京都市営地下鉄東西線
東西線(とうざいせん)は、京都府宇治市の六地蔵駅から京都市右京区の太秦天神川駅までを結ぶ京都市営地下鉄の路線である。ラインカラーは朱 [3]、路線記号は「T」[4]。
東西線 | |||
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東西線で運用されている50系電車 | |||
基本情報 | |||
国 | 日本 | ||
所在地 | 京都府宇治市、京都市 | ||
種類 | 地下鉄 | ||
路線網 | 京都市営地下鉄 | ||
起点 | 六地蔵駅[注釈 1] | ||
終点 | 太秦天神川駅 | ||
駅数 | 17駅 | ||
路線記号 | T | ||
開業 | 1997年10月12日 | ||
最終延伸 | 2008年1月16日 | ||
所有者 | 京都市交通局 | ||
運営者 | 京都市交通局 | ||
車両基地 | 醍醐車庫 | ||
使用車両 | 車両の節を参照 | ||
路線諸元 | |||
路線距離 | 17.5 km | ||
軌間 | 1,435 mm (標準軌) | ||
線路数 | 複線 | ||
電化方式 | 直流1,500 V 架空電車線方式 | ||
閉塞方式 | 車内信号閉塞式 | ||
保安装置 | CS-ATC、ATO | ||
最高速度 | 75 km/h[1][2] | ||
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概要
編集停車場・施設・接続路線 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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京都市で2番目の市営地下鉄路線として開業した。京都市中心部と同市東南部の山科区・伏見区との通勤輸送、および滋賀県大津市との都市間輸送の一部を担う路線であり、1日平均18万人が利用している。
1997年に醍醐駅 - 二条駅間が開業し、2004年に醍醐駅から六地蔵駅まで延伸、2008年1月16日には二条駅から太秦天神川駅までが開業した。同駅からはさらに西京区の洛西付近までの延伸が予定されているが、京都市の財政事情が厳しいことから建設の見通しは立っていない(西部への延伸構想節も参照)。
六地蔵駅から山科駅までは伏見区東部・山科区を京都外環状線の地下を通って南北に走る。山科駅から蹴上駅まで山を迂回するようにカーブし、蹴上駅から太秦天神川駅までは市内中心部を三条通・御池通・押小路通の地下を通って東西に走っている。京都市中心部で東西方向に走っていることから、東西線と名付けられているが、東西方向に走っているのは全体の半分程度である。
すべての駅にフルスクリーンタイプのホームドアが設置されている[1][5]。太秦天神川駅から御陵駅では、4両編成と6両編成の両方が発着する関係で、これらの駅ではホームドアは4両部分のみの開閉も行うことが可能である。地下鉄でのホームドアの採用は東京メトロ南北線に次いで、当路線が日本国内2例目である。また、各駅毎にステーションカラーと呼ばれるシンボルカラーが選定されており、ホームドアのほか、駅名表示部、駅名パネル、駅務室の外壁、エレベーターの扉などがその色で統一されている。このステーションカラーは下の表のようにグラデーションしていく。
路線データ
編集運行形態
編集京阪京津線びわ湖浜大津駅からの列車が御陵駅から太秦天神川駅まで乗り入れている。平日は朝時間帯、土休日は6時台までに京都市役所前駅発着列車が運転されるほかは、すべて太秦天神川駅まで直通する[4][6]。交通局の車両を使用する列車は東西線内六地蔵 - 太秦天神川間の運転で、交通局車は京津線へは乗り入れない[4]。
日中のダイヤは東西線開業当初、15分間隔で運転されていた京津線直通列車を除けば、全線で10分間隔(1時間に6本)だったが、2000年3月に烏丸御池駅で連絡する烏丸線と運転間隔をそろえるためもあり7分半間隔(1時間に8本)に増発され、これにより15分間に東西線内列車2本・京津線直通列車1本のパターンになった。2008年1月16日の太秦天神川延伸開業後は京津線直通列車を含めると京都市役所前 - 太秦天神川間で昼間1時間に10本の運転間隔となり、烏丸線よりも本数が多くなった。2018年3月17日のダイヤ改正で京津線直通列車が昼間20分間隔ですべて太秦天神川発着となったため、御陵 - 太秦天神川間は昼間1時間に11本となり、御陵 - 京都市役所前間は1本減便、京都市役所前 - 太秦天神川間は1本増便となった。
1997年までの京阪京津線が御陵駅以西で地上を走っていた時期は、下記のような所要時間であった。
- 京津三条駅 - 御陵駅:準急10分 普通12分
現在の地下鉄東西線の所要時間は、下記のとおりである。
- 三条京阪駅 - 御陵駅:6 - 7分
営業列車は京津線直通列車の京都市役所前駅発着を除けば途中駅始発・終着の列車はないものの車両基地は途中の醍醐駅近くに所在(ただし配線の関係で醍醐駅からの入出庫が不可能のため、入出庫対応駅は小野駅となる)するため、入出庫の目的で一部時間帯に六地蔵駅 - 小野駅間で回送列車が設定されている。
利用状況
編集山科の外環状線沿いや醍醐地域の住民の貴重な足となっている。この地域は団地や新興住宅地が多く、京都や大阪のベッドタウンを形成しているが、人口の増加に道路整備が追い付かなかったことから各所で渋滞が慢性化している土地柄である。地下鉄開業前は、路線バス(京阪バス・京都市バス)や一部路面区間を抱える京阪京津線ぐらいしかなく時間の読めないことが多かったが、地下鉄開業により大幅にアクセスが改善された。
なお、交通局の合理化政策の一環として、開業に合わせて、1997年に同地区の市バスはすべて京阪バスに移管され、市バスは事実上撤退した(ただし2021年に山科区内の市バス路線が復活している)[7]。従来からJR山科駅を起点とした外環状線沿いから山科地区を経由し醍醐地域に路線バスを走らせていた京阪バスは、移管・地下鉄開業にあわせて大幅に路線を変更した。現在、この京阪バスは、三条京阪・四条河原町 - 山科駅、三条京阪・四条河原町 - 椥辻駅・小野駅(五条通(国道1号)または三条通経由)、山科駅 - 六地蔵駅などで、東西線と競合する路線を走らせている。上記3区間ではいずれも地下鉄東西線より安い運賃であることや、繁華街である四条河原町に乗り入れていることで、東西線の有力な競争相手となっている。
地下鉄東西線の開業にともなうバス路線再編成により、醍醐地域ではバス交通に不便が感じられるようになった。そこで、2003年には、地域の住民が主体となる醍醐コミュニティバスが設立され、地下鉄東西線と地域とをきめ細かく結んだ。
また山科駅での乗り換えで西日本旅客鉄道(JR西日本)東海道本線(琵琶湖線)・湖西線、京阪京津線を経由して滋賀県方面や、二条駅で乗り換え、JR山陰本線(嵯峨野線)経由で京都府南丹方面から京都市中心部に流入する利用も多く、六地蔵駅で京阪宇治線やJR奈良線乗り換えで宇治・奈良方面への流動も見られる。沿線には平安神宮・南禅寺・二条城といった観光地が近傍にあるが、現在の段階では観光客利用はそれほど多くない[8]。京都市では渋滞のないスムーズさを売りにしてJR西日本とともに山科駅での乗り継ぎを積極的にPRしている。太秦天神川駅への延伸開業後の2008年3月28日に京福電気鉄道嵐山本線(嵐電)にも乗り換え駅として嵐電天神川駅が新設され[9]、二条駅でのJR嵯峨野線に続いて嵐山方面との接続ルートが形成され、利用が増加した。
年度 | 乗車人員(人) |
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2009年 | 145,550
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2010年 | 146,763
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2011年 | 148,245
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2012年 | 150,255
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2013年 | 152,057
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2014年 | 157,445
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2015年 | 164,457
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2016年 | 168,358
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2017年 | 174,090
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2018年 | 177,799
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2019年 | 178,915
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2020年 | 123,290
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2021年 | 132,015
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2022年 | 149,647
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車両
編集京都市交通局が保有する車両と、京阪電気鉄道の京津線から乗り入れる同社が保有する車両が運転されている。
自局車両
編集-
50系
乗り入れ車両
編集-
800系(2代)
歴史
編集建設までの経緯
編集戦後、京都市交通局は京都市電の新たな計画青写真として六地蔵 - 醍醐 - 山科 - 蹴上から御池通を縦断する路線(高架式も考えられた)を検討したが、やがてモータリゼーションの進展により計画は頓挫する。しかし、その計画は地下鉄路線として新たに練り直されることとなった。
東西線沿線は、著しい人口の伸びに周辺の道路整備が追い付かず渋滞が深刻化していた京都市東部地域(山科区・伏見区東部)と都心部をつなぐための交通機関として1965年頃から計画が進められ、1969年の市議会で建設が正式に決定した。1975年頃にまず醍醐 - 二条間の建設を行うことが決定された。
しかし、その時計画されたルートのうち、御陵駅 - 三条京阪駅間は京阪京津線が地上を走っており、この競合が問題となった。併設については、過当競争を招く恐れがあったほか、この区間の地下鉄を公営地下鉄方式で建設し、そこに京津線が乗り入れることは民営鉄道である京津線の改良を公営方式で行うことになるために、不適当とされた。
協議の結果、京都市と京阪電気鉄道で第三セクター会社を設立し、そこが第三種鉄道事業者の免許を取得した上で、京都市が第二種鉄道事業者の免許を取得してその区間の列車運行を行うことに決まった。こうしてできたのが京都高速鉄道株式会社である。1988年に発足し[11]、社長には当時の京都市長今川正彦が就任した。こうして、京都高速鉄道が日本鉄道建設公団方式で地下鉄を新設し、乗り入れに伴って京阪京津線の地上区間は廃止されることとなった。
当初は平安建都1200年にあたる1994年の開業を予定していた。しかし、京都の市街地の多くの地下には埋蔵文化財が存在するため、その場所に開削工法による地下鉄工事を行う際には、文化財保護法によって事前の発掘調査が義務づけられており、それにかかわる経費と期間を予定しておく必要があった。シールド工法による工事の場合にはこの問題は発生しないが、京都市は工事の直接経費の節減を優先し、また地上の道路整備も同時に行うために、史跡の「旧二条離宮(二条城)」の区域に入っていた押小路通を中心に、工区のうちかなりの部分を開削工法で掘削することとした。東海道新幹線や鴨川を潜るなどかなりの難工事であった。また、東西線では安全対策としてフルスクリーンタイプのホームドアを採用したが、結果的にこれも建設費を増大させる一因となった。
こうした経緯を経て、1997年に醍醐駅 - 二条駅間が開業。京阪京津線が御陵駅 - 京都市役所前駅間に乗り入れを開始した。
二条駅までの開業の際、京阪京津線の乗り入れが当初予定していた三条京阪ではなく、その次の京都市役所前までだった理由は、三条京阪駅西側はすぐ急カーブとなっている上、直上に鴨川が流れているため折り返し線設置には向いておらず、同駅付近では折り返し運転をするのに必要な空間が確保できなかったためである。
一方、二条駅まで乗り入れなかったのは、京都市交通局にとって車両使用料がかさむこと(相互乗り入れではなく、京阪車両の東西線への片乗り入れのため、乗り入れ車両の延べ走行距離に応じた車両使用料を、京都市交通局が京阪電気鉄道に支払わなければならない)、地上側の電力設備の増強が必要なこと、二条 - 京都市役所前間で輸送力が過剰になることなどが理由である。その結果、京都市役所前駅の西隣にある烏丸御池駅での烏丸線との接続に問題が生じる結果を招いた。
1999年には京都商工会議所から二条駅まで京津線乗り入れ区間の延長要望が出され[12]、先述のとおり、2008年1月16日の太秦天神川までの延伸開業に併せて太秦天神川駅に変電所を新設し、京阪京津線列車の乗り入れ区間を同駅まで延長することになった。もっとも、乗り入れ区間の延長に伴う余力の捻出のために、当初は京津線列車毎時4本のうち2本が太秦天神川駅まで運転されたが、2018年のダイヤ改正で京津線列車が昼間以降すべて太秦天神川駅まで直通するようになった一方で運転間隔が15分から20分になり、京津線列車の運転本数は東西線開業以前より減便された。
1997年の開業時(京阪京津線の地上区間廃止時)に九条山駅と日ノ岡駅が廃止された。日ノ岡駅が御陵駅に統合される形で残ったのとは違い、代替駅の建設予定がなかった九条山駅周辺住民からは地下鉄駅設置の要望が出ていたが、難工事が予想された上に利用者があまり見込めないことから、計画段階当初より代替駅を建設することは見送られた。2020年3月時点で九条山バス停(九条山駅とほぼ同一場所)から三条京阪方面や山科駅方面には京阪バスが走っているが、日中の三条京阪行きのバスは1時間に1 - 2本であり[13]、1時間に4本の停車列車があった京阪京津線時代に比べて大幅に削減されている。
京都市営地下鉄東西線と京阪電気鉄道京津線
編集京都市営地下鉄東西線の建設は、1971年(昭和46年)の都市交通審議会の答申で具体化したが、山科 - 三条間のルートが当時営業していた京阪京津線の京阪山科駅 - 三条駅間と競合するため、京都市と京阪電気鉄道との間で協議が必要となった。その協議の場において京都市側は、山科から現ルートよりも北側を山岳トンネルで貫いて京都市都心部へ直行する案を提示したが、京阪電気鉄道側は両線が競合するほどの輸送量はないとしてこれに反対し、京阪電気鉄道が京津線の京阪山科駅 - 三条駅間を廃止し、京都市営地下鉄東西線へ乗り入れることで決着した。その後、東西線の山科付近のルートの都合(京津線とほぼ直角に交差)により、浜大津方面から京津線の山科での乗り入れは物理的に不可能となり、京津線と東西線との接続駅として、三条通を走る日ノ岡 - 御陵間に地下鉄御陵駅を新設し、ここに京津線の御陵駅を移設・地下化することに決まった。
京都市営地下鉄東西線の建設主体は、醍醐駅 - 御陵駅間6.3kmと三条京阪駅 - 二条駅間3.3kmの計9.4kmは京都市の施工、京阪京津線の置き換え区間となる御陵駅 - 三条京阪駅間3.3kmは京都市・京阪電気鉄道などが出資する第三セクター京都高速鉄道を設立して日本鉄道建設公団(現在の鉄道建設・運輸施設整備支援機構)の施工となった。そして鉄道施設の完成後、京都高速鉄道が日本鉄道建設公団から(建設費など約959億円[注釈 3]を)25年間の分割払いで鉄道施設を譲り受けて京都市交通局に貸与し、京都市交通局が醍醐駅 - 二条駅間を一体的に運営することになった。
京阪京津線 | ||||||||
京阪車両運転区間 | ||||||||
運送者 | 太秦天神川 | 京都市交通局 (第一種) |
三条京阪 | 京都市交通局 (第二種) |
御陵 | 京阪電気鉄道 (第一種) |
浜大津 | 運送者 |
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施設保有者 | ||||||||
施設保有者 | 京都高速鉄道 (第三種) |
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京都市交通局 (第一種) |
六地蔵 | 運送者 | ||||||
施設保有者 | ||||||||
地下鉄東西線 / 交通局車両運転区間 |
- 浜大津は現在のびわ湖浜大津。
- 御陵 - 太秦天神川間は京阪電気鉄道所属車両も運行されるが、京阪電気鉄道線から京都市営地下鉄線への乗り入れ(直通運転)であり、京阪電気鉄道が第二種鉄道事業(他事業者の線路を借り受けて運送)をしているのではない。このため、交通局から京阪へ車両使用料が発生する。
- 京都市交通局所属車両は京阪電気鉄道線に乗り入れない。
- 三条京阪駅 - 御陵駅間は、京都高速鉄道が所有し、京都市交通局が借り受けて旅客運送(第二種鉄道事業)を行っていた。市交通局から京都高速鉄道へ線路使用料が発生していた。
- 2009年度からは太秦天神川駅 - 六地蔵駅間全線を市が所有(第一種鉄道事業者)[1]。
- 京阪車の直通運転の形態は変わらない。
開業以降
編集東西線は、前述の建設時に当初よりも建設費が膨らんだほかに[8][14]、開業時年間約18万4千人の利用客を見込んでいたが一度も想定の利用客数を達成したことがない[15]。そのため慢性的な赤字を抱えている。
京都市交通局は2008年に、同年度中に京都高速鉄道を解散し、2009年度より京都高速鉄道保有区間(三条京阪駅 - 御陵駅間)を含めて東西線全線を市が直接経営する(施設保有と運送の両方を行う第一種鉄道事業化)方針を決定した[16][17]。これは、京都市交通局が京都高速鉄道に建設費返済の財源として年間55億円の線路使用料を支払っている[注釈 4]が、当初の借入金が高金利であること、人件費など会社の経費もかさむことなどが、地下鉄の経営悪化の要因となっているため、2005年に創設された国の公営地下鉄の支援策(地下鉄事業における資本費平準化債)の適用を受けることとしたが、直営ではない区間は適用されないためである[17][18][19][20]。2009年4月1日に京都高速鉄道が解散し同日より京都市交通局が第一種鉄道事業者として東西線を経営している[1]。
東西線の赤字状態が続いていることから、2004年度より一般会計からの損失補填を行った(2017年度まで)[15]。京都市交通局は2008年度に経営健全化団体の指定を受けて[21]、2017年度に解除したものの2021年度に再指定となっている(年度は市営地下鉄が対象)[14][21][22][23][24]。また、バブル経済時に進められた東西線の建設費が京都市の財政に影響を与えており[15][25][26]、2028年度に財政再生団体になる可能性があることから[25][27]、京都市は財政再生団体への転落を避けるため行財政改革を実施している[28]。その一環として、一日乗車券の値上げなどがある[22][23]。
年表
編集- 1989年(平成元年)11月8日:起工式[29]。
- 1997年(平成9年)10月12日:醍醐駅 - 二条駅間が開業[11][14]。京阪京津線が浜大津駅(現在のびわ湖浜大津駅)から御陵駅を経て京都市役所前駅まで乗り入れを開始[30]。
- 1999年(平成11年)11月19日:六地蔵駅 - 醍醐駅間延伸起工式[29]。
- 2000年(平成12年)3月15日:昼間の全線通しの列車本数を、毎時6本から8本に増発。
- 2002年(平成14年)12月12日:二条駅 - 天神川駅間延伸起工式[29]。
- 2004年(平成16年)11月26日:六地蔵駅 - 醍醐駅間が延伸開業[11]。
- 2008年(平成20年)
- 2009年(平成21年)4月1日:京都高速鉄道が御陵駅 - 三条京阪駅間の施設を京都市交通局に譲渡し、同区間の第三種鉄道事業を廃止。全線において京都市交通局が第一種鉄道事業者となる[11]。
- 2010年(平成22年)3月19日:白紙ダイヤ改正を実施。21・22時台の増発や、烏丸御池駅での乗り継ぎ時間の均等化などを行う。また、烏丸御池駅での烏丸線・東西線終電の全方向一斉発車作戦「シンデレラクロス」を開始。
- 2013年(平成25年)
- 3月23日:交通系ICカードの全国相互利用を開始。
- 9月16日:台風18号の豪雨により御陵駅が冠水。同月19日夜まで小野駅 - 烏丸御池駅でバス代行輸送となる。
- 2014年(平成26年)
- 2015年(平成27年)
- 2018年(平成30年)3月17日:白紙ダイヤ改正を実施。始発 - 9時台(土休ダイヤは始発 - 6時台)を除く全時間帯で、京阪京津線の全列車が太秦天神川駅まで乗り入れる[6]。同日白紙改正を行う京阪京津線の大幅な減便に伴い、御陵駅 - 京都市役所前駅間は12往復減便、京都市役所前駅 - 太秦天神川駅間は25往復増便となる。
- 2021年(令和3年)3月26日:「コトキン・ライナー」の運行を当面の間休止[23][34]。
現状と今後
編集西部への延伸構想
編集烏丸線整備計画の当初から、東西線は西京区の洛西(洛西ニュータウン)方面および長岡京市までの延伸が構想として存在する[35][注釈 5]が、太秦天神川から先の延伸の具体的な進展はいまだ見られない。
2001年に策定された第1期『西京区基本計画』では東西線の延伸について「早期完成に努めます」としていたが、2011年策定の第2期『西京区基本計画』では延伸について『(切に)願っています』という表現になり、2021年8月に京都市が策定した第3期『西京区基本計画』では、東西線の延伸に関する項目自体がなくなった一方、「新たな交通システムの構築や交通事業者と連携した利便性向上策の検討」「既存の交通ネットワークを縦横断的に結ぶ新たな環状ネットワークの検討」が新たに明記された[36][37][38]。
災害対策
編集2013年9月16日の台風18号による御陵駅の冠水により19日夜まで烏丸御池駅 - 小野駅間で運休した[39]。これは折り返し用の非常渡り線が烏丸御池駅東側と小野駅の醍醐車庫への出入庫線にしかなかったことを理由としたためで[注釈 6]、浸水していなかった烏丸御池駅 - 蹴上駅間・山科駅 - 小野駅間も運休となった。御陵駅の水害は近くを流れる安祥寺川が豪雨で溢れ線路敷伝いに京阪京津線の乗り入れ口から大量の水(推計15600トン)が流入、御陵駅東の地下30mにあるポンプ室の毎分1.8トンの排水能力を超えポンプ室の動力盤が冠水し排水ポンプが停止したことによる[40]。この対策として、安祥寺川に水位計の設置、電源設備を地上もしくは冠水しない所へ移設・予備電源を用意する。京津線の乗り入れ口には京阪電鉄が止水扉を設置するとしている[41][40]。
駅一覧
編集駅番号 [4] |
駅名 [43] |
ステーション カラー |
駅間 キロ |
営業 キロ |
1日平均 乗降客数[44] (2022年度) |
接続路線 | 所在地 | ||
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T01 | 六地蔵駅 | 勿忘草色 | - | 0.0 | 11,458 | 西日本旅客鉄道: 奈良線 (JR-D06) 京阪電気鉄道: 宇治線 (KH73) |
宇治市 | ||
T02 | 石田駅 | 藍白 | 1.1 | 1.1 | 6,536 | 京都市 | 伏見区 | ||
T03 | 醍醐駅 | 桜色 | 1.3 | 2.4 | 12,029 | ||||
T04 | 小野駅 | 紅梅色 | 1.2 | 3.6 | 6,650 | 山科区 | |||
T05 | 椥辻駅 | 秋桜色 | 1.3 | 4.9 | 16,514 | ||||
T06 | 東野駅 | 藤色 | 1.0 | 5.9 | 11,018 | ||||
T07 | 山科駅 | 藤紫 | 1.1 | 7.0 | 39,253 | 西日本旅客鉄道: 東海道本線(琵琶湖線:JR-A30)・ 湖西線 (JR-B30) 京阪電気鉄道: ■ 京津線(京阪山科駅:OT31) | |||
T08 | 御陵駅 | 桔梗色 | 1.7 | 8.7 | [* 1] 13,505 | 京阪電気鉄道: ■ 京津線(びわ湖浜大津駅まで直通) | |||
T09 | 蹴上駅 | 菫色 | 1.8 | 10.5 | 9,343 | 東山区 | |||
T10 | 東山駅 | 菖蒲色 | 1.0 | 11.5 | 15,864 | ||||
T11 | 三条京阪駅 | 牡丹色 | 0.6 | 12.1 | 22,600 | 京阪電気鉄道: 京阪本線・ 鴨東線(三条駅:KH40) | |||
T12 | 京都市役所前駅 (河原町御池) |
韓紅 | 0.5 | 12.6 | 24,404 | 中京区 | |||
T13 | 烏丸御池駅 | 朱色 | 0.9 | 13.5 | [* 2] 44,872 | 京都市営地下鉄: 烏丸線 (K08) | |||
T14 | 二条城前駅 | 柿色 | 0.8 | 14.3 | 6,866 | ||||
T15 | 二条駅 | 山吹色 | 0.8 | 15.1 | 17,894 | 西日本旅客鉄道: 山陰本線(嵯峨野線、JR-E04) | |||
T16 | 西大路御池駅 | 向日葵色 | 1.1 | 16.2 | 10,247 | ||||
T17 | 太秦天神川駅 | 檸檬色 | 1.3 | 17.5 | 16,042 | 京福電気鉄道: 嵐山本線(嵐電天神川駅:A5) | 右京区 |
駅はすべて島式ホームで、エレベーター、エスカレーターを完備しているほか、トイレの段差をなくしたり、車いす用スペースを設けたりして、バリアフリーが図られている。醍醐駅、烏丸御池駅以外は、改札口が1箇所となっている。エレベーターはほぼすべての駅で油圧式、11人乗り、点字表示、音声案内付きに統一されている。エスカレーターは駅により上りのみか、上下とも完備されている駅と2タイプあり、全駅ともセンサー式自動運転である。
駅の案内サインは烏丸線とは異なるものが使われている。東西線では駅名標の下部にステーションカラーを採用しているため、基本的な様式は東西線全駅で共通ながらもステーションカラーの部分のみ各駅ごとに異なっている。2008年の二条駅 - 太秦天神川駅間の開通を機に駅の案内サインを一部更新し、同時に日本語・中国語・韓国語・英語の4か国語の表示(一部の駅のみ)[4]や、ユニバーサルデザインのピクトグラムも導入されている。
発車メロディ・列車到着アナウンス
編集東西線では全駅に発車メロディが導入されており、4曲すべてが京都の長い歴史をイメージした琴や鈴などによる古風な雰囲気の曲である。曲名は以下の通り。
いずれの曲も東日本旅客鉄道(JR東日本)のメロディを手がけた櫻井音楽工房の製作で、これらの発車メロディは、京都市交通局公式サイト[45]で聞くことができる。
脚注
編集注釈
編集- ^ 距離を示すキロポストは醍醐起点である(六地蔵 - 醍醐間はマイナス表示になっている)。
- ^ 二条・醍醐間 4537億円(うち、三条京阪・御陵間 1543億円)、醍醐・六地蔵間 556億円、太秦天神川・二条間 390億円。
- ^ 正確な譲渡金額は958億8717万5千円。
- ^ 杉浦克典「関西地方における上下分離・第三セクター」(関西鉄道協会都市交通研究所編『都市交通事業の経営手法:新たな展開』収録)によれば、当初は3年ごとに線路使用料が10%ずつアップする計画であったが、京都市交通局の経営不振により55億円のまま据え置かれた。
- ^ 近畿地方交通審議会 (2004年10月8日). “付図1、付図2” (pdf). 答申第8号. 国土交通省. p. 2. 2013年12月15日閲覧。 - 天神川〜梅津〜上桂〜洛西 7.7kmが「・洛西地域の開発状況の成熟化に伴い発生する輸送需要に対応するとともに、京都都心部へのアクセス機能の強化に資する路線である。・桂川以北までの段階的な整備を検討する必要がある。」として「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」に位置づけられている。
近畿地方交通審議会 (2004年10月8日). “別紙1、別紙2” (pdf). 答申第8号. 国土交通省. p. 3. 2013年12月15日閲覧。 - 長岡京市までは洛西〜長岡 5.0kmが提案のあった路線として審議会での評価の対象となった。
“路線評価一覧表” (pdf). 第8回近畿地方交通審議会 参考資料. 国土交通省. p. 3 (2004年10月8日). 2013年12月15日閲覧。 - 上記の2区間についてそれぞれ評価が行われ、天神川〜洛西間では整備後50年での費用対効果が2.55となり、開業40年で資金収支ベースでの黒字化が見込める一方、洛西〜長岡京間では同数値が1.28にとどまって40年での黒字化も見込めないとされた。その結果、答申自体では天神川〜洛西間のみが整備検討路線として記載された。 - ^ 実際には蹴上駅の六地蔵寄りにも非常渡り線は存在するが、使用されなかった。
出典
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- ^ 『京都市交通事業白書(事業概要)』令和4年度版 (PDF) - 京都市交通局
- ^ 京都市交通局公式サイト>『ハイパー地下鉄ダイヤ』内『東西線の発車合図楽曲』ページ
参考文献
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- 今尾恵介(監修)『日本鉄道旅行地図帳 - 全線・全駅・全廃線』 9 関西2、新潮社、2009年。ISBN 978-4-10-790027-2。
- 寺田裕一『改訂新版 データブック日本の私鉄』ネコ・パブリッシング、2013年1月19日。ISBN 978-4-7770-1336-4。
- 日本地下鉄協会 (編)『完全版 世界の地下鉄』ぎょうせい、2020年10月14日。ISBN 978-4-324-10876-5。