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失敗国家(しっぱいこっか、: Failed state)、破綻国家(はたんこっか)、或いは崩壊国家(ほうかいこっか)とは、権力の弱体化によって政府国家の構造(主権国家体制)を制御できなくなり[1]、政府が果たすべき基本的な責務(例えば、①正常に作動する法体系の維持、及び②国民に対する電気教育病院といった公共サービスの提供等)を果たせなくなっていると考えられるのことである[2]

ただし、国家がどの程度機能不全になれば「失敗国家」と見なすかについては当事者によって異なっており、地政学的に重大な結果や悪影響を及ぼす可能性がある事から特定の国家を「失敗国家」と宣言する行為には議論の余地がある[3]

定義・識別方法編集

失敗国家の定義について統一された見解は無いが、アメリカ合衆国シンクタンクの一つである平和基金会(FFP)は以下の通り定義している[4]。FFPは、これらの症状によって国家の機能が低下し、一つまたは複数の危機によって深刻な影響を受ける国を2014年から脆弱国家(ぜいじゃくこっか、: Fragile state)と呼称している。

  • (国家が有する)その領域に対する物理的な統制の喪失、或るいは合法的な武力の独占(暴力の独占)の喪失。(The loss of physical control of its territory or or a monopoly on the legitimate use of force.
  • 集団の意思決定を下す為の正統権限に対する侵害。(The erosion of legitimate authority to make collective decisions.
  • 合理的な公共サービス公益事業)の提供不能。(An inability to provide reasonable public services.
  • 国際社会の正式な一員として他国と接触する能力(外交活動)の不能 (The inability to interact with other states as a full member of the international community.

またFFP以外では、日本赤十字九州国際看護大学喜多悦子教授が、失敗国家を見分ける2つの簡単な基準として①「警察官兵士給料をきちんと払えていない国」と②「教師の給料をきちんと払っていない国」の2点を挙げている[5]

特徴及びテロリストとの関係編集

失敗国家にしばしば見られる特徴は、社会的、政治的もしくは経済的な破綻である。

名目的に存在する政府政治的・組織的に腐敗することで国内を統治する能力をほぼ喪失し、政府の正統性が弱体化すると共に政府と同等かそれ以上の権力を有する集団が誕生すると内戦状態に至る。政府の統治外にある地域実効支配しているのは軍閥(warlord)等地域の有力者であり、彼らの持つ私兵集団の軍事力で支配力を行使している。これらの中には、元は正規軍であったが兵士の給料の不払い等が続いた結果、私兵化した者も多い。中央の統制が及ばないので、地方ごとに有力者が勝手に独自の軍事組織を持ち、その他にも大小様々な自警団盗賊が出没する。最も、失敗国家の政府は一般に、国際的に国家主体と認められ徴税権ODA等の利権を持っているだけであり、実態は私兵組織と変わらない事が多い。例えば、ソマリアバーレ政権末期では、首都モガディシオの大統領官邸を中心にした数百メートルの範囲にしか支配力が及ばなかった。

失敗国家の国民生活は例外無く悪化する。これは政府の無力、腐敗によって行政が機能しなくなり、警察医療電気水道交通通信等の社会インフラストラクチャーが低下する為である。中でも治安は急速に悪化し、給料の遅配等により軍隊や警察では職場放棄やサボタージュが発生する。暴力装置たる兵士警察官が、自ら犯罪を実行する事態が起こる。この治安の悪化により、生産力と国民のモラルが低下する。農民が土地を捨てて難民化し飢餓が蔓延したり、略奪などが日常化したりする。また、 失敗国家は国際的なテロリストの隠れ場所となる。これは、行政の機能不全やインフラストラクチャーの低下を受け、失敗国家内にテロリストを逮捕できるような出入国管理や警察力が存在しないためである。実例として、アルカーイダは失敗国家の一つであるアフガニスタンに潜伏していた。また、最近ではソマリアがアルカーイダの拠点となっているともされ、アメリカ軍やエチオピア軍等による対テロ戦争も行われている。

脆弱国家ランキング (旧・失敗国家ランキング)編集

定量的なアプローチから国家の状態を診断するため、アメリカシンクタンクの一つである平和基金会(The Fund for Peace; FFP)は2006年(2005年度)から毎年、各国の状況を特定の指標によって数値化し、ランキング化した結果を発表している(下記外部リンク参照)。ランキング表は、発表開始から数年は名称を「失敗国家ランキング」とされていたが、2014年から「脆弱国家ランキング」(Fragile States Index; FSI)に変更されている[6]

評価対象国編集

FFPは、2005年度は75か国、2006年度は146か国、2013年度以降は178か国をランキングの評価対象国としている。基本的に国際連合加盟国を評価の対象としているが、ミニ国家の15か国(アンドラキリバスサンマリノセントクリストファー・ネイビスセントビンセント・グレナディーンセントルシアツバルドミニカ国トンガナウルバヌアツパラオマーシャル諸島モナコ、及びリヒテンシュタイン)は評価に必要となる情報が十分にそろわない為に評価の対象外となっている[7]

ただし、国連加盟国でも海外領土や自治領は対象国の一部として扱われず、国際連合総会オブザーバーバチカン市国も評価の対象とされていない。また、国際的な政治的地位が確定していない地域(事実上独立した地域)も、国連加盟国が国家としての地位を承認するまで対象から除外される[8]。事実上独立した地域のうち、①コソボ地位問題を抱えるコソボ[9]、②台湾問題を抱える台湾地区[10]、及び③西サハラ問題を抱える西サハラ[11]については全域が「主権を有する国家が未定の地域」として扱われているが、その他については独立前に属していた国の一部となっている。

注意すべき国・地域として、パレスチナ問題を抱えるイスラエルパレスチナ領域英語版(the Palestinian Territories)がある。パレスチナ領域は主権の帰属先が国際的に確定しておらず、国際連合総会オブザーバーパレスチナ国が全域の主権を主張する一方で、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区(ウェストバンク)の半数以上をイスラエルが実効支配している。その為FFPは、国際法が土地の統治責任を占領権力に委ねている点を理由に、パレスチナ領域をイスラエルの評価の一部に含める事とし[8]、イスラエル本国とウェストバンク加重平均値をイスラエルの評価に用いている。同時にFFPは国際的に主権の帰属先が未定となっているウェストバンクをイスラエル本国と別個の地域として扱い、イスラエルの国名を「イスラエル・ウェストバンク」(Israel and West Bank)[12]としている。また、同様の理由からFFPはイスラエルの範囲にゴラン高原[13]も含めている。

評価方法編集

 
各国を得点のカテゴリーごとに色で分類した図(2015年度版)
  持続可能:~9.9点(該当無し)
  持続可能:~19.9点
  持続可能:~29.9点
  安定:~39.9点
  安定:~49.9点
  安定:~59.9点
  要注意:~69.9点
  要注意:~79.9点
  要注意:~89.9点
  警報:~99.9点
  警報:~109.9点
  警報:~120点満点
  評価無し

FFPは、「CAST」と呼ばれる独自に開発した紛争評価の枠組みに基づいて各国の脆弱性を採点している[14]。評価方法は、国家の統治が脆弱化する要因となる12の指標(Indicators)をFFPが各10点満点の総計120点で採点し、点数が高い国ほど国家体制が「脆弱」(または「失敗」)であると評価する。この指標は、2005年度から2013年年度までは失敗国家指標The Failed States Index; FSI)、2014年度以降は脆弱国家指標The Fragile States Index; FSI)と呼ばれている。

12の指標は下記の通りであり、それぞれ「結束(力)」(Cohesion; C)、「経済」(Economic; E)、「政治」(Political; P)、「社会と分野横断」(Social and Crosscutting; S/X)のいずれかの分類に属する[15]。FFPは、各指標が考慮する問題点をホームページで公表している(各指標における考慮点の解説ページは下記の通り)。

  1. C1:安全保障装置の状態 (Security Apparatus)
  2. C2:利己的派閥的)なエリートの台頭 (Factionalized Elites)
  3. C3:不満分子の存在 (Group Grievance)
  4. E1:経済状況の悪化と貧困 (Economic Decline and Poverty)
  5. E2:不均一な経済発展 (Uneven Economic Development)
  6. E3:人材及び頭脳流出Human Flight and Brain Drain
  7. P1:国家正統性 (State Legitimacy)
  8. P2:公共サービス (Public Services)
  9. P3:人権及び法の支配 (Human Rights and Rule of Law)
  10. S1:人口構成圧力の増大 (Demographic Pressures)
  11. S2:難民及び国内避難民の大量移動 (Refugees and IDPs)
  12. X1:他の国家又は外部の主体の介入 (External Intervention)

各指標の得点を集計後、獲得した点数によって国家は下記のカテゴリーに区分される。

カテゴリー FSIの点数* 下層ランク (2015年-) 識別色
(2015年以降)
識別色
(2014年以前)
警報
(Alert)
90.0–120.0

非常に高い (Very high): 110-120
高い (High): 100–109.9
警報 (Alert): 90–99.9

    赤色     赤色
要注意
(Warning)
60.0–89.9

高い (High): 80–89.9
要注意 (Warning): 70–79.9
低い (Low): 60–69.9

    黄色
    橙色
    橙色
安定
(Stable)
30.0–59.9

より少ない安定 (Less stable): 50–59.9
安定 (Stable): 40–49.9
より多い安定 (More stable): 30–39.9

    緑色     黄色
持続可能
(Sustainable)
0.0–29.9

持続可能 (Sustainable): 20–29.9
非常に持続可能 (Very sustainable): 0–19.9

    青色     緑色
評価無し
(Not assessed)
N/A     灰色     灰色

最新のランキング編集

各国のランキング、及び各国が獲得した指標ごとの点数は、2006年度版から年毎にFFPのホームページで公開されている[16]。また、英語版ウィキペディアにある『List of countries by Fragile States Index』では、最新版のランクと過去2013年度以降との比較での総得点の動きを見ることができる。

2019年度のランキングにおける最高位、即ち最も失敗した(脆弱な)国とされているのはイエメン内戦が続くイエメン(1位)で総得点は113.5点である。逆に最下位、即ち最も安定した(持続可能性を有する)国とされているのは9年連続フィンランド(178位)で総得点は16.9点である。2006年度以降に最高位となった経験のある国はソマリア(7回)・南スーダン(4回)・スーダン(2回)・イエメン(1回)の4か国で、逆にランキング最下位となった経験のある国はフィンランド(9回)とノルウェー(5回)の2か国である。

2019年度のランキングをカテゴリー別に見ると、最も脆弱性が高いカテゴリー「警報」カテゴリーに属する国は31か国で、逆に持続可能性が最も高い「持続可能」カテゴリーに属する国は18か国だった。他のカテゴリーでは、「要注意」カテゴリーに88か国、「安定」カテゴリーに41か国が該当し、評価対象国の約半数が「要注意」カテゴリーに分類される結果となった。「警報」カテゴリーの国々を国連による世界地理区分で分類すると、ハイチアメリカ州)以外はいずれもアフリカ州[17]アジア州[18]に位置する国であった。逆に「持続可能」カテゴリーの国々は、約2/3がヨーロッパ州[19]に位置する国で、それ以外の国もシンガポール以外は「西洋」に属すると考えられる国が該当した。

主要国のランキングを見ると、G20参加国は下記の表の通りである。G7参加国は軒並み下位ではあるものの、ドイツ・カナダ以外は「持続可能」ではなく「安定」に分類されている。また、G7以外の国々は順位差が激しく、分類も「警報」に近い「要注意」から「持続可能」まで幅広く分類されている。

国名 順位 点数 カテゴリー 大州 備考
  アメリカ合衆国 153 38.0 安定 アメリカ州 国連安保理常任理事国G7参加国
  アルゼンチン 140 46.0 安定 アメリカ州
  イギリス 155 36.7 安定 ヨーロッパ州 国連安保理常任理事国G7参加国
  イタリア 143 43.8 安定 ヨーロッパ州 G7参加国
  インド 74 74.4 要注意 アジア州
  インドネシア 93 70.4 要注意 アジア州 サウジアラビアと同位
  オーストラリア 174 19.7 持続可能 オセアニア州
  カナダ 172 20.0 持続可能 アメリカ州 G7参加国
  サウジアラビア 93 70.4 要注意 アジア州 インドネシアと同位
  大韓民国 159 33.7 安定 アジア州
  中国 88 71.1 要注意 アジア州 国連安保理常任理事国
南アフリカと同位
  ドイツ 167 24.7 持続可能 ヨーロッパ州 G7参加国
  トルコ 59 80.3 要注意 アジア州
  日本 157 34.3 安定 アジア州 G7参加国
  ブラジル 83 71.8 要注意 アメリカ州
  フランス 160 32.0 安定 ヨーロッパ州 国連安保理常任理事国G7参加国
  南アフリカ共和国 88 71.1 要注意 アフリカ州 中国と同位
  メキシコ 98 69.7 要注意 アメリカ州
  ロシア 73 74.7 要注意 ヨーロッパ州 国連安保理常任理事国
主要国首脳会議参加国(参加資格停止中)


上記以外の国のランキングを見ると、ソマリア内戦が続きランキング最高位になった経験が最多のソマリアが2位、独立以降内戦と国境紛争が続きランキング最高位になった経験がある南スーダンが3位、シリア内戦が続くシリアが4位、ダルフール紛争が続きランキング最高位になった経験があるスーダンが8位、アフガニスタン紛争が続くアフガニスタンが9位、独裁者の恣意的な国政運営で21世紀に経済が壊滅状態となったジンバブエが10位、アメリカ州唯一の後発開発途上国であるハイチが12位、ISILによるテロが続発するイラクが13位、ロヒンギャを始めとする少数民族との紛争が絶えないミャンマー(ビルマ)が22位、宗教紛争民族紛争が絶えないパキスタンが23位、強力な個人崇拝国際社会の制裁が続く北朝鮮が26位、経済政策の失敗によるハイパーインフレーションが慢性化しクーデター未遂があったベネズエラが32位、事実上の絶対王政下で権力の腐敗が進むエスワティニが42位、米国からテロ支援国家の指定を受けているイランが52位、パレスチナ問題が未解決のイスラエルが67位、クーデターで発足した軍事政権から総選挙に基づく文民政権へ8年ぶりに交代したタイが77位、ヨーロッパで唯一の軍事衝突が継続しているウクライナが91位、アフリカで最も安定した(持続可能性を有する)国となったモーリシャスが150位、アジアで唯一「持続可能」カテゴリーに分類されたシンガポールが162位、ランキング最下位経験2か国と隣接するスウェーデンが170位、ランキング最下位となった経験のあるノルウェーが177位にそれぞれランクされている。

FSIから見える日本の脆弱性(失敗状態)編集

最新版(2019年度)のFSIにおいて、日本は178位中の157位で総得点は34.3点だった。過去の得点と比較すると、2018年度(前年度)に対し-0.2点、2014年度(5年前)に対し-2.0点、2009年度(10年前)に対し+3.1点となっている[20]。日本の順位は前年(158位)より1つ上がり、G7諸国の中では4番目に安定した国になっている。

この数値は、「安定」カテゴリーの「より多い安定」ランクに属するもので、同じランクに属する他の国は点数が低い順にフランス、韓国、ウルグアイマルタ、イギリス、チェコ、アメリカ、リトアニアモーリシャスチリの10か国あり、日本はウルグアイ(34.0点)とマルタ(34.5点)の間に位置している。また、FSIランキングの首位(イエメン)と最下位(フィンランド)の点数と比較すると、イエメンに対し-79.2点、フィンランドに対し+17.4点となっている。

日本は2006年度から2008年度までFSIの総合得点が30点未満の「持続可能」カテゴリーに属し、最も総得点が低かったのは2006年度の28.0点だった。だが、リーマン・ショックの影響から2009年度以降は総合得点が30点以上となり、「持続可能」の1ランク下の「安定」カテゴリーに属することになった。更に、2012年度は東日本大震災の影響により総得点が過去最高の43.5点(前年比+12.5点)を記録し、G7の中でカナダに次いで2番目に安定した国からイタリアに次いで2番目に脆弱性が高い国に2017年度まで転落した。翌2013年度に得点は36.1点(前年比-7.4点)にまで減少し、熊本地震の影響を受けた2017年度を除き、2014年度以降は点数が緩やかに減少しつつある。

最新版(2018年度)における各指標の値、及び前年度からの点数の変化(括弧内に記載)は下記の通りである。また参考として、5年前、10年前、及び総合的に最も安定していた2006年度の数値と最新版との比較(括弧内に記載)も併記している。

日本の脆弱国家指標(FSI)
指標 最新版 (2019年度) 5年前 (2014年度) 10年前 (2009年度) 最も安定 (2006年度)
C1:安全保障装置の状態 1.6点 (前年比:-0.3点) 1.9 (最新比:+0.3) 2.0 (最新比:+0.4) 1.0 (最新比:-0.6)
C2:利己的(派閥的)なエリートの台頭 2.6点 (前年比:+/-0点) 2.6 (最新比:+/-0) 2.0 (最新比:-0.6) 1.3 (最新比:-1.3)
C3:不満分子の存在 3.1点 (前年比:-0.3点) 4.1 (最新比:+1.0) 3.8 (最新比:+0.7) 3.8 (最新比:+0.7)
E1:経済状況の悪化と貧困 3.5点 (前年比:-0.3点) 3.6 (最新比:+0.1) 3.1 (最新比:-0.4) 2.6 (最新比:-0.9)
E2:不均一な経済発展 1.4点 (前年比:+0.1点) 2.1 (最新比:+0.7) 2.5 (最新比:+1.1) 2.5 (最新比:+1.1)
E3:人材及び頭脳流出 3.3点 (前年比:-0.2点) 2.3 (最新比:-1.0) 2.0 (最新比:-1.3) 2.0 (最新比:-1.3)
P1:国家正統性 0.9点 (前年比:+/-0点) 2.0 (最新比:+1.1) 2.0 (最新比:+1.1) 1.8 (最新比:+0.9)
P2:公共サービス 1.6点 (前年比:-0.3点) 2.4 (最新比:+0.8) 1.2 (最新比:-0.4) 1.0 (最新比:-0.6)
P3:人権及び法の支配 3.2点 (前年比:+0.1点) 3.3 (最新比:+0.1) 3.4 (最新比:+0.2) 3.0 (最新比:-0.2)
S1:人口構成圧力の増大 6.2点 (前年比:+1.7点) 4.7 (最新比:-1.5) 4.2 (最新比:-2.0) 4.0 (最新比:-2.2)
S2:難民および国内避難民の大量移動 3.8点 (前年比:-0.3点) 3.4 (最新比:-0.4) 1.1 (最新比:-2.7) 1.0 (最新比:-2.8)
X1:他の国家又は外部の主体の介入 3.2点 (前年比:-0.3点) 3.9 (最新比:+0.7) 3.9 (最新比:+0.7) 4.0 (最新比:+0.8)
総得点数 34.3点 (前年比:-0.2点) 36.3点 (最新比:+2.0) 31.2 (最新比:-3.1) 28.0 (最新比:-6.3)

12個ある指標は、「S1:人口構成圧力の増大」が10点満点の半数(5.0点)以上、それ以外では3つの指標が満点の凡そ1/3にあたる3.4点以上となっている。状態の悪い(点数が多い)指標のワースト3は、1位が「S1:人口構成圧力の増大」の6.2点、2位は「S2:難民および国内避難民の大量移動」の3.8点、3位は「E1:経済状況の悪化と貧困」の3.5点であった。

前年の点数と比較すると、3つの指標が悪化し、7つの指標が改善し、2つの指標が変化無しだった。変動幅が最も大きかったのは「S1:人口構成圧力の増大」の+1.7点で、2番目は「C1:安全保障装置の状態」・「C3:不満分子の存在」・「E1:経済状況の悪化と貧困」・「P2:公共サービス」・「S2:難民および国内避難民の大量移動」・「X1:他の国家又は外部の主体の介入」の-0.3点、3番目は「E3:人材及び頭脳流出」の-0.2点だった。

最新版と過去のFSIを比較すると、5年前(2014年度)の場合、FSI総得点は-2.0点改善している。指標ごとに見ると、3つの指標が悪化し、8つの指標が改善し、1つの指標が変化無しだった。最も悪化した指標は「S1:人口構成圧力の増大」で+1.5点上がっている。2番目は「E3:人材及び頭脳流出」で+1.0点、3番目に「S2:難民および国内避難民の大量移動」で+0.4点それぞれ上がっている。逆に最も改善した指標は「P1:国家の正統性」の-1.1点で、2番目は「C3:不満分子の存在」で-1.0点、3番目は「P2:公共サービス」の-0.8点となっている。

10年前(2009年度)の場合、総得点は+3.1点悪化している。指標ごとに見ると、6つの指標が悪化し、6つの指標が改善している。最も悪化した指標は「S2:難民および国内避難民の大量移動」で+2.7点上がっている。2番目は「S1:人口構成圧力の増大」で+2.0点、3番目に「E3:人材及び頭脳流出」で+1.3点それぞれ上がっている。逆に最も改善した指標は「E2:不均一な経済発展」及び「P1:国家の正統性」で-1.1点で、2番目は「C3:不満分子の存在」及び「X1:他の国家又は外部の主体の介入」及びので-0.7点、3番目は「C1:安全保障装置の状態」の-0.4点となっている。

また、リーマンショック東日本大震災が発生する前で総得点が最も低かった2006年度と最新版を比較すると、FSI総得点は+6.3点悪化している。指標ごとに見ると、8つの指標が悪化し、4つの指標が改善した。1.0点以上の変動は、悪化した指標で4つ、改善した指標で1つあった。最も悪化した指標は「S2:難民および国内避難民の大量移動」で+2.8点となっている。以下、2番目は「S1:人口構成圧力の増大」の+2.2点、3番目は「C2:利己的(派閥的な)エリートの台頭」及び「E3:人材及び頭脳流出」で+1.3点、4番目は「E1:経済状況の悪化と貧困」で+0.9点それぞれ悪化した。逆に最も改善した指標は「E2:不均一な経済発展」で-1.1点改善されている。

FSIの統計をまとめると、下記の2点が言える。

  1. 2011年度以外は常に点数が4.0点以上と高くなっている「S1:人口構成圧力の増大」(中でも持続可能な人口増加率)が慢性的に日本の抱えている脆弱性である。
  2. リーマン・ショックの影響から2010年度以降に点数が3.4点以上となっている「E1:経済状況の悪化と貧困」と、東日本大震災の影響から2012年度以降に点数が3.4点以上となっている「S2:難民および国内避難民の大量移動」の2点が、国家が現実に対応しきれていない脆弱性である。

各年のトップ20編集

順位 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年[21] 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
1

  コートジボワール

  スーダン (+2)

  スーダン (0)

  ソマリア (+2)

  ソマリア (0)

  ソマリア (0)

  ソマリア (0)

  ソマリア (0)

  ソマリア (0)

  南スーダン (+3)

  南スーダン (0)

  ソマリア (+1)

  南スーダン (+1)

  南スーダン (0)

  イエメン(+2)

2

  コンゴ民主共和国

  コンゴ民主共和国 (0)

  イラク (+2)

  スーダン (-1)

  ジンバブエ (+1)

  チャド (+2)

  チャド (0)

  コンゴ民主共和国 (+2)

  コンゴ民主共和国 (0)

  ソマリア (-1)

  ソマリア (0)

  南スーダン (-1))

  ソマリア (-1)

  ソマリア (0)

  ソマリア (0)

3

  スーダン

  コートジボワール (-2)

  ソマリア (+4)

  ジンバブエ (+1)

  スーダン (-1)

  スーダン (0)

  スーダン (0)

  スーダン (0)

  スーダン (0)

  中央アフリカ (+6)

  中央アフリカ (0)

  中央アフリカ (0)

  中央アフリカ (0)

  イエメン(+1)

  南スーダン (-2)

4

  イラク

  イラク (0)

  ジンバブエ (+1)

  チャド (+1)

  チャド (0)

  ジンバブエ (-2)

  コンゴ民主共和国 (+1)

  チャド (-2)

  南スーダン (0)

  コンゴ民主共和国 (-2)

  スーダン (+1)

  スーダン (0)

  イエメン(+1)

  シリア (+2)

  シリア (0)

5

  ソマリア

  ジンバブエ (+10)

  チャド (+1)

  イラク (-3)

  コンゴ民主共和国 (+1)

  コンゴ民主共和国 (0)

  ハイチ (+6)

  ジンバブエ (+1)

  チャド (-1)

  スーダン (-2)

  コンゴ民主共和国 (-1)

  イエメン(+2)

  スーダン (-1)

  中央アフリカ (-2)

  コンゴ民主共和国 (+1)

6

  シエラレオネ

  チャド (+1)

  コートジボワール (-3)

  コンゴ民主共和国 (+1)

  イラク (-1)

  アフガニスタン (+1)

  ジンバブエ (-2)

  アフガニスタン (+1)

  イエメン (+2)

  チャド (-1)

  チャド (0)

  シリア (+3)

  シリア (0)

  コンゴ民主共和国 (+1)

  中央アフリカ (-1)

7

  チャド

  ソマリア (-2)

  コンゴ民主共和国 (-5)

  アフガニスタン (+1)

  アフガニスタン (0)

  イラク (-1)

  アフガニスタン (-1)

  ハイチ (-2)

  アフガニスタン (-1)

  アフガニスタン (0)

  イエメン(+1)

  チャド (-1)

  コンゴ民主共和国 (+1)

  スーダン (-2)

  チャド (+1)

8

  イエメン

  ハイチ (+2)

  アフガニスタン (+2)

  コートジボワール (-2)

  中央アフリカ (+2)

  中央アフリカ (0)

  中央アフリカ (0)

  イエメン (+5)

  ハイチ (-1)

  イエメン (-2)

  アフガニスタン (-1)

  コンゴ民主共和国 (-3)

  チャド (-1)

  チャド (0)

  スーダン (-1)

9

  リベリア

  パキスタン (+25)[22]

  ギニア (+2)

  パキスタン (+3)

  ギニア (+2)

  ギニア (0)

  イラク (-2)

  イラク (0)

  中央アフリカ (+1)

  ハイチ (-1)

  シリア (+7)[23]

  アフガニスタン (-1)

  アフガニスタン (0)

  アフガニスタン (0)

  アフガニスタン (0)

10

  ハイチ

  アフガニスタン (+1)

  中央アフリカ (+3)

  中央アフリカ (0)

  パキスタン (-1)

  パキスタン (0)

  コートジボワール (+2)

  中央アフリカ (-2)

  ジンバブエ (-5)

  パキスタン (+3)

  ギニア (+2)

  ハイチ (+1)

  イラク (+1)

  ジンバブエ (+4)

  ジンバブエ (0)

11

  アフガニスタン

  ギニア (+5)

  ハイチ (-3)

  ギニア (-2)

  コートジボワール (-3)

  ハイチ (+1)

  ギニア (-2)

  コートジボワール (-1)

  イラク (-2)

  ジンバブエ (-1)

  ハイチ (-2)

  イラク (+1)

  ハイチ (-1)

  イラク (-1)

  ギニア (+2)

12

  ルワンダ

  リベリア (-3)

  パキスタン (-3)

  バングラデシュ (+4)

  ハイチ (+2)

  コートジボワール (-1)

  パキスタン (-2)

  ギニア (-1)

  コートジボワール (-1)

  ギニア (+2)

  イラク (+1)

  ギニア (-2)

  ギニア (0)

  ハイチ (-1)

  ハイチ (0)

13

  北朝鮮

  中央アフリカ (+7)

  北朝鮮 (+1)

  ミャンマー (+2)

  ミャンマー (0)

  ケニア (+1)

  イエメン (+2)

  パキスタン (-1)

  パキスタン (0)

  イラク (-2)

  パキスタン (-3)

  ナイジェリア(+3)

  ナイジェリア(0)

  ギニア (-1)

  イラク (-2)

14

  コロンビア

  北朝鮮 (-1)

  ミャンマー (+4)

  ハイチ (-3)

  ケニア (+12)

  ナイジェリア (+1)

  ナイジェリア (0)

  ナイジェリア (0)

  ギニア (-2)

  コートジボワール (-2)

  ギニア (+2)

  パキスタン (-1)

  ジンバブエ (+3)[24]

  ナイジェリア(-1)

  ナイジェリア(0)

15

  ジンバブエ

  ブルンジ (+3)

  ウガンダ (+6)[25]

  北朝鮮 (-2)

  ナイジェリア (+3)

  イエメン (+4)

  ニジェール (+5)

  ギニアビサウ (+3)

  ギニアビサウ (0)

  シリア (+6)[26]

  コートジボワール (-1)

  ブルンジ (+3)

  エチオピア (+9)[27]

  エチオピア (0)

  ブルンジ (+3)

16

  ギニア

  イエメン (-8)

  バングラデシュ (+3)

  エチオピア (+2)

  エチオピア (0)

  ミャンマー (-3)

  ケニア (-3)

  ケニア (0)

  ナイジェリア (-2)

  ギニアビサウ (-1)

  ジンバブエ (-5)

  ジンバブエ (0)

  ギニアビサウ (+1)

  ギニアビサウ (0)

  カメルーン (+7)[28]

17

  バングラデシュ

  シエラレオネ (-11)

  ナイジェリア (+5)[29]

  ウガンダ (-1))[30]

  北朝鮮 (-2)

  エチオピア (-1)

  ブルンジ (+6)

  エチオピア (+3)

  ケニア (-1)

  ナイジェリア (-1)

  ギニアビサウ (-1)

  ギニアビサウ (0)

  ブルンジ (-2)

  ケニア (+5)[31]

  エリトリア (+2)

18

  ブルンジ

  ミャンマー (+5)[32]

  エチオピア (+8)[33]

  レバノン (+10)[34]

  イエメン (+3)

  東ティモール (+2)

  ギニアビサウ (+4)[35]

  ブルンジ (-1)

  ニジェール (+1)

  ケニア (-1)

  ブルンジ (+3)[36]

  エリトリア (+6)

  パキスタン (-3)[37]

  ブルンジ (0)[38]

  ニジェール (+3)[39]

19

  ドミニカ共和国

  バングラデシュ (-2)

  ブルンジ (-4)

  ナイジェリア (-1)

  バングラデシュ (-7)

  北朝鮮 (-2)

  ミャンマー (-2)[40]

  ニジェール (-3)

  エチオピア (-2)

  エチオピア (0)[41]

  エチオピア (0)[42]

  ニジェール (+1)

  エリトリア (-1)

  エリトリア (0)

  ギニアビサウ (-3)

20

  中央アフリカ

  ネパール (+15)[43]

  東ティモール (N/A)[44]

  スリランカ (+5)[45]

  東ティモール (+5)

  ニジェール (+4)

  エチオピア (-3)

  ウガンダ (+1)

  ブルンジ (-2)

  ニジェール (-1)[46]

  ニジェール (-1)[47]

  ケニア (+1)

  ニジェール (-1)

  パキスタン (-2)

  ウガンダ (+4)[48]

凡例:2012年までは
  危険
  注意
  不明 / 属領
  普通
  安定
2013年は
  危険
  注意
  普通
  安定
  

脚注編集

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  1. ^ failed stateオックスフォード現代英英辞典
  2. ^ failed stateケンブリッジ英英辞典英語版
  3. ^ Patrick, Stewart (2007). “'Failed' States and Global Security: Empirical Questions and Policy Dilemmas”. International Studies Review (Blackwell Publishing) 9 (4): 644–662. doi:10.1111/j.1468-2486.2007.00728.x. 1079-1760. 
  4. ^ What Does State Fragility Mean?
  5. ^ 松本 2004, p. 177
  6. ^ 世界脆弱国家ランキング、南スーダンが最も脆弱 CNN.co.jp 2014年7月12日閲覧。
  7. ^ How Many Countries are Included in the Fragile States Index?
  8. ^ a b Why Are Some Countries or Territories Not Included in the Index?
  9. ^ ほぼ全域をコソボ共和国が実効支配する一方で、国連の暫定統治以前に主権を行使していたセルビアが引き続き領有権を主張している。国連加盟国の過半数はコソボ共和国を国家承認しているが、国連安保理常任理事国ロシア中国、及びその他の国々はセルビアの主張を支持している。
  10. ^ 全域を中華民国が実効支配する一方で、中華人民共和国が領有権を主張している。両者とも「一つの中国」という政策的立場を採る都合上、国連加盟国の大多数は中華民国を国家承認していないが、中華人民共和国以外の国連安保理常任理事国やG20参加国等は台北経済文化代表処を通じて中華民国と事実上の外交関係を有している。
  11. ^ モロッコサハラ・アラブ民主共和国が実効支配地域を確保し、両者とも全域の領有権を主張している。国連加盟国はモロッコの実効支配に正統性を認めない一方、国連安保理常任理事国を含む過半数の加盟国はサハラ・アラブ民主共和国を国家承認しておらず、国際連合西サハラ住民投票ミッションが展開されている。
  12. ^ 「パレスチナ」ではなく「ウェストバンク」となっているのは、2005年ガザ地区等撤退によりガザ地区内ではイスラエルの占領権力が失われている為である。
  13. ^ 第三次中東戦争でイスラエルが占領し、1981年にイスラエルが本土に併合したシリアの領土。国連安保理を始め国際的にはイスラエルの一部として認められていない。
  14. ^ indicators
  15. ^ Indicators: Fragile States Index
  16. ^ Global Data: Fragile States Index
  17. ^ 西アフリカ8か国、東アフリカ7か国、中部アフリカ6か国、北アフリカ2か国の計23か国。
  18. ^ 西アジア3か国、南アジア2か国、東南アジア東アジア各1か国の計7か国。
  19. ^ 北ヨーロッパ6か国、西ヨーロッパ6か国、南ヨーロッパ2か国の計14か国。
  20. ^ Country Dashboard : Fragile States Index「Select Country to View」のマスで「Japan」を選択のこと。
  21. ^ 南スーダンは2011年7月9日に独立したため、他国と正確に比較することは困難であるため、2012年度失敗国家ランキングでは、順位が付けられていない。もし付けた場合は、順位は4位に相当する。
  22. ^ 2005年、パキスタンは34位であった。
  23. ^ 2015年、アフガニスタンと同率の8位であった。
  24. ^ 2017年、ナイジェリアと同率の13位であった。
  25. ^ 2006年、ウガンダは21位であった。
  26. ^ 2013年、シリアは21位であった。
  27. ^ 2016年、エチオピアは24位であった。
  28. ^ 2018年、カメルーンは23位であった。
  29. ^ 2006年、ナイジェリアは22位であった。
  30. ^ エチオピアと同率16位。
  31. ^ 2017年、ケニアは22位であった。
  32. ^ 2005年、ビルマ/ミャンマーは23位であった。
  33. ^ 2006年、エチオピアは26位であった。
  34. ^ 2007年、レバノンは28位であった。
  35. ^ ミャンマーと同率の18位。
  36. ^ 2013年、ブルンジは21位であった。
  37. ^ 2017年、パキスタンは同率17位であった。
  38. ^ 2018年、ブルンジは同率17位であった。
  39. ^ 2018年、ニジェールは21位であった。
  40. ^ ギニアビサウと同率の18位。
  41. ^ ニジェールと同率19位。
  42. ^ ニジェールと同率19位。
  43. ^ 2005年、ネパールは35位であった。
  44. ^ 2007年より、Timor-Leste(東ティモール)が含まれている。
  45. ^ 2007年、スリランカは25位であった。
  46. ^ エチオピアと同率19位。
  47. ^ エチオピアと同率19位。
  48. ^ 2018年、ウガンダは24位であった。
  49. ^ アーカイブされたコピー”. 2015年2月6日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2015年1月29日閲覧。 The Failed States Index 2013, Foreign Policy, accessed 19 AUG 2013

参考文献編集

  • 松本仁一『カラシニコフ』朝日新聞社、2004年。ISBN 978-40225792944章「失敗した国々」
  • 伊勢崎賢治『武装解除』 講談社現代新書 2004年 ISBN 4-06-149767-7
  • 遠藤貢「崩壊国家と国際社会――ソマリアと『ソマリランド』――」(川端正久・落合雄彦編『アフリカ国家を再考する』晃洋書房 p131~152,2006年.
  • 遠藤貢「ソマリアにおける「紛争」と国家形成をめぐる問題系」佐藤章編『アフリカ・中東における紛争と国家形成』調査研究報告書 アジア経済研究所 2010 年
  • 遠藤貢『崩壊国家と国際安全保障 -- ソマリアにみる新たな国家像の誕生』 有斐閣 2015年 ISBN 4-64-114913-5

関連項目編集

外部リンク編集