猿の惑星 (映画)

アメリカの映画作品シリーズ、およびその第1作目

猿の惑星』(さるのわくせい、Planet of the Apes)は、1968年アメリカ合衆国の映画ピエール・ブールによるSF小説『猿の惑星』を原作とする『猿の惑星』シリーズ全5作の第1作。

猿の惑星
Planet of the Apes
監督 フランクリン・J・シャフナー
脚本 マイケル・ウィルソン
ロッド・サーリング
原作 ピエール・ブール
製作 アーサー・P・ジェイコブス
出演者 チャールトン・ヘストン
ロディ・マクドウォール
キム・ハンター
モーリス・エヴァンス
ジェームズ・ホイットモア
ジェームズ・デイリー
リンダ・ハリソン
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
撮影 レオン・シャムロイ
編集 ヒュー・S・ファウラー
製作会社 20世紀フォックス
APJACプロダクションズ
配給 20世紀フォックス
公開 アメリカ合衆国の旗 1968年2月8日 (Capitol Theatre)
アメリカ合衆国の旗 1968年4月3日
日本の旗 1968年4月13日
上映時間 112分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $5,800,000
興行収入 アメリカ合衆国の旗カナダの旗 $32,589,624[1]
配給収入 日本の旗 2億8789万円[2]
次作 続・猿の惑星
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チャールトン・ヘストンとリンダ・ハリソン

あらすじ 編集

4人の宇宙飛行士を乗せてケネディ宇宙センターから発進した一隻の宇宙船が、およそ6か月の宇宙飛行を経て、地球への帰還を目指していた。船長のテイラー(チャールトン・ヘストン)は準光速航行が、ハスライン博士の時間の理論に従って、船内時間が1972年7月14日、地球時間が2673年3月23日であることを確認した後、睡眠薬を注射して他の3人と同じように冬眠状態に入った。

何らかのトラブルが発生し、宇宙船はとある惑星の湖上へと不時着水した。着水と同時に冬眠装置が自動的に開き、テイラー、ドッジ、ランドンの男性3人は脱出したものの、女性飛行士のスチュアートは航行中の装置故障による空気漏れで既に死亡していた。幸いにも惑星は地球と同じような環境が保たれており、生き残った3人は沈みゆく船を離れ、ゴムボートで川を遡っていく。オアシスにたどり着いた一行は水浴びをするが、途中で何者かに衣服や物資を盗まれる。その後を追いかけた一行の前に現れたのは、原始人のような人間の群れを追いかける、銃で武装し馬に跨った猿の騎兵たちであった。猿たちは逃げ惑う人間に銃撃を加えながら追い詰めて行く。ドッジは射殺、ランドンは捕まり、テイラーは首に重傷を負い、そのまま意識を失う。やがてテイラーが気が付くと、大勢の人間が飼育されている動物病院において輸血を受けているところだった。

この星における猿にとって人間は、知能も低く、文化や言葉を持たない野蛮な下等動物に過ぎなかった。しかしテイラーを治療するチンパンジーの獣医・ジーラ博士(キム・ハンター)は、猿は元々人間から進化したものと考えて、それを立証すべく、独自に研究を続けていた。その婚約者で考古学者のコーネリアス(ロディ・マクドウォール)も、ジーラの学説には少し懐疑的ではあったが、猿社会ではタブーとされている「禁断地帯」を調査して、これまで真理とされてきた考えに大きな疑問を抱いていた。ジーラは、その行動が他の人間とは全く違い、しかも言葉を発しようとするテイラーに強く興味を示していた。怪我の後遺症で喋れないテイラーは、自分は言葉が分かることを紙に書いて伝えようとする。また、ジーラが同じ檻に入れた若い女性には自ら「ノバ」と名付ける。だが、ジーラとコーネリアスの上司であるオランウータンのザイアス博士(モーリス・エヴァンス)は、そんなテイラーを危険視し、意思疎通の試みを妨害する。

傷が回復したテイラーは脱走を試みるが、公衆の面前で捕まった時にとうとう言葉を発し、周囲の猿たちを大いに驚かせる。テイラーは裁判にかけられるが、法廷の真の目的は、何故テイラーが言葉を発するのかという議論ではなく、猿社会で当然の真理とされてきた思想に公然と刃向うジーラとコーネリアスの異端的言動を断罪する事にあった。裁判官たちはテイラーの主張を単なる戯言としか受け止められず、テイラーはジーラたちの陰謀によって生み出されたものと見なしていた。テイラーは離れ離れになった仲間との面会を求めるものの、捕えられていたランドンはザイアス達の手で脳外科手術が施されており、廃人と化していた。閉廷後、テイラーは一人ザイアスの執務室に呼びだされる。ザイアスはテイラーを、猿たちの「聖典」で禁足地とされている「禁断地帯」からやって来たミュータントだと考え、その通りに自供しなければ去勢と脳手術を施すと脅す。テイラーはザイアスが一体何を恐れているのかが分からなかった。

6時間の猶予を与えられて牢に戻されたテイラーだが、ジーラの甥のルシアスが助けにやってくる。審理の結果、重い処分を下されたジーラとコーネリアスは自ら「禁断地帯」へと向かい、自説の正しさと異端の無実を証明しようと決意したのだ。ノバを伴い、海岸に到着した彼らは、後を追って来たザイアスを釈明の為に岸壁の洞窟へと連れ込んだ。コーネリアスが以前に洞窟で発掘した出土品からは、約1200年前に書かれた「聖典」とは全く矛盾する、高度な技術が使われた遺物がいくつも発見されていたが、ザイアスは「聖典」が覆る事を恐れ、それを認めようとしない。その時、ザイアスの部下が攻撃を仕掛けてくるが、テイラーはザイアスを人質にとり、自分とノバのための武器と馬を要求する。

窮地に立たされたザイアスは、とうとう実は自身も密かに、現在の猿の文明は過去の人類文明の遺産であると考えていたことを白状する。彼は「聖典」と矛盾する事実をずっと隠蔽し続けていたのだ。テイラーはジーラたちに別れを告げると、ノバと馬に跨り、共に長い海岸線を辿って行った。一方のザイアスは、テイラーは捨て置くものの、部下に命じて洞窟をただちに爆破させた上で、ジーラとコーネリアスを改めて裁くことを宣言する。ジーラはテイラーたちが禁断地帯の先で何を見つけるのか案ずるが、ザイアスは「人間の運命だ」と静かに言った。

そしてテイラーが海岸で見たものは衝撃的な「人間の運命」であった。

キャスト 編集

役名 俳優 日本語吹替
TBS フジテレビ LD
ジョージ・テイラー大佐 チャールトン・ヘストン 納谷悟朗
コーネリアス ロディ・マクドウォール 山田康雄 近石真介 富山敬
ジーラ博士 キム・ハンター 中村メイ子 楠トシエ 平井道子
ザイアス博士 モーリス・エヴァンス 熊倉一雄 大塚周夫 熊倉一雄
議長 ジェームズ・ホイットモア 久米明 久松保夫 槐柳二
オノリアス ジェームズ・デイリー 小林昭二 大木民夫 村松康雄
ノバ リンダ・ハリソン 酒井環
ルシアス ルー・ワグナー 納谷六朗 富山敬 鈴置洋孝
マクシマス ウッドロー・パーフレイ 北村弘一 八奈見乗児 杉田俊也
ジョン・ランドン中尉 ロバート・ガンナー 富田耕生 木村幌 仲村秀生
トーマス・ドッジ中尉 ジェフ・バートン 小林清志 田中信夫 飯塚昭三
 マリアン・スチュアート中尉 ダイアン・スタンレー
ジュリアス バック・カータリアン 渡部猛 相模太郎 池水通洋
騎兵隊長 ノーマン・バートン 石井敏郎 宮内幸平 峰恵研
ガレン医師 ライト・キング 寺島幹夫 村松康雄
聖職者 ポール・ランバート 石井敏郎 峰恵研
その他 村松康雄
田中信夫
桂玲子
中島喜美栄
浅井淑子
渡部猛
増岡弘
水島晋
田中康郎
飯塚昭三
浅井淑子
遠藤晴
演出 山田悦司 田島荘三
翻訳 岡枝慎二(字幕) トランスグローバル 飯嶋永昭
調整 杉原日出弥
プロデューサー 熊谷国雄 山崎宏
制作 トランスグローバル 東北新社
解説 荻昌弘 高島忠夫
初回放送 1973年12月24日
月曜ロードショー
21:00-23:26
ノーカット
1975年4月11日
ゴールデン洋画劇場
21:00-22:55
(約98分)
  • TBS版 - 『月曜ロードショー』での初放送1973年12月24日 ※当時大作映画は前、後編二週に分けて放送することが慣例だったが[3]、2時間枠で一挙に放送した[3]。一回こっきりの再放送なしという事前の"おどし商法"の番組告知も功を奏し[3]視聴率37%(ビデオリサーチ)とテレビ洋画放送の当時の最高視聴率を記録した[3]。この影響で裏番組の『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ)、『たんぽぽ』(日本テレビ)など、軒並み視聴率がダウンした[3]
  • 「ザイアス」は原語に近い発音だと「ゼイウス」となる。
  • ソフト版は1982年4月21日発売の二ヶ国語版レーザーディスクより初出[4]。アルティメット・エディションDVD、BDに収録。
  • 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンの「吹替の帝王」シリーズ第6弾として、ソフト版に加えTBS版とフジテレビ版の計3種類の吹き替え版を収録したBlu-ray Discが2014年9月3日に発売。ただしTBS版は、現在では不適切とされる4つの文言[5]がカットされている1976年の通常枠版と1978年拡大枠版(1973年放送の短縮版)しか発見できなかったため一部が原語となる[6]。また、特典としてテレビ版の吹替台本2冊が付属している。

人間 編集

「猿の惑星」の人間は、原始人を思わせる粗末な毛皮を身に付けているだけで、実質上は男女ともほぼ裸体である。言葉はまったく話せず、野蛮で知性を欠いた、文字通りの「獣」と化している。ほとんど家畜同様の扱いで、去勢ロボトミーなどをはじめとするさまざまな生体実験などの実験動物として利用されている。また、「野生」の人間を狩る「人間狩り」も、猿(主にゴリラ)たちの間では趣味として人気が高い。一方、一部の人間は核戦争後の放射線による影響から高い知能を持つミュータントと化しており、地下で長く潜伏しながら暮らしている。ミュータントたちは独自のテレパシー能力も持っており、『続』ではコバルト爆弾「アルファ・オメガ」を神として崇めている。

ジョージ・テイラー大佐
『猿の惑星』『続・猿の惑星』に登場。ANSA宇宙船・リバティー1(イカルス号)の船長で宇宙飛行士。厭世的で偏屈な性格から宇宙飛行に志願し、仲間と共に未来の地球へ到着する。猿が決して足を踏み入れない「禁断の地」において衝撃的な事実を知った後、恋人ノヴァと連れ立って砂漠を放浪中に奇怪な現象に遭遇し、真実を確かめるべくノヴァを残して崖の底に消える。後にミュータントたちによって捕らえられ、地下でノヴァやブレントたちと無事に再会する。猿軍との交戦中、起動されたアルファ・オメガの発射を阻止しようと奮闘するが、ノヴァとブレントを立て続けに失ったうえに自身も被弾して瀕死の重傷を負い、最後はすべてに絶望して死の間際にアルファ・オメガの発射装置を作動させた。
ジョン・クリストファー・ブレント少佐
『続・猿の惑星』に登場。テイラーと同じく、ANSA所属の宇宙飛行士でニューヨーク出身。行方不明となったテイラー隊の救難のために打ち上げられた、宇宙船・リバティー2の搭乗員(当初は船長のドノバン・マドックス大佐〈演 - トッド・アンドリュース〉も無事であったが、彼はまもなく死亡した)。テイラーと別れた後のノヴァと出会い、地下で彼との再会を果たした。ミュータントたちを掃討して地下を制圧した猿軍がミュータントに起動されたアルファ・オメガを粗雑に扱い、爆発させかねない状況を見て反撃を開始した後、ウルサス将軍を射殺するなど奮戦したものの、最後は大勢の兵士たちによる掃射を浴びて死亡した。
ノヴァ
『猿の惑星』『続・猿の惑星』に登場。原始的な若い人間女性で、テイラーに気に入られて「ノヴァ」の名前を与えられ、行動を共にする。テイラーと近しくなって彼の名前を呼べるようになった直後、猿の兵士に銃撃されて死亡した。
ルイス・ディクソン博士
生物学者。コーネリアスとジーラに対して終始好意的。
スティービー・ブラントン博士
生物学者。ディクソンの友人で、彼同様にジーラとコーネリアスに対し好意的。
アルマンド
コーネリアスとジーラに理解を示す、サーカス団の団長。コーネリアス夫妻から息子のマイロを託されて匿う。夫妻の死後は自らの手でマイロを育てていたが、興行の宣伝のために訪れた都市でふとしたことから管理派に目を付けられてしまう。
オットー・ハスライン博士(ハスレイン博士とも)
合衆国大統領科学顧問を務める物理学者。公聴会におけるコーネリアス夫妻の発言から地球の終末を聞き出したことで、猿が支配者になった未来の地球がわずか2000年で滅亡すると見抜く。知的な猿の存在が地球の滅亡を招くと危険視し、将来猿の指導者になりうるコーネリアス夫妻を子孫共々抹殺しようと目論む。
フレッグ
人間が猿を奴隷同然に扱っていた時代の、北米の大都市の白人知事。今は亡きハスライン博士の残した資料から猿たちの力を恐れており、猿を徹底的に人間の管理下に置こうと目論む。オークションで購入したシーザーを、「言葉が分かる猿」と知るや処刑しようとするが、猿管理局局員マクドナルドの手引きと、咄嗟にそれを察知したシーザーの巧妙な演技によって失敗してしまい、監視の目から逃してしまう。密かに生き延びていたシーザーの指揮で引き起こされた猿の反乱に対し、戒厳令を布告して鎮圧しようとしたが、対応の遅れとシーザー側の入念な準備により大敗を喫し、逆に執務室まで攻められて捕らえられる。のちに、核戦争による放射線障害のため死亡した。
マクドナルド(兄)
猿管理局局員。黒人出身でフレッグ知事の側近。猿の運命を黒人の歴史と重ねているため、猿が奴隷化されることには批判的である。シーザーが生き延びる手引きをしたが、彼が起こした反乱については否定する。
コルプ知事
ミュータント化した人間たちの指導者。『猿の惑星・征服』ではフレッグ知事の側近として、人間に歯向かう猿たちへの処罰を行なっていた。反乱を世界に波及させて人類社会を滅ぼした猿たちへの強い憎悪に凝り固まっており、核戦争で廃墟と化した都市の地下で、他のミュータントたちを率いてシーザーの村へ侵攻する。
マクドナルド(弟)
『猿の惑星・征服』に登場したマクドナルドの弟でシーザーの良き理解者。猿と共存する人間の代表者として、シーザーを補佐する。

チンパンジー 編集

チンパンジーは、緑色の背広と茶色のズボンを着用している。猿社会の頂点に君臨するが、ゴリラやオランウータンより発言力は小さい。シリーズの制作当時は、チンパンジーと人間との遺伝距離は後年ほど知られていなかった。『征服』では、緑の囚人服を着せられて労働を強制されている。

コーネリアス
考古学者で、猿の文明の成立以前にいた者のことを研究している。人間に対して懐疑的ではあるが、婚約者のジーラと共にテイラーを匿い、心強い味方となる。テイラーと禁断の地の果てまで同行したが、結局は猿社会に戻り、ブレントにも同様に保護を与える。友人の天才マイロの助けでジーラと共にイカルス号に乗り、過去の地球へと亡命できたが、後に未来の真実を知った人間の権力者たちに追い回される形となり、無残にも射殺された。
ジーラ博士
動物心理学者兼獣医で、人間をいかにして猿に近づけるかを研究している。その為、非常に進歩的な思想を持っており、保守的なオランウータンや好戦的なゴリラたちから目の敵にされている。コーネリアスよりも人間寄りの考え方で、テイラーやブレントにも一定の理解を示す。過去の地球への亡命後にコーネリアスの子を出産したが、自分たちの抹殺をもくろむ人間たちから逃げ回る中、夫婦ともども射殺された。
マイロ
アマチュア科学者兼発明家で、コーネリアス・ジーラ夫妻の知人。後に夫妻と共に自ら修理したイカルス号に乗り、過去の地球へ到着する。研究所の檻に入れられた後、ここが過去の地球であることや、人間が高度な文明の担い手であった仮説が正しかったことをコーネリアスに告げるが、自分たちの知る未来の情報が人間たちの恐怖心を刺激することをも予見しており、夫妻と示し合わせて「言葉を知らない」チンパンジーとして振る舞うように忠告する。しかし、「動物」としての扱いに耐えられなくなったジーラが言葉を話したうえ、そのことについて夫妻と口論中、隣の檻にいた「普通の」ゴリラに襲われ、そのまま絞め殺されてしまう。ほとんど活躍の場はなかったとはいえ、その優秀な人物像は湖畔に沈んでいたイカルス号を修理して宇宙飛行を達成したことや、夫妻が息子にマイロと名付けたことで示されている。
シーザー
コーネリアスとジーラの長男。当初は両親から「マイロ」と名付けられたが、まもなく両親が死亡したために本人は知る由もなく、人間から辞書を差し出され、指差した単語を名前とすると決められたときに、自ら「シーザー」を指差して新たな名とした。猿の中で唯一人語を理解し、話すことができる。知略と統率力と行動力に溢れ、理知的で穏健な思考の持ち主。なお、反乱のために仲間を集める際には、言葉を使わずに呼びかける超常的な描写が見られる。マクドナルドやコルプからカエサルと同名であることを指摘され、「(信頼する部下の)ブルータスに殺された男だとも知らない癖に(そんな名前を名乗るとは)」と揶揄されている。チンパンジーの割には腕っぷしが強い方で、アルドーが唯一恐れる男でもある。
リサ
シーザーの妻。シーザーを支え、人間と猿の調和社会を築こうとするも、タカ派のアルドーや別の場所で生き残ったコルプたち人間の侵略の間で翻弄される。
コーネリアス(シーザーの長男)
シーザーの長男。両親やヴァージル、マクドナルド(弟)らの教育で指導者にふさわしく成長しつつあったが、樹上からアルドー将軍らの密議を盗み聞きしたところを見つかってしまい、掴まっていた枝をアルドーに剣で切リ落とされ、転落死した。

オランウータン 編集

オランウータンは、オレンジ色のスーツを着ている。インテリかつ穏健派で、猿社会の調整役として描かれている。

ザイアス博士
ザイアス議長。科学庁長官で保守的な指導者層の一人であったが、禁断の地に、より高度な知能に変化した人類文明が存在していたことを知っており、そのためにさまざまな隠蔽工作を図るも、結局はテイラーの行動力と、彼の2重3重の罠の前にあえなく頓挫した。一方、続編では急速に力をつけたウルサス将軍を排除することができなかった。以上のように老獪ではあるが、本質的には剛毅として描かれている。ラストはテイラーの発動した最終兵器、コバルト60爆弾(アルファオメガと言われるコバルト27をウラン、プルトニウム等の核分裂時に混ぜ、生成されたコバルト60を拡散させ放射能除去不能な汚い核爆弾)の前に地球とともに滅んだ。
ヴァージル
シーザーの友人で哲学者。あらゆる知識に精通した博識なオランウータンで、シーザーの良き補佐役として活躍するが、腕っ節はあまり強くない。
マンデマス
銃火器の管理人をしている頑固一徹なオランウータン。(相手がシーザーでも)良識的な者にしか武器を貸さない信念の持ち主であったが、アルドー将軍の実力行使で武器を奪われる結果となる。

ゴリラ 編集

シリーズ作中でのゴリラは、粗暴で権力欲の強いタカ派の軍人として描かれている(なお、現実のゴリラは温和かつ繊細な性質である)。革製の黒いベストを着ており、主に棍棒リボルバー式拳銃を携行している。『猿の惑星』と『続』では、木製の実包でカスタマイズされたM1ガーランドマドセンM50(英語版)に加え、石製の大砲で武装していた。『征服』では、オレンジの囚人服を着せられて労働を強制されている。

ウルサス将軍
猿の軍隊の指揮官。「猿は猿を殺してはならない」の掟を(渋々ながらではあるが)守る好戦的な軍人で、実質的に猿社会の兵権を完全掌握している。猿社会に起こり始めていた食料問題の解決策を禁断の地に求めようと侵攻し、ミュータント化した人間たちを掃討する。
アルドー将軍
軍人。常に力づく以外での解決手段を好まない粗野な人物。かつてシーザーの父のコーネリアスが語った、猿たちの救世主(最初に人間に抵抗した猿)と同名である。
猿が人間を支配せず共に共存して暮らすことに納得できず、部下たちを扇動してシーザーへのクーデターを企てるが、彼の息子のコーネリアスに密議の内容を聞かれたため、「猿は猿を殺してはならない」の掟を破り、彼を殺害した。ミュータント化した人間たちとの戦争に勝利した直後にその事実が発覚し、憤激したシーザーに追い詰められて粛清された。

メカニック 編集

イカルス号
ANSA(アメリカ国立宇宙管理局。現実のNASAに相当する宇宙機関)に所属する恒星間航行超光速宇宙船で、正式名称は「リバティー1」。
船体は二等辺三角形に近いくさび形で、船内には4人掛けのコックピットと4台の長期睡眠装置が、また機首上部とコックピット、コンソール下には脱出ハッチが、更に基底部にはリアハッチがそれぞれ設けられている。なお、機首内部は脱出トンネルとなっており、機首側とコックピット側とを繋いでいる。
1972年1月15日にテイラーら4名の宇宙飛行士を乗せてアメリカケネディ宇宙センターから打ち上げられ、船内時間で約半年、地球時間で約700年の宇宙飛行を続けた後に搭乗員全員が長期睡眠に入り、自動操縦で地球へ帰還する予定であった。しかし、その直後に発生したコンピューターのトラブルにより、禁断地帯のとある内海に不時着した後に水没してしまう。なお、不時着時の地球時間は3978年11月25日、船内時間は1973年6月16日(劇中で直接の描写はない)ごろとなっており、出発から地球時間で約2000年、船内時間では約18月ほど経過していた事になる。
続・猿の惑星』には同型船「リバティー2」が登場し、テイラー隊の捜索と救助のためブレントら2名を乗せて打ち上げられるが、本機もまた未来の地球に不時着する。
新・猿の惑星』では、チンパンジーのマイロ達によってイカルス号が湖から引き揚げられて修理され、マイロとコーネリアス、ジーラの3人が地球から脱出する際に使用された。
なお、リブート作品猿の惑星: 創世記』では、同名の火星探査船が消息を絶っていることが劇中で報道されている。旧シリーズとの直接的な関係性は不明であったが、新シリーズの監督であるマット・リーヴスは本作と繋がる作品である旨を述べており、実際3作目『猿の惑星: 聖戦記』に登場する口を利けない少女ノバは本作のノバと同一人物とされている。ただし年代やイカルス号の特徴などに矛盾が生じているため、厳密に繋がっているわけではない。

製作 編集

脚本 編集

20世紀フォックスのプロデューサー、アーサー・P・ジェイコブスの依頼を受けロッド・サーリングが執筆した脚本は、最終的にマイケル・ウィルソンによって大きく改変された。

主人公が猿達から理不尽な扱いを受ける描写には、ウィルソンが共産主義者とみなされたために赤狩りの対象になった経験が反映されている。なお、ウィルソンはピエール・ブール原作の『戦場にかける橋』やチェ・ゲバラを題材にした『ゲバラ!』の脚本も担当している。

原作との違い 編集

原作では猿は独自の言語を用い、主人公がそれを習得して猿たちと意思疎通をするという展開であるが、映画では猿は初めから英語を話している (そしてそれが作品の結末への伏線になっている)。

原作では主人公たちが到着したのは、オリオン座の主星ベテルギウスとなっており、結末の場面で「地球もまた、猿の惑星となっていた」となるが、映画では人類が原始人並の知能しか持たず、逆に猿に似た類人猿が高い知能を持って文明を築いており、その謎が判明するのが作品の結末となっている。ちなみにベテルギウスは赤色超巨星であり、恒星としての寿命が非常に短い上、大きさ・明るさも短期間で大きく変動するなどの理由により、実際には地球生物の居住可能な惑星を従えている可能性はないとされる。また、地球からベテルギウスまでの距離はおよそ497光年程度と考えられている[7]

エピソード 編集

  • 本作の白眉ともいえる、猿の特殊メイクジョン・チェンバースによるものであり、当時のレベルでは飛び抜けて精巧なものだった。アカデミー賞にメイクアップ賞が設立されたのは10年以上経った1981年であるため、チェンバーズはアカデミー名誉賞を受賞した。
  • 本作の制作に関わった小説家・劇作家のウィリアム・サローヤンの甥は、日本で上映された事を驚いたという。理由として、原作者のブールは戦前フランス領インドシナで有色人種を使役していた農場の監督として働いており、戦時中に日本軍の捕虜となって白人と有色人種の立場の逆転を経験したことが、原作小説の執筆動機になっており、「人間を支配する猿=日本人」という暗喩が込められているとされたからである。しかし、実際にブール本人がこの事について言及したことはない上、日本軍の捕虜になったこともなく、むしろ彼を捕虜にしたのはヴィシー・フランス軍であり、上記の説には証拠となるものが無い。(著者が日本軍の捕虜になった、なっていないと所説あり)
  • 猿の惑星の正体が判明する本作のラストシーン(米ソ冷戦の成れの果てをイメージしたと言われている)は非常によく知られており、2005年に発売された日本版DVDでは、最大級のネタバレであるにもかかわらず、大々的にパッケージイラストに描かれている。

脚注 編集

  1. ^ Planet of the Apes”. Box Office Mojo. Amazon.com. 2011年5月4日閲覧。
  2. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)251頁
  3. ^ a b c d e “ひっかき回し37%”. サンケイスポーツ (産業経済新聞社): p. 11. (1974年1月8日) 
  4. ^ 品川四郎「吹替洋画新聞 第四号」『宇宙船』Vol.112(2004年5月号)、朝日ソノラマ、2004年5月1日、112頁、雑誌コード:01843-05。 
  5. ^ テイラー大佐が猿に向かって言う『気狂い』『気違い猿』など
  6. ^ 20世紀FOXホームエンターテイメント”. 2015年1月1日閲覧。
  7. ^ 『理科年表 平成25年』 丸善 2012年刊

関連項目 編集

外部リンク 編集