夕凪の街 桜の国

夕凪の街 桜の国』(ゆうなぎのまち さくらのくに)はこうの史代による日本漫画原爆投下後の広島市を描いた作品で、双葉社より発刊された。全98頁。

夕凪の街 桜の国
漫画:夕凪の街
作者 こうの史代
出版社 双葉社
掲載誌 WEEKLY漫画アクション
発売日 2003年9月
漫画:桜の国
作者 こうの史代
出版社 双葉社
掲載誌 漫画アクション
発売日 2004年7月
漫画:夕凪の街 桜の国
作者 こうの史代
出版社 双葉社
発売日 2004年10月12日
ラジオドラマ
原作 こうの史代
演出 真銅健嗣
放送局 NHK-FM放送
番組 FMシアター
発表期間 2006年8月5日 22:00 - 22:50
小説:小説 夕凪の街 桜の国
著者 国井桂
出版社 双葉社
発売日 2007年7月3日
その他 映画のノベライズ
小説:ノベライズ 夕凪の街 桜の国
著者 蒔田陽平
出版社 双葉社
発売日 2017年7月22日
その他 漫画のノベライズ
映画
原作 こうの史代
監督 佐々部清
制作 「夕凪の街 桜の国」製作委員会
封切日 2007年7月28日
上映時間 118分
テンプレート - ノート

2007年に映画化された。映画の公開は2007年7月28日。原爆が投下された広島市では、2007年7月21日から先行公開された。

2007年には映画版を基にしたノベライズが出版され、2017年には原作漫画を基にしたノベライズが出版された。

目次

概要編集

夕凪の街」は、1955年(映画・小説版では1958年)の広島市基町にあった原爆スラム(「夕凪の街」)を舞台にして、被爆して生き延びた女性の10年後の、心の移ろう姿と、原爆症に苛まれるという当時の広島市民を突如襲った現実を描く。

桜の国」は、第一部と第二部に分かれている。主人公は被爆2世の女性。第一部は1987年の春、舞台は東京都中野区および当時の田無市。第二部は2004年の夏、舞台は西東京市および広島市など。映画・小説版では、第二部(2007年の夏)を中心に(※第一部は回想シーンの1つとして)再構成されている。

「夕凪の街」と「桜の国」第一部・第二部の3つの話を通して、3世代にわたる家族の物語が繋がっている。三編とも、主人公に思い出したくない記憶があり、それがふとしたきっかけで甦る・・・という底流を共有しつつそこで終わらず、原爆に後世まで苦しめられながらも、それでもたくましく幸せに生きてきた戦後の日本人を描いている。「一般庶民にとっての原爆」を真正面から扱った作品ではあるものの、原爆当日の描写はわずか数ページしかなく、原爆の重い影を背負いつつ過ぎていく日常を、あくまで淡々と描写するスタンスを取っている。

大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』などを参考にあげており、タイトルは広島出身の作家大田洋子の原爆と原爆スラムの人たちに関するルポルタージュ的な小説作品である「夕凪の街と人と」と、太平洋戦争直前の小説家デビュー作「櫻の國」を下敷きにしているが[1]、内容的にそれらとの直接の関連はなく、登場人物に特定のモデルが存在しているわけではない。ただし前者については「原爆スラム」が舞台になっている点で共通している。これに対し後半部と「櫻の國」との関係はタイトルが同じという以外の共通点はない[注釈 1]

評価編集

2004年度(第8回)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞[2]、第9回(2005年手塚治虫文化賞新生賞[3]を受賞した。

それ以外にも朝日新聞で2週にわたって絶賛され、月刊誌『ダ・ヴィンチ』で編集者総出で勧める「絶対はずさないプラチナ本」として掲載、フリースタイル刊『このマンガを読め! 2005』で第3位になるなど、著者にとって最大のヒット作となっている。日本国外でも高い評価を得ており、韓国台湾フランスイギリス米国オーストラリアなどで翻訳版が出版されている。韓国版のみ「原爆投下は止むを得なかった」との注意書きが足されている[4][5]。ドイツでも出版が検討されている。

ストーリー編集

夕凪の街編集

1955年(昭和30年)、夏。平野皆実は建設会社の事務所で働きつつ、原爆スラムのあばら家で母親のフジミと暮らし、疎開先の養子となり遠く離れて暮らす弟・に会いに行くための旅費を貯めている。現在はごく平凡な社会人として過ごしつつも、いまだに広島での被爆体験を自分の中で消化し切れない皆実は、原爆を落とした側から死ぬようにと望まれた一人として、今も生き延びていることに胸を張れずにおり、生者の側にいる自分に違和感を感じていた。ある日皆実は、同僚の打越豊から回りくどい形のプロポーズを受けるが、原爆によって全てを失った日の光景が蘇り、助けを求める大勢の人々や、命を落とした家族を見捨てて逃げ延びようとしているという罪悪感から、その場を走り去る。

皆実が負い目を感じる相手は既に全員が亡く、自分が忘れてしまえば済むことだと独白する皆実だが、逡巡の末に自分の被爆体験を打越に打ち明ける決意をする。打越は皆実の懺悔を受け入れ、皆実は安堵するが、その日を境に皆実は体調を崩す。体調は次第に悪化していき、やがて足腰は立たなくなり、何も食べられなくなり、血反吐を吐くようになり、目も見えなくなり、激痛に苛まれ、自分の状態も周囲の状況も分からない。皆実は死の床で、あの日、自分たちの死を望んで広島に原子爆弾を落とした人は、こうしてまた一人殺せたことを喜んでくれているだろうかと自問し、自分は生き延びた側だと思ったのに、そうではなかったのだと独白する。この物語はまだ終わらないという説明の後、真っ白なページが示され、結論は読者に委ねられる。

桜の国(一)編集

1987年(昭和62年)、春。石川七波は東京暮らしの小学生。進級してクラスが変わっても新しい友達とすぐ打ち解け、近所に住む利根東子とはクラスが違っても関係が続いている。しかし家に帰れば鍵っ子で、弟の凪生は持病で長期入院しており、祖母のフジミは凪生の見舞いで、父の旭は仕事で留守である。七波は時々野球のチームの練習に参加するくらいで、宿題の連絡帳にはいつも同じ内容しか書くことがない。ある日野球の練習中にボールが当たってしまい、鼻血でリタイヤすることになった七波は、練習を抜け出し、偶然遭遇した東子と共に凪生の見舞いに行く。拾い集めた桜の花びらを病室に散らし、病室から出ることができない弟を励ます七波だが、フジミに見つかり怒られてしまう。帰り道に鼻血のことを訪ねられ、ふざけて仮病で応じる七波だが、フジミに頬をつねられる。父からも怒られると思った七波だが、その日の家の空気に微妙な違和感を感じる。

実は病院での検査の結果が思わしくなかったフジミは、その年の夏に亡くなる。七波も秋に後味の悪い思い出の残る桜並木の街から引っ越し、東子とは疎遠になる。

桜の国(二)編集

2004年(平成16年)、夏。28歳になった七波は、このところ父の旭が散歩と称して何日も戻らなかったり、貯金を使い込んだりしていることに不信感を抱く。こっそりと父を尾行していた七波は、疎遠になっていた東子と再会し、成り行きで一緒に父を追って夜行バスで東京を発ち、広島に到着する。旭の目的は生家である平野家の墓参りであった。

物語は旭と七波の回想を行き来しつつ、旭と、亡き妻との馴れ初めから死別までの過去を描いていく。広島の大学に通うことになり母のフジミを頼って養家から故郷へと戻ってきた旭は、近所に住む中学生だった太田京花に勉強を教えるようになる。年月を経て、大人に成長した旭と京花は互いに結婚を意識する間柄となるが、フジミは、疎開で被爆を免れた旭が被爆者の京花と結婚することに難色を示し、自分は原爆症で人が死ぬのをこれ以上見たくないと訴える。七波にとっても、血を吐いて倒れた母の京花との死別の記憶はトラウマになっていた。しかし七波には、旭が京花に回りくどくプロポーズし笑い合う二人の姿を見て、この二人の子供になることを望んだという、あるはずのない記憶があるのだった。

東京へ戻る帰路で七波は、結局のところ若くして亡くなった母も、老いて亡くなった祖母も、死因が原爆症がどうかは定かではないのに、自分たち姉弟が被爆者二世であるために、いつ死んでもおかしくない人間のように扱われることに複雑な思いを巡らせる。同時にそれは自分が今まで、母や祖母の思い出から距離を置こうとしていたのと同じだと独白する。東京に戻った七波は、母と祖母の死の記憶から戻ることを避けていた故郷の桜並木の街を訪れ、また被爆者二世であることを理由に東子の両親から交際を反対されていた弟の凪生を焚きつけ、二人の恋路を応援する。帰り道、七波は父と遭遇するが、尾行のことはばれていた。その夏が旭の姉で七波の伯母、平野皆実の五十回忌であったことが明かされて、物語は終わる。

登場人物編集

「演」の記述は映画版

夕凪の街編集

平野皆実(ひらの みなみ)
演 - 麻生久美子
本作の主人公。原作では平野家次女、映画・小説版では平野家長女である。
1945年8月6日に、広島市で原爆の被害に遭うが、生き残る
その後、水戸市に住む伯母(石川家)の支援を得て勉強した後、建築設計事務所「大空建研」の事務員に就職。母・フジミと2人で夕凪の街(旧・相生通り、通称・原爆スラム)のあばら家で暮らし、実弟・旭と再会するために石川家に行くことを目標に、草履作りのため竹の皮を集めるなど倹約生活を送る。
人前では明るく気丈に振る舞うが、原爆投下直後の修羅場の中で多くの人々を見捨てて生き延びたことに罪悪感を抱き、左腕と左のこめかみの大きな火傷跡に対してコンプレックスを持っている。
打越からの求婚を受け、生き残った自分自身を許せるようになった直後に原爆症を発症し[注釈 2]、1955年9月8日に死去。享年23(映画・小説版では1958年8月25日、26歳で他界)。
平野フジミ(ひらの フジミ)
演 - 藤村志保
平野姉弟の母。夕凪の街で洋服の仕立てや修理をして暮らす。被爆の影響で1ヶ月ほど目が見えなかったため、直後の惨状は目の当りにしていない。
石川旭(いしかわ あさひ)
演 - 伊崎充則
皆実の実弟。旧姓:平野。原作では病床の皆実が聞いた声のみの登場。1945年の初夏(原爆投下のおよそ1ヶ月前)に石川家へ疎開したため、平野家では唯一被爆していない。
終戦から5年後(映画・小説版では7年後)、皆実とフジミが迎えに来た際に広島へ帰るのを拒み、そのまま石川家の養子となる[注釈 3]
以来、手紙のみで皆実・フジミと交流してきたが、皆実の危篤を受け広島へ向かい、対面を果たす。映画・小説版では、河川敷で皆実と幼少期の思い出を語り合う。また、その際に打越と初めて出会い、彼とともに皆実の最期を見届ける。
打越豊(うちこし ゆたか)[注釈 4]
演 - 吉沢悠 / 50年後 - 田山涼成
大空建研に勤務する広島東洋カープファンの会社員。フジミによれば天満の若い頃に似ており、彼女の予想通り、50年後である「桜の国・第二部」で旭と対面した際には、天満と同じくハゲている。
皆実に想いを寄せ親しい仲になる。広島市に住んでいた叔母が被爆死していることから、原爆に関する記憶に苦しむ皆実についても理解を示す。
皆実に求婚した直後に彼女が病に伏せ、見舞いに通い臨終に立ち会う。
古田幸子(ふるた さちこ)[注釈 4]
演 - 桂亜沙美
大空建研での皆実の同僚。職場の向かいにある「フタバ洋装店」のショーケースにあったワンピースに憧れ、皆実に協力してもらい自作する。皆実が病臥に伏し死去する直前には、他の同僚たちと何度か見舞いに訪れる。
「桜の国・第二部」では、皆実の五十回忌を機に訪ねてきた旭と語り合う。映画・小説版では皆実と一緒に作り上げた思い出のワンピースを大切に保管し続け、当時の彼女との思い出を語る。
太田京花(おおた きょうか)
演 - 小池里奈
皆実の家の近所に住む小学生。「夕凪の街」では原作においての登場は無く、映画・小説版にのみ登場。太田家の家事をこなす。性格はおっとりしており、皆実に気に入られている。
平野天満(ひらの てんま)
平野姉弟の父。映画版で、旭が持っていた写真ではハゲている。映画・小説版では建築会社に勤務しており[注釈 5]、横川町にあった職場で被爆し1945年8月7日に死去。骨すら見つからないまま8月6日に死亡として処理されている。享年41。
映画・小説版においては、「大空建研」の社長として登場する竹内氏とは同僚とされている。
平野霞(ひらの かすみ)
皆実の2歳上の姉。原作にのみ登場。被爆した翌日の8月7日に皆実・フジミと再会するが、2ヶ月ほどたった1945年10月11日に被爆の後遺症により15歳で死去。
平野翠(ひらの みどり)
皆実より1歳下の妹。原作においては被爆時の状況は記述されておらず、結局自宅に戻らないまま1945年8月6日に死亡として処理されている。映画・小説版では、被爆後に壊滅した広島市内で皆実と偶然再会し、皆実に背負われたまま息を引き取る。原作では12歳、映画・小説版では10歳で死去。

桜の国編集

石川七波(いしかわ ななみ)
演 - 田中麗奈/少女時代 - 小松愛梨
本作の第一部、第二部を通して主人公。夕凪の街の主人公である皆実の姪にあたる。原作では1976年生まれ。第一部では小学校5年生、第二部では28歳の会社員。
苗字のせいで、小学生時の同級生からは「ゴエモン」とあだ名される。野球好きで、広島東洋カープのファンであり、小学生時は少年野球チームにおいてショートを守る。男勝りな性格で、小学生時の将来の夢は東子のようなおとなしい子になることだったが、すぐに頓挫する。父・旭によれば、どことなく皆実に似ている。
祖母の死後、弟の通院先の近くに住むため、「桜並木の街」である東京都中野区松が丘から同田無市(現・西東京市)に転居する。
母・京子と祖母・フジミを失った場所であることなどから、東子を含めて「桜並木の街」のことを拒絶してきたが、東子と一緒に、広島を旅する旭を尾行する中で考えが変わり、「桜並木の街」と和解する。
石川凪生(いしかわ なぎお)
演 - 金井勇太
七波より1~2歳下の弟(映画・小説版では27歳)。第一部では喘息で入院しているが[注釈 6]、第二部では喘息は回復し研修医となっている。勤務先でのあだ名は姉と同じく「ゴエモン」。赴任した病院で東子と再会して恋仲となるが、彼女の両親から反対され東子に手紙で別れを告げる。しかし、事情を知った七波の後押しを受け、改めて東子と向き合う。
平野フジミ(ひらの フジミ)
原作第二部及び映画・小説版では回想シーンのみ登場。息子の旭の結婚と転勤に伴い「桜並木の街」へ転居する。夫と娘3人に先立たれ、自分だけが生き延びたことに罪悪感を抱いている。「夕凪の街」に在住時は、手伝いに訪れる京子を気に入っていたものの、息子が京子と結婚することについては、知り合いが原爆症で死ぬ姿を見たくないという理由で、当初は反対していた。1987年の春、孫・凪生の看護で通院する日々を送るなか発病し、同年の8月27日、80歳(映画・小説版では1990年9月27日、83歳)で病死。病床においては、孫の七波を、末娘の友達と混同していた。
石川旭(いしかわ あさひ)
演 - 堺正章
七波と凪生の父。第二部では会社を定年退職した後で、自分と子供たちの3人暮らし。石川姓なのは、被爆者と縁を断ちたいと願う実母・フジミの希望で伯母の石川夫婦に養子縁組されたことや、(小説版によれば)広島の大学へ進学する際に「石川の姓を名乗り続けてほしい」と養母でもある伯母に泣かれたためである。広島の大学への進学を機に、「夕凪の街」で実母と暮らす。そこで京花と出会い、彼女に勉強を教えたり元春に野球を教えたりする。十数年後、実母の許しを得たことと、東京への転勤を機に京花に求婚し結婚。実母と妻とともに「桜並木の街」に転居する。
退職後、携帯電話の料金が増えたり、何も告げずに突然どこかに行き数日間帰らなくなるが、実は何度も広島へ行き、実姉・皆実の生前について、彼女にゆかりのある人々に聞いて回っていた(一方で、合コンサークルにも参加している)。
娘に彼氏ができないことを嘆くとともに、早逝した皆実のかわりに幸せになってほしいと望んでいる。
石川京花(いしかわ きょうか)
演 - 粟田麗
七波と凪生の母。旧姓:太田。原作では第二部の回想シーンのみ姿を現す。旭より6歳下で、フジミによれば「ちょっととろい子」。生まれて間もないころに被爆し、小学5年頃に父を亡くし、兄・元春[注釈 7]と「夕凪の街」に暮らす。フジミを手伝うために時折平野家を訪れていたが、指先が器用で裁縫が得意であることから平野家の家業の洋服直しを手伝うようになる。兄の結婚を機に独立するため、洋品店に住み込みの御針子として就職する。
東京への転勤が決まった旭からの求婚を受け結婚し、「桜並木の街」に転居する。1983年、38歳の時に自宅で吐血し倒れ[注釈 8]、同年死去。小説版においては、死後、水戸にある石川家の墓に弔われる。
利根東子(とね とうこ)
演 - 中越典子/少女時代 - 飯島夏美
第一部では石川家が住む「桜並木の街」の団地の向かいの戸建てに住む。七波とは同学年で親友であるものの、七波が転居してから17年間、会うことは無かった。七波によれば京花に似ており、おしとやかな性格でピアノが得意。小学生時は将来は母が通った私立女子校を卒業し、ピアニストになることを夢見ていたが、七波に連れられ入院中の凪生の面会に行ったことで考えが変わる。
第二部では看護師となり、研修医として赴任してきた凪生と交際を始めるが、凪生が幼少時に喘息だったことや被爆二世である理由で両親から反対される。凪生から別れを告げられた後、辞表を出し凪生に会いに行く途中で七波と偶然再会し、旭の乗った広島行きの高速バスに強引に七波を連れて乗る。
初めて訪れた広島で、平和資料館での衝撃的な展示の数々に気分を悪くするが、広島の街のや人々の過去を理解し、凪生の家系の被爆のことを受け入れる決意をする。

家系・相関図編集

平野天満
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
皆実
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
フジミ
 
 
 
旭(石川家へ)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
七波
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
凪生
 
 
 
 
 
(小学校の同級生)
 
 
 
 
太田元春
 
 
 
 
 
 
(恋仲)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
京花 利根東子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

登場人物名の由来編集

登場人物の名前の一部は広島市の町名より取られている。

  • 平野 - 広島市中区平野町
  • 平野天満 - 広島市西区天満町(天満川もある)
  • 平野フジミ - 広島市中区富士見町
  • 平野霞 - 広島市南区
  • 平野皆実 - 広島市南区皆実町
  • 平野翠 - 広島市南区
  • 打越 - 広島市西区打越町
  • 古田 - 広島市西区古田地区。古江・山田の2地区の総称。現在は行政上正式な地名ではないが、地元住民には今もこの地名を使う人が多く、小学校や公民館、新興住宅地(古田台)等の名前にも使われている。
  • 石川(旧姓平野)旭 - 広島市南区
  • 太田 - 太田川
  • 石川(旧姓太田)京花 - 京橋川。京子では東子と混同するので京花とした[9]
  • 太田元春 - 元安川安芸毛利家の武将に吉川元春がいる。

舞台編集

劇中には幾つかの実在の建物や駅名、公園などが実名で登場している。架空の名称が使われているものもある。また単行本の末尾には解説として、物語の舞台や登場する事物に関する注釈、および広島市中心部の地図が掲載されており、物語の舞台について解説されている。

夕凪の街(舞台)編集

桜の国(舞台)編集

劇中歌編集

夕凪の街(劇中歌)編集

桜の国(劇中歌)編集

その他編集

  • 「夕凪」とは、海岸地方において夕方に起こる。『夕凪の街』のラストシーンは、死の床にある皆実が、夕凪が終わって風が出てきたことを感じる場面で幕を下ろす[注釈 12]
  • 劇中で皆実が勤務する「大空建研」という会社の社名は、作者であるこうのの父親が経営していた実在の会社がモチーフ[16]。こうの自身がインタビューで語ったところによれば、実在の会社は「おおぞら建研」という社名で[16]、広島市西区庚午に実在し[16]、1階が事務所で、2階、3階には作者のこうのの実家がある[16]。ただし劇中に登場する「大空建研」は、単行本巻末の地図によれば広島市中区舟入に所在する設定になっており[34]、モチーフとなった会社がそのまま登場しているわけではない。なお劇中で「大空建研」が所在する雑居ビルの下に看板を出している「の乃野屋」は、作者の同人サークル名。「の乃野屋・おおぞら建研」の看板のあるビルは、同作者の他の作品にも登場している。
  • 後に4コマ「みなみさんの休日」シリーズでこの作品のセルフ・パロディを発表している。南国の離島育ちの「浦島みなみ」とそのいとこである平野家の「霞・翠・旭」の三兄弟の珍騒動を描いている。
  • 単行本のカバーの下の表紙裏表紙は「夕凪の街」のみを同人誌として発行したときのもの。桜は描かれていない。

ラジオドラマ編集

2006年8月5日NHK FMラジオ放送FMシアター」にて放送。脚色:原田裕文、音楽:長生淳、演出:真銅健嗣。

出演編集

受賞編集

一人芝居編集

2006年8月6日夕方に、島根県津和野町在住の当時17歳の女子高生が、広島市中区の本川左岸「基町ポップラ通り」にて「夕凪の街」を一人芝居で演じた[35]

プラネタリウム編集

2010年4月24日(土)から9月5日(日)まで、広島市こども文化科学館(広島市中区)にてプラネタリウム作品として投影された。同館の開館30周年記念番組[36]

同館作品としては唯一原爆をあつかったものとなり、原作の絵130枚を使い「桜の国」をメインに「夕凪の街」を回想シーン的につなげる形で構成された。プラネタリウム作品ではあるが星空紹介は旭が幼い京花に星座を教えるシーンの5分のみという異例の構成。全体は約50分間。企画は、広島電鉄の研究でも著名な同館の加藤一孝館長(企画時、投影時は定年退職後)。原作のこうの史代が監修をしている。主人公の七波の声優は高野志穂が、旭は柴田光彦、皆実は若井なおみがつとめた。

なお、広島市こども文化科学館は、「夕凪の街」の舞台となった原爆スラムのあった土地に隣接している。

映画編集

夕凪の街 桜の国
監督 佐々部清
脚本 佐々部清
国井桂
原作 こうの史代
製作 松下順一
出演者 田中麗奈
麻生久美子
吉沢悠
音楽 村松崇継
撮影 坂江正明
編集 青山昌文
製作会社 「夕凪の街 桜の国」製作委員会
配給 アートポート
公開   2007年7月28日
上映時間 118分
製作国   日本
言語 日本語
テンプレートを表示

監督は佐々部清2007年7月28日公開。広島県内では7月21日から先行公開された。また、讀賣テレビ放送では制作に関わっていたことと原爆を題材にしたことから、公開から間もない2007年8月深夜に放送された。

スタッフ編集

受賞編集

書誌等情報編集

コミックス
ノベライズ
ミュージック
  • 映画版サウンド・トラックCD(2007年7月11日発売)TECD-28545
映像
  • 映画版DVD(2008年3月28日発売) TBD-1149(オリジナル版)
  • 映画版DVD(2012年6月29日発売) TBDL-1149(再リリース版)

脚注編集

注釈編集

  1. ^ 大田洋子の『櫻の國』は、国家総動員法による知識階級総動員体制の1940年に発表された、いわゆる戦意高揚小説である。
  2. ^ 劇中には医者が皆実の症状が何であるかを判断しかねている場面があり[6]、「原爆症である」と診断される場面こそないものの、作者は巻末の解説でこの結末を、皆実が10年前に原爆を受けたことによるものと明言している[7]
  3. ^ 小説版では、広島行きを拒んだ理由として、被爆直後の広島を特集した写真雑誌を偶然目にしてしまい、「自分もああなっていたかもしれない。もう家も家族も友達も昔のままではない。」と「ヒロシマ」そのものに対するトラウマによるものとされている。
  4. ^ a b 原作では姓のみで名は出ない。
  5. ^ 原作では職業に関する記述は無い。
  6. ^ 七海が5年生時の秋に退院し通院治療になった。
  7. ^ 原作では回想シーンに後姿で一コマのみ登場している。第二部においては登場シーンは無いが、七海によれば宮島界隈に住んでいる。
  8. ^ 劇中では、被爆したことが原因かどうかは「誰も教えてはくれなかった」とされている[8]
  9. ^ 旭が京花と結婚する直前から、『桜の国』第2部で七波と東子が広島を訪れるまでの間に店名が変わっていることが、同一ページ内に描かれた同じ構図のコマによって示されている[18]
  10. ^ 作者のこうの自身はインタビューの中で、何らかの意図を考えて入れたわけではなく、執筆当時の住居から近い位置にあったこの建物を「面白い景色」という理由で描いたとしている[22]。一方で、こうのへのインタビューを行った吉村和真[22]、「桜の国」第1部に4回、第2部に2回登場するこの建物について、作者の真意にかかわらず、読者の抱く「ヒロシマ」を想起させる描写になっていると評した[21]
  11. ^ 劇中には帰りの夜行バスの車窓から旧広島市民球場越しに小さく原爆ドームが見える場面があるが[29][30]、作者のこうのによれば、これは広島駅ではなく広島バスセンターから夜行バスに乗車したときにだけ垣間見える風景が基になっているとされる[22]。なお旧広島市民球場は2010年に解体されているため、それ以降はこの光景を実際に見ることはできない[31]
  12. ^ ただし作者は単行本巻末の解説にて、同場面にある「水戸からの特急列車で弟の旭と伯母が到着した」という描写から、時間的には皆実が夕凪だと感じていたものは実は朝凪のはずであり、視力を失っていたために夜だと勘違いをしたのだとしている[11]

出典編集

  1. ^ 水島裕雅 (2005年). “戦争と女性作家 ―大田洋子を中心として―”. 広島に文学館を!市民の会. 2008年5月4日閲覧。
  2. ^ 2004年 文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 大賞 夕凪の街 桜の国”. 文化庁メディア芸術プラザ. 2007年12月1日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年5月4日閲覧。
  3. ^ 第9回朝日新聞手塚治虫文化賞 新生賞”. asahi.com. 朝日新聞社. 2005年6月17日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年5月4日閲覧。
  4. ^ 隅田佳孝 (2005), “被爆描いた漫画 韓国で翻訳出版”, 朝日新聞 (朝日新聞社) 2005年10月14日付夕刊: 第15面 
  5. ^ 『複数のヒロシマ』, p. 387.
  6. ^ 単行本, p. 31.
  7. ^ 単行本, p. 100.
  8. ^ 単行本, p. 86.
  9. ^ こうの史代. “野々村さんの書評への補足(こうの史代ファンページ掲示板より)”. 2008年7月9日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年5月4日閲覧。
  10. ^ 単行本, pp. 27,100.
  11. ^ a b c d e f g 単行本, p. 100, §解説.
  12. ^ 単行本, pp. 9,71,100.
  13. ^ a b 単行本, pp. 21,100.
  14. ^ 単行本, pp. 22,100.
  15. ^ 単行本, pp. 7,17,28.
  16. ^ a b c d e 『複数のヒロシマ』, p. 358.
  17. ^ 単行本, pp. 4,18-19,83.
  18. ^ a b 単行本, p. 83.
  19. ^ 単行本, pp. 37,100.
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  30. ^ 『複数のヒロシマ』, pp. 178,377.
  31. ^ 『複数のヒロシマ』, p. 178.
  32. ^ 単行本, pp. 9,100.
  33. ^ 単行本, pp. 30,100.
  34. ^ 単行本, p. 101, §広島市中心部地図.
  35. ^ CAQポップラ2006 「夕凪の街」を一人芝!
  36. ^ 広島市こども文化科学館プラネタリウム「夕凪の街桜の国」紹介ページ(2010年5月7日時点のアーカイブ

参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集