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概要編集

原作は怪奇小説家として知られる黒沼健。後にゴジラシリーズの脚本に多く携わる関沢新一が最初に手がけた怪獣映画である。

当初、アメリカからの注文で全4部のテレビドラマとして制作が始まり、フィルムもスタンダードサイズだったが、途中から劇場公開が決まり、東宝特撮初のシネマスコープ版映画(東宝パンスコープ)となった[1]。好評であればシリーズ化も予定されていた[1]。準備稿でのタイトルは『東洋の怪物 大怪獣バラン』となっており、この副題は公開時のキャッチコピーや怪獣バランの二つ名としても用いられている[2]

ストーリー編集

東北地方北上川上流の秘境でシベリア地方にしかいないはずのアカボシウスバシロチョウ英語版[注 2]が発見された。ただちに杉本生物研究所の所員2人が調査に向かったが、原因不明の怪死を遂げる。

杉本博士の助手の魚崎、犠牲になった所員の妹で記者の由利子、カメラマンの堀口の3人は真相を解明すべく現地へ向かい、外部から隔絶された排他的で独自の神をあがめている岩屋村の人々と出会う。突如、彼らの前に湖から眠りを覚まされた怪獣バランが出現し、集落を破壊する。直ちに自衛隊が出動して攻撃を加えるが、バランは攻撃をものともせず、それどころか手足から皮膜を広げて飛び去ってしまう。

その後、銚子沖に現れたバランは東京湾から羽田空港に上陸する。バランの都心侵攻を阻止すべく、自衛隊が羽田空港に布陣する。

むささび怪獣 バラン編集

 
飛膜を広げたバラン

中生代恐竜(劇中では単に怪獣としか呼ばれない)バラノポーダの生き残りで、北上川上流の湖に棲み、外部から隔絶された集落で婆羅陀魏山神(バラダギサンジン、「バラダギサマ」とも称される)として崇拝されていた。顔の周りの角と背筋に並ぶ透明な長いトゲが特徴で、通常は四足歩行だが二本足で立ち上がることや、ムササビのように飛膜を広げて滑空することもできる。研究員たちを襲ったことがきっかけで正体が判明し、眠りを覚まされて集落を破壊して飛び去った後、銚子沖から羽田空港に上陸して暴れたが、光る物を飲み込む習性を利用され、科学者の藤村博士が作った強力な爆薬が仕込まれた照明弾を飲み込み、内部から爆破されて死亡。

  • マルサンによれば、「爬虫類ゴジラ属ラドン科バラノポーダ」[3]分類され、ポスターではゴジラ・ラドンをしのぐとされている。
  • 体長は十数メートルから100メートルと資料によってまちまちであるが、羽田空港に出現した時は、ゴジラのように巨大な生物として描かれている。
  • スーツアクターは手塚勝巳中島春雄
  • 別名は表題の「大怪獣[4]」のほか、「東洋の怪物[2]」「東洋の大怪獣[5]」「むささび怪獣[6]」「有翼膜竜[7]」など多数存在する。

造形編集

頭部は利光貞三、胴体は八木勘寿、八木康栄、表皮、背中のトゲは村瀬継蔵による。背中のトゲは、生物の一部らしい透明感を表現しようと村瀬が出したアイディアにより、切ったゴムホースの切り口にビニールテープを貼って作られた[8]。目には電飾が組み込まれている。背中のウロコは、ピーナッツの殻を押し付けたもの[9]。体色は、数少ないカラースチールから茶系[注 3]であることが確認できるが、人工着色のスチル写真では緑色となっている。

着ぐるみのほかに飛び人形、ギニョールも作られた[10]

飛行シーン用に作られた3分の1サイズのミニチュアは、1966年から1967年にかけて東宝倉庫での現存が確認されており、『週刊少年マガジン』などに写真が使われている。1966年7月19日に放送された『11PM』の大阪、よみうりスタジオで収録された「怪獣供養」では、バランの飛び人形が祭壇に飾られている[11]

『怪獣総進撃』にはこの3分の1サイズのミニチュアも使用されており、富士山麓のシーンで確認できる[12]。並行して『総進撃』には新造形の90センチモデルが使用されており、1980年代には同サイズのゴロザウルスモスラ成虫、『ノストラダムスの大予言』の大コウモリなどとともに東宝特美倉庫での保存が確認されている。現在も首のみ現存し、関連イベントで展示されることがある。

その他の作品に登場したバラン編集

  • 怪獣総進撃』では、怪獣ランドの怪獣として登場している。しかし、着ぐるみは状態が大変悪かったために使われず、新造された90センチメートルの人形がエピローグのカットなどに登場するのみであった。『怪獣総進撃命令』とされた検討用脚本ではラドンと共にキングギドラと戦う予定だったが、実際はマンダバラゴンと同様に戦闘には参加していない。また、鳴き声はなく名前すら呼ばれていないが、DVDによる映像特典では名前は呼ばれている。製作発表会のスチールでも、他の怪獣と並んで飛び人形が吊られているだけであった。一部の書籍では「体長50メートル」、「怪獣ランドで保護されている幼体と考えられている」と記載されている[13]
  • ゴジラ FINAL WARS』(2004年)では、ライブフィルムで登場した。
  • 地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』の検討稿『キングギドラの大逆襲!』ではゴジラの味方怪獣として[14]、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』ではゴジラと戦う護国聖獣として[15]登場させる予定があったが、どちらも途中で変更されている。ただし、『大怪獣総攻撃』の劇中に登場する書籍『護国聖獣伝記』には婆羅陀魏山神のことが描かれているほか、バラゴンの名前(婆羅護吽)に流用されている。なお、同作のキングギドラには顔の横にバランのようなヒレがついている。
  • ファミリーコンピュータ版ゲーム『ゴジラ』では、ボスキャラクターとして2面から最終面に登場する。本作ではX星人に操られる怪獣軍団の1匹という設定である。攻撃手段はパンチとキックのみ。一定以上のダメージを受けると、大きくのけぞる特徴を持つ。
  • 映画『アワモリ君乾杯!』(監督:古澤憲吾 / 主演:坂本九)では、後半で東宝砧撮影所を舞台として展開する追っかけシーンにバランの着ぐるみが登場する。
  • 1966年に朝日ソノラマから発売されたソノシート『大怪獣戦 30怪獣大あばれ!!』収録の「宇宙怪獣対地球怪獣」には、宇宙怪獣と戦う地球怪獣空軍の1体として登場する[16]
  • GODZILLA』(アニメーション3部作)では、前日譚を描いた小説版で登場。複数の個体が出現しており、2030年後半に確認された2体目の個体(バランII)は太平洋でゴジラに襲われ、アンギラスIVやバラゴンIIと共にロサンゼルスまで逃げ延びてきたが、飛んで逃れようとした瞬間に熱戦を浴びせられ、死亡した[17]

en:Varan

登場兵器編集

架空編集

特殊火薬
藤村博士が開発中の新型火薬。元々はダム工事の効率を上げるために作ろうとしていたもので、通常のダイナマイトと同じ量で使っても、その威力は20倍まで増大している。ただし、その威力を発揮するのは岩盤などの内部に埋め込まれた状態の時のみであり、直接貼り付けて爆発させれば、通常のダイナマイトと大差ないものである。
実際、この火薬を積み込んだトラックを乗り越えようとしたバランの真下で爆発させたものの、効果は上がらなかった。しかし、光る物質を飲み込むという習性を利用し、時限装置を付けて照明弾の中に入れ投下したところ、これをバランが飲み込み、体内で爆発させることに成功した。
24連装ロケット砲車

実在編集

キャスト編集

※映画本編クレジット順

スタッフ編集

※映画本編クレジット順

ノンクレジット
  • 監督助手:西村潔
  • 撮影助手:逢沢譲
  • 照明助手:森本正邦
  • 美術助手:立川英明、宮国登
  • 小道具組付:石川亀三郎、山本初美
  • 電飾:秋葉信夫
  • 記録:黒岩美穂子
  • 演技事務:中島清
  • 音楽事務:原田英雄
  • 経理担当:車田守
  • 宣伝係:島健三郎
  • スチール:田中一清
  • 現像:東洋現像所
特殊技術
ノンクレジット


同時上映編集

僕は三人前(フランキーの僕は三人前)』

海外版編集

アメリカでも『Varan the Unbelievable』の題でシネスコ版の映画として公開された[1]。監督はジェリー・バーウィッツ、脚本はシド・ハリス。音楽は儀式の曲以外は全て変更されている。

1958年10月に六社協定により劇映画のテレビ放映が禁止となり、テレビ映画として製作された作品でも劇場公開されたものはこの範疇に含まれ輸出の際もテレビ放映権を付与しないことが決定された。これにより、前述の通り本来はアメリカからの依頼でテレビドラマとして製作された本作も劇場公開されることとなった[1]

主人公は日本在住のアメリカ軍将校ブラットレー司令(演:マイロン・ハーレー)、ヒロインは彼の秘書シズ子(文献によってはシズカになっている、演:小林ツル子)に変更され、ストーリーもバラン撃破に出動したブラットレー司令がバランの逆襲に遭い、シズ子と共に洞窟に追い詰められる、最終的にバランは死なないなど、かなりオリジナル要素が含まれている。

備考編集

  • 雑誌『ハイパーホビー』のソフビ化して欲しい怪獣のアンケートにウルトラ怪獣に混ざって、バランがランクインしたことがある[要ページ番号]
  • 洋上でのバランとの戦闘には、ミニチュアワークと海上自衛隊の記録フィルムが効果的に使用され、迫力のある場面となっている。なお、登場する護衛艦は劇中で「哨戒艇〜」と呼ばれていた。
  • 原作者の黒沼健は、羽田空港の地下燃料貯蔵庫となってるエプロンで戦闘機が墜落自爆し、その大爆発にバランが巻き込まれるというラストシーンを提案したが、映画には採用されなかったとしている[19]
  • プール撮影中にライトの電源ボックスが水の中に落ちてしまい、バランの着ぐるみに入っていた手塚勝巳が感電して失神したが、救急車が来た頃には意識が戻っていた。また、トラックがバランの下で爆破するシーンでは中島春雄が腹を火傷した[20]
  • バランが船に突っ込むシーンは、相模川で中島が入ったバランの着ぐるみをワイヤーで釣ってモーターボートで引っ張って撮影したが、水の抵抗で着ぐるみが沈んでしまい、中島は溺れかけた(当人はそのことを覚えていない)[21]

映像ソフト編集

  • 1980年代に東宝から発売されていたVHSビデオでは、部落に関してや「日本のチベットと呼ばれる場所」といった、差別的表現にあたる台詞のあるシーンがカットされていた。
  • 1998年12月23日にニューマスターによるレーザーディスクとVHSが東宝ビデオより発売された[22]。映像・音声ともにノーカットで、新たに予告編などを収録している[22]
  • DVD
2005年1月21日発売。オーディオコメンタリー:村瀬継蔵(造形)(聞き手/中村哲
2014年2月7日、<期間限定プライス版>として再発売された。
2015年7月15日、<東宝DVD名作セレクション>として再発売された。
2018年4月17日、<ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX vol.47>として発売された。

漫画編集

『大怪獣バラン』あかしや書房 書き下ろし単行本 1958年10月5日発行 作画:藤田茂

脚注編集

脚注編集

  1. ^ 米国シネマスコープとほぼ同じワイドスクリーン版だが、専用のアナモルフィック・レンズを使用した方式ではなく、35ミリ・スタンダード版で撮影されたフィルム面の上下をブラックでマスキングしてシネマスコープ版に近い縦横比とした安価な方式。したがって撮影時に収録されているはずの映像情報がプリント面の上下で潰され、いくつかのカットでは人物の顔アップやミニチュアセットなどの上下が見切れたような画になっている。また、巻頭の東宝マークも東宝パンスコープ用のものが用いられている。
  2. ^ このチョウ自体は実在するが、実際の生息地は沿海州から朝鮮半島華南にいたる。
  3. ^ 村瀬はチョコレート系のセピア色と述べている[8]
  4. ^ 当初は藤木悠が候補に挙げられており、本読みが行われていた[18]

出典編集

  1. ^ a b c d 元山掌 et al. 2012, p. 37.
  2. ^ a b 元山掌 et al. 2012, p. 34.
  3. ^ バランが立った!マルサンのソフビ人形で直立ポーズのバランが漆黒成形で発売! - 電撃ホビーウェブ
  4. ^ 間宮尚彦『ゴジラ1954-1999超全集』小学館〈てれびくんデラックス〉、2000年1月1日、125頁。ISBN 4091014704
  5. ^ 元山掌 et al. 2012, p. 124.
  6. ^ 岩畠寿明、小野浩一郎『ゴジラvsキングギドラ 怪獣大全集』講談社〈講談社ヒットブックス〉、1991年12月5日、68、75。ISBN 4-06-177720-3
  7. ^ ゴジラ×メカゴジラ』劇場パンフレットより。
  8. ^ a b 元山掌 et al. 2012, p. 35.
  9. ^ 『怪獣秘蔵写真集 造形師村瀬継蔵』 洋泉社、2015年9月24日、259頁。ISBN 9784800307569 
  10. ^ 『ゴジラ 東宝特撮映画全史』講談社〈キャラクター大全〉、2014年、95頁。ISBN 9784062190046
  11. ^ 『特撮ニュータイプ』、角川書店、2012年4月、 [要ページ番号]
  12. ^ 『誕生40周年記念 ゴジラ大全集』講談社〈テレビマガジン特別編集〉、1994年。ISBN 406178417X
  13. ^ 「第3章 太古の巨獣 バラン(『怪獣総進撃』)」『ゴジラ完全解読』薗部真一ほか、宝島社〈別冊宝島2207号〉、114頁。ISBN 978-4-8002-2896-3
  14. ^ 田中友幸(監修)『エンサイクロペディア オブ ゴジラ ゴジラ大百科[メカゴジラ編]』GAKKEN、1993年、135頁。雑誌コード:62538-81。
  15. ^ 元山掌 et al. 2012, p. 274.
  16. ^ 『ゴジラ大辞典』 笠倉出版社、2004年、284頁。ISBN 4773002921 
  17. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 112-150, 第2章『G』
  18. ^ 大怪獣バラン - 本多猪四郎オフィシャルサイト
  19. ^ 黒沼健「現代に生きる怪異」(『謎と秘境物語』〈1959年、ASIN B000JAR29S〉に収録[要ページ番号]
  20. ^ 中島春雄 2010, pp. 208–209.
  21. ^ 中島春雄 2010, p. 211.
  22. ^ a b 「'98TV映画特撮LD・ビデオ&CD」『宇宙船YEAR BOOK 1999』朝日ソノラマ宇宙船別冊〉、1999年5月1日、65頁。雑誌コード:01844-05。

参考資料編集

関連項目編集

外部リンク編集