FIFAワールドカップにおける賞(FIFAワールドカップにおけるしょう)は、大会終了後に国際サッカー連盟(FIFA)が決める賞である。賞には個人賞からチーム賞までさまざまある。

ゴールデンボール(大会最優秀選手) 編集

ゴールデンボールは、大会で最も活躍したとされる選手に与えられる賞である。正式名称は「アディダス・ゴールデンボール」で、記者による投票によって選出され、受賞者にはボールを模った金色のトロフィーが贈られる。得票数2位の選手がシルバーボールを、3位の選手がブロンズボールを受賞する。Rec.Sport.Soccer Statistics Foundationによれば1978年アルゼンチン大会から[1]、FIFAによれば1982年スペイン大会から制定された[2][注 1]

ゴールデンボール賞の選考投票は決勝戦よりも前に行なわれるため、必ずしも優勝チームから受賞者が出るとは限らない。同賞制定以降、優勝チームからの受賞者は11名中5名であり、94年アメリカ大会のロマーリオの受賞以来、2022年カタール大会のメッシまで28年間優勝チームからの選出がなかった。また、同賞を複数回受賞しているのは2022年現在、メッシが唯一である。なお、ベスト4入りしていないチームからの受賞者が出たことは一度もない。UEFACONMEBOL以外の受賞となると、2002年大会でブロンズボールを受賞した洪明甫のみである。

大会 ゴールデンボール シルバーボール ブロンズボール
1978   マリオ・ケンペス   パオロ・ロッシ   ジルセウ
1982   パオロ・ロッシ   パウロ・ロベルト・ファルカン   カール=ハインツ・ルンメニゲ
1986   ディエゴ・マラドーナ   ハラルト・シューマッハー   プレーベン・エルケーア・ラルセン
1990   サルヴァトーレ・スキラッチ   ローター・マテウス   ディエゴ・マラドーナ
1994   ロマーリオ   ロベルト・バッジョ   フリスト・ストイチコフ
1998   ロナウド   ダヴォール・シューケル   リリアン・テュラム
2002   オリバー・カーン   ロナウド   洪明甫
2006   ジネディーヌ・ジダン   ファビオ・カンナヴァーロ   アンドレア・ピルロ
2010   ディエゴ・フォルラン   ヴェスレイ・スナイデル   ダビド・ビジャ
2014   リオネル・メッシ   トーマス・ミュラー   アリエン・ロッベン
2018   ルカ・モドリッチ   エデン・アザール   アントワーヌ・グリーズマン
2022   リオネル・メッシ   キリアン・エムバペ   ルカ・モドリッチ

ゴールデンブーツ(得点王) 編集

ゴールデンブーツは、1つの大会で最も多く得点を決めた選手に与えられる賞である。得点数次第なので、他の賞と違って早期敗退でも与えられる可能性がある。正式名称は「アディダス・ゴールデンブーツ」で、1966年イングランド大会以降は、得点王にゴールデンブーツという黄金のシューズをかたどったトロフィーが授与されることになった。2006年ドイツ大会以降は、2番目に多く得点した選手をシルバーブーツ、3番目に多く得点した選手をブロンズブーツとしてそれぞれ表彰している。得点数が同数の場合、アシスト数や得点当たりの出場時間の短さなどを考慮して順位が定められる[12]2002年日韓大会以前については、単純に得点数の多い順に並べて記載することとする。 得点方法は問わないため、得点源の多くがPKだと批判されることもある。

大会 ゴールデンブーツ 得点数 シルバーブーツ 得点数 ブロンズブーツ 得点数
1930   ギジェルモ・スタービレ 8   ペドロ・セア 5   バート・パテナウデ
  ギジェルモ・スビアブレ
4
1934   オルドリッヒ・ネイエドリー 5   アンジェロ・スキアビオ
  エトムント・コーネン
4   ライムンド・オルシ
  レオポルト・キールホルツ
3
1938   レオニダス 7   ジェンゲッレール・ジュラ 6   シルヴィオ・ピオラ
  シャーロシ・ジェルジ
5
1950   アデミール 8   オスカル・ミゲス
  エスタニスラオ・バソラ
5   アルシデス・ギジャ
  シッコ
  テルモ・サラ
4
1954   シャーンドル・コチシュ 11   マックス・モーロック
  エーリッヒ・プロプスト
  ヨーゼフ・ヒューギ
6   ハンス・シェーファー
  ヘルムート・ラーン
  オットマール・ヴァルター
  ヒデクチ・ナーンドル
  フェレンツ・プスカシュ
  カルロス・ボルヘス
  ロベール・バラマン
4
1958   ジュスト・フォンテーヌ 13   ペレ
  ヘルムート・ラーン
6   ババ
  ピーター・マクパーランド
5
1962   ガリンシャ
  ババ
  レオネル・サンチェス
  ドラジャン・イェルコヴィッチ
  ワレンチン・イワノフ
  アルベルト・フローリアーン
4   アマリウド英語版
  アドルフ・シェレル
  ミラン・ガリッチ
  ティヒ・ラヨシュ
3   ハイメ・ラミレス
  エラディオ・ロハス
  ホルヘ・トロ
  ウーヴェ・ゼーラー
  ロン・フラワーズ
  イーゴリ・チスレンコ
  ヴィクトル・ポネデルニク
  ジャコモ・ブルガレッリ
  ホセ・サシャ
2
1966   エウゼビオ 9   ヘルムート・ハーラー 6   ジェフ・ハースト
  フランツ・ベッケンバウアー
  ワレリー・パルクヤン
  ベネ・フェレンツ
4
1970   ゲルト・ミュラー 10   ジャイルジーニョ 7   テオフィロ・クビジャス 5
1974   グジェゴシ・ラトー 7   ヨハン・ニースケンス
  アンジェイ・シャルマッフ
5   ゲルト・ミュラー
  ヨニー・レップ
  ラルフ・エドストレーム
4
1978   マリオ・ケンペス 6   ロブ・レンセンブリンク
  テオフィロ・クビジャス
5   レオポルド・ルケ
  ハンス・クランクル
4
1982   パオロ・ロッシ 6   カール=ハインツ・ルンメニゲ 5   ズビグニェフ・ボニエク
  ジーコ
4
1986   ゲーリー・リネカー 6   ディエゴ・マラドーナ
  カレカ
  エミリオ・ブトラゲーニョ
5   ホルヘ・バルダーノ
  プレーベン・エルケーア・ラルセン
  アレッサンドロ・アルトベッリ
  イーゴリ・ベラノフ
4
1990   サルヴァトーレ・スキラッチ 6   トマーシュ・スクラビー 5   ローター・マテウス
  ゲーリー・リネカー
  ロジェ・ミラ
  ミチェル
4
1994   フリスト・ストイチコフ
  オレグ・サレンコ
6   ロマーリオ
  ロベルト・バッジョ
  ケネト・アンデション
  ユルゲン・クリンスマン
5   マルティン・ダーリン
  フロリン・ラドチョウ
  ガブリエル・バティストゥータ
4
1998   ダヴォール・シューケル 6   ガブリエル・バティストゥータ
  クリスティアン・ヴィエリ
5   ロナウド
  ルイス・エルナンデス
  マルセロ・サラス
4
2002   ロナウド 8   リバウド
  ミロスラフ・クローゼ
5   ヨン・ダール・トマソン
  クリスティアン・ヴィエリ
4
2006   ミロスラフ・クローゼ 5   エルナン・クレスポ 3   ロナウド 3
2010   トーマス・ミュラー 5   ダビド・ビジャ 5   ヴェスレイ・スナイデル 5
2014   ハメス・ロドリゲス 6   トーマス・ミュラー 5   ネイマール 4
2018   ハリー・ケイン 6   アントワーヌ・グリーズマン 4   ロメル・ルカク 4
2022   キリアン・エムバペ 8   リオネル・メッシ 7   オリヴィエ・ジルー 4

ゴールデングローブ(最優秀GK) 編集

ゴールデングローブは、1つの大会で最も活躍したとされるGKに与えられる賞である。正式名称は「アディダス・ゴールデングローブ」で、1994年アメリカ大会に制定され、2006年ドイツ大会まではソビエト連邦代表の名GKだったレフ・ヤシンにちなんでヤシン賞と呼ばれていた。

大会 ヤシン賞 備考
1994   ミシェル・プロドーム ベスト16
1998   ファビアン・バルテズ 優勝
2002   オリバー・カーン 準優勝、大会MVPと同時受賞
2006   ジャンルイジ・ブッフォン 優勝
大会 ゴールデングローブ 備考
2010   イケル・カシージャス 優勝
2014   マヌエル・ノイアー 優勝
2018   ティボ・クルトゥワ 3位
2022   エミリアーノ・マルティネス 優勝

最優秀若手選手賞 編集

最優秀若手選手賞は、1つの大会で最も活躍した21歳以下の選手から選出される。正式名称は「ヒュンダイ・ベストヤングプレイヤー」で、2006年ドイツ大会から制定された。なお、2006年大会はスポンサーがジレットであった。FIFAは1958年スウェーデン大会から2002年日韓大会までの最優秀若手選手もインターネット投票を基に選出している[13][14]

大会 受賞者 年齢
1958   ペレ 17
1962   アルベルト・フローリアーン 20
1966   フランツ・ベッケンバウアー 20
1970   テオフィロ・クビジャス 21
1974   ヴワディスワフ・ジュムダ 20
1978   アントニオ・カブリーニ 20
1982   マニュエル・アモロ 20
1986   エンツォ・シーフォ 20
1990   ロベルト・プロシネチキ 21
1994   マルク・オーフェルマルス 21
1998   マイケル・オーウェン 18
2002   ランドン・ドノバン 20
2006   ルーカス・ポドルスキ 21
2010   トーマス・ミュラー 20
2014   ポール・ポグバ 21
2018   キリアン・エムバペ 19
2022   エンソ・フェルナンデス 21

フェアプレー賞 編集

フェアプレー賞は、大会に参加したチームの中で、選手に対し掲示されたイエローカードレッドカードなどが少ない等フェアプレー精神を発揮したチームに贈られる。正式名称は「FIFAフェアプレートロフィー」で、1970年メキシコ大会から制定された[15][16]

大会 受賞国
1970   ペルー
1974   西ドイツ
1978   アルゼンチン
1982   ブラジル
1986   ブラジル
1990   イングランド
1994   ブラジル
1998   フランス /   イングランド
2002   ベルギー
2006   ブラジル /   スペイン
2010   スペイン
2014   コロンビア
2018   スペイン
2022   イングランド

マン・オブ・ザ・マッチ 編集

マン・オブ・ザ・マッチ(: man of the match(MOM)は、すべての試合を対象に、その試合において最も印象的な選手に贈られる賞。2002年日韓大会から制定された。2002年からは技術グループによって2つのエディション(版)が選ばれ[17][18]、2010年からはFIFAのウェブサイトでオンライン投票によって選ばれている[19][20]

大会 最多受賞者 回数
2002   リバウド 3
2006   アンドレア・ピルロ 3
2010   ヴェスレイ・スナイデル 4
2014   リオネル・メッシ 4
2018   アントワーヌ・グリーズマン
  エデン・アザール
  ハリー・ケイン
  ルカ・モドリッチ
3
2022   リオネル・メッシ 5

通算受賞回数 編集

選手別

2022年12月18日現在

順位 受賞者 国籍 回数 受賞した大会
1 リオネル・メッシ   アルゼンチン 11 2010,2014,2018,2022
2 アリエン・ロッベン   オランダ 6 2006,2010,2014
クリスティアーノ・ロナウド   ポルトガル 2010,2014,2018
4 ルイス・アルベルト・スアレス   ウルグアイ 5 2010,2014,2018
5 エデン・アザール   ベルギー 4 2014,2018
本田圭佑   日本 2010,2014
ハメス・ロドリゲス   コロンビア 2014,2018
ミロスラフ・クローゼ   ドイツ 2002,2006
朴智星   韓国 2002,2006,2010
トーマス・ミュラー   ドイツ 2010,2014
ヴェスレイ・スナイデル   オランダ 2010
国籍別

2018年7月15日現在

順位 回数 選手数
1   ブラジル 22 14
  ドイツ 12
3   フランス 17 11
4   スペイン 16 10
5   アルゼンチン 15 8
6   イングランド 14 12
7   メキシコ 12 10
  オランダ 3
9   韓国 11 7
  ポルトガル 6
  アメリカ合衆国 7

エンターテイニングチーム賞 編集

エンターテイニングチーム賞(: FIFA Award for the Most Entertaining Team)は、大会に参加したチームの中で最もファンを魅了したとされるチームに贈られる。1994年アメリカ大会から2006年ドイツ大会まで制定されていた[21]

大会 受賞国
1994   ブラジル
1998   フランス
2002   韓国
2006   ポルトガル

FIFAワールドカップ オールスターチーム 編集

1994年大会からFIFAにより、それぞれの大会で活躍した選手がオールスターチームとして選出された。1994年大会は11人を、1998年大会から2002年大会までは16人を、2006年は23人を選出していた。2006年大会以降はFIFA公式のオールスターチーム(大会優秀選手)は選出していない。

大会 GK DF MF FW
1994   ミシェル・プロドーム   ジョルジーニョ
  マルシオ・サントス
  パオロ・マルディーニ
  ドゥンガ
  クラシミール・バラコフ
  ゲオルゲ・ハジ
  トマス・ブローリン
  ロマーリオ
  フリスト・ストイチコフ
  ロベルト・バッジォ
1998   ファビアン・バルテズ
  ホセ・ルイス・チラベルト
  ロベルト・カルロス
  マルセル・デサイー
  リリアン・テュラム
  フランク・デ・ブール
  カルロス・ガマーラ
  ドゥンガ
  リヴァウド
  ミカエル・ラウドルップ
  ジネディーヌ・ジダン
  エドガー・ダーヴィッツ
  ロナウド
  ダヴォール・シューケル
  ブライアン・ラウドルップ
  デニス・ベルカンプ
2002   オリバー・カーン
  リュシュテュ・レチベル
  ロベルト・カルロス
  ソル・キャンベル
  フェルナンド・イエロ
  洪明甫
  アルパイ・オザラン
  リヴァウド
  ロナウジーニョ
  ミヒャエル・バラック
  クラウディオ・レイナ
  柳想鐵
  ロナウド
  ミロスラフ・クローゼ
  エル=ハッジ・ディウフ
  ハサン・シャシュ
2006   ジャンルイジ・ブッフォン
  イェンス・レーマン
  リカルド・ペレイラ
  ロベルト・アジャラ
  ジョン・テリー
  リリアン・テュラム
  フィリップ・ラーム
  ファビオ・カンナバーロ
  ジャンルカ・ザンブロッタ
  リカルド・カルヴァーリョ
  ゼロベルト
  パトリック・ヴィエラ
  ジネディーヌ・ジダン
  ミヒャエル・バラック
  アンドレア・ピルロ
  ジェンナーロ・ガットゥーゾ
  ルイス・フィーゴ
  マニシェ
  エルナン・クレスポ
  ティエリ・アンリ
  ミロスラフ・クローゼ
  ルカ・トーニ
  フランチェスコ・トッティ

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ なお、FIFA.comの一部やタブロイド紙の『デイリー・メール』などでは1982年大会以前からゴールデンボールの授与が行われたかの記述があるが[3][4][5][6][7]、1966年大会から1978年大会にかけてFIFAが刊行した各大会のテクニカルレポートには、そのことを裏付ける記述はない[8][9][10][11]

出典 編集

  1. ^ FIFA World Cup Golden Ball Awards”. RSSSF.com. 2016年12月6日閲覧。
  2. ^ adidas Golden Ball”. FIFA.com. 2016年12月6日閲覧。
  3. ^ The King of football”. FIFA.com. 2017年1月12日閲覧。
  4. ^ The wounded 'Little Bird' who soared for Brazil”. FIFA.com. 2017年1月12日閲覧。
  5. ^ Knight who led the charge for Ramsey's England”. FIFA.com. 2017年1月12日閲覧。
  6. ^ The Netherlands' Grand Master”. FIFA.com. 2017年1月12日閲覧。
  7. ^ 100 World Cup heroes (100-81): Sportsmail counts down the iconic players... kicking off with stars Valderrama, Scifo and Barthez”. dailymail (2014年3月3日). 2017年1月12日閲覧。
  8. ^ World Championship - Jules Rimet Cup 1966 Final Competition TECHNICAL STUDY” (PDF). FIFA. 2017年1月12日閲覧。
  9. ^ World Championship - Jules Rimet Cup 1970 Final Competition TECHNICAL STUDY” (PDF). FIFA. 2017年1月12日閲覧。
  10. ^ FIFA World Cup 1974 - Final Competition TECHNICAL STUDY” (PDF). FIFA. 2017年1月12日閲覧。
  11. ^ OFFICIAL FIFA Report - WORLD CUP ARGENTINA 78” (PDF). FIFA. 2017年1月12日閲覧。
  12. ^ http://www.fifa.com/classicfootball/awards/golden/award=gsa/idcup=17/pastcupawards.html
  13. ^ Pele, Best Young Player Ever”. FIFA.com. 2009年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月14日閲覧。
  14. ^ Best Young Player Award - FIFA World Cup™ Final”. FIFA.com. 2013年1月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月14日閲覧。
  15. ^ http://www.fifa.com/classicfootball/awards/golden/award=FFP/idcup=17/pastcupawards.html
  16. ^ http://www.rsssf.com/miscellaneous/fifa-awards.html#fplay
  17. ^ 2002 FIFA World Cup Korea/Japan: Report and Statistics, p.44: "Marketing and Partners" and p.49: "Budweiser Man of the Match"
  18. ^ Man of the Match”. 2006 FIFA World Cup Official Website (Yahoo!). 2006年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月20日閲覧。
  19. ^ Man of the Match”. FIFA.com. 2010年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月20日閲覧。
  20. ^ Man of the Match Rules”. FIFA.com. 2014年7月20日閲覧。
  21. ^ http://www.fifa.com/classicfootball/awards/golden/award=met/idcup=17/pastcupawards.html

外部リンク 編集