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ソウダガツオ(宗太鰹、騒多鰹)は、スズキ目サバ亜目サバ科サバ亜科マグロ族ソウダガツオ属 Auxis に属する海洋生条鰭類硬骨魚類)である[1][2]

ソウダガツオ属 Auxis
ヒラソウダ
マルソウダ
Fishbaseによる画像。上ヒラソウダ・下マルソウダ
分類
: 動物Animalia
: 脊索動物Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : サバ亜目 Scombroidei
: サバ科 Scombridae
亜科 : サバ亜科 Scombrinae
: マグロ族 Thunnini
: ソウダガツオ属 Auxis
Cuvier,1829
和名
ソウダガツオ(宗太鰹、騒多鰹)
2種(本文参照)

同属に分類されるマルソウダ[2]ヒラソウダ[1]の両種を指す混称でもあり[3]、両種はそれぞれマルソウダガツオヒラソウダガツオと呼ばれる場合がある[4][5][6]

太平洋など全世界の熱帯亜熱帯温帯域に広く分布する肉食魚で食用に漁獲される[1][2]

目次

分類編集

 
千葉県勝浦市勝浦朝市で売られていたソウダガツオ(ヒラソウダ)。2017年7月24日撮影。

ソウダガツオ属は2種のみが分類され、それぞれ2亜種に分けられる。

  • マルソウダ[2] A. rochei (Risso,1810) Bullet tuna
    • 亜種 A. rochei rochei (Risso,1810) - 全世界の熱帯・亜熱帯海域に分布
    • 亜種 A. rochei eudorax Collette et Aadland,1996 - 東太平洋に分布
  • ヒラソウダ[1] A. thazard (Lacepède, 1800) Frigate tuna
    • 亜種 A. thazard thazard (Lacepède, 1800) - 全世界の熱帯・亜熱帯海域に分布
    • 亜種 A. thazard brachydorax Collette et Aadland,1996 - 東太平洋に分布

特徴編集

マルソウダは最大全長50センチメートル(cm)前後[2]、ヒラソウダは最大60cm前後と[1]、ヒラソウダの方がやや大型になるが、両種とも通常の全長は最大40cmほどである[3]

両種とも背部は黒色に近い濃青色・腹部は銀白色だが後述のように有鱗域・鰓蓋上端の黒色斑・背部後半の模様の形状に違いがみられる[7]

名の通りカツオに近縁ではカツオと同様に目の後ろ・胸鰭周辺・側線沿いにしかないがカツオよりは小型で、体型も前後に細長く外見はサバにも似るほか、カツオと異なり捕獲した際などには腹側に縞模様が出ない。

類似する近縁種にスマがあるがスマとは異なり胸鰭下に斑点がないことから区別できる。なお、後述のようにヒラソウダを「スマ」(スマガツオ)の地方名で呼ぶ場合があるため注意を要する[1]

2種の区別点は以下のようなものがある。

  • 体の横断面(個体差あり)[8] - 和名の通りマルソウダは体高が低く輪切りにすると断面は円形に近い一方[2]、ヒラソウダはマルソウダより体高が高く、断面は楕円形である[1]。ただしマルソウダの中にもヒラソウダのように体高がある個体がいるため、これだけでは判別しきれない場合もある[8]
  • 背部の模様(個体差あり) - マルソウダは「やや角ばった荒いまだら模様」が並ぶが、ヒラソウダのようにやや流れるような形の場合もある[8]。ヒラソウダの場合は細めの模様が後方から前方斜め下に向けて流れるよう模様になっているが、模様が荒くマルソウダに似ている場合もある[8]
    • マルソウダは背面黒色部と鰓蓋上の斑点が互いに接するが、ヒラソウダは分離する[8]。ただしこの見分け方でも個体差があるため確実な判別方法ではない[8]
    • ちなみにスマの場合は胸鰭下方の腹部に小さな黒色斑点があるほか(大型個体では小さくなる)、背部の模様はヒラソウダと同様に斜めに流れるものの、大型個体では虫食い状の模様になる[9]
  • 鱗のある領域(有鱗域) - 最も確実な判別方法で、マルソウダは背部・体側中央部から体側後方に切れ込む有鱗域が第二背鰭より後ろまで達し[8]、徐々に細くなる形になっている[2][8]。一方でヒラソウダは第一・第二背鰭の間で急激に細くなり側線へ続く形で[1]、第二背鰭の手前で途切れる[8]
  • 背鰭の棘数 - マルソウダは10 - 11、ヒラソウダは11 - 12[7]
  • 鰓耙数 - マルソウダは44 - 47、ヒラソウダは38 - 42[7]
  • マルソウダは最大全長50cm程度に留まる一方[2]、ヒラソウダは全長60cmに達する個体もいる[1]
  • 両種とも沿岸性が高いがマルソウダはより沖合に多く[2]、ヒラソウダはマルソウダ以上に沿岸性が強い[1]

名称編集

名前の由来は「鰹に似たれば〈鰹だそうだ〉といいしを、倒置したる魚名(=カツオに似た魚)」(広辞林)・「常に群集して、水面にしぶきを立てながら小魚を捕食する。(集まって騒ぐ・騒々しい)ということで『ソウダガツオ』の呼称は(騒々しく騒ぐ鰹)の意味」とされる[10]。漢字では「宗太鰹」「騒多鰹」と表記するが[2][1]、主にマルソウダを原料に作られる節は後述のように「宗田節」と表記される[8]

また吻部が短く、目が口先に近づいていることから「メヂカ(目近)」の地方名で呼ばれることがある[3][11]

地方名編集

食用として流通する際は2種を区別しないことが多く[12]、地方名も2種共通の名前が多い[2]。本ガツオ(標準和名カツオ)の漁獲量が少ない日本海側では「カツオ」と言えばソウダガツオのことを指す[13]

その他の俗称としてはソウダガツオ[12]・メヂカ(メジカ、近畿地方[12]・フクライ(宮城県気仙沼で両種を混称)などがある[1][2]。 個別の地方名は以下の通り。

生態編集

20℃以上の水温帯で産卵する[3]。産卵期は春 - 初夏で、孵化後は1年で25cm前後・2年で33cm前後・3年で40cm前後に成長する[2]

沿岸 - 沖合の表層を大群回遊[1][2]、内湾部・汽水域にはほとんど入らず[16]、水温が高ければ冬に釣れる場合もあるが春はあまり釣れない[17]。また水深が極端に浅い海域には回遊してこないが、沿岸部でもある程度の水深があれば回遊してくる場合があるため、釣り船のみならず外洋に面し海流が直接当たるような磯・防波堤・砂浜などでも釣れる[18]

肉食性で幼魚期には小型の甲殻類を捕食し、成長するとイワシなどの小魚を捕食する一方でマグロカジキなどの大型肉食魚に捕食される[2]

両種とも日本近海では北海道 - 九州南部の太平洋沿岸および日本海東シナ海沿岸・屋久島南西諸島小笠原諸島近海に分布する[1][2]。特に両種とも房総半島以南の太平洋沿岸に多い一方、日本海・東シナ海では秋にマルソウダが多い反面ヒラソウダは少ない[7]。日本国外では朝鮮半島南岸・東岸、済州島周辺海域及び東太平洋を除く世界中の温帯・熱帯海域でも確認されている[7]

日本では秋 - 冬に南日本周辺海域に集まり、春 - 夏にかけて北上して北海道まで回遊する[3]。両種とも関東地方では海水温が上昇する初夏以降に入り乱れて沿岸へ回遊してくるが、マルソウダよりヒラソウダの方が少し低めの水温にも対応しているため、晩秋のころにマルソウダが日本近海から去ってもヒラソウダはしばらく釣れ続けることが多く、海水温が高めの年はヒラソウダが正月過ぎまで日本沿岸を回遊していることもある[8]

人間との関わり編集

漁獲編集

一本釣り巻き網定置網などで漁獲されるが[1][2]、特に定置網で年間30,000トン(t)程度の量が漁獲されている[3]

その中でも後述の「宗田節」の原料となるマルソウダは日本全国の水揚げ量のうち40%が高知県内で水揚げされているほか[19]、和歌山県南部では春 - 秋に巻き網漁・棒受け網漁・定置網漁でマルソウダ(体長16 - 34cm)が大量に、ヒラソウダ(体長28 - 38cm)も散発的に漁獲される[7]。和歌山県日高郡みなべ町・みなべ漁港におけるマルソウダの年間観察個体数は2003年が49,528尾・2006年が22,342尾だった[7]

ソウダガツオの稚魚は沿岸 - 沖合まで高密度に出現することから莫大な資源量が予測され、未利用資源としても注目されている[3]

釣り編集

釣り(遊漁)ではアジサバマダイ狙いのサビキ天秤仕掛けのエサ釣りなどで外道として釣れるほか[1][2]、磯からのカゴ釣り・相模湾にて夏 - 秋に疑似餌を使ったカッタクリ釣りをしても数多く釣れる[1]。陸からの釣りでは外洋に面した磯・堤防で夏 - 秋に釣れることが多いが[17]、砂浜でも波口から水深が深く潮流が速い場所ならばソウダガツオの回遊が期待できる上、そのような急激に深くなる砂浜は海水浴場などには適さず遊泳禁止となっているため海水浴シーズンの夏でも気兼ねなく釣りを楽しむことができる[18]

  • 磯 - 入り江の奥にはあまり回遊せず、岬の突端のような地形になった場所・水深が深く沖からの潮流が当たる場所・潮同士がぶつかり潮目となっている場所などが好ポイントである[18]
  • 堤防 - 防波堤の先端・コーナー付近の潮通しが良い場所が好ポイントである[16]。水深さえ深ければ大規模な港ならば港内まで魚群が回遊してくる場合があるが、小規模な港の場合は堤防外側の潮が入る場所が好ポイントで、特に暖海に浮かぶ離島の防波堤は理想的なポイントである[18]

カゴ釣り(カゴサビキ釣り)・ルアー釣りなどで釣れる[16]。カゴサビキ釣りでは以下のようなタックル(一例)で釣る[20]

  • 釣り竿(ロッド) - 遠投用磯竿(3号ないし4号・長さ530cm)[20]
  • リール - 大型スピニングリール[20]
  • 道糸 - ナイロン糸(6号 - 8号)を150m以上リールに巻く[20]。もしくはPE糸3号[20]。その他よりもどし(サルカン)・シモリ玉などを使用する[20]
  • 浮き - 中通し発泡ウキ[20]
  • 餌を入れるカゴ - ゴムクッション付きアミ用コマセ籠[20]。遠投カゴ・ロケットカゴ・反転カゴなどの種類がある[20]
  • 仕掛け・錘 - サビキ仕掛け(全長約1.5m)・ナス型錘(6号 - 10号)[20]
  • まき餌 - オキアミアミなど[20]。オキアミを付け餌として釣り針に刺す場合もある[20]

防波堤・磯から釣れるサイズは30cm - 45cmほどのものが多い[17]。海面近くを疾走するように高速で泳いで餌が落ちないうちに食いついてくる習性があり[2]、引きの強さに加えて初心者でも時合に当たれば数多く釣れることから釣り魚として人気が高い[16]。ただしマアジなど小型回遊魚に比べて魚体が大きく引きも強いため、追い食いを待って一度に複数釣ろうとしたり、糸を出したりして魚を水中で走らせたりはせず、1尾ずつ強引に引き寄せて釣り上げることが望ましい[18]

基本的には表層を回遊するが棚が深い場合もあるため、表層向けのブリッジ仕掛けなどだけでなく深めの水深に対応した錘付きのサビキ仕掛けなどを用意することも望ましい[18]

マルソウダ・ヒラソウダ両種とも(特にマルソウダ)後述のように鮮度が落ちやすくヒスタミンによる食中毒を起こすリスクがあるため、釣ったソウダガツオを持ち帰る際には氷入りのクーラーボックスが必要となるが[17]、両種とも釣った直後に適切な処理をすれば高い鮮度を保持したまま自宅に持ち帰って賞味することができる[21]。両種を含むサバ科の魚に限らずいわゆる青魚と呼ばれる回遊魚は全般的に「釣り上げてから速やかに適切な処理をして早めに調理する」ことが望ましい[22][23]

  1. 釣り上げて釣り針を外した直後に頭部・胴体を掴んで背中側に曲げることで頸椎を折り絶命させ、返り血を浴びないよう注意しながらすぐ海水を組んだバケツに入れる[24]
    • このソウダガツオ・サバなど回遊魚類特有の活け締め方法を釣り人の間では「サバ折り」と呼ぶ[24]。ソウダガツオの血液中には魚の死後にヒスタミン(食中毒の原因となる)へ変性するヒスチジンが多く含まれているが[8]、生きたまま魚の首を折ることで脊髄を断裂させるとともに魚の体内に流れている血液が勢い良く抜け[22]、一気に血抜き処理を行うことができる[24]
  2. その後、できればアニサキスなどの寄生虫がいる可能性が高い内臓も除去する[22]
  3. 活け締め・内臓などの除去ができたら手早く大量の氷と海水[注釈 1]を張ったクーラーボックスに投入して冷却・保管する[22]

食材利用編集

宗田節編集

日本では鰹節と同様の方法で「宗田節」(そうだぶし)に加工して流通し、関東風のそばつゆなど濃い口の日本料理に利用されることが多い[8][12]

両種とも(特にマルソウダ)イノシン酸などうまみ成分が多く濃厚なだしが取れる[8]。主にマルソウダが利用される一方でヒラソウダは「まとまって漁獲されないこと」「脂肪分が多いこと」から宗田節への加工原料には向かない[13]

ソウダガツオの一大産地であり「市の魚」に指定されている高知県土佐清水市[6]、市内にある足摺岬の沖合がソウダガツオの産卵場になっており[6]、日本産の宗田節の7割以上(年間水揚げ高6,000 - 7,000t)が[6]同市で生産されている[25][26][27][28]

鮮魚編集

そうだがつお(生)[29][30]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 569 kJ (136 kcal)
0.3 g
2.8 g
飽和脂肪酸 0.74 g
一価不飽和 0.48 g
多価不飽和 0.83 g
25.7 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(1%)
9 μg
チアミン (B1)
(15%)
0.17 mg
リボフラビン (B2)
(24%)
0.29 mg
ナイアシン (B3)
(108%)
16.2 mg
パントテン酸 (B5)
(24%)
1.2 mg
ビタミンB6
(42%)
0.54 mg
葉酸 (B9)
(4%)
14 μg
ビタミンB12
(517%)
12.4 μg
ビタミンD
(147%)
22 μg
ビタミンE
(8%)
1.2 mg
ミネラル
ナトリウム
(5%)
81 mg
カリウム
(7%)
350 mg
カルシウム
(2%)
23 mg
マグネシウム
(9%)
33 mg
リン
(33%)
230 mg
鉄分
(20%)
2.6 mg
亜鉛
(13%)
1.2 mg
(8%)
0.15 mg
マンガン
(1%)
0.02 mg
他の成分
水分 69.9 g
コレステロール 75 mg
灰分 1.3 g
食塩相当量 0.2 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

両種とも秋 - 冬が旬とされるが[1][2]、血液中のヒスチジンが多いことから鮮度低下が早く[1][2][8][12][17][30]、ヒスチジンから変性して発生したヒスタミンが一定量を超えたものを食べると蕁麻疹・嘔吐などアレルギー反応を含めた食中毒を起こす可能性がある[22]

両種とも鮮度が低下するとヒスタミン中毒のリスクがあるが[30]、ヒラソウダ以上に血合い肉の部分が多いマルソウダでそのリスクが高いため「マルソウダの生食は推奨されない(加熱調理推奨)」と記載された文献が複数存在する[8][17][30]。一度発生したヒスタミンは加熱しても分解されないため「鮮度が落ちたものは食さないこと」「ヒスタミンが生成されていない新鮮なうちに食べること」、特にマルソウダは「生食を避けるか血合いを除去すること」が望ましい。

節の原料になるほど豊富なうまみが含まれていることから、マルソウダ・ヒラソウダとも煮付けあら汁にすると美味である[13]

マルソウダ編集

高知工科大学の研究によればマルソウダは同じくサバ科の海水魚で傷みが早いとされるゴマサバと同じ冷蔵保存条件で比較したところ「いずれも約2倍の速さで鮮度低下が進む傾向にある」ことが判明した[19][31]

  • 実験内容は「三津大敷組合(高知県室戸市)が大型定置網にて漁獲したマルソウダ・ゴマサバを漁獲直後に漁船内の冷海水で野絞めした上で水揚げ後に3種類の冷媒(海水氷・塩分濃度1.0wt.%のスラリーアイス・塩分濃度3.5wt.%のスラリーアイス)とともに内容積50リットル(L)のクーラーボックスに入れて設定温度4℃の冷蔵庫に保管」し、24時間おきに最大72時間まで3匹ずつサンプリングを行ったものである[19]
  • サンプリングに当たりそれぞれの魚の鮮度指標「K値」(20%以下で生食可能、20%超50%以下の範囲で加熱推奨、60%以上になると腐敗=食用不適とされる)・食中毒の原因となるヒスタミン含有量などを調べた[19]。結果、以下のいずれの方法においてもヒスタミンは検出されなかったが、冷媒の種類によって以下のように異なる実験結果が出た[19]。なおゴマサバの場合は以下いずれの3条件においても「K値」は72時間後も20%に達せず生食可能な鮮度が維持された[19]
    1. このうち市場で最も用いられている海水氷による保存の場合、漁獲から約36時間で「K値」が20%に達し生食不適(加熱調理推奨)となる[19]
    2. 塩分濃度1.0wt.%のスラリーアイスに保存した場合、48時間以内ならば「K値」は20%に達せず生食可能な鮮度が維持されるが、約65時間で「K値」が20%を上回るため、それ以降は加熱調理が推奨される[19]
    3. 塩分濃度3.0wt.%のスラリーアイスに保存した場合、72時間後でも「K値」は20%に達せず生食可能な鮮度が維持された[19]。なおこの鮮度変化は海水氷に保存したゴマサバとほぼ同レベルだった[19]

このようにマルソウダは特に傷みが早く、死後に時間が経過するとヒスチジンから多量のヒスタミンが生成されることでヒスタミン中毒を起こしやすくなるため「生食は推奨されない」とされる[8][12]。産地周辺以外で鮮魚として流通することは非常に少なく、関東地方の卸売市場などでは「ほとんど見かけず、来ても非常に安い」魚で[2]、宗田節の原料とされることが多いが、節取りして蒸したものをフレークにしてサラダ・かき揚げそぼろなどに加工すると美味である[8]

一方で高知県須崎市高岡郡中土佐町では[32][33]、水揚げしたてのマルソウダの幼魚を「メジカの新子」と呼んで珍重し、8月から9月下旬の約1か月間という短い期間のみ[34]、刺身で食べる食文化がある[13][35][36]

マルソウダの多くを水揚げしている須崎漁港(須崎市)・釣り漁法にて水揚げしている久礼漁港・上ノ加江漁港(いずれも中土佐町)周辺の地域においては[19]、マルソウダの刺身は「すぐに当たる(食中毒になる)魚」と認識されてはいるものの「漁獲した当日中のみ刺身で食べられる」という制約の下で「時にはカツオの刺身以上の高級食材」として流通している[19][37]。「メジカの新子」は中土佐町の久礼大正町市場などで季節の風味として親しまれてきたほか、最近では大産地として知られる同県土佐清水市でも提供が始まっている[36]。また鹿児島県南さつま市笠沙(旧・鹿児島県川辺郡笠沙町)でも幼魚を刺身で食べる食文化がある[2]

ヒラソウダ編集
 
高知県室戸市室戸岬沖産ヒラソウダの刺身。本種の刺身は本文中で述べた通り「絶品」と評する声もある。左に大葉・刻みミョウガをそれぞれ薬味として添えている。2018年5月10日撮影。

ヒラソウダはマルソウダに比べて血合いが少なく脂肪分が多い[8]。旧築地市場豊洲市場など関東地方の卸売市場には秋 - 初冬にまとまって入荷し安価に流通するが[1]、正確な統計こそないものの「漁獲量はマルソウダより少ない」とされ[30]、また宗田節への加工原料には向かないため「非常にマイナーな魚」で[13]、鮮魚として産地周辺などで消費されることが多い[1]

本種も鮮度落ちが速いため流通は多くが産地周辺に限られ[1]、産地ではマルソウダ以上に評価が高く刺身用として人気の魚ではあるが大消費地では滅多に見かけない[38]

しかし本種は前述のように鮮度保持にさえ気を付ければ[12]「とても美味な魚」で[1][8]、新鮮なものは刺身[1][8]タタキ(土佐造り)[1][8][15]なめろう[1][13]ヅケなど生食で賞味できる[1]。生食以外にも煮付け竜田揚げ塩焼きみりん干しなどでも賞味できる[1]

本種は秋 - 冬が旬であるが、中でも皮の下に白い脂肪の層があるものは脂が乗って非常に美味で[1][13]、旬の時期には水温低下に伴い皮下脂肪を増やす[15]

  • 『隔週刊つり情報』(辰巳出版)ライター・石川皓章は著書『海の魚大図鑑』(2010年・日東書院本社)にて本種を「肉質はマルソウダよりはるかに上等で1kg前後まで育つとかなり美味。特に1.5kg前後まで大型化した個体は同サイズのカツオ(本ガツオ)より美味い」と高く評価している[8]
  • また、ぼうずコンニャク株式会社代表取締役・藤原昌高は本種の刺身を「『赤身魚の最高峰』[13]『サバ・カツオ類ではもっとも旨い』と評する声もある」と非常に高く評価している[1]

このように美味なヒラソウダではあるが混獲されるカツオより鮮度が落ちやすく[13][6]、カツオより安いためカツオの漁場である三重県伊勢志摩地方では漁師がカツオ漁の折に獲れたヒラソウダを船上でぶつ切りにして醤油漬け、あらかじめ用意した酢飯と混ぜて即席のまかない料理として食べた[8]。同地方の郷土料理であるちらし寿司の一種「手こね寿司」はこの漁師料理が起源とされる[8]

高鮮度なソマ(ヒラソウダ)が定置網などで多く水揚げされる三重県尾鷲市では刺身・たたきとしての需要が高く、特にカツオがない時に重宝される上、さらなる高鮮度化を目指して船上活け締め(活〆)も行われている[15]

郷土料理編集

 
静岡県伊東市郷土料理「うずわめし」。うずわのたたき・青唐辛子のみじん切りを和え、丼の白飯に盛り付けたもの。同市内の海鮮居酒屋・海鮮料理店「伊豆鮮魚商 まるたか」にて2018年3月25日撮影。

ソウダガツオを「ウズワ」という地方名で呼ぶ静岡県伊東市では[39]、細かく刻んだ「ウズワ」のたたきと同じく細かく刻んだ青唐辛子を和え、丼に盛り付けた白飯とともに食べる漁師直伝の料理「うずわ定食[39](うずわめし)がある[40][41]。伊東市内の「究極のローカルフード」と称される「うずわ定食」は[40][41]以下のように3度の異なる味わいが楽しめる[39]

  1. まずはたたきをそのまま賞味する[39]
  2. 刻んだ青唐辛子と混ぜ、丼の白飯に盛り付けて食べる[39]
  3. 最後に宗田節から取っただし汁をかけ、茶漬けとして食べる[39]

2016年7月26日にテレビ東京系列で放送された「なないろ日和!」では、タレント・藤原倫己と温泉ソムリエ・大藤浩一が同市の海鮮食堂・居酒屋「伊豆鮮魚商 まるたか」(静岡県伊東市湯川一丁目16番地6号、地図JR伊東線伊豆急行伊豆急行線伊東駅より徒歩1分)を訪れて「うずわ定食」を賞味した[39]。なお同店における「うずわ定食」は鮮度が重要な料理であるため注文が入ってから調理される[42]

またカツオ漁が盛んだった三重県度会郡南伊勢町では[43]ヒラソウダ(地方名ソマカツオ)が10月 - 12月の約3か月間にわたり水揚げされるが[44]、そのソマカツオを3か月以上にわたり塩漬けにした保存食「ソマカツオの塩切り」が伝統的に生産されている[43]。伝統的な生産方法では約2か月間にわたり漬け込むが、民宿「とよや勘兵衛」から商品化された「ソマカツオの塩切り」はよりまろやかな風味を実現するためさらに長期間漬け込んで熟成させている[43]。近年ではほとんど生産されていなかった「ソマカツオの塩切り」だが2012年(平成24年)夏に同町の民宿「とよや勘兵衛」の主人親子が偶然作りすぎて余っていたものを試食してみたところ「意外に美味しかった」ことから商品化され、同年度の「みえのお宝食材大賞」を受賞したほか、雑誌『BRUTUS』2014年3月1日号にて紹介されたことをきっかけに各メディアで報道され、注文が殺到する人気商品となった[45]

また尾鷲市など三重県東紀州地方ではソウダガツオ・サバ・カツオ・マグロなど青魚を肉の代わりに用いたすき焼き魚すき)の一種「魚のじふ」(別名「へか」)という郷土料理が食べられている[46]

非食材利用編集

食用以外にはフィッシュミール(魚粉[3]クエ釣りの付け餌[47]・マグロなどの餌などに使用される[48]

脚注編集

注釈編集

  1. ^ 容量20リットル以内のクーラーボックスの場合は「2キログラム(kg)のアイスブロック1個:クーラーボックス容量の4分の1 - 3分の1ほどの海水」を注ぐのが目安である[23]。この時に砕いた氷を入れるとより保冷能力が高くなるが、氷が溶けるにしたがって海水の塩分濃度が薄まり魚の体内の塩分濃度より低くなると浸透圧で魚体に水分がしみ込んでしまうため、塩分濃度調節として食塩を適宜加えるのが望ましい[23]

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af 魚類>ヒラソウダ” (日本語). 市場魚貝類図鑑. ぼうずコンニャク. 2018年1月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 魚類>マルソウダ|” (日本語). 市場魚貝類図鑑. ぼうずコンニャク. 2018年1月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h ソウダガツオ” (日本語). コトバンク. 日本大百科全書. 2018年1月17日閲覧。
  4. ^ 朝日新聞』2004年9月2日朝刊静岡県第二面30面8月29日「マダイ釣りシーズン入り 稲取港沖(釣りだより) /静岡」…片瀬海岸(静岡県沼津市)の釣果情報
  5. ^ 『朝日新聞』2004年9月9日朝刊静岡県第二面28面「脂のった本ガツオが好調 網代沖(釣りだより) /静岡」…静浦港、片浜海岸ほか(静岡県沼津市)の釣果情報
  6. ^ a b c d e 『朝日新聞』2009年10月21日朝刊宮城全県・第二地方面26面「(話のさかな)ソウダガツオ 味に深み出す名脇役 /宮城県」
  7. ^ a b c d e f g 池田 & 中坊 2015, p. 508
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 石川 & 瀬能 2010, pp. 252-253
  9. ^ 石川 & 瀬能 2010, p. 250
  10. ^ 榮川省造『新釈 魚名考』青銅企画出版、1982年9月25日。
  11. ^ おでかけナビ:カツオ節より「宗田節」、麺類のダシに濃厚な味わい 高知の隠れた名産(1/2ページ)」『『日本経済新聞日本経済新聞社、2015年5月27日、夕刊。2017年7月22日閲覧。, オリジナルの2017年7月22日時点によるアーカイブ。
  12. ^ a b c d e f g h 豊田, 西山 & 本間 2016, pp. 176-177
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参考文献編集

関連項目編集