ひらがな・カタカナ地名
ひらがな・カタカナ地名(ひらがな・カタカナちめい)は、地名を命名法・由来などをもとに分類した地名種類の一種である。仮名書き地名(かながきちめい)とも呼ばれる。日本の地名表記のなかで漢字で地名を全て表記していない場合に言われる。
概要編集
一部に漢字を用いる場合もこれに含まれるが、長野県下高井郡山ノ内町の「ノ」のように助詞を漢字で表記せずに用いるものは含まない。ひらがな・カタカナの市町村名は当て字でひらがなではない漢字表記が存在する。それを、イメージアップを狙って、あやかって、漢字よりも優しく感じる等の理由で意図的にひらがな表記にしたものである。市町村合併、特に新設合併によって誕生する事例が多く、「柔らかなイメージを持たせるため」という理由で付けられることが多い[1]。一方で2019年1月現在、都道府県名・郡名・区名にはひらがな・カタカナのものはなく、新たに生まれる予定もない。
町丁名などには漢字表記が当てられていないものや、施設名をそのまま地名にしたものもある。また、小字などでは、正式な文字表記が不明であり、便宜上カタカナ表記される例もある。
ひらがな・カタカナ地名に関する議論編集
ひらがな・カタカナ地名そのものや、そうした新地名を創作し採用しようとする行政の姿勢が、地域住民からの反発を招くことがあり、市町村合併が破談に至るケースもあった。
南アルプス市のような漢字とカタカナの組み合わせもあるが、市名の一般公募の投票結果では、市域が所属していた巨摩郡にちなむ「巨摩野」「こま野」「こまの」などの合計の方が多かったが、単独で最多だったため決まった。この問題については、南アルプス市#市名についても参照。
南アルプス市の誕生の翌年には、愛知県で南セントレア市騒動が起きた。市域内ではなく隣の自治体(常滑市)にある中部国際空港にあやかろうと、ひらがな・カタカナ地名を合併後の市名に用いようとしたことを理由に、合併賛成派だった市民の反対を招き、合併自体が破談になった。そのため南アルプス市も、南セントレア市の騒動後に市名が決定された場合は揉めた可能性があるとの分析がある[1]。
ひらがな・カタカナの市区町村名称に対する反対意見は多い。gooがアンケートを取った際にはさいたま市、せたな町、まんのう町、つくばみらい市、さつま町、おいらせ町、かすみがうら市、うるま市、むつ市、さぬき市が上位10位だった。さいたま市は浦和市・大宮市・与野市が合併する際に、市民だけでなく国内外から都市名を決める公募を行った。「埼玉市」が7,117票1位、「さいたま市」が3,821票で2位だったが、委員会で「県名と同じで全国的にも分かりやすい」「漢字よりも優しい感じがする」という理由で公募の投票結果が無視され、2位のひらがな地名に決まったこともあり批判もあった[2][3]。
また、さいたま市については広域地名として、県内の他市(旧埼玉郡に属し「埼玉」の地名発祥の地とされる行田市)からの批判もあった。広域地名#批判的観点、さいたま市#現代、行田市#歴史も参照。
ひらがな・カタカナ市町村名一覧編集
市町村名にひらがなやカタカナを含む市町村を一覧にしたもの。括弧内に本来の漢字・アルファベット表記を示す。
ひらがなを含むもの編集
- 北海道
- 青森県
- 秋田県
- にかほ市(仁賀保)
- 福島県
- 茨城県
- 栃木県
- 群馬県
- 埼玉県
- さいたま市(埼玉。住民投票の2位。ちなみに住民投票1位は埼玉市だったであったが、2位が採用された。埼玉県の埼玉は行田市埼玉(さきたま)が由来。県庁所在地の中で唯一ひらがなが用いられている)
- ふじみ野市(富士見野。隣接する富士見市に所在し、富士見市から駅名が採られた東武東上線のふじみ野駅が由来)
- 比企郡ときがわ町(都幾川)
- 千葉県
- いすみ市(夷隅)
- 東京都
- あきる野市(秋留野、阿伎留野 ※本来は万葉仮名)
- 石川県
- 福井県
- 愛知県
- 三重県
- いなべ市(員弁)
- 兵庫県
- 和歌山県
- 香川県
- 徳島県
- 高知県
- 福岡県
- 佐賀県
- 熊本県
- 宮崎県
- 鹿児島県
- 沖縄県
カタカナを含むもの編集
- 北海道
- 山梨県
かつて存在したもの編集
実際に使用されることがなかったもの編集
市町村合併などにより新市町村名に決定したが、合併の破談や名称の再検討により、日の目を見なかった名称を以下に挙げる。なお、候補に挙がっただけのものは除く。
ひらがなを含むもの編集
- 北海道東さっぽろ市(空知郡南幌町と夕張郡由仁町・栗山町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談)
- 北海道ひだか市(新冠郡新冠町・静内郡静内町・三石郡三石町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談→静内町・三石町は新ひだか町に)
- 宮城県あぶくま市(角田市と伊具郡丸森町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談)
- 山形県はながさ市(尾花沢市と北村山郡大石田町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談)
- 栃木県みかも市(下都賀郡大平町・藤岡町・岩舟町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談→3町は栃木市に編入)
- 埼玉県こだま市(本庄市と児玉郡美里町・児玉町・神川町・神泉村・上里町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談→神川町・神泉村は神川町に、本庄市・児玉町は新設合併して「本庄市」に)
- 岐阜県ひらなみ市(海津郡海津町・平田町・南濃町が合併後に使用する予定だった市名。住民アンケートの結果を受け海津市に変更)
- 岡山県あかいわ市(旧赤磐郡山陽町・赤坂町・熊山町・吉井町・瀬戸町が合併後に使用する予定だった地名。瀬戸町が協議から離脱、その後瀬戸町を除く4町は赤磐市に、瀬戸町は岡山市に編入)
- 愛媛県北宇和郡きほく町(広見町・松野町・日吉村が合併後に使用する予定だった町名。協議決裂で破談→広見町・日吉村は鬼北町に)
- 福岡県ゆたか市(直方市と鞍手郡小竹町・鞍手町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談)
- 長崎県東そのぎ市(東彼杵郡東彼杵町・川棚町・波佐見町が合併後に使用する予定だった市名。2度の協議決裂で破談)[5]
- 長崎県北松浦郡さざなみ町(小佐々町・佐々町が合併後に使用する予定だった町名。協議決裂で破談→小佐々町は佐世保市に編入)[6]
- 鹿児島県れいめい市(串木野市と日置郡市来町が合併後に使用する予定だった市名。再検討によりいちき串木野市に変更)
- 鹿児島県ちらん枕崎市(枕崎市と川辺郡知覧町が合併後に使用する予定だった市名(※上記のいちき串木野市新設の影響による)。協議決裂で破談、知覧町は頴娃町・川辺町と合併し南九州市に)
- 鹿児島県大島郡とくのしま町(徳之島町・天城町・伊仙町が合併後に使用する予定だった町名。徳之島町が住民の反対で協議から離脱、天城町・伊仙町は2町合併による新町名を改めて公募し、「天城伊仙町」に決定するも、これも破談)
カタカナを含むもの編集
脚注編集
- ^ a b 日本の特別地域 特別編集58 これでいいのか 山梨県p29,鈴木士郎, 佐藤圭亮 - 2014
- ^ “[ランキング 正直ダサい!と思う「ひらがな市町村名」ランキング1位から9位]” (日本語). gooランキング. 2019年6月23日閲覧。
- ^ “正直ダサい!と思う「ひらがな市町村名」ランキング (2017年2月24日)” (日本語). エキサイトニュース. 2019年6月23日閲覧。
- ^ “えびの高原エリア - すすきヶ原”. 宮崎県えびの市観光協会. 2018年4月14日閲覧。
- ^ 東彼杵郡三町(東彼杵町・川棚町・波佐見町)合併協議会だより 第11号 PDF(国立国会図書館インターネット資料収集保存事業)
- ^ ◆佐々町・小佐々町合併協議会◆(国立国会図書館インターネット資料収集保存事業)
関連項目編集
- 全国ひらがな・カタカナ市町村サミット
- 地名
- 日本の市町村の廃置分合(市町村合併)
- 方角地名
- 合成地名
- 広域地名
- 瑞祥地名