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双六岳

双六岳(すごろくだけ)は、長野県大町市岐阜県高山市にまたがる飛騨山脈裏銀座の主稜線に位置する標高2,860 mである。双六岳を含む飛騨山脈の主な山域は1934年昭和9年)12月4日に中部山岳国立公園の指定を受けている[注釈 1][3]花の百名山[4]ぎふ百山[5]、新高山市100景[6]の一つに選定されている。

双六岳
北側の丸山から望む双六岳、左奥に穂高岳
北側の丸山から望む双六岳、左奥に穂高岳
標高 2,860.29[1] m
所在地 日本の旗 日本
長野県大町市岐阜県高山市
位置 北緯36度22分19秒
東経137度35分14秒
座標: 北緯36度22分19秒 東経137度35分14秒[2]
山系 飛騨山脈(北アルプス)
双六岳の位置
Project.svg プロジェクト 山
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目次

概要編集

北側には飛騨山脈の主稜線が延び、三俣蓮華岳立山連峰後立山連峰へと延びる主稜線から分岐する。この山頂で稜線は東南東に向きを変えて槍ヶ岳穂高岳へと主稜線が続き、東南東の隣のピーク樅沢岳から南西に分岐した稜線が弓折岳を経て笠ヶ岳へと続く。また、新穂高温泉からの1955年昭和30年)に開設された小池新道の先には、双六岳と樅沢岳との鞍部がある。各方面からの登山道が交差する要所にあり、双六小屋がある[7]

双六岳はを伏せたような緩やかな高原状の山体で、山頂は砂礫台地となっていて周氷河地形の線状構造土が見られ[8][9]、その上に浮かぶ槍ヶ岳と穂高岳の展望地である[9][10]日本で44番目に高い山[11]。山頂には二等三角点が設置されている。点名は「中俣岳」、所在地は岐阜県高山市大字金木戸字中俣岳695番地[1]

山名の由来編集

 
大ノマ岳方面から望む双六岳と双六谷の源頭部

神通川水系最上流部の双六谷にすごろく碁盤に似た盤の石があることが、山名の由来であるとする説がある。また「四五六谷」が転化して双六谷になったとする説もある[8]

歴史編集

環境編集

上部は森林限界の高山帯。双六岳東面の中道には圏谷地形(カール)があり夏にも雪渓が残り、その登山道周辺には大規模な高山植物の群生地が広がっている[7]

動物編集

 
双六岳のハイマツ帯に生息し繁殖を行っているライチョウのメス(国の特別天然記念物)

ハイマツ帯には、国の特別天然記念物に指定されているライチョウが生息する[14]。岐阜県のレッドリストで指定を受けている高山ミヤマモンキチョウ、高山アルプスギンウワバアルプスクロヨトウアルプスヤガソウウンクロオビナミシャクダイセツヤガヤツガダケヤガ及びカミキリムシ科トホシハナカミキリなど確認記録がある[15]

植物編集

花の百名山に選定されている双六岳周辺では、多くの高山植物が自生している。田中澄江の著書『花の百名山』で、双六岳を代表する花としてコバイケイソウが紹介された[4][16]。山頂部の稜線付近では晩夏から初秋にかけてトウヤクリンドウが見られる[17]。7月の雪解けから8月末頃までが開花時期である。小池新道の弓折岳と双六小屋の中間点付近には大規模なお花畑があり、「花見平」と呼ばれている[18]。秋には、なだらかな山頂の高山植物が草紅葉となる[19]。双六池畔に自生するコバイケイソウの群落が、高山市により『双六池畔のコバイケイソウと笠ヶ岳』として新高山市100景の一つに選定されている[20]。双六小屋から三俣蓮華岳へは三つのコース(尾根道、中道、巻道)があり、中道ではキバナシャクナゲヨツバシオガマなどが見られ、巻道ではシナノキンバイハクサンイチゲミヤマキンポウゲなどが見られる[21]。秋には山頂部の高山帯で草紅葉、周辺の登山道ではダケカンバの黄葉、ナナカマド紅葉などが見られる[22]

登山編集

 
抜戸岳方面から望む弓折岳から双六小屋を経て双六岳へ至る稜線伝いの登山道

登山ルート編集

1955年(昭和30年)に小池義清らにより開設された新穂高温泉を起点とする小池新道が、双六岳への最短のメインルートとなっている[8]。小池新道開設以前は、金木戸川沿いを遡る難ルートが利用されていた[13][14]。各方面から多数の登頂ルートがあり、以下がその一例である[23][24]。双六小屋から三俣蓮華岳方面へは、双六岳の山頂を経由する稜線ルート及び東斜面には中道と巻道がある[25]。残雪期のゴールデンウィークの双六岳周辺は、山スキーに適した斜面が広がる[26]。登山シーズンには、新穂高温泉バス停前に新穂高登山指導センターが開設され、岐阜県警山岳警備隊員と北飛救助隊員が常駐し、双六岳を含む周辺の山域の山岳パトロールが行われている[27]

  • 小池新道:新穂高温泉 - わさび平小屋 - 秩父沢 - シシウドが原 - 鏡平山荘 - 双六小屋 - 双六岳。槍ヶ岳と穂高岳を眺めながらの花の山旅コースとして知られている[23]。双六小屋の手前にはお花畑が広がる双六池があり、池畔北側がキャンプ指定地となっている。初夏には残雪があり、登山適期は7月中旬-9月下旬頃[23]
  • 笠新道:新穂高温泉 - 杓子平 - (笠ヶ岳)- 抜戸岳- 弓折岳 - 双六小屋 - 双六岳。笠ヶ岳山荘で一泊して笠ヶ岳に登頂、その翌日に双六岳に登頂する例がある)。
  • 西鎌尾根:(各登山口) - 槍ヶ岳 - 樅沢岳 - 双六小屋 - 双六岳。槍ヶ岳へは、中房温泉からの表銀座上高地や新穂高温泉などからの入山経路がある。
  • 西銀座ダイヤモンドコース折立 - 太郎平小屋 - 太郎山 - 北ノ俣岳 - 赤木岳 - 黒部五郎岳 - 三俣蓮華岳 - 丸山 - 双六岳。立山方面から縦走する例もある。
  • 裏銀座高瀬ダム - (ブナ立尾根) - 烏帽子岳 - 野口五郎岳 - 水晶小屋 - ワリモ岳 - 鷲羽岳 - 三俣山荘 - 三俣蓮華岳 - 丸山 - 双六岳。1956年9月に開設された湯俣温泉から三俣山荘までの伊藤新道は荒廃して通行困難となっている[8]後立山連峰から大縦走する例もある。

双六小屋編集

 
双六池とその北畔にあるキャンプ指定地

山頂直下東1.3km には1935年(昭和10年)に旧上宝村の村営小屋として開設された双六小屋があり、1950年(昭和25年)に小池義清により再建され[注釈 2][14]、登山シーズン中は小屋の前に給水施設が設置されている[8]1980年(昭和55年)に樅沢岳側に一棟増築された[7]。北アルプス縦走の際に利用されることがあり、富山大学医学部による双六小屋夏山診療所が併設されている[14]。義清から経営を引き継いだ次男の潜は山岳写真家でもあり、小池新道周辺のわさび平小屋鏡平山荘黒部五郎小舎の経営も行っている[28]画家写真家作家などが多く訪れる山小屋でもある[7]。山岳画家の中村清太郎は1956年(昭和31年)から1961年(昭和36年)にかけて1-2カ月程度双六小屋や周辺の山小屋に滞在しながら創作活動を行っており、山岳風景画家の足立源一郎1963年(昭和38年)から1965年(昭和40年)頃にかけて訪問していた[29]田淵行男新田次郎田中澄江らも宿泊した[14][30]。山小屋の看板の文字は作家の田中澄江により書かれたものである[31]

周辺の山小屋編集

周辺の登山道上には、登山者用の山小屋キャンプ指定地がある[23][24][32]

画像 名称 所在地 双六岳からの
方角と距離 (km)
[注釈 3]
標高
(m)
収容
人数
キャンプ
指定地
  三俣山荘 鷲羽岳と三俣蓮華岳との鞍部  北北東 2.7 2,550 70 テント
70張
  双六小屋 双六岳と樅沢岳との鞍部

双六池畔

 東 1.3 2,550 200 60張
  鏡平山荘 弓折岳南東下
鏡池
 南南東 3.3 2,300 100 なし
  槍ヶ岳山荘 槍ヶ岳山頂直下南側の肩  東南東 6.3 3,060 650 30張
  笠ヶ岳山荘 笠ヶ岳山頂直下北側の肩  南南西 6.8 2,820 100 25張
  わさび平小屋 蒲田川左俣谷右岸

わさび平

 南 6.8 1,402 60 30張

地理編集

 
画像右下 奥飛騨エリアに位置する双六岳。黒部川源頭部に近い。

飛騨山脈中部の主稜線上にあり[33]、山頂の東南東1.3 kmには、常に水をたたえる双六池がある[13]。南面が高原川双六谷の源頭部となっている[13]

周辺の山編集

三俣蓮華岳と双六岳の中間には、丸山 (2,854 m) のピークがある。南側には双六南峰 (2,819 m) がある。

 
槍ヶ岳から望む双六岳周辺の山(春)
 
鷲羽岳から望む三俣蓮華岳丸山、双六岳、その右奥には笠ヶ岳、三俣蓮華岳から双六岳の東面にはカール地形が見られる。
山容 山名 標高[1][2]
(m)
三角点等級
基準点名[1]
双六岳からの
方角と距離(km)
備考
  黒部五郎岳 2,839.58  三等
「黒部」
 西北西 4.8 別名が中ノ俣岳
日本百名山
  鷲羽岳 2,924.19  三等
「中俣」
 北北東 3.8 日本百名山
  三俣蓮華岳 2,841.23  三等
「三ツ又」
 北 2.0 三県境(富山・岐阜・長野)
日本三百名山
  双六岳 2,860.29 二等
「中俣岳」
  0 双六小屋
花の百名山
  樅沢岳 2,755  東南東 1.9 西鎌尾根
  弓折岳 2,592 (三等)
2,588.37
 南南東 2.6 花の百名山
  槍ヶ岳 3,180  東南東 6.4 日本百名山
  笠ヶ岳 2,897.48 二等
「笠ケ岳」
 南南西 7.1 日本百名山

源流の河川編集

以下の源流となる河川日本海へ流れる[24][34]。双六小屋のある鞍部は、湯俣川のモミ沢と双六谷との分水嶺となっている。西側の山麓の高原川支流である双六川には北陸電力の双六ダムがある。

  • 湯俣川 - 高瀬川の支流
  • 双六谷、蓮華谷 - 金木戸川(高原川の支流)、高山市により『双六渓谷』が新高山市100景の一つに選定されている[35]

交通・アクセス編集

西山麓周辺の国有林では名古屋営林局神岡営林署により、双六・金木戸森林鉄道が運営されていた[注釈 4]

双六岳の風景編集

双六岳は笠ヶ岳などとともに飛騨の名山として知られ[5][6]、山頂はなだらかで女性的な山容である[23]

メディア編集

関連書籍編集

  • 三宅岳 『雲ノ平・双六岳を歩く』 山と溪谷社〈フルカラー特選ガイド(22)〉、2000年4月、改訂第5版。ISBN 4635170918

文学編集

  • 小池義清『双六岳』(短歌集)
双六の 小屋を守りつつ 髭のびて 氈鹿(かもしか)の胴丸 まとへり吾は — 小池義清『双六岳』

写真集編集

  • 小池潜 『愛しき山稜―双六岳をめぐりて 小池潜写真集』 山と溪谷社、2003年4月ISBN 4635546365

DVD編集

テレビ番組編集

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 山頂部の高山帯を含も大部分の山域は中部山岳国立公園の特別保護地区、南西山腹の区域はその特別地域の指定を受けている。
  2. ^ 上宝村の村会議員でもあった小池義清はアララギ派土屋文明に師事し、短歌集『双六岳』を出版している。
  3. ^ 双六岳から山小屋までの距離は、登山経路上の距離ではなく、2地点の直線距離。
  4. ^ 双六・金木戸森林鉄道は1930年(昭和5年)から運行が始まり、1963年(昭和38年)に全路線が廃止された。

出典編集

  1. ^ a b c d 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2011年1月6日閲覧。
  2. ^ a b 日本の主な山岳標高(岐阜県の山)”. 国土地理院. 2011年1月6日閲覧。
  3. ^ a b 中部山岳国立公園区域の概要”. 環境省. 2013年9月30日閲覧。
  4. ^ a b 田中澄江 (1997)、232-234頁
  5. ^ a b 岐阜県山岳連盟 (1987)
  6. ^ a b 双六岳”. 高山市. 2013年9月30日閲覧。
  7. ^ a b c d e 柳原修一 (1990)、188-195頁
  8. ^ a b c d e f 日本山岳会 (2005)、925-927頁
  9. ^ a b 飛騨山岳会 (2010)、14-15頁
  10. ^ 2010年(平成22年)9月29日、NHK総合テレビジョンNHKニュースおはよう日本』の特集「天空の尾根から中継・絶景広がる北アルプス」内の双六岳からの中継
  11. ^ 山の便利手帳 (2010)、330頁
  12. ^ 田部重治 (1996)、189-197頁
  13. ^ a b c d 日本の山1000 (1992)、408頁
  14. ^ a b c d e 金子博文 (1987)、118-121頁
  15. ^ 岐阜県レッドデータブック(改定版)・昆虫類”. 岐阜県 (2010年8月). 2013年9月11日閲覧。
  16. ^ 三宅岳 (2000)、86-89頁
  17. ^ 「花の百名山」第7巻 (2002)
  18. ^ 花の百名山地図帳 (2007)、159頁
  19. ^ 鈴木昇己 (1992)、96-100頁
  20. ^ 双六池畔のコバイケイソウと笠ヶ岳”. 高山市. 2013年9月30日閲覧。
  21. ^ 三宅岳 (2000)、63頁
  22. ^ 三宅岳 (2000)、102頁
  23. ^ a b c d e 渡辺幸雄 (2000)、200-222頁
  24. ^ a b c 山と高原地図 (2013)、地図表面
  25. ^ 島田靖 (2009)、54-57頁
  26. ^ 島田靖 (1998)、90-93頁
  27. ^ 北アルプス夏山情報”. 岐阜県. 2013年9月30日閲覧。
  28. ^ 北アルプス双六小屋”. 双六小屋. 2013年10月1日閲覧。
  29. ^ 小池潜 (2003)、106頁
  30. ^ 小池潜 (2003)、108頁
  31. ^ 三宅岳 (2000)、131頁
  32. ^ 山の便利手帳 (2010)、160-161頁
  33. ^ 渡辺幸雄 (2000)、17頁
  34. ^ a b 日本山名辞典 (1992)、276頁
  35. ^ 双六渓谷”. 高山市. 2013年9月30日閲覧。
  36. ^ NHKアーカイブス保存番組詳細 花の百名山 双六岳 トウヤクリンドウ(1995年10月10日放送)”. NHK. 2013年10月2日閲覧。
  37. ^ https://hh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20151117-11-05063
  38. ^ https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92409/2409264/index.html

参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集