パク・チャヌク

パク・チャヌク: 박찬욱: 朴贊郁[2]: Park Chan-wook1963年8月23日[1] - )は、韓国映画監督脚本家映画プロデューサー。韓国のいわゆる386世代の一人。自身の監督作品のうち『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』、『親切なクムジャさん』を"復讐三部作"、『サイボーグでも大丈夫』、『渇き』、『イノセント・ガーデン』を"人間ではない存在の三部作"というテーマでくくっている。

パク・チャヌク
박찬욱
박찬욱
パク・チャヌク(2013年9月)
生年月日 (1963-08-23) 1963年8月23日(56歳)
出生地 大韓民国の旗 韓国ソウル特別市[1]
国籍 大韓民国の旗 韓国
職業 映画監督
脚本家
映画プロデューサー
活動期間 1992年[2] -
配偶者[3]
主な作品
映画
JSA
オールド・ボーイ
親切なクムジャさん
渇き
イノセント・ガーデン
お嬢さん
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パク・チャヌク
各種表記
ハングル 박찬욱
漢字 朴贊郁
発音: パク・チャヌク
ローマ字 Bak Chan-uk
英語表記: Park Chan-wook[2]
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来歴Edit

 
第62回カンヌ国際映画祭にて(2009年5月)

生い立ちEdit

1963年8月23日ソウル特別市生まれ。建築科の教授だった父親について幼少期からよく展示会に通っていた。美術に関心が高く、学生時代は美術史学者を夢見ていた(パク・チャヌクの実弟は設置美術家・美術評論家のパク・チャンギョン)[4]

パクが青年期を過ごした1980年から1988年のソウルは、独裁者だった全斗煥統治下の壮絶な状況にあり、そのような過酷な環境下で育ったことがパクの想像力に大きな影響を与えたという[5]

建国大学校師範大学附属中学校、永東高等学校を卒業後の1983年、美術史学者を目指して西江大学校哲学科に進学。写真クラブ「西江会」に所属する一方、大学図書館で映画関連の書籍を読み漁り、大学の仲間たちと共に映画サークル「西江映画共同体」を結成。多くの映画を観るようになり、映画監督になることを決意する[4]

大学在学中、教授が開いた小規模の映画上映会でアルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』を鑑賞したことをきっかけに、ヒッチコック作品に魅了される[4]。以降はあまり有名ではない映画を探し回るようになり、アベル・フェラーラハル・ハートリーアキ・カウリスマキの映画に興味を持った。これらの作品を好むようになったことで、完璧さを追求した映画よりも、技術や脚本もなく撮られたような完璧には程遠く粗い印象の映画に惹かれるようになる。それから多様な映画と出会う中で、本格的に映画に傾倒していく[6]

また、1983年に映画評論家として文壇に登場し、以後約9年間映画評論家として活動した[4]

映画界入りEdit

1988年に西江大学を卒業した後、映画監督のイ・ジャンホが設立したパン映画社の演出部の一員となる。演出部時代にクァク・ジェヨンに出会い、クァクの映画監督デビュー作『雨降る日の色彩画』(1989年)の助監督を引き受ける。しかし、独立映画のように撮影された『雨が降る日の水彩画』で現場の難しさを感じ、助監督を辞めて映画人の道を諦めることも考えたが、当時構想中だった脚本だけ完成させることにする。脚本完成後、再び映画に対する情熱を感じたことで映画の道に進むことを決心した[4]

映画監督としてEdit

その後、小さな映画会社に入社したパクは、1992年に『月は...太陽が見る夢』で映画監督デビューを果たす。生活のために映画評論家としても活動しており、1994年に映画批評集「映画を観ることの隠密な魅力」を出版。1997年には2作目の監督作『三人組』を公開した。初期のパクの監督作品は当時の韓国では珍しい作風で韓国映画界のニューウェーブとして注目されたものの、両作とも興行的には振るわなかった[4]

パクは自らの監督作品の脚本も多く執筆しており、1990年代末から2000年代初めには、映画監督のイ・ムヨンと「박리다매パクリダメ」(薄利多売)という名前の共同脚本家としても活動した[4]

初期作品が振るわず困難のさなかにいた頃、自作脚本を映画製作会社ミョンフィルムに持ち込んだパクは、製作者の説得を試みる。その脚本が評価されたこともあり、同社のシム・ジェミン代表から南北分断をテーマにしたパク・サンヨンの小説「DMZ」の映画化である『JSA』の監督をやらないかという提案を受ける。小説のテーマやミステリー調の筋書に惹かれたパクは監督を引き受け、2000年に『JSA』が公開。監督であるパクの意図やユーモアが作品に活かされていたことに加えて社会的なテーマも含まれており、観客動員数583万人を記録。その年の最高興行となった[7]。この映画でパクは、第21回青龍映画賞監督賞、第37回百想芸術大賞監督賞、第38回大鐘賞最優秀作品賞、ドーヴィル・アジア映画祭作品賞などを受賞した。

2002年に監督した映画『復讐者に憐れみを』で、第3回釜山映画評論家協会賞最優秀作品賞および監督賞やイタリアフィルムノワールフェスティバル審査員特別賞、ウーディネ極東映画祭観客賞などを受賞[8][9]

続く2003年には、日本の漫画を原作にした監督作『オールド・ボーイ』を世に放ち、観客動員数326万人を記録。また、同作品は韓国映画史上初の第57回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞するなど、国際的に高い評価を得た[10][11]

2004年には、「模倣」という言葉にちなんで会社名を名付けた映画製作会社モホフィルム(Moho Film)を設立。以後、代表を務める[4]

2005年、パクは映画『親切なクムジャさん』を発表。『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』、そしてこの『親切なクムジャさん』の3作品は「復讐」をテーマにしており、「復讐三部作」と呼ばれている[11][12]。しかし、この連作は初めから三部作として企画されたわけではなく、前述の2作を発表した後に次作を構想する過程でパクが即興的に「復讐三部作」とすることを思いつき、3作目として『親切なクムジャさん』を製作したのである[13]

2006年には第63回ヴェネツィア国際映画祭の審査員を委嘱される[14]

2007年公開の監督作『サイボーグでも大丈夫』で第57回ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー賞を受賞[15]2009年には監督作『渇き』が第62回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した[16]

2011年には、世界初のiPhone4で撮影した短編映画『波乱万丈 Night Fishing』(実弟のパク・チャンギョンと共同監督)を封切り、第61回ベルリン国際映画祭金熊賞(短編部門)および第44回シッチェス・カタロニア映画祭最優秀作品賞(ニュー・ビジョンズ部門)を受賞[11]

2013年ミア・ワシコウスカニコール・キッドマンを出演者に迎えた監督作『イノセント・ガーデン』でハリウッド進出を果たした[17]

2016年に、監督作『お嬢さん』が第71回英国アカデミー賞最優秀外国語作品賞を受賞[18]。韓国国内では第53回百想芸術大賞映画部門で大賞を獲得するなど[19]、国内外で多数の賞を受賞した[20][21]

2017年に開催された第70回カンヌ国際映画祭では、韓国人で通算4人目となる審査員を務めた[22]。同年、イタリアフィレンツェ市から文化芸術賞である「フィレンツェ市の鍵」が贈られ[23]、第35回ブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭でも功労賞を受賞した[24]

2018年イギリスBBC制作により、自身初のテレビドラマシリーズ『リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ』を監督[25]

2019年には、映画を含む幅広い分野での功績が認められ、ジュネーブ国際映画祭にてフィルム&ビヨンド賞を受賞した[26]

2017年の韓国大統領選挙では左派政党・正義党沈相奵を支持した[27]

フィルモグラフィEdit

公開年 邦題
原題
役職 備考
監督 脚本 製作
1992 月は…太陽が見る夢
달은... 해가 꾸는 꿈
長編監督デビュー作
1997 3人組
3인조
1999 審判
심판
短編
2000 アナーキスト
아나키스트
監督:ユ・ヨンシク
2001 ヒューマニスト
휴머니스트
監督:イ・ムヨン
2002 復讐者に憐れみを
복수는 나의 것
分別のない妻、波瀾万丈な夫、そして太拳少女
철없는 아내와 파란만장한 남편 그리고 태권소녀
監督:イ・ムヨン
2003 N. E. P. A. L. 平和と愛は終わらない
믿거나 말거나, 찬드라의 경우
オムニバス映画
『もし、あなたなら〜6つの視線』
(原題:여섯 개의 시선
オールド・ボーイ
올드 보이
原作:土屋ガロン嶺岸信明
ルーズ戦記 オールドボーイ
2004 Cut オムニバス映画『美しい夜、残酷な朝
(原題:三更2
2005 天国までの60日
소년, 천국에 가다
監督:ユン・テヨン
親切なクムジャさん
친절한 금자씨
共同脚本:チョン・ソギョン
2006 サイボーグでも大丈夫
싸이보그지만 괜찮아
共同脚本:チョン・ソギョン
2008 ミスにんじん
미쓰 홍당무
兼出演
監督:イ・ギョンミ
2009 渇き
박쥐
共同脚本:チョン・ソギョン
2011 波乱万丈 Night Fishing
파란만장
短編
監督:パク・チャンギョン
2012 Day Trip
청출어람
短編
2013 イノセント・ガーデン
Stoker
ハリウッドデビュー作
2014 スノーピアサー
Snowpiercer/설국열차
監督・脚本:ポン・ジュノ
2016 お嬢さん
아가씨
原作:サラ・ウォーターズ荊の城
共同脚本:チョン・ソギョン
2018 リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ
The Little Drummer Girl
テレビドラマ監督デビュー作

受賞歴Edit

個人としてEdit

  • フィレンツェ市の鍵(2017年)[23]
  • ブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭 功労賞(2017年)[24]
  • ジュネーブ国際映画祭 フィルム&ビヨンド賞(2019年)[26]

映画Edit

テレビドラマEdit

書籍Edit

著作Edit

  • 批評集『映画を見ることの隠密な魅力』(韓国:1994年6月30日、삼호미디어)
  • 『復讐者に憐れみを』(日本:2005年3月31日、竹書房
  • 『パク・チャヌクのオマージュ』(韓国:2005年12月10日、마음산책)
  • 『パク・チャヌクのモンタージュ』(韓国:2005年12月10日、마음산책/日本:2007年9月1日、キネマ旬報社
  • 『渇き』(韓国:2009年4月20日、그책)

脚注Edit

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  1. ^ a b 인물정보(人物情報) NAVER(韓国語) 2011年8月23日閲覧。
  2. ^ a b c 박찬욱 (パク・チャヌク) KMDb 2011年8月23日閲覧。
  3. ^ “復讐映画の巨匠、パク・チャヌク その知られざる素顔<前編>(3/3)”. T JAPAN: The New York Times Style Magazine: Japan. (2017年12月20日). https://www.tjapan.jp/entertainment/17196257/p3 2017年12月20日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g h ““히치콕이 내 인생 바꿨다””. ハンギョレ. (2004年5月27日). http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=106&oid=028&aid=0000061311 2020年2月20日閲覧。 
  5. ^ “復讐映画の巨匠、パク・チャヌク その知られざる素顔<前編>”. The New York Times Style Magazine: Japan. (2017年12月20日). https://www.tjapan.jp/entertainment/17196257/p2 2020年2月20日閲覧。 
  6. ^ “영화인 7인 특강 전문 3 - 박찬욱 ①”. CINE21. (2005年8月2日). http://www.cine21.com/news/view/mag_id/32480 2020年2月20日閲覧。 
  7. ^ “박찬욱, 또 한번 '칸'의 선택을 받다”. ソウル経済. (2009年5月25日). http://economy.hankooki.com/lpage/entv/200905/e2009052519331294220.htm 2013年12月12日閲覧。 
  8. ^ “박찬욱감독 ‘복수는 나의것’ 부산映評 작품·감독상 2관왕”. 文化日報. (2002年11月7日). http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=103&oid=021&aid=0000008202 2020年2月20日閲覧。 
  9. ^ “칸영화제두번 휩쓴 박찬욱은 누구?”. アジア経済. (2009年5月25日). http://www.asiae.co.kr/news/view.htm?idxno=2009052502502745218&nvr=y 2020年2月20日閲覧。 
  10. ^ “朴賛郁監督の『オールドボーイ』、カンヌ映画祭審査委員大賞”. 東亜日報. (2004年5月23日). http://www.donga.com/jp/article/all/20040523/280885/1/ 2020年2月20日閲覧。 
  11. ^ a b c “『お嬢さん』パク・チャヌク監督の伝説と魅力徹底解剖!”. CinemaCafe. (2017年2月12日). https://www.cinemacafe.net/article/2017/02/12/47005.html 2020年2月20日閲覧。 
  12. ^ “暴力・復讐・激痛・残酷!パク・チャヌク監督“復讐三部作”を振り返る”. Abema TIMES. (2016年9月9日). https://times.abema.tv/posts/1296208 2020年2月20日閲覧。 
  13. ^ “‘복수 연작’ 박찬욱 감독”. 京郷新聞. (2003年11月19日). http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=103&oid=032&aid=0000041325 2020年2月20日閲覧。 
  14. ^ “박찬욱 감독, 베니스영화제 심사위원 위촉”. CINE21. (2006年7月4日). http://www.cine21.com/Article/article_view.php?mm=001001001&article_id=39777 2016年3月4日閲覧。 
  15. ^ “サイボーグでも大丈夫”. 映画.com. https://eiga.com/official/cyborg/introduction.html 2020年2月20日閲覧。 
  16. ^ “パク・チャヌク監督「サースト」、カンヌ映画祭で審査員賞受賞”. 中央日報. (2009年5月25日). https://japanese.joins.com/JArticle/115688?sectcode=730&servcode=700 2020年2月20日閲覧。 
  17. ^ “鬼才パク・チャヌク、ハリウッドデビュー作「イノセント・ガーデン」で描く少女の“目覚め””. 映画.com (エイガ・ドット・コム). (2013年5月30日). https://eiga.com/news/20130530/11/ 2013年5月30日閲覧。 
  18. ^ a b “パク・チャヌク監督、映画「お嬢さん」が英国アカデミー賞で外国語映画賞を受賞”. Kstyle (LINE). (2018年2月19日). http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2087890 2018年2月19日閲覧。 
  19. ^ ““お嬢さん”パク・チャヌク監督&“トッケビ”キム・ウンスク作家「第53回百想芸術大賞」で大賞を受賞(総合)”. Kstyle. (2017年5月4日). https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2069307 2017年5月4日閲覧。 
  20. ^ “パク・チャヌク監督の成人映画『お嬢さん』が賞レースで連日のように受賞、ノミネートが続くー全米映画賞を席巻!”. cinefil. (2016年12月25日). https://cinefil.tokyo/_ct/17024882 2017年7月27日閲覧。 
  21. ^ “映画『お嬢さん』、海外の批評家協会賞を独占”. 毎日経済新聞. (2016年12月29日). http://japan.mk.co.kr/view.php?category=30600006&year=2016&idx=5573 2018年9月24日閲覧。 
  22. ^ “パク・チャヌク「第70回カンヌ国際映画祭」の審査員に委嘱…韓国人で4人目”. Kstyle (LINE). (2017年4月26日). http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2068741 2017年4月26日閲覧。 
  23. ^ a b “パク・チャヌク監督、イタリア・フィレンツェ市から文化芸術賞を受賞”. Kstyle (LINE). (2017年3月27日). http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2066408 2017年3月27日閲覧。 
  24. ^ a b “映画「お嬢さん」のパク・チャヌク監督、ブリュッセル映画祭で功労賞受賞!”. THE FACT JAPAN. (2017年4月7日). http://m.thefactjp.com/article/read.php?sa_idx=22352 2017年4月17日閲覧。 
  25. ^ “パク・チャヌク監督「リトル・ドラマー・ガール」をドラマ化 アレクサンダー・スカルスガルドが出演”. 映画.com (エイガ・ドット・コム). (2017年11月30日). https://eiga.com/news/20171130/6/ 2017年11月30日閲覧。 
  26. ^ a b パク・チャヌク監督「ジュネーブ国際映画祭」でフィルム&ビヨンド賞を受賞”. LINE (2019年11月6日). 2019年11月6日閲覧。
  27. ^ “「SC초점」 "이 후보가 대통령 돼야" 대선판에 뛰는 ★들newspaper=スポーツ朝鮮”. (2017年5月1日). http://v.entertain.media.daum.net/v/20170501174208481 2017年7月15日閲覧。 
  28. ^ ““お嬢さん”パク・チャヌク監督&“トッケビ”キム・ウンスク作家「第53回百想芸術大賞」で大賞を受賞(総合)”. Kstyle (LINE). (2017年5月4日). http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2069307 2017年5月4日閲覧。 
  29. ^ “日本の人気俳優も…「2019 ソウルドラマアワード」今年を輝かせた人気ドラマ&俳優は?”. Kstyle (LINE). (2019年8月29日). http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2124793 2019年8月29日閲覧。 

外部リンクEdit