ハンガリーグランプリ

ハンガリーグランプリ(ハンガリーGP, : Hungarian Grand Prix, ハンガリー語: Magyar Nagydíj)は、ハンガリーハンガロリンク[1]で開催されている自動車レースであり、1986年以降行われているF1のレースのひとつ。

Flag of Hungary.svg Hungarian Grand Prix
ハンガロリンク
Hungaroring.svg
レース情報
周回 70
コース長 4.381 km (2.722 mi)
レース長 306.663 km (190.560 mi)
開催回数 36
初回 1936年
最多勝利
(ドライバー)
イギリスの旗 ルイス・ハミルトン (8)
最多勝利
(コンストラクター)
イギリスの旗 マクラーレン (11)
最新開催(2020年):
ポールポジション イギリスの旗 ルイス・ハミルトン
メルセデス
1:13.447
決勝順位 1. イギリスの旗 ルイス・ハミルトン
メルセデス
1:36:12.473
2. オランダの旗 マックス・フェルスタッペン
レッドブル-ホンダ
+8.702s
3. フィンランドの旗 バルテリ・ボッタス
メルセデス
+9.452s
ファステストラップ イギリスの旗 ルイス・ハミルトン
メルセデス
1:16.627

概要編集

1986年のF1初開催時[2]は、共産主義体制下にあった東欧諸国での唯一のF1グランプリとして注目されるレースとなった。

地理的に東欧(特に隣国オーストリア)や北欧からの観客が多い。そのため、母国でGPが開催されない東欧・北欧圏のドライバーにとってはホームグランプリとしての扱いもされる。

開催コースのハンガロリンク[1]は予選のグリッドと決勝の戦略が非常に大きいウェイトを占めるグランプリとなっている。その背景はコースが低速コースに分類され、メディアからは「壁のないモナコ」と称されるように、コース幅が狭くストレートが短いため、コース特性的にオーバーテイクが難しいレイアウトと認識されている。その関係で抜くに抜けない膠着状態となってしまい、いわゆる「トレイン状態」「レーシングスクール状態」になる事もあるため、上位スタートが優位とされる。 その一方でハンガロリンクのポールシッターは36戦16勝と勝率は5割を切っている。これは、真夏のバカンス期の開催であるうえ、盆地に位置するので例年晴天、高温のレースになる事が多いため、環境によるドライバーへの負担も大きく、ブレーキおよびエンジン(パワーユニット)の熱負担、シフト回数も多いことによるギアボックスへの負担も大きいことから、車体側の負担も問われるコースでもあるため、マシンの速さも当然の事ながら、チームの戦略、マシンの信頼性、ピット作業なども明暗を分けることもある。そのため、レースに劇的な展開が突然起きること(番狂わせ)も起きたことがある。

実際、記録で見ても、チームとしては3チーム(ウィリアムズ、マクラーレン、メルセデス)が3連覇を記録しているものの、ドライバーによる連覇の記録では2018年から2020年にかけてのルイス・ハミルトンが3連覇を記録したものの、彼以外は2連覇以下に留まっている。特に2002年から2008年まで毎年別々の勝者が生まれており、そのうち3人が初優勝である。

2009年からコスト削減の一環としてサマーブレイクが導入されたため、サマーブレイク前の最後のレースとなることが多い。それを考慮しなくても、レース数で言えば、シーズン中盤戦に位置することが多く、タイトル争いの分岐点として扱われることが多いが、チャンピオン争いが独走となった1992年ナイジェル・マンセル2001年ミハエル・シューマッハはこのレースでチャンピオンを確定させた。2002年のミハエル・シューマッハは2戦前のフランスGPでチャンピオンが決定したため、唯一チャンピオン決定後となっている。

ハンガロリンクでは、2027年まで継続開催される予定である[3]

余談編集

2004年にミハエル・シューマッハがハンガロリンクを制し、その年のチャンピオンになったが、2005年以降、13年にわたりその年のハンガロリンクを勝利したドライバーは年間チャンピオンになっていないという奇妙なジンクスも生まれた。ただ、初開催の1986年から2004年までの間、ハンガリーGPを制したドライバーがその年のチャンピオンを獲得したのは19回中8回となっており、統計上2005年以前からそのジンクスの兆候が見られた年もあった。それを破ったのはメルセデス在籍時のルイス・ハミルトンだけであり、2018年ハンガリーGPを制し、同年のメキシコGPでチャンピオンを獲得。2019年,2020年もメルセデスのルイス・ハミルトンが同GPを制し、その年のチャンピオンを獲得ている。

他にも2015年から2017年にかけてホンダのパワーユニットを搭載したマクラーレンだが、この時期のホンダ製エンジンの性能の低さもあり、その3年間は振るわない成績であったが、このハンガリーGPに限っては2015年から5位、5位、6位(ドライバーはいずれもフェルナンド・アロンソ2017年にはファステストラップを記録した。)と3年間好成績を残している。

また、F1通算100人目の記録が二つ(初優勝とキャリア初ポールポジション)生まれたコースでもある。

主な出来事編集

  • 1986年 - 先頭を走るアイルトン・セナロータス)と2位のネルソン・ピケウィリアムズ)が1コーナーでバトルを展開。最初のアタックではインを差したピケのラインが膨らんだ隙にセナが抜き返す。2度目はピケがアウト側から被せ、マシンをドリフトさせながら前に出た。
  • 1987年 - ナイジェル・マンセル(ウィリアムズ)がレースをリードしていたが、残り6周という所でリアタイヤのホイールナットが外れてリタイアした。
  • 1989年 - リカルド・パトレーゼ(ウィリアムズ)が6年ぶりにポールポジションを獲得。決勝は12番手スタートのマンセル(フェラーリ)が順位を上げ、周回遅れを利用してセナ(マクラーレン)をかわして優勝した。
  • 1992年 - 2位でフィニッシュしたマンセル(ウィリアムズ)が悲願のチャンピオンを獲得。16戦中11戦目という当時最短でのタイトル決定戦となった。
  • 1993年 - デイモン・ヒル(ウィリアムズ)がF1初優勝。父親のグラハムに続き史上初の親子2代ウィナーとなった。
  • 1995年 - アロウズ井上隆智穂がエンジントラブルのためマシンを停めた直後、エンジンから出火。消火器を持って自ら消火しようとした所、後方からやってきたマーシャルカー(救急車)に撥ねられる事故が発生。井上はボンネットに乗り上げ、脚の傷みのため倒れこんでしまった。レース終了後に病院に搬送されたものの、大事には至らなかった。この撥ねられたシーンを含め事故の一部始終は国際映像で放送されていた。
  • 1997年 - アロウズに移籍した前年度王者ヒルが予選3位、決勝でも11周目にミハエル・シューマッハ(フェラーリ)を抜いてトップを快走。アロウズならびにヤマハエンジン、ブリヂストンタイヤにとってのF1初優勝に近づいたが、残り2周で油圧トラブルが発生して急失速、惜しくも2位に終わるも、表彰台に駆け付けた観客からはデイモンコール一色であった。
  • 1998年 - ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が想定外の3ピットストップ作戦を敢行、マクラーレンの2台を逆転して優勝した。
  • 2001年 - ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が優勝し、2年連続4度目のチャンピオンを獲得。また、コンストラクターズにおいてもフェラーリが3年連続11度目のチャンピオンも獲得した。
  • 2003年 - フェルナンド・アロンソルノー)がスペイン人ドライバーとしてF1初優勝。当時の最年少優勝記録も作る。
  • 2006年 - ジェンソン・バトンホンダ)がF1初優勝。ホンダのコンストラクターとしての勝利は1967年イタリアGP以来。
  • 2007年 - 予選Q3でアロンソ(マクラーレン)がピットスタートを遅らし、チームメイトのルイス・ハミルトンがタイムアタックに入る機会を妨害したとして、5グリッド降格処分を受ける。
  • 2008年 - 先頭を走るフェリペ・マッサ(フェラーリ)が残り3周という所でストップし、ヘイキ・コバライネン(マクラーレン)がF1初優勝。F1通算100人目のウィナーになった。
  • 2009年 - フェリペ・マッサ(フェラーリ)のヘルメットに前走車から外れたパーツが直撃。頭部に重傷を負い、シーズン残りを欠場(この事故が頭部保護デバイス「Halo」導入のきっかけとなる)。決勝ではルイス・ハミルトン(マクラーレン)がKERS搭載車として初優勝。
  • 2015年 - 2014年の開幕戦オーストラリアGPから続いていたメルセデスのチームとしての連続表彰台記録が28でストップ[4]セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がハンガリーGP初優勝。
  • 2016年 - 予選Q1は雨のため4回の赤旗が出され、11台が107%ルールをクリアできないハプニングがあった(例外的な状況と判断され全車決勝に出走した)。ハミルトン(メルセデス)が優勝し、ハンガリーGPの単独最多勝利ドライバーとなる5勝目を記録。
  • 2019年 - マックス・フェルスタッペンレッドブル)が自身のキャリア初ポールポジションを獲得したうえ、F1通算100人目となるポールポジション獲得者となった。決勝ではハミルトンがタイヤ戦略によってフェルスタッペンを逆転し、自身が持つハンガリーGPの最多勝利記録を7に伸ばした。
  • 2020年 - ハミルトンがポール・トゥ・ウィンでハンガリーGP8勝目を挙げ、ミハエル・シューマッハフランスGPで挙げた同一GPの最多勝利数に並んだ。
  • 2021年 - 多重クラッシュによる中断後のスタンディングスタートでグリッドに1台しか並ばない珍事。また、エステバン・オコンが初優勝し、オールフランス(チーム・パワーユニット・ドライバー)による優勝を38年ぶりに達成した[5][6]


結果編集

F1世界選手権編集

ハンガロリンクのコースレイアウトの変遷については、ハンガロリンク#コースレイアウトを参照。

決勝日 ラウンド サーキット 勝者 コンストラクター 結果
1986 8月10日 11 ハンガロリンク   ネルソン・ピケ ウィリアムズ-ホンダ 詳細
1987 8月09日 9 ハンガロリンク   ネルソン・ピケ ウィリアムズ-ホンダ 詳細
1988 8月07日 10 ハンガロリンク   アイルトン・セナ マクラーレン-ホンダ 詳細
1989 8月13日 10 ハンガロリンク   ナイジェル・マンセル フェラーリ 詳細
1990 8月12日 10 ハンガロリンク   ティエリー・ブーツェン ウィリアムズ-ルノー 詳細
1991 8月11日 10 ハンガロリンク   アイルトン・セナ マクラーレン-ホンダ 詳細
1992 8月16日 11 ハンガロリンク   アイルトン・セナ マクラーレン-ホンダ 詳細
1993 8月15日 11 ハンガロリンク   デイモン・ヒル ウィリアムズ-ルノー 詳細
1994 8月14日 10 ハンガロリンク   ミハエル・シューマッハ ベネトン-フォード 詳細
1995 8月13日 10 ハンガロリンク   デイモン・ヒル ウィリアムズ-ルノー 詳細
1996 8月11日 12 ハンガロリンク   ジャック・ヴィルヌーヴ ウィリアムズ-ルノー 詳細
1997 8月10日 11 ハンガロリンク   ジャック・ヴィルヌーヴ ウィリアムズ-ルノー 詳細
1998 8月16日 12 ハンガロリンク   ミハエル・シューマッハ フェラーリ 詳細
1999 8月15日 11 ハンガロリンク   ミカ・ハッキネン マクラーレン-メルセデス 詳細
2000 8月13日 12 ハンガロリンク   ミカ・ハッキネン マクラーレン-メルセデス 詳細
2001 8月19日 13 ハンガロリンク   ミハエル・シューマッハ フェラーリ 詳細
2002 8月18日 13 ハンガロリンク   ルーベンス・バリチェロ フェラーリ 詳細
2003 8月24日 13 ハンガロリンク   フェルナンド・アロンソ ルノー 詳細
2004 8月15日 13 ハンガロリンク   ミハエル・シューマッハ フェラーリ 詳細
2005 7月31日 13 ハンガロリンク   キミ・ライコネン マクラーレン-メルセデス 詳細
2006 8月06日 13 ハンガロリンク   ジェンソン・バトン ホンダ 詳細
2007 8月05日 11 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン マクラーレン-メルセデス 詳細
2008 8月03日 11 ハンガロリンク   ヘイキ・コバライネン マクラーレン 詳細
2009 7月26日 10 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン マクラーレン-メルセデス 詳細
2010 8月01日 12 ハンガロリンク   マーク・ウェバー レッドブル-ルノー 詳細
2011 7月31日 11 ハンガロリンク   ジェンソン・バトン マクラーレン-メルセデス 詳細
2012 7月29日 11 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン マクラーレン-メルセデス 詳細
2013 7月28日 10 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン メルセデス 詳細
2014 7月27日 11 ハンガロリンク   ダニエル・リカルド レッドブル-ルノー 詳細
2015 7月26日 10 ハンガロリンク   セバスチャン・ベッテル フェラーリ 詳細
2016 7月24日 11 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン メルセデス 詳細
2017 7月30日 11 ハンガロリンク   セバスチャン・ベッテル フェラーリ 詳細
2018 7月29日 12 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン メルセデス 詳細
2019 8月04日 12 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン メルセデス 詳細
2020 7月19日 3 ハンガロリンク   ルイス・ハミルトン メルセデス 詳細
2021 8月1日 11 ハンガロリンク   エステバン・オコン アルピーヌ-ルノー 詳細

F1世界選手権外編集

決勝日 サーキット 勝者 コンストラクター 結果
1936 6月21日 ネープリゲト   タツィオ・ヌヴォラーリ アルファロメオ 詳細

複数回優勝したドライバー編集

回数 ドライバー 優勝年
8   ルイス・ハミルトン 2007, 2009, 2012, 2013, 2016, 2018, 2019, 2020
4   ミハエル・シューマッハ 1994, 1998, 2001, 2004
3   アイルトン・セナ 1988, 1991, 1992
2   ネルソン・ピケ 1986, 1987
  デイモン・ヒル 1993, 1995
  ジャック・ヴィルヌーヴ 1996, 1997
  ミカ・ハッキネン 1999, 2000
  ジェンソン・バトン 2006, 2011
  セバスチャン・ベッテル 2015, 2017

複数回優勝したコンストラクター編集

回数 コンストラクター 優勝年
11   マクラーレン 1988, 1991, 1992, 1999, 2000, 2005, 2007, 2008, 2009, 2011,
2012
7   ウィリアムズ 1986, 1987, 1990, 1993, 1995, 1996, 1997
  フェラーリ 1989, 1998, 2001, 2002, 2004, 2015, 2017
5   メルセデス 2013, 2016, 2018, 2019, 2020
2   レッドブル 2010, 2014

複数回優勝したエンジン編集

回数 メーカー 優勝年
13   メルセデス * 1999, 2000, 2005, 2007, 2008, 2009, 2011, 2012, 2013, 2016,
2018, 2019, 2020
9   ルノー 1990, 1993, 1995, 1996, 1997, 2003, 2010, 2014, 2021
7   フェラーリ 1989, 1998, 2001, 2002, 2004, 2015, 2017
6   ホンダ 1986, 1987, 1988, 1991, 1992, 2006

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ a b ハンガロリンク(サーキット解説)formula1-data.com 2021年8月8日閲覧。
  2. ^ F1世界選手権が始まる前の1936年に1度だけ、ブダペストのネープリゲトで開催されている。
  3. ^ 無観客イベントとなるF1ベルギーGPとハンガリーGP、収入減の補償の一環で開催契約を1年延長”. autosport web (2020年6月6日). 2020年6月8日閲覧。
  4. ^ 歴代2位。1位はフェラーリが1999年第15戦から2002年最終戦までチームとして記録した53。
  5. ^ 前回は1983年オーストリアGPのアラン・プロスト。
  6. ^ アルピーヌの伏兵オコンが初勝利 1周目の多重クラッシュが追い風 8番手から勝機 角田は自己最高位タイ7位【F1第11戦ハンガリーGP】”. 中日新聞Web (2021年8月2日). 2021年8月3日閲覧。

外部リンク編集