高級住宅街

名声の高い住宅街

高級住宅街(こうきゅうじゅうたくがい)とは、国土交通省発出の「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」で「敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築施工の質の高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な従来から名声の高い地域」と定義されるような住宅街(詳細は概要節参照)。

概要編集

定義は多分に曖昧かつ主観的であり、下記の要件についても国や地域・時代によっても認識は多様となる。

国土交通省の「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」では、「住宅地域」を①~④の4つに細分化し、①を「敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質の高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な従来から名声の高い地域」と定義する[1]。これを「高級住宅地域」とする理解が見られる[2]

固定資産評価においては、「敷地が広大で、かつ、平均的にみて、一般住宅よりも多額の建築費を要する住宅の宅地が連続集中している地区」が「高級住宅地区」と定義されている[3][4]

日本における高級住宅街編集

所沢市松が丘地区[5]や、越谷市せんげん台(千間台)地区[6]も高級住宅地として存在している。所沢市の松が丘地区は、鉄道会社が開拓したニュータウンの高級住宅街であるが、高齢化や空き家増加の影響で地価が低下している[7]
藤沢市鵠沼は、砂原だった場所を別荘地として開発し、のちに鵠沼松が岡などを中心に高級住宅地に変化していった[8]

日本以外における主な高級住宅街編集

イギリス編集

ロンドン中心部のメイフェア地区(シティ・オブ・ウェストミンスター)、ベルグレイヴィア地区(シティ・オブ・ウェストミンスター及びケンジントン&チェルシー区)などが最高級住宅地とされているが、チェルシー地区(ケンジントン&チェルシー区)、リンカーンズ・イン・フィールズ界隈(カムデン区)なども知られている。なお、ロンドン市内の高級住宅街の殆どが高級アパートメントである。

フランス編集

 
エッフェル塔からパッシーパリ16区)を望む。下を流れるのはセーヌ川

パリ中心部のサン=ルイ島4区)が最高級住宅地とされているが、元々スペースが狭いパリ市街の中でも、更に狭い島でしかない。それは“貴族街”とも呼ばれるアンヴァリッド地区やフォーブール・サンジェルマン界隈(7区)でも事情は変わらず、旧貴族や富豪らが暮らすスペースとしてパッシー界隈(16区)が発展したように、高級化の波はパリ市街西部に拡がっていった歴史を持つ。これらの他に、サンジェルマン・デ・プレ地区(6区)、シャンゼリゼ通り周辺やフォーブール・サントノレ界隈(8区)等が知られている。

フランスの場合、英米圏などと異なり、大都市の都心部やかつての城壁に囲まれた地域が一般的に高級住宅街とされているが、例外として挙げれば、パリ近郊だとヌイイ=シュル=セーヌが隣接する16区等と並ぶグレードの高さで知られている。

なお、高級住宅地ないし高級リゾート地としては、モナコも包含するコート・ダジュールが世界的に著名である。

ドイツ編集

ベルリン南西部のツェーレンドルフ地区 (en) 等が位置するシュテーグリッツ=ツェーレンドルフ区内が高級住宅地とされているが、隣接するグリューネバルド地区 (en, シャルロッテンブルク=ヴィルマースドルフ区) も知られている。

また、デュッセルドルフ近郊メアブッシュ (en) には裕福な住人が多く、1人当たりの納税額が例年ドイツ国内で1位である。緑が多く落ち着いた街並みとなっている。メアブッシュ市内のビューダリッヒ地区 (de) には高級住宅街が2ヶ所あり、そこにはプールが付いた大きな庭のある豪邸が多く立ち並んでいる。デュッセルドルフから西に約10kmの位置にある。

アメリカ編集

広大な国土を持つアメリカにおいては大半の場合、高級住宅街は都心部から十数キロメートル以上離れた郊外に存在する。ニューヨーク都市圏では、ウエストチェスターニュージャージー州のアルパイン、コネチカット州などが知られている。

西海岸をみると、サンフランシスコを中心とするサンフランシスコ・ベイエリア都市圏では、サンフランシスコ市の緑豊かなプレシディオ地区、スタイリッシュな店が軒を並べるパシフィックハイツ地区、ゴールデンゲートブリッジ対岸のサウサリート、またサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ対岸の大学都市であるバークレーの背後に広がる丘陵地帯バークレー・ヒルズ、その尾根づたいのケンジントン市やオークランドのクレアモント地区などがサンフランシスコ湾を見渡す好立地条件にあり一般的に高級住宅街として知られている。ロサンゼルス都市圏では、ビバリーヒルズ、ベルエア、パサデナサンタモニカ等が知られている。マリブの他[9]、カラバサス[10]は"ハリウッドセレブ"の住む高級住宅街として映画にも登場する[11]。その他、ハワイ州オアフ島のカハラなども中心部から離れた場所にある。

ニューヨーク市の中心部であるマンハッタンには一戸建てがほとんど無く、数少ない例外であるがアッパー・イースト・サイドにはタウンハウスが存在し数十億円で取引されている。高級アパートメントが立ち並び治安や環境の良い地域はアッパー・イースト・サイドやグリニッジ・ヴィレッジが代表的である。同じ東海岸に位置するマサチューセッツ州ボストンビーコンヒルも数少ない例外の1つであり、一戸建てが非常に少ない。

概して経済力による住み分けの激しいアメリカは「豪邸が立ち並んでいるから高級住宅街」というわけではなく「どのような人(人種職業など)が住んでいるか」が重要となる。事実、その国土の広さがもたらす地価の安さ及び人口密度の低さ故、立地次第では中流階級でも巨大な土地にプール付きの邸宅を構えることも可能である(日本の住宅と比べれば大半の一戸建てが「豪邸」と呼ぶに相応しいサイズである)。

日本の都市はごく一部の地域を除いてオフィス街と住宅街(マンション等)が隣接していることも多いが、アメリカにおいてはその区別は非常に明確で、マンハッタンなどの一部の例外を除き、殆どの都市において一定以上の経済力を持つ富裕層で家族をもつ世帯は、概して郊外への移住を好む。主な理由として緑が多く閑静で好環境であること、貧困層が少ないため治安が良いこと、サイズの大きな家に住めること、などがある。デメリットとしては都心部への通勤時間が長くなることがあるが、アメリカの労働環境やアメリカ人富裕層の住宅事情を鑑みた場合、メリットがデメリットを遥かに凌いでいる。またこれらの郊外高級住宅街のいくつかは「ゲーテッド・コミュニティ」と呼ばれ、周辺を監視カメラなどを装備した塀で覆い、出入り口には警備員を常駐させたゲートを構えるなどして内部の治安を保つようにされている。

このように、「レジデンシャル・セグレゲーション」と呼ばれるアメリカの経済格差による住み分けは激しく、ニューヨーク都市圏などの一部の例外(なおニューヨーク都市圏にも、上述の郊外のウエストチェスターにスカースデールやハーツデールなどの高級住宅街がある)を除けば「郊外=富裕層 都心=貧困層」と考えても概ね差し支えない。例えば郊外で生活する為には車の購入は必須であり、賃貸住宅も少ない(アパートメントはほぼ皆無)ため必然的にローンを組める信頼度が必要なことなど「郊外族」にはそれ相当の収入が必要となる一方、都心部の場合公共交通機関が安価で利用でき、尚且つ賃貸住宅(主にアパートメント)に入居するので審査が軽い。もちろん多くの大都市の都心部にも富裕層は在住しているが全体的な比率や人口動性を見た場合、郊外の住宅街へと移り住むことがはるかに多い。

カナダ編集

西部のブリティッシュコロンビア州バンクーバー市を中心とするバンクーバー都市圏では、ダウンタウンの郊外北西に位置するウェストバンクーバー市南部が、大富豪の巨大邸宅が連なるエリアとして知られている。

香港編集

香港島では、南区太平山山頂付近が映画スターや大富豪の豪邸が集まる高級住宅街であり、映画スターの家を見るためにタクシーなどで訪れる部外者も多い。香港島の比較的海抜が高い地域には、香港大学周辺の半山区(半山區)と呼ばれる地域など歴史ある住宅街が多い。これはイギリスの植民地時代に香港に居住するイギリス人が湾岸部の暑さを避けるために山の上に家を建て始めたのが始まりである。

郊外の新界では、西貢区沙田区の西側から九肚山にかけてのエリアが香港返還後の香港屈指の新興高級邸宅街として知られている。離島区では、外国人富裕層等らがゴルフテニス等を愉しむスペースのとれる郊外の高級住宅に多く住んでいる場所として、大嶼山愉景湾が有名である。九龍半島では、九龍駅天璽九龍塘も高級住宅街。

台湾編集

古くから外国人が居住した台北市士林区天母が高級な住宅街の雰囲気をかもし出しているとして有名。日本の旅行ガイドブックでも紹介されている。そのほか、信義区大安区なども不動産価格が高く、富裕層が多く居住しており、その中でも仁愛路信義路などが特に高級であるとされる。

中国編集

韓国編集

ソウル特別市の都心から少し離れた漢江の北側、城北区城北洞、鍾路区旧基洞と平倉洞などが伝統的な高級住宅街として知られているが、漢江の南側江南区清潭洞と狎鴎亭洞、三成洞などは特に90年代から2000年代にかけて拓かれ、高級マンションやヴィラ等が建築されている[12]

参考文献編集

脚注編集

関連項目編集