ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣

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ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』(ゲゾラ ガニメ カメーバ けっせん! なんかいのだいかいじゅう)[注釈 2]1970年8月1日に夏休み東宝チャンピオンまつりの1本として公開された東宝製作の特撮映画作品。カラー、シネマスコープ。上映時間は84分。

ゲゾラ・ガニメ・カメーバ
決戦! 南海の大怪獣
Space Amoeba
監督 本多猪四郎
脚本 小川英
製作 田中友幸
田中文雄
出演者 久保明
高橋厚子
小林夕岐子
佐原健二
土屋嘉男
音楽 伊福部昭
撮影 完倉泰一(本編)
真野田陽一(特撮)
富岡素敬(特撮)[注釈 1]
編集 永見正久(本編)
佐原文吾(特撮)[注釈 1]
製作会社 東宝[1][注釈 1]
配給 東宝[1][注釈 1]
公開 日本の旗 1970年8月1日
上映時間 84分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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概要編集

特技監督円谷英二が死去してから公開された初めての東宝の特撮作品で、特撮パートは円谷の愛弟子だった有川貞昌がメガホンを取った。検討用台本の作成時点で病気療養中であった円谷は参加意欲を見せていたため、台本には特技監修の肩書きで記載されており、ポスターなどもこれに準じたものが作られている[2]。クランクイン直後の1970年1月25日には円谷が死去し[2]、告別式には撮影を中断して参加したスタッフが、おやじ(円谷英二)への恩返しと円谷特撮技術の総決算を誓った。すべて新怪獣3頭という東宝怪獣映画史上唯一の趣向(それ以前には『ゴジラの息子』がゴジラ+新怪獣3頭)で挑んだ意欲作であり、脚本もこの路線初参入の小川英が迎えられた。

原案は1966年にアメリカとの合作用に書かれた検討用脚本の1つ『怪獣大襲撃』であり、1969年に発表された製作ラインナップにもこのタイトルで記載されている[2]。原案となった検討用脚本では、宇宙からやってきた巨大生物群によって世界規模の天変地異が起こり、人類存亡の危機が迫る中で科学者らが怪獣の弱点を探るというスケールの大きなものとなっていた[3]。ここから1969年時点の製作費に合わせた改稿に時間がかかり、最終的な台本となる『決戦! 南海の大怪獣』第3稿が完成したのは1970年1月となった。同月に本編、翌2月に特撮がそれぞれ撮影が開始されたが、春休みの公開が危ぶまれたために夏にスライドされた[注釈 3][4]

当初、ヒロイン役には高橋紀子が予定されていたが、結婚して出演できなくなったため、高橋厚子に交代した[要出典]。高橋厚子は、本作への出演直後にTBSのテレビドラマ『アテンションプリーズ』のレギュラーに抜擢されるが、教官役の佐原健二とは先に本作で共演していたことになる。

「ゲゾラ」、「ガニメ」、「カメーバ」のネーミングは、本編チーフ助監督の谷精次によるもの[5]。劇中では、セルジオ島の島民が付けた名前という設定になっている。

あらすじ編集

木星調査に旅立った無人ロケット・ヘリオス7号が宇宙空間でアメーバ状の宇宙生物に寄生され、消息不明となった。

数か月後、カメラマンの工藤太郎は太平洋に落下するヘリオス7号を目撃し、その謎を調査するために落下地点付近の孤島セルジオ島の宣伝写真撮影依頼を受注した。セルジオ島では「アジア開拓」による観光開発計画が進められていたが、同社の社員・佐倉と横山は釣りをしている最中に巨大な怪獣の襲撃を受け、佐倉が捕食されてしまう。怪獣の正体は宇宙生物に寄生されて巨大化したイカだったが、島の祈祷師オンボはそれを島に伝わる伝説の怪物ゲゾラと同一視する。

数日後、工藤とアジア開拓の宣伝部員・アヤ子、生態観察顧問の宮、風俗研究家を名乗る産業スパイ・小畑が島に到着するが、島民たちはゲゾラを怒らせた日本人を「悪魔の使い」として迫害する。工藤たちは横山に事情を聞こうとするが、恐怖で錯乱した横山は島からの脱出を図ってゲゾラに捕食され、彼を止めようとした案内人のリコもショックで記憶喪失に陥ってしまう。海底に沈んだヘリオス7号を調査していた工藤らもゲゾラの襲撃を受けるが、付近にイルカの群れが接近するとゲゾラは逃げ去っていった。その直後、上陸したゲゾラは島民たちの集落を襲撃するが、焚き火に怯んだことから高熱に弱いことが発覚。工藤は島民たちと力を合わせてガソリンを利用した罠を仕掛け、ゲゾラを倒す。

一同は島に遺棄されていた旧日本軍の銃火器を利用してゲゾラの再来に備えるが、今度は銃弾すら通用しない巨大カニの怪獣ガニメの襲撃を受ける。壮絶な死闘の末、弾薬庫の爆発に巻き込むことで銃火器を失う代わりにガニメを倒した一同は、リコの記憶が回復したことがきっかけで、怪獣たちがコウモリやイルカの放つ超音波を恐れることを知り、コウモリの生息する洞窟に隠れて怪獣をやり過ごすことになる。しかし、宇宙生物に寄生された小畑が洞窟内にガソリンと火を放ち、コウモリを焼き殺そうと目論んだうえ、2体目のガニメと巨大なカメの怪獣カメーバが現れたことで、一同は絶体絶命の危機に追い詰められる。

しかし、アヤ子の必死の説得に心を動かされた小畑は宇宙生物に反抗し、コウモリを空へ解き放つ。コウモリの超音波によって二大怪獣は錯乱して同士討ちを始め、火山の噴火口へ落下する。そして、小畑もまた自らの体内に寄生する宇宙生物を抹殺すべく、火口へ身を投じる。かくして、地球の平和は保たれたのだった。

登場怪獣編集

宇宙生物編集

無人宇宙船ヘリオス7号に付着して地球に飛来した不定形の液状知性体。高度な進化の末に肉体を失った種族とされ、宇宙アメーバとも呼ばれる。他の生物に取りついて巨大怪獣化させる能力を持つほか、高い知性を有しており、人間に取りつくことでその肉体を支配し、それを介して会話することも可能である。長い放浪の末に地球にたどり着き、その侵略を企むようになる。

コウモリイルカが発する超音波が弱点であり、これを受けると精神が破壊されて混乱を来してしまう(ガニメとカメーバはこれで同士討ちに陥る)。そのため、取り付いた小畑を使って島中のコウモリを焼き殺そうとするが、アヤ子の説得で正気を取り戻した小畑の抵抗に遭って失敗する。最後は取り付いていたガニメとカメーバが交戦の果てに島の火山へ落下し、小畑に取り付いていた個体も彼が自ら火口へ投身することによって全滅する。

不定形のアメーバ形態のため、アニメーション作画合成で表現された。

大いか怪獣 ゲゾラ編集

諸元
ゲゾラ
体長 30m
体重 2万5千t

宇宙生物がカミナリイカ(モンゴウイカ)に取りついて変異した怪獣。名前だけはセルジオ島民に海の怪物として伝承されており、それが名前の由来となっている。0度の体温で周囲の海水温を下げたり、触れた物を凍らせるが、超音波だけでなく高熱にも極端に弱い。工藤たちが島に乗り込んでから幾度も人間に襲いかかるが、島民たちの村を襲撃した際に松明を嫌ったことから熱に弱いことが発覚する。最後は進路上に撒かれたガソリンによる火柱が点火して致命傷を負い、海に逃げ込んだところで死亡する。

スチル写真やオープニング画面などではガニメやカメーバと戦っているが、劇中では交戦していない。

造形は利光貞三と八木康栄による[6]スーツアクター中島春雄[1]。甲の部分と脚の部分が分割できるようになっており、脚だけが映るシーンは上部分を被らずに演じている。実物大の触手も制作され、ピアノ線による操演で効果的に使われた[2]。『帰ってきたウルトラマン』に登場したタッコングの身体にある吸盤は、ゲゾラの実物大の触手の型を流用している[7]

「ゲゾラ」のネーミングは、谷精次によると「ゲソ」から[要出典]

その他の作品に登場するゲゾラ編集

ファミリーコンピュータ用ゲーム『ゴジラ』ではX星人の操る怪獣軍団の1匹という設定で登場し、1面から最終面にかけてボスキャラクターとして出現する。ゴジラ以上の巨体を持つうえ、常に触手で飛び跳ねながら行動する。攻撃手段は触腕による打撃のみ。時折、プレイヤーが操る怪獣を画面端に追い詰めて封殺してくるが、ダメージは無い。

ゴジラ FINAL WARS』(2004年)ではライブフィルムで登場する。

小説『GODZILLA 怪獣黙示録』では、2010年代後半から地中海を縄張りとするようになり、難民の移動を妨げるようになったことが語られている[8]。2039年から行われた「オペレーション・エターナルライト」でその脅威は排除されたとされる[9]

大蟹怪獣 ガニメ編集

諸元
ガニメ
体長 20m
体重 1万2千t

ゲゾラから分離した宇宙生物がカルイシガニに取りついて誕生した怪獣。ゲゾラと違って全身を固い甲殻で覆われており、銃火器類の攻撃が一切通用しない。工藤とアヤ子を執拗に追撃した末に誤って崖から転落して動けなくなり、工藤の機転で付近の旧日本軍の弾薬庫の爆破に巻き込まれて爆発するが、宇宙生物が別のカルイシガニに取りついて2体目が登場したうえ、小畑に取り付いた群体の指示で工藤らを襲おうと再度上陸したところを小畑が開放したコウモリの超音波を浴びて凶暴化し、仲間であるはずのカメーバと同士討ちとなる。

特殊技術の有川貞昌は、このガニメの口の部分の気持ち悪さや泡のギミックに特にこだわったとコメントしている。「ガニメ」のネーミングは、谷精次によると「ガニ(食用にならないカニ)」+「ニャロメ」から[要出典]

造形は安丸信行と八木康栄による[6]。スーツアクターはゲゾラ同様、中島春雄[1]。口から泡を吹く仕掛けが組み込まれ、左右の顎と眼球がリモコンで動く。全身の毛は麻を使用した。実物大のハサミも制作され、効果的に使われた。

その他の作品に登場するガニメ編集

ゲーム『ゴジラトレーディングバトル』ではゴジラと共演し、本作の怪獣で唯一オープニングにも出演している。

小説『GODZILLA 怪獣黙示録』では、生息地のベーリング海でカニ漁を行うアメリカ漁船を襲撃していることが語られている[10]。また、2047年12月に北米ヘドラ研究所を襲撃した、「赤い外骨格と鋼鉄製の扉を溶解する能力を持つ甲殻類のような群体生物」がベーリング海から南下したガニメの亜種と考えられているが、人類が喪失した大陸での調査は行えず詳細は不明のままである[11]

大亀怪獣 カメーバ編集

登場メカニック編集

ヘリオス7号
国連宇宙局が打ち上げた木星探査を目的としたロケット。無人のカプセルを搭載しており、資料を採取して約3年後に地球へ帰還する予定であった。しかし、打ち上げから約4か月後に消息を絶ったカプセルは謎の宇宙生物に制御系を乗っ取られ、そのまま地球に帰還してセルジオ島近海へ落下し、3種類の怪獣を出現させる要因となる。
冒頭の打ち上げシーンで用いられたミニチュアはパースモデルで、発射台は斜めに組み立てられている。ロケットやカプセル部分のデザインは、アポロ計画で用いられたアポロ司令・機械船の影響がみられる[注釈 4]
カプセル部分のミニチュアは、特撮テレビ番組『流星人間ゾーン』で城模型店の商品棚に陳列されている。

登場人物編集

工藤 太郎
本作の主人公。好奇心旺盛で血気盛んなフリーカメラマン。取材旅行の帰途、セルジオ島の上空でヘリオス7号の墜落を目撃し、真相究明と怪物伝説の謎を追うべく、セルジオ島開発調査に宣伝カメラマンとして同行する。
星野 アヤ子
本作のヒロイン。セルジオ島の観光開発を進めるアジア開拓の宣伝部員。現地調査に赴き、怪獣たちの壮絶な死闘に遭遇する。
サキ
セルジオ島の現地住民女性。日本人に対しては好意的。
宮 恭一
アジア開拓のセルジオ島生態観察顧問。生物学の権威であり、工藤とは取材を通じて親交がある。自らの礎を築いた現代科学の限界に絶望感をおぼえつつ、怪獣たちの撃退方法を模索する。
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』では名前のみ登場。
小畑 誠
風俗研究家を名乗って工藤たちに接近するが、その正体はアジア開拓のライバル企業に雇われた産業スパイ。怪物伝説を迷信と一蹴し、事件を島民による自作自演だと吹聴したり、抜け駆けで島からの逃走を目論むなど、性格は軽薄で利己主義的。しかし、そんな男の心の片隅に残っていた一握りの誇りと良心が、最後に人類の危機を救うこととなる。
脚本の初稿では宇宙生物が抜け出して元に戻る結末であったが、監督の本多猪四郎は制作過程でこれを変更し、自ら死を選ぶことで宇宙生物を死滅させるものとした[12]
リコ
サキの恋人。島の案内役として開発調査員たちと行動を共にするが、開発事務所で横山と共にゲゾラの襲撃を受ける。一命は取り留めたもののショックで記憶を失ってしまう。
オンボ
セルジオ島の祈祷師。当初は工藤たち一行を「悪魔の使い」と呼んで拒絶していた。
横山
アジア開拓のセルジオ島駐在員。ゲゾラに佐倉を殺害されて以来神経質になっており、恐怖のあまり島からの逃走を図ろうとしたところをゲゾラに襲撃され、死亡する。
佐倉
横山の相棒。禁漁区で魚釣りの最中、ゲゾラによって海中へ引きずり込まれる。

スタッフ編集

スタッフ(ノンクレジット)編集

キャスト編集

キャスト(ノンクレジット)編集

備考編集

  • セルジオ島の野外シーンは2月3日から同月27日まで八丈島でロケーションが行われた。撮影が行われた期間の八丈島は雪が降るほどの寒さで、土屋嘉男や監督の本多猪四郎と一緒にコート姿の高橋厚子を写したスナップが残っている[5]
  • 劇中のセルジオ島民の祈祷歌は、『キングコング対ゴジラ』での、ファロ島民の祈祷歌をアレンジしたものが使われている。
  • テレビアニメ『ケロロ軍曹』第57話Bパート「巨大カエル対南海の大怪獣であります」は本作のパロディとなっており、「イカラ」「カニメ」「ガメーバ」という怪獣が登場する。

同時上映編集

映像ソフト編集

  • 2005年6月24日にDVDが、発売され、オーディオコメンタリーは製作の田中文雄が務めた。
  • 2014年2月7日、期間限定プライス版として再発売された。
  • 2015年8月19日、東宝DVD名作セレクションとして再発売された。

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ a b c d ノンクレジット
  2. ^ 完成した映像では約物がない『ゲゾラ ガニメ カメーバ 決戦 南海の大怪獣』となっている。
  3. ^ 春期プログラムには本作の代わりに『キングコング対ゴジラ』の再編集版が組み込まれた。
  4. ^ 本作公開の前年にアポロ11号が有人月面着陸を行っている。
  5. ^ 撮影台本[1]、宣材のみクレジット

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2020年4月5日閲覧。
  2. ^ a b c d 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス、2012年、140 - 143頁。ISBN 9784864910132 
  3. ^ DVDコレクション50, p. 9, 鈴木宣孝「『怪獣大襲撃』企画誕生の背景」
  4. ^ DVDコレクション50, p. 11
  5. ^ a b 電ホビ 2014, pp. 82-83, メイキング『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』
  6. ^ a b 特撮全史 2016, p. 109, 「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣」
  7. ^ 『別冊映画秘宝 特撮秘宝』Vol.5、洋泉社、2017年1月5日、 126頁、 ISBN 978-4-8003-1127-6
  8. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 19-111, 第1章『出現』
  9. ^ プロジェクト・メカゴジラ 2018, pp. 53-85, 第6章『長征』
  10. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 112-150, 第2章『G』
  11. ^ プロジェクト・メカゴジラ 2018, pp. 112 - 139, 第8章『決戦』
  12. ^ 切通理作 『本多猪四郎 無冠の巨匠』 洋泉社、2014年、408頁。ISBN 978-4-8003-0221-2 
  13. ^ a b DVDコレクション50, p. 8, 俳優名鑑

参考文献編集

外部リンク編集