国際刑事警察機構

国際刑事警察機構(こくさいけいじけいさつきこう、: International Criminal Police Organization略称ICPO)、: Organisation internationale de police criminelle略称OIPC))は、国際犯罪の防止を目的として世界各国の警察機関により組織された国際組織である。日本国内では頭文字「ICPO」の略称で呼ばれることが多いが、海外ではインターポール(INTERPOL[† 1][† 2][† 3][† 4])の名称で呼ばれることが多い。2017年時点の加盟する国・地域は192を数え[1]国際連合に次ぐ[2]

国際刑事警察機構
International Criminal Police Organization
Organisation internationale de police criminelle
ICPO-Interpol Lione.JPG
ICPO本部(リヨン)
略称 ICPO、OIPC
前身 国際刑事警察委員会
設立年 1923年9月7日
種類 国際機関
目的 刑事警察の国際的共助機関
本部 フランスの旗 フランス ローヌ=アルプ地域圏ローヌ県リヨン市シャルル・ド・ゴール通り200
座標 FR 北緯45度46分55.9秒 東経4度50分54.2秒 / 北緯45.782194度 東経4.848389度 / 45.782194; 4.848389座標: FR 北緯45度46分55.9秒 東経4度50分54.2秒 / 北緯45.782194度 東経4.848389度 / 45.782194; 4.848389
貢献地域 全世界
メンバー 192か国・地域
事務総長 Ronald Noble
関連組織 警察庁(日本の国家中央事務局)
予算 約4,825万ユーロ2008年
ウェブサイト http://www.interpol.int/
1956年に現機構名へ改称

目次

概要編集

 
ICPO職員のIDカード(見本)

犯罪捜査や犯人逮捕に携わる各国の警察の連携を図り、各国間の情報の伝達ルートの役割を果たす。

主な活動は、国外逃亡被疑者や行方不明者、盗難美術品などの発見、身元不明死体の身元確認などに努める「国際手配制度」や、国際犯罪および国際犯罪者に関する情報のデータベース化とフィードバックなど。運営は、2つの非常設機関(総会および執行委員会)と、2つの常設機関(事務総局および加盟各国に設置された国家中央事務局(NCB))により行われる。NCBは自国の警察と事務総局や加盟各国の警察とをつなぐ窓口機関にあたるもので、日本では警察庁が指定されている[3]

リヨンに事務総局、ハラレアビジャンナイロビブエノスアイレスサンサルバドルに地域局、バンコクに連絡事務所がある[2]。2015年にシンガポール総局(INTERPOL Global Complex for Innovation)が開設予定となっている。シンガポール総局では、犯罪捜査の訓練の他、サイバー犯罪対策も行う[2]

国際刑事警察機構は、サイバー犯罪に関する取り組みが遅れており、2013年までサイバー犯罪に専従する職員は4人しかいなかった。本部の約700人に次ぐ70人規模となるシンガポール総局を設置する。初代局長には警察庁の中谷昇が就任する[4]

映画・テレビ・漫画などのフィクションでは、全世界を対象に捜査する「国際警察」のような描かれ方をするが、実体はそのような大規模な組織ではなく、各国法執行機関の連絡機関・協議体としての性格が強い。

司法警察権は各国の主権事項に属する[5]ため、たとえば『ルパン三世』の銭形警部のように、世界中で捜査活動をする「国際捜査官」は存在しない。

最終的に犯罪者の身柄拘束を行なうのは国家主権上の問題から、その国の警察である。なお事務総長は、フランス政府より外交特権を与えられ[6]、係官などの職員は、国際活動中に個別に外交特権を受けることがある。

年に1,000件を越える捜査依頼があり、2008年時点では約6,000人の手配者を追跡していた。

歴史編集

1923年国際刑事警察委員会(ICPC)として創設された[2]。はじめ本部はオーストリアウィーンに存在した。[6]1938年アンシュルスナチス・ドイツによるオーストリア併合)後には本部がベルリンに移され、以降は第二次世界大戦でのドイツの敗戦までICPCは、ゲシュタポの下部組織にすぎなかった。ラインハルト・ハイドリヒアルトゥール・ネーベエルンスト・カルテンブルンナーなど親衛隊(SS)国家保安本部幹部たちがICPC総裁を務めていた。

1956年に国際刑事警察委員会を発展的に解組し、国際刑事警察機構を設立した[2][7]。当時の加盟国数は57ヶ国[6]。事務総局は1946年に再建されてからフランスパリにあったが、1989年以降はリヨンにある。国際連合、特に経済社会理事会とは協力関係にあったが、1996年には国際連合総会オブザーバーの資格を得た[6]

2016年11月、台湾がICPOへの参加を申請するが、中国がこれを妨害し[8][9]、総裁に中国共産党党員で中国公安部副部長の孟宏偉中国語版が選出されたため、アムネスティなどから人権問題や政治利用を懸念する声があがった[10][11]。また、副総裁にはロシア連邦アレクサンドル・プロコプチュクロシア語版警察少将が就き、中露ともにICPOで要職に選ばれるのは初めてであった[12]。米国に事実上亡命した富豪・郭文貴中国語版の国際手配の際は中国による政治利用を指摘された[13]2017年9月に北京で開催されたICPO総会の開会式で演説した習近平国家主席は習は発展途上国の法執行機関要員を養成する「国際法執行学院」と科学捜査研究所の設立や通信設備の支援などを発表した[14][15][16]。また、北京の総会ではイスラエルの反対で加盟を拒否されてきたパレスチナなどが参加して190カ国から192カ国に拡大しており、中国の後押しもあったともされる[1]

日本編集

日本1952年(昭和27年)の第21回総会で加盟し、国家中央事務局は警察庁[3]

1967年(昭和42年)9月27日 - 10月4日の間、京都市で第36回総会が開催された[17]1975年(昭和50年)から事務総局に警察庁職員を派遣している。1996年(平成8年)から2000年(平成12年)まで兼元俊徳(警察庁国際部長。退任後は内閣情報官)が第15代総裁を務めた[18]

なお、ICPOから国際指名手配を受けている日本人は、2012年5月時点で16人存在する。ただし、国際指名手配はあくまで捜査への協力要請にすぎないため、国際指名手配を受けたからといって日本の警察がそれだけで逮捕することができない。相手国と犯罪人引渡し条約を結んでいたり、国内法に違反していない限り、普通に生活している者もいる。これは、日本だけに限らない[19]

加盟国・地域編集

 
ICPO加盟国の分布

非加盟国・地域編集

ICPO通信網編集

初期は短波通信を使用したラジオテレタイプ国際手配の情報を世界に発信していた、このため古い時代の本部には短波通信用のアンテナが立っていた。

このテレタイプで使用していた8文字の宛先略号(telegraphic address)である「INTERPOL」という名称が通称化した。日本の警視庁に導入されたのは1966年で、アジア唯一のフランス本部との直通回線だった。

1997年(平成9年)にインターネットを利用したインターポール犯罪情報システム(ICIS)に世代交代するまで使われていた。

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ ラジオテレタイプの宛先略号(telegraphic address)より
  2. ^ アメリカ英語発音:[ˈɪntərpɔːl] ンターポール、[ˈɪntərpɑːl] ンターパール
  3. ^ イギリス英語発音:[ˈɪntəpɒl] ンタポル
  4. ^ フランス語発音: [ɛ̃tɛʁpɔl] アンテルポール

出典編集

  1. ^ a b “インターポール、パレスチナの加盟承認=友好関係・中国開催の総会”. 時事通信. (2017年9月27日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2017092701198 2017年9月27日閲覧。 
  2. ^ a b c d e 2014国際刑事警察機構,警察庁資料
  3. ^ a b 2004年(平成16年)3月14日『官報』資料版No.2357「知っておきたい国際・外交キーワード」
  4. ^ “サイバー国際捜査機関トップに日本人”. 読売新聞. (2013年1月6日). http://www.yomiuri.co.jp/net/news0/national/20140106-OYT1T00556.htm 2014年1月8日閲覧。 
  5. ^ A国で「テロリスト」と認定された犯人が、対立するB国では「政治犯」と認定される、という状況さえ起きているのが実情。
  6. ^ a b c d ICPOの沿革,警察庁資料
  7. ^ 1965年(昭和40年)9月22日『官報』資料版No.388「閣議決定等事項の解説」
  8. ^ “台湾の参加認めなかったICPO、総裁に中国の孟氏を選出”. 産経ニュース. (2016年11月10日). http://www.sankei.com/world/news/161110/wor1611100064-n1.html 2016年11月14日閲覧。 
  9. ^ “台湾、ICPO総会に参加できず 中国から圧力か”. 日本経済新聞. (2016年11月5日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM05H43_V01C16A1FF8000/ 2016年11月14日閲覧。 
  10. ^ “インターポール総裁に初の中国人 人権団体は「悪用」懸念”. 読売新聞. (2013年1月6日). http://www.yomiuri.co.jp/net/news0/national/20140106-OYT1T00556.htm 2014年1月8日閲覧。 
  11. ^ “インターポール総裁に初の中国人、「世界の治安維持に全力」”. CNN. (2016年11月11日). http://www.cnn.co.jp/world/35092007.html 2016年11月14日閲覧。 
  12. ^ “インターポールも陥落、国際機関を囲い込む中国の思惑”. ニューズウィーク. (2016年12月6日). http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6481.php 2017年9月27日閲覧。 
  13. ^ “中国がインターポールを政治利用”. ニューズウィーク. (2017年5月8日). http://www.newsweekjapan.jp/magazine_special/2017/05/post-4.php 2017年5月11日閲覧。 
  14. ^ “All nations have right to be involved in global security, Xi Jinping tells Interpol meeting”. サウスチャイナ・モーニング・ポスト. (2017年9月26日). http://www.scmp.com/news/china/policies-politics/article/2112944/all-nations-have-right-be-involved-global-security-xi 2017年9月27日閲覧。 
  15. ^ “インターポール総会が開会 中国が途上国支援策を発表”. 朝日新聞. (2017年9月27日). http://www.asahi.com/articles/ASK9V56BSK9VUHBI01Y.html 2017年9月27日閲覧。 
  16. ^ “中国「世界で最も安全」=インターポール総会で習主席”. 時事通信. (2017年9月27日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2017092601282 2017年9月27日閲覧。 
  17. ^ 1968年(昭和43年)8月28日『官報』資料版No.539「麻薬犯罪の実態と取締り」
  18. ^ 1999年(平成11年)12月15日『官報』資料版No.2142「警察白書のあらまし」
  19. ^ “銭形警部なんていない:インターポールに国際手配された日本人たち”. Business Media 誠. (2012年5月2日). http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1205/02/news001.html 

関連項目編集

外部リンク編集