クリストファー・ノーラン
クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan, 1970年7月30日 -)は、イギリス出身の映画監督・映画プロデューサー・脚本家。
クリストファー・ノーラン Christopher Nolan | |||||||||||||||||||||||||||||
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![]() 2013年 | |||||||||||||||||||||||||||||
生年月日 | 1970年7月30日(50歳) | ||||||||||||||||||||||||||||
出生地 |
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国籍 |
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職業 | 映画監督 | ||||||||||||||||||||||||||||
ジャンル | 映画監督・映画プロデューサー・脚本家 | ||||||||||||||||||||||||||||
配偶者 | エマ・トーマス(1997年 - ) | ||||||||||||||||||||||||||||
著名な家族 | ジョナサン・ノーラン(弟)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||
主な作品 | |||||||||||||||||||||||||||||
『メメント』 『ダークナイト トリロジー』 『インセプション』 『インターステラー』 『ダンケルク』 『TENET テネット』 | |||||||||||||||||||||||||||||
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プロフィール編集
ロンドンでコピーライターの父と客室乗務員の母のもとに生まれる[2][3]。父親はイングランド人、母親はアメリカ人であるため、イギリスとアメリカの国籍を持つ。幼少の頃はロンドンとシカゴの両方で過ごした。その後ハートフォードシャーのインデペンデント・スクールであるヘイリーベリー・アンド・インペリアル・サービス・カレッジを卒業後、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学に入学。英文学を学ぶ傍ら、短編映画の制作をはじめる。映画製作ではなく英文学を専攻した理由については「視点を広げるため」と語っている。大学を選んだ理由は映画製作施設の整っていることも挙げており、同大学の映画ソサエティのプレジデントを務めた。
1998年、『フォロウィング』で初めて長編映画の監督を務める。2作目となった『メメント』の脚本は、弟のジョナサン・ノーランが書いた短編を基にしている。この作品で一気に注目されるようになり、ロサンゼルス映画批評家協会賞やインディペンデント・スピリット賞などを受賞、アカデミー脚本賞にもノミネートされる。
2000年代には新生『バットマン』シリーズの監督に抜擢される。2005年公開の『バットマン ビギンズ』では期待に反し平凡な興行成績に留まるも、2008年公開の続編『ダークナイト』は公開6日で『バットマン ビギンズ』の興行収入を超えて『バットマン』シリーズ最大のヒットとなり、最終的に全米興行収入歴代2位、世界興行収入歴代4位を記録した(全て公開時)。また、悪役「ジョーカー」を演じたヒース・レジャーは第81回アカデミー賞助演男優賞を受賞。この作品の成功によりノーランが監督した『バットマン』シリーズはアメリカでは『ダークナイト・トリロジー』と呼ばれるようになった。2012年公開の完結作『ダークナイト ライジング』でも監督を務めた。
以降も製作費1億ドル超(所謂ビッグバジェット)のオリジナル作品である『インセプション』(2010年)、『インターステラー』(2014年)、『ダンケルク』(2017年)がいずれも全米興収1億8000万ドルを超えており、アカデミー賞複数部門ノミネートとなるなど、作家主義と大作主義の両立に最も成功している一人と評される[4]。
2019年1月25日には、次回作『TENET テネット』の公開日が2020年7月17日であるとワーナーブラザーズが発表した。しかし新型コロナウィルス感染拡大の影響でアメリカ国内では映画館が閉鎖されている状況を受け、公開日は7月31日、8月12日と延期され、最終的には8月26日に欧州から段階的に世界で公開し、全米公開は9月2日となった(日本国内公開は当初の予定通り9月18日)。この影響で、『TENET テネット』の全米興収は約5700万ドルと大きく低迷、興行としては失敗に終わった。
私生活では、1997年に大学の同級生であり映画プロデューサーのエマ・トーマスと結婚。4人の子供と共にロサンゼルス在住。また、左利きである。
作風編集
- インターネット嫌いを公言しており、『インターステラー』にはパソコン、携帯電話などインターネットを想起させるものは出さなかった。その理由として「ネットのせいでみんな本を読まなくなった。書物は知識の歴史的な体系だ。ネットのつまみ食いの知識ではコンテクストが失われてしまう」[5]と語っている。
- IMAXを初めて長編映画で使用した監督である。あまり最先端技術には興味を示さず、『ダークナイト』ではCGではない本物のビルを丸ごと1棟爆破して撮影を行った。『インターステラー』で使われている一部の地球の映像はCGではなく実際にジェット機の先端にIMAXカメラを搭載し成層圏で撮ったものである。[6]また、『TENET テネット』では退役した飛行機(ボーイング747)を購入し、実際に倉庫に激突させて撮影をした。大掛かりな撮影が困難な時はミニチュアなどによる特撮を起用し極力CGの使用を避けている。撮影現場では第二班(本編撮影とは別に、背景やアクションシーンなど、ドラマシーケンス間を構成する、つなぎのシーケンスを担当する撮影チーム)監督をほとんど使わず、自らカメラの横に立って撮影を行う姿勢を貫いている。
- 同じ俳優を積極的に起用することで知られる。特にマイケル・ケインは『バットマン ビギンズ』以降の長編8作品全てに出演している(『ダンケルク』はカメオ出演)。また、主要な製作スタッフを固定することでも知られ、音楽をハンス・ジマー(『バットマン ビギンズ』以降の監督作7作品中6作品)、編集をリー・スミス(『バットマン ビギンズ』以降の7作品全て)、美術をネイサン・クロウリー(『バットマン ビギンズ』以降の7作品中6作品)が担当することが多い。撮影は『メメント』以降『ダークナイト ライジング』まで一貫してウォーリー・フィスターを起用していたが、フィスターが映画監督を志向したため、『インターステラー』以降はオランダの撮影監督であるホイテ・ヴァン・ホイテマを起用している。
- 現在の映画界ではほとんどの監督がデジタルカメラで撮影しているが、彼はフィルムを使った撮影を行っている。2014年8月には、他の数人の映画監督と共に映画スタジオに働きかけ、フィルムメーカーのコダックから今後 一定量のフィルムを購入する契約を締結させたため、経営難だったコダックはフィルム製造の継続が可能になった[7]。
- 音響面では「無限音階(シェパード・トーン)」を多用していて、ほぼ全作品で使われている。
- 『007』シリーズのファンであり、2010年の『インセプション』公開時に初めて「いつかボンド映画を監督したい」と発言しており、現在もシリーズのプロデューサーと話し合いを続けている。特に『女王陛下の007』が気に入っていると述べている[8]。また、『バットマン』シリーズや『インセプション』がボンド映画の影響を受けていることも明かしている[9]。『バットマン』3部作を監督するにあたって最も影響を受けた映画として、リチャード・ドナー監督の『スーパーマン』と「007」シリーズ、特に『007 ロシアより愛をこめて』を挙げ[10]、『ダークナイト』ではヒース・レジャー演じるジョーカーが『ロシアより愛をこめて』に登場するナイフ付きの靴を使用するシーンがある。また『私を愛したスパイ』以来「007」シリーズでフィジカル・エフェクトやミニチュア撮影を担当しているクリス・コーボールドを特技監督に起用し、『007 サンダーボール作戦』末尾のフルトン回収システムを『ダークナイト』に「スカイフック」として登場させ、『消されたライセンス』冒頭の飛行機を飛行機で釣り上げる場面は『ダークナイト ライジング』でそっくりな見せ場を作っている。
- 2013年には「Sight and Sound マガジン」にて、好きな映画として『殺し屋たちの挽歌』(1984年)、『十二人の怒れる男』(1957年)、『シン・レッド・ライン』(1998年)、『怪人マブゼ博士』(1933年)、『ジェラシー』(1980年)、『戦場のメリークリスマス』(1983年)、『宇宙へのフロンティア』(1989年)、『コヤニスカッツィ』(1983年)、『アーカディン/秘密調査報告書』(1955年)、『グリード』(1925年)の10本を挙げている[11]。
フィルモグラフィ編集
長編映画編集
公開年 | タイトル | 配給会社 | RTスコア | IMDbスコア | 興行収入 | クレジット |
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1998 | フォロウィング Following |
モメンタム・ピクチャーズ | 76% | 7.6 | $48,482 | 監督/製作/脚本/撮影/編集 |
2000 | メメント Memento |
ニューマーケット・フィルムズ | 93% | 8.6 | $39,723,096 | 監督/脚本 |
2002 | インソムニア Insomnia |
ワーナー・ブラザーズ | 93% | 7.2 | $113,714,830 | 監督 |
2005 | バットマン ビギンズ[12][13][14] Batman Begins |
85% | 8.3 | $374,218,673 | 監督/脚本 | |
2006 | プレステージ The Prestige |
タッチストーン・ピクチャーズ ワーナー・ブラザーズ |
76% | 8.5 | $109,676,311 | 監督/製作/脚本 |
2008 | ダークナイト[15] The Dark Knight |
ワーナー・ブラザーズ | 94% | 9.0 | $1,004,558,444 | 監督/製作/原案/脚本 |
2010 | インセプション Inception |
87% | 8.8 | $825,532,764 | 監督/製作/原案/脚本 | |
2012 | ダークナイト ライジング[16] The Dark Knight Rises |
87%[17] | 8.8 | $1,084,939,099 | 監督/製作/原案/脚本 | |
2013 | マン・オブ・スティール Man of Steel |
55% | 製作/原案 | |||
2014 | トランセンデンス Transcendence |
19% | 製作総指揮 | |||
インターステラー Interstellar |
ワーナー・ブラザーズ パラマウント映画 |
70% | 8.6 | $675,120,017 | 監督/製作/脚本 | |
2016 | バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 Batman v Superman: Dawn of Justice |
ワーナー・ブラザーズ | 28% | 製作総指揮 | ||
2017 | ダンケルク Dunkirk |
92% | 7.9 | $526,940,665 | 監督[18]/製作/脚本 | |
ジャスティス・リーグ Justice League |
40% | 製作総指揮 | ||||
2020 | TENET テネット Tenet |
70% | 7.5 | $363,129,000 | 監督/脚本/製作 |
短編映画編集
- Tarantella (1989年、監督・脚本・製作) - 未公開
- Larceny (1995年、監督・脚本・製作) - 未公開
- Doodlebug (1997年、監督・脚本・撮影・編集・美術) - 初監督作品
- Quay (2015年、監督) - ドキュメンタリー
出演編集
- サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ Side by Side(2012年)
参考文献編集
- ^ クリストファー・ノーラン監督 人生最大の転機をもたらした弟のアイデア - ライブドアニュース
- ^ http://www.theage.com.au/articles/2002/09/07/1031115958092.html
- ^ http://www.ariel-leve.com/st_interviews/christophernolan.html
- ^ ““大監督”クリストファー・ノーランの作家性ーー映像作家と劇作家、ふたつの側面から徹底考察” (日本語). Real Sound|リアルサウンド 映画部. 2019年1月13日閲覧。
- ^ 町山智浩著『映画と本の意外な関係!』集英社、2017年1月。ISBN 978-4-7976-8005-8。
- ^ http://www.slashfilm.com/christopher-nolan-installed-an-imax-camera-on-a-lear-jet-for-interstellar/
- ^ J・J・エイブラムス監督、クリストファー・ノーラン監督らがフィルムを救う : 映画ニュース - 映画.com
- ^ Jolin, Dan (2010年7月). “Crime of the Century”. Empire: pp. 91
- ^ クリストファー・ノーラン、ボンド映画監督への意欲に再言及
- ^ C・ノーラン監督、故ヒース・レジャーにバットマン役をオファーしていた
- ^ クリストファー・ノーラン監督、大島渚監督「戦場のメリークリスマス」を6位に選出 : 映画ニュース - 映画.com
- ^ バットマン ビギンズの上映スケジュール・映画情報|映画の時間
- ^ バットマン ビギンズ : 作品情報 - 映画.com
- ^ 映画 バットマン ビギンズ (2005)について 映画 ... - allcinema
- ^ ダークナイトの上映スケジュール・映画情報|映画の時間
- ^ ダークナイト ライジングの上映スケジュール・映画情報|映画の時間
- ^ "T-Meter Rating of 'The Dark Knight Rises'". Rotten Tomatoes. Retrieved August 24, 2012.
- ^ “クリストファー・ノーラン×トム・ハーディ「ダンケルク」2017年に日本公開”. 映画ナタリー. (2016年8月24日) 2016年8月24日閲覧。
関連項目編集
関連文献編集
- トッド・マガウアン『クリストファー・ノーランの嘘/思想で読む映画論』(フィルムアート社、2017年)
- Telegraph.co.uk Interview with Christopher Nolan and Christian Bale
外部リンク編集
- クリストファー・ノーラン - allcinema
- クリストファー・ノーラン - KINENOTE
- Christopher Nolan - インターネット・ムービー・データベース(英語)
- NolanFans.com Premiere Fan Community