ゴッドファーザー PART III
『ゴッドファーザー PART III』(ゴッドファーザー パート スリー、原題: The Godfather Part III)は、1990年に公開されたアメリカ合衆国の映画。監督はフランシス・フォード・コッポラ。前作より16年を経て製作された。
ゴッドファーザー PART III | |
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The Godfather Part III | |
終盤の舞台となったマッシモ劇場 | |
監督 | フランシス・フォード・コッポラ |
脚本 |
フランシス・フォード・コッポラ マリオ・プーゾ |
製作 | フランシス・フォード・コッポラ |
製作総指揮 |
フレッド・フックス ニコラス・ケイジ |
出演者 |
アル・パチーノ ダイアン・キートン アンディ・ガルシア タリア・シャイア イーライ・ウォラック |
音楽 |
カーマイン・コッポラ ニーノ・ロータ |
主題歌 |
ハリー・コニック・ジュニア 『Promise Me You'll Remember』 |
撮影 | ゴードン・ウィリス |
編集 |
リサ・フラックマン バリー・マルキン ウォルター・マーチ |
製作会社 | アメリカン・ゾエトロープ |
配給 | パラマウント映画 |
公開 |
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上映時間 |
162分(劇場上映時) 170分(ビデオソフト) 158分(『最終章』) |
製作国 |
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言語 |
英語 イタリア語 ドイツ語 ラテン語 |
製作費 | $54,000,000[1] |
興行収入 | $136,766,062[1] |
配給収入 |
13億円[2] ![]() |
前作 | ゴッドファーザー PART II |
概要
マフィアのボスとして絶大な権力を握ったマイケルの最晩年の物語である。本作品でのマイケルには『Part I』や『Part II』の時のような冷酷さや非情さが消え、物語は彼の懺悔と苦悩、弱さを中心に描かれている。
1970年代後半から1980年代に明らかになったバチカンにおける金融スキャンダルと、それに関連して起きたと噂されている1978年のヨハネ・パウロ1世の「急死」や、1982年に発生し世界を揺るがす大スキャンダルとなったロベルト・カルヴィ暗殺事件といった実在の事件がほぼそのままに近い形で作品に織り込まれている。
当初のタイトルが『マイケル・コルレオーネの死』と予定されていたように(パラマウント側が却下)、本作は三部作(トリロジー)の最終作ではなく、前二部作に対する後日談として位置づけられている[注 1]。
公開30周年となる2020年9月、フィルムと音声を修復し、新たなオープニングとエンディング及び音楽を付け加えて再構成し、タイトルを当初の構想に基づく『Mario Puzo's The Godfather Coda: The Death of Michael Corleone』としたニューバージョンを12月4日にアメリカの一部劇場で公開。8日に映像ソフト化とストリーミング配信する予定と発表された[3][4]。日本では『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』のタイトルで12月23日にブルーレイが発売される[5]。収録時間は158分と、公開版より短くなっている[6]。コッポラは今回の編集作業を振り返り、古いセーターの修復に例えて、糸のほつれを直す内に新しいセーターを編むことになったと表現した[7]。鑑賞したアル・パチーノは「良くなったと確信した」と『最終章』の出来栄えを称え、『PART III』を「好きじゃなかった」というダイアン・キートンは、再編集版を見て「人生最高の出来事のひとつ」と絶賛した[8]。
あらすじ
1979年のニューヨーク、ファミリーのドンとなったマイケル・コルレオーネは、父の名を取った「ヴィトー・コルレオーネ財団」の名の下、合法的な組織を率いていた。「シシリー復興のための資金」との名目で行った多額の寄付が功を奏してバチカンより叙勲され、同時にバチカン内の資金運営を掌るアメリカ人のギルディ大司教との関係を得る。そして、それをきっかけとして長年にわたって非合法ビジネスに関与してきた一族の活動から引退を決意するとともに、合法ビジネスへの全面的な転換を画策していた。
その後、寄付の窓口的役割を果たしたギルディ大司教と、その関係者による横領で発生した莫大な損失金の穴埋めと引き換えに、バチカンと関係の深い、ヨーロッパを中心に活動する投資会社「インターナショナル・インモビリアーレ」の株の25%の取得、そして同社の経営権の奪取への後援を得ることで、合法ビジネスへの路線変更を試みる。だが、マイケルの後継者はマイケルの息子のアンソニーではなかった。アンソニーは「優しい伯父」であったフレドの粛清がトラウマとなり、一貫してファミリーとそのビジネスを嫌悪し、大学を中退しオペラ歌手への道を進もうとしていた。
その上で、マイケルは甥っ子にあたるヴィンセント(長兄ソニーの私生児)と、ファミリーの違法ビジネスの大部分を引き継いでいった。新興ボスのジョーイ・ザザとの対立を和らげようとするものの、ヴィンセントの後見役となったマイケルとザザとの確執はかえって悪化し、アトランティック・シティのカジノホテル「パラッツォ・アズーリ」のペントハウスで行われた友好ファミリーの幹部会の最中、ザザの手下がヘリコプターを使い襲撃する。マイケルはヴィンセントの助けで難を逃れたものの、この襲撃により多くの友好ファミリーの幹部が暗殺されてしまう。この襲撃は、旧来のファミリーから低い評価しか受けていなかったザザが単独で行ったわけではなく、自らも深い利権関係を持つバチカンとの関係を深めていたマイケルの追い落としを狙ったドン・アルトベッロの指示で行われたものだった。
またこの頃、アルトベッロの友人でイタリア政界の大物、かつ「インターナショナル・インモビリアーレ」の経営陣の一人で、ギルディ大司教をはじめとするバチカン内にも強い影響力を持つドン・ルケージによって、マイケルの「インターナショナル・インモビリアーレ」の経営権の奪取は激しい妨害を受けた上、マイケルが投資した資金がギルディ大司教が資金運用を委託していたアンブロシアーノ銀行頭取のフレデリック・カインジックに横領されてしまう。さらにマイケルには、糖尿病という病魔が忍び寄っていた。病状は進行し、襲撃後には低血糖発作により崩れ落ちて入院するという深刻な状態に陥ってしまう。
マイケルの妹コニーの支援を受けたヴィンセントは、マイケルの承認を受けないまま、アトランティック・シティの襲撃の報復としてザザを暗殺する。マイケルは自分の指示を受けずに行動したヴィンセントとコニーを叱責し、ヴィンセントに勝手な行動を慎むように釘をさす。またこの頃、ヴィンセントはマイケルの娘であり従姉妹であるメアリーと恋仲になる。病状が回復したマイケルはシシリーに向かい、かつてソロッツォとマクラスキー警部を殺害した後に匿ってもらったドン・トマシーノの屋敷に滞在する。マイケルはバチカンへの工作を指示すると同時に、ヴィンセントにスパイとしてアルトベッロの元に潜入するように指示する。ヴィンセントはアルトベッロの元に近付き、一連の事態の黒幕がルケージであることを突き止める。ルケージとアルトベッロは利権を犯すマイケルを抹殺するため、殺し屋のモスカにマイケル殺害を依頼する。
同じ頃、マイケルはルケージと組むギルディを追い落として「インターナショナル・インモビリアーレ」の経営権を手に入れるため、改革派のランベルト枢機卿と手を結ぶ。その際、マイケルはランベルトに告解を行い、過去に犯した罪、特に次兄フレドを粛清した罪を告白する。シシリーに戻ったマイケルは、息子アンソニーのオペラデビューを観劇するために同行していた前妻ケイをコルレオーネに連れて行き、関係の修復を図る。二人の関係は修復したが、直後にトマシーノが何者かによって殺害され、マイケルは再び苦悩に陥る。マイケルはゴッドファーザーの地位をヴィンセントに譲り引退を決意する。ヴィンセントは「メアリーから手を引く」という条件を受け入れゴッドファーザーの地位を引き継ぎ、新法王となったランベルトの改革により失脚したルケージ、アルトベッロ、ギルディの殺害を指示する。
アンソニーのオペラデビューの日、ケイを含めたマイケル一家は総出で観劇に訪れ、マイケルを狙う殺し屋が差し向けられたことを知ったヴィンセントはその警備に当たる。同じ頃、ヴィンセントが送り込んだ刺客によりルケージ、アルトベッロ、ギルディの3人は殺害される。同時に彼らの手によってランベルトも毒殺されてしまい、また、劇場内でマイケルの警護に当たっていたヴィンセントの部下もモスカに殺されるがマイケルは難を逃れる。オペラが終わり劇場を後にしようとするマイケルの元にモスカが忍び寄り銃撃する。取り押さえられたモスカはその場でヴィンセントに射殺されるが、モスカの放った銃弾はマイケルを負傷させ、さらに彼の側にいたメアリーの命を奪った。娘を失ったマイケルは絶叫し、それから十数年後、シシリーで追憶と孤独の中、死んでいった。
キャスト
主な登場人物
- マイケル・“マイク”・コルレオーネ
- 演 - アル・パチーノ
- コルレオーネ家の現家長。組織を合法化させることに尽力し、1979年にパパル賞を授与される。しかし完全にマフィアから足を洗うことはできず、過去に犯した罪に強い罪悪感を抱き続けている。合法ビジネスへの全面的な転換を試みようとするが、裏切ったジョーイ・ザザの襲撃を予知できず、ヴィンセントに助けられたことで判断力が鈍ったことを自覚し、そこへ糖尿病で倒れて衰えを感じざるを得なくなる。父の生まれ故郷のシチリア島のコルレオーネ村で療養生活を過ごすうちに徐々に引退へと心が傾いていく。そして志半ばで甥のヴィンセントに後を継がせ、完全に引退を決意する。
- コンスタンツァ・“コニー”・コルレオーネ・リッツィ
- 演 - タリア・シャイア
- マイケルの妹。一作目で夫をマイケルに粛清されてファミリーを離れたが、二作目で和解に至った。本作ではマイケルの辛い宿命を理解し、ファミリーの仕事にも従事している他、ヴィンセントの母親的立場を取る。長年の心労で弱ったマイケルに引退を勧める。
- ケイ・アダムス・マイケルソン
- 演 - ダイアン・キートン
- 前作で子供を中絶したことでマイケルと離婚。今は別の男性と再婚しているが、息子アンソニーの進路でマイケルに再度接近する。マイケルに対する愛情を未だ内に秘めている。
- ヴィンセント・マンシーニ
- 演 - アンディ・ガルシア
- マイケルの兄ソニー・コルレオーネの愛人の息子。父親譲りの喧嘩早い性格で、かねてから対立していたザザとの和解を進めるマイケルに反発していたが、ゴッドファーザーとしての苦労や過去を知るにつれ心を開き、献身的に仕えるようになる。最終的にマイケルの後を継いで三代目の家長となり、ドン・ヴィンセント・コルレオーネと名乗る。
- メアリー・コルレオーネ
- 演 - ソフィア・コッポラ
- マイケルの長女。マイケル率いるシシリー復興財団の表向きの代表者とされる。従兄弟であるヴィンセントと恋仲になりながらも、組織の抗争に翻弄される。なおソフィアは、PART 1ではコニーとカルロの息子のマイケル・フランシス・リッツィとして登場している。
- アンソニー・ヴィトー・コルレオーネ
- 演 - フランク・ダンブロシオ
- マイケルの長男。愛称はトニー。かつてのマイケルのように心優しい好青年。親しかった伯父のフレドが前作で殺されたことをきっかけに父親の裏の顔を知り、家業を継ぐことを拒否してオペラ歌手の道に進む。しかし、父親への尊敬や愛情は変わらず、マイケルと和解した。
コルレオーネ・ファミリー
※トム・ヘイゲンは物語開始以前に死去しており今作には登場しない。
- アルベルト・“アル”・ネリ
- 演 - リチャード・ブライト
- マイケルを身近で支える存在。後にバチカンへ赴き、マイケルを裏切ったギルディ大司教を射殺する。
- B・J・ハリソン
- 演 - ジョージ・ハミルトン
- トム・ヘイゲンが亡くなっているため、今作におけるマイケルの弁護士を務めている。常にマイケルと行動を共にし、インモビリアーレ買収で活躍する。
- アンドリュー・ヘイゲン
- 演 - ジョン・サヴェージ
- トム・ヘイゲンの息子で聖職者。マイケルにとって血縁はないが事実上の甥にあたり、常に目をかけている。マイケルとギルディ大司教の手引きの結果バチカンに赴任することになった。ラストのオペラシーンではマイケルの親族として列席する。
- ドン・トマシーノ
- 演 - ヴィットリオ・デューズ
- シチリアに住むコルレオーネ・ファミリーの忠節な後見役。イタリアとバチカン内の動きに通じ、ギルティ枢機卿の裏切りを知ったマイケルにランベルト枢機卿を紹介する。郊外の路傍で偶然モスカ親子に出会い、彼らの正体に気付いたため射殺される。
- カロ
- 演 - フランコ・チッティ
- シチリアに住むマイケルのボディーガード(第一作にも登場)。ドン・トマシーノ暗殺に際しては悲しみ怒り、マイケルに復讐を誓う。後にルケージ宅へ赴き、メガネを奪い取って首を突き、復讐を果たした。(この際にカロもルケージのボディガードに射殺されたと思われる)
- ドミニク・アッバンダンド
- 演 - ドン・ノヴェロ
- 父の恩人の息子でマイケルを支える側近。
- アーマンド&フランシスコ
- 演 - ロゲリオ・ミランダ&カルロス・ミランダ
- ヴィンセントの部下でボディーガードを勤める双子の兄弟。オペラ劇場内でモスカに相次いで刺殺される。
- ジョニー・フォンテーン
- 演 - アル・マルティーノ
- 父がかつてそのキャリアを助けた大御所歌手。マイケルの叙勲記念パーティーで歌を披露するなど今もファミリーと友好関係を持つ。
対立するマフィア
- ドン・アルトベッロ
- 演 - イーライ・ウォラック
- マイケルの妹、コンスタンツィアの名付け親(ゴッドファーザー)。マイケルとは旧知の仲で、マイケルの財団に多額の寄付をするなど表向きは良い関係を保つが、ドン・ルケージと通じておりザザを使いマイケルの暗殺を試みるが失敗。その後マイケルの意を受け部下となったヴィンセントに裏切られ、劇場内でコニーから渡された毒入りカンノーリで毒殺される。
- ジョーイ・ザザ
- 演 - ジョー・マンテーニャ
- コルレオーネ・ファミリーのアルトベッロの子飼いで、ヴィンセントと対立している。出世を拒まれマイケルら幹部会を恨んでいるが、当のマイケルからはチンピラ呼ばわりされている。アルトベッロの意を受けマイケルとファミリーのメンバーの暗殺を試みるがマイケルの暗殺に失敗し、その後騎馬警官に扮したヴィンセントに射殺される。
- アントニー・スクゥイルアロ
- 演 - ビト・アンツォフェルモ
- ジョーイ・ザザのボディーガード。ザザの暗殺時にヴィンセントの部下に暗殺される。
- モスカ
- 演 - マリオ・ドナトーネ
- シチリア人。組織に属さないフリーの殺し屋。過去にアルトベッロと手を組んでいた。アルトベッロにマイケルの暗殺を依頼される。シシリーで偶然出会ったドン・トマシーノを射殺。終盤の劇場内でヴィンセントの部下たちを殺害した後、マイケルに狙撃での暗殺を試みるが失敗。劇場外に出たマイケルを拳銃で狙うが腕を傷付けるにとどまり、二発目で誤ってメアリーを射殺。自身はその直後に周囲の人々によって取り押さえられ、駆け付けたヴィンセントによって射殺される。
- スパラ
- 演 - ミケーレ・ルッソ
- シチリア島モンテレプレ村に住む殺し屋モスカの息子。ロバのものまねが得意で、求められてドン・トマシーノの前で披露する。父とともに聖職者の姿をしてマイケル殺害に向かうが、ドン・トマシーノに見破られる。オペラハウスでは、ロバのものまねをして警備の注意を引き、モスカがマイケルを狙うすきを作る。
その他
- ギルディ大司教
- 演 - ドナル・ドネリー
- 宗教事業協会(バチカン銀行)総裁で、バチカンの資金運営を掌るアメリカ地区担当の大司教。マイケルが組織を合法化させるために一番頼っていた人物。金融スキャンダルでバチカン銀行が7億ドルを超える巨額の負債を抱えたことで窮地に陥っている。マイケルにバチカンが実質的なオーナーとなっている国際的な投資会社「インモビリアーレ」の株式を6億ドルで買い取る取引を持ちかけた。マフィア関係の事業を清算する事を引き換えにマイケルに資金洗浄を要求するが、その後ルケージやカインジックと裏で繋がっていることが明らかになりネリにバチカン内で暗殺される。
- ドン・リシオ・ルケージ
- 演 - エンツォ・ロブッティ
- インモビリアーレ社の取締役会長で、外出時にはカラビニエリの警護を受けるイタリア政財界の有力者。アルトベッロの友人でギルディ大司教を通じバチカン内部にも影響力を持つ人物。マイケルの意を受けたカロにより自宅内で暗殺される。
- フレデリック・カインジック
- 演 - ヘルムート・バーガー
- ギルディ大司教の下で、バチカン銀行のマネーロンダリングを行うアンブロシアーノ銀行頭取のスイス人。マイケルがギルディ大司教に支払ったインモビリアーレ買収資金を着服し逃亡したが、逃亡先でマイケルの手下に暗殺され橋の下につるされた。
- ランベルト枢機卿 (教皇ヨハネ・パウロ)
- 演 - ラフ・ヴァローネ
- ドン・トマシーノの紹介によりマイケルが頼ることになる革新派の枢機卿。その後教皇に選出され、ギルディ大司教とルケージらによるバチカン内の汚職の一掃を表明するも、粛清を恐れたギルディ大司教一派に毒殺される。
- グレース・ハミルトン
- 演 - ブリジット・フォンダ
- ジャーナリストでヴィンセントのガールフレンドとなる。ヴィンセントを狙ったジョーイ・ザザの手先に人質にされたことがきっかけでヴィンセントと別れる。
日本語吹き替え
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
---|---|---|---|
ソフト版 | フジテレビ版 | ||
ドン・マイケル・コルレオーネ | アル・パチーノ | 野沢那智 | |
ケイ・アダムス | ダイアン・キートン | 鈴木弘子 | |
ヴィンセント・マンシーニ | アンディ・ガルシア | 関俊彦 | 江原正士 |
コニー・コルレオーネ | タリア・シャイア | 駒塚由衣 | 麻志奈純子 |
メアリー・コルレオーネ | ソフィア・コッポラ | 井上喜久子 | 鈴鹿千春 |
アンソニー・コルレオーネ | フランク・ダンブロシオ | 高宮俊介 | 松本保典 |
アル・ネリ | リチャード・ブライト | 屋良有作 | 若本規夫 |
アンドリュー・ヘイゲン | ジョン・サヴェージ | 水野龍司 | 大滝進矢 |
ドン・アルトベッロ | イーライ・ウォラック | 富田耕生 | 納谷悟朗 |
ジョーイ・ザザ | ジョー・マンテーニャ | 大塚明夫 | 谷口節 |
B・J・ハリソン | ジョージ・ハミルトン | 岡部政明 | 小川真司 |
グレース・ハミルトン | ブリジット・フォンダ | 深見梨加 | 堀越真己 |
ランベルト枢機卿 | ラフ・ヴァローネ | 池田勝 | 小林修 |
ギルディ大司教 | ドナル・ドネリー | 宮内幸平 (麻生智久[注 2]) |
青野武 |
ドン・リシオ・ルケージ | エンツォ・ロブッティ | 松岡文雄 | 阪脩 |
ドミニク・アッバンダンド | ドン・ノヴェロ | 石塚運昇 | 小島敏彦 |
フレデリック・カインジック | ヘルムート・バーガー | 大木民夫 | |
カロ | フランコ・チッティ | 大山高男 | 岡部政明 |
モスカ | マリオ・ドナトーネ | 今西正男 | 藤本譲 |
ドン・トマシーノ | ヴィットリオ・デューズ | 村松康雄 | 宮内幸平 |
ジョニー・フォンテーン | アル・マルティーノ | 池田勝 | 小林修 |
ルー・ペニーノ | ロバート・チッチーニ | 梅津秀行 | 伊藤和晃 |
アンソニー | ビト・アンツォフェルモ | 稲葉実 | 笹岡繁蔵 |
レオ・クーネオ | アル・ラッシオ | 島香裕 | |
マルティ・パリシ | ミッキー・ノックス | 伊井篤史 | |
ルーシー | ジニー・リネロ | 秋元千賀子 | |
テレサ | テレ・リヴラノ | 巴菁子 | |
フレド・コルレオーネ (回想シーン) |
ジョン・カザール (クレジットなし) |
中江真司 | |
その他 | - | 小島悠理 | 小室正幸 神谷和夫 久保田民絵 荘司美代子 佐々木みち代 |
日本語版スタッフ | |||
演出 | 小林守夫 | ||
翻訳 | 島伸三 | 木原たけし | |
調整 | 金谷和美 | 荒井孝 上村利秋 | |
効果 | リレーション | ||
制作 | 東北新社 |
モデルとなった実在の人物と組織
上記のように、本作品は1978年の教皇ヨハネ・パウロ1世の毒殺が強く疑われている急死と、1982年に発生し世界を揺るがす大スキャンダルとなったロベルト・カルヴィ暗殺事件。そしてこれらの事件にまつわるバチカンとイタリア政財界を巻き込んだ金融疑獄事件という、多くの共通の関係者を持つ複数の大事件を作品内にほぼそのままに取り入れることで、現実におけるバチカンとイタリア政財界、マフィアの3者の癒着、腐敗体質を批判している。
その中で、下記のように2つの事件に登場した複数の実在の人物をモデルとしてあてはめている。
- ランベルト枢機卿 : アルビーノ・ルチアーニ(枢機卿、その後のヨハネ・パウロ1世)
- ギルディ大司教 : ポール・マルチンクス(大司教、宗教事業協会〔通称「バチカン銀行」〕総裁)
- フレデリック・カインジック : ロベルト・カルヴィ(アンブロシアーノ銀行頭取)
- ドン・リーシオ・ルケージ : リーチオ・ジェッリ(イタリア社会運動幹部、ロッジP2代表)もしくはジュリオ・アンドレオッティ(元イタリア首相)
劇中において、コンクラーヴェの結果「教皇ヨハネ・パウロ1世」となり、バチカン内の腐敗体質の一掃を行おうとしたにもかかわらず就任後に毒殺された「ランベルト枢機卿」については、枢機卿時代の名前こそ違うが、教皇に選ばれた後の名前は実在のものと同じ「ヨハネ・パウロ1世」となっている。
それだけではなく、劇中のコンクラーヴェにおける他の教皇候補者の名前(「ジュゼッペ・シーリ枢機卿」と「アロイーシオ・ロシャイデル枢機卿」)と、その得票数もコンクラーヴェ実際のものと同じであるというように、あからさまにモデルとしてあてはめている。
なお実際に、本物のヨハネ・パウロ1世も就任後にカルヴィやマルチンクス、ジェッリ、アンドレオッティらによるバチカンとイタリア政界、マフィアの癒着によるバチカンの腐敗体質を一掃しようとしたものの、就任後わずか33日に不可解な状況下で自分の居室で死去し、その後解任候補者のリストが行方不明になると同時に、証拠隠滅が図られたことから毒殺による暗殺が疑われている。
さらにジェッリが代表を務め、カルヴィやマルチンクスが会員となっており、カルヴィ暗殺やヨハネ・パウロ1世の「暗殺」にかかわったとされる極右秘密結社「ロッジP2」の名前が実際に劇中で出てくるほか、劇中においてバチカンと関係の深い投資会社として登場した「インターナショナル・インモビリアーレ」社も、イタリアに実在する不動産を中心とした投資会社で、バチカン銀行が大株主であった「インモビリアーレ」社をモデルにしたとされている。
なおコッポラは、当時カルヴィが頭取を務めていたアンブロシアーノ銀行が、パラマウント映画の親会社でコングロマリットの「ガルフ-ウェスタン社」の大株主であった関係で、パラマウントの本社ビルを訪れていたカルヴィを目撃したと語っている。
評価
マフィアとイタリア政界、バチカンの不明朗な関係と腐敗が巻き起こしたスキャンダルを、ほぼそのまま内容に取り込むことであからさまに批判したことや、衰えたマイケルの懺悔や苦悩ばかりに焦点を当てた内容が災いし、アカデミー賞には7部門でノミネートされながらも結局受賞には至らなかった。批評家たちからの評価も芳しくないまま、興行的にも前作に届かぬ結果となった。コッポラは後に「私自身を満足させたがために、観客の期待を裏切る結果になった」と弁解している。
前二作で重要な役割を演じたロバート・デュヴァル(トム・ヘイゲン役)には出演料の問題などでオファーを断られ、既に死去したという設定にされたこともキャラクターバランスを欠いて作品の低評価を招いた。それに関してコッポラは「大きな損失だった」と回顧している。
特にキャリアがないままに主要な助演女優に抜擢されたこともあり、事実上のスケープ・ゴートにされたメアリー・コルレオーネ役[注 3]のソフィア・コッポラ(監督であるフランシス・フォード・コッポラの娘)に対する批判は苛烈なもので、ソフィアは同年度のゴールデンラズベリー賞の最低助演女優賞・最低新人賞を受賞してしまう。
しかし、同作品を評価する声もあり、著名な映画評論家であるロジャー・イーバートは、本作品に星3つ半のスコアを与えた[12]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b “The Godfather Part III”. Box Office Mojo. Amazon.com. 2013年2月1日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)504頁
- ^ 映画『ゴッドファーザー』に「よりふさわしい」結末、新版最終章を12月公開、AFPBB、2020年9月4日、同年9月25日閲覧
- ^ MINAMI (2020年11月18日). “『ゴッドファーザー PART III』再編集版の米予告編 ─ 新たな起点と結末で蘇る、コッポラ監督が理想とした作品に”. THE RIVER. 株式会社riverch. 2020年12月12日閲覧。
- ^ ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期、NBCユニバーサル・ジャパン
- ^ “コッポラ「ゴッドファーザー III」を再構築、“よりふさわしい完結編”のBD発売”. 映画ナタリー. 株式会社ナターシャ (2020年12月8日). 2020年12月12日閲覧。
- ^ 取材・文/小西未来 (2020年12月11日). “フランシス・フォード・コッポラ監督、酷評された「ゴッドファーザーPARTIII」再編集の理由と娘ソフィアへの思い”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム. 2020年12月12日閲覧。
- ^ MINAMI (2020年12月14日). “『ゴッドファーザー PART III』再編集版、アル・パチーノが出来栄えを称賛「良くなったと確信」”. THE RIVER. 株式会社riverch. 2020年12月17日閲覧。
- ^ シチリア旅行に出かけた一家のパートで、マイケルが娘達と散歩しながら、従兄との交際を反対するシーン
- ^ “The Godfather 徹 底 解 剖 | 洋画専門チャンネル ザ・シネマ”. www.thecinema.jp. 2022年1月21日閲覧。
- ^ “劇団昴連名”. 劇団昴. 2022年5月2日閲覧。
- ^ Roger Ebert、“The Godfather, Part III”、1990年12月25日。(参照:2009年5月30日)