トロリーバス
トロリーバス (英: trolleybus、米: trolley bus)とは、道路上空に張られた架線(架空電車線)から取った電気を動力として走るバスを指す。「トロリー」とは集電装置のこと。外観も操縦法も普通のバスに近い。略してトロバスとも呼ばれ、日本語では無軌条電車(むきじょうでんしゃ)と訳される。
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電気バスも同じく電気で走るが、架線から集電するための「トロリー」がなく、法律上は自動車扱いになることからトロリーバスには含まれない。
概要 編集
トロリーバスは路面電車とバスの長所をもった交通機関で、排気ガスを出さない、軌道を敷設する必要がない、などの長所を持つ。しかし、稀にトロリーポール(集電装置)が架線から外れるトラブルが起こる。架線が分岐・交差する個所ではトラブルが起こりやすく、その手前では減速する必要があり、後続車列で充分な車間距離が保たれていないと交通渋滞を招く[注釈 1]。現在は自動車交通量の増加に加え、性能が良いディーゼルエンジンやハイブリッド方式の大型路線バスの出現とともに廃止が進んでおり、日本では市街地を走るトロリーバス路線は全て廃止されている。世界的にはソ連の影響下で都市計画を行った社会主義国・旧社会主義国の都市には今も多く残されている。さらにカナダなどの水力発電による豊富で安価な電力が安定して供給される地域、日本の黒部ダムのような観光地でも利用されている。
給電用の架線が張れない場所で走行するための小排気量の補助エンジンを持つものもある。このエンジンは発電用ではなく、車両を直接推進するために用いられ、日本でもかつて都営トロリーバスで、電化された鉄道の踏切を渡るために使用するものがあった。最近では、ディーゼル発電機を搭載したハイブリッド方式や蓄電池を搭載した車両が開発され、架線がない道路でより長距離を走行できるようなものもある。中国 北京市では、王府井の繁華街の景観対策や長安街の横断対策(建国記念日である国慶節や節目の年には大規模な軍事パレードがあるため、架線を張ることができない)に利用されている。
構造 編集
道路上の架線(トロリーワイヤ = trolley wire)から棹状の集電装置(トロリーポール = trolley pole)を用いて集電して電動機を回し、動力とする。このトロリーから給電を受け走ることから「トロリーバス」と呼ばれる。トロリーポール先端部の架線と接触する部分は、ごく初期においては路面電車と同様な滑車(トロリーホイール = Trolley wheel)が用いられたが、トロリーバスは道路状況によっては架線の直下を大きく外れて走る必要があるため、滑車では架線との角度が大きくなった場合の追従性が不十分であり、U字断面で自由に回転できるスライダー(摺り板)式が開発され、普及した。
タイヤは普通の自動車と同じゴムタイヤである。外観も屋根上のトロリーポール以外は普通のバスとほぼ同じ[注釈 2]だが、動力源や主制御器は電車に等しい。ただ、普通の電車と違って線路にアースさせることができないため、架線は+/-の2本で、2本のトロリーポールをそれぞれ並行する架線に当てている。
トロリーポールと架線のそれぞれの剛性やトロリーポールの遠心力の問題から、カーブを曲がる時などに速度を出しすぎたり、急カーブを切ろうとすると、しばしばトロリーポールが架線から外れてしまうことがあり、その場合は一旦車両を停止させ、乗務員(運転士や車掌)が車両の後ろに回り、トロリーポールのケーブルを引っぱって、架線にトロリーポールを掛け直す必要がある。架線を外れたポールが跳ね上がって吊線(スパン ワイヤー)を切断することを防止するため、離線時のポールの上昇を防止するキャッチャーや、ぜんまいばねの働きで引きひもを巻き取り、ポールを下降させるリトリーバー(レトリーバー)[1]が車体後部に設けられている。また離線をしなかった場合でも、車線を間違えた場合や、わずかなトロリーポールの揺れ等で、行くべき方向と異なる側の架線に繋がってしまった場合も、手動でトロリーポールを下ろして正規の架線に繋ぎ戻す必要がある。
なお、前述の理由で離線した時に安全で交通の妨げにならない場所まで車両を移動するとき、部分的に架線を取り付けることのできない区間(鉄道の電化区間にある踏切など)を走行するとき、道路工事、事故、火災、災害などで本来の路線の道路が通行止めになった際、一時的に路線外の道路を使用して迂回するときなどのため、補助エンジンやバッテリーを搭載している車両が主流になっている。また、かつては車体の絶縁が不十分であったことから、しばしば漏電を起こして乗客や運転士が感電することもあった。
類似交通機関との比較 編集
鉄輪式の路面電車との比較 編集
長所 編集
- 軌道が必要ない。
- その建設やメンテナンスが不要。
- 他の乗り物にとって邪魔な段差が無い。
- ある程度障害物を避けられる。
- 前輪の方向を変えて曲がる(ステアリング)ため、急カーブでも走行できる。
- ゴム製タイヤで走行する利点。
短所 編集
- タイヤがゴム製であり、転がり抵抗が大きいため、消費電力が多い。
- トロリーポール集電のため電車線分岐・収束部の構造が路面電車より複雑で、故障やポール逸脱も起きやすい。
- ゴム製のタイヤのため、鉄輪に比べ磨耗が激しく、比較的頻繁に交換しなければならない。
- 鉄製レールが地面に設置している鉄輪式と異なり、アース対策が別途必要となる。
- 道路が直線的かつ広大でない場合、後部がはみ出る危険があり長編成化に限度がある。
バス(動力源内蔵)との比較 編集
長所 編集
鉄道における気動車に対する電車の優位性と共通する点が多い。
- エンジンやバッテリーが必要でないため車両が安い。
- 電動機で走行するため、直接排気ガスを出さない。
- 重いバッテリーを積まなくてよい電気自動車のようなもので、(発送電も含めて)総合的な二酸化炭素排出量が少ない。
- 電動機で走行するため、内燃機関の運転費に比べ安く済む。
- 電動機で走行するため、騒音が少ない。
- 電動機で走行するため、変速振動がない。
- 架線から給電されるため、燃料等の補給による航続距離の制限がない。
- 起動時から大トルクを出力できる。都市部では加減速が頻繁であり、急な坂道での運用もあるため有利である。
- パワーパック(電動機・制御装置)が占める割合が比較的小さくて済む。
- 内燃機関式のバスと比べてメンテナンス項目が少なく、車体寿命が長い。
- 海抜が高く、酸素の薄い場所でも出力が低下しない。
電動機で走行することは、内燃機関のバスとの比較では上記のような利点があるが、電気を動力とする電気バスとの比較では一部の項目を除き同等である。
短所 編集
- 停電時には走れない。
- 架線が必要である。
- 鉄道・軌道としての法規制を受けることからの問題。
- 路線バスに比べると監督官庁への諸届等の事務量が多く煩雑である。
- 乗務員の育成および研修が煩雑であり、路線バスと比較して多大なコストがかかる。
- トロリーバスが一般的でない地域が多い。
- 路面電車とバスの両者に比べ、とくに日本では国内にメーカーが少なく製造費が割高で保守面でも不利になりやすい。
総じて、車載バッテリーを主電源とする電気バスの技術向上により、あえて架線から集電する方式のトロリーバスを存続させる意味が希薄化しつつある[注釈 3]。
歴史及び現況 編集
ヨーロッパ諸国 編集
トロリーバスの誕生 編集
1882年4月29日に、ドイツのヴェルナー・フォン・ジーメンスがベルリン郊外のハレンゼー(Halensee)付近で540メートルの区間で運行を開始したのが世界初のトロリーバスとされる[2]("エレクトロモト"の試験運行)。車体は開放式馬車をそのまま用いた形態となっていた。この実験は同年6月13日まで続けられた。この実験の後、1900年に開催されたパリ万博でデモンストレーションを行うなどヨーロッパ各地で実験が行われ、アメリカ合衆国などにも伝わった。集電方式については当初、小さな車輪を架線に載せ、これを柔軟性のある送電線で車体とつないで引っ張りながら走行する方法が採られていたが、後にトロリーポールが使用されるようになった[2]。
世界初の営業運転は1901年7月10日、ドイツ・ドレスデン郊外のケーニッヒシュタインとヒュッテンの間で行われたものとするのが通説であるが、この路線は1904年に廃止され短命に終わっている。このときの車両では前後に並べた2本のトロリーポールで集電を行う方式が採用された[2]。
ブカレストのバスターミナルに停車中のトロリーバス(2018年撮影)
1900年代初めには各国でトロリーバスの営業が開始されている[3]。
ドイツ 編集
ドイツはトロリーバス発祥の国であり、初めて営業運転が行われた国でもある。ポツダムなどでは現在でも都市交通として活躍している[4]。
フランス 編集
1901年7月15日にフォンテーヌブローで路線が開業した。また、1900年代初めにはフランスのリヨンでもトロリーバスが営業を開始した[4]。パリでは1912年に路線が開業している。
イギリス 編集
1911年に初の営業路線がイングランド北部のリーズとブラッドフォードの間に開業した[2]。イギリスのトロリーバスは2階建て仕様車が多く、かつてはロンドン市内でも2階建てトロリーバスが見られた。しかし、現在は都市交通でのトロリーバスは全廃されている[4]。
アメリカ合衆国 編集
1903年、スクラントンにおいて実験的な運行が行われ、1910年にはロサンゼルスで旅客営業が開始された[2]。
アメリカ国内には観光地を中心にトロリーバスまたはトロリーと称するバス(en:Tourist trolley)が多く運行されているが、これらはレトロ調の車体を使用したディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンの通常のバスである[5]。
このほかに、現在も、サンフランシスコ、シアトルなどの一部の大都市で架線集電によるトロリーバスの営業運転が行われている。
また、これらの都市での営業運転だけでなく、イリノイ鉄道博物館などのように旧型のトロリーバスの動態保存に取り組んでいる団体もある。
ロシア 編集
ロシアの首都モスクワは路線延長1251キロメートル、保有車両1,851両で、年間6億5千万人を輸送する世界最大のトロリーバス都市であったが[4]、2020年8月末日をもって事実上の廃止となった。廃止の理由は、電気バスへの移行と利便性の向上のためとされているが、明確な理由は明らかにされておらず、一部の住民はモスクワ市長の利権がらみとして反発している[6]。
旧ソビエト連邦などでは貨物運送目的のトロリートラックが採用されている例がある。
日本 編集
歴史 編集
1912年(明治45年)には東京市電気局によってトロリーバスの実験車両が試作され、4月11日に浜松町の工場から数寄屋橋車庫まで運転された。また、1926年(大正15年)には日立製作所がフォード製の自動車を改造し、三相交流式のトロリーバスを試作している。
日本におけるトロリーバスの初めての営業運転は、1928年(昭和3年)8月1日に阪神急行電鉄(現、阪急電鉄)花屋敷駅(現在は雲雀丘駅と統合されて雲雀丘花屋敷駅)と新花屋敷(現在の川西市満願寺町あたり)の間1.3キロメートルを結ぶ区間で運行を開始した日本無軌道電車とされる。当時この付近では温泉が湧いており、それを開発した温泉宿・遊園地へのアクセス路線として、当時のバス(ガソリンエンジン)では登坂不可能な急勾配を越えるためのものだった。しかし業績は思わしくなく、1932年(昭和7年)1月に休業、同年4月には廃止され、開業後わずか4年弱という短命に終わった。
都市交通機関として初めて開業したのは、1932年の京都市電気局(後、京都市交通局)の京都市営トロリーバスである。その後1943年(昭和18年)に名古屋市交通局の名古屋市営トロリーバスが開業するまで、この路線が日本唯一のトロリーバス路線であった。
戦後になっていくつかの大都市にトロリーバス路線が開業した。その背景には、当時の内燃機関バスは大型化には対応していたが、依然として出力性能が低く頻繁な整備が必要な上、騒音や振動にも改善の必要がある状況だったため、電車の技術を応用して車体の大型化に対応できるトロリーバスに期待が集まったこと、また路面電車に比べて建設費が1/3で済むことなどがあった。しかし架線下しか走れないこと、モータリゼーションによる自動車の増加で道路混雑が激化したため定時運行が困難になったこと、また性能の良いエンジンを持った大型バスの開発が進んだことなどから、1960年代後半から1970年代初めにかけて順次廃止されていった。
都市型トロリーバスで最後に開業・廃止されたのは横浜市交通局の横浜市営トロリーバスで、1959年開業、1972年廃止である[7]。路線バスに比べて車両の費用が高く、また他都市のほとんどのトロリーバスが廃止されたため車両新造や部品調達に支障をきたすこと、横浜市交通局が財政再建団体に指定されたことにより廃止される横浜市電と共用の変電所を単独で維持することが難しいことなどの理由により、市電と同時に廃止された[8]。
一方、1964年には関西電力が黒部峡谷(富山県)に建設した関電トンネルで関電トンネルトロリーバス(黒部ダム駅 - 扇沢駅)の運行を開始。日本から都市交通としてのトロリーバスが消滅したあとも運行を継続し、長きにわたり日本唯一のトロリーバスとして知られた。そして1996年には関電トンネルトロリーバスと同じく立山黒部アルペンルートを構成する立山黒部貫光がそれまでのディーゼルバスから転換し立山トンネルトロリーバス(室堂駅 - 大観峰駅)の運行を開始した。これは同路線の全区間がトンネルであるため換気に困難を伴うことと、周辺が国立公園内であることによる自然環境への配慮から、関電トンネルトロリーバスに倣って排気ガスを出さないトロリーバスに置き換えられたものである。その後、関電トンネルトロリーバスは2018年11月30日にて運行を終了して[9]電気バスに置き換えられ、2018年12月以降は立山トンネルトロリーバスが日本における唯一のトロリーバスである。
法規上の扱い 編集
日本の法令上は無軌条電車(むきじょうでんしゃ)とされ、鉄道の一種として扱われている。かつては無軌道電車(むきどうでんしゃ)と呼ばれていたが、「無軌道」には「常軌を逸した」という意味もあり悪い印象を与えるとして「無軌条電車」に改められた。1947年(昭和22年)以降、法規上は無軌条電車という鉄道の一種に分類され、軌道法または鉄道事業法が適用される。無軌条電車運転規則のほか、路線が公道上なら道路交通法に則って運行される。
運転士は大型二種免許に加え、動力車操縦者運転免許(無軌条電車運転免許)も取得しなければならない。大型二種運転免許を保持している者に対しては、無軌条電車運転免許の技能試験以外の試験が免除される(かつては試験すべてが免除されたが、2009年(平成21年)の省令改正により技能試験は免除対象外となった)。なお2001年に開業したバス車両を利用した案内軌条式鉄道(ガイドウェイバス)である名古屋ガイドウェイバスも「電気車」ではないが、法規上はこれらに分類されている。
公道上を走るトロリーバスは道路交通法の適用を受け、信号機や横断歩道などの規制の適用を受ける。ただし、分類としてはトロリーバスは同法の自動車には含まれず、同法の車両には含まれる。
一方でトロリーバスは公道を走る車両であっても道路運送車両法の規制は受けない。従って陸運局(当時)への登録、自賠責保険および車検は不要であり、(自動車としての)ナンバープレートも付いていない。
現存路線 編集
軌道法または鉄道事業法適用のトロリーバス(無軌条電車)路線は、下記の1路線のみが現存している。
- 立山トンネルトロリーバス(立山黒部貫光)室堂駅 - 大観峰駅(3.7km)
類似施設等 編集
狭義のトロリーバス(無軌条電車)は以上の路線のみとなるが、ラクテンチ(大分県別府市・2009年7月18日の新装開園からの運行開始、2022年廃止)、雲仙ゴルフ場(長崎県雲仙市)、ナゴパイナップルパーク(沖縄県名護市)の「パイナップル号」(1989年頃運行開始)、古宇利島オーシャンタワー(沖縄県今帰仁村古宇利島、2013年11月23日開業・運行開始)の電動カート、とまいぱり(宮古島熱帯果樹園・沖縄県宮古島市、2013年11月17日開業・運行開始)の「トロピカルガイドツアー」はいずれも自動操縦ゴルフカートの一種(電磁誘導カート)であり、車載バッテリーと電動機で走行する点はトロリーバスと同様だが、架線からの集電は行わず、施設内の遊戯施設扱いであり軌道法・鉄道事業法に基づく路線でもないため、通常はトロリーバス路線に含まれることはない。
また、過去に正規のトロリーバス運行実績が無い地域を含めた日本全国各地でも、公道で上述の電磁誘導カートを用いた実験運転が実施されている[11]。
- 秋田県上小阿仁村 - 2017年12月3日 - 12月10日、2018年12月9日 - 2019年2月8日[12]
- 滋賀県東近江市 - 2019年11月15日 - 12月20日[13]
- 島根県飯南町 - 2020年9月1日 - 10月10日[14]
- 熊本県芦北町 - 2017年9月30日 - 10月7日、2019年1月27日 - 3月15日[15]
- 茨城県常陸太田市 - 2017年11月19日 - 11月25日、2018年6月23日 - 7月21日[16]
- 新潟県長岡市 2019年3月17日 - 3月23日[17]
- 岡山県新見市 - 2018年3月10日 - 3月16日[18]
- 福岡県みやま市 - 2018年2月17日 - 2月24日、2018年11月2日 - 12月21日[15]
これらについても、架線からの集電は行わず、自家用有償旅客運送制度の活用を念頭に置いた社会実験であり、軌道法・鉄道事業法に基づく路線でもないため、通常はトロリーバス路線に含まれることはない。
廃止路線・かつてトロリーバスが存在した都市 編集
- 東京都区部 - 都営トロリーバス(東京都交通局):1952年5月20日開業、1968年9月30日廃止。軌道法適用。
- 川崎市 - 川崎市営トロリーバス(川崎市交通局):1951年3月1日開業、1967年5月1日廃止。軌道法適用。
- 横浜市 - 横浜市営トロリーバス(横浜市交通局):1959年7月16日開業、1972年4月1日廃止。軌道法適用。
- 名古屋市 - 名古屋市営トロリーバス(名古屋市交通局):1943年5月10日開業、1951年1月16日廃止。軌道法適用。
- 京都市 - 京都市営トロリーバス(京都市交通局):1932年4月1日開業、1969年10月1日廃止。軌道法適用。
- 大阪市 - 大阪市営トロリーバス(大阪市交通局):1953年9月1日開業、1970年6月15日廃止。軌道法適用。
- 宝塚市・川西市 - 日本無軌道電車:1928年8月1日開業、1932年1月休止、同年4月廃止。軌道法適用。
- 大町市・立山町(立山黒部アルペンルート) - 関電トンネルトロリーバス(関西電力)
未成線 編集
- 長岡市 - 長岡市(長岡市営無軌条電車)
- 千葉市[23]
- 西宮市 - 摂津電気自動車(阪神電気鉄道傘下)
- 姫路市 - 姫路市が姫路市駅前 - 伊伝居 - 仁豊野と錦町 - 下手野、本町 - 市川橋通を計画するも[24]1953年に未開業線廃止となる[25]。
- 平塚市・伊勢原市 - 神奈川中央交通が平塚駅から現在の平94系統の経路で伊勢原駅を経由して大山登山鉄道(未成線:大山観光電鉄大山鋼索線に接続する大山駅 - 追分駅間のロープウェイ)の大山駅に至る路線を計画していた[26]。
- 養老電気鉄道 - 養老駅-養老公園間、1哩[27]。計画は当時のバスでは超大型(定員24人)車両2台を日本輸送機製作所(現在の三菱ロジスネクスト・日本無軌道電車と同じ)で製作するはずであった[28]。
- 熊本市 - 1950年 - 1958年頃に構想されたが、水害などを考慮して断念している[要出典]。構想区間不明。
トロリーバス技術の最新動向 編集
現在はバス低床化が進んでおり、イリスバス社のCristalisなどのようにインホイールモーターを用いたノンステップ車が開発されている。
また、景観上の問題その他で架線の張れない区間用に新しいデュアルモード車も開発されている。ディーゼル 発電機を搭載したトロリー給電とのハイブリッド型やバッテリー技術の向上による蓄電池を搭載した車両が開発され、架線のない道路でより長距離を走行できるようになった。ディーゼル発電機を搭載したハイブリッドトロリーバスは、ニュージーランドやアメリカ ボストンのシルバーラインで採用されているネオプラン社製のものや、主にフランスで採用されているイリスバス社製のCristalisがある。中国ではバス停に併設された給電軌条にパンタグラフを押しつけてバス停で電池に充電する車両が実用化されている。イタリアでは一時期磁力ピックアップ方式による路面給電式のトロリーバス (Stream) が試験運転されたが、こちらは成績が芳しくなく本格採用には至っていない。ローマのトロリーバスは、終端のテルミニ駅付近の往復3キロメートルに架線が張られておらずバッテリーで走行している。
もう一つの技術革新は、ハンドル操作が不要のガイドウェイ技術の導入である。ドイツで一時期運行されていたローラー式に代わって、21世紀初頭には非接触のガイドウェイ式トロリーバスが試作されている。代表的なものは、光学式と磁力式である。光学式は地面にペイントされた白線をカメラで読み取って操舵するものである。磁力式は地面に埋め込んだ磁石を頼りに操舵するものである。前者はイリスバスのCIVISなど、後者はオランダのPhileasで採用されている。CIVIS・Phileasともに電気駆動のハイブリッドバスとして設計されており、トロリー給電のほか、ディーゼル発電のバスとして走行することも可能である。なお、CIVISはディーゼル発電のみのバス仕様のものしか採用[注釈 4]されていない。
フランスのナンシーではボンバルディア・トランスポーテーションが開発した“TVR”というシステムのゴムタイヤトラムが採用されている。これは一本の案内レールに沿ってゴムタイヤで走行する路面電車に近いものだが、一部区間は案内レールがなくトロリーバスのような走行をしている。ただし、案内レールへの接続トラブルが頻発したため、TVRはナンシーとカーンの2都市のみの採用に留まっている。また、ガイドレールのカーブ区間で脱輪する事故が相次ぐなど、高速走行ができないという欠点も指摘されている。
また、近年普及しているハイブリッドバスの技術開発はトロリーバスにも大きな影響を与えているが、特にトロリーバスへのディーゼル発電機やバッテリーの搭載は、ハイブリッドバスや非接触充電式のバッテリーのみで走行するバスに比べ、頻繁な充放電による電池の劣化が少なく電池交換のコストが低い点で評価できる。
トロリーバスが存在する主な都市 編集
この節に雑多な内容が羅列されています。 |
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アジア 編集
東南アジアでは唯一シンガポールで運行されていたが(「シンガポールのトロリーバス」を参照)、1962年に廃止された。韓国には(狭義の)トロリーバスはないが、ソウル近郊のソウル大公園に(走行中に外部から給電するという点でトロリーバスと類似する)オンライン電気自動車の「ぞう列車」が運行されている。アジア太平洋では(狭義の)トロリーバスが廃止傾向にある。その一方で、変種に当たる電磁走行カートやオンライン電気自動車の運行が始まっている。
中華人民共和国 編集
なお、中国ではトロリーバスのことを「無軌電車」または単に「電車」という。
北朝鮮 編集
北朝鮮の標準語(文化語)では「無軌道電車」(무궤도 전차、ムグェドジョンチャ、Mugwedo jŏncha)という(韓国側では「トロリーバス」(트롤리버스、トゥロルリボス、Teurolli beoseu))。
モンゴル国 編集
ネパール 編集
- カトマンズ - カトマンズ・トロリーバス
- 2009年まで運行していた。
キルギス 編集
- ビシュケク - ビシュケク・トロリーバス
- オシ - オシ・トロリーバス
- ナルン - ナルン・トロリーバス
ウズベキスタン 編集
- タシュケント - タシュケント市営トロリーバス
- 2010年に廃止。
- ウルゲンチ ヒヴァ - ウルゲンチ・トロリーバス
ロシア 編集
- ウラジオストク
- ハバロフスク
- イルクーツク
- ノヴォシビルスク
- モスクワ - モスクワ・トロリーバス
- サンクトペテルブルク - サンクトペテルブルク・トロリーバス
- ペトロザヴォーツク
- カルーガ
- エカテリンブルク
- アバカン
- アルマヴィル
- アストラハン
- ベルゴロド
- ブリャンスク
- ノヴゴロド
- ヴォルゴグラード
- クリミア半島 - クリミア・トロリーバス(ウクライナ領だがロシアが実効支配)
ロシア国内ではこのほかの多くの都市でもトロリーバスが運行されている。
アメリカ大陸 編集
カナダ 編集
アメリカ合衆国 編集
- サンフランシスコ - サンフランシスコ・トロリーバス
- シアトル - シアトル・トロリーバス
- ボストン - ボストン・トロリーバス、シルバーライン
- フィラデルフィア - フィラデルフィア・トロリーバス
- デイトン - デイトン・トロリーバス
メキシコ 編集
ブラジル 編集
チリ 編集
オセアニア 編集
ニュージーランド 編集
- ウェリントン - 2017年に廃止。
ヨーロッパ 編集
オランダ 編集
- アーネム - アーネム・トロリーバス
- ディーゼルバスとトロリーバスの機構を併せ持つ「デュオバス」が導入されている。
ベルギー 編集
- ヘント - ヘント・トロリーバス
- 2009年に廃止。
フランス 編集
- リヨン - フランス最大のトロリーバス路線網を持つ。LRTとの交差がある。
- サン=テティエンヌ - LRTとの交差がある。
- リモージュ
- ナンシー、カーン - ゴムタイヤトラムの一種のTVRが郊外区間でトロリーバスとして運行。
イタリア 編集
- ローマ - 2005年に新規開業した。テルミニ駅付近約1キロメートルは架線を張らずバッテリーで走行する。
- ミラノ
- ヴェンティミリア - サンレーモ
- ラ・スペーツィア
- ジェノヴァ
- ボローニャ
- モーデナ
- パルマ
- リーミニ
- アンコーナ
- ナポリ
- バーリ - 休止中。
- カリャリ
ドイツ 編集
ギリシャ 編集
スウェーデン 編集
ノルウェー 編集
オーストリア 編集
スイス 編集
スイス国内ではこのほかの都市でもトロリーバスが運行されている。
スペイン 編集
- カステリョン・デ・ラ・プラナ - 2008年開業。光学ガイド式。
ベラルーシ 編集
など。
ウクライナ 編集
など。
エストニア 編集
リトアニア 編集
ラトビア 編集
アルメニア 編集
ジョージア 編集
チェコ 編集
など。
スロヴァキア 編集
など。
ハンガリー 編集
など。
セルビア 編集
ボスニア・ヘルツェゴビナ 編集
ブルガリア 編集
モルドバ 編集
主なトロリーバスの製造メーカー 編集
- 大阪車輌工業(日本) - 日本唯一のトロリーバス製造メーカー。立山黒部貫光8000形無軌条電車や関西電力300形無軌条電車を製造した。
- イリスバス(Irisbus、フランス) - ルノーとフィアット・イベコのバス部門が合流したバス製造会社。現在はフィアット資本。トロリーバスはホイルインモーターとディーゼルハイブリッドが特徴のCristalisと、光学式ガイドのCIVISを製造。
- ネオプラン(Neoplan、ドイツ) - ドイツの老舗メーカー。ドイツやスイスへの納入実績が多い。
- ヘス(Hess、スイス) - Light Tramという3連接の大型トロリーバスを開発した。
- ソラリス(Solaris、ポーランド) - 東欧改革で誕生した新興のバス製造会社。トロリーバスは、トロリーノ (Trolino) ブランドで製造。ローマへの納入実績がある。
脚注 編集
注釈 編集
出典 編集
- ^ retriever - Weblio(更新日不明)2018年10月18日閲覧
- ^ a b c d e 日本のトロリーバス Trolleybuses in Japan. 電気車研究会. (平成6年3月1日)
- ^ West Yorkshire BBC
- ^ a b c d “トロバス名鑑(黒部ダムオフィシャルサイト)”. 関西電力. 2017年9月28日閲覧。
- ^ アリゾナ州セドナの"Sedona Trolley"など。“Sedona Guided Tours with Sedona Trolley”. Sedona Trolley公式ウェブサイト. 2018年5月28日閲覧。
- ^ 『東京新聞』2020年9月9日夕刊E版3面「トロリーバス 不可解な退場 「モスクワの歴史」市民反発」
- ^ 【横浜市電保存館映像シアターNo.11】横浜市電が走った街 トロリーバスが走る動画
- ^ 三神康彦・吉川文夫「市街トロバスのしんがり 横浜市無軌条電車」『鉄道ピクトリアル』No.279、pp.74-75、1973年6月号、1973年6月1日発行、電気車研究会。
- ^ 半世紀以上の歴史に幕・黒部ダムのトロリーバスラストラン SBC信越放送 2018年11月30日
- ^ 「トロバス消滅の危機 立山黒部貫光、EV化方針」『北国新聞』2023年6月13日
- ^ [1]各地の道の駅で実証実験を実施
- ^ [2]
- ^ [3]道の駅「奥永源寺渓流の里」を拠点とした自動運転サービス実証実験
- ^ [4]道の駅「赤来高原」を拠点とした自動運転サービス 地域実験協議会 ホームページ
- ^ a b [5]道の駅等における 自動運転サービス実証実験
- ^ [6]道の駅「ひたちおおた」における自動運転サービス実証実験
- ^ [7]「やまこし復興交流館おらたる」における 自動運転サービス実証実験
- ^ [8]道の駅「鯉が窪」を拠点とした自動運転サービス実証実験
- ^ 国土交通省鉄道局監修『平成30年度 鉄道要覧』電気車研究会、2018年9月30日、13頁。ISBN 978-4-88548-131-4。
- ^ 関電トンネルにおけるトロリーバスの電気バスへの変更について - 関西電力株式会社(2017年8月28日)
- ^ 関電トロリーバスと電気バスの仕様表 (PDF)
- ^ “立山黒部アルペンルート全線開通 電気バスが運行開始 長野”. 長野放送. (2019年4月15日) 2019年4月20日閲覧。
- ^ 崙書房『ちばの鉄道一世紀』より
- ^ 「運輸省告示第10号」『官報』1951年1月19日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 森口誠之『鉄道未成線を歩く〈私鉄編〉』JTB、2001年、p.178
- ^ 相武電鉄上溝浅間森電車庫付属資料館
- ^ 二日、更に私鉄免許即日指令を発す『国民新聞』1929年7月4日(神戸大学附属図書館新聞記事文庫)
- ^ 湯口徹「幻の養老電気鉄道トロリーバス」『鉄道史料』No.131
関連項目 編集
外部リンク 編集
- 立山黒部アルペンルート・各会社案内
- 黒部ダムオフィシャルサイト 電気で走る日本唯一のトロリーバス - 関電トンネルトロリーバスを中心として日本と世界のトロリーバスについて載っている。
- 横浜市営トロリーバス(廃止前)が走る動画 横浜市電保存館映像シアターNo.11