パレスチナ国

西アジアにある共和制国家
パレスチナ国
دولة فلسطين
パレスチナの国旗
国旗 国章
国の標語:不明
国歌فدائي(アラビア語)
革命者
パレスチナの位置
公用語 アラビア語
首都 東エルサレム (名目上)
ラマッラー(事実上)
最大の都市 ガザ
政府
大統領 マフムード・アッバース
首相 ムハンマド・シュタイエ[備考 1]
面積
総計 6,020km2164位[1]
水面積率 3.5%
人口
総計(2022年 5,354,656人(119位[1]
人口密度 889.5人/km2
GDP(自国通貨表示)
合計(xxxx年 xxx,xxx新シェケル
GDP(MER
合計(2021年180億3680万ドル(125位[2]
1人あたり 3,664[3]ドル
GDP(PPP
合計(2021年305億1834万ドル(145位[4]
1人あたり 6,199.5[5]ドル
独立宣言
独立宣言1988年11月15日
オスロ合意1993年8月20日
パレスチナ自治政府成立1994年
国連総会オブザーバー2012年11月29日
パレスチナ問題未解決[備考 2]
通貨 新シェケルILS)など[備考 3]
時間帯 UTC+2 (DST:+3)
ISO 3166-1 PS / PSE
ccTLD .ps
国際電話番号 970
  1. ^ 2024年2月26日に辞任表明し、後任が決まるまで現職にとどまる。
  2. ^ パレスチナを巡る諸問題は未解決のため、「パレスチナ国」を完全な主権国家と呼ぶかは議論がある。
  3. ^ 1994年パリ議定書第4条によると、パレスチナは複数の通貨を採用できるようになっている。新シェケルに加えヨルダン川西岸地区ではヨルダン・ディナール、ガザ地区ではエジプト・ポンドが主に使用される。

パレスチナ国(パレスチナこく、アラビア語: دولة فلسطينDawlat Filasṭīn, ダウラト・フィラスティーン、: State of Palestine)は、地中海東部のパレスチナに位置する共和制国家。国際連合(UN)には未加盟であるが、2021年時点で138の国連加盟国が国家として承認している。

領土は自治政府ファタハ政権)が実効支配するヨルダン川西岸地区およびガザ政府ハマス政権)が実効支配するガザ地区パレスチナ領域)から成り、東エルサレム首都として定めている[6]が、パレスチナ自治政府により実際に支配されているのは西岸地区の一部にとどまり[7]、首都機能はラマッラーが担っている。

歴史 編集

1988年11月15日に初代大統領のヤーセル・アラファートパレスチナの独立宣言を発表し、パレスチナ国を国号として定めた。1993年にパレスチナ自治政府が発足して、長らくイスラエルに占拠されていたパレスチナパレスチナ人による実効支配が始まった。2012年11月にはそれまでの組織としてではなく、国家として国際連合総会オブザーバーとして承認された。

政治 編集

地方行政区画 編集

 
パレスチナの県(灰色の部分は統治外)

パレスチナ国はヨルダン川西岸地区ガザ地区から成る。ガザ地区の面積は365km²で全体の6%程度しかないが、人口は全体の38%を占める。ヨルダン川西岸地区はパレスチナ自治政府の様々な機関が置かれており、首都がある。

西岸地区の総面積は5,660km²であり、以下に区分けされている。

  • A地区
    パレスチナ政府が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区のうち18%の約1,018km²である。
  • B地区
    イスラエル軍警察権を握っているが行政権はまだパレスチナ政府にある。面積は西岸地区の21%の約1,188km²である。
  • C地区
    イスラエル軍が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区の61%で約3,452km²である。

また、西岸地区のイスラエル軍管轄地域はユダヤ・サマリア地区と言われている。

パレスチナ国は領有を主張する国土に16の県(ガザ地区に5、ヨルダン川西岸地区に11)を設置している。ただしイスラエルの実効支配下にある地域を含んでいるため、ヨルダン川西岸地区の県の多くの地域が統治下にはない。

主要都市 編集

国際関係 編集

 
パレスチナを国家承認している国

2019年7月時点で、国際連合加盟国(193か国)中、138か国が国家承認している[8]安保理常任理事国ではロシアと中国が承認し、上海協力機構(SCO)加盟国およびアラブ連盟加盟国は全てが承認、アフリカ連合カメルーンエリトリア以外の全て、東南アジア諸国連合(ASEAN)はシンガポールミャンマーを除く8か国が、それぞれ承認している。

対して承認していない国連加盟国は55か国である。安保理常任理事国であるアメリカ合衆国イギリスフランスの3か国に日本カナダドイツイタリアを加えたG7諸国はすべて承認していない。北大西洋条約機構(NATO)加盟国でみると、トルコアイスランドの他に旧東側諸国(チェコスロバキアポーランドハンガリールーマニアブルガリアアルバニア)が東側陣営時代の1988年、モンテネグロがNATO非加盟時の2006年に承認しているだけでそれ以外はすべて承認していない。欧州連合(EU)加盟国では上記の旧東側諸国とスウェーデン(2014年承認)、欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国ではアイスランド(2011年承認)以外は全て承認していない。当事国であるイスラエルも未承認である。

ただし、2012年のパレスチナ国のオブザーバー格上げ決議では、非承認国家でも賛成した国もある(得票数:19/67)。例えば日本は「将来の承認を予定した自治区」としてパレスチナ国を扱っており、経済支援や議員外交などを行っている[注 1]

国連との関係 編集

1974年にパレスチナ解放機構がオブザーバー団体として国連に加盟した。2012年にはオブザーバー団体からオブザーバー国家に格上げされ、事実上国家承認された。

国連では、毎年のようにパレスチナ人の民族自決権を確認する決議が提出されている。非承認国家でも、明確な反対はイスラエル・アメリカ合衆国及び一部の親米国に限られる。直近の2023年12月19日の決議では、日本を含む172ヶ国の賛成で採択された[9](反対はイスラエル、ナウルミクロネシア連邦、アメリカ合衆国の4ヶ国。棄権はカメルーンなど10ヶ国、欠席はアフガニスタン[注 2]など7ヶ国)。

国家承認している国 編集

国連加盟国 編集

この承認国の中で唯一、チェコのみが2012年のオブザーバー格上げ決議で反対している。一覧は承認順に並んでいる。

  • NATO加盟国
  • EU加盟国
  1.   アルジェリア
  2.   バーレーン
  3.   イラク
  4.   クウェート
  5.   リビア
  6.   マレーシア
  7.   モーリタニア
  8.   モロッコ
  9.   ソマリア
  10.   チュニジア
  11.   トルコ
  12.   イエメン
  13.   アフガニスタン
  14.   バングラデシュ
  15.   キューバ
  16.   インドネシア
  17.   ヨルダン
  18.   マダガスカル
  19.   マルタ
  20.   ニカラグア
  21.   パキスタン
  22.   カタール
  23.   サウジアラビア
  24.   アラブ首長国連邦
  25.   セルビア
  26.   ザンビア
  27.   アルバニア
  28.   ブルネイ
  29.   ジブチ
  30.   モーリシャス
  31.   スーダン
  32.   キプロス
  33.   チェコ●◎
  34.   スロバキア●◎
  35.   エジプト
  36.   ガンビア
  37.   インド
  38.   ナイジェリア
  39.   ロシア
  40.   セーシェル
  41.   スリランカ
  42.   ベラルーシ
  43.   ギニア
  44.   ナミビア
  45.   ウクライナ
  46.   ベトナム
  47.   中国
  48.   ブルキナファソ
  49.   コモロ連合
  50.   ギニアビサウ
  51.   マリ
  52.   カンボジア
  53.   モンゴル
  54.   セネガル
  55.   ハンガリー●◎
  56.   カーボベルデ
  57.   朝鮮民主主義人民共和国
  58.   ニジェール
  59.   ルーマニア●◎
  60.   タンザニア
  61.   ブルガリア●◎
  62.   モルディブ
  63.   ガーナ
  64.   トーゴ
  65.   ジンバブエ
  66.   チャド
  67.   ラオス
  68.   シエラレオネ
  69.   ウガンダ
  70.   コンゴ共和国
  71.   アンゴラ
  72.   モザンビーク
  73.   サントメ・プリンシペ
  74.   コンゴ民主共和国
  75.   ガボン
  76.   オマーン
  77.   ポーランド●◎
  78.   ボツワナ
  79.   ネパール
  80.   ブルンジ
  81.   中央アフリカ
  82.   ブータン
  83.   ルワンダ
  84.   エチオピア
  85.   イラン
  86.   ベナン
  87.   赤道ギニア
  88.   ケニア
  89.   バヌアツ
  90.   フィリピン
  91.   エスワティニ
  92.   カザフスタン
  93.   アゼルバイジャン
  94.   トルクメニスタン
  95.   ジョージア
  96.   ボスニア・ヘルツェゴビナ
  97.   タジキスタン
  98.   ウズベキスタン
  99.   パプアニューギニア
  100.   南アフリカ共和国
  101.   キルギス
  102.   マラウイ
  103.   東ティモール
  104.   パラグアイ
  105.   モンテネグロ
  106.   コスタリカ
  107.   レバノン
  108.   コートジボワール
  109.   ベネズエラ
  110.   ドミニカ共和国
  111.   ブラジル
  112.   アルゼンチン
  113.   ボリビア
  114.   エクアドル
  115.   チリ
  116.   ガイアナ
  117.   ペルー
  118.   スリナム
  119.   ウルグアイ
  120.   レソト
  121.   シリア
  122.   リベリア
  123.   エルサルバドル
  124.   ホンジュラス
  125.   セントビンセント・グレナディーン
  126.   ベリーズ
  127.   ドミニカ国
  128.   南スーダン
  129.   アンティグア・バーブーダ
  130.   グレナダ
  131.   アイスランド
  132.   タイ
  133.   グアテマラ
  134.   ハイチ
  135.   スウェーデン
  136.   セントルシア
  137.   コロンビア
  138.   セントクリストファー・ネイビス

国連非加盟国 編集

国家を承認していない国 編集

国連加盟国 編集

  • G7
  • NATO加盟国
  • EU加盟国

国連非加盟国 編集

国連総会オブザーバー 編集

  1.   欧州連合

日本との関係 編集

国民 編集

人口構成 編集

2023年時点で約548万人(西岸地区:約325万人、ガザ地区:約222万人)であり、アラブ人が大半を占める。また、国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA) によると2021年時点でパレスチナ難民が約639万人(西岸108万人、ガザ164万人、ヨルダン246万人、シリア65万人、レバノン54万人)となる[10]

言語 編集

アラビア語公用語である。

宗教 編集

イスラム教徒が9割以上(約92%)と多数を占める。次いでキリスト教が約7%で続く。

軍事 編集

1995年の自治合意後にパレスチナ警察が設置されたが、2000年のイスラエルとの軍事衝突により壊滅的な打撃を受けた。2005年にファタハ出身で大統領に就任したマフムード・アッバースは、国内の治安機関を内務庁・総合諜報局・保安隊英語版の3機関に統合した。一方で、2007年に成立したガザ政府では別に治安部隊が設置された。2017年10月、ガザ政府を率いるハマースは保有する行政権限をパレスチナ国政府に委譲することで合意した[11]

治安 編集

人権 編集

文化 編集

パレスチナ人の文化は、パレスチナの歴史的地域に存在してきた多様な文化や宗教の影響を受けている。パレスチナの文化的および言語的遺産は、アラビアの要素と、何千年にもわたってこの土地とその人々を支配するようになった外国文化の両方が融合したものである。

芸術、文学、音楽、衣装、料理の分野への文化的貢献は、パレスチナ領土のパレスチナ人、イスラエルのパレスチナ国民、ディアスポラのパレスチナ人の間で地理的に分離しているにもかかわらず、パレスチナ人のアイデンティティを表現している。

パレスチナ文化は、食べ物、踊り、伝説、歴史、ことわざ、ジョーク、俗信、習慣で構成されており、パレスチナ文化の伝統(口頭伝承を含む)を構成している。ニムル・シルハン、ムーサ・アルーシュ、サリム・ムバイイドなどのパレスチナ知識人の間での民俗学者の復活は、イスラム以前の文化的ルーツを強調した。

食文化 編集

パレスチナの料理は、パレスチナ地域に定住した文明の文化の拡散であり、特にアラブのウマイヤ朝の征服に始まり、最終的にはペルシアの影響を受けたアッバース朝、そしてトルコ料理の強い影響で終わるイスラム時代中およびその後に、その結果として生まれた。オスマン帝国の到来。レバノン料理、シリア料理、ヨルダン料理など、レバント料理に似ている。

世界遺産 編集

祝祭日 編集

スポーツ 編集

サッカー 編集

パレスチナ国内ではサッカーが最も人気のスポーツとなっており、2010年にプロリーグのウェストバンク・プレミアリーグが創設された。シャバブ・アル・ハリール英語版がリーグ最多7度の優勝を達成している。パレスチナサッカー協会(PFA)によって構成されるサッカーパレスチナ代表は、これまでFIFAワールドカップには未出場であるが、AFCアジアカップには2015大会2019大会2023年大会と3度の出場経験をもつ。

著名な出身者 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 詳細は「日本が承認していない国一覧」を参照。
  2. ^ この時点でアフガニスタンを実効支配するターリバーン政権ではなく、アシュラフ・ガニー政権に任命された大使が投票権を持っている。

出典 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集