シリコンバレー

アメリカ合衆国カリフォルニア州北部サンフランシスコ・ベイエリアの南部に位置しているサンタクララバレーおよびその周辺地域の名称

シリコンバレー(ひらがな:しりこんばれー英語: Silicon Valley)は、北カリフォルニアに位置し、ハイテクイノベーションの世界的な中心地となっている地域である。サンフランシスコ・ベイエリアの南部に位置し、サンマテオ郡サンタクララ郡アラメダ郡にほぼ相当する[1] [2] [3]サンノゼはシリコンバレー最大の都市であり、カリフォルニア州第3位、全米第10位の規模を誇る。シリコンバレーの他の主要都市としては、サニーベールサンタクララレッドウッドシティマウンテンビューパロアルトメンロパーククパチーノフリーモントなどが挙げられる。ブルッキングス研究によると、サンノゼ都市圏の一人当たりGDPは世界で3番目に高く(スイスチューリッヒノルウェーオスロに次ぐ)[4]、2021年6月現在、100万ドル以上の住宅の割合は米国で最も高くなっている[5]

シリコンバレー
地域
SJ skyline at night horizontal.jpg
Silicon Valley, facing southward towards Downtown San Jose, 2014.jpg
Stanford Oval May 2011 panorama.jpg
上からサンノゼ、シリコンバレー南部地域上空、スタンフォード大学
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
カリフォルニア州の旗 カリフォルニア州
地域 サンフランシスコ・ベイエリア
大地域 北カリフォルニア
都市
等時帯 UTC−8 (太平洋標準時)
 • 夏時間 UTC−7 (太平洋夏時間)
シリコンバレー
サンノゼ・ダウンタウン

シリコンバレーには、フォーチュン1000に選ばれた30社以上の企業の本社を含む世界最大のハイテク企業が数多く存在し、数千社のスタートアップも存在する。また、シリコンバレーは、米国におけるベンチャーキャピタル投資の3分の1を占めており、ハイテクイノベーションの主要拠点、スタートアップエコシステムとしての地位を確立している。シリコンベースの集積回路マイクロプロセッサマイクロコンピュータなどの技術が開発されたのも、このシリコンバレーである。2021年現在、この地域では約50万人の情報技術者が働いている[6]

サンノゼやサンタクララ渓谷、さらにはベイエリアの2大都市であるサンフランシスコオークランド方面にハイテク企業が設立されるにつれ、「シリコンバレー」という言葉は、サンタクララ郡サンマテオ郡南東部を指す狭義の定義と、ベイエリア全体のハイテク企業を指す換喩的定義の2つを持つようになった。シリコンバレーという言葉は、アメリカのハイテク経済圏の代名詞としてよく使われる。また、世界的なハイテク研究・企業の代名詞となったため、同様の名前の地名や、それに匹敵する構造を持つリサーチパークやテクノロジーセンターが世界各地に存在するようになった。シリコンバレーには、多くのハイテク企業の本社があり、観光スポットにもなっている[7] [8] [9]。最近では、カリフォルニア州の干ばつが深刻化し、シリコンバレー地域の水の確保が難しくなっている[10]

歴史編集

第二次世界大戦前には現在の繁栄からは想像することが困難なくらい、目ぼしい産業は現在のシリコンバレーの地域には存在しなかった。第二次世界大戦中スタンフォード大学を中心として軍需関連の産業が勃興した。中心的な役割を果たしたのはリットンインダストリーズやアンペックスヴァリアン・アソシエイツヒューレットパッカードでシリコンバレーの黎明期に地域の人材の受け皿になった[11][12]。 その後、半導体産業の発展と共に株式公開が相次ぎ、それらの資金が地域のベンチャー企業に再投資され、正のフィードバックにより好循環が生まれ発展を続ける。

半導体は依然としてこの地域の経済の主要な構成要素で、シリコンバレーは、ソフトウェアとインターネットサービスの革新で近年最も有名になっている。シリコンバレーは、コンピュータのオペレーティングシステムソフトウェア、およびユーザーインターフェースに大きな影響を与えた。

発明家のダグラス・エンゲルバートは、NASAアメリカ空軍ARPAからの資金により、1960年代半ばと1970年代に、スタンフォード研究所(現在のSRIインターナショナル)でマウスハイパーテキストベースのコラボレーションツールを発明した。現在、「すべてのデモの母」として知られている。SRIにあるエンゲルバートのオーグメンテイション研究センター(ARC)は、ARPANETインターネットの前身)の立ち上げとネットワーク情報センター(現在はInterNIC)の立ち上げにも関わっていた。ゼロックスは、1970年代初頭から、エンゲルバートの最高の研究者を何人か雇い、次に、1970年代と1980年代に、ゼロックスのパロアルト研究所(PARC)は、オブジェクト指向プログラミンググラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)、イーサネットPostScript、およびレーザープリンターで中心的な役割を果した。

ゼロックスはその技術を使用して機器を販売していたが、ほとんどの場合、その技術は他の場所で繁栄していた。ゼロックスの発明のディアスポラは、直接スリーコムアドビにつながり、間接的には、シスコアップル、およびマイクロソフトにつながった。アップルのMacintoshGUIは、主にスティーブ・ジョブズがPARCを訪問し、その後主要な担当者を雇用した結果であった[13]。シスコの推進力は、スタンフォード大学のイーサネットキャンパスネットワークを介してさまざまなプロトコルをルーティングする必要性から生じた[14]

2010年代においても、起業志望者のほか、商機・人材の獲得やオープンイノベーションを目指す米国内外の企業が相次ぎ進出している。トヨタ自動車など日本企業も含まれる[15]

それに伴って転入・居住者が急増し、交通渋滞や住宅価格の上昇、それによるホームレス増加といった問題も起きている[16]。こうした過密への対策と、自家用自動車を持ちたがらないミレニアル世代の就労者増加により、公共交通機関の便が良いサンノゼ・ディリドン駅周辺の南部へ向けてシリコンバレーが広がりつつある[17]

2020年代になっても住宅価格の高騰に歯止めがかからず、遠距離にある安価な住宅地からの通勤も増えている[18]。このためテスラオラクルヒューレット・パッカード・エンタープライズ、トヨタ北米本社などがテキサス州へ移転している[18]

著名な企業編集

多くの先端IT企業がシリコンバレー内に本拠を置いている。以下はFortune 1000にリストされている企業である:

 
アドビ
 
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ (AMD)
 
Apple(旧本社)
 
eBay
 
Googleの本社
 
インテルの本社、ロバート・ノイスビル
 
Intuit
 
オラクル
 
Yahoo!

上記に加えてシリコンバレー内に本拠を置く著名な企業は(一部は現存しない):


大学編集

正確には以下の大学はシリコンバレーに位置していないが、近隣の研究機関としてこの地に貢献している:

シリコンバレー日系団体・組織編集

  • ジェトロ Business Innovation Center (BIC)
  • Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network (SVJEN)
  • Silicon Valley Multimedia Forum (SVMF)
  • Japan America Business Initiatives (JABI)
  • Japanese Technology Professional Association (JTPA)
  • Japan Bio Community
  • Keizai Society

その他の最先端工業地域編集

シリコンバレーの成功は、アメリカ全土に知れ渡り、経済が停滞していたアメリカにとって、IT産業の隆盛は経済復活の狼煙となった。そのため、必然的に他地方でも大手、ベンチャー企業や大学、政府などの働きかけによってIT産業が成熟する基盤が築き上げられ、そのうちの幾つかは着実に成果を上げ、成長を遂げた。それに従い、シリコンバレー各地で、大成功の象徴であるシリコンバレーに肖り、愛称や俗称が付けられているようになっている。ここに挙げているのは一部だが、英語版wikipediaを確認すると実に50箇所以上の地域が存在しており、中には基盤や育成土壌は未熟であるが、優秀なベンチャー誘致の手段として名乗っていた例も見られる。

世界のシリコンバレー編集

シリコンバレーの成功は世界的にも知れ渡り、各国でIT産業の突出した集積地に「○○○のシリコンバレー」あるいは「シリコン○○○」「○○○のバレー」異名が付けられている。自然発生的にそう呼ばれるようになった他称・通称もあれば、政府などがシリコンバレーをモデルにしていると明言している場合もある。IT以外で企業誘致や起業促進を図る地域も「○○○バレー」と呼ぶ例もある[19]

アジア編集

ヨーロッパ編集

北米・中南米編集

日本のシリコンバレー編集

日本にはシリコンバレーに当たる確定した地区はないものの、IT企業が特に集積する地区が幾つかある。ニュアンスは違うが、三大電気街をシリコンバレーと呼ぶ向きもある。

尚、1980年代には東北地方の東北自動車道沿線をシリコンロード、熊本県を中心とする九州をシリコンアイランドと呼んでいたことがあり、IC製造など電子機器産業が発達した。しかし、後にNICS(後のNIES)諸国の台頭により、企業が相次いで工場閉鎖、それに伴う衰退により、今日この呼称が用いられることは極めて稀である。

脚注編集

  1. ^ Malone, Michael S. (2002). The Valley of Heart's Delight: A Silicon Valley Notebook 1963 - 2001. New York: John S. Wiley & Sons. p. xix. ISBN 9780471201915. https://www.google.com/books/edition/The_Valley_of_Heart_s_Delight/5CnSAswh3QYC?hl=en&gbpv=1&pg=PR19&printsec=frontcover 2020年7月28日閲覧。 
  2. ^ Matthews, Glenna (2003). Silicon Valley, Women, and the California Dream: Gender, Class, and Opportunity in the Twentieth Century. Stanford: Stanford University Press. p. 2. ISBN 9780804741545. https://www.google.com/books/edition/Silicon_Valley_Women_and_the_California/qbBfBukuMMwC?hl=en&gbpv=1&pg=PA2&printsec=frontcover 
  3. ^ Shueh, Sam (2009). Silicon Valley. Charleston, SC: Arcadia Publishing. p. 8. ISBN 9780738570938. https://www.google.com/books/edition/Silicon_Valley/kQj9sq1ktn0C?hl=en&gbpv=1&pg=PA8&printsec=frontcover 2020年7月28日閲覧。 
  4. ^ Silicon Valley Business Journal – San Jose Area has World's Third-Highest GDP Per Capita, Brookings Says”. 2017年3月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月3日閲覧。
  5. ^ Kolomatsky, Michael (2021年6月17日). “Where Are the Million-Dollar Homes? - A new report reveals which U.S. metropolitan areas have the highest percentage of homes valued at $1 million or more.”. The New York Times. オリジナルの2021年12月28日時点におけるアーカイブ。. https://ghostarchive.org/archive/20211228/https://www.nytimes.com/2021/06/17/realestate/where-are-the-million-dollar-homes.html 2021年6月18日閲覧。 
  6. ^ Silicon Valley Index 2022 report”. Silicon Valley Index. 2022年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月24日閲覧。
  7. ^ Carson. “16 Silicon Valley landmarks you must visit on your next trip”. Business Insider. 2019年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月25日閲覧。
  8. ^ Tech Headquarters You Can Visit in Silicon Valley”. TripSavvy. 2019年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月25日閲覧。
  9. ^ Sheng (2018年12月3日). “Why the headquarters of iconic tech companies are now among America's top tourist attractions”. CNBC. 2019年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月26日閲覧。
  10. ^ 'Dire situation': Silicon Valley cracks down on water use as California drought worsens | Climate crisis | the Guardian”. amp.theguardian.com. 2022年6月17日閲覧。
  11. ^ 脇 英世 『シリコンバレースティーブ・ジョブズの揺りかご』東京電機大学出版局、2013年10月、第3章頁。ISBN 9784501552107 
  12. ^ 磯辺 剛彦 『シリコンバレー創世記地域産業と大学の共進化』白桃書房、2000年1月16日、第4章頁。ISBN 9784561510444 
  13. ^ Graphical User Interface (GUI) Archived October 1, 2002, at the Wayback Machine. from apple-history.com
  14. ^ Waters, John K. (2002). John Chambers and the Cisco Way: Navigating Through Volatility. John Wiley & Sons. p. 28. ISBN 9780471273554 
  15. ^ トヨタの米AI子会社、1億ドルでVC設立 ロボや自動運転で協業 日本経済新聞ニュースサイト(2017年7月12日)2018年6月14日閲覧。
  16. ^ 【新風シリコンバレー】住民が直面する生活危機『日経産業新聞』2018年6月12日(16面)。
  17. ^ 「住」に悩むシリコンバレー 南部へ膨張、家賃高騰” (日本語). 日本経済新聞 (2018年7月14日). 2021年10月8日閲覧。
  18. ^ a b テスラ本社、シリコンバレーからテキサスへ移転 マスクCEOが表明:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2021年10月8日閲覧。
  19. ^ なごやライフバレー(なごやサイエンスパーク Bゾーン)について 愛知県名古屋市市民経済局産業部次世代産業振興課(2018年5月18日閲覧)
  20. ^ WEB特集 ヨーグルトやドラキュラだけではないんです - NHK
  21. ^ 世界を狙うロシアの技術革新拠点・スコルコボ日経ビジネスオンライン(2018年3月21日閲覧)

参考資料編集

  • 枝川公一「シリコン・ヴァレー物語」(中央公論新社・中公新書、1999)
  • 東一眞「シリコンバレーの作り方」(中央公論新社・中公新書ラクレ、2001)
  • アナリー・サクセニアン『現代の二都物語 なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか』(講談社 1995)

関連項目編集