クリストファー・ノーラン

イギリス・アメリカの映画製作者

クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan, 1970年7月30日 - )は、イギリス系アメリカ人脚本家映画監督映画プロデューサー1970年生まれユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン卒業

クリストファー・ノーラン
Christopher Nolan
Christopher Nolan
2018年
生年月日 (1970-07-30) 1970年7月30日(53歳)
出生地 イングランドの旗 イングランドロンドン
国籍 イギリスの旗 イギリス
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
職業 脚本家
映画監督
映画プロデューサー
活動期間 1989年 -
配偶者 エマ・トーマス(1997年 - )
著名な家族 ジョナサン・ノーラン(弟)
主な作品
脚本・監督
メメント
インソムニア
ダークナイト トリロジー
プレステージ
インセプション
インターステラー
ダンケルク
TENET テネット
Oppenheimer
製作・製作総指揮
マン・オブ・スティール
トランセンデンス
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
ジャスティス・リーグ
 
受賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞
脚本賞
2001年メメント
放送映画批評家協会賞
オリジナル脚本賞
2001年『メメント』
アクション映画賞
2008年ダークナイト
2010年インセプション
SF/ホラー映画賞
2014年インターステラー
MTVムービー・アワード
新人監督賞
2002年『メメント』
AFI賞
脚本賞
2001年『メメント』
日本アカデミー賞
最優秀外国語作品賞
2008年『ダークナイト』
ブルーリボン賞
外国語作品賞
2008年『ダークナイト』
その他の賞
ロッテルダム国際映画祭
最優秀作品賞
1999年フォロウィング
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経歴 編集

ロンドンコピーライターの父と客室乗務員の母のもとに生まれる[1][2]。父親はイングランド人、母親はアメリカ人であるため、イギリスアメリカの国籍を持つ。幼少の頃はロンドンシカゴの両方で過ごした。その後ハートフォードシャーインデペンデント・スクールであるヘイリーベリー・アンド・インペリアル・サービス・カレッジを卒業後、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学に入学。英文学を学ぶ傍ら、短編映画の制作をはじめる。映画製作ではなく英文学を専攻した理由については「視野を広げるため」と語っている。大学を選んだ理由は映画製作施設の整っていることも挙げており、同大学の映画ソサエティの部長を務めた。

デビューとブレイク 編集

1998年、『フォロウィング』で長編映画の監督デビューを果たし、脚本、製作、撮影、編集を含む5役を担った。2001年には、弟のジョナサン・ノーランが書いた短編を基にした『メメント』を発表する。低予算ながらも時系列を逆行した斬新なストーリーが全米の口コミで話題を呼び、興行的には異例の成功を収める。また、批評家からも激賞され、弟と共にアカデミー脚本賞にもノミネートされた。

『ダークナイト トリロジー』での成功 編集

メメント』の成功により一気にハリウッドでも注目を浴びるようになると、2002年の『インソムニア』では監督として雇われ、成功を再び収める。更には『バットマン』シリーズの監督に抜擢され、2005年公開の『バットマン ビギンズ』では期待に反し平凡な興行成績に留まるも、2008年公開の続編『ダークナイト』は公開6日で『バットマン ビギンズ』の興行収入を超えて『バットマン』シリーズ最大のヒットとなり、最終的に全米興行収入歴代2位、世界興行収入歴代4位を記録した(全て公開時)。また、悪役「ジョーカー」を演じたヒース・レジャー第81回アカデミー賞助演男優賞を受賞するなど、批評家からも激賞され、その年のアカデミー作品賞にノミネートされなかったことが物議を醸す程となった(この議論を受け、翌年からアカデミー賞は作品賞の候補作品数を5作品から最大10作品にまで引き上げた)。この作品の成功によりノーランが監督した『バットマン』シリーズはアメリカでは『ダークナイト トリロジー』と呼ばれるようになった。2012年公開の完結作『ダークナイト ライジング』でも監督を務めた。

2010年代 編集

 
2013年

2010年代に入ると、製作費1億ドル超(所謂ビッグバジェット)のオリジナル作品を連発していくようになる。2010年には人間の夢を舞台にしたSFアクション映画インセプション』を発表。その斬新なストーリー設定に加え、レオナルド・ディカプリオ渡辺謙マリオン・コティヤールといった世界各国の豪華スターが出演したことでも話題を呼び、全世界興行収入は約8億ドルを記録。第83回アカデミー賞では作品賞を含む8部門にノミネートされると、撮影賞を含む技術部門で4冠を獲得し、批評的成功も再び収める。2014年のSF映画インターステラー』でも、全世界興行収入で約6億ドル強を記録し、批評家からも激賞される。2017年公開の『ダンケルク』では、自身としては初となる歴史物に挑戦し、第二次世界大戦におけるダンケルク大撤退を壮大なスケールで描き、全世界で約5億ドルの興行成績を叩き出した。また、第90回アカデミー賞では作品賞を含む8部門にノミネートされ、技術部門で3冠を受賞し、自身も初の監督賞ノミネートを果たした。

2020年代 編集

2019年1月25日には、次回作『TENET テネット』の公開日が2020年7月17日であるとワーナー・ブラザースが発表した。しかし新型コロナウィルス感染拡大の影響でアメリカ国内では映画館が閉鎖されている状況を受け、公開日は7月31日、8月12日と延期され、最終的には8月26日に欧州から段階的に世界で公開し、全米公開は9月2日となった(日本国内公開は当初の予定通り9月18日)。この影響で、『TENET テネット』の全米興収は約5700万ドルと大きく低迷、興行としては失敗に終わった(ただし2020年の全世界興行収入としては5位である[3])。

2021年9月、ノーランは次回作の製作と配給をこれまでのワーナーからユニバーサル・ピクチャーズに変えることが決まったと報じられた。これにより、ノーランは2002年公開の『インソムニア』から約20年間続いてきたワーナーとの関係が解消することになる[4]

2023年7月21日、ユニバーサルの配給で『オッペンハイマー (映画)』が公開。製作費1億ドルを投じた三時間の大作である。フィルムによる撮影と関連技術の洗練を図るノーランの意向[5]からコダック、IMAX、パナビジョンと現像所のフォトケムが連携し、撮影は65mmフィルムが全面的に使われ(デジタル撮影ゼロではない)、現像やデジタル処理で色彩を抜く工程を採らずIMAXカメラで白黒フィルムを使いたいというノーランの求めに応じ、コダックは特別な生産ラインを仕立て製品ラインナップに無いモノクロームネガ"Double-X/5222"の65mm版を提供した[6]

私生活 編集

1997年に大学の同級生であり映画プロデューサーのエマ・トーマスと結婚。4人の子供と共にロサンゼルス在住。また、左利きである。

作風 編集

フィルモグラフィ 編集

長編映画(監督作品) 編集

公開年 タイトル 配給会社 RTスコア IMDbスコア 興行収入
(全世界)
クレジット
1998 フォロウィング
Following
モメンタム・ピクチャーズ 76% 7.6 $48,482 監督/製作/脚本/撮影/編集
2000 メメント
Memento
ニューマーケット・フィルムズ 93% 8.6 $40,047,078 監督/脚本
2002 インソムニア
Insomnia
ワーナー・ブラザース 93% 7.2 $113,758,770 監督
2005 バットマン ビギンズ
Batman Begins
85% 8.3 $374,218,673 監督/脚本
2006 プレステージ
The Prestige
タッチストーン・ピクチャーズ
ワーナー・ブラザーズ
76% 8.5 $109,676,311 監督/製作/脚本
2008 ダークナイト
The Dark Knight
ワーナー・ブラザーズ 94% 9.0 $1,006,234,167 監督/製作/原案/脚本
2010 インセプション
Inception
87% 8.8 $836,848,102 監督/製作/原案/脚本
2012 ダークナイト ライジング
The Dark Knight Rises
87%[15] 8.8 $1,084,939,099 監督/製作/原案/脚本
2014 インターステラー
Interstellar
ワーナー・ブラザーズ
パラマウント映画
73% 8.6 $701,729,127 監督/製作/脚本
2017 ダンケルク
Dunkirk
ワーナー・ブラザーズ 92% 7.9 $527,268,280 監督[16]/製作/脚本
2020 TENET テネット
Tenet
70% 7.5 $365,304,105 監督/脚本/製作
2023 オッペンハイマー
Oppenheimer
ユニバーサル・ピクチャーズ 93% 8.6 $912,739,000 監督/脚本/製作

短編映画 編集

公開年 タイトル クレジット 備考
1989 Tarantella 監督・脚本・製作 未公開
1995 Larceny 監督・脚本・製作 未公開
1997 Doodlebug 監督・脚本・撮影・編集・美術 初監督作品
2015 Quay 監督 ドキュメンタリー

製作 編集

公開年 タイトル クレジット
2013 マン・オブ・スティール
Man of Steel
製作・原案
2014 トランセンデンス
Transcendence
製作総指揮
2016 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
Batman vs Superman: Dawn of Justice
製作総指揮
2017 ジャスティス・リーグ
Justice League
製作総指揮
2021 ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット
Zack Snyder's Justice League
製作総指揮


出演 編集

公開年 タイトル 役名
2012 サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ
Side by Side
本人役

参考文献 編集

  1. ^ Can't get him out of our heads” (英語). The Age (2002年9月8日). 2023年8月4日閲覧。
  2. ^ Ariel Leve at the Wayback Machine (archived 2010-03-14)
  3. ^ 2020 Worldwide Box Office” (英語). Box Office Mojo. 2021年11月12日閲覧。
  4. ^ 「映画館での上映」にこだわるC・ノーラン監督、新作では20年にわたるワーナーとの関係を解消”. MOVIE WALKER PRESS (2021年9月20日). 2021年9月21日閲覧。
  5. ^ 株式会社インプレス (2022年3月24日). “IMAX、次世代フィルムカメラの開発発表。2023年後半投入”. AV Watch. 2023年8月8日閲覧。
  6. ^ Cinematographer Hoyte van Hoytema NSC FSF ASC gets up-close &…” (英語). Kodak. 2023年8月8日閲覧。
  7. ^ 町山智浩『映画と本の意外な関係!』集英社、2017年1月。ISBN 978-4-7976-8005-8 
  8. ^ Lussier, Germain (2013年11月18日). “Christopher Nolan Installed An IMAX Camera On A Learjet For 'Interstellar'” (英語). /Film. 2023年8月4日閲覧。
  9. ^ J・J・エイブラムス監督、クリストファー・ノーラン監督らがフィルムを救う : 映画ニュース”. 映画.com. 2023年8月4日閲覧。
  10. ^ “大監督”クリストファー・ノーランの作家性ーー映像作家と劇作家、ふたつの側面から徹底考察”. Real Sound|リアルサウンド 映画部. 2019年1月13日閲覧。
  11. ^ Jolin, Dan (2010年7月). “Crime of the Century”. Empire: pp. 91 
  12. ^ クリストファー・ノーラン、ボンド映画監督への意欲に再言及 : 映画ニュース”. 映画.com. 2023年8月4日閲覧。
  13. ^ C・ノーラン監督、故ヒース・レジャーにバットマン役をオファーしていた : 映画ニュース”. 映画.com. 2023年8月4日閲覧。
  14. ^ クリストファー・ノーラン監督、大島渚監督「戦場のメリークリスマス」を6位に選出 : 映画ニュース”. 映画.com. 2023年8月4日閲覧。
  15. ^ The Dark Knight Rises” (英語). Rotten Tomatoes (2012年7月20日). 2023年8月4日閲覧。
  16. ^ “クリストファー・ノーラン×トム・ハーディ「ダンケルク」2017年に日本公開”. 映画ナタリー. (2016年8月24日). https://natalie.mu/eiga/news/199180 2016年8月24日閲覧。 

関連項目 編集

関連文献 編集

  • トッド・マガウアン『クリストファー・ノーランの嘘/思想で読む映画論』(井原慶一郎訳、フィルムアート社、2017年)、ISBN 978-4845916221
  • イアン・ネイサン『クリストファー・ノーラン 時間と映像の奇術師』(阿部清美訳、フィルムアート社、2023年)、ISBN 978-4845921423

外部リンク 編集