ロシア陸軍
ロシア陸軍(ロシアりくぐん、ロシア語: Сухопутные войска、英語: Ground Forces of the Russian Federation)は、ロシア連邦軍における陸軍である。
ロシア陸軍 Сухопутные войска Ground Forces of the Russian Federation | |
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![]() ロシア陸軍の紋章 | |
創設 | 1992年 |
国籍 | ![]() |
タイプ | 陸軍 |
上級部隊 | ![]() |
主な戦歴 | |
概要編集
冷戦時代のソ連地上軍に倣い、ロシア地上軍(ロシアちじょうぐん)と呼ばれることもある。2016年現在、約27万人の兵力と戦車を約2,700両(その他保管約17,500両)保有している[1](国境警備隊や内務省軍などの準軍事組織を含まない)。
ソビエト連邦軍では、陸軍の軍令機関がそのまま全軍の参謀本部に発展した経緯から、陸軍自身の軍令機関が設置されなかった(つまり、軍種としての陸軍が存在しなかった)時代がある(共産圏の軍隊も、ソ連軍の例に倣っている場合が多い)。このことから、西側では共産圏の陸軍組織を陸軍 (army) とは呼ばず、地上軍(ground force)と呼び、自衛隊や韓国軍(ソ連軍に倣って建設された北朝鮮の陸軍を地上軍と呼称している)では地上軍と呼称している。
現在では、「Сухопутные войска」と「Армия」は陸軍と訳される場合が多い。同じ国でも時代によって「Сухопутные войска」なのか「Армия」なのかが異なる。(帝政時代はРусская императорская армия。ここでのАрмияは一般的に陸軍と訳される。ソ連時代はСоветская армия。ここでのАрмияは一般的に地上軍と訳されている。連邦時代はСухопутные войска Российской Федерации。Сухопутные войскаはドイツСухопутные войска Германииのように陸軍と訳すのが正しい。なお、朝鮮人民軍陸軍や中国人民解放軍陸軍もСухопутные войскаとなっている。
歴史編集
第二次世界大戦中に赤軍の総数は膨大なものとなり、日々指導が困難となったことから独立の指揮機関が必要とされ、1946年3月、最初の陸軍総司令部が設置された。
召集兵の復員が進み、陸軍の総数が減少したことから、1950年3月、総司令部は解散された。
1955年3月、再び総司令部が設置されたが、1964年3月には再び解散された。1967年11月、三度目の総司令部が設置された。
ソ連崩壊後、1997年11月~12月、総司令部は、陸軍総局(Главное управление Сухопутных войск)として参謀本部の一部署に改編された。
2008年、ドミートリー・メドヴェージェフ大統領が承認した「ロシア連邦軍の将来の姿」に従い、「軍管区-軍-師団-連隊」の4層構造から「軍管区-作戦コマンド-旅団」の3層構造への改編が行われ、2009年までに完了したとされていたが、2013年の戦勝記念パレードに親衛タマン自動車化狙撃師団と親衛カンテミロフカ戦車師団が参加しており一部では師団が復活している[2]。
機構編集
陸軍総司令部編集
ロシア陸軍は、陸軍総司令部(Главное командование Сухопутных войск)によって指揮統率される。
部隊建制編集
- 軍管区(военный округ)
- 軍(армия):諸兵科連合軍と戦車軍の2種類がある。
- 軍団(армейский корпус):一時期部隊が存在しない単位であったが2014年に第68軍団が再編されている[3] 。
- 師団(дивизия):詳細はロシア陸軍の師団・旅団等一覧を参照のこと。
- 軍事基地(военная база):師団級の部隊。
- 旅団(бригада):自動車化狙撃旅団、戦車旅団、砲兵旅団、特殊任務旅団などがある。
- 連隊(полк)
- 大隊(батальон)、砲兵大隊(дивизион)
- 中隊(рота)、砲兵中隊(батарея)
- 小隊(взвод)
- 分隊(отделение)
軍管区編集
ロシア陸軍は、ロシア連邦軍の6つの軍管区(Военный округ)に区分されて配備されていたが、軍管区は2010年までに東部、西部、南部、中央の4個に統合された。
現在の軍管区
- 西部軍管区(旧レニングラード軍管区およびモスクワ軍管区)
- 南部軍管区(旧北カフカス軍管区)
- 中央軍管区(沿ヴォルガ=ウラル軍管区と旧シベリア軍管区西部)
- 東部軍管区(旧シベリア軍管区東部と極東軍管区)
2010年以前の軍管区
- モスクワ軍管区(Московский военный округ;МВО)
- レニングラード軍管区(Ленинградский военный округ;ЛенВО)
- 沿ヴォルガ・ウラル軍管区(Приволжско-уральский военный округ;ПруВО)
- 北カフカーズ軍管区(Северо-кавказский военный округ;СКВО)
- シベリア軍管区(Сибирский военный округ;СибВО)
- 極東軍管区(Дальневосточный военный округ;ДВО)
直轄部隊編集
- 第83地上軍暗号情報センター:モスクワ
- 地上軍軍事教育・科学センター:モスクワ
- 第631ロケット・砲兵戦闘使用地域教育センター:サラトフ
- 第681ロケット・砲兵戦闘使用地域教育センター:ムリノ
- 第1000ロケット・砲兵戦闘使用教育センター:コロムナ
- 第60ロケット・砲兵戦闘使用教育センター:ズナメンスク-6
- 第106地上軍防空兵教育センター第745高射ミサイル連隊:オレンブルク
- 第222ロシア連邦軍防空兵教育プロセス保障高射ミサイル連隊:スモレンスク
- 第726地上軍防空兵教育センター:エイスク
- 第68教育プロセス・戦闘射撃保障高射ミサイル旅団
- 第317独立親衛工兵旅団:ナハビノ
- 第66親衛架橋連隊:ムロム
- 第45偽装工兵連隊:ニコロ・ウリュピノ
- 第1機動放射線・化学・生物学防護旅団:シハヌィ
- 第9爆破測定連隊:シハヌィ
兵科編集
ロシア陸軍の兵科は、兵科、支援兵科、後方部隊・施設に分かれる。
兵科編集
兵科(рода войск)とは、戦闘に直接参加するいわゆる戦闘職種である。
- 自動車化狙撃兵(Мотострелковые войска):歩兵
- 戦車兵(Танковые войска)
- ロケット・砲兵(Ракетные войска и артиллерия):砲兵
- 防空兵(Войсковая ПВО):高射砲兵
- 陸軍航空隊(Армейская авиация):現在はロシア空軍の兵科
支援兵科編集
支援兵科(специальные войска;直訳だと特殊部隊となるが、ここでは支援兵科と訳す)とは、陸軍の任務遂行を保障するための兵科である。
- 偵察兵(разведывательные войска):情報職域。ロシア連邦軍参謀本部情報総局 (GRU) の管轄
- 通信兵(войска связи)
- 電波電子戦兵(войска радиоэлектронной борьбы)
- 工兵(инженерные войска)
- 放射線・化学・生物学防護兵(войска радиационной, химической и биологической защиты)
- 技術保障兵(войска технического обеспечения)
- 自動車兵(автомобильные войска):輸送兵
- 後方警備兵(войска охраны тыла)
後方部隊・施設編集
後方部隊・施設(воинские части и учреждения тыла)は、全軍共通であり、ロシア連邦軍後方部が一元管理している(元々陸軍の組織から発展したため、海軍所属の後方部隊・施設勤務者でも陸軍式の制服と階級呼称を帯びる)。
装備品編集
車両編集
戦車編集
装甲戦闘車編集
自走対空砲編集
歩兵戦闘車/装甲車編集
歩兵戦闘車編集
歩兵機動車編集
多用途車編集
榴弾砲編集
迫撃砲編集
自走砲編集
- 2S7ピオン 203mm自走カノン砲
- 2S35 コアリツィヤ-SV 152mm自走榴弾砲
- 2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲
- 2S5ギアツィント 152mm自走カノン砲
- 2S3アカーツィヤ 152mm自走榴弾砲
- 2S1グヴォズジーカ 122mm自走榴弾砲
- 2S4チュリパン 240mm自走迫撃砲
多連装ロケットランチャー編集
地対地ミサイル車両編集
地対空ミサイル車両編集
対砲兵レーダー編集
電波妨害装置編集
無人車両編集
無人航空機編集
小火器編集
自動拳銃編集
アサルトライフル編集
狙撃銃編集
機関銃編集
グレネードランチャー編集
ロケットランチャー編集
対戦車誘導弾編集
歴代総司令官編集
氏名 | 階級 | 在任期間 | 出身校 | 前職 |
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ニコライ・コルミリツェフ | 上級大将 | 2001-2004.11 | オムスク高等諸兵科共通指揮学校 | シベリア軍管区司令官 |
アレクセイ・マスロフ | 2004.11-2008.8 | ハリコフ高等戦車指揮学校 | 北カフカーズ軍管区参謀長 | |
ウラジーミル・ボルドゥイレフ | 2008.8-2010.1 | モスクワ高等諸兵科共通指揮学校 | 沿ヴォルガ・ウラル軍管区司令官 | |
アレクサンドル・ポストニコフ | 大将 | 2010.1-2012 | キエフ高等諸兵科共通指揮学校 | シベリア軍管区司令官 |
脚注編集
- ^ 平成28年版防衛白書
- ^ 平成27年版防衛白書
- ^ Mukhin, Vladimir (2014年4月21日). “КАРТ-БЛАНШ. Курилам придают военно-стратегический облик” (Russian). Nezavisimaya Gazeta 2019年9月12日閲覧。