セダン

車体形状や使用形態により分類される乗用車の形態のひとつ

セダン(sedan)は、エンジン、乗客、貨物の各コンパートメントを備えた3ボックス構成の乗用車である[1]

2018年式トヨタ・カムリ・セダン
1928年式フォード・モデルA・チューダーセダン
バッド英語版ダッジブラザーズのために作った世界初の全鋼鉄製セダン(1919年)。

セダンが初めて車体の名称として記録されたのは1912年のことである[2]。セダンという名称は、17世紀に開発された、窓のある一人用の密閉された箱で、運搬人が運んでいた輿の英語名「セダン・チェア」に由来する。

セダンスタイルの車体のバリエーションには、クロースカップルドセダン、クラブセダン、コンバーチブルセダン、ファストバックセダン、ハードトップセダン、ノッチバックセダン、セダネット/セダネットなどがある。

定義

 
同一モデル(フォード・フォーカス)のセダン、ステーションワゴンハッチバックの側面。

セダンとは、エンジン、乗客、貨物を別々のコンパートメントに収めた閉じた車体(すなわち、金属製の固定ルーフ)を持つ自動車のことである[3]。この広い定義は、セダンを他の様々な車の車体形式と区別するものではないが、実際には、セダンの典型的な特徴は以下の通りである。

  • ルーフを支えるBピラー(フロントウィンドウとリアウィンドウの間)の存在[4]
  • 2列シート[5](p134)
  • フロントにエンジン、リアに荷室を配置した3ボックスデザイン[6][7]
  • クーペに比べてルーフラインの傾斜が緩やかであるため、後席乗員のヘッドルームが広くなり、外観のスポーティさはより小さくなる[8]
  • 0.93 m3以上の後部座席の容積[9][10]

セダンは4ドアでなければならないと言われることがある(セダンと2ドアクーペを単純に区別するため)[11]。しかしながら、いくつかの資料によると、セダンは2ドアでも4ドアでもよいとされている[5](p134)[12][13]。加えて、2010年以降、セダンやクーペといった言葉は、自動車メーカーによってよりゆるくに解釈されている[14]

あるメーカーが同じモデルの2ドアセダンと4ドアセダンを生産している場合、両バージョンのグリーンハウス英語版(温室)の形状と位置は同じで、2ドアバージョンの長いドアに対応するためにBピラーだけが後方に配置されていることがある[15]

語源

 
セダンチェア(トルコのタフトゥレワン)

洗練された輿であるセダンチェアは、窓のある密閉された箱で、座った人を一人運ぶためのものであった。前後の運搬人英語版が水平な棒でセダンチェアを運ぶ[16]。語源学者によると、この椅子の名前はおそらくイタリア語の方言英語版で、「座る」を意味するラテン語sedereから来ているのではないかと言われている[17]。セダンチェアの語源がフランスの町のスダンで作られたことに由来するといわれることがあるが、これは誤りである[18]

 
Motor World、1912年11月14日

「セダン」という言葉が自動車のボディに初めて使われた最初の記録は、1912年、スチュードベーカー・Fourとスチュードベーカー・Sixというモデルがセダンとして販売されたときである[17][19]

1912年以前にも完全密閉型の車体は存在していた。それよりずっと以前にも、同じように完全に密閉された馬車が、イギリスでは「ブロアム英語版(brougham)」、フランスでは「ベルリーヌ(berline)」、イタリアでは「ベルリーナ(berlina)」と呼ばれていた(後者2つはこれらの国ではセダンを示す用語になっている)。

1899年に発売されたルノー・ヴォワチュレット・タイプB(2人乗りで、外にフットマン/メカニック用の座席が付いていた)が、初めて屋根の付いた車として生産されたことから、セダンの先駆けであると言われることがある[20][21]

しかしながら、一般的にセダンは、少なくとも4つの座席を持つ固定式屋根を持つ車と考えられている[17]。この定義に基づけば、最古のセダンは1911年に米国で製造されたスピードウェル英語版である[22](p87)

アメリカ英語ラテンアメリカスペイン語英語版ブラジルポルトガル語では、セダンという用語が使われる(スペイン語ではsedánとアクセント記号が付く)[23](アメリカ英語での発音は [sɪˈdæn])。

イギリス英語では、この形式の車はサルーン ([səˈlun]) と呼ばれる。ハッチバックセダンは単にハッチバックと呼ばれ(ハッチバックサルーンではない)、運転席と助手席の間に仕切りがあるロングホイールベースの高級サルーンはリムジンである。イギリスではスポーツセダンに相当する用語として「スーパーサルーン」がある[24]

オーストラリアニュージーランドでは、セダンが主に使われている(以前は単にcars)。21世紀になっても、特定のモーターレースの長い歴史のある名前にはsaloonが見られます[要出典]

フランス語ではベルリーヌ英語版(berline)、ヨーロッパスペイン語英語版ヨーロッパポルトガル語ルーマニア語イタリア語ではberlinaと呼ばれるがこれらはハッチバックを含むかもしれない。これらの名称は、セダンと同様に、自動車が登場する以前の旅客輸送形態に由来している。イタリアではクワトロポルテ(「4つの扉」の意) とも呼ばれる。ドイツ語では、セダンはLimousine(リムジー)、リムジンはStretch-Limousineと呼ばれている[25]

米国では2ドアセダンは(two-doorと語呂を合わせて) "Tudor"(チューダー)と呼ばれ、その延長線上でフォードは4ドアセダンを "Fordor "と呼んでいた。

日本およびアメリカ合衆国では一般にはセダンが一般名称で、サルーンは上級グレードの商標として用いられることが多いが、実質はイギリス英語アメリカ英語の呼称の違いであり、日本工業規格(JIS)や自動車技術会での技術的な扱いではまったく同じものを表す。日本のJISや自動車技術会では、「サルーン」という呼び名が基本で、「セダンともいう」と規定されている。日本では各自動車メーカーが、一時期英国高級車のサルーンをイメージして、大型上級セダンに「サルーン」と名づけたことから、「サルーン」に高級感のイメージが付加された[注 1]

日本の軽自動車の場合は形状がセダンでも分類としては「軽自動車」となる場合もある[注 2]

概要

日産・パルサーはファストバック型、2ボックス型、ショートノッチバック型で製造された時期があった(上から初代、3代目、4代目)。

一般的に「セダン」というと、リアデッキ(トランク形状)を持つノッチバック型の乗用車のことのみを指す。この形はボンネット・キャビン(居住空間)・リアデッキがハッキリと仕切りで分かれていることから、3ボックスとも呼ばれる。

一方で、広義にはメーカーの都合やカテゴライズの便宜上などでリアデッキを持たず、キャビンと荷室が仕切られておらず同じ空間を共有するノッチレス2ボックスの型も含まれる。加えてトールワゴンミニバンSUVといった背の高いボディタイプが乗用車の主流となっている昨今は、それらと比較する上では「背の低いボンネットタイプの車」と広く捉えることも可能である。

3ボックスタイプは「2ドア」または「4ドア」、2ボックスは後ろをドアに見立てて「3ドア」/「5ドア」とも呼ばれる。2ドアセダンはかつて、小型大衆車を中心にオーナードライバー向けとして設定されていたが、使い勝手の乏しさなどの理由で需要が激減し1980年代に入ると日本国内ではほとんどが4ドアセダンとなり、現在では絶滅している[注 3]。2ドアセダンは1990年代以降において3ドアハッチバック、もしくはクーペにそれぞれ分類されることが通例となり、現在では用語としての2ドアセダンはほぼ使われていない。

セダンの種類

ノッチバックセダン

 
BMW・3シリーズ (E30)
2ドアノッチバックセダンの例

ボンネットと、独立したトランクリッド(荷物室のふた)を持つトランクルーム(荷物室)の間に車室を持つ。セダンとしてはもっとも伝統に則った形状となる。「3ボックスカー」と呼ばれることもある。

静粛性を高めやすい、車体剛性が損なわれにくい(安定しやすい)、被追突時における乗員への危険性が小さいなどの利点がある。北米では、荷室の中を覗かれないという防犯上の理由で独立したトランク構造が好まれ、バレーパーキング英語版ではトランクオープナーに施錠をするか、またはトランクを開けることができないスペアキーのみで車を預ける場合に都合が良い。

FR後輪駆動)や四輪駆動の場合はサスペンションアーム、プロペラシャフトデフドライブシャフトがトランクルームの前や下に位置するため、荷室がいびつな形状となったり、容量が限られる場合がある。FF(前輪駆動)の場合はリア周りのレイアウトに制限は少ないが、バルクヘッド貫通型のトランクスルー機構を持った車種以外では、大きな(または長尺の)荷物を積めないなどの欠点もある。

多くの自動車メーカーの世界的な基幹車種では、企画時にノッチバック型セダンが最量販車種として位置づけられることが多く、その設計を基本としてステーションワゴン、ハッチバックセダン、クーペ、コンバーチブルなどが生まれることもある。ただし、近年では車体剛性や後方の衝突安全性能の確保が難しいという理由でスバル・レガシィB4(BM型系以前)、およびスバル・WRX(VA型系以降)、トヨタ・カローラアクシオ(発売当初から)、トヨタ・アベンシスセダンなどのようにステーションワゴンを基にして逆にセダンを作る例[26][注 4]スズキ・SX4セダン(のちのスズキ・シアズ/スズキ・アリビオ)やスバル・レガシィB4(BN型系以降)インプレッサ(5代目GT系以降)のように、クロスオーバーSUVを基にして逆にセダンを作るという例もある。

近年はファストバック(後述)との境界線が曖昧になってきており、メーカーによってはファストバック型の4ドアセダンや、同じくファストバック型またはノッチバック型の5ドアハッチバックであっても単にセダンを名乗る車種が現れてるなど多様化が進んでいる。

セミノッチバックセダン(ショートノッチバックセダン)

ノッチバックセダンのうち、リアデッキが極端に短い種類。「セミノッチバックセダン」「ショートノッチバックセダン」「2.5ボックスセダン」と呼ばれる。ハッチバックのものもある。

4ドアハードトップ

 
日産・ローレル(8代目後期型)

4ドアセダンのうち、ドアに窓枠を持たないものは「4ドアハードトップ」と名付けられる場合が多い[注 5]2000年代初頭まで中級乗用車や高級車を中心に設定されていた。現在の日本車には採用されていない。ただし、富士重工業(現・SUBARU)では「サッシュレスドア」と呼び、セダンとして分類していた。中でもレガシィ2009年にフルモデルチェンジされるまでサッシュレスドアを採用していた最後の車種であった。なお、軽自動車のカテゴリーでは、2代目オプティのみが軽自動車唯一のハードトップセダンであった。かつては車両中央(Bピラー)が無く、4ドアとしては異様にルーフの低いピラーレスハードトップが流行したが、側面衝突安全性への対応や経年劣化後の窓の艤装精度、またシートベルトの固定位置等に問題があったため、1990年代後半には完全に姿を消した。

欧州では2004年の4ドアハードトップボディを持ったメルセデス・ベンツ・CLSクラスの発表を皮切りに、フォルクスワーゲン・CCアストンマーティン・ラピードBMW・5シリーズグランツーリスモアウディ・A5スポーツバックメルセデス・ベンツ・CLAクラスなどといったハードトップセダンが発表されている。

ハッチバックセダン

 
フォルクスワーゲン・ゴルフ
 
スバル・インプレッサスポーツ

独立したトランクリッドの代わりにリアハッチを設けた種類。キャビンからトランクにかけての落ちるようなボディラインが特徴。小型車の一部を除き、4ドアセダンを基にリアハッチを設けた種類がほとんどである。またトヨタ・ヴィッツ日産・ノートなどのBセグメントコンパクトカーもこの解釈に則ればハッチバックセダンに含まれることになるが、そのように認識する者は皆無である[要出典]

一般的には「セダン」はつけず、単に「ハッチバック」と呼ぶことがほとんどである。しかし長めのトランクルームを持ち、ノッチバックもしくはファストバックに見えるものについては、メーカーがあえて「セダン」と名付ける場合がある(「5ドアセダン」とも呼ばれる[注 6])。またトヨタは代わりに「リフトバック」という呼称を用いている時期があった。

ノッチバックセダンと比べ後席と荷室を使い分けるうえでの自由度が大きく、収容力を上げつつ全長を短くして小回りを良くすることができるのが長所である。しかしその構造上車体剛性面や静粛性では劣る。また端正な見た目にまとめるのが難しく、正統的な印象に乏しくなるため、市場の嗜好や車格により普及度が異なる。欧州では売れ筋の類型の一つであり、高い走行性能と実用性を兼ね備えたフォルクスワーゲン・ゴルフはその筆頭である。

日本国内で最初に導入されたハッチバックセダンは1965年トヨタ・コロナや、1967年に追加された3ドアの三菱・コルト800であったが、当時の日本人にはセダンというより商用ライトバンのような印象が強く、一般の消費者にはほとんど受け入れられなかった。その後1980年代前後に、各メーカーが5ドアセダンを小型・中型大衆車クラスを中心に設定した時期があったが、1990年代になるとカテゴリが近いステーションワゴンをはじめとするユーティリティービークルの流行の陰に隠れてしまい、日本向けの商品構成からはほとんど途絶え、日産・プリメーラUKなどが細々と売られる程度であった。カローラWRCの基となったハッチバックタイプのカローラ(AE111系)が日本国内では販売されていないモデルであったことも国内人気の無さを証明している。

このように国内では長らく人気の出ない形式であったが、コンパクトカーである初代トヨタ・ヴィッツホンダ・フィットの大躍進以降ハッチバックも大衆にかっこいいものとして認識されるようになり、2000年代以降は実用性の追求や海外市場との兼ね合いから5ドアボディを採用する車種も登場。2002年にマツダ・アテンザスポーツで採用され、2003年にはトヨタ・プリウスフルモデルチェンジで、2009年には2代目ホンダ・インサイト[注 7]、それぞれコーダトロンカ形の5ドアボディが採用された。

また2010年代にはスバル・インプレッサマツダ・アクセラトヨタ・カローラといったセダンの国内ラインナップにも5ドアハッチバックタイプが備わり、4ドアタイプの売上を凌ぐようになった。なおこれらの5ドアタイプにはいずれも「スポーツ」のサブネームが与えられているが、激しいスポーツ走行の性能を持っているというわけではない。

5ドアセダンは従来は低価格帯が主軸であったが、近年では欧州の高級車にノッチバック風の5ドアボディを持つ車種が登場している。ポルシェ・パナメーラアストンマーティン・ラピードBMW・5シリーズグランツーリスモアウディ・A5スポーツバックなどがこれに当てはまる。なお、これらの車種はサッシュレスドアを持っていることや(上記車種のうちパナメーラは窓枠付きのサッシュドア)、そのエクステリア・デザインなどから「5ドアクーペ」と呼ばれることも決して少なくない。

ファストバックセダン(カムバックセダン)

 
サーブ・900(初代)

英語版 Fastback/英語版 Kammbackも参照

リアウインドウが比較的寝かされ、はっきりとしたリアデッキ構造を持たない種類。こちらもハッチバック同様、セダンをつけず単に「ファストバック」と呼ばれるのが普通である。

かつてのファストバックは窓ガラスとドアが別であったが、現在は窓ガラスがドアと一体化しているモデルが多い。そのため今のファストバックはハッチバックに近い扱いを受けることが多い。

流線型ブームの始まる1920から1950年代の海外メーカー車によくみられた。日野・ルノーVW・ビートルシトロエン・2CVは日本でもよく知られる存在である。比較的遅くまで採用していたものとしてはサーブで、同社初の自動車である92から、初代 900 までの各世代、中期型までの初代ヒュンダイ・ポニーなどが挙げられる。日本車では日産・チェリー、初代日産・バイオレット(前期型のみ)、初代日産・パルサー(前期型のみ)、中期型以降の2代目トヨタ・パブリカ(OEMの中期型以降のダイハツ・コンソルテを含む)、初代トヨタ・パブリカスターレットセダン(OEMのダイハツ・コンソルテ4ドアセダンを含む)に見られるのみとなっている。

近年では全高(重心)が相当に低いファストバック型のセダンはクーペとして分類されることも少なくなく、メルセデス・ベンツ・CLSクラス、およびメルセデス・ベンツ・CLAクラスではそれぞれ4ドアクーペとしている。また、マツダ・アテンザスポーツ(日本以外:MAZDA6 5ドアハッチバック)や2代目以降のトヨタ・プリウス、2代目以降のホンダ・インサイト、欧州向け7代目三菱・ランサー(5ドア車)(日本名・ギャランフォルティス スポーツバック)のようにノッチバック(あるいはショートノッチバック)セダン風に見せた5ドアハッチバック車もファストバック(カムバック)セダンと呼ばれる場合がある。

2ボックスセダン(ショートファストバックセダン/ノッチレスセダン)

 
モーリス・ミニ マイナー

リアデッキ(リアノッチ)を持たない種類。以前はトランクリッドを持つ種類も製造されていたが、現在ではリアゲートを持つハッチバックタイプがほとんどである。

初代ホンダ・シビックや2代目ホンダ・トゥデイなどのように、同世代にトランクリッドを持つものとハッチバックをもつものの両方が存在する例もある。

スポーツセダン

本来実用性や快適性が求められることの多い2ドア/4ドアセダンに、あえてスポーツ性を加味された趣味性の強いモデルはスポーツセダンと呼ばれる。なお3ドア/5ドアセダンの場合はスポーツセダンではなくホットハッチと呼ばれる。

クーペに比べると、十分な座席居住性を確保した後部座席が備わっているため、所帯持ちには家族の理解を得られやすいという長所がある。また同価格帯のクーペを凌ぐ動力性能を備えたものもあるため、独身の車好きにも積極的に選ばれやすい。

日本初のスポーツセダンはプリンススカイラインGTとされる。後にインプレッサ WRX STiランサーエボリューションのように、絶対的な速さやモータースポーツへの参加を強く意識したモデルが人気を博した。他にもアルテッツァスカイラインレガシィB4のように速さよりも運転する楽しみを重要視したモデルや、クラウンアスリートカローラGTカリーナGTギャランVR-4マークII三姉妹のGTツインターボ/ツアラー系などに代表される、普通の実用セダンとほぼ同じ平凡な外観でありながら、一度アクセルを踏み込めば、スポーツカーに引けを取らないほど速いという意外性を楽しめる「羊の皮を被った狼」と呼ばれる[要出典]ようなモデルもある。特に1990年台に一時代を築いたハイソカーたちは、スポーツセダンに分類されるようなモデルが多い。

なお高価格帯のセダンはいずれも静粛性や低速トルクといった快適性の観点から大型エンジンを搭載しているが、もちろんこれらもアクセルを踏み込めばスポーツカーと同等の加速をする。そのため、スポーツセダンに入るかどうかは足回りなどの調整で決まる。

軽セダン

三菱・ミニカ(初代)
1970年代までは軽自動車であっても明解なトランクが付いたノッチバック(3ボックス)型セダンが製造されていた。
ダイハツ・オプティ(2代目)
画像はオプティクラシック。規格改正後の総排気量660cc以下の軽自動車としては唯一、本格的なトランクが備えられていた。
スズキ・アルトラパン(3代目)
現在の軽セダンは2ボックス(ショートファストバック/ノッチレス)型が主流である。

日本の軽自動車でも1970年代まではリアデッキを持ったノッチバック型で純粋にセダンといえる車が製造されていた。しかし利便性に難があることなどからノッチバック型は次第に廃れ、ノッチレスの2ボックス型が主流となった[注 8]。この傾向は軽自動車の規格がより大きくされた1990年以降、21世紀に入った現在でも変わっていないが、変わり種として1998年から2002年まで販売されていた2代目ダイハツ・オプティが、小さいながらも本格的なトランクルームを備えたショートノッチバック(小さいトランクのため2.5ボックスとも)型ハードトップセダンとして販売されていた。

しかし現在でも軽乗用車においては、「バンでもワゴンでもない」ことを訴えるためにメーカーが実質的に「セダン」と名付けることがある[注 9]

セダンの人気

かつては5ナンバーの中型大衆車であったが現在では3ナンバーセダンとなったトヨタ・カムリ
(10代目)
小型タクシー向けに開発されていた5ナンバーセダン:トヨタ・コンフォート
(2017年6月現在既に絶版)

日本国内での人気

日本のモータリゼーション(自家用乗用車の普及)において、大衆車の普及を促したのはセダンであった。特に日産・ブルーバードトヨタ・コロナの『BC戦争』、日産・サニートヨタ・カローラの『CS戦争』によるセダンの市場への大量流出は、セダンすなわち乗用車の印象を強く印象づけた。特にトヨタでは「いつかはクラウン」という言葉に象徴される、カローラコロナクラウンと続く序列を確立する販売戦略により、セダンはクーペ(または2ドアセダン)とともに大衆の自動車への憧れの形として高度経済成長末期の1980年代まで主流を占めていた[27] 。この頃はバンステーションワゴンハッチバックのような積載性に優れたボディタイプは商用バンの印象が強く、「セダンこそ乗用車、ファミリーカー」という風潮も追い風となった。1980年頃にはハイソカーブームが起き、バブル景気とともに高額なセダンが飛ぶ様に買われていった。1990年時点の乗用車販売台数ランキングでは、上位8車種がセダン単一ボディないしセダンを根幹・派生車種に持っており[28]、セダンが日本人の車を利用する生活(カーライフ)に馴染んでいたことが窺える。

一方でレジャーブームの勃興から、大衆車においては徐々に見栄や地位性だけでなく実用性も求められるようになり、セダンは5ドア(ハッチバック)化が進んだ。1980年代半ばからはSUVステーションワゴンバンといった実用性に優れるRV車のブームが芽生え始め、バブル崩壊後には一気に開花。伝統の形式に則った2ドア/4ドアセダンの需要は縮小していき、クーペとともに廃止となるか、実用性を備えたハッチバックやステーションワゴンへと姿を変えていった。2002年には、それまで33年連続国内販売台数1位であったカローラが、ハッチバック型コンパクトカー単一ボディのホンダ・フィットにその王座を奪われ、セダンの時代は一つの区切りを迎えた。

さらに2010年代にはコンパクトSUV軽自動車(主にトールワゴンやスーパーハイトワゴン)、ミニバンなどが日本市場の中心となった。2021年現在、トップ10に安定して入っているセダンあるいはセダンを派生車種に持つ車種はトヨタ・プリウスとカローラのみで、かつての隆盛ぶりを考えればセダンは既に大衆車・ファミリーカーの主流から外れていると言わざるを得ない状態である。トヨタ・マークXスバル・レガシィといった数十年の伝統を持つセダンブランドも国内販売は2020年までに打ち切られている上、スズキ三菱自動車工業ダイハツ工業(OEM除く)など、ハッチバック型含め日本向けセダンの生産から完全に撤退したメーカーも少なくない。そのような中でもトヨタ自動車は「セダンの復権」を謳って新型セダンの開発を続行し、2021年6月現在も8種類(内6種類が4ドア)ものセダン車を販売している。

車体の大きさで見ると、1990年代以降税制の緩和・海外市場の拡大と日本市場の縮小・安全基準の厳格化・走行性能の追求などにより、大衆車クラスも含め5ナンバーセダンの減少と3ナンバーセダンの増加の傾向が加速。2021年6月現在で日本国内で販売される5ナンバーセダンはトヨタ・カローラアクシオが唯一の存在となっている。そのカローラも(ビジネスグレードを除いて)2019年のフルモデルチェンジで3ナンバーボディに移行しているが、理由については3代目プリウスの大成功に倣ったためと説明されており、セダンを求める消費者の要求や消費者の層自体が変化したということも背景にある。

また4ドア/5ドアという比較で見ると、2021年現在のスバル・インプレッサMAZDA3の販売台数のうち4ドアは2~3割程度で、7~8割の消費者が5ドアを選択している[29][30]。またプリウスは5ドアだけで2019年年間販売台数1位(月販平均約1万台)を取るほどの安定した実力を示したが、4ドア/5ドアの両方を用意したホンダ・シビックは、4ドアだけが販売不振(月販平均130台程度)のため国内から撤退という対照的な結末を迎えている。このように現状最もセダンを入手しやすいCセグメントにおいては、5ドアが圧倒的優勢である。

ただし高出力ユニットが搭載されるため高速域での優れた運動性能が必要であったり、ステータス性・フォーマル性が重視されたりするDセグメント以降の中~高価格帯では依然として4ドアセダンの需要は高いため、トヨタ/レクサス、日産、ホンダを中心に豊富な車種が堅持されている。このクラスではCセグメントとは対照的に国産の5ドアは皆無で、4ドアの独壇場となっている。2021年6月現在、4ドアセダン単独で最も売れているのはクラウン(月平均2100台程度)であり、4ドアカローラ(1300台)やMAZDA3(470台)の販売台数を大きく引き離しているというデータからも、高価格4ドアセダン需要の手堅さが窺える[31]。また捜査用の覆面パトカーを含むパトロールカー社用車教習車レンタカーといった業務用の分野では、「普通の自動車(乗用車)」らしさや燃費、高速安定性、改まった場にも合う佇まいなどの観点から依然として4ドアノッチバック型セダンの需要はあり、これらには専用のグレードや車種が設定される場合もある。前述の5ナンバーセダンも実は法人需要に占める割合が大きく、カローラはフルモデルチェンジ後も旧型のトヨタ・カローラアクシオの併売を続けているほどである。かつて自動車の大衆化を促進した4ドアセダンだが、クーペ同様今や日本ではセダンは趣味性の高いものや特別なものになりつつあるといえる[要出典]

かつてはタクシー(主に小型・中型料金向け)も信頼性整備性、乗務員疲労軽減、狭い場所での取り回しに配慮した専用設計のFRの専用5ナンバーノッチバックセダンが多く販売されていたが、2010年代以降はバリアフリーの観点からミニバントールワゴンといった乗り降り・積み下ろししやすい2ボックス型乗用車に移行したタクシー事業者が増加した。最後までタクシー向けノッチバックセダンを販売していたのはトヨタであり、クラウンセダン/クラウンコンフォート/コンフォートがラインナップされていたが、いずれも2017年に販売を終了し、タクシー専用ノッチバックセダンは絶滅した。トヨタが代わりに発売した専用車のジャパンタクシーロンドンタクシーにも通じる2ボックススタイルのハイトワゴンとなっている。しかし『タクシー=セダン』というイメージは未だに根強く、燃費と信頼性に定評のあるトヨタのハイブリッドセダン、特にプリウスカローラアクシオハイブリッドは現在も個人タクシーを中心に人気が高い。

日本国外での人気

世界的には高級車としてはもちろん、高速安定性・経済性(価格・燃費・タイヤ代)などの点から大衆車としてもセダンの人気は高い。東南アジアや南米の発展途上国ではセダンは一定以上の階級の象徴であり、逆に北米のように全幅2メートル級の巨大車が多い地域ではCセグメントセダンが日本でいう軽自動車に近い存在として親しまれている。そのためスズキ、三菱、ダイハツのように日本ではセダン市場から撤退したメーカーたちも、海外ではセダンを積極的に製造・販売し続けている。

中国と北米では4ドアセダンの需要が非常に豊富で、両地域だけで世界全体の4分の3の占有率を誇る[32]。これらの地域ではトヨタ、ホンダ、日産の中型セダンが買い得感や再販価値(リセールバリュー)の良さから非常に評価が高く、販売台数ランキングでは安定して首位を争っている。5ドアは欧州や中南米などで人気が高い。

2017年の乗用車世界販売台数では1位トヨタ・カローラ、2位ホンダ・シビック、3位はフォルクスワーゲン・ゴルフと5ドア含めセダンが上位3車種を占めた。

しかしその一方で、日本と同様クロスオーバーSUVの大躍進に押され続けているのも事実で、2018年にはトヨタ・RAV4日産・エクストレイル/ローグホンダ・CR-Vの日系SUV 3車種が3強の一角ゴルフを下し[33]、2019年にはRAV4とCR-Vがシビックをも打ち破って3位と4位にそれぞれつけている[34]。現代のクロスオーバーSUVは「背を高くしただけのハッチバックセダン」という性格が強く、技術の進歩でセダンに近い高速域での乗り心地・操縦性(ハンドリング)・燃費などを実現しているため、室内および積載空間で大きな差がついてしまっているのがセダン失速の原因とされる。また欧州車メーカーはノッチバックタイプのSUVも発売するようになっており、これが従来のノッチバックセダン好きの層を吸収していると考えられる。

北米におけるセダンは法人向け(主にレンタカーや社用車)の需要が大きく、値引き競争が激しく利益率が高くないという慢性的な問題がある。またシェール油田の発見による原油価格の低下から、燃費の良くないピックアップトラックやSUVが追い風を受けており、2017年には16年連続で北米乗用車販売台数1位であったセダンのカムリがついにRAV4に引きずり降ろされてしまう事態が発生した。こうしたセダンの人気の陰りに加え、元々のセダン市場における日本車勢の圧倒的な強さ(2020年のセダン販売台数トップ5は日本車が独占)[35]からクライスラーフォードは北米においてセダンの販売から撤退し、GMもセダン生産を縮小してピックアップトラック・SUVへ注力することを決定している[36]。一方で2018年頃から始まった原油高やSUVの増え過ぎを背景に、若者を中心にセダン人気が持ち直しているという見方もある。

中国市場では日本同様、2000年頃のモータリゼーションの過渡期においては4ドアセダン一辺倒であったが、一人っ子政策の見直しによる一人世帯あたりの子供の増加や経済力の増長とともに、湾岸部を中心にクロスオーバーSUVへと人気が移っている。ただしセダンも人気は根強く、質感と信頼性の高い日本車を中心にセダンが売れ続けている。特に日本市場では年間数千台程度の売上で絶版となった日産・シルフィは、中国では高級感・居住性・ブランド力などが評価され、50万台近くを売り上げる「ドル箱」に成長している[37]

車種一例(現行車種)

2021年7月現在。法人向け車種、およびリムジン教習車を含む。
◎印が付与された車種は国内専売車種
★印が付与された車種は国内メーカー海外生産車種。
☆印が付与された車種は国内メーカー海外市場向け専売車種。
■印が付与された車種は海外メーカー日本市場未投入車種。

脚注

注釈

  1. ^ 日産・セドリック/グロリアトヨタ・クラウンなど。
  2. ^ パーク24株式会社の集計では、セダン、ミニバンワンボックスと言ったレベルに軽自動車が含まれる。 [1]
  3. ^ ちなみに日本国内向けにおける最後の純粋な2ドアセダンは1979年3月から1983年5月まで販売されていたE70型(4代目)トヨタ・カローラ2ドアセダン「1300STD」だった。
  4. ^ また、過去の事例ではダイハツ・コンパーノ、および初代マツダ・ファミリアのように商用バン(ライトバン)をベースに逆にセダンを作る例もあった。
  5. ^ 2ドアにもハードトップは存在するが、クーペとして分類されることがほとんどである。
  6. ^ メーカーが独自の呼称を用いる場合もある。トヨタではかつて「5ドアリフトバック」と呼んでいたが、2代目以降のプリウスではセダンとして販売されている。一方、マツダ・ファミリアアスティナランティスサーブ・900の5ドアモデルも外観上はハッチバックセダンに見えるが、商標上はクーペとして販売されていた。
  7. ^ ホンダではハッチバックに分類。なお、初代モデルは2シーターの3ドアハッチバッククーペ。
  8. ^ 軽自動車規格内で室内空間を大きくできることと、軽ボンネットバンとボディを共用できることから。
  9. ^ ホンダ・ライフ(初代)とスバル・レックス(初代)のハッチバックはトランクを持つセダンと区別するため、乗用モデルは「ワゴン」として分類していた。
  10. ^ 日本や欧州で販売されているヤリスとは異なるモデルであり、ヴィオスの姉妹車である。インド向けの名称。
  11. ^ ラテンアメリカ向けの名称。
  12. ^ 広汽トヨタ向けの名称。
  13. ^ タイ向けの名称。
  14. ^ コスタリカ向けの名称。
  15. ^ 先代モデルとなるE140型(ナローボディ版)は完全な国内専売車種だったが、現行モデルとなるE160型は2013年2月から2019年7月まで香港、およびマカオの各中華圏特別行政区へ無印のカローラ名義としてそれぞれ輸出されていた。2019年9月現在では法人向けに特化された「EX」、「HYBRID EX」のみが販売されている。
  16. ^ 既存の2代目カローラアクシオの同型車種。
  17. ^ 日本国内向けはシリーズ10代目・11代目に限り小型普通車規格(5ナンバーサイズ)を継続した独自車種のカローラアクシオとして独立。
  18. ^ 台湾・東南アジア向けの名称。
  19. ^ 欧州向けの名称。
  20. ^ イギリス向けの名称。
  21. ^ ドイツ向けの名称。
  22. ^ 広汽トヨタ向けの名称。
  23. ^ 広汽トヨタ向けロングホイールベースモデルの名称。
  24. ^ 一汽トヨタ向けロングホイールベースモデルの名称。
  25. ^ 北米向けの名称。
  26. ^ 中東・ミャンマー向けの名称。ミャンマー向けは先代モデルを継続販売。
  27. ^ ラテンアメリカ向けの名称。先代モデルを継続販売。
  28. ^ 先代モデルは日本でグレイスの名称で販売されていた。
  29. ^ 南アフリカ向けの名称。
  30. ^ 中国市場専売車種。広汽ホンダ向けの名称。
  31. ^ 中国市場専売車種。東風ホンダ向けの名称。
  32. ^ 初代はコーダトロンカ型の3ドアハッチバッククーペ、2代目はコーダトロンカ型の5ドアハッチバックだった。
  33. ^ a b c 中国向けの名称。
  34. ^ 新興国、および北米・南米専売。
  35. ^ インド市場専売車種。なお、2代目モデルまではスイフトディザイアという車名だった。
  36. ^ 先代モデルは日本でレガシィB4の名称で販売されていた。
  37. ^ 6代目ミラージュのノッチバックセダン版にあたる。
  38. ^ 米国・メキシコ・フィリピン向けの名称。
  39. ^ 台湾市場専売車種。
  40. ^ ロシア市場専売車種。
  41. ^ a b c d 上汽VW専売車種。
  42. ^ 一汽VW専売車種。
  43. ^ a b 一汽VW向けロングホイールベースモデルの名称。
  44. ^ 一汽VW向けの名称。
  45. ^ a b c d e f 4ドアクーペとして販売されている。
  46. ^ 中国・メキシコ市場専売車種。
  47. ^ ブラジル向けの名称。
  48. ^ メキシコ・中米向けの名称。
  49. ^ インド・メキシコ向けの名称。
  50. ^ インド市場専売車種。
  51. ^ インド以外での名称。
  52. ^ a b c d 中国市場専売車種。
  53. ^ 中南米向けの名称。
  54. ^ ブラジル市場専売車種。
  55. ^ 中国・インド向けの名称。
  56. ^ ロシア向けの名称。
  57. ^ 韓国・シンガポール向けの名称。
  58. ^ オーストラリア向けの名称。
  59. ^ 東南アジア・南米向けの名称。
  60. ^ a b 韓国・中国向けの名称。
  61. ^ オーストラリア・ロシア・ブラジル向けの名称。
  62. ^ a b 韓国向けの名称。
  63. ^ 北米向けの名称。

出典

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参考文献

関連項目