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概要編集

赤の他人だったスパイの男、殺し屋の女、超能力者の少女がフォージャー家という仮初の家族になるホームコメディ。遠藤にとって3作目の連載作品。『少年ジャンプ+』(集英社)2019年3月25日より隔週月曜更新で連載中。

2010年代末の日本では、2019年本屋大賞そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)や第71回カンヌ国際映画祭パルム・ドール万引き家族』(2018年6月公開)など、血のつながらない家族を描いたヒット作が増えていた。家族のつながりが希薄化し、「仲が良い家族への憧れ」を持つ人が増えていることが背景にあるとされる。こうした背景の中で本作の連載が開始された[1]

本作の主人公はスパイ、その妻役は殺し屋であり、殺し屋夫婦描いた映画Mr.&Mrs. スミス』(2005年)のようなハリウッド映画的企画性を持つ。それに加えて子ども役のアーニャが心が読めるエスパーとして、作品を崩さない絶妙なバランスで、作品を引き立てるアクセントとなっているとされる[2]。「鬱々とした」遠藤の連載デビュー作『TISTA』とは異なり[3]、「愉快」な「心温まる」ストーリーで、赤の他人同士が互いに秘密を持ちつつ「本物の家族」になっていく過程が描かれる[4]

本作の連載開始と同日発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)2019年17号には、本作の予告漫画が掲載された。1巻発売直後の同年32号、2巻後の47号にも読切の出張掲載が行われた。

あらすじ編集

東国(オスタニア)で活動する西国(ウェスタリス)の凄腕スパイ・黄昏(たそがれ)は、東国の政治家ドノバン・デズモンドと接触するために、偽装家族を作ってデズモンドの息子が通う名門イーデン校に養子を入学させる任務を指示される。黄昏は精神科医ロイド・フォージャーを名乗り、養子を探して訪れた孤児院で心の読める少女アーニャと出会う。その場でアーニャが難しいパズルを解いた(実際には、黄昏の心を読んでカンニングした)のを見た黄昏は、難関イーデン校に合格できると考え、彼女を養子に取る。実はそれほど賢くないアーニャに黄昏は四苦八苦させられるが、なんとか筆記試験に合格。しかし次の面接試験に「両親」揃って来るよう指示されたため、黄昏は急いで妻候補を探し回る。

そんな矢先、二人はヨル・ブライアという女性と出会う。彼女は公務員をする傍らいばら姫のコードネームで密かに殺し屋をしていたが、婚期の遅れを周囲に揶揄され、他人の注目を避けるために形式上の恋人を探していた。心を読む能力によってヨルが殺し屋であることを知ったアーニャは、好奇心からヨルが母親になってくれるよう仕向ける。恋人役を探していたヨルと妻役を捜していた黄昏、そして「わくわく」を求めるアーニャの利害が一致し、3人は互いに素性を隠しつつ、即席の家族としての生活をスタートさせる。

登場人物編集

フォージャー家編集

"黄昏(たそがれ)" ロイド・フォージャー(Loid Forger)
本作の主人公。東国で諜報を行う西国のスパイ。「黄昏」はコードネームで、本名はスパイになった時に捨てた。オペレーション〈梟〉では「精神科医ロイド・フォージャー」の偽装身分を用いる。
並外れた戦闘力記憶力・情報処理能力を持ち、任務ごとに様々な顔・名前を使い分ける。かつては戦災孤児で、「(幼い頃の自分のような)子どもが泣かない世界」を作るためにスパイとなった。普段は冷徹だが、本来は人間味溢れる性格で、ヨルとアーニャにも気を配る。
任務のため、正体を知らないままアーニャやヨルと偽装家族を形成し、予想外の行動をとる彼女たちに振り回されつつ任務をこなす。なお、ヨルには「死別した前妻(架空)のためにも、アーニャを名門イーデン校に入学させ良い人生を送らせようと」妻役を探していたと説明する。
"いばら姫" ヨル・フォージャー(Yor Forger)
旧姓ブライア(Briar)。バーリント市役所の女性職員。裏の顔は凄腕の殺し屋。27歳。
幼い頃に両親を亡くし、殺し屋「いばら姫」として弟のユーリを養ってきた。「店長」なる人物から指示を受けて暗殺を行う。黄昏をも凌ぐ高い身体能力を誇るが、性格は天然。酒癖が悪い。
本人は無自覚だが整った容姿の美人。人間関係の問題や怪しまれることを回避するために、妻役を探していたロイド(黄昏)と偽装結婚しアーニャの義母となる。黄昏の工作で戸籍上は1年前にロイドと入籍したことにしている。
"被検体007" アーニャ・フォージャー
他人の心が読める超能力者の少女。推定4、5歳だが、イーデン校の入学条件を満たすため6歳を自称する。
ある組織の実験体「被検体007」として生み出されたが、「お勉強」ばかりの生活に嫌気が差して逃亡。以後は自ら「アーニャ」と名乗り、能力を隠しながら施設や里親を転々としていた。任務のため養子を探しに孤児院を訪れた黄昏の素性に興味を抱き、彼の養女となる。黄昏の工作により、ヨルを含め対外的にはロイドの実子(死去した前妻との子)ということになっている。
他人の心の声が絶え間なく聞こえる人ごみが苦手。正規の教育を受けたことがなく、勉強が苦手なことを自身の能力や黄昏の裏工作で誤魔化す。黄昏を「ちち」、ヨルを「はは」と呼び、二人の正体を知っているが、それに気付いていない振りをする。スパイアニメが好きで、毎週欠かさず視聴する。

ヨルの同僚編集

ドミニク
バーリント市役所の男性職員。ユーリとも面識がある。
カミラ
女性職員。ヨルの後輩でドミニクの恋人。ヨルに敵対的。
シャロン
女性職員。イーデン校を受験する息子がいる。

イーデン校関係者編集

イーデン校教師編集

ヘンリー・ヘンダーソン
66歳の男性教師。担当教科:歴史学
エレガントであることを重視し、入試基準でもエレガントを求める。フォージャー家に一目置く。
ウォルター・エバンス
59歳の男性教師。担当教科:国語。
マードック・スワン
47歳の男性教師。担当教科:経済学。イーデン校の先代校長の一人息子。
かなりの悪漢で、性格の悪さから妻と娘に逃げられた。

1年3組編集

アーニャの所属クラス。担任はヘンダーソン。東国要人の子ども達が多く在籍する。

ダミアン・デズモンド
男子生徒。ドノバン・デズモンドの次男。
名家の次男として何不自由なく育てられた。父親の権威をかさに威張っており、入学当初から既に子分もいる。
生意気なアーニャをいじめようとするが、殴られた上に涙ながらに謝罪されたことをきっかけに、彼女のことが気になるようになる。
ベッキー・ブラックベル
女子生徒。アーニャの友人。
アーニャがダミアンを殴ったとき、ベッキーの足を踏んだことを理由にしたのを機に仲良くなる。
親は大手軍事企業ブラックベルCEOでデズモンド・グループとつながりがある。

生徒の保護者編集

ドノバン・デズモンド(Donovan Desmond)
国家統一党総裁。東西平和を脅かす危険人物。
用心深い性格で、めったに表舞台に姿を現さないが、息子が通うイーデン校の懇親会には出席する。
デズモンド・グループなる組織も存在する。

黄昏の関係者編集

フランキー
黄昏の協力者。表向きはバーリントでタバコ屋をしながら、情報収集や書類偽造で黄昏をサポートする。
管理官(ハンドラー)
WISEの女性職員。黄昏の上司。東国に潜みつつ黄昏に指示を出す。

その他編集

ユーリ・ブライア
ヨルの弟。表向きは外務省勤務の公務員だが、その正体は国家保安局(いわゆる秘密警察)の少尉。20歳。
重度のシスコン。秘密警察として黄昏を狙う。知らぬ間に姉と結婚した(ことになっている)ロイドを警戒するが、彼が黄昏であることや姉が殺し屋であることを知らない。自身も姉に秘密警察であることを隠す。
服屋の女主人
イーデン校の制服を扱う服屋の女主人。未婚。政治活動で逮捕歴がある。
黄昏とヨルはこの店で出会う。

用語編集

地理編集

東人民共和国(東国、オスタニア OSTANIA)
本作の舞台となる架空の国。首都:バーリント。
貨幣単位はダルク。政治的には複数政党制がとられ、「国家統一党」・「国民党」などの政党が存在する。
バーリント
東国の首都路面電車が走る。水族館がある。
ミュンク地方
政府の支配が及んでない一帯にニューストンというレンタル可能な城がある。
西国(ウェスタリス WESTALIS)
東国の西側にある架空の国。東国とは互いに諜報員を放ち合っている。

東国関連編集

イーデン校(イーデン・カレッジ)
東国バーリントにあるエリート校。
全校生徒2500人。6〜19歳までの13学年制。1年生(アーニャの同級生)は228名。
星(ステラ)と呼ばれる褒賞を8つ獲得すれば、皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)と呼ばれる特待生となり、親と共に懇親会に出席できる。逆に雷(トニト)と呼ばれる罰を8つ食らうと退学になる。
親がイーデン校OBであるかどうかや寮生と通学生の間で対立・不仲があり、いじめを生んでいる。
国家統一党
デズモンド率いる東国の政党。対西国強硬派であり東西平和を脅かす存在。
国家保安局(STATE SECURITY SERVICE、SSS)
東国の防諜機関。いわゆる秘密警察。国内の治安維持を担い、スパイ狩りや市民の監視を任務とする組織。
ユーリが所属する。黄昏を狙っている。スパイの情報提供者(スティンカー)とみなした者には拷問を加えることも辞さない。
SPYWARS
アーニャが好きなスパイアニメ。書籍もある。

西国関連編集

西国情報局
西国の政府機関。
対東課〈WISE〉(たいひがしかワイズ)
黄昏の所属する組織。マークに眼が描かれてあり、「西側を見張っている」という意味が含まれる。
オペーション〈梟〉(オペーションストリクス)
黄昏に与えられた作戦。「デズモンドに接触するために、偽装家族を作って彼の次男が通うイーデン校に養子を通わせる」ことが任務。「入試の達成」がフェイズ1、「懇親会への出席」がフェイズ2となっている。黄昏はフェイズ2(プランA)達成は困難とみなし、独自にアーニャとデズモンドの次男を仲良くさせ、デズモンド家に接触するプランBを計画する。

社会的評価編集

連載がスタートすると『少年ジャンプ+』史上初めて1話でコメント数が2000を突破し、5話公開までに総ページビューが300万を超えるなど大きな反響を呼んだ[5]。また、1・2話は配信時にTwitterでトレンド入りした[6]。1巻は発売から即重版がかかり[7]、22日目で発行部数30万部を突破した[8]。また、2019年7月~9月にかけて発売された漫画の第1巻としては同期間で最も売れた作品となった[9]。2019年10月時点の発行部数は100万部(電子版含む)[10]。「今年度(2019年度)人気No.1WEBコミック[11]」、「少年ジャンプ+人気No.1作品[12][注 1]」として紹介されたこともある。

本作の主人公たちは旧来の家族像にとらわれておらず、伝統校の教師達は古い家族観の持ち主として対比されている。本作では伝統校の入試に家族で挑む姿が、現代の日本で求められる「癒し」「応援」「仲間」と重なり、それがヒットにつながったとする見方もある[2]朝日新聞は、一見話が破綻しそうな設定だが、「ハードなアクションとギャグとサスペンスが絶妙にからみ合い、読者に疑問を抱く暇を与えずに、テンポよくドラマが展開する」「心にぐっと響くものもあるファミリードラマ」であると評している[14]産経新聞は、「誰にでも人に言えない秘密はある」という命題を持ちつつ、「疑似家族」が「本物の家族」になる過程が描かれ、「たとえつかの間であっても、読む人の心を温めてくれる作品」であると評した[15]

映画的な雰囲気でありながら、近年の少年漫画で良く見られる主人公が常に心の声で語る小説的手法が用いられる。特に、主人公の周囲にいる人物に心情を切り替えていく技法に優れると評される[2]

本作台頭の一因として2019年4月の『少年ジャンプ+』リニューアルが挙げられる。アプリをインストール後、オリジナル連載作品を1回限り全話無料で閲覧可能になり、ライトユーザーが最新話まで一気読みできるようになった。これにより多様な作品間の自由競争が促されて活況を生み出し、閲覧数上位作品のヒット感と話題性をもたらすことに成功した。本作もその恩恵を受けたとされる[16]。また、本作などに引っ張られて『少年ジャンプ+』全体の好調さが生み出されている[17]

主な受賞・ノミネート歴
年度 セレモニー 部門・賞 受賞対象 出典
2019年 次にくるマンガ大賞 Webマンガ部門・1位 SPY×FAMILY [18]
コミックス第1巻ランキング(2019年7月~9月) 1位 SPY×FAMILY 期間中に第1巻が発売された作品の売上を集計[9]
Google Play「ベスト オブ 2019」  ユーザー投票部門・マンガカテゴリ・ノミネート SPY×FAMILY [19]
読者が選ぶ、2019年新作おすすめマンガベスト100ランキング 2位 SPY×FAMILY BookLive!ユーザー対象のアンケート結果[20]

書誌情報編集

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 本作以前には『地獄楽』が「人気No.1作品」とされていた[13]

出典編集

  1. ^ "「SNS受け」を狙うよりも、「圧倒的な面白さ」を突き詰めるべし。『SPY×FAMILY』&『チェンソーマン』担当編集者に聞く、マンガづくりのセオリー". Retrieved 2019年10月6日.
  2. ^ a b c 『進撃の巨人』以来となる「社会的大ヒット」の予感!『SPY×FAMILY』を解説”. 2019年9月27日閲覧。
  3. ^ 遠藤Twitter 2019年7月1日”. 2019年7月20日閲覧。
  4. ^ 父はスパイ、母は殺し屋、娘が超能力者!秘密を隠しあう〈偽りの家族〉が世界の危機に立ち向かう!『SPY×FAMILY』”. 2019年7月20日閲覧。
  5. ^ ジャンプ+の人気漫画『SPY×FAMILY』コミックス1巻発売 8日には本誌の番外編掲載”. 2019年7月7日閲覧。
  6. ^ 林士平Twitter 2019年4月21日”. 2019年7月20日閲覧。
  7. ^ 林士平Twitter 2019年7月8日”. 2019年7月20日閲覧。
  8. ^ 林士平Twitter 2019年8月5日”. 2019年8月23日閲覧。
  9. ^ a b "一番売れた新作漫画は『SPY×FAMILY』! コミックス第1巻ランキング(2019年7月~9月)". Retrieved 2019年10月6日.
  10. ^ 『SPY×FAMILY』累計発行部数100万部突破 連載約8ヶ月で『ジャンプ+』の人気作品に”. 2019年11月19日閲覧。
  11. ^ 彼女の野性が手に負えない』1巻推薦帯[1]
  12. ^ 『週刊少年ジャンプ』2019年46号次号予告。
  13. ^ “即重版出来の人気漫画『地獄楽』初の原画展開催 原稿と複製原画40点以上を展示”. https://www.oricon.co.jp/news/2121920/full/ 2019年11月3日閲覧。 
  14. ^ "(コミック)『SPY×FAMILY』(1) 遠藤達哉〈著〉". Retrieved 2019年8月23日.
  15. ^ "【話題の本】『SPY×FAMILY(1)』遠藤達哉著 心温まる「本物の家族」の物語". Retrieved 2019年11月3日.
  16. ^ 漫画アプリ「ジャンプ+」が週刊少年ジャンプを超える日 創刊5年、出始めたヒット...その取り組みとは”. 2019年9月18日閲覧。
  17. ^ 中路(ジャンプ+編集者)Twitter 2019年9月12日
  18. ^ 次にくるマンガ大賞 2019”. 2019年8月23日閲覧。
  19. ^ マンガ部門ノミネート10作品発表! Google Play「ベスト オブ 2019」ユーザー投票部門の投票受付中!”. 2019年11月19日閲覧。
  20. ^ 読者が選ぶ、2019年新作おすすめマンガベスト100ランキング結果発表!”. 2019年11月19日閲覧。
  21. ^ SPY×FAMILY 1”. 集英社マンガネット S-MANGA.net. 集英社. 2019年8月6日閲覧。
  22. ^ SPY×FAMILY 2”. 集英社マンガネット S-MANGA.net. 集英社. 2019年10月13日閲覧。

外部リンク編集