タマネギ

キジカクシ目ヒガンバナ科の植物、またその食用部分である球根のこと
たまねぎから転送)

タマネギ(玉葱、葱頭、学名:Allium cepa)は、ネギ属多年草

タマネギ
Onions.jpg
タマネギ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 amgiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: ヒガンバナ科 Amaryllidaceae
亜科 : ネギ亜科 Allioideae
: ネギ属 Allium
: タマネギ A. cepa
学名
Allium cepa L. [1]
和名
タマネギ
英名
Onion

園芸上では一年草もしくは二年草として扱われる。主に球根(鱗茎)が野菜として食用とされるほか、倒伏前に収穫した葉(葉タマネギ)もネギと同様に調理できる[2]。色、形状、大きさは様々である。種小名 cepa はラテン語で「タマネギ」の意味。

名称編集

和名であるタマネギの由来は、文字通り鱗茎が玉のように大きくなる葱のなかまという意味からきている[3]

英名はオニオン(onion)、仏名がオニョン(oignon、または ognon[4])、伊名ではチポッラ(cipolla)という[5]

特徴編集

 
 
タマネギ

越年生の草本[6]鱗茎は径10センチメートル (cm) 前後の球形、または扁球形をしており、特異な刺激性の臭気がある[7]は円筒形で直立し、高さは50 cmくらいまで生長して、下部に2 - 3のをつける[7]。葉はネギよりも細く、濃緑色で中空になっている[7]。秋には、茎頂部に花序が大きな球形となってつき、白色のが密集する[7]

葉が伸びて70 cmくらいに育つと、地中の葉鞘が結球しはじめ肥大化する[8]。鱗茎がある程度肥大すると、地上部の葉鞘が葉を支えきれなくなって倒れ込む倒伏性がある[8]

染色体数は 2n=16。生育適温は 20 °C 前後で、寒さには強く氷点下でも凍害はほとんど見られないが、25 °C 以上の高温では生育障害が起こる。花芽分化に必要な条件は品種や系統によって大きく違うが、一定以上に成長した個体が 10 °C 前後またはそれ以下の低温下に一定の期間以上さらされると花芽が分化する。大きな苗を植えると分球や裂球や抽台しやすく、小さいまま低温に遭うと枯れやすい。

結球には日長条件が大きく関与し、短日・中日・長日それぞれに品種系統で分化している。大まかに、日本で栽培されているものは、春まきが14時間以上の長日条件下、秋まきの早生種で12時間程度の中日条件下で結球する。長日条件・温度上昇で肥大が促進される。玉が成熟すると葉が倒伏し、数か月の休眠に入る。ヨーロッパなどで栽培される品種の中には16時間以上の長日でなければ結球しない品種があり、それらは日本では収穫できない。

ネギは花弁が開くが、タマネギとは花弁が開かない点で区別できる。

ヤグラネギや野草のノビルと同じように、花の咲く所から芽が伸びる品種がありヤグラタマネギとよぶ。

歴史編集

原産は中央アジアとされるが、野生種は発見されていない。原産地はペルシア(イラン)やベルチスタン(バルーチスターン)あたりといわれるが、はっきりしていない[3]栽培の歴史は古く、紀元前古代エジプト王朝時代には、ニンニク等と共に労働者に配給されていた。ヨーロッパ地中海沿岸に伝わったタマネギは、東ヨーロッパバルカン半島諸国やルーマニア)では辛味の強い辛タマネギ群、南ヨーロッパイタリアフランススペイン)では辛味の少ない甘タマネギ群が作られた。これらの両系統は16世紀にアメリカ大陸に伝えられ、様々な品種が作られた。

その一方、原産地から東のアジアには伝わらなかった。日本では江戸時代末期[3]長崎に伝わったが、観賞用にとどまった。食用としては、1871年明治4年)に札幌で試験栽培されたのが最初とされ、1878年明治11年)、札幌農学校教官のブルックスにより本格的な栽培が始まった。その後の1880年明治13年)に、札幌の中村磯吉農家として初めて栽培を行った。1885年(明治18年)ころから野菜として栽培されるようになったと考えられている[3]

種類編集

大別すると、東欧系の辛味品種と、南欧系の甘味品種があり、日本で栽培されるものは、ほとんど辛味品種である[9]。甘味品種には、紫タマネギの湘南レッドがある[9]。一方で、辛味品種には黄タマネギ、ペコロスなどがある[9]

鱗茎の外側の薄皮の色は銅黄色、紅紫色、白色の3色があって[9]、それぞれ黄タマネギ、赤タマネギ、白タマネギと分けている[10]。玉の形は、偏球形、球形、紡錘形などに分けられる[9]。出荷時期や栽培地によって多くの栽培品種があるが、辛味を抑えて品種改良されたものなど、地方に適した系統のものが栽培されている[11][9]

日本で栽培される品種の主流は「黄タマネギ」といわれる系統で[11]アメリカから導入された春まき栽培用の「イエロー・グローブ・ダンバース(Yellow globe danvers)」という品種が「札幌黄」という品種に、秋まき栽培用は1885年明治18年)、大阪に「イエロー・ダンバース(Yellow danvers)」という品種が導入され「泉州黄」に、フランス系の「ブラン・アチーフ・ド・パリ」が「愛知白」に名を変えて、それぞれ地域に定着化した。さらに農家農協単位で自家採種・選抜を行い、農家や地域ごとに特徴のある品種が作られた。

いわゆる「新タマネギ」と呼ばれるものは、春に出回るもので、水分が多く肉質が柔らかい[9]

黄タマネギ
最もポピュラーで薄皮が赤茶色の品種。秋冬に収穫する秋冬タマネギと、春に収穫する新タマネギがある。秋冬玉ねぎは、保存性を高めるため収穫後に風干しして1か月ほど皮を乾燥して出荷しているため[10]、水分量は少なめで、肉厚で辛味がある[11]。新タマネギは、皮が白っぽい黄タマネギの早採りもので[10]、水分量が多く軟らかい食感で辛味が少なく、生食にも向いている[11][12]。また、干さずに出荷するため、保存性は悪い[11]
サラダオニオン
辛タマネギで、早生種。一般に玉は偏平で、水分量が少なく貯蔵性は低い。柔らかくて辛味は少ないため、生食に向いている[13]
白タマネギ
辛味を抑えて品種改良した早生種。早春から春にかけて出回り、日本の代表品種に愛知白がある。甘味が強く水分量が多く、貯蔵性は低い[13]。サラダや和え物に向く[11]
紫タマネギ(赤タマネギ、レッドオニオン)
薄皮や表層が鮮やかな紅紫色の品種で、輪切りすると赤い縞の輪が出る[13]。複数の品種があり、日本では湘南レッドが代表種[12]。タマネギ特有の刺激臭は少なく、辛味が少ないのが特徴。サラダなどの生食に向いている[11]
エシャロット
フランスの香味野菜。各国で様々な呼び名がある[11][注釈 1]
ペコロス(小タマネギ、プティオニオン)
黄タマネギを密植して直径3 - 4 cmほどに小さく育てた、小タマネギのこと。辛味は少なく煮崩れしにくいため[13]、丸ごとシチューなどの煮込み料理や、ピクルスに利用する[11]。色が赤い種類もある[12]
パールオニオン
直径1 - 2 cmほどの小粒の小タマネギの一種。収穫時期によって、小指大からピンポン球大まである[13]。皮が白くて辛味が強く、ピクルスや肉料理の付け合わせなどに使われる[12]
ルビーオニオン
皮が光沢があり鮮やかな赤色の小タマネギの一種。辛味は弱く、スライスしてサラダの彩りや、丸のままピクルスに使われる[13]
葉タマネギ
極早生の白タマネギを土寄せして栽培して茎葉を太くしたもので[13]、葉が青い春のうちに、葉つきで収穫する。葉や鱗茎はともに柔らかく食用でき、葉はビタミンが豊富で、玉ねぎの部分も甘味がある[12]。葉の部分は青ネギの代用にできる[13]

栽培編集

種まきや収穫の時期、産地などによって、一年中出荷されている[11]2005年平成17年)の世界生産量は約6500万トン (t) 。 一般には9 - 6月が栽培適期で、秋に種をまき、苗を育てて晩秋に苗を定植する。定植後はあまり手間がかからず、晩春から初夏に収穫する[14]。栽培適温は15 - 20とされ、連作も可能である[14]

日本における生産と流通編集

 
タマネギ畑(富良野市)
 
新タマネギ。例年日本では4月〜5月頃に出回る。

日本での生産量は115万4000トン、作付面積は2万4000ヘクタール (ha) である。そのうち北海道が生産量約66万トン、作付面積1万2500 haと、全国生産量の約5割強を占める(以上、統計値は農林水産省 平成21年産春野菜、夏秋野菜の作付面積、収穫量及び出荷量(速報)による)。北海道に次いで佐賀県兵庫県(主に淡路島)、愛知県長崎県静岡県大阪府(主に泉州地区)が主な産地である。北海道は春播き栽培、他府県では秋播き栽培が行われるため、季節ごとに産地の異なるものが小売されている。

安価である外国産(中国タイ韓国、アメリカ、トルコオーストラリアニュージーランド)の輸入品も多い(輸入量約20万8000トン/ジェトロ2009年平成21年)年計)。国産品は価格面の対策として生産・流通コストの低減化、端境期対策としてマルチング・トンネル栽培による極早生の早期化や貯蔵技術の向上、極早生品種・高貯蔵性品種の開発、品質面の対策として高機能性品種の開発等を行っている。

栽培体系編集

大きく分けて春播き栽培と秋播き栽培がある。致命的な病気や害虫は少なく、栽培の容易な野菜である。

春播き栽培編集

品種は7月以降に収穫できる晩生。2月末から3月にビニールハウス内で播種し、育苗する[8]。4月下旬から5月にかけて苗をに定植する[8]。定植後1か月ほどは苗の活着に要する。6月から7月中旬にかけては葉の生育が盛んな時期で、その後7月下旬から鱗茎の肥大が始まる[8]。鱗茎の肥大期以降はボトリティス菌軟腐病菌ネギアザミウマによる被害を受けやすいため、定期的に農薬による防除を行う。7月から8月にかけ、地上部が倒伏する。倒伏が揃った後、収穫の前には株を土から引き抜くか、根か根を切り離す「根切り」と呼ばれる作業をする[8]。収穫直前に2週間ほど茎葉が枯死するまで畑でそのまま乾かしてから、収穫を行う[8]。収穫後は茎葉が枯死した葉を切り落とし、コンテナに入れてそのまま乾燥させる[8]

セット栽培編集

春播き栽培と秋播き栽培の中間的な栽培方法。品種は極早生。2月末から3月にビニールハウス内に播種しそのまま結球させ、直径が2cm程度の小タマネギ(種球根)を作る。

秋播き栽培編集

9月に播種し、葉が4 - 5枚になるころまで、間引きと土増しを行って育苗する[14]。2か月ほど経った11月ころに苗を定植する[15]。極早生から早生にかけては、マルチ栽培やトンネル被覆を行うところもある。5 - 6月ころになって茎が十分太くなっなり、葉が倒れてきたら収穫の適期で、約8割方の葉が倒れたら、天気のよい日に葉の付け根から引き抜いて収穫する[15]。早生や極早生では倒伏前に収穫し、葉付きで出荷することもある。中生や晩生では、風通しのよい日陰で乾燥させて貯蔵する。数個のタマネギを葉のところで紐で縛り、吊るして貯蔵する事もある[15]

固定種の採種栽培編集

採種(種の収穫)を目的とした栽培は食用栽培と大きく異なる。主な工程は母本選抜と開花・採種である。採種したい品種を食用栽培と同様の方法で大量に栽培し、収穫と同時に最も理想的で優れた性質の個体を厳しく選抜する。9月頃に播種する。選抜した個体(母本と呼ぶ)を9月頃に定植する。ここまでに約1年かかる。日本においては開花・結実時期が梅雨にあたるため、ビニールハウスなどの雨を避けられる環境でなければ安定した収穫が得られないので、このことを考慮して植え付け場所を選定する。秋に定植した株は翌年の7月頃から開花・結実を始める。熟した実が弾けて種が落ちてしまうので見回りを行って熟したものから順にネギ坊主の塊ごと刈り取って乾燥する。種播きから始まり母本の選抜などを経て、採種に至るまでおよそ22か月かかる。

交配種(F1品種)の採種栽培編集

母本選抜の方法や注意点などは固定種と同様である。タマネギの交配種の採種には、雄性不稔という正常な花粉を作れない突然変異系統を用いる。不稔の性質は母から子へ伝わるため、不稔の個体に正常な個体の花粉を着けてやれば不稔個体の繁殖が行える。Aという品種の花粉を不稔個体に交配して採種し、その子世代にAを再度交配する。そこから得た孫世代に再度Aを交配する。同様の交配を繰り返すことで、Aにそっくりな不稔系統「a」を得られる。雄性不稔になったaと、正常な花粉を作れる品種B(花粉親)を並べて開花させれば、ミツバチによってBの花粉がaに交配されて結実する。十分に交配が済んだら、交配用の品種Bは不要なので刈取り、または抜き取って処分させる。市販されている交配種は不稔であるが、正常な花粉を交配してやれば交配種からの自家採種も可能である。しかし、交配に用いた花粉親に近いものとなる。また、その子・孫世代も不稔であるため、採種のたびに花粉親に近づいていく。

重要病虫害編集

  • 乾腐病 病原菌:Fusarium oxysporum f. sp. cepae
  • 軟腐病 病原菌:Erwinia carotovora subsp. carotovora
  • ボトリティス菌による葉枯れ(白斑葉枯病):Botrytis squamosaB. cinerea、ほか
  • ボトリティス貯蔵腐敗:Botrytis alliiB. byssoidea、ほか
  • ネギアザミウマ Thrips tabaci
  • タマネギバエ Delia antiqua
  • タネバエ Delia platura
  • べと病[16]

栽培上の注意点編集

  • タマネギは高温に弱く、しかも日長(長日)に対して非常に厳密に反応するため、栽培目的にあった品種を選ぶ必要がある。
    例えば北海道の春播き品種(晩生品種)を関東地方より西の地域で栽培すると結球に必要な日長になる前に入梅してしまい腐敗が多くなる。反対に秋播き品種(早生や中生)を北海道で栽培すると冬の寒さで枯れる。また春播きにした場合も、葉が十分に成長する前に日長に反応して結球を始めてしまうので十分な収穫を得られない。これは6月下旬から7月上旬が一番日長が長くなるからである。海外など緯度の異なる地域の品種を導入する際は何時間の日長に反応するのかよく確認する必要がある。
  • 品種や栽培する地域ごとの播種適期がかなり限られている。極端な早播きや晩播きでは十分な収穫が得られない。
  • 秋播き栽培では大苗を植えると抽台率が極端に上がるので、茎の太さが 45 mm(およそ鉛筆の太さ)程度の苗を利用するのが良い。大苗は薬味ネギの代用に使えばよい。
  • 元肥えが効き過ぎると冬が来る前に大きく育ち抽台(花芽が分岐してとうが立つこと。品質が悪くなる。)の原因となる。
  • 晩生品種は入梅前に収穫を終えないと腐敗が多くなる。
  • 栽培の終盤まで窒素肥料が効くと貯蔵性が悪くなる。貯蔵目的であれば春以降は肥料を与えない。

食材としてのタマネギ編集

 
ハーリングの付け合わせとして添えられたタマネギのみじん切り

主に鱗茎を食用とするが、強い辛味・香味がある。一年中出回っているが、食材としてのは10 - 12月で、新タマネギは4 - 5月とされる[17]。鱗茎の上部が締まっていて、ひげ根が延びておらず、切ったときに芽が上まで伸びていないものが良品とされる[17][10]。秋冬たまねぎは、皮がよく乾燥していてきれいなつやがあるものがよい[10]。生のタマネギはイチゴ位の甘みを持っているが、これはタマネギが光合成産物をデンプンではなく、主にスクロースグルコースフルクトース等の低分子の糖として貯蔵するためである。一般的に食べられているタマネギは『イエローオニオン (yellow onion)』とも呼ばれる。日本ではエシャロットの代用[18]とされる場合もある。

辛みの強さは、品種によって違いがある。一般に早生の方が辛みが少なく、晩生になるにつれ辛みが強くなる。また保存状態によっては辛味が強くなるため、晩生の貯蔵用品種であっても葉が青いうちに収穫してすぐに利用すれば比較的辛味が少ない。

タマネギを切ると涙が出るのは、鱗茎に含まれるチオアルデヒドという成分の作用によるもので[7]、タマネギの細胞がスライスされた時に発生するsyn-プロパンチアール-S-オキシドが気化し、粘膜を刺激するためである[19]涙の出ないタマネギも開発されてはいるが、遺伝子組み換え作物のため市場には出ていない。加熱すると甘味が出るが、その理由はn-プロピルメルカプタンという成分ができるからであることがわかっている[7]。生のタマネギの辛味成分は、ジアリル・ジサルファイドなどである[7]。生のタマネギの匂いは、主にジプロピルジスルフィドによるものである[20]

臭いや辛味の元になっている成分の硫化アリルは、タマネギを切るときに細胞が壊れて、アリシンという成分に変化する[17]。アリシンは、血流をよくして血栓ができにくくする働きがあり、動脈硬化や脳梗塞予防に効果があるといわれている[17][10]。また、アリシンはビタミンB1を含む他の食品と一緒に摂取すると吸収を高める効果があり[10]、水溶性で加熱に弱いという性質がある[17]

料理編集

ジャンルは問わず多様な料理に幅広く使われ、世界中で親しまれている[17]。スライスしてサラダマリネにするほか、煮込み料理ではカレーシチュー肉じゃがなど[9]と共に料理するオムレツ親子丼に用いるほか、ソースなどとしてデミグラスソーストマトソースタルタルソースサルサなどの素材としても欠かせない。刻んで炒めたものをハンバーグやコロッケの具材に入れたり、炒め物、煮物、揚げ物、汁の実など幅広く利用できる[9]。日持ちがするため、大航海時代にはニンジンジャガイモと共によく食べられていた。

新タマネギと呼ばれる極早生のタマネギなどは、生の薄切り(オニオンスライス)や、みじん切りラーメントッピング用など)でも美味しく食べられる[21]。ペコロスのように小さなものは、切らずにそのまま煮物やグラッセにして、形も楽しむといった使い方をする[9]

タマネギの種は黒ごまに姿が似ており、インドヨーロッパにおいてスパイスの一種としてそのまま、あるいは他のスパイスと合わせて料理の香り付けなどに用いられる。

調理法編集

秋冬タマネギと、春に出回る新タマネギでは、同じ調理法を行ってもうまさを上手に引き出せなので、それぞれ特性に合わせて調理法を変える。秋冬タマネギでは、じっくり加熱調理することで甘味と深い旨味を引き出せるので、大きめに切って、煮込み料理に使う方が向いている[11]。一方、新タマネギは水っぽいため、煮込んでも旨さが引き出せない。このため、生食するか、軽く炒めて食感を活かした食べ方に向いている[11]

タマネギには、辛味と甘味の両方の成分が含まれている。生のときは、辛味成分が強いため甘味を感じることが少ない[11]。炒めるなどの加熱調理することによって、辛味成分は分解されて甘味成分だけが凝縮して残されるので、タマネギ特有の甘味が出てくる[11][10]。さらに、茶褐色になるまで炒めると、甘味に旨味が加わり、カレーやシチューなどのベースになる濃厚なコクが出てくる[11]

生食の場合、切ってから水にさらすと辛味が和らぐ[9]。タマネギを切る前に、あらかじめ冷蔵して冷やしておいたり、切れのよい包丁で手早く切るようにすると、涙が出てしまうことを抑えることができる[12]

栄養価編集

たまねぎ りん茎 生[22]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 155 kJ (37 kcal)
8.8 g
食物繊維 1.6 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.01 g
多価不飽和 0.03 g
1.0 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
1 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.03 mg
リボフラビン (B2)
(1%)
0.01 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.1 mg
パントテン酸 (B5)
(4%)
0.19 mg
ビタミンB6
(12%)
0.16 mg
葉酸 (B9)
(4%)
16 µg
ビタミンC
(10%)
8 mg
ビタミンE
(1%)
0.1 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
2 mg
カリウム
(3%)
150 mg
カルシウム
(2%)
21 mg
マグネシウム
(3%)
9 mg
リン
(5%)
33 mg
鉄分
(2%)
0.2 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
(3%)
0.05 mg
マンガン
(7%)
0.15 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 89.7 g
コレステロール 1 mg
水溶性食物繊維 0.6 g
不溶性食物繊維 1.0 g
ビオチン(B7 0.6 µg

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[23]。廃棄部位: 皮(保護葉)、底盤部及び頭部
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標RDIの割合。

炭水化物が多めに含まれていて、ビタミンB1・B2・Cなどのビタミン類や、カリウム、カルシウムなどのミネラル、食物繊維がバランスよく含まれている[17]。調理過程で水にさらすと、栄養成分が流れ出てしまうため、辛味成分が少ない新タマネギは水にさらさずにそのまま食べた方が栄養を効率よく摂取できる[17]。タマネギを加熱し、黄色、あめ色、茶色と褐変が進行するに従ってDPPHラジカル消去能が上昇する、との報告がある[24]。タマネギを炒めることによってメイラード反応が起こり、褐色物質のメラノイジンが生成する。メラノイジンは、in vitroでは抗酸化作用活性酸素消去活性、ヘテロ環アミノ化合物(発癌物質)に対する脱変異原活性などを有する可能性があるとして研究が続けられている[25] [信頼性要検証]

かつて、デザイナーフーズ計画のピラミッドで2群に属しており、チャターメリックと共に、2群の最上位に属する高い予防効果のある食材であると位置づけられていた[26]

保存編集

タマネギは収穫後、表皮を乾燥させておけば長期保存が可能であり、常温でも数か月は保存が可能な食材とされる。生産者は、極早生や早生の種は保存性がないため、機械乾燥してからすぐに出荷するが、貯蔵性に優れる晩生の種は、秋に収穫して施設で乾燥させたあと、貯蔵庫で翌年春まで保存できる[8]。CA (Controlled Atomosphere) 冷蔵法[注釈 2]の導入により、薬剤や放射線照射に頼らず、萌芽を同時に防ぐ保存法も確立されている[8]

家庭などでは、湿気がこもらない、かつ乾燥しすぎない風通しのよい場所で、ネットや紙袋などに入れて、室温で保存できる[11][12]。暑い季節は、冷気にあたらないようにする[11]。調理で切って使い切れなかった玉ねぎは、切り口をラップなどで包んで、乾燥しないようにポリ袋などに入れて冷蔵保存する[11]

薬用編集

タマネギの薬用の歴史は古く、紀元前15世紀ころに書かれたエジプトの医学書とされる『エーベルス・パピルス』に名称が登場する[3]。古代ギリシアの本草書『ディオスコリデスの薬物誌』の中でも、タマネギの薬用について詳細に記述されている[3]

タマネギには汗を出して熱を下げる効果があるほか、鱗茎を常食すれば、食欲増進や便通をよくする緩下作用がある[7]民間療法では、風邪の初期症状のとき就寝前に、タマネギの鱗茎を細かく刻んで湯飲みに入れて、すりおろしたヒネショウガを少量加えて味噌で調味して、熱湯を注いでしばらく置いたあとによくかき混ぜてから飲む方法が知られる[7]止めには、細かく刻んだタマネギをタオルのような布の中央に入れてその部分に熱湯をかけて軽く絞り、のどに当てて温湿布する方法が知られる[7]

動物への影響編集

イヌネコなどの動物が食べた場合にはアリルプロピルジスルファイドにより血液中の赤血球が破壊され、血尿、下痢、嘔吐、発熱を引き起こすことがある[27]。タマネギの加工食品やエキスもイヌやネコなどの動物に影響を与えることがある[27]

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ 日本では、生食用に軟白栽培されたラッキョウが「エシャロット」の名で呼んでいる[11]
  2. ^ 庫内の温度と空気成分の調整によって、青果物の呼吸を最小限に抑え、鮮度の低下を防止するシステム[8]

出典編集

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium cepa L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月8日閲覧。
  2. ^ こぐれひでこの食悦画帳/葉タマネギ 玉のままうどんに『読売新聞』夕刊2018年12月8日(2面)。
  3. ^ a b c d e f 田中孝治 1995, p. 192.
  4. ^ 「玉ねぎ」はフランス語で?野菜に関するフランス語”. =Bibliette(ビブリエット). 2020年7月9日閲覧。
  5. ^ 講談社編 2013, p. 158.
  6. ^ 田中孝治 1995, p. 93.
  7. ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 193.
  8. ^ a b c d e f g h i j k 講談社編 2013, p. 159.
  9. ^ a b c d e f g h i j k 講談社編 2013, p. 161.
  10. ^ a b c d e f g h 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 30.
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 主婦の友社編 2011, p. 57.
  12. ^ a b c d e f g 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 31.
  13. ^ a b c d e f g h 講談社編 2013, p. 160.
  14. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 60.
  15. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 61.
  16. ^ 三澤知央、ネギ葉枯病の発生生態と防除に関する研究 北海道立総合研究機構農業試験場報告 = Report of Hokkaido Research Organization Agricultural Experiment Station (132), 1-90, 2012-10, NAID 120005332243
  17. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 56.
  18. ^ 十時亨『フランス料理の基本』新星出版社 2005年
  19. ^ Eric Block (2009). “Chapter 4. Chemistry in a sallad bowl: Allium chemistry and biochemistry”. Garlic and Other Alliums: The Lore and the Science. Cambridge: Royal Society of Chemistry. ISBN 978-0854041909  Google ブックス
  20. ^ 長谷川香料株式会社『香料の科学』講談社、2013年、93頁。ISBN 978-4-06-154379-9
  21. ^ 【食べ物 新日本奇行 classic】ラーメンのネギは白か青か いや、タマネギだってある 日本経済新聞社NIKKEI STYLE(2017年4月1日)2018年12月18日閲覧。
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  23. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  24. ^ 下橋淳子「褐変物質のDPPHラジカル消去能」『駒沢女子大学研究紀要』 37,pp17-22,2004-03-03. NAID 110004678454
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  26. ^ 大澤俊彦、がん予防と食品 『日本食生活学会誌』2009年 20巻 1号 p.11-16, doi:10.2740/jisdh.20.11
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参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集