ギリシア料理
ギリシャ料理(ギリシャりょうり)とは、ギリシャおよびその周辺で供される料理。

ズッキーニとジャガイモのムサカ
解説編集
オリーブ油の強い風味とのバランスを取るためにしばしば料理にトマトで酸味を加えることが多い。なお、新大陸を原産地とするトマトが伝来する以前は酢を用いていた。
ギリシャ料理は野菜の使い方が多彩である点にも特徴を持つが、これはギリシャではギリシャ正教会の戒律により肉食を禁じられる期間が非常に長いからである(斎を参照)。ちなみに1950年代までは多くのギリシア人にとって週2回以上肉を食べることは稀であった。その一方で、タコやイカ、巻貝、魚卵の消費が多い。
またバルカン半島や中東同様、酒を飲みながらメゼという前菜をつまむ習慣もある。
他国の料理との共通性編集
ギリシア料理は地中海料理の一種だが、イタリアや南フランスの地中海料理のみならずトルコ料理やレバノン料理など東地中海地方の料理との共通点も多い。これは、アナトリア半島(現在のトルコ)が長い間ギリシャ人主体の東ローマ帝国の領土であった上、近代に入ってギリシアがオスマン帝国領となり、独立後も希土戦争終結後に締結されたローザンヌ条約に従いトルコとギリシアの間で大規模な住民交換が行われるまでの約100年間は多くのギリシア人がトルコ領内に居住していたためである。
トルコ料理との共通性は、特にマケドニアとトラキア地方の料理で顕著である。600年以上もヴェネツィアとイギリスに支配されたイオニア諸島では、イタリア料理とイギリス料理の影響が強く見られる。
代表的なギリシャ料理編集
- タラモサラタ (ταραμοσαλάτα / taramosalata)
- 塩漬けのコイの卵巣をほぐし、マッシュポテトあるいは水か牛乳に浸して絞ってからほぐしたパン、オリーブ油、レモン汁、刻んだタマネギを混ぜた料理。鳥獣の肉に加え、魚肉の消費も禁じられる四旬節の期間中によく食べられる前菜である。
- ドマトサラタ (ντομάτοσαλάτα / domatosalata)
- 薄切りのトマトを皿にたっぷりと盛り合わせて、オリーブオイルをかけて食べる。タマネギのみじん切りが少々乗っていることもある。ギリシアの食事の場にはよく登場する。
- ホリアティキサラタ (χωριάτικη σαλάτα / horiatikisalata)
- トマトとフェタチーズ、薄切りのタマネギをオリーブオイル、塩胡椒、オレガノで和えたサラダ。好みで黒オリーブ、サーディンの塩漬け、ピーマン、スベリヒユ、ゆで卵などを加えてもよい。欧米ではグリークサラダとして有名。
調理中の葡萄の葉のドルマデス
- ドルマ (ντολμάς / dolma)
- イェミスタ (γεμιστά / gemista)
- トマト・ピーマン・ナスなどの野菜の中身をくり抜き、中身をミキサーにかけてオリーブオイルで炒め、米とトマトソースをかけてかき混ぜ、具を野菜に戻し、オーブンで焼いて完成となる。他国では普通ドルマと呼ばれる料理。
- ムサカ (μουσακάς / moussaka)
- 炒めてトマトソースで煮込んだ挽肉、油で揚げたナスとジャガイモを交互に重ね、ベシャメルソースをかけてオーブンで焼いた料理。アラブ料理に由来し、東地中海地方で広く見られる料理。ベシャメルソースをかけるようになったのは20世紀初めのことである。
- スーヴラキ (σουβλάκι / souvlaki)
- フェタチーズ (φέτα / feta)
- ヤギや羊の乳で作った酸味のあるチーズ。食塩水につけて保存するため、醗酵が進まない。そのまま食べる他、サイコロ状に切ったものをホリアティキサラタに加える、サガナキにする、野菜を詰めたピタのフィリングに入れるなど、色々な料理に使う。
ホリアティキサラタ、ラシティ
- サガナキ (σαγανάκι / saganaki)
- チーズ(ケファログラヴィエラ、カセリ、ケファロティリ、ハルーミ、フェタなど)を小型の浅い鉄鍋を使って油で焼いた料理。
- ザジキ (τζατζίκι / tzatziki)
- ギロ(イロ)(γύρος / gyro)
- ミンチ状にした牛肉や羊肉を固めて回転するロースターであぶり焼きし、焼けた部分を薄くそぎ落として供するドネルケバブ風の料理。ザジキ、トマト、タマネギ等とともにピタパンで包んだものがギロピタ(イロピタ)。
- カラマラキア・ティガニタ (καλαμαράκια τηγανητά / kalamarakia tiganita)
- イカフライ。胴体をリング状にしたものや、脚の部分を使う。
- ケフテス (κεφτές / keftés)
- ミートボール。小型のものはケフテデスという。小麦粉とトマトで団子を作って揚げたドマトケフテデスやコイの卵とマッシュポテトを団子にして揚げたタラマケフテデスなど、肉抜きの「ケフテデス」も多く、前菜とされる。
- パツァス (πατσάς / patsas)
- クレフティコ (κλέφτικο / kleftiko)
- 骨付きの羊肉をオリーブ油とレモン汁でマリネし、紙に包んでゆっくりと蒸し焼きにした料理。名称はギリシャ独立戦争でオスマン帝国に対しゲリラ戦を展開したクレフテスが、炊事の煙を出さないように羊を燠火(おきび)と共に土中に埋めて蒸し焼きにしたことに由来する。
- ピラフィ (πιλάφι / pilafi)
- ピタ (πίτα / pita)
- ピロスキ (πιροσκί / piroski)
- ロシア料理のピロシキから派生したファストフード。中身は挽肉、鶏肉、ハム、魚肉、ゆで卵などで、ベシャメルソースやマッシュポテトを混ぜることがある。マーマレードや果物の砂糖漬けを詰めた甘いピロスキもある。
- バクラヴァ (μπακλαβάς / baklava)
- カタイフィ (Καταΐφι / kataifi)
- ヴァシロピタ (Βασιλόπιτα / vasilopita)
- 「ヴァシレイオスのピタ」または「王のピタ」という名の、元日に食べられる円形の菓子パン。1月1日は聖人カイサリアのバシレイオスの記念日(忌日)でもある。生地にコインを入れて焼き、家族や友人と切り分けて食べる。コインが当たった人には、その年に幸運が訪れるという。
- ハルヴァ (χαλβάς / halva)
- ルクミ (λουκούμι / loukoumi)
- デンプンと砂糖などで作った餅状の菓子。
- リゾヤロ (ρυζόγαλο / ryzogalo)
- スコルダリア (Σκορδαλιά / Skordalia)
- ペーストになるまですり潰されたじゃがいも料理。フライなどの付け合せと出される。一般的な料理[1]。
ギリシアの飲料編集
- ギリシアのビール
- ドイツ人の職人がギリシアでビール醸造を始めたのでドイツ風である。ミソスなどが有名。
- ギリシアブランデー
- ギリシアコーヒー
- フラッペ
参考文献編集
- Kremezi, Aglaia. The Foods of Greece. Stewart, Tabori, and Chang, New York, 1999.
脚注編集
- ^ BS朝日 - BBC地球伝説 2015年4月2日閲覧