州) - 「浪漫鉄道」(ハイ・ファイ・セット)
- 北海道旅客鉄道(JR北海道) - 北の大地(ダークダックス)
- 東海旅客鉄道(JR東海) - 東海旅客鉄道株式会社社歌(二期会)
- 2007年に制定された社歌。作詞は林望である。社名は詞に入っていない。作曲は佐藤眞の手によるもので、この時代には珍しく唱歌、寮歌や軍歌を思わせる復古調の曲である。演奏はクラシック音楽界より起用され、アルバムには日本フィルハーモニー交響楽団(指揮は佐藤眞とライナーノートにのみ記述)の演奏、混声四部合唱版が収録されている。バリトン独唱版・ピアノ版(ともにライナーノートに演奏者の記述なし)、吹奏楽版(演奏は佐藤の指揮による東京佼成ウインドオーケストラと記述)、オーケストラ、男声四部合唱の6パターンがある。
- なお、同社の歌として1989年に発表された[11]「君をのせて」がCMソングにも使われる[11]など広く知られており、長らく社歌と認識されてきたが、ライナーノートには愛唱歌であると記述されている。こちらも社名は詞に入っていない。
- 南満州鉄道 - 満鉄社歌(東海林太郎、東京アカデミー混声合唱団)
- 日本国有鉄道 - 「鐵道精神の歌」(中野忠晴、コロムビア合唱団)
他に、伊予鉄道の「伊豫鐵道唱歌」(麻耶重善)が収録されている。25番からなる唱歌であるが、ライナーノートには現在は1,2,6番のみが会社の行事で斉唱されると記述されている。作詞は「鉄道唱歌」の大和田建樹、作曲は田村虎蔵(鉄道唱歌は作曲者が複数いるがその一人(最も知られた作曲者ではない))。
なお、このアルバムの他の収録曲は、野球部の応援歌(九州旅客鉄道)、コマーシャルソング、鉄道会社活性化のためのイメージソングなどである。
アルバム「JNR toJR」収録作品
編集キングレコードより2017年3月29日に発売されたCD「JNR to JR 国鉄民営化30周年記念トリビュート・アルバム 」に収録された国鉄・JRの社歌。
その他の特色のある社歌
編集- 金田重機 - Go!Go!金田重機の歌
- 『とんねるずのハンマープライス』(関西テレビ)で社員の一人がT.M.Revolutionの西川貴教と浅倉大介が社歌を作る権利を170万円で落札したことで作られた。
- セガ - 若い力
- 1991年に制定されたゲーム会社の社歌。歌詞の中にセガの社是でもある「創造は生命(いのち)」、経営理念でもある「知的創造で社会に貢献」「先進技術で時代の先取」「人社一体で目標を追求」等のフレーズが盛り込まれている。歌手は135。作詞は当時社員だった高橋栄一、作曲は若草恵が担当。
- 2014年放映のテレビアニメ『Hi☆sCoool!セハガール』でリミックス版がエンディングテーマとして使用されている。
- 堀場製作所
- 2004年に、社歌を35年ぶりにリニューアル(歌詞に変更はない)。シンガーソングライターの大奈に編曲を依頼してもらい、16ビート調とマーチ調の2曲の新たな社歌を製作[1]。
- IBM
- PFU
- 小椋佳の作。
- トマト銀行 - にんげん大好き
- 小椋佳の作。1989年の現社名変更と同時に制定された。自社のウェブサイトで公開している[13]。
- パナソニック - この夢が未来
- 石川島播磨重工業(現:IHI) - 明日をめざして
- 九電工 - 地球の愛し方
- 創立50周年を記念して制定した社歌。作詞は阿久悠、作曲は井上大輔、編曲はマイケル・ボディカー。歌詞に社名は入っていない。同社のテレビCMでも使われた[15]。
- サントリー - 今その時
- 1989年に発表した愛唱歌。スティーヴィー・ワンダーの曲に社内公募した歌詞をつけた。歌手は坪倉唯子[11]。
- キッコーマングループ - おいしい記憶
- NTTデータ - NTT DATA One Song -Shine like the sun-
- キミカ - 帆をあげて
- YSK e-com - Solution 〜その笑顔が見たいから〜[19]
正式な社歌でない曲
編集関連文献
編集- 弓狩匡純・著 「社歌」 文藝春秋 2006年11月 ISBN 4-16-368440-9
- 寺岡寛・著 「社歌の研究」 同文舘出版 2017年10月
外部リンク
編集脚注
編集- ^ a b c d e f 「歌って踊って、社歌シャカ──エンターテインメントの新天地!?」『日経産業新聞』2004年1月22日付、21頁。
- ^ 「社歌で企業文化広く発信 社員傘下の動画制作、若手も注目」『日経産業新聞』2017年6月28日付、24頁。
- ^ “社歌、5回目のブーム? コロナ下の経営危機、Jポップ調で「記録」:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞. 2023年6月6日閲覧。
- ^ 「社歌のCD発売 テンポラリーセンター」『日経流通新聞』1992年4月9日付、5頁。
- ^ 横山剣さんが西原商会の社歌提供、MSN産経ニュース、2014年6月20日 10:00。
- ^ a b c d 変わる「社歌」 再びブームの兆し 日本経済新聞 2016年11月13日 6:30。
- ^ 株式会社AYUMI ONE. の社歌ができました!!、AYUMI ONE.、2023年4月1日。
- ^ ♪流せ、でっかいうんち…この“社歌”もブレイク?、ZAKZAK、2004年4月2日。(インターネットアーカイブ)
- ^ a b c 「生活 社歌っていいね!」『日本経済新聞』2018年7月13日付夕刊、4頁。
- ^ 社歌に先駆け、全社員で社歌ダンス!?、株式会社JOYアグリス、2017年5月15日。
- ^ a b c d e 「ニュー社歌はやる」『日経産業新聞』1991年2月20日付、17頁。
- ^ IBM - Archives - Multimedia - United States - 2018年2月10日閲覧
- ^ トマト銀行の歌「にんげん大好き」、トマト銀行。 - 2018年2月10日閲覧
- ^ 松下電器の社歌・旧社歌、松下通信物語「未来つくりの半世紀」。 - 2018年2月10日閲覧
- ^ 「CMソング?!いえいえ社歌 九電工」『西日本新聞』1995年6月22日付朝刊、9面。
- ^ 社歌・制作者プロフィール、キッコーマン。 - 2018年7月14日閲覧。
- ^ NTT DATA One Song、NTTデータ。 - 2018年7月14日閲覧。
- ^ 老舗メーカーが“ポップス”社歌をつくったワケ (1/4)、ITmedia、 2018年3月27日11時00分公開。
- ^ YSK e-com 社歌 - 2021年3月27日閲覧。
- ^ Ysk e-com 社歌発表!、伸太郎オフィシャルブログ、2018年7月12日。
- ^ 会社CM - 2021年3月27日閲覧。
- ^ 2021年4月1日よりの弊社社名変更につきまして、大分ゼロックス、2021年。
- ^ OA戦隊XEROX(インターネットアーカイブのキャッシュ)