阿修羅のごとく

日本のテレビドラマ、メディアミックス作品

阿修羅のごとく』(あしゅらのごとく)は、1979年1980年NHK総合テレビで放送された、向田邦子脚本テレビドラマ。後に脚本が文庫化され、2003年に映画化(森田芳光監督)、2004年に舞台化された[1]

概要 編集

長女・綱子は夫に先立たれ生花の師匠(向田邦子の原作脚本では流派は「遠州流で」と但し書きされていた)として生計を立てている。

次女・巻子は中学生の一男一女をもつ、平凡なサラリーマン家庭の主婦。

三女・滝子は図書館の司書勤めで男っ気がまったくなし。

四女・咲子は親兄弟にも内緒で無名ボクサーと同棲している。

そんなある日、滝子が興信所に調べさせ、四姉妹の父親に愛人と子どもがいることが判明。4人は集まって母親を気遣いながら対処について話し合う。

しかし、自分たちも「秘め事」や「隠し事」を持っていて、周囲のさまざまな人を巻き込みながら疑心暗鬼が頭をもたげる。

「嫉妬」そして「男と女」。家族でちゃぶ台を囲みながら、庭先で白菜を漬けながら、日常のひとコマの中にちらっと覗く、内なる「阿修羅」。それでいてホームコメディのように人間模様を描いた作品。

テレビドラマ 編集

阿修羅のごとく
脚本 向田邦子
出演者
音楽 服部隆之
国・地域   日本
言語 日本語
放送
放送チャンネルNHK
放送国・地域  日本
放送期間1979年1月13日 - 1980年2月9日
放送枠土曜ドラマ
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1979年1月13日 - 27日にNHK総合テレビ土曜ドラマ」枠の向田邦子シリーズとして3話放送。続編をパート2として1980年1月19日 - 2月9日に同枠で4話放送。

パート1、2ともにNHKアーカイブスに所蔵されており、各地のNHK放送局にある「番組公開ライブラリー」で無料で閲覧できる。また、NHKオンデマンドでも配信された。

サブタイトルと視聴率 編集

  • パート1
    1. 「女正月」(1979年1月13日)(14.3%)
    2. 「三度豆」(1979年1月20日)(12.1%)
    3. 「虞美人草」(1979年1月27日)(13.9%)
  • パート2
    1. 「花いくさ」(1980年1月19日)(13.3%)
    2. 「裏鬼門」(1980年1月26日)(11.3%)
    3. 「じゃらん」(1980年2月2日)(10.7%)
    4. 「お多福」(1980年2月9日)(11.8%)

出典:[2]

キャスト(テレビドラマ) 編集

ゲスト 編集

パートI
第1話
第2話
最終話
パートII
第1話
第2話
第3話
最終話

スタッフ(テレビドラマ) 編集

パート1 編集

  • 制作:沼野芳脩
  • 演出:和田勉(第1、3話)、高橋康夫(第2話)
  • 美術:中嶋隆美
  • 効果:高橋美紀(第1、3話)、浜口淳二(第2話)
  • 記録:山崎清子(第1、2話)松田和子(第3話)
  • 技術:稲垣恵三(第1、3話)、森野文治(第2話)
  • 照明:内藤功(第1、3話)、栗原民博(第2話)
  • カメラ:八城徳治(第1、3話)、上原康雄(第2話)
  • 音声:渡辺秀男(第1話)、山本和夫(第2話)、藤原政雄(第3話)
  • タイトル文字:望月美佐
  • 文楽日高川(清姫):吉田簑助(第1話)

パート2 編集

  • 演出:和田勉(第2、4話)、富沢正幸

音楽 編集

ほか

映画 編集

阿修羅のごとく
Like Asura
監督 森田芳光
脚本 筒井ともみ
原作 向田邦子
製作 本間英行
出演者 大竹しのぶ
黒木瞳
深津絵里
深田恭子
音楽 大島ミチル
撮影 北信康
製作会社 東宝博報堂毎日新聞社日本出版販売
配給 東宝
公開   2003年11月8日
上映時間 135分
製作国   日本
言語 日本語
興行収入 7.9億円[7]
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2003年11月公開。監督は森田芳光。NHKドラマのパートIIまでを一つにまとめたストーリーになっている。テレビドラマで次女を演じていた八千草薫が母親役で、また同じくテレビドラマで長女を演じていた加藤治子がナレーションで出演している。エンディングと本編中にブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように」が流れる。

ストーリー(映画版) 編集

昭和54年・冬のある日、四姉妹の三女・竹沢滝子が、話したいことがあると姉妹たち(長女・三田村綱子、次女・里見巻子、四女・陣内咲子)に電話をかけ、後日姉妹たちは次女夫妻の自宅に集まる。滝子は数日前に父・竹沢恒太郎が愛人と思しき女性と子供と親しげにしていたことを四姉妹に打ち明けるが、母・ふじには黙っておくことに。

数日後、滝子は調査員の調べにより父が愛人母子を養っていたことが発覚するが、彼女の子は恒太郎の子ではなく少し安心する。しかし四姉妹も私生活でゴタゴタしており、綱子は妻帯者の男と不倫状態で、巻子は会社員をする夫に女の影を疑う。滝子は20代も終りに近いが男っ気がなく、咲子は気が多い同棲相手に振り回され、四姉妹はそれぞれに悩みを抱えていた。

数か月後のある日の朝刊に、「三姉妹の40代の主婦」による「老いた父に愛人が発覚し共白髪を信じる母が不憫。私の夫も惑いの40代だが波風を立てないのが女の幸せなのか」との投書が載る。朝刊をそれぞれの自宅で読んだ姉妹たちは、「巻子が書いたのでは」と言い出すが、彼女たちそれぞれに幸不幸が訪れ心が揺れ動く。

キャスト(映画版) 編集

三田村綱子(長女)
演 - 大竹しのぶ
45才。後家で、夫亡き後は自宅で一人暮らししている。料理屋で華道の先生をしている。貞治と不倫関係にある。自由気ままで奔放な性格で、言いたいことを胸の中に抑え気味な性格の巻子とは少々気が合わない所がある。
里見巻子(次女)
演 - 黒木瞳
41才。専業主婦。鷹男と中学生と高校生の子供2人の4人家族。心の中では思う所があってもはっきり口に出さない性格。日々夫や子供の世話や家事をこなしながら、ビーズアクセサリーの内職をして小遣い稼ぎをしている。
竹沢滝子(三女)
演 - 深津絵里
29才。図書館の司書をしている。独身で恋人はおらず、実家を出て一人暮らしをしている。成績優秀だが生真面目でお堅い性格で四姉妹の中で一番貞操観念がある。性格が合わないのかは不明だが、英光のことを嫌っている。
陣内咲子(四女)
演 - 深田恭子
25才。喫茶店でウェイトレスとして働いている。英光と同棲生活を送り、その後籍を入れて夫婦となる。末っ子ということもあり甘えん坊な性格。巻子によると子供の頃から滝子とお互いにライバル視しており色々と小競り合いをしている。

四人姉妹の両親 編集

竹沢恒太郎
演 - 仲代達矢
四姉妹の父。年は70才ぐらい。家族を愛しているが寡黙で不器用な性格。愛人である友子とその子を養い毎週火曜と木曜の午後に会社を早退して彼女のアパートで逢引を重ねる。
竹沢ふじ
演 - 八千草薫
四姉妹の母。67才。穏やかでしとやかな性格。結婚して数十年間専業主婦として恒太郎や四姉妹のために家事をこなして支えてきた。独立した娘たちの身を案じながら、恒太郎との夫婦2人の生活をのんびりと過ごしている。

四人姉妹の恋人や夫など 編集

枡川貞治(ますかわさだはる)
演 - 坂東三津五郎
妻帯者だが綱子と付き合っている。綱子に惚れ込んでおり豊子と離婚して結婚することも考えている。ただし夫婦生活では豊子に押され気味で、いざという時にやや頼りない性格。
里見鷹男(たかお)
演 - 小林薫
巻子の夫。職場では部長。自宅に四姉妹が集まって恒太郎の愛人の話をした時に自身もその場にいたため、姉妹以外で恒太郎の愛人の存在を知る人物となる。姉妹が愛人が発覚した恒太郎に戸惑う中、彼を擁護する。
勝又静雄
演 - 中村獅童
興信所の調査員。滝子に依頼されて恒太郎の愛人調査がきっかけで滝子と親しくなる。正直者で気弱な性格で少々鈍臭いがどこか憎めないタイプ。トゥレット障害かは不明だが、始終まばたきをしているのが特徴。好物はジャムパン。
陣内英光
演 - RIKIYA
咲子の同棲相手。咲子から『ひでちゃん』と呼ばれている。プロボクサーで新人王になることを目指している。ボクサーとしての愛称は、名前を音読みした『エイコー』。やや自分勝手で周りの人や場の状況を考えないで行動するタイプ。

その他(映画版) 編集

土屋友子
演 - 紺野美沙子
恒太郎の愛人。40才。小学4年生の男の子と2人暮らし。週2日、自宅アパートにやって来る恒太郎と、息子を交えて過ごしていたが、作中の後半で恒太郎に別れを告げる。
赤木啓子
演 - 木村佳乃
鷹男の秘書。有能で頭の回転が速く、落ち着いた物腰の中に色気を感じさせる女性。巻子から密かに鷹男との不倫を疑われている。
枡川豊子
演 - 桃井かおり
貞治の妻。夫婦で料理屋を営む。以前から綱子が生けた花を店内に飾らせてもらっているため顔見知り。
緒方
演 - 益岡徹
鷹男が探してきた綱子の見合い相手。見合いの席で会った綱子と付き添いの巻子に、「土地活用による資産運用や株式投資などで資産を増やすべき」と力説する。
里見洋子
演 - 長澤まさみ
里見家の長女。15歳。年の近い兄と仲が良く、作中の出演シーンでは2人一緒にいる事が多い。
ナレーション
演 - 加藤治子
本作の冒頭で「阿修羅」という言葉の意味を説明する。

スタッフ(映画版) 編集

舞台 編集

阿修羅のごとく
作者 向田邦子
  日本
言語 日本語
初演情報
公演名 阿修羅のごとく
場所 東京・ル テアトル銀座(2013年版)
東京・シアタートラム(2022年版)
初演公開日 2013年1月11日
2022年9月9日
演出 松本祐子(2013年版)
木野花(2022年版)
  ポータル 文学   ポータル 舞台芸術
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2004年版 編集

初めて舞台化され、芸術座博多座で上演された。

キャスト(2004年版) 編集

2013年版 編集

スタッフ(2013年版) 編集

キャスト(2013年版) 編集

ほかに大高洋夫中山祐一朗広瀬友祐彩夏涼山本亨伊佐山ひろ子ら。

日程・劇場 編集

2013年

2022年版 編集

スタッフ(2022年版) 編集

キャスト(2022年版) 編集

ほかに岩井秀人山崎一

日程・劇場 編集

2022年

  • 9月9日 - 10月2日 東京 シアタートラム
  • 10月8日 - 10日 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ドラマ中では「トルコの軍楽(メフテル)」と表記。

出典 編集

  1. ^ “舞台「阿修羅のごとく」9年ぶり復活”. デイリースポーツ online (株式会社デイリースポーツ). (2012年10月4日). https://www.daily.co.jp/gossip/2012/10/04/0005425008.shtml 2023年2月24日閲覧。 
  2. ^ 「テレビ視聴率季報(関東地区)」ビデオリサーチ。
  3. ^ 八千草薫 - NHK人物録
  4. ^ 風吹ジュン - NHK人物録
  5. ^ ""宇崎竜童、77歳独占告白「梶芽衣子との『曽根崎心中』の逸話」俳優人生から学んだもの". 日刊大衆. 双葉社. 12 June 2023. 2023年6月12日閲覧
  6. ^ 露口茂 - NHK人物録
  7. ^ 「2003年度 日本映画・外国映画 業界総決算 経営/製作/配給/興行のすべて」『キネマ旬報』2004年(平成16年)2月下旬号、キネマ旬報社、2004年、160頁。 

関連項目 編集

外部リンク 編集