三井不動産

日本の東京都中央区にある総合不動産会社

三井不動産株式会社(みついふどうさん、: Mitsui Fudosan Co., Ltd.)は、東京都中央区日本橋室町三井本館本社を置く、三井グループの総合不動産デベロッパーオフィスビル、大型商業施設(SC)、複合商業施設、住宅(2006年から三井不動産レジデンシャルに分社化)を中心にホテルロジスティクス(物流施設)、ベンチャー共創、産官学連携など幅広い事業を展開している。

三井不動産株式会社
Mitsui Fudosan Co., Ltd.
三井本館
種類 株式会社
機関設計 監査役会設置会社[1]
市場情報
略称 三井不
本社所在地 日本の旗 日本
103-0022
東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号
三井本館
設立 1941年(昭和16年)7月15日
業種 不動産業
法人番号 6010001034957 ウィキデータを編集
事業内容 賃貸事業、分譲事業、仲介・販売受託・コンサルティング事業、ホテル・リゾート事業
代表者 菰田正信代表取締役会長
植田俊(代表取締役社長兼社長執行役員)
山本隆志(代表取締役兼副社長執行役員)
資本金 3397億6600万円
(2020年3月31日現在)
発行済株式総数 9億5359万1847株
(2022年3月31日現在)
売上高 連結:2兆1,008億70百万円
(2022年3月期)[2]
営業利益 連結:2,449億78百万円
(2022年3月期)[2]
経常利益 連結:2,249億40百万円
(2022年3月期)[2]
純利益 連結:1,769億86百万円
(2022年3月期)[2]
純資産 連結:2兆9,137億52百万円
(2022年3月期)[2]
総資産 連結:8兆2,080億12百万円
(2022年3月期)[2]
従業員数 連結:24,408人、単体:1,898人
(2022年3月末日時点)
決算期 3月末日
会計監査人 有限責任あずさ監査法人
主要株主 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)18.87%
日本カストディ銀行(信託口)7.60%
SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT 2.41%
ステート ストリート バンク ウェスト クライアントトリーティー 505234 1.77%
シービーロンドン スティッチング ペンショエン フォンズ ゾーグ エン ウェルジジン 1.46%
(2022年3月31日現在)[3]
主要子会社 三井不動産レジデンシャル
三井不動産リアルティ
三井ホーム
東京ドーム
三井不動産ビルマネジメント
三井不動産ファシリティーズ
三井不動産商業マネジメント
三井不動産ホテルマネジメント
ハレクラニ
関係する人物 江戸英雄
坪井東
外部リンク www.mitsuifudosan.co.jp ウィキデータを編集
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三井物産三井住友銀行とともに「三井新御三家」の一つである。財閥解体により清算された旧三井財閥の本体である三井本社の流れを汲む[4]三井グループ(旧三井財閥)の大手として二木会[5]、月曜会、三井広報委員会[6]、三井業際研究所[7]綱町三井倶楽部[8]の会員会社であり、三井文庫の賛助会社でもある[9]

日経平均株価およびTOPIX Large70の構成銘柄の一つ[注釈 1][10]

概要 編集

日本橋三井タワー霞が関ビルディングゲートシティ大崎などのオフィスビル、大型ショッピングセンターの「ららぽーと」「三井アウトレットパーク」といった商業施設、大型物流施設「MFLP」、三井ガーデンホテルなどの宿泊・リゾート施設、マンションなど、幅広く不動産開発事業を展開している。戦後一貫して不動産業界において売上1位に君臨している[11]

1941年三井合名会社不動産部門を分離し、設立された後、米国占領下の融資規制等のため株主安定化がなかなか実現しなかったが、1959年ごろに解決した[11]。このことが業界「ツー・トップ」だった三菱地所と比べてビル事業が比較的小規模なままにとどまっていた一因だった[11]。その後、高度経済成長期には地方都市にいち早く進出。東京都内では超高層ビル事業を積極的に進め、1968年霞が関ビルを完成させた[11]。日本初の超高層ビルの竣工であり、これにより三井不動産は知名度を上げた[12]1958年浚渫埋立事業、1961年宅地分譲事業、1964年別荘地分譲事業、1968年に戸建住宅分譲事業・マンション分譲事業など事業を多角化した[11]。住宅事業(「パークシリーズ」などのマンション開発)は2006年にグループ会社の三井不動産レジデンシャルに分社化された[13]2017年11月からは、商業施設の会員向けなどにインターネット通販サイト「&mall」を運営している[14]。商業施設の運営管理は子会社の三井不動産商業マネジメントが担っている。

1991年より、三井不動産グループのロゴマークとして「&」を象ったロゴマークを使用している。&は同じ三井グループである三井物産が英文社名(MITSUI & CO., LTD.)で使用しており、英語圏では人名のみで構成される会社名を表記する際に慣習的に使用されるものである(他にはTiffany & Co.等の例がある)が、三井不動産では、共存・共生の理念を表すものとして、orではなく、価値観の相克を乗り越えて新たな価値観を創出していくことを表すものであるとしている[15]

本社ビルである三井本館を始めとして、歴史的な経緯から旧三井財閥三井グループ)発祥の地である日本橋地区に多数のオフィスビル・複合商業ビルを所有している。2000年代以降は「日本橋再生計画」と呼ばれる大規模再開発を主導しており、宇宙開発の拠点づくりや新たな産業の創造、日本橋川沿いの水辺空間の賑わい創出、水運開拓などを掲げている[16]日本橋東急百貨店(旧白木屋)の閉店をきっかけとし、同地区周辺の再開発を進め、「日本橋再生計画」の嚆矢として2004年にはコレド2、3(日本橋一丁目ビルディング)をオープンさせた[17]。さらに2007年春には六本木地区(住所上は港区赤坂)の防衛庁跡地に総合複合再開発として東京ミッドタウンを開業。同施設にはリッツ・カールトン東京(高級ホテル)やサントリー美術館が入居した。2018年には千代田区有楽町日比谷)で東京ミッドタウン日比谷を開業、2022年には東京駅前(中央区八重洲)にて東京ミッドタウン八重洲が開業し[18]都心部での大規模複合ビルの開発を進めている。また、官民連携のパークPFI制度を利用し、MIYASHITA PARK(宮下公園)やヒサヤオオドオリパーク(久屋大通公園)などの都市公園の整備・改修、複合商業施設の開発を行なっている。

沿革 編集

歴代社長 編集

歴代の三井不動産社長
氏名 在任期間 出身校 備考
1 小池正彪 1941年 - 1944年 東京帝国大学 会長
2 佐々木四郎 1944年 - 1947年 東京帝国大学
井上逸郎 1947年 - 1948年 京都帝国大学 社長代行
3 山尾忠治 1948年 - 1955年 東京帝国大学
4 江戸英雄 1955年 - 1974年 東京帝国大学法学部
5 坪井東 1974年 - 1987年 東京商科大学(現一橋大学
6 田中順一郎 1987年 - 1998年 慶應義塾大学経済学部
7 岩沙弘道 1998年 - 2011年 慶應義塾大学大学院法学研究科
8 菰田正信 2011年 - 2023年 東京大学法学部
9 植田俊 2023年 - 一橋大学経済学部

主な保有ビル・商業施設 編集

 
日本橋三井タワー
 
霞が関ビルディング
 
東京ミッドタウン日比谷

主要グループ会社 編集

住宅事業

ビル事業

ホテル事業

ショッピングセンター事業

リゾート事業

レジャー事業

インテリア事業

装花・緑花事業

アセットマネジメント・リート

過去のグループ会社 編集

広告活動 編集

テレビ番組 編集

ナショナルスポンサーの場合、全国共通CMのほかに放送エリアに関連した地域限定CMを流すことが多い。

スポンサー番組 編集

過去のスポンサー番組 編集

など

不祥事 編集

耐震の安全性の問題

三井不動産が事業者の一社として建設した神奈川県横浜市のマンション「パークシティLaLa横浜[38]で、虚偽データに基づいた工事が行われ複数の杭が地中の強固な地盤に届いておらず建物が傾いていることが2015年10月に発覚し、耐震の安全性が疑われた[39]日本経済新聞はこの問題で三井不動産グループのブランドイメージが低下する恐れがあるとした[40]。同市では前年(2014年)にも住友不動産が分譲したマンションで同様の問題が発覚し、指導が行われていた[41]

浦安市の東日本大震災による液状化

浦安市で三井不動産が1981年に分譲した分譲住宅「パークシティ・タウンハウス3」の住民ら32人が、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)による液状化で住宅に被害を受けた原因が、適切な地盤改良工事がなかったことにあるとして、三井不動産と関連会社を2012年2月に提訴した[42]。住民ら36人が三井不動産などに約8億4200万円の損害賠償を求めていたが、当時の知見では想定されていなかったとして2014年に三井不動産らが勝訴した[43]。2003年に三井不動産が分譲をはじめた集合住宅「ファインコート新浦安」の住民も液状化被害について三井不動産を訴えたが、2014年に棄却された[44]

産地を偽装したコンクリートが使用されていた問題

宇部興産の子会社である宇部コンクリートが産地を偽装した石灰石を使用し、JIS 認定不適合のコンクリートを出荷していた[45]

東京ディズニーリゾートとの関係 編集

関連人物 編集

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ コーポレート・ガバナンス - 三井不動産株式会社
  2. ^ a b c d e f 決算短信(連結) (PDF) 2022年7月19日閲覧 三井不動産
  3. ^ 株式情報
  4. ^ 沿革|会社情報|三井不動産”. 三井不動産グループ. 2024年4月3日閲覧。
  5. ^ 田中彰、「六大企業集団の無機能化: ポストバブル期における企業間ネットワークのオーガナイジング」『同志社商学』 2013年 64巻 5号 p.330-351, doi:10.14988/pa.2017.0000013201
  6. ^ 三井広報委員会
  7. ^ 会員会社 - 三井業際研究所
  8. ^ 綱町三井倶楽部会員会社一覧
  9. ^ 公益財団法人 三井文庫【賛助会社】
  10. ^ 「TOPIXニューインデックスシリーズ」の定期選定結果及び構成銘柄一覧 (PDF) jpx.co.jp 2020年10月7日公表 2021年10月8日閲覧。
  11. ^ a b c d e 橘川武郎 高度成長期の三菱地所と三井不動産 日本住宅総合センター 不動産業に関する史的研究(Ⅲ)(日本住宅総合センター、1996.11)所収 調査研究リポート No.94241
  12. ^ 今を切り拓き、未来を建設する不動産会社三井不動産株式会社 野村インベスター・リレーションズ 三井不動産株式会社 先駆者たちの大地 IRマガジン 2002年5~6月号 Vol.55
  13. ^ 横浜支店 支店長 徳川浩一 ニューフェイスコーナー 横浜中法人会
  14. ^ 商業施設と連携した新しいコンセプトのファッションECモール Mitsui Shopping Park &mall(アンドモール)~2017年11月1日(水)グランドオープン~ 三井不動産ニュースリリース(2017年11月1日)2018年6月7日閲覧。
  15. ^ https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/csr/2010/environment/policy/index.html[リンク切れ]
  16. ^ 日本橋再生計画コンセプト 街づくりライブラリー 三井不動産グループ”. www.mitsuifudosan.co.jp. 2021年7月17日閲覧。
  17. ^ 「日本橋再生計画」に見るディベロッパーに求められる役割--三井不動産 2014年10月27日 経済界
  18. ^ 「八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業」の街区名称を「東京ミッドタウン八重洲」に決定”. 三井不動産グループ. 2021年7月17日閲覧。
  19. ^ 三井不動産マンションの系譜”. 三井デザインテック. 2022年6月12日閲覧。
  20. ^ 三井のレッツ”. 三井不動産. 2022年6月14日閲覧。
  21. ^ 三井ガーデンホテル大阪淀屋橋”. 三井ガーデンホテル大阪淀屋橋. 2022年6月14日閲覧。
  22. ^ 「ハレクラニ」(ハワイ州ホノルル市)開業25周年”. 三井不動産 (2009年4月27日). 2022年6月14日閲覧。
  23. ^ 三井不動産、NY・マンハッタンの物件完成 地上51階建て高層ビル「55ハドソンヤード」”. SankeiBiz (2018年10月20日). 2022年6月15日閲覧。
  24. ^ 高橋書店編集部 編『ロゴの秘密』高橋書店、2013年、170-171頁。ISBN 978-4-471-19122-1 
  25. ^ ⼤川端リバーシティ21とは”. レジデントファースト. 2022年6月15日閲覧。
  26. ^ 湘南国際村について”. 神奈川県 (2021年12月1日). 2022年6月15日閲覧。
  27. ^ 三井本館”. 文化遺産オンライン. 2022年6月16日閲覧。
  28. ^ 三井不動産グループ中期経営計画について(2000〜2002年度)”. 三井不動産 (2000年5月25日). 2022年6月16日閲覧。
  29. ^ 「日本ビルファンド投資法人」本格運用開始”. 三井不動産 (2001年5月22日). 2022年6月16日閲覧。
  30. ^ 03−08年度三井不動産グループ長期経営計画「チャレンジ・プラン2008」策定についてのお知らせ”. 三井不動産 (2003年5月1日). 2022年6月16日閲覧。
  31. ^ 株式会社リテールアンドホテルプロパティーズとの合併契約書締結のお知らせ (PDF) - 三井不動産・平成19年3月23日
  32. ^ 三井不動産グループ長期経営計画「新チャレンジ・プラン2016」(2007−16年度グループ長期経営計画)策定のお知らせ”. 三井不動産 (2007年5月9日). 2022年6月17日閲覧。
  33. ^ 三井不動産グループ中長期経営計画「イノベーション 2017」(2012〜2017年度グループ中長期経営計画)策定のお知らせ”. 三井不動産 (2012年4月9日). 2022年6月19日閲覧。
  34. ^ VISION2025(長期経営方針)”. 三井不動産. 2023年7月24日閲覧。
  35. ^ 株式会社東京ドーム普通株式(証券コード9681)に対する公開買付けの開始及び資本業務提携契約の締結に関するお知らせ(訂正)「株式会社東京ドーム普通株式(証券コード9681)に対する公開買付けの開始及び資本業務提携契約の締結に関するお知らせ」の一部訂正に関するお知らせ - 日本経済新聞 日経会社情報DIGITAL
  36. ^ 三井不動産株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ (PDF) 東京ドーム 2021年1月19日
  37. ^ 伊勢志摩リゾートマネジメント株式会社”. みえの企業まるわかりNAVI. おしごと広場みえ. 2018年10月13日閲覧。
  38. ^ 開発面積約13 haの商業・分譲住宅の大規模複合開発「ららぽーと横浜」「パークシティLaLa横浜」起工式挙行 平成17年11月30日 三井不動産株式会社
  39. ^ 水戸健一、坂口雄亮 虚偽データ施工:横浜の大型マンション1棟傾いた状態 毎日新聞 10月14日(水)11時34分配信
  40. ^ 旭化成建材がデータ改ざん 横浜の傾いたマンション 旭化成、調査委員会を発足 2015/10/15 0:07 (2015/10/15 1:02更新) 日本経済新聞 電子版
  41. ^ “傾きマンション、杭施工記録に改ざんの跡 旭化成子会社”. 朝日新聞. (2015年10月15日3時9分). https://www.asahi.com/sp/articles/ASHBG4VXPHBGULOB014.html 
  42. ^ 牧田司 液状化被害で住民が三井不動産を提訴した問題を考える 2012/2/3 提供:RBAタイムズWeb版
  43. ^ 千葉・浦安の液状化、住民側の訴え棄却 東京地裁 日本経済新聞 2014/10/8 11:19
  44. ^ 【東日本大震災】また住民敗訴 浦安の液状化訴訟 2014.10.31 16:25更新 産経ニュース
  45. ^ 三井不動産のマンションに偽装コンクリートが使用されていた。“宇部興産の子会社、無認定生コンを12年間出荷:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. (2018年5月29日). 2018-05-29. https://www.asahi.com/sp/articles/ASL5Y5H1QL5YULFA01W.html 2018年6月11日閲覧。 
  46. ^ “ディズニーランド建設秘話 大型利権に群がり、地上げヤクザが暗躍 三井・京成は内紛続き”. livedoorニュース. (2013年4月13日). https://news.livedoor.com/article/detail/7558839/ 

外部リンク 編集