メインメニューを開く

蓄圧式ハイブリッド(油圧式ハイブリッド)とは圧力を利用して運動エネルギーを蓄えるハイブリッドの一形式。 英語圏ではHydraulic hybrid vehicle(HHV)などと呼ばれる。

目次

概要編集

原理としては制動時の回生エネルギーやエンジン余剰出力を圧力として貯蔵、それを再び駆動力に利用する。主流の手法は油圧ポンプ/ モーターとアキュムレータ[1]を利用するもので、油圧ポンプを回しアキュムレータに畜圧する事でエネルギーを貯蔵。駆動時はアキュムレータの圧力を開放し油圧モーターを回し出力する形となる。この場合、蓄圧気体は窒素ガス等であるが作動流体はあくまでオイル(フルード)であり、分類としては油圧駆動となり油圧式ハイブリッドなどとも呼ばれる。 ポンプ/モーターをどこに配置するかは電気式ハイブリッドと類似し、いくつか方式がある。パラレル式ではエンジン-ミッション間やミッション-ディファレンシャル間などに配置される。パラレル式は既存の車輌、エンジン、トランスミッションに付加しやすいが設計の自由度は低い。 シリーズ式ではエンジンはポンプ、駆動軸側にポンプ/モーターを配置する。エンジンから駆動軸へは機械的な伝達機構がないため設計の自由度は高く、特にFR車の場合はプロペラシャフトが不要と出来るメリットがある。また可変容量のポンプ/モーターを使う事で無段変速が可能となり変速機も不要と出来る。ただしHSTと同様に一旦油圧に変換しての伝達となるため効率が低くなる。その他にトヨタのハイブリッドなどと同様に遊星歯車による動力分割機構を用いるスプリット方式も考えられ、駆動軸への機械的な接続は必要ではあるがシリーズ式より伝達効率は高くでき変速機も不要と出来る。油圧ポンプ/モーターと遊星歯車機構を組み合わせた伝達方式はHMTとして産業分野で既に普及している。

電気式ハイブリッドシステムと比較するとモーターやバッテリー、コンバーターなどが不要で、主に機械的な要素で構成されレアメタル等が不要であることから生産コスト(規模による)や製造・廃棄時における環境負荷を低く出来るとされている。またバッテリーのようにエネルギーの貯蔵および放出時の劣化がなく、シビアな制御を必要としない点も大きい。しかし後述の様なデメリットがあり、大きく普及はしていない。

1990年代に制動時のエネルギーを回収して効率を高め、加速時のエンジンの負荷を下げる事で有害排出物の低減を目的として各社で開発された。蓄圧式ハイブリッド車は三菱ふそうの"MBECS"といすゞ・キュービックの"CHASSE"と日産ディーゼルUAシリーズの"ERIP"が存在したが、どれも期待していたよりも省エネルギー効果が低かったこと、構造上、ハイブリッド機構の小型・軽量化や移設が難しく低床化に向かないこと、中期安全ブレーキ規制への適合も難しいなどの理由で開発を中止、整備にも手間がかかるので現在はハイブリッド機構を停止、撤去した事業者が多い。

一方、電気式ハイブリッドは1990年代の開発当時は鉛蓄電池を使用しており、まだパワーエレクトロニクスが開発途上の段階で、大電力半導体素子の開発には半導体メーカーの協力が不可欠で自動車会社各社は電気自動車の試作の経験はあったものの、電気関係の経験が浅かったため、電気式ハイブリッドシステムの開発には困難が伴い、事実、日野自動車HIMRは開発が難航した[2]。そのような状況下で蓄圧式ハイブリッドは当時の既存の技術を活用する事が可能で技術的なハードルが電気式ハイブリッドよりも低かった。2000年代以降、電気式ハイブリッドが実用化の水準に達すると各社は電気式ハイブリッドが主流になり、蓄圧式ハイブリッドは廃れた。

しかし海外では2000年代以降においても研究や提案、試作、限定的な運用は続けられており、例えばEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)による研究からUPSの輸送トラックやゴミ収集車での運用などが行われている。

構造や特徴からバスやトラックなど大型車輌への適用が多い。しかし乗用車においてもコンセプトレベルではいくつか存在する。フォードは2002年にMighty F-350 Tonka Conceptにイートンと開発したHLA(油圧発進アシスト)を搭載、その後もピックアップトラックの油圧式ハイブリッドを度々発表している。しかしこれらは最小でもピックアップトラックといった大型車を対象としたものだった。しかし2013年にプジョー・シトロエン(PSA)がボッシュとの共同開発により比較的小型の乗用車にも搭載が可能なHybrid Air(ハイブリッド・エア)を発表、いくつのモーターショーにてコンセプトカーを複数車種出展したものの開発費用を分担できるパートナーが現れない事から2015年には開発を縮小、商用化には至ってはいない。

走行用途以外では重機に利用される事がある。重機ではもとから作動用に油圧機構を利用するため採用しやすく、例としてはショベルの旋回停止時のエネルギーを圧力へ変換し、旋回時に利用するものがある[3]

採用車種編集

  • MBECS
  • ERIP
  • CHASSE

関連項目編集

脚注・参照編集

[ヘルプ]
  1. ^ 作動流体が行き来する仕様から高圧側アキュムレータ以外に同容量のリザーバーが必要で、低圧アキュムレータが用いられることが多い。
  2. ^ “特集:21年目の躍進! 日野のハイブリッドバス”. バス・グラフィック (ネコ・パブリッシング) 16. (2012年10月). ISBN 9784777013388. 
  3. ^ キャタピラー社の油圧ハイブリッドシステム


外部リンク編集