夫婦別姓

夫婦が結婚後も改姓せずそれぞれの婚前の姓を名乗る婚姻および家族形態あるいはそのような制度

夫婦別姓(ふうふべっせい)、あるいは夫婦別氏(ふうふべっし/ふうふべつうじ)とは、夫婦結婚後も改姓せずそれぞれの婚前の名字苗字)を名乗る婚姻および家族形態あるいはそのような制度のことをいう[1]

これに対し、婚姻時に両者の姓を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことを「夫婦同姓」(ふうふどうせい)あるいは「夫婦同氏」(ふうふどうし/ふうふどううじ)という。

夫婦別姓・同姓を選択できる制度を、「選択的夫婦別姓」(せんたくてきふうふべっせい)、あるいは「選択的夫婦別氏」(せんたくてきふうふべっし/せんたくてきふうふべつうじ)と呼ぶ[2]

概要編集

用語編集

一般に、前近代の日本は夫婦別姓といわれるが、ここで言う「姓」は織田・徳川などの「苗字」(日本固有法)ではなく平(朝臣)・源(朝臣)などであり(中国法系)、日本の現行法の「氏」は正確には苗字であるため、現在にいたるまで厳密な意味では「夫婦同姓」ではない[3]。しかし、歴史的には異なる意味を持つ氏、姓、名字、苗字は、現代では同義に扱われることも多い[4]

日本法は「氏」(うじ)を用いるため、法的議論では「夫婦別氏」(ふうふべつうじ)が使われる傾向にある[5][要ページ番号]

これに対し、昭和22年民法改正で「姓」の方が非家族主義的概念との主張があったが支持が無く「氏」が維持された経緯[6]に着目し、あえて「夫婦別姓」の語を好む[7]歴史学者もいるが、氏が反社会的とまでは認めがたいとの立場からは、夫婦別氏で問題ないことになる[8]

本項は「夫婦別姓[9]」の名で学者に紹介されているが、本文中では原表記を尊重する場合を除き法的議論にはなるべく「氏」で統一し、歴史的には姓(せい)・名字・苗字を包含する意味で使う(暫定)。

選択的夫婦別姓(氏)につき、法務省ホームページでは「選択的夫婦別制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)[10]」と記載するが、「夫婦別姓選択制[11][要ページ番号]」「夫婦別氏選択制[12][要ページ番号]」「選択的夫婦同姓[13]」「夫婦同姓別姓選択制[14]」などの表記も提案されている。

そのほか、現行制度下の非法律婚を夫婦別姓と呼ぶ[15][16][要ページ番号]ことがあるが、本項では事実婚で統一する。

問題の所在編集

日本民法750条(夫婦の氏)

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

戸籍法74条

  • 婚姻をしようとする者は、左の事項を届出に記載して、その旨を届け出なければならない。
    • 一.夫婦が称する氏
    • ニ.その他法務省令で定める事項

例外は国際結婚に限られる。しかし

  • (一)「夫又は妻」が自己の氏を称せなくなるため、アイデンティティ喪失の恐れがある
  • (二)慣習上多くは妻が改氏するため、間接差別の危険がある
  • (三)改氏を受け入れるとしても、手続きが煩雑・高コストで仕事上も不利益がありうる[17]

ことなどから、別氏のままの婚姻を選択できる制度の導入が検討され、訴訟も起きている[18][19][20][19][21]

一方で、仮に導入しても別氏を選択しない限り(三)の問題は残るため、推進派は多様性の尊重を主張しておきながら同氏を選択する夫婦の利益を考慮しておらず、特定のイデオロギーを背景にした夫婦別氏の間接強制に過ぎないのではないかという懐疑論も根強く[22][23]、親子別氏という別の問題が発生するという指摘[24]や、旧姓の通称使用拡大の方が賢明[25]、簡易迅速に氏名変更できるようにする方が先決[26]などの主張もある。

もっとも、消極派の中にも何らかの制度改善は必要なことの指摘[27]はあり、推進派の中にも、選択制導入さえあれば終局的解決になるわけではないことの認識[28]を持つ論者はいる。

過去には同様の法制度の国もあったが、改正の結果[18][29][30][31]、日本の「法務省が把握している限りでは、現在、婚姻後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならない夫婦同氏制を採用している国は、我が国以外にはございません」という状態になっている(第196回国会衆議院法務委員会、法務省民事局長発言)[32]

国際結婚編集

戸籍法107条

  • 2.外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

法の適用に関する通則法により外国人には民法750条が適用されず夫婦別氏になるが、戸籍法上の届け出をすれば戸籍法上同氏になる(原則別氏、例外同氏)。戸籍実務では「戸籍上の氏」と「民法上の氏」は区別して運用されるが、前者が法的な氏(本名)になる。両者が食い違うほかのケースとして、離婚時、養子離縁時に旧氏に復さず婚氏、縁氏の名乗りを継続する場合(婚氏続称、縁氏続称)がある[33][34]

旧姓通称使用編集

職場・職種によっては旧姓(氏)を通称にすることが便宜上認められる。1988年に富士ゼロックスで初めて導入され、国家公務員でも2001年から認められるようになった[35]

2010年の時点では、導入済みの企業は192社中55.7%、従業員1千人以上の企業で71.8%(産労総合研究所調べ)[36]。政府の調べでは旧姓使用を認める企業は全体の半数以下である[37]

しかし、二つの名前の管理は企業の負担が大きく[38][39][40]、認めない職場も少なくないため[41]#旧姓通称使用訴訟が度々行われている。

また従業員側でも二重の氏を使い分けるのは概して不便、あくまで通称に過ぎないため公文書には使えない等の問題があり、アイデンティティ上の問題も残る[41][42][43][44][43][45]。役員登記、特許出願などは戸籍上の氏で行われるため、旧姓を使用できない[37]。親から法人を受け継いだ女性は自分の氏を失うわけにはいかないので、結婚をあきらめたり事実婚も多いという事実がある[37]旧姓#問題点参照。

事実婚編集

日本の現行法上事実婚は婚姻として扱われず、外部からも認識しづらいため、入院時などの家族関係の証明[46]海外赴任時の配偶者ビザの問題[47]、など日常生活上の問題、相続法・税法上の問題[48][49][49][50][46][51][52][53][47]成年後見の問題[47]がある(事実婚#事実婚における問題点)。

また、子は戸籍上非嫡出子(婚外子)として扱われ[50]、単独親権に服し、父母が共同で親権を行うことができない[49]

国際世論編集

国際連合が1979年に採択した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に、日本は1980年に署名し、1985年に批准した[54]

民法に関わる規定は次の通り[55][18][41][56][57][58][59]

  • 第16条1: 締結国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
    • (g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)。

国連の女子差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本民法の夫婦同氏が「差別的な規定」だとし、改善を勧告している[60][18]

しかし、条約違反により権利を侵害された個人・団体が同委員会に通報できる女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書を日本は批准していないため[61]、批准を求める動きがある[62][61][63]

また、アメリカ合衆国国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書も2015年版から日本の民法規定に言及を続けている[64][65][66][67][68]

民法改正案編集

1994年の「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」[69]、1996年の法制審議会答申の民法改正案[70]、超党派野党や公明党などが2015年などに提示した案、選択的夫婦別姓訴訟原告らの提示案、自民党内の例外的に夫婦の別姓を実現させる会が2002年に提案した案などがある[71]

1994年要綱試案編集

1994年に法務省民事局参事官室は、3つの案を「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」として提示した[69][21]。さらに議論を経て、後の1996年の法制審議会答申では、現行制度の枠組みを維持しつつ希望者に別氏を認めるA案に同氏・別氏を対等とする修正を加え、B案と折衷した要綱案が作成された[21][54][72]

A案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。ただしこの定めをしないことも可能(原則同氏、例外別氏)。
  • 別氏夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻のいずれかの氏を、子が称する氏として定めなければならないものとする。
  • 別氏夫婦は、嬌姻後、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、夫又は妻の氏を称することができるものとする。
B案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称することができるものとする(原則別氏、婚姻の際に特段の合意がされた場合にかぎり、同氏を称することができる)。
  • 婚姻後の別氏夫婦から同氏夫婦への転換、及び、同氏夫婦から別氏夫婦への転換はいずれも認めない。
  • 別氏夫婦の子の氏は、その出生時における父母の協議により定める。
C案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するものとする。
  • 婚姻により氏を改めた夫又は妻は、相手方の同意を得て、婚姻の届出と同時に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を自己の呼称とすることができるものとする。
  • 婚姻前の氏を自己の呼称とする夫又妻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その呼称を廃止することができるものとする。
批評

日本弁護士連合会は、A・B案は同氏・別氏のいずれかを原則としているが、優劣をつけるべきではないと批判[71]。C案に対しては、氏の二重制はわかりづらく実質的にも平等でないと批判している[71]。子の氏についてはB案を支持する[71]が、協議が調わない、又は協議できない場合家庭裁判所の審判で定めるべきとする[71]

法務省は2002年4月にも、A案と同様の案を提示している[73]

1996年法制審議会答申編集

国際連合の1975年の国際婦人年から始まる国際的な女性の権利保障の推進運動や、1985年に日本も批准した女性差別撤廃条約などを受け、1991年、日本は国内の男女平等施策を推進するための国内行動計画を策定するとともに、法制審議会において家族法の見直し作業に着手した[74]

法制審議会の審議は5年にわたって行われ、1992年、1995年の2回の中間報告、1994年の要綱試案の発表などを経て、1996年2月、法務大臣の諮問機関である法制審議会が、家族法の見直しを含む民法改正案要綱を法務大臣に答申した[74]

主な内容は以下の通り[74]

  • 世界の趨勢に合わせ、婚姻年齢を男女18歳に統一
  • 女性のみに課せられている再婚禁止期間の短縮
  • 選択的夫婦別氏の実現
  • 婚外子相続分差別の廃止

婚姻年齢統一は2018年に成立(2022年令和4年)4月1日施行)[75]、再婚禁止期間の短縮は(再婚禁止期間訴訟の最高裁違憲判決により)2015年12月16日に実施[76]、婚外子の相続分差別の廃止は(最高裁の違憲判決により)2013年に実現している[77][78]

選択的夫婦別氏に関しては、

  • 価値観の多様化を背景にした国民の要望
  • 個人の尊厳の観点から、氏に対する人格利益を法律上保護すべき
  • 既に世界諸国で夫婦別氏が許容されており、夫婦・親子関係の本質・理念に反しない

と主張した[21]

最終答申(1996年)編集

1991年1月に設置された法制審議会身分法小委員会での審議を経て、法制審議会は、1996年の答申で民法改正案を法務大臣に提示した[70][21][79]

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

法務省は2001年11月[73]、2010年2月[80]にも同様の案を再提示している。

この審議に合わせ、民事行政審議会は、「別氏夫婦に関する戸籍の取り扱い」についても法務大臣に答申[81]

  • 戸籍は夫婦およびその双方又は一方と氏を同じくする子ごとに編製する。
  • 戸籍の氏名の記載は、子が称する氏として定めた氏を称する者、その配偶者の順に記載する。
  • 戸籍には、現行戸籍で名を記載している欄に氏名を記載する。

親子・相続関係を一覧的に把握できる現行制度の利点を尊重し、夫婦及び親子の戸籍編製基準単位は維持された[82]

超党派野党案/公明党案編集

法制審議会答申以来、野党は超党派でほぼ会期ごとに民法改正案を提出し続けているが、未審議のまま廃案と再提出が繰り返されている[83][84][85](「#年表」を参照)。その他公明党も2001年に改正案を単独で提出している[86]民主党が2015年に、社民党日本共産党等と共同で参議院に提出した案は以下のような案である[87][88]。2018年に、立憲民主党国民民主党無所属の会、日本共産党、自由党社民党の5野党1会派が提出した案の内容も同様である[89]公明党が2001年に提出した案も同様の内容である[86]

前案とほぼ同じ内容[73]だが、さらに日本弁護士連合会の提言に沿っている[71]

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から2年以内に別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができる。
  • 別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称するものとする。
  • ただしその協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができる。

戸籍法改正による選択的夫婦別氏案編集

2018年1月の国に対する訴訟で、原告は、婚氏続称制度を念頭に、「戸籍上の氏」と「民法上の氏」を分け、戸籍法の届け出により、民法上の旧氏を戸籍上の氏=本名として称せるよう戸籍法を改正すべきと主張[90][91][92][93][94]。具体的には、戸籍法に以下の条文を加えることで、民法を改正することなく選択的夫婦別姓を実現できる、と原告らは主張している[94]

  • 婚姻により氏を変えた者で婚姻の前に称していた氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届出に記載して、その旨を届け出なければならない

同案に関しては、2019年に国民民主党代表の玉木雄一郎が、日本人同士の結婚時にも別氏を選択できる戸籍法改正を目指す考えを示している[95][96]

家裁許可制別氏案編集

2002年7月16日に発足した、野田聖子ら自民党一部議員による「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」が提案した案。職場の事情や祖先祭祀の必要など特段の事由がある場合に、家庭裁判所による許可を得て認める、とする案である。議員立法として自民党法務部会に提出されたものの党内合意に至らず国会提出は見送られた[97][98][99][99][100][101]

  • 職業生活上の事情、祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を称する必要がある場合において、別氏夫婦となるための家庭裁判所の許可を得ることができる。
  • 夫婦同氏が原則とし、別氏夫婦から同氏夫婦への転換は認める。逆は認めない。
  • 別氏夫婦は、婚姻時に「子が称すべき氏」を定める[97][81]
批評

朝日新聞は、強硬な反対論者を説得するための妥協案である[102]、両性の合意以外に家裁の許可を必要とするのは違憲、職業による差別や家制度の復活に繋がる恐れがある、という批評を紹介している[103]

その他の案編集

旧姓続称制度(1997年)

自民党・社会党・さきがけ政権の1997年に自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で検討された案として「旧姓続称制度」[104][73][105]がある。旧姓続称制度は、配偶者の同意を得た上で届け出れば、社会生活上の全場面で旧姓を使えるようにするもの[104][105][106]

大脇雅子は、法案が提出されなかった原因として、20名の賛同者が必要で、自社さ政権では「3、2、1の法則」があり自民党側でうち10名の提案者が必要だったが揃わず、自民党のバックの宗教団体の反対署名も多かったことを挙げている[105]

日本弁護士連合会会長声明は、事実上選択的夫婦別氏と変わらないなら戸籍上の同氏強制に固執する必要は無いし、二重の氏は社会的混乱を招くと批判している[107]

例外的夫婦別氏案(2001年)

2001年に法務省は法制審答申案と同様の案を再提出し見送りとなったため、翌2002年4月要綱試案A案と同様の「例外的夫婦別姓案」を提示した。この案も見送りとなっている[73]

通称使用の法制化案(2002年・2020年)

2002年、選択的夫婦別氏に反対する高市早苗は、野田聖子らによる「家裁許可制夫婦別氏案」が自民党内で検討された際に、「対案」として「通称使用の法制化」を主張した[105]。高市は2020年にも自民党法務部会に同じ案を再提出している[108]。この案は以下のような内容である[109]

  • 戸籍に「婚姻前の氏を通称として使用する」旨を記載する。
  • 国、地方公共団体、事業者、あらゆる公私の団体は、通称として使用するとされた婚姻前の氏を「併記」するための処置を講ずる義務を負う。

森山真弓法相は、「二つの名前を一人の人が公式に使うとなると、混乱を生じ、犯罪に使われる可能性がある」と否定的であった[105]

日本維新の会マニフェスト(2019年)

2019年、日本維新の会は、参議院選挙の公約(マニフェスト)に「同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら旧姓使用にも一般的な法的効力を」を掲げた[110][111]

婚前氏続称制度(2020年)

イデオロギー問題とは離れ、旧氏を使い続けたい人の救済の観点から2020年に稲田朋美が提唱した私案。戸籍上は同一戸籍で、例えば筆頭者は夫でも、妻は旧氏を使うと届け出れば戸籍に明記して公的には旧氏のみを使い続けられるようにし、ファミリーネームは私的な場面で使う[112]。稲田が2020年11月13日に衆院法務委員会において提案した案では、3カ月以内に届け出をすれば以前の姓を使えるよう改正する、とした[113][114]。案では、民法および戸籍法に以下の変更を加えている[115]

  • 民法750条第2項「前項の規定により氏を改めた夫または妻は、婚姻の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を称することができる」を新設する。
  • 戸籍法74条第2項「民法750条2項の規定によって婚姻前の氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届書に記載して、その旨を届けなければならない」を新設する。

夫婦創姓論・結合姓論編集

鎌田明彦は、旧姓に固執する選択的夫婦別姓は穏当でないと批判し、夫婦創姓や、夫婦結合姓を含めた制度を提案。一方で、現実感に欠け実現困難、家族名称に執着するのは時代遅れ、多様な家族形態に対応できないなどの反論があることを自ら紹介している[116]

関連する民法改正論編集

2019年、超党派野党は日本で初めて同性婚を法制化する婚姻平等法案を衆議院に提出[117][118]。同時に選択的夫婦別氏法案に対する新旧対照表も示されている[117]。同性婚を求める訴訟もある[119]

また、共同親権を求める動きがある[120][121]

歴史的経緯編集

歴史論の意義編集

現行法との関係では、日本の伝統は古代以来夫婦同姓だから変えるべきでないとする主張と、そうではなく、夫婦別姓が古代以来の伝統であり、現行の夫婦同姓は明治政府が西洋に倣って強制的に変更したものに過ぎず、別姓を認める方がかえって伝統にも適うとする選択的夫婦別姓積極論が強く主張されている。これに対し坂田聡 (歴史学者)は、両説とも誤りであり、前者は歴史の無視、後者も姓と苗字を混同した俗説だと批判している(制度導入は容認)[122]

また夫婦別氏が進歩的という思い込みによるもので、近世のそれは男尊女卑思想の現れで守るべき伝統ではなく、進歩派を自認しながら復古主義を援用するのは自己矛盾だとする批判もあり(宮崎哲弥八木秀次小谷野敦、導入には反対)[123]、賛否を問わず現行法の改正論とは切り離して議論すべきとも主張されている(大藤修[124])。

一方で、氏は各時代ごとの社会経済の反映とみる立場から、歴史の検討は必須不可欠との主張[125]もある。

古代編集

大和朝廷によって、古代豪族が元々持っていた氏名(うじな)が天皇から公認され、新たに下賜されるものもあった(源平藤橘)。さらに国政上の地位を示す姓(カバネ)が与えられた(氏姓制度)。蘇我大臣馬子(そがのおおおみうまこ)の場合、蘇我が氏名(うじな)、大臣が姓(カバネ)である。奈良時代に律令制が確立するとカバネは形骸化し、氏名(うじな)と同化して(せい)と呼ばれるようになる[126]

百姓」(ひゃくせい)という言葉があったように、一般庶民(公民)は全て戸籍によって把握され、何らかの大氏族集団に属して姓を持った。そのことは、詠み手として庶民が多数登場する『万葉集』に明らかである。特に天皇の権威が健在な平安時代前期までは非常に重んじられた[127]。これは父の姓を名乗るとされたから(父系継承)、婚姻によっても変更されず、文字通りの夫婦別姓であった。父方を遡れば天皇家と結び付くことを示すもので、実家との結び付きを示す後世の夫婦別苗字とは次元が異なるとも主張される(坂田)[128]

もっとも、中国や韓国と異なる独自の特徴として同姓不婚のタブーが無く、血の繋がりが無くても擬制的に同姓を与えられた者も多かったため、同姓婚による夫婦同姓と夫婦別姓が混在する状況であった[129](原則別姓、例外同姓)。

平安後期から中世前期編集

摂関政治・院政期と続き、天皇の権力が衰える中で名字が発生[130]

中世における夫婦別姓(氏)の例として、しばしば源頼朝の妻北条政子が挙げられる(井戸田博史[131]水野紀子[132]山口一男[133]、ほか多数[134])。

源頼朝の妻は、北条(平)政子であって、けっして源政子とはいわなかった。……足利八代将軍義政の妻は日野富子であり……古来より女は結婚して夫の家に入っても、生家の氏姓を捨てず、妻はいわば異姓の人として夫の家族に属してきた。この慣行は武士法を通して明治の前半期まで伝えられてきたのである。 — 井戸田博史『「家」に探る苗字となまえ』144頁、1986年(昭和61年)

しかし、本人が北条政子を名乗った事実は確認されておらず、あくまで後世の呼び名に過ぎない。当時の女性は外向きには実名()を名乗らないのが普通であった。家族以外からの呼称は大姫御台所など、公文書には本姓を使って「平氏女」(たいらのうじのにょ)と署名していたと推測される。もっとも、当時の妻は「後家」となったとき婚家の主要な一員として台頭し、亡夫の財産や絶対的家長権を継承する存在であり、惣領として親族を率いることも稀でなかった[135]。ただし、井戸田は現代の「氏」と異なることは指摘している[136]

また「北条」の名字自体、北条時政個人の私称という性質が強く、代々の一族が実際に「北条」を名乗ったかは疑問視されている[137]。当時の名字はその世代限りで用いられ、代々継承される永続的な組織の名(家名)ではなかった[138]

中世後期編集

鎌倉時代の分割相続が南北朝時代には単独相続に移行し、家産家業などを継承する永続的な「家」が成立。名字は家名となって代々継承されるようになった(苗字[139]

摂関家でも正妻は婚家の一員と認識されるようになり、婚家の苗字+妻の社会的呼称で呼ばれるようになる(例:九条尚経の娘、二条尹房正妻経子=二条北政所伏見宮貞敦親王の娘、二条晴良正妻位子女王=二条北政所)。

つまり、後藤みち子によれば、夫婦別姓かつ夫婦同苗字であった。足利義政の正室日野富子については、夫婦別姓(氏)の例として挙げる論者もいるが、実際に本人がそう名乗った事実は無く、姓+諱の「藤原富子」が正式名であり(より正確には藤原朝臣[140])、当時の社会通念からすると婚姻後日野氏を名乗る理由も無く、姓と苗字を混同した後世の誤解だと批判している[141]

細川ガラシャは実家の明智氏も婚家の細川氏も源氏なので夫婦同姓だが、苗字については、熊谷開作は、クリスチャンとしては細川ガラシャを称したらしいと書いている[142]。「明智ガラシア[143]」表記を採る学者もいる。

姓を持たない庶民の場合、中世前期の夫婦別苗字から後期には夫婦同苗字が主流になったが、(クリスチャン以外の[144])女性が苗字を用いることは稀であった[145]

例えば、1471年(文明3年)の丹波国山国荘に残された資料によると、井戸村の江口家が菩提寺に「江口沙弥道仙禅門、同妙珠禅尼夫婦」と記したケース、1528年(大永8年)、同荘枝郷の下黒田村の坊家において、坊姫・坊又二郎の夫婦が娘に田地を与える譲り状に署名したケース、1545年(天文14年)同村の鶴野兵衛二郎が井本家に嫁いだ姉の「井本さいま」に山林を譲ったケースが確認され、少なくとも同地では夫婦同氏が一般的だったことが論証されている[146]

坂田聡は、夫婦同氏の伝統は、井戸田博史らが主張するような明治以後の100余年よりは長いが、悠久の昔から続く伝統とも言えず「せいぜい500~600年」程度だと主張している[147]

苗字の女系継承編集

一説によると豊臣秀吉は元々苗字持ちでなく、木下家利婿養子の名目で木下祐久と改名した杉原定利の娘おねと結婚したことで「木下藤吉郎秀吉」を名乗るようになったという[148]

江戸期編集

近世(江戸期)になると、士分以外の者(庶民)は一部を除き姓・苗字(氏)の使用が禁止された(1801年(享和元年)の禁令)とされるが、正確には、安易な資金調達の手段として苗字帯刀を許すのを「領主・地頭」に禁じたに過ぎないと指摘される[149]

姓と苗字の区別が曖昧になり混同されることが多くなったが、武士階級では官職の授与など格式ばった場で実名とのセットで姓を使うなど、苗字と明確に区別されて用いられた[150]

妻については、幕府の法令で明確に規定されておらず慣習法に委ねられていた[151]ことに異論は無い[152]

その慣習については、氏を持つ場合には妻はもっぱら生家の氏を名乗り、夫の氏にはならず、夫婦別氏だったとする説[153][154]が有力に主張されている。

例証として、芦東山の妻が夫の幽閉赦免願書に「飯塚妱【女へんに召】」(いいづかちょう)と生家の氏での署名があること、松尾家に嫁いだ妻多勢(たせ)が平田国学に入門した際の誓詞帳に「松尾佐治右衛門妻 竹村多勢子」と実家の氏で署名したこと、夫婦別氏の墓標があることが指摘されている[155]。また傍証として、妻の死後実家の墓地に「帰葬」する習慣が北陸から東北にかけて広く分布することも指摘される[156]

江戸時代の武士階級の夫婦別苗字につき、熊谷、井戸田らの法史学者は、後述の明治民法編纂時における横田国臣委員の発言を根拠に、正室と側室が同居する一夫多妻制において妻の「出所」を明らかにする趣旨であり[157]、「腹は借り物」とする男尊女卑思想の現れに過ぎなかったからこそ、一夫一婦制を前提とする明治民法には採用されなかったと主張している[158]

これに対し、明治政府が一時的に採った夫婦別氏政策に庶民からの不満が噴出したことからすると、近世の庶民は一般に夫婦別氏ではなかったとする批判もある(坂田)[159]

また、明らかな夫婦同苗字の事例もあることから、庶民慣習をどちらか一方に決すことはできないとの慎重論もある(大藤)[160]

例としては、中継ぎの相続人となった大坂の町人の未亡人は「○○家後家」と名乗る場合が多く、女名前で表れている場合でもごく短期間ながら公儀により聴許されている[161]。また武士(郷士)においても、幕末の勤王の志士梁川紅蘭が尊王攘夷運動の中で夫の梁川星巌(稲津長澄)の苗字を名乗った例がある[162]

もっとも、通常は妻が氏を名乗る必要もなく、自ら名乗ることは稀であった[163]。井戸田博史は、役儀等の事由で庶民が氏の公称が許された場合に氏を名乗れるのは当主を中心とする男子のみで、女性には氏は無縁だった(無氏)としている[154]

なお従来は江戸時代の庶民は苗字を持たなかったという説が支配的だったが、洞富雄の1952年の研究を発端に、庶民も苗字を使っていた例が多く指摘されるようになり[164]、近世の庶民も苗字を使用していたことは確定している[165]。井戸田は、庶民の氏には公称を許された氏と、私称している氏があったとする[154]

例えば、天明3(1783)年・文化13(1816)年の長野県東筑摩郡坂北村の寺院再建奉加帳によると、その地の全農民が氏を持っていた。また同県南安郡33箇所の講中名簿によると、同地方のほとんどの農民が氏を持っていた。妻は「同人妻」と表記されている[166]

しかし、庶民の苗字は「家名」としてはあまり機能しておらず、代々の襲名(「○左右衛門」や「○兵衛」など)や屋号が重要な意義を果たしていた[167][168]

近代編集

1870年10月13日(明治3年9月19日)、太政官布告により平民にも氏使用が許可された[169]が、ほとんど誰も名乗らなかった。庶民にはその習慣が欠けていたためである[170]

1872年3月9日(明治5年2月1日)、徴税・徴兵・治安維持などのために国民の現況を把握する目的で、戸籍法(壬申戸籍)施行[171]

ところが、古くからの苗字を変更する者がいたり、同居の父・兄・弟が別々の苗字で届け出るなど混乱が生じた。行政側も一貫せず、同一家族ならば同一苗字たるべしと命じたにもかかわらず、妻が実家の苗字で届け出ても受理されるケースもあったという[172]

8月24日の太政官布告は改氏・改名を禁止。庶民解放政策の一環ではあったが、襲名や屋号を家名として使っていた庶民に多大な混乱をもたらした[173](8年後の太政官指令で緩和された[174])。

1875年(明治8年)2月13日の太政官布告22号では、兵籍取調の必要から苗字の使用を義務化した[169]

太政官指令編集

夫婦の氏の扱いについては、苗字必称を徹底するため、1875年12月の太政官布告で婚姻・縁組・離婚などの際に新しい苗字を作って良いとされた[175]

ところが、妻は夫の身分に準じるので夫家の氏を称するのが穏当だが、前例が無く決し兼ねるとして内務省が太政官の判断を仰いだのに対し、1876年(明治9年)3月17日の太政官指令15号は「伺の趣婦女人に嫁するも仍ほ所生の氏を用ゆ可き事/但夫の家を相続したる上は夫家の氏を称すへき事」[169][176]と回答[169][177](原文は旧字体カタカナ、以下同じ)。夫の家を相続していない妻は「所生の氏」すなわち生家の氏を用いるべきという意味である。但し、妻が夫の「家」を相続した場合は「夫家」の氏を称するとしたほか、妻が夫の家から分家した場合にも夫家の氏を称する[178](原則別氏、例外同氏)。

太政官法制局が内務省の主張を退けた理由について、「妻は夫の身分に従うとしても、姓氏と身分は異なる」「皇后藤原氏であるのに皇后を王氏とするのはおかしい」「歴史の沿革を無視」の3点が指摘されている[179]

これには異論が噴出、明治民法公布直前までほぼ毎年地方官庁から伺いが出され、多い年には5件にも達した。妻が夫家の氏を称するのが地方一般の慣習であり、生家の氏を称するのは僅かにもかかわらず「所生の氏」政策に固執するなら、世上混乱のもとになると批判されたのである[180]

後世の学者は、民間の慣例では多くは婦は夫の氏を称しており[181]、太政官指令後も変わらなかったと指摘。東京府では、婚姻後も生家の氏を称する妻は極めて僅かと報告されていた[182]

同指令後の戸籍上の扱いについても妻の氏を記載しないものが多かったが、生家の氏を残す例もあり、夫婦同氏だったと断定はできない[183]

明治10・11年民法草案編集

1877年(明治10年)9月、上程された「民法草案人事編」は次のように規定。

第188条

  • 婦は其夫の姓を用ふ可し

起草者は箕作麟祥牟田口通照、実質は箕作の単独起草とも言われ、全編完成は翌年である[184]

明治11年頃までは用語が確定せず、法令では姓・苗字・氏が混用されている状況であった(明治民法で氏に統一された)[185]

同草案は概して仏民法典の直訳という定評がある[186]が、夫婦の氏の規定は当時無かったので、本条は独自規定である[187]

前年の指令の夫婦別氏を直ちに覆したことは、「氏」に対する明治政府の自信の無さの表れ[188]、当時の庶民慣習の「夫家の氏への夫婦同氏」と軌を一にするもの[189]、不平等条約改正を意識してキリスト教系の夫婦一体論を参考にしたもの[190]、などの見方がある。

全体的に出来が悪く、日本の実情に合うようにとの大木喬任司法卿の要望にも沿わなかったため不採用になった[191]

当時の西洋法事情編集

フランスでは、1793年の革命法が氏の名乗りを自由化して混乱を招いたことから翌年に覆されていたものが(1802年に若干緩和)、仏民法典が規定しなかったことから効力を保ち、氏不変の原則が確定した[192]

ナポレオン体制下で仏法が適用されていたために、仏民法典のほぼ逐語訳に加えて不明点を明確化した1829年のオランダ民法典[193]では次のようになっている。

オランダ民法旧63条

  • 何人に限らず王の允許を受くるに非ざれば自己の姓を変更し又は自己の姓に他の姓を添加することを得ず仏国共和第11年「ゼルミナール」月11日の法律)

一方、同じくナポレオン体制下にあったがカトリックの影響が強いイタリアでは、1865年、多少独自色を加えた民法典を制定している[194]

イタリア民法1975年改正前第144条(夫権)

  • 夫は家族の長である。妻は夫の市民上の地位に従い、夫の家名を採りそして夫がその住所を定めるにつき便宜であると信ずるところにはどこへでも夫に随伴すべき義務を負う[195]

つまり、もし明治10年草案の夫婦同氏が外国法典を模範にしたとすれば、伊民法の可能性がある[196]

もっとも、フランスでも婚姻中妻が夫の氏を称するのが一般的だったから、1893年(日本では明治26年)改正法は慣習を追認しており、学説は婚姻中妻に夫の氏の使用権を認めたものと解している(建前別氏、実態同氏)[197]

第311条

  • 1.別居を宣告する判決若は後の判決は妻に夫の氏を称することを禁じ、又は之を称せざることを許せざることを許可することを得。夫が自己の氏に妻の氏を付加したる場合に於ては、妻は夫に之を称することを禁止すべき旨請求することを得。

同299条

  • 2.離婚の効果に因り各配偶者は自己の氏を回復す[198]

一方、ドイツでは中世以来、妻が夫の氏を称するのが一般的な慣習法だった[199]が、当時日本にほとんど独法の情報は入っておらず、同年に中江兆民ザクセン相続法を訳出した程度であった[200]

旧民法第一草案編集

1888年(明治21年)1月、ドイツ民法第一草案が完成[201]。当時最も進歩的合理的と言われたが、旧民法が参照しなかったことは非難を浴びた[202]

10月頃、熊野敏三ら日本人委員によって旧民法人事編草案が完成。

人事編38条

  • 1.婚姻に二種あり普通婚姻及び特例婚姻とす
  • 2.婦其夫の氏を称し其身に従ふときは之を普通婚姻と云ふ
    • 反対の場合に於ては之を特例婚姻と云ふ
  • 3.特例婚姻は双方の明瞭なる意思に出つるを要す
    • 其意思に疑ひあるときは普通婚姻と看做す

外国法では主として仏・伊民法、ほかにベルギー民法草案も参照したが[203]、同条では入夫婚姻による氏の女系継承を認めており、起草者の熊野も「婚姻を二種に区別するは我国の慣習に基づくもの」と説明し(『民法草案人事編理由書』40丁)、少なくとも主観的には明らかに日本慣習に立脚していた(熊谷)[204]

当時そのような慣習が既に確立していたとまで言えるかは疑問とする後世の批判もあるが(熊谷)[205]、実際当時の庶民意識は夫婦同氏に近かったとも言われる(井戸田)[206]

明治23年3月、仏法派法学者井上操関西法律学校、現関西大学創立者)も草案につき、「婚姻を普通特例の二種と為したるも旧慣に依るなり。只婦夫の氏を称するといふが如きは古今の例とは異なり。古今は婦は其実家の氏を称したり。然れども幕府以来実際は夫の氏を称し、現に今も夫の氏を称し戸籍の如きも別に実家の氏を示さず。故に習慣に悖(もと)りたるにあらず実際現行する所に従ひたるなり」と説明している[207]

第一草案は実験的性格が強く、児島惟謙など多くの司法官・行政官が異論や時期尚早論を唱えていたから、法律取調委員会元老院で修正されることになった[208]

旧民法再調査案編集

法律取調委員会の修正案は以下の通り[209]

再調査案人事編342条

  • 1.戸主とは一家の長を謂ひ家族とは戸主の配偶者及ひ其家に在る親族を謂ふ
  • 2.戸主及ひ家族は其家の氏を称す

23条

  • 1.婚姻に二種あり普通婚姻及び特例婚姻是なり
  • 2.婦か夫の氏を称し其身分に従ふときは之を普通婚姻と謂ひ夫か戸主たる婦の氏を称し其身分に従ふときは之を入夫婚姻と謂ふ
  • 3.入夫婚姻は双方の明示の意思に出つることを要す若し其の意思を明示せさるときは普通婚姻と看做す

ここで「夫の氏」が「家の氏」になったことを重視して(342条)、草案の保守化とみられる[210]ことが多い。

反面、第一草案で認められていなかった女戸主を認めた上で[211]、地方の判事・検事から特例婚姻を廃すべきとの批判があったにもかかわらず、引き続き入夫婚姻の形式で氏の女系継承を許容している(23条)[212]

女性も例外的に家長たりえるのは日本法独自の特徴である[213]

フランス民法1970年改正前第213条

  • 1.家族の首長たる夫は家庭の住居を選定する権利を有す;妻は夫と同居する義務を負ひ、夫は妻を引き受くる義務を負ふ[214]

旧民法編集

1890年(明治23年)10月、元老院の審査、天皇の裁可を経て民法典(旧民法家族法公布[215]

人事編第243条

  • 1.戸主とは一家の長を謂ひ家族とは戸主の配偶者及ひ其家に在る親族、姻族を謂ふ
  • 2.戸主及ひ家族は其家の氏を称す

後世(1950年代)の学者には、東洋の主義を捨て西洋の夫婦一体思想を採り入れた画期的規定と評価するものもある(星野通[216]

同258条

  • 入夫婚姻の場合に於ては婚姻中入夫は戸主を代表して其権を行ふ

原則は夫側が戸主になるため妻はその氏を称するが、入夫婚姻の場合に限っては「入夫は戸主を代表して其権を行ふ」に止まり「戸主」の地位は名目上交代しないので[217]、この場合は夫が妻の氏を称する(同243条2項)。

この法典は民法典論争により施行延期になったが、夫婦同氏規定が延期派から非難された事実は確認されておらず、明治民法でも変更は無い[218]

旧民法の家族法部分は慣習をかなり尊重して成立したものだったため、財産法と異なり根本的修正を受けず明治民法に継承された[219]というのが通説的理解だが、条文を無視して、民法典論争の結果戸主権が明治民法に新設されたという俗説を流布する戦後の教育者が少なくないことが批判[220]されている。

明治民法編集

1898年(明治31年)に明治民法が施行され、夫婦同氏が法的に確定。

昭和22年改正前第746条

  • 戸主及ひ家族は其の家の氏を称す

法典調査会委員は皆これを支持した(第127回法典調査会[221]

内務省か内閣の指令や何かに妻と云ふ者は縦令(たと)ひ婚姻に因っても生家の氏を称すべしと云ふことが特別にありましたが、成程夫(そ)れは不都合でありますが、妻は無論のこと家族は戸主の氏を称することは宜しいと思ひましたが……今も当局者でも矢張りさういふことを言って居る者がありますが、夫れを変へるには何か矢張り少し理由がないと分からぬと思ひますが。 — 穂積八束
恰(あたか)もさう云ふことがあっては不都合である……夫の家に属して其夫の家名を称するのが当然であらう……其指令は……果して夫れが日本の今日の慣習法であるかと云ふに至っては夫れ程の力あるものに見ては居らないのであらうと思ふのであります。 — 富井政章
妻が実家の氏を名乗ると云ふやうなことは……殆ど慣習でない、支那流儀で何か碑銘とか出所ろを確かにする為めである……果たして実家の氏を何時も名乗るか疑ひます……日本では実際其夫の氏を名乗って居ります。 — 横田国臣

起草委員の梅謙次郎は、中国法系の行政実務と当時の日本の慣習が食い違っていたのを後者に統一した趣旨だと説明[222]。委員の奥田義人英吉利法律学校、現中央大学創立者)も、妻が生家の氏を称する慣習があったことを認めつつ「此慣習は既に事実上廃滅に帰せるを以て、本法は氏を以て専ら家に属する名称となし、同一の家に在るものは皆同一の氏を称するを要せしめたり」と説明している[223]

氏の女系継承については以下の通り。

同788条

  • 1.妻は婚姻に因りて夫の家に入る
  • 2.入夫婚姻及ひ婿養子は妻の家に入る

通常は「妻は婚姻に因りて夫の家に入る」ため(788条1項)、妻が夫の氏を名乗るのが原則だが(746条)、入夫婚姻に加えて婿養子は夫が妻の家に入るため、妻の氏を名乗る(788条2項・746条)[224]

梅は、外国の例は格別参考にならないとしつつも、スイス、オーストリア、イタリア、ドイツの民法で妻が夫の氏を称すると紹介し(例外はスペイン)、明文の無い場合でも事実上同じだとの理解を示し(第146回法典調査会)、日本では「入夫婚姻及び婿養子縁組の場合に在りては夫却って妻の家に入るべきは是亦慣習上当然」と説明している[225]

スイス民法改正前第161条

  • 1.妻は夫の姓及び身分権を取得す[226]

ドイツ民法1976年改正前第1355条

  • 妻は夫の氏を称するものとす[227]

入夫婚姻の対象となる女戸主については、一部の仏法派委員(高木豊三)から一切認めない修正説も出たが退けられ、両当事者の意思表示があるときに継続が認められる規定(同736条)が採られた(第127回法典調査会[228]

ドイツ法との関係編集

非法学者の論者の中には、日本の夫婦同姓は明治31年の民法がドイツに倣ったものと主張[133][229]するものがある。

しかし、帝国議会への説明では、明治民法746条は明治23年の旧民法人事編243条2項と同一法文で、制度趣旨に変更は無いとされている(民法修正案理由書)。

法学者滝沢聿代は、夫婦同氏につき独民法が参照されたに違いないのは戦後の改正民法だと主張[230]。内容的にも、明治民法では「夫の氏」ではなく「家の氏」を名乗るため、夫が妻の家の氏を称することもあり(788・746条)、離婚すると家を出て「実家に復籍」するため旧氏に復するのに対し(739・746条)、独法ではキリスト教的な夫婦一体論を背景に、婚姻により実家を離れて新たな「婚氏」を形成するため、離婚しても復氏しないという大きな差異があると指摘[231]している。

歴史論の要約編集

  • 坂田説:中世に発生した夫婦同苗字の伝統が細々と受け継がれて明治初期に顕在化し、明治民法で確定した
  • 井戸田説:明治初期の平民苗字必称令後に生じた夫婦同苗字の慣習が旧民法で承認され、明治民法で確定した
  • 熊谷説:明治初期に生じた多様な慣習が旧民法第一草案で夫婦同氏に統一され、漸次日本的家制度の色彩を増しながら明治民法で確定した
  • 星野通説:仏法系の旧民法が西洋的な夫婦同氏を採用したことが保守派の反発を招いた(が、明治民法で修正は無かった)
  • その他1:日本古来の夫婦同姓を現行法は継承している
  • その他2:日本古来の夫婦別姓を外国法の模倣により強制的に明治民法で修正した

戦後の動き編集

改正民法・戸籍法編集

戦後、1946年(昭和21年)7月より、内閣臨時法制審査調査会と司法省司法法制審議会で民法の改正の審議が開始された。婚姻に関しては、当初は「妻は夫の氏を称する」案と「氏は社会の慣習に委ねる」案があったが、翌年7月、夫または妻の氏を称するという最終案になった[232]

起草委員が当時の事情を明かしている。

それで初めに妻は夫の氏を称するという要綱案の第7を条文化して司令部に出したとき、これは男女両性の平等の原則に違反する憲法違反だというので、いまの現行法のように改正しました。 — 奥野健一
妻が夫の氏を称するということは憲法違反だなどといっても、彼らアメリカ人もみなやっていることではないですか。 — 中川善之助
(中略)どうも司令部の連中には大陸法その他比較法的な知識があまりない……。 — 我妻栄
ウィードという婦人部長か何かの女の中尉も結婚したことのない人だからそういうことはわからなかったかもしれませんね。 — 中川
これは旧案の788条で、「夫婦ハ共ニ夫ノ氏ヲ称ス但当事者カ婚姻ト同時ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ妻ノ氏ヲ称ス」るという条文だったのですね。これが平等でないというのでしょう。違憲というのはね……。 — 奥野
お前の国でもそうじゃないかといえばいいのに……[233] — 中川

1947年12月、改正民法が成立し、翌年1月施行。氏は、夫婦のどちらかから選べるようになった(750条)。改氏する側は届出に必須の形式的要件になる(民法750条、戸籍法74条1項)。

同時に改正戸籍法も施行。戸籍は戸主と家族を記載するの登録から、個人の登録に変わった。ただし戸籍の編成基準が一組の夫婦と氏を同じくする子(戸籍法6条)であることが明記された[234]。日本式戸籍が便利なのはGHQも認めていため、最低限の補修で済ますか、個人主義徹底の狙いで完全に解体するかという二主義が対立。後者ではコストがかかり過ぎることもあり、妥協的に決着した[235]

1980年代までの動き編集

1954年7月、早急に制定された改正親族法の再検討のため民法部会を設置。1955-1959年公表の「法制審議会民法部会身分法小委員会における親族編の仮決定及び留保事項」では「夫婦異姓を認むべきか」が挙げられた[236]

制度上男女平等が徹底されたにもかかわらず、ほとんどの夫婦は夫の氏を選択する状況が続いた。これは単なる意識の問題というよりも、男性の方が就業率が高いので、改氏による影響を受けやすい夫の氏の維持が合理的という社会的背景があった。したがって、女性の社会進出が進むに伴い、何らかの形で妻の事情も考慮すべき必要を生じたのである[237]

1960年代には、選択的夫婦別氏への支持や立法論がみられるようになる[232]

1974年には「結婚改姓に反対する会」が結成され[238]、1975年には参議院に選択的夫婦別氏を求める請願が提出される[239][234]

1976年には、女性の地位向上の観点から、離婚時に妻が婚姻時の氏を保持できない民法規定が見直され、選択可能にする婚氏続称制度が導入された[21]。中心となったのは佐々木静子参議院議員。本来の目標は選択制導入だったとされる[34]

1984年、戸籍法が改正され、外国人の称する氏への変更を簡易に認める規定が設けられ、国際結婚では選択的夫婦別氏が実現した[238]。同年には、「夫婦別氏をすすめる会」(現、夫婦別姓選択制をすすめる会)が東京で結成された[240]

1985年には日本政府が女性差別撤廃条約を批准。これに応じて政府の婦人問題企画推進本部は、21世紀へ向けて婚姻・親子の法制の見直しを検討するとした[232]

1987年には、養子離縁時の縁氏続称が認められた[241][242]

1988年には、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求めて訴訟[243](1993年東京地裁棄却、1998年和解、「#国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟」参照)

1989年、岐阜県各務原市の夫婦が、別氏の婚姻届不受理への不服申し立てを家裁に行い、却下された。同年、法務大臣諮問機関である婦人問題有識者会議において、選択的夫婦別氏問題が取り上げられた[244]

1990年代から2010年代まで編集

1991年には法制審議会が「民法の婚姻・離婚制度の見直し審議」を開始した[18]。1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申した[18]。しかし、保守系国会議員らの反対・慎重論によって同年5月に国会上程が見送りとなった[245]

1992年の時点では多くの夫婦別氏制推進団体の存在が報告されている[232][246]

1997年にも自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で「旧姓続称制度」が検討されたが見送られた[104][73][105]。また、この頃より「選択的夫婦別姓制度」とする民法改正案が議員立法により提出されるようになった[232]

その後も、1999年の男女共同参画社会基本法の成立および男女共同参画局の設立により中心的課題と位置づけられた[247]

一方で、これらの運動が、日本会議神道政治連盟などの反発を呼び起こしたとの主張もある[247][248][249]

2001年11月に法務省は選択的夫婦別氏案を再提示したが見送られた。2002年4月には、法務省は例外的夫婦別氏案を提示、意見一致せず見送りとなった[73]。同年7月には、自民党内の選択的夫婦別姓制度を求める議員ら(野田聖子ら「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」)が法案の国会提出を模索し、党内反対派に譲歩し、家裁の許可を要件とすることを盛り込んだ例外的夫婦別氏制度を議員立法で自民党法務部会に提出。しかし党内合意に至らず国会提出は見送られた。その後、2000年代、2010年代には自民党内では議論がなされることはほぼなかった[98][99][100][101][250]

一方、立憲民主党国民民主党社民党共産党などは、法制審答申以来、超党派で会期ごとに民法改正案を国会に提出し続けている[83][84][85]。2001年には公明党も参議院に選択的夫婦別氏案を提出している[19][86]

2003年(平成15年)国際連合女子差別撤廃委員会が、婚姻最低年齢、離婚届後の女性の再婚禁止期間の男女差、非嫡出子の扱いと共に「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な法規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」と日本に勧告[251]。その後も改善が見られないとして、2009年2016年にも勧告を受けている[252][253][254]

日本国政府は2008年4月に選択的夫婦別氏につき、国民の議論が深まるよう努めていると報告したが[255]、2009年8月に再度、委員会は「本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき」と勧告した[60][254]

2010年には、民主党社民党国民新党の連立政権で法案提出が議論され、同年2月には1996年の法制審議会答申に沿った改正案が法務省政策会議で示された[80]。しかし連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出に至らなかった[101][54]

政府は2014年8月にも国連に報告書を提出したが[256]、2016年に委員会は再度批判的勧告を出した[252][253]

また、多くの訴訟が起きている。2006年に別氏婚姻届不受理取り消しの申立てが却下。2011年に国に対し選択制を求める訴訟提議、2015年に最高裁は棄却。その後も同様の訴訟が4件提議されている。

2016年には、結婚後に職場で旧氏の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴、同年棄却[257][258]。2017年に和解した[259]#女性教諭旧姓通称使用訴訟)。

国連女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、日本法に対して「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない」と主張[260]

また、2018年以降、地方自治体から国へ選択的夫婦別氏法制化を求める意見書を可決する動きが広がり、三重県議会[261]、東京都議会[262]等で意見書が可決された[263][264][265][266]

東京都議会では、2019年6月の定例都議会で意見書を求める請願が採択された。ただし、実際の意見書提出は同文教委員会理事会で審議し全会一致で決定する慣例となっており、見送られている[267]

地方議会からの選択的夫婦別氏に関連する意見書は、2000年7月27日から2020年2月末までの20年間で373件あり、反対意見書も2011年10月までは出されていたが、最高裁判決のあった2015年以降は全意見書が制度導入を求めている[268]

2019年の参議院選挙では、選択制の是非が争点に挙げられた[269][270][271]

2020年代以降編集

2020年に入っても、神奈川県議会[272]など、地方自治体から制度の法制化を求める意見書を可決する動きが継続[273][274][268][275][276]。また、2020年2月から3月にかけて、与野党超党派議員や自民党女性議員による勉強会の開催が報じられた[277][250]

2020年11月11日、政府は第5次男女共同参画会議の策定に向けた答申の中で、この問題に「国会の議論の動向を注視しながら検討を進める」と記述[278][279]。同月13日、衆議院法務委員会において自民党の稲田朋美が、結婚後も旧姓の使用を続けられる制度を提案[113]。24日には自民党で導入賛成派の議員を中心に「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」が設立された[280]。一方、25日には自民党内で反対派議員を中心に「『絆』を紡ぐ会」設立[281]。同月26日、自民党の女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子らは、この問題に「真正面から対応」することを求める提言を首相の菅義偉に提出[282]。同年12月1日には、自民党女性活躍推進特別委員会で選択的夫婦別氏の検討を開始した[283]。しかし同月25日に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」とされ、「選択的夫婦別姓」という文言は削除された[284]

2021年2月、自民党一部国会議員が選択的夫婦別姓制度導入に反対する文書を47都道府県議会議長のうち自民党所属の約40人に送付していたことが判明し、波紋[285][286][287]

選択的夫婦別氏訴訟編集

制度導入をめぐっては、1989年、2006年に家裁への不服申し立て[236][288]、2011年に国家賠償訴訟が提議され、訴えは退けられた[289]。2018年1月に戸籍法規定に関する国家賠償訴訟、同年5月に事実婚夫婦による国家賠償訴訟、同年6月に、外国で結婚した日本人別氏夫婦による婚姻を確認する訴訟、同年8月に再婚同士でそれぞれ連れ子のいる夫婦の国家賠償訴訟、と関連した訴訟が起きている[290]

1989年家事審判編集

1989年5月12日、岐阜県各務原市の夫婦が、市が別氏の婚姻届を受理しなかったのは基本的人権の侵害であり違憲だとして、岐阜家庭裁判所不服申立書を提出[291]

6月23日、「夫婦の同姓は一体感を高める上で役立ち、第三者に夫婦であることを示すためには必要」として、申立て却下[236][54][292][293][288]

2006年家事審判編集

2006年にも同様の申立てがなされたが、東京家裁は4月25日、「立法政策の問題であることは確定した解釈」だとして却下[288][294]

2011年訴訟編集

2011年(平成23年)2月に、元高校教師らが、民法750条の夫婦同氏規定が憲法13条14条1項24条1項及び2項に違反するとして訴えた[295][296][297]。通称「第一次夫婦別姓訴訟[298]

2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は「名字が改められることでアイデンティティが失われるという見方もあるが、旧姓の通称使用で緩和されており、日本国憲法に違反しない」「我が国に定着した家族の呼称として意義があり、呼称を1つに定めることには合理性が認められる」として、現在の民法規定を合憲とし訴えを棄却[299][300][301]

大橋正春(弁護士出身)、池上政幸小貫芳信(以上検察官出身)、山本庸幸(行政官出身)、 寺田逸郎千葉勝美大谷剛彦山崎敏充大谷直人小池裕

の男性裁判官10名が合憲とした一方、

女性裁判官の3名全員鬼丸かおる(弁護士出身)・岡部喜代子民法学者)・桜井龍子労働省出身)及び、男性裁判官2名山浦善樹木内道祥(以上弁護士出身)

の5名は違憲として反対。

特に山浦善樹裁判官は、立法の不作為を理由に国の損害賠償責任も認めている[289][302]

もっとも、多数意見も氏の変更で「仕事上の不利益」「アイデンティティーの喪失感」などが生じることはある程度認めており、裁判長寺田逸郎は補足意見で「人々のつながりが多様化するにつれて、窮屈に受け止める傾向が出てくる」と指摘[303][304]。選択的夫婦別氏が「合理性がないと断ずるものではない」とするとともに「この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」として立法に委ねた[305][306]

2018年1月訴訟編集

2018年1月9日、ソフトウエア開発会社サイボウズ社長の青野慶久、女性1名、事実婚の男女の計4名[307]が、戸籍法上国際結婚では同姓か別姓かを選べるのに、日本人同士では選択できないのは憲法上の「法の下の平等」に反すると提訴[308][309][310][311][90][312][313]。通称「ニュー選択的夫婦別姓訴訟[314]

2019年3月25日、東京地裁は棄却[315][316][317]。2020年2月26日、東京高裁、棄却。原告は最高裁へ上告する方針[318]

2018年3月家事審判編集

2018年3月、東京都と広島県の事実婚のカップル4組は、婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」の欄で双方の氏の欄にチェックを記入して役所に提出し不受理となったため、東京家裁、同立川支部、広島家裁の3カ所で、受理を求める家事審判を申し立てた[319][320][321][322][321][322][323][324][325][326]

2019年3月28日、東京家裁と立川支部は申し立てを却下[327]

2020年12月9日、この3件の特別抗告審のそれぞれにつき最高裁大法廷への回付が決定された[328][329]

2018年5月訴訟編集

2018年5月10日、夫婦別氏の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、前節3月訴訟原告の一部を含む事実婚当事者が国に損害賠償を求め、同3か所の地裁で提訴[320][319][330]。通称「第二次夫婦別姓訴訟[331]

この訴訟では、同氏を選べば法律婚ができるが、別氏を選ぶとできないのは「信条」によるカップル間の差別であり、憲法14条違反だとして、民法・戸籍法の違憲性を主張[320][332][325]。また、法律婚に限定された法益権利・利益(共同親権相続権、税法上の優遇措置、不妊治療など)が与えられず、夫婦として社会的承認も得られないなど差別がある、両性の実質平等が保たれていないことが憲法第24条国際人権規約自由権規約)と女性差別撤廃条約に違反していることも問う、と主張[325]。原告は異なるが、弁護団は2011年訴訟と同じ弁護士が中心となって担当した[333]

2019年10月2日、東京地裁は請求を棄却[334][335]。11月14日、立川支部[336][337]、19日広島地裁も棄却[338][339][335][337][339]。2020年9月16日、広島高裁控訴審棄却[340]、同26日に上告[341]。同年10月20日、東京地裁の上告審で東京高裁棄却[342]。同23日、同立川支部の上告審で東京高裁棄却[343]。いずれの原告も最高裁へ上告する方針[344]

2018年6月訴訟編集

2018年6月18日、1997年にアメリカ合衆国ニューヨーク市で適法に成立した夫婦別氏婚が日本の戸籍に反映されないのは立法の不備であり憲法24条違反に違反するとして、映画監督の想田和弘と舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子の夫妻が、国を相手取り婚姻関係の確認と慰謝料を求めて東京地方裁判所に提訴[345][346][347]

通称「夫婦別姓確認訴訟」[348]

2018年8月訴訟編集

2018年8月10日、東京都文京区の弁護士と女性が、民法750条の夫婦同氏強制は初婚しか想定しておらず、立法府の法改正懈怠により精神的苦痛を受けたとして、国に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告夫婦双方に元配偶者との間の子(連れ子)がいるが、現民法は子どもへの影響等を想定しておらず法改正が必要と主張[349]。これに対し、2019年9月30日、東京地裁は、最高裁大法廷判決以後、「議論の高まりは見られることなどが認められる」としながらも、憲法違反といえるような事情の変化は認められないなどとして棄却[350][351]。同10月11日、東京高裁に控訴[352]。2020年3月26日、同棄却[353]。原告は上告の方針[354]

旧姓通称使用訴訟編集

通称として旧姓を使用する権利を求めた民事裁判として、国立大学教授夫婦別姓通称使用訴訟(1993年東京地裁判決)、女性取締役通称使用訴訟(2001年3月判決)、神奈川元高校男性教諭通称使用訴訟(2013年横浜地裁和解)、女性教諭通称使用訴訟(2016年東京地裁判決)がある。また、他にも旧姓での役員登記に関する審査請求(2019年裁決)がある。

国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟編集

1988年、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求め、訴訟を起こした[243]1993年に東京地裁は判決で、通称名も「人が個人として尊重される基礎となる法的保護の対象たる名称として、その個人の人格の象徴となりうる可能性を有する」が、同一性を把握する手段として戸籍名の使用は合理性があり、通称名が国民生活に根づいていない、また大学は業績の公表などで通称使用を配慮しており、よって違法性はないとして棄却[355][356][357]。控訴の後、1998年、東京高裁にて旧姓使用を認める和解が成立した[358]。国は研究報告や論文などで通称使用を認め、こうした流れを受けて2001年には、公務員の通称使用が認められた[243]

女性取締役旧姓通称使用訴訟編集

2001年3月29日、会社が、女性取締役に対し、夫が当該会社を退職したことに伴い支障がなくなったことを理由に婚姻氏を名乗ることを命じたのは人格権を違法に侵害するとして、精神的苦痛に対する慰謝料が認められた。大阪地裁[359][360]

男性元高校教諭旧姓通称使用訴訟編集

2012年4月、男性元高校教諭が教員異動の新聞発表に際して旧姓の通称が認められず、精神的苦痛を被ったとして神奈川県を提訴(横浜地裁)。2013年1月、神奈川県は旧姓使用取扱要綱を改正し、同年6月に和解が成立[361][362][359]

女性教諭旧姓通称使用訴訟編集

2016年には、結婚後に職場で旧姓の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴[257]。東京地裁は同年に「旧姓を戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまではいえず、職場で戸籍姓の使用を求めることは違法ではない」として請求を棄却[258][363]。その後、控訴審で高裁より和解勧告が出され、2017年に学校側が、時間割などの文書や日常的な呼び方で旧姓の使用を全面的に認める形で和解が成立[259]

京都府弁護士役員登記審査請求編集

2018年に京都府の弁護士が、京都地方法務局に対し、旧姓での役員登記申請を却下したのはプライバシー権の侵害だとして却下処分の取り消しを求めた審査請求で、同局は2019年、却下は適法として請求を棄却[364][365]

年表編集

1980年代まで編集

年月日 出来事
1946年07月 内閣臨時法制調査会および司法省司法法制審議会において民法改正審議開始[232]
1947年05月03日 日本国憲法施行[232]
1948年01月01日 改正民法、改正戸籍法施行[366]
1955年07月05日 法制審議会民法部会、夫婦異氏を認める案を論議[19]
1959年 パスポート、別名併記を一部認める[367]
6月29日-30日 法制審議会民法部会、夫婦異氏の問題はなお検討の必要があるとする[19]
1975年 国際婦人年[366]
9月26日 選択的夫婦別氏制を求める初めての請願が参議院に提出される[239][234]
1976年06月15日 民法改正、離婚時の婚氏続称可能に[368][369]
1984年05月25日 国籍法改正、国際結婚の際に外国氏への改氏可能に[370]
1985年06月24日 女性差別撤廃条約、日本国批准[371]
1987年09月26日 民法改正、養子離縁時の縁氏続称可能に[241][242]
1988年02月16日 最高裁、NHK日本語読み訴訟判決判示「氏名は個人の人格の象徴」[366]
5月09日 事実婚夫婦、住民票続柄記載差別訴訟、東京地裁(1991年敗訴、2005年最高裁棄却)[372]
1988年11月28日 国立大学女性教授通称使用を求める訴訟、東京地裁(1993年敗訴、1998年東京高裁で和解)[373]
12月0000 富士ゼロックス、旧姓通称使用実施。
1989年01月20日 東京弁護士会が「選択的夫婦別姓採用に関する意見書」を法務省に提出[374]
5月12日 岐阜県各務原市の夫婦、別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立を提出[292]
6月23日 別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立を岐阜家裁、却下[293]

1990年代編集

年月日 出来事
1991年01月29日 法制審議会、婚姻・離婚制度全般の改正に関する論議を開始[366]
5月30日 婦人問題企画推進本部、2000年に向けての新国内行動計画第一次改訂において、夫婦の氏の法制の見直しを掲げる[366]
1992年10月14日 東京都江東区議会、選択制導入を求める請願を可決[232][266]
12月01日 法務相民事局参事官室「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」、夫婦同氏制度と別氏を許容する制度との対比[19]
1992年12月04日 東京都新宿区議会、選択的夫婦別氏を求める趣旨の請願、可決[232][266]
1993年09月20日 埼玉県大宮市(現さいたま市)議会、選択的夫婦別氏を求める請願可決[232][266]
11月19日 国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟、東京地裁、棄却[375]
1994年07月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」A案B案C案の3案が俎上に[19]
1995年08月26日 法制審議会民法部会、子の氏は婚姻時に統一するA案を軸にまとまる[376]
9月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度の見直し審議に関する中間報告」[79]
1996年01月16日 法制審議会民法部会、「民法改正要綱案」決定[377]
2月26日 法制審議会、民法の一部を改正する法律案要綱[378]を法相に答申。(これより政府案としてこの民法改正案を軸に国会提出を与党内で模索する。)。
3月22日 徳島県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書を提出[379]
6月18日 長尾立子法務大臣、法案の提出を正式に断念。埼玉県新座市、市職員の旧姓使用を4月に遡って実施[380]
6月20日 茨城県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[379]
7月12日 千葉県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[379]
10月25日 日本弁護士連合会、選択的夫婦別氏並びに非嫡出子差別撤廃を求める決議[381]
1997年03月13日 民主党、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[19]
3月14日 長崎県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[379]
3月27日 法学者260人「選択的夫婦別姓制度の導入と婚外子相続分の平等化の実現を求めるアピール」[232]
6月05日 社民さきがけ、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[19]
6月06日 平成会、参議院に別氏を認める民法改正案を提出[19]
9月29日 熊本県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書を提出[379]
1998年03月27日 国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟、東京高裁、和解成立[366]
6月08日 超党派野党(平和・改革、共産、社民、さきがけ)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[83][19]
7月25日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第4回報告、選択制を「引き続き検討」[382]
1999年06月23日 男女共同参画社会基本法施行[366]
12月10日 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、衆参両議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[83][19]

2000年代編集

年月日 出来事
2000年01月20日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[19][19]
9月26日 男女共同参画審議会答申において、夫婦同氏制など家族に関する法制の見直しを提言[366]
10月31日 超党派野党(民主、共産、社民、無所属の会)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[83][19]
2001年03月29日 女性取締役通称使用訴訟、人格権侵害として慰謝料を認める。大阪地裁[359]
5月08日 民主党、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[19][383]
5月10日 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[83][19]
7月03日 千葉県議会、「民法改正法案の採択を求める意見書」を提出[379]
6月20日 公明党、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[19][86]
10月01日 国家公務員の旧姓使用が可能に[384]
10月11日 内閣府男女共同参画会議基本問題専門調査会、「選択的夫婦別姓制度に関する審議の中間まとめ」発表[384]
10月11日 愛知県議会、「選択的夫婦別姓制度導入の検討についての意見書」を可決[385]
11月13日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[19]
11月13日 自民党法務部会に法務省「選択的夫婦別氏制」民法改正試案および反対議員作成の通称使用を認める戸籍法改正案が提示[19]
2002年04月10日 自民党法務部会に例外的夫婦別氏制度の法務省試案が提示[19]
7月24日 自民党法務部会に例外的に夫婦の別姓を実現させる会が法案を提示[98][99][100][101][19]
9月13日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第5回報告、選択制「制度の導入に向けて努力」[386]
2003年05月27日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[19]
7月08日 女子差別撤廃条約実施状況第4回・第5回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終コメント、「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」[387]
2004年03月11日 自民党、職業上の理由などで必要な場合に家庭裁判所の許可を得て別姓を認める改正案の国会提出を見送る[388][389]
5月14日 超党派野党(民主、共産、社民)、衆参両議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[83][19]
2005年03月30日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[83][19]
2006年03月20日 パスポートに旧姓を併記し得る基準が緩和され、学者や記者だけでなく、「職場で旧姓使用が認められており、業務により渡航する者」も可能となる[390]
4月25日 別姓婚姻届不受理処分の撤回を求める不服申立て、東京家裁、却下[391][288]
5月31日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[392][83]
6月08日 超党派野党(民主、共産、社民)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[83]
2007年05月18日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[19]
2008年04月22日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に民法改正案提出[393][83][19]
4月30日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第6回報告、「選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き努めている」[255]
2009年04月24日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に民法改正案を提出[83]
8月07日 女子差別撤廃条約実施状況第6回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終見解、「夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する」[394]

2010年代編集

年月日 出来事
2010年02月05日 創生「日本」(会長・安倍晋三)、夫婦別姓反対の運動方針を採択[366]
2月19日 法務省政策会議で、選択的夫婦別氏の導入を盛り込んだ民法改正案が提示[80]
3月24日 岩手県議会、「夫婦別姓制度の導入及び婚外子相続差別の撤廃のための民法の一部改正を求める意見書」を提出[395]
2011年02月14日 男女5人、違憲を争い選択的夫婦別氏を求める国家賠償提訴、東京地裁[396][397]
2月24日 別姓婚姻届3度提出、不受理処分の撤回を求め、却下、東京地裁[398][397]
2013年05月29日 男女5人、違憲を争い損害賠償請求、棄却、東京地裁[399][400]
6月03日 旧姓通称使用訴訟、元教諭と神奈川県の和解成立[366]
9月10日 別姓婚姻届訴訟、却下、最高裁[401][366]
2014年03月28日 男女5人、控訴棄却、東京高裁[402]
6月23日 日本学術会議が、提言「男女共同参画社会の形成に向けた民法改正」において選択的夫婦別氏制導入を提案[18][403]
9月05日 第2次安倍改造内閣松島みどり法務大臣は就任直後の会見で、旧姓使用など現実的な運用の改善を検討する意向[404][101]
2015年02月15日 改正商業登記規則が施行され、役員登記において旧姓の併記を行うことが認められた[405]
2月18日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷は、審理を大法廷に回付し、憲法判断される[406]
6月12日 超党派野党(民主、共産、社民、および無ク・無所属議員)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[407][408]
12月16日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所大法廷は、民法の規定を合憲との判断を示し棄却[409]。ただし裁判官15人のうち、5人は違憲とする判断。特に女性裁判官3人は、全員が違憲判断を示した[289][410][411][412][413]
2015年12月25日 第4次男女共同参画基本計画決定。法改正について「司法の判断を踏まえ、検討を進める」[414]
2016年03月07日 国連女性差別撤廃委員会が日本に対し、「過去の勧告が十分に実行されていない」「実際には女性に夫の姓を強制している」として、民法改正を求める再度の勧告[252]
5月12日 超党派野党(民進、共産、社民、生活)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[415][85]
6月03日 東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴[257]
10月11日 東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴した裁判で、東京地裁は棄却(後に和解)[258]
2017年03月17日 東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴した裁判で、和解成立。旧姓使用を認める内容[259]
3月30日 総務省、「職員が旧姓を使用しやすい職場環境づくりの推進について」事務連絡[414]
6月06日 「女性活躍加速のための重点方針2017」、マイナンバーカード、旅券、銀行口座への旧姓使用拡大を明記[414]
7月03日 最高裁、裁判所職員の旧姓使用に関する通達。9月1日より可能に[414]
7月05日 男女共同参画局、全国銀行協会に対し銀行口座等の旧姓使用の協力を要請[414]
7月28日 特許庁、全職員の旧姓使用に関する通達。9月1日より可能に[414]
8月31日 国の行政機関における職員旧姓使用に関する各府省庁官房長等申し合わせ[414]
2018年01月09日 青野慶久ら男女4人、国際結婚と異なり日本人同士の結婚で夫婦別氏が選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反するとして国家賠償提訴[308]
3月14日 東京と広島の事実婚のカップル4組が、東京家裁、同立川支部、および広島家裁に別姓の婚姻届の受理を求める審判の申し立て[321][322]
5月10日 東京と広島の事実婚当事者らが、同3か所に、別姓の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、国家賠償提訴[320][319]
6月14日 超党派野党(立憲、国民、無所属の会、共産、自由、社民)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[84][416]

[416][417]

6月18日 国外で別氏で結婚した夫婦であることの確認を求め、東京地裁に国家賠償提訴[346]
6月19日 超党派野党(立憲、共産、希望の会(自由・社民)、沖縄の風)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[418]
8月10日 東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻が、連れ子再婚を想定しない現行法につき東京地裁に国家賠償提訴[349]
2019年03月15日 三重県議会、選択的夫婦別氏の法制化を求める意見書を可決[261]
3月25日 サイボウズ社長ら男女4人による訴訟棄却、東京地裁[316]
2019年04月01日 京都府の弁護士による役員登記に関する審査請求、棄却、京都地方法務局[364]
6月03日 超党派野党(立憲、共産、社民)、衆議院に同性婚を認める民法改正案提出[117]
6月18日 「女性活躍加速のための重点方針2019」国家資格等における旧姓使用拡大を明記[414]
6月19日 東京都議会「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」可決[262]。国への意見書提出は見送り[267]
7月21日 参議院選挙で選択的夫婦別氏が争点の一つに[269][270][271]
2019年09月14日 第1次選択的夫婦別姓訴訟の原告、死去[414]
9月30日 再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、棄却、東京地裁[351]
10月02日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁における事実婚当事者3名による訴訟、棄却、東京地裁[334]
11月05日 住民票、マイナンバーカードへの旧姓併記開始[414]
11月14日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁立川支部における事実婚当事者6名による訴訟、棄却[336]
11月19日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、広島地裁における訴訟、棄却[338]
12月01日 運転免許証への旧姓併記開始[414]

2020年代編集

年月日 出来事
2020年01月22日 衆院代表質問で国民民主党代表の玉木雄一郎が選択的夫婦別氏の導入を求めたところ、自民党の女性議員から、それなら結婚しなくていい、との趣旨のヤジが飛び、波紋[419][420]
2月14日 選択的夫婦別氏を考える超党派国会議員勉強会に与野党議員約40人が出席[277]
2月26日 サイボウズ社長らによる訴訟、棄却、東京高裁[318]
2月27日 選択的夫婦別氏を求める超党派集会に野党4党首、公明党副代表出席[421]
3月06日 自民党女性議員による議連「女性議員飛躍の会」、選択的夫婦別氏に関する勉強会[250]
3月23日 滋賀県議会、「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」を可決[422]
3月25日 神奈川県議会、自民党会派提案の選択的夫婦別氏の議論を求める意見書、可決[272]
3月26日 再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、棄却、東京高裁[353]
6月19日 自民党幹事長代行の稲田朋美が選択的夫婦別氏に理解を示したことをきっかけに、自民党筆頭副幹事長の高鳥修一らは稲田が会長を務める伝統と創造の会から離反し、保守団結の会を発足させた[423]
7月01日 「女性活躍加速のための重点方針2020」で、地方議会における旧姓使用の調査実施を明記[414]
9月16日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、広島高裁における訴訟、棄却[340]
10月08日 自民党政調会長の下村博文が、選択的夫婦別氏につき「議論していかなければいけない重要なテーマだ」と表明[424]
10月09日 男女共同参画担当相の橋本聖子が、選択的夫婦別氏導入に向けた議論に取り組む姿勢を表明[425]
10月09日 公明党の女性委員会(委員長:公明党副代表の古屋範子)が、首相の菅義偉に選択的夫婦別氏導入などの内容を含む提言「真の男女共同参画社会の実現へ すべての女性が安心して希望を持って生きられる社会をめざして」を申し入れ[426]
10月20日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁の上告審で、東京高裁、棄却[342]
10月23日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁立川支部の上告審で、東京高裁、棄却[343][344]
11月06日 首相の菅義偉は、以前に選択的夫婦別氏を推進する立場で議員活動をしていたことを認めつつ、そのように主張してきたことに「責任がある」と述べた[427]
11月11日 政府、第5次男女共同参画会議の策定に向けた答申の中で、選択的夫婦別氏に関し「国会の議論の動向を注視しながら検討を進める」と記載[278][279]
11月13日 男女共同参画担当相の橋本聖子、男女共同参画会議の答申に対し「深刻な少子高齢化を食い止めるために、非常に重要で配慮すべき」と表明[428]
11月13日 自民党の稲田朋美が衆議院法務委員会で、結婚後も旧姓使用を続けられる制度の新設を提案[113]
11月24日 自民党有志議員、導入に向けた「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」立ち上げ[280][429]
11月25日 自民党の反対派議員を中心に「『絆』を紡ぐ会」立ち上げ[281]
11月26日 自民党の保守系議員による「保守団結の会」、選択的夫婦別氏に関する勉強会[430]
11月26日 自民党女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子ら、選択的夫婦別氏をめぐり「真正面から対応していくこと」を求める提言を首相の菅義偉に提出[282]
12月01日 自民党女性活躍推進特別委員会、選択的夫婦別氏制の検討開始[283]
12月09日 事実婚夫婦による3件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判で最高裁大法廷回付、決定[328]
2021年01月29日 法学者や弁護士ら1022人、選択的夫婦別氏の早期実現を求める共同声明[431][432][433]

賛否の状況編集

世論調査編集

内閣府による世論調査編集

内閣府は、1996年から約5年ごとに「家族の法制に関する世論調査」を実施し、選択的夫婦別氏についての世論調査を行っている[434]

1996年 6月の調査では、反対が39.8%、賛成が32.5%、通称の法制化に賛成が22.5%[435]

2001年 5月の調査では、反対が29.9%、賛成が42.1%、通称の法制化に賛成が23.0%[436]

2006年12月の調査では、反対が35.0%、賛成が36.6%、通称の法制化に賛成が25.1%[437]

2012年12月の「家族の法制に関する世論調査」では、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と答えた者の割合が36.4%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」と答えた者の割合が24.0%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えた者の割合が35.5%だった[438]。なお、回答数を年齢ごとの人口分布に重み付けし直し回答結果を人口構成に補正すると、選択的夫婦別姓制度導入への賛成は36.6%、法改正反対は34.6%と逆転することが、参議院法務委員会で報告されている[439][440]。この2012年の調査は2012年12月6日から12月23日にかけ、全国5,000人以上の成人男女を対象に実施。有効回収率は60.8%であった(調査不能だった者の中には「被災」者も4割近くを占める)。男性1,366名、女性1,675名の回収となった[438]

別姓に「反対」の回答は、男性の60歳代、70歳以上、女性の70歳以上で多く、「別姓容認」は男性の40歳代、女性の20 - 40歳代で多く、女性の20歳代では半数を超えた(53.3%)。若い世代は賛成が多数派であった[438][441]

夫婦の姓が違うと「子供にとって好ましくない影響があると思う」は67.1%、「影響はない」が28.4%だった[442]

結婚による改姓については、「名字(姓)が変わったことで、新たな人生が始まるような喜びを感じると思う」が47.5%、「相手と一体となったような喜びを感じると思う」が30.8%、「名字(姓)が変わったことに違和感を持つと思う」が22.3%[438]

「名字(姓)を変えたくないという理由で正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦もいると思う」が6割を超えた[438]

2017年11月-12月に内閣府が全国の男女5000人を対象に行った5回目の世論調査によれば(回収率は59.0%)、選択的夫婦別氏導入に向けて民法を改正すべきかを問うと「改めて(改正して)も構わない」とする賛成が42.5%で、「必要はない」とする反対(29.3%)を上回った[443][434][444][445][446]

「旧姓を通称としてどこでも使えるように法律を改めてもよい」は24.4%、「わからない」は3.8%だった[443]。反対の割合は過去最少、賛成の割合は過去最高となった[445]。世代別で見ると、60代までは賛成が上回った[434]。特に、18-39歳では賛成が5割を超えた[444]。一方、70歳以上では反対が52.3%と過半数を占めた[434]

法律が変わって旧姓を名乗ることができるようになれば利用したいかとの問いでは「希望する」が19.8%、「希望しない」が47.4%。別姓を希望する人は一人っ子で最も多く31.7%だった[444]

双方が名字を変えたくないという理由で正式な夫婦となる届け出をしない人がいると思うかとの問いには「いると思う」が67.4%(前回比6.1ポイント増)だった[444]

その他の世論調査編集

政府系機関
  • 1976年の総理府「婦人に関する世論調査」では、「夫婦が別々の姓を名のることを認めた方がよいと思う」が20.3%、「認めない方がよいと思う」が62.1%だった[447]
  • 1977年、内閣総理大臣官房婦人問題担当室による「婦人問題に関する有識者調査」では、賛成43.4%、反対45.8%だった[5]
  • 総理府の「女性に関する世論調査」では、1987年実施の調査で「夫婦別姓をみとめる方がよい」に対し賛成は13%、1990年実施の調査で同設問に対し賛成29.5%だった。1994年の総理府「基本的法制度に関する世論調査」では「選択的夫婦別姓制度」に対し賛成が27.4%であった[244]。同時期の大手メディアの調査との乖離について、総理府調査の設問の問い方が「他人がそうしたいなら認めてよい」という意識ではなく、「自分の問題」として受け止めてしまうようなものとなっていた、と朝日新聞や高橋菊江は主張している[244][448]
  • 2018年の国立社会保障・人口問題研究所による既婚女性に対する「全国家庭動向調査」では、「夫、妻とも同姓である必要はなく、別姓であってもよい」に既婚女性の50.5%が賛成だった[449]。既婚女性を対象に5年ごとに行われているもので、1993年の調査では賛成は35.4%、1998年は39.0%、2003年は46.0%、2008年は42.8%、2013年は41.5%だった[450]
大手メディア
  • 1994年9月27日の朝日新聞の調査では、賛成58%、反対34%。要綱試案A案には賛成51%だった[5]
  • 2009年の産経新聞の調査では賛成48%、反対41%[451][74]
  • 2009年の毎日新聞の調査では、賛成50%、反対42%[452][74]
  • 2009年の朝日新聞の10月の調査では、賛成48%、反対41%[453][74]
  • 2009年の朝日新聞の12月の調査では、賛成49%、反対43%[454][74]
  • 2009年の読売新聞による国会議員意識調査では、賛成43%、反対40%[455][74]
  • 2014年の毎日新聞の調査では、賛成は52%、反対は40%[456]
  • 2015年の日本経済新聞調査によれば、働く既婚女性の77%、仕事上の旧姓使用者の83%が、選択的夫婦別氏に賛成[457]
  • 2015年11月の朝日新聞の調査では、賛成が52%、反対が34%[458]
  • 2015年のNHKによる「夫婦別姓に関する世論調査」(RDD追跡法)では、夫婦は「同じ名字 名乗るべき」に対し、賛成が45.9%、反対が49.7%。年代別では、反対が賛成を上回ったのは70代以上のみで、50代以下では賛成が6割を超えた[459][460][461]
  • 2015年の毎日新聞の世論調査では賛成は51%、反対は36%。また、73%が同姓を、13%が別姓を選ぶとした[462][463]
  • 2015年12月の産経新聞社とフジニュースネットワークの合同世論調査で、賛成は51.4%、反対42.3%であり、選択できる場合に別氏を希望するかについては、13.9%、20代では21.1%が「希望する」だった[464]
  • 2015年12月の朝日新聞による世論調査(固定電話方式)では賛成49%、反対40%だった[465]
  • 2016年の読売新聞世論調査(郵送方式)では、賛成が38%、反対が61%。賛成する理由のトップは「夫婦別姓を認めることは時代の流れだから」の48%、反対する理由のトップは「子どもと親で姓が異なることに違和感があるから」の75%だった[466]
  • 2016年3-4月の朝日新聞による世論調査(郵送)では、賛成47%、反対46%[465]
  • 2017年の朝日新聞世論調査では、賛成が58%で、反対が38%。50代以下では賛成が6割を超える一方、70代以上では反対が52%を占めた[467]
  • 2019年の毎日新聞・埼玉大共同調査では、「戸籍上も通称も夫婦は同じ姓を名乗る方がよい」が36%、「戸籍上は夫婦で同じ姓を名乗り、旧姓を通称として使えるようにした方がよい」が27%、「それぞれが戸籍上でどちらの姓を名乗るか選べるようにすればよい」が35%だった。30歳未満では過半数が別氏を支持、70歳以上では61%が同氏を支持[468]
  • 2019年11、12月の日本経済新聞の調査では、働く女性の74.1%が賛成。反対は25.9%[469][470]
  • 2020年1月の朝日新聞の世論調査(固定・携帯)では、賛成が69%、反対が24%。自民党支持層では賛成が63%、反対が31%だった。また、女性では賛成が71%、男性では賛成が66%だった。特に50代以下の女性は8割以上が賛成だった[465]
  • 2020年3月-4月の朝日新聞と東京大学谷口研究室による共同調査では、賛成が57%、どちらともいえない、が25%、反対が17%だった。自民支持層でも、賛成が54%、どちらともいえない、が25%、反対が21%で、自民支持層では3年前の調査と比べ賛成が25%も増加した[471]
  • 2020年10月の棚村政行(早稲田大学教授)と市民団体の「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」による選択的夫婦別姓に関する調査(7000人)によると、賛成が71%、反対が14%だった。「別姓にできなかったことで結婚をあきらめたことや事実婚にしたことがある」という人も、1%あまりにあたる94人いた。都道府県別の調査も行われ、最も賛成割合の高かったのは沖縄、最も低かったのは愛媛だった[472][473][474][475]
  • 2020年10~11月の読売新聞、早稲田大学共同世論調査(郵送法、3000人対象、2022人回収)では、「法律を改正して、夫婦別姓を認めるべきだ」に対し、賛成、あるいはどちらかと言えば賛成は56%、どちらかと言えば反対、あるいは反対は43%だった[476]
  • 2020年12月に毎日新聞、社会調査研究センターが行った調査では、賛成が49%、反対が24%だった[477]
  • 2021年1月に時事通信が行った調査では、賛成は50.7%、反対は25.5%だった。自民支持層では賛成41.5%、反対36.9%、公明党支持層では、賛成57.4%、反対27.7%だった[478]

各種団体の賛否状況編集

国政政党編集

制度導入に積極的
  • 公明党: 選択的夫婦別氏は「男女共同参画に必要な制度」[101]であり、一貫して導入に努力してきたとする[479][480]。2001年に民法改正案を衆議院に提出[19]。2002年には党大会重点政策として選択的夫婦別姓導入を掲げ、2005年、2007年、2009年、2010年には、マニフェストに選択的夫婦別姓制度の導入を挙げている[481][482][33]
    • 2015年に幹事長の井上義久は、進行中の訴訟について「最高裁の判断を待つことなく、立法府の責任として選択的夫婦別姓を認める法改正をすべき」と述べている[483]。また、2015年の最高裁判決を受け、参議院会長の魚住裕一郎は「国会で議論を巻き起こしたい」と述べた[484]。一方、同年、連立政権の足並みの乱れを生じさせたくないため、自民党を積極的に説得していない、とも報道された[484]。代表の山口那津男は、2016年に「時代に応じた立法政策を決めていくのが政治の責任だ」と述べている[485][486]ほか、2020年には自民党に理解を求めていく考えを示した[487]。2020年10月9日には、公明党の女性委員会(委員長:公明党副代表の古屋範子)が、首相の菅義偉に選択的夫婦別氏導入の内容を含む提言「真の男女共同参画社会の実現へ すべての女性が安心して希望を持って生きられる社会をめざして」の申し入れを行った[426]。2020年12月1日には代表の山口が「社会の変化を直視し、時代に合った判断をすべきだ」と述べている[488]
    • 2019年に東京都議会で「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」が出され可決された際に都民ファーストの会などとともに賛成。なお自民党のみ反対[262]
    • 公明党機関局の発行する公明新聞は、2019年11月8日の「主張」において、議論を加速させるべきと主張[489]
  • 国民民主党: 2019年参議院選挙公約において、選択的夫婦別氏実現を挙げている[490][491]。2018年に、超党派で民法改正案を衆議院に提出[416]
    • 2019年1月22日には、党代議士会長の小宮山泰子が、企業も対応に苦慮し、与野党を超えて賛成の声が多いにもかかわらず、国会での議論が全く進んでいない現状に「なんらかの打開策を考えなければならない」として、党として取り組むことを表明[492]。2019年3月25日には、代表の玉木雄一郎が、日本人同士が結婚時に夫婦別姓の選択を可能とする戸籍法改正を目指す考えを示し、「多様な生き方や女性の社会進出を推進する意味で、法改正を検討すべき」とした[95]ほか、同年6月6日には、党男女共同参画推進本部長の徳永エリが、「男女共同参画推進本部として参院選でも最重点政策として頑張っていきたい」と表明している[493]
  • 立憲民主党: 2017年の衆議院選挙[494][495]、2019年の参議院選挙[496][497][498]において選択的夫婦別姓の実現を公約として挙げた。2018年には、超党派で民法改正案を衆議院に提出している[416]
  • 日本共産党: 審議には至っていないものの衆参両院において法案を提出してきた[499]。2003年、2004年、2005年、2007年、2010年等に発表した政策においても選択的夫婦別姓制度実現を挙げている[481]。家族に関する法律上の差別を全面的に改正したい、としている[500][501]。委員長の志位和夫は「本当の意味での両性の平等、個人の尊厳、基本的人権の観点から認めるべきだ」と訴えている[101]
  • 社会民主党: 積極的に賛成している[101]。1999年に発表した人権政策大綱でも実現を掲げ、2004年参議院選挙、2007年参議院選挙、2009年衆議院選挙[481]、2009年衆議院選挙[502]、2016年参議院選挙[503]、2017年衆議院選挙[504]、2019年参議院選挙[505]等、積極的に選挙公約に導入の実現を盛り込んでいる。2018年、超党派での民法改正案の衆議院への提出にも参加[416]
  • 沖縄の風: 2018年に民法改正案を参議院に超党派で共同提出している[506]
    • 代表(当時)の糸数慶子は導入に積極的で、政府世論調査について「結婚改姓をしている女性たちは圧倒的に選択的夫婦別姓を容認している。男女とも反対は60歳以上だが、60歳以上に反対が多いから必要ないということでは、若い世代をないがしろにしていると言われても仕方がない」と2013年にコメントした[507][508]他、2014年にも、この問題は国連人権委員会から勧告されている人権問題である、としている[509]
    • 2021年2月10日には、同党の高良鉄美伊波洋一が早期実現を求めた法曹関係者の共同声明を受け取っている[510]
  • れいわ新選組: 2019年に、mネットによるアンケート調査に対し、「賛成する」と回答[511]
    • 代表の山本太郎は「賛成」としている[512][513]ほか、第189回国会法務委員会では「選択的夫婦別姓の導入など民法等の改正を求めることに関する請願」の紹介議員となっている[514]。また、朝日新聞による2019年参議院選挙候補者アンケート調査では、同党の回答のあった全候補者が選択的夫婦別姓に「賛成」と回答した[513][515]
制度導入に消極的
  • 自由民主党: 野田聖子が2002年に例外的別氏制の実現を目指したが断念[98][99][100][101]。野田聖子は、2004年に、党内で選択的夫婦別氏が推進されない背景に神社庁(神社本庁)の反対があると述べている[516]。また、野田は、2015年に、党の女性活躍政策に対して「女性が別姓を名乗れないことによる損失をわかっていない」と批判したほか[517]、2016年にも、立法府が時代に適応した法律を作らないのは立法府の怠慢であるとしている[518]。その後自民党は、野党であった2010年の党公約においては反対を掲げた[519][484][520]。2014年に森まさこ男女共同参画担当大臣は、自民党の野党時代の2010年の公約における選択的夫婦別姓制度反対は、「民主党が当時提出した法案への反対」であった、と説明した[521][522]。2012年の政権公約でも、「子どもは両親のどちらかと違う『親子別姓』になる。わが党は民主党の夫婦別姓制度導入法案に反対し、日本の家族の絆を守る。」などとした[523]。2015年には、党の姿勢として選択的夫婦別氏制度に反対あるいは積極的でないと報道された[101][484][59]。2017年や2019年の朝日新聞調査では、議員単位では賛成議員も反対議員もみられる[524][513][515]。2019年にも同党は選択的夫婦別姓に「後ろ向き」と報道されている[525]。また、同年のmネットのアンケートに対しては「反対する」と回答した[511]。一方、2020年になって、自民党議員を含む与野党超党派による選択的夫婦別姓に関する勉強会や同党女性議員による議連「女性議員飛躍の会」による選択的夫婦別姓に関する勉強会の開催が報道されている[277][250]。同年11月には、導入に賛同する議員を中心に「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」が立ち上げられた[280]。一方、同月、反対する議員を中心とする「『絆』を紡ぐ会」も立ち上げられた[281]。また、同月26日には、自民党の女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子らが、選択的夫婦別姓をめぐり「真正面から対応していくこと」を求める提言を首相の菅義偉に提出した[282]
    • 首相菅義偉は、2020年11月6日、以前に選択的夫婦別氏を推進する立場で議員活動をしていたことを認めるとともに、そのように主張してきたことに「責任がある」と述べた[427]
    • 2019年、東京都議会において「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」が可決された際、反対した政党は自民党のみだったと報道されている。都民ファーストの会、公明党等の賛成で可決された[262]。一方、2020年に入り、神奈川県議会においては、自民党会派提案の選択的夫婦別氏の議論を求める意見書が可決されている[272]
    • 創生「日本」(会長・安倍晋三・当時)は、2010年に運動方針のひとつとして選択的夫婦別氏法案への反対を掲げた[526][527][366]安倍晋三は2010年に、「夫婦別姓は家族の解体を意味する。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという左翼的かつ共産主義ドグマだ」と述べた[528]。2016年2月29日に衆議院予算委員会で岡田克也からこの発言の真意を質問され、「(民法750条を合憲とした)最高裁判決における指摘や国民的議論の動向を踏まえながら慎重に対応する必要がある」と回答した[529][530]。2019年7月2日には、野党との党首討論において選択的夫婦別姓の是非について聞かれ、「いわば経済成長とは関わりがないというふうに考えています」などと答えた[531][532]。また、同月3日の党首討論においても、「選択的夫婦別姓に賛成の方は挙手を」との質問に対し、出席した党首の中で唯一挙手しなかった[533]
    • 2018年3月、法務大臣(当時)の上川陽子は、政府見解として、内閣府世論調査の結果を受け、「引き続き国民の意見を幅広く聞き、国会の議論の推移をよく注視しながら、慎重に対応を検討していきたい」と述べ、制度の導入には慎重な姿勢を示している[534]
    • 2018年に、外務大臣(当時)の河野太郎は、選択的夫婦別姓問題について、政府に特定の立場はないが社会の一部の関心が高い問題、と述べている[535]
    • 稲田朋美は2015年の時点で、「(自民)党内の多くが親子別氏になる選択的夫婦別姓より同姓を認めている」「(自民党は)女性の社会進出に伴う通称使用を拡大することを公約しており、そうした方向性が多数意見と思う」と主張した[536]が、2018年には「通称使用によって2つの名を持つことは混乱をもたらす」として、選択的夫婦別姓へ賛成に転じている[537]
    • 首相(当時)の小泉純一郎は2004年、石井郁子の質問に対し、夫婦同氏が「男女平等に反する」という意見があるが、民法の規定は、氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねており、男女平等に反しないと答弁[538]
他の代替案を主張している政党
  • 日本維新の会: 2019年参議院選挙の公約(マニフェスト)において、「同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら旧姓使用にも一般的な法的効力を」を掲げている[110][111]。同年のmネットによる選択的夫婦別姓への賛否についてのアンケートでは、「どちらとも言えない」と回答[511]
    • 同党発足時の暫定代表だった橋下徹は選択的夫婦別姓制度導入に賛成しており、「認めない政治家は大馬鹿野郎。その筆頭は自民党の一部と日本維新の会。選択的夫婦別姓を否定している政党は消滅した方が良い。」「選択制であり、家族が壊れるという考えの人は同姓にすればよく、誰にも迷惑かけない」[539]「現在の戸籍制度は廃止あるいは、完全個人戸籍とするべき」[540]としている。橋下は2010年の大阪府議会において、選択的夫婦別姓への反対論として挙げられる「家族のきずな」について、自身も母親と姓が異なるが子どもの立場で悪影響を受けたこともなく、姓と家族のきずなというものを簡単に同一視することは危険だと批判している[541]
賛否不明
過去の政党
  • 希望の党 (日本 2018-): 賛否不明。ただし代表(2018年当時)の松沢成文は、2010年に選択的夫婦別氏に賛同、「家族の一体感への影響はないという考えも国民の6割近い」と述べている(その後松沢は日本維新の会へ移籍)[543]
  • 社会保障を立て直す国民会議: 同会派を含む5野党・会派と市民連合は、共通政策として「選択的夫婦別姓の実現」を掲げた[544]
  • 無所属クラブ: 賛否不明。2015年の超党派野党による改正案には薬師寺道代が参加(その後、薬師寺は自民党へ移籍)[408]
  • 自由党: 2018年、超党派での民法改正案の衆議院への提出に参加[416]。共同代表小沢一郎は、2014年の調査では「どちらとも言えない」[545]としていたが、2017年の調査では「どちらかといえば賛成」としている[524]。小沢は新進党時代から「賛成」としており[546]、2005年にも「基本的に賛成」[547]としていた。
  • 民進党: 前身の民主党時代から一貫して民法改正に意欲的であった[548][83][549][550][551][407][408][552]。2001年、2003年、2005年には選挙公約において選択的夫婦別姓導入を掲げている[481]。しかし、民主党政権時には連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出には至らなかった[101][553]維新の党と合流前の2016年2月には、共同で選択的夫婦別姓と再婚禁止期間短縮等を柱とする「民法の一部を改正する法律案」を共同議員立法として登録[554]、民主党から民進党への党名変更時には、党の柱として挙げる「民進党11の提案(共生イレブン)」の中に、選択的夫婦別姓の実現を盛り込んでいる[555]。2015年には、岡田克也代表や、蓮舫代表代行が、2016年の民進党への党名変更後も山尾志桜里政調会長(当時)が、選択的夫婦別姓推進論を表明している[556][484][548]。2016年には、民進党を含む超党派野党4党が選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案を衆議院に提出している[415][85]
  • 希望の党: 2017年の結党会見において細野豪志が、女性も男性も活躍できる社会づくりの一環として、選択的夫婦別姓にも取り組んでいく、と述べた[557]。同年衆議院選挙における公約において、夫婦別姓の容認を加えることを検討していることが報道された[558]。2018年5月に解党。
  • 日本のこころ: 幹事長(当時)の中野正志が選択的夫婦別氏に反対する談話を出すなど、党として反対の立場[559]
  • 維新の党: 党分裂前の2014年の時点では「選択的夫婦別姓について反対」を掲げていた[560]。しかし、2015年の党分裂後の賛否は不明と報道された[101]。さらにその後、2016年2月に民主党と共同で選択的夫婦別姓と再婚禁止期間短縮等を柱とする「民法の一部を改正する法律案」を共同議員立法として登録した[554]。議員単位では賛否が分かれた[545]松野頼久代表は「どちらかといえば賛成」[545]。(維新の党は2016年3月に『民進党』に合流[561]
  • 改革結集の会: 党としての賛否不明。村岡敏英代表は2014年に「どちらかと言えば反対」としていた[545]。なお、同党は2016年3月25日に解散[562]
  • 日本を元気にする会: 党としての賛否不明。松田公太代表・幹事長は賛成[563]
  • 国民新党: 2010年に出した政策宣言において、「反対」としていた[33]
  • 新党さきがけ: 選択的夫婦別氏の民法改正案を、1997年から2001年にかけて、2000年を除き毎年提出していた[19]
  • 新進党: 選択的夫婦別氏法案を議員立法で国会に提出[546]

学術団体編集

導入に積極的
  • 日本学術会議は、制度導入および女性の再婚禁止期間の短縮・廃止などを提言[18][564]
  • 日本女性学会は夫婦同氏の強制が差別的規定であるとして法改正を要望[565]
  • 総合女性史学会は、家族の多様性、個人の尊重を理由に実現を国会に強く要請している[566]

職能団体編集

導入に積極的

政治/社会運動団体編集

導入に積極的
  • 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は、選択的夫婦別氏制法制化を求める市民団体[573]。2018年より活動を始め、会員制交流サイト(SNS)で連帯する[263]。「イデオロギーの話ではなく、生活上の困りごと」と主張し、各地方議会への陳情支援を行い、与野党の超党派の勉強会を行っている[263][574][575][576]
  • NPO法人の「mネット・民法改正情報ネットワーク」は、選択的夫婦別氏を求めて運動[577][578]。情報共有を重視し、2001年より情報発信を開始[366]
  • 国連NGO女性団体の「新日本婦人の会」は、選択的夫婦別氏実現を求めている[579][580]
  • 「日本婦人団体連合会」は選択的夫婦別姓の実現を求めている[581][580]。同団体は女性団体や労働組合女性部など23団体から構成される団体。構成団体参加人数は90万人、としている[581]
  • 「実家の名前を継承したい姉妹の会」は、氏の継承問題の解決のため選択的夫婦別氏を求めて運動している[582][583]
  • 「夫婦別姓選択制実現協議会」は、「夫婦別姓のままで法律婚ができるように民法を改正してもらう」活動を行っている。顧問に野田聖子[584][585]
  • 「夫婦別姓選択制をすすめる会」は、1984年に発足した、選択的夫婦別氏の実現を目指す市民団体[586][587][588]
  • 「選択的夫婦別姓を実現する会・富山」は、2011年夫婦別姓訴訟支援者らでつくられた、民法改正を求める団体[589][590][591]
  • 「別姓訴訟を支える会2018」は、夫婦別姓訴訟を支援し、選択的夫婦別氏早期実現を目指す団体[592][593]
  • 「NPO法人関西選択的夫婦別姓の実現を願う会」は関西地区で選択的夫婦別氏の実現を目指す団体。現制度の不利益に関する情報の発信、相談業務などを行い、関西外にも支部をおく。弁護士、司法書士、行政書士による相談業務も行う[594][595]
  • 「別姓を考える会」は宮城県を中心に活動している団体[596][597][598]
導入に消極的

宗教団体編集

導入に積極的
  • 公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会は、現民法によって多くの女性が不利を強いられ、国際社会からも非難されていることから制度導入を求めている[631][632]
  • 真宗大谷派解放運動推進本部女性室の発行する広報誌『あいあう』では家族形態の多様化が今後の寺院・教団に与える影響を重要視しており、夫婦別姓訴訟原告によるコラムを掲載するなどしている[633]
導入に消極的
  • 宗教法人の神社本庁を母体とする神道政治連盟は、通称使用で十分と主張し[634]、選択的夫婦別氏反対を国会議員に働きかけてきた、とされる[635]。また、祖先の祭祀と姓の継承とは全く別物で、法改正は不要と主張している[634]。神社本庁は、機関誌「神社新報」でも反対論を展開している[636][637]
    • 塚田穂高は、同団体と日本会議の密接な関係について指摘している[608][607]
    • 神道政治連盟は2013年の参議院選挙で、有村治子(自民党)を支援したとされる[638]。有村は、2010年の日本会議主催の反対集会の参加議員の一人[603][606][639]福島みずほによれば、個人的には賛成でも、神道政治連盟の推薦を受けているために表明できない自民党若手女性議員がいるとされる[640]しんぶん赤旗は、1996年に法制審議会が答申した際、神社本庁や日本遺族会を背景とした自民党議員などから唐突に反対の声があがったと報道している[641]。1996年の法制審議会で中村敦夫は、神道政治連盟国会議員懇談会に属する議員や大臣が、懇談会の意向を政策にしたがって法案を論ずるのは政教分離に反し違憲ではないかと質問している[642]。これに対し国務大臣の臼井日出男は、一般論として、各宗教団体と関連議連は意見を交換するもので考え方が必ずしも一緒ではない、と答弁している[642]
  • 宗教法人の世界平和統一家庭連合(統一教会)は、選択的夫婦別氏を危険としている[643]。同宗教団体は「猛烈に」ジェンダーバッシングを行っているとされる[604]。同宗教団体を母体とする宗教紙の世界日報は、2010年11月25日の社説で「選択的夫婦別姓はジェンダーフリーを盛り上げるのに利用される危険性がある」[644]、2018年2月19日の社説では「別姓になれば家族が根底から崩れかねない」「(選択的)夫婦別姓を突破口にわが国の伝統的な家族を解体し、『個』社会へ誘導しようとの動きがある」[645]などと主張して導入に反対している。また、関連政治団体に国際勝共連合があり、運動方針の一つとして、「選択的夫婦別姓に潜む共産主義の策動を阻止する」をあげている[646]
    • 鈴木エイトは、日本会議の前身の日本を守る国民会議の発起人に多数の同団体関係者が入っており、統一教会の上層部に日本会議の会員も多く、世日クラブ(統一教会を母体とする宗教紙「世界日報」の読者向けクラブ)にも日本会議関係者が多数いる、としている[647]
  • 宗教法人の新生佛教教団は、特に2000年代前半に男女共同参画に反対する活動を積極的に行っていた[610]。同団体を母体とする宗教紙の日本時事評論が、積極的に男女共同参画に反対する活動を行い、2001年5月18日の号外記事では、選択的夫婦別氏制は「家族の解体を狙っている」と論じている[648]。その後、同紙は男女共同参画反対の活動よりも原子力発電所推進に活動の軸を置くようになっている、との指摘が2012年になされている[610]が、2018年3月2日の記事においても、家族解体につながるとして反対している[649]
    • 同教団は、日本会議の構成団体であり[610]、現教団代表の秋本和徳は日本会議の代表委員に名を連ねている[650]
    • 2004年の参議院選挙では、同教団は山谷えり子(自民党)を推薦[651]。山谷は2001年に統一教会の宗教紙世界日報において、反対を表明している[652]ほか、山谷は2020年に発足した慎重派の国会議員による議員連盟「『絆』を紡ぐ会」の共同代表を務めている[653]。また、2013年の参院選では、同教団は衛藤晟一(自民党)を支援したとされる[638]。衛藤は、2010年の日本会議主催の反対集会の参加議員の一人[603][606]。2020年には、選択的夫婦別氏が議論された自民党の会議では、衛藤、山谷らが反対論を行ったことが報道されている[654]
  • 宗教法人幸福の科学を母体とするWeb媒体TheLibertyWebは、一貫して選択的夫婦別氏に否定的である[655][656]。同宗教団体を母体とする政治団体の幸福実現党の総務会長の矢内筆勝は、2010年に、選択的夫婦別氏法案について、国家解体法案であると主張している[657]
その他
  • 天理教の表統庁に直属する諮問機関である「天理やまと文化会議」は、2004年の出版物において、同教団が世界のどの社会にも文化にも妥当する世界宗教であるとし、形式にこだわることなく、それぞれの社会や文化の状況に応じて対処していくという姿勢が妥当、としている[658]

メディア編集

導入に積極的
新聞社 姿勢
日本経済新聞 2015年11月6日、多様性の観点から前向きな姿勢を示している[659]。12月17日の社説でも国民的議論を喚起[660]。2018年1月11日の社説では、2018年1月の訴訟に関連して、真剣にこの問題に向き合うべきとしている[661]。さらに2019年2月25日の記事においては、海外との比較から日本も本格的な検討が迫られているとしている[662]。2019年6月3日の社説においても、多様な結婚の後押しとなるとしている[663]。2020年10月11日の春秋では、社会の意識も変わり、動き出すべき時だとしている[664]。2020年12月2日の社説では、国際情勢、社会・家族の変化にあわせた法改正を主張[665]。2020年12月28日の社説では、政府の男女共同参画計画案が夫婦別姓という文言を削除したことを批判している[666]
朝日新聞 一貫して賛成の立場をとっている[667]。2009年10月16日の社説では、政府に法案提出を促している[668]。2010年3月4日の社説では、多様性、女性の労働環境、少子化などの観点からの推進論を主張[669]。2015年11月7日の社説では「個を大切にし多様な家族を認め合う寛容な社会をめざすべき」「実質的に女性が姓の変更を強いられており正当化できない」とし、「家族の一体感が損なわれるなどを理由とした」反対論は「今の時代にそぐわない」としている[670]。2018年1月16日の社説でも、別姓反対論が荒唐無稽であるとし、(2018年1月の)提訴を機に改めて議論を起こすべきとしている[671]。さらに2018年12月20日の社説では、認めないのは「政治の後進ぶり」と批判している[672]。2019年3月27日の社説においても、ソフトウェア開発会社社長らによる訴訟を東京地裁が棄却したことを批判[673]。同年12月10日の社説では、旧姓通称使用は中途半端で選択的夫婦別氏を導入すべきとして司法・立法を批判している[674]。2020年12月18日の社説では、自民党反対派の対応を批判している[675]
毎日新聞 2009年10月6日の社説で、制度導入に前向きの姿勢で臨むべき、とした[676]。2018年1月6日の社説では、女性の活躍には夫婦別姓が抜本的な解決策、としている[677]。また、2018年4月23日の社説でも、日本以外に夫婦同姓を義務づける国はなく、旧姓使用の拡大は根本的な解決にならない、としている[678]。2020年10月24日の社説では、自民党内でも導入賛成の声があがっており、時機到来としている[679]。2020年12月21日の社説では、首相が自民党の議論を促進すべき、議員個人の判断にゆだねるのも一案、としている[680]
讀賣新聞 多様な価値観に配慮すべきとしている[681]ほか、2015年12月16日の訴訟の最高裁棄却に関して、「最高裁の合憲判断と制度変更の是非とは、必ずしも論点が一致しない」[682]、「家族に関する法制度に関し、議論を深めるべき時にきている」[683]と国民的議論を喚起している。
東京新聞中日新聞 2012年11月23日の社説で、国連や司法の勧告を受け止め、国会は早急に改正を実現させるべき、としている[684]。2014年11月15日の社説では、姓は人格権の一部であり個人の権利であるとして、民法を改正するのが筋、としている[685]。2015年11月5日の社説でも、人権問題であり現状は女性差別撤廃条約にも反する、としている[686]。2018年1月11日の社説において、「強硬に反対する人々は明治民法の『家制度』が頭から離れないのではと疑うほど」と反対論者を批判している[687]。2018年2月23日の社説では、賛成派の割合が内閣府の調査で過去最高となったことについて「国民の意識変化を映した結果」とし、旧姓使用を認めるだけでは根本的な解決にはならず、人権問題でもあるとしている[688]。2019年3月26日の社説においても、国会でも戸籍法の矛盾の修正が求められる、としている[689]。2020年11月24日の目耳録では、もはや男性に無関係ではない、としている[690]
日本農業新聞 同姓でなければ夫婦は破綻しやすい、夫婦間の子どもの成長に影響が出るなどということはなく、夫婦同姓の弊害に目を向け、多様な生き方を認めるべき、としている[59]

北海道新聞

2018年1月15日の社説において、「家族のあり方が多様化する中で、別姓を選べる制度の実現は時代の要請」「姓名は人格の象徴であり、時代からも国際的な潮流からも取り残された制度は、見直してしかるべき」としている[691]。2020年1月25日の社説では、多様性を口にしながら実行が伴わないとして政権を批判している[692]。2020年12月28日の社説では、政治がこれ以上不作為を続けることは許されないとしている[693]
陸奥新報 2019年3月29日の社説で、多様化する家族観に今の日本の法が追い付いていない、としている[694]。2020年12月19日の社説では、同姓の夫婦と、別姓の夫婦のどちらもが幸せを感じて暮らしている社会が早く到来することを期待する、としている[695]
東奥日報 2020年12月24日の時論で、政府、自民党は時代と世論を直視し、議論を深めるべき、としている[696]
デイリー東北 2020年12月24日の「時評」で政府の男女共同参画計画案から「選択的夫婦別姓」の文言が削除されたことを批判している[697]
河北新報 2017年11月1日の社説において、通称使用で不利益は解決されず、憲法24条の『個人の尊厳と両性の本質的平等』に立ち返った制度を本格的に議論するべき、と論じている[698]。また、2019年4月7日の社説においても、訴訟や請願の動きが広まっており、社会や意識の変化に司法や国政が鈍感であってはいけない、としている[699]。2020年12月15日の社説では、非論理的な強弁で国会審議の機会を奪うのはやめ、司法に促されるまでもなく、社会的課題を議論し判断するのが立法の責務、としている[700]
山形新聞 2020年12月24日の社説で、政府、自民党は時代と世論を直視すべき、としている[701]
茨城新聞 2020年11月29日の社説で、機を逃さず制度改正を、としている[702]。2020年12月24日の社説では、政府がまとめた男女共同参画基本計画案から「選択的夫婦別姓制度」という文言が削除されたことを批判している[703]
千葉日報 2015年12月21日の社説で、「国は国民的議論を促し、時代や社会環境の変化に即した対応をすべき」としている[704]
神奈川新聞 2018年1月15日の社説で、「国連女性差別撤廃委員会からも3度勧告を受け、夫婦同姓を定めた民法は明治時代から根強く残る家族制度に依拠し、今や日本以外にはほとんど見られない」と主張し、立法府の怠慢を批判している[705]。また、2020年1月25日の社説では、少子化への対応の一つとして評価[706]。2020年12月20日の社説でも、現実踏まえた議論を、としている[707]
信濃毎日新聞 2018年1月10日の社説で、「氏名は人格の基礎。姓を変えない選択は、尊厳や人格に関わる権利として尊重されなければならない」として支持している[708]。また、2019年3月26日の社説においても、別姓は家族を崩壊させるといった反対論は根拠を欠くとし、家族の多様なあり方を踏まえた制度に改めていくため、立法と司法それぞれが自らの責務を果たさなくてはならない、としている[709]。2020年11月24日の社説でも、これ以上放置は許されない、としている[710]。2020年12月17日の社説では、機運が高まっているにもかかわらず、導入に否定的な議員に影響されている与党自民党を批判している[711]。2021年2月27日の社説では、一部自民党国会議員が地方自治体に選択的夫婦別姓に賛同する意見書を採択しないよう求める文書を送ったことを批判している[712]
山梨日日新聞 2020年12月29日の論説で、選べる自由を認めるべきとしている[713]
北日本新聞 2020年1月29日の社説で、国会での選択的夫婦別氏を揶揄するやじを批判している[714]。2020年9月13日の社説では、理解が広がっているとしている[715]。2020年11月27日の社説では実現へ向けて議論を前進させるべき、としている[716]。2020年12月20日の社説でも、選ぶ権利の議論を深めるべき、としている[717]
新潟日報 2020年12月30日の社説では、第5次男女共同参画基本計画案から選択的夫婦別姓の文言が削除されたことについて、政府の対応を批判している[718]
京都新聞 2019年4月3日の社説で、選択的夫婦別姓訴訟における原告の主張は当然であるとし、家族や生き方の多様性を認めるため国会や裁判所は責任を果たすべき、としている[719]。2020年9月13日のコラム凡語では、旧姓併記などについて小手先の対応で煩雑な手続きやさらなる偏見を生む、としている[720]。2020年12月2日の社説では、国民の不利益を取り除くことこそ政治の責任であるとして導入を促している[721]
神戸新聞 2018年1月29日の社説で、「1996年に法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を法相に答申したが、保守派の国会議員の抵抗で実現せず棚上げ状態にある。現制度が時代に合っていないのは明らかで見直しの議論を急ぐべき」としている[722]。2019年3月27日の社説でも、結婚で姓を変える、変えないを選べる制度への理解は広がっており、司法が動かずとも国会の怠慢は許されないとしている[723]、2019年7月11日の社説でも、国会の議論が停止していることを批判している[724]。2020年12月15日の社説では、今こそ柔軟に考えるとき、としている[725]。2021年1月12日の社説では、選択制実現について、首相のリーダーシップを求めている[726]
山陽新聞 2020年2月27日の社説で、社会情勢の変化を受け止め国会は速やかに議論を進めるべき、としている[727]。2020年12月11日の社説でも、実態を踏まえて国会は動くべき、としている[728]
中国新聞 2018年1月14日の社説において、「夫婦同姓は古来からの伝統とはいえず、世界的に見てもそれを法律で義務付けているのは日本くらい」「多様な選択を認めることは民主的な社会において当然」であるとし、国会に対しても「時代に即した議論」を促している[729]。2019年3月28日の社説では、旧姓通称使用に法的な裏付けのないことを指摘するとともに、時代とともに変化する価値観と向き合い国会も司法も責務を果たすべきであり、国民を巻き込んだ本格的な議論を起こすべき、としている[730]。2020年11月30日の社説では、議論せずに放置することは許されない、としている[731]。2020年12月21日の社説では、自民党内の反対派の主張に説得力がなく時代錯誤も甚だしい、と批判している[732]
山陰中央新報 2020年12月6日の社説で、女性活躍のためにも新制度導入が必要、としている[733]。2020年12月28日の社説では、男女共同参画計画案から選択的夫婦別姓の文言が削除されたことを批判している[734]
徳島新聞 2016年1月16日の社説で、「女性の活躍の推進には選択的夫婦別姓の導入が必要」としている[735]。さらに2018年1月30日の社説でも、「多様な生き方を認め、選択肢を広げる『選択的夫婦別姓』の導入は、時代の要請」としている[736]。2020年12月6日の社説でも、法制化は時代の要請であるとしている[737]。2020年12月25日の社説でも、選択制導入へ法改正を、としている[738]
高知新聞 2020年12月11日の社説で、首相の菅に、社会の変化と向き合い、時代に即した制度見直しを進める責任がある、としている[739]。2020年12月24日の社説では、自民党の男女共同参画基本計画案において「選択的夫婦別姓」の文言が削除されたことを時代錯誤であると批判している[740]
愛媛新聞 2018年1月16日の社説で「夫婦の形や個人の価値観が多様化した今、明治の家制度を色濃く残す規定は実情にそぐわない。伝統と言っても、夫婦同姓はようやく明治31年から。今や日本以外に同種規定を持つ国はほぼなく、どの国も別姓で家族の一体感が損なわれることはない。選択制は『家族は同姓でいたい』と思う人を否定しない」として支持している[741]。2019年3月27日の社説でも、国会が1996年の法務省の審議会の答申や、国連からの度重なる勧告を受けても放置してきた、とし、社会の家族観は変化し、多様化している。判決を契機として、幅広い国民のニーズに見合った法制度となるよう議論を深めるべき、としている[742]。2020年12月9日の社説では、政府の男女共同参画基本計画に踏み込んだ文言を明記し、制度の具体化を急ぐべき、としている[743]。2020年12月30日の社説では、男女共同参画基本計画に関連して、選択的夫婦別姓に対する自民党の対応を批判している[744]
西日本新聞 2018年3月4日の社説で、「現在の制度で不利益を被る人がいるのなら、改善していくのは当然。姓を選ぶ自由は基本的人権にも関わる。時代の要請を踏まえた論議を加速する必要がある、」としている[745]。2019年10月21日の社説でも、民法改正をタブー視せずに議論を深めるべき、としている[746]。2020年1月30日の社説では、同姓という考え方が普及したのは明治以降にすぎないことを指摘している[747]。2021年1月25日の社説では、国会議員が「男女共同参画」を論じながら姓の自己決定権を認めないのは時代に逆行すると言わざるを得ない、としている[748]
大分合同新聞 2020年11月30日の論説で、機を逃さず制度改正を、としている[749]。2020年12月24日の論説では、政府の男女共同参画基本計画において「選択的夫婦別姓制度」という言葉が消えたことに関して、社会の要請を無にした、と批判している[750]
熊本日日新聞 熊本日日新聞は2020年12月1日の社説で、夫婦同姓を義務付けている国は日本だけであり、どのようにすれば国民の要望に応えられるか議論を進めるべき、としている[751]
宮崎日日新聞 2019年7月23日の社説で、女性議員の拡大とともに、時代に合わなくなった従来の制度の見直しを進めることが必要、としている[752]。2020年11月20日の「くろしお」では、「問題を先送りや棚上げにできないところまできている」としている[753]。2020年12月1日の社説では、新たな制度導入を見据え議論を深めるべき、としている[754]。2020年12月29日の社説では、政府、自民党は時代と世論を直視すべき、としている[755]
南日本新聞 2018年2月19日の社説で、直近の内閣府調査では賛成派が過去最高となり、女性の社会進出が進み別姓を望む人も増えたことから、裁判所や国は思いを汲むべき、としている[756]。2020年12月26日の社説では、政府が閣議決定した第5次男女共同参画基本計画から「選択的夫婦別姓制度」の文言が削除されたことについて、政府と自民党を批判している[757]。2021年3月5日の社説では、自民党一部議員が多数の都道府県議会議長に選択的夫婦別姓導入に賛同する意見書を議会で採択しないよう求める文書を送っていたことを批判している[758]
沖縄タイムス 2016年1月4日の社説において、「夫婦同姓を規定する国は日本以外にはなく、世界標準から大きく乖離している」「女性の約96%が改姓している現実は明らかに偏っている」と指摘している[759]。2018年1月13日の社説においても、法律で同姓を規定する国は日本以外になく、別姓を選ぶ自由は、個々の人権が尊重される社会をつくる上で不可欠だ、としている[760]。また、2019年11月5日の社説でも、旧姓併記のような間に合わせの政策ではなく根本的な解決が必要としている[761]。2020年11月30日の社説では、国会は制度導入へ動き出すべき、としている[762]。2020年12月27日の社説では、男女共同参画計画案から選択的夫婦別氏の文言が削除されたことを社会の要請からあまりにも乖離していると批判している[763]。2021年3月5日の社説では、自民党議員の一部が地方議員に制度の反対を呼びかける文書を送付したことを批判している[764]
琉球新報 2018年1月16日の社説において、強制的同姓にしている国は日本しかなく、不利益を受ける人がいれば、選択の幅を広げるべきで、見直しを始めるときだ、としている[765]。また、2020年1月26日の社説では、民法の同姓規定の見直しについて国会は速やかに議論を進めるべき、としている[766]。2020年11月25日の「金口木舌」では、機が熟しつつある、としている[767]。2020年12月18日の社説では、個人の尊厳や多様な価値観を尊重するため立法府で議論すべき、としている[768]。2021年1月7日の社説でも、明治時代に始まった「夫婦同氏制」は女性に姓の変更を強い生活と仕事の支障になっている、としている[769]。2021年2月27日の社説では、自民党の一部国会議員が複数の県議会議長に選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を採択しないように求めた文書を送付したことを批判している[770]
ジャパンタイムズ 2009年11月14日の社説で、個人の尊厳と男女平等の観点から支持[771]
導入に消極的
新聞社 姿勢

産経新聞

2009年10月1日の社説で、家族の絆を壊しかねないとして反対を表明[772]。2010年4月16日の社説でも、「別姓制度が男女共同参画社会につながるという考え方は安易」などと主張[773]。2015年12月17日の社説では、「導入されれば、親子が別々の姓になる事態も起きる。」などとして反対を表明[774]。同日の、産経デジタルが運営する産経WESTの「浪速風」では、夫婦同姓は社会に定着してきた、と主張[775]。同月23日の記事では、家族の絆を重んじる立場から別姓に反対する、などとしている[776]。2020年12月7日のコラム「主張」では、夫婦同姓は日本の伝統的な家族観に基づき、社会に広く受け入れられている、などと主張[777]

賛否の論点編集

人権・多様性編集

積極論 消極論
個人の尊重・人格権・自己決定権・アイデンティティー 日本学術会議は、夫婦同氏の強制は人格権の侵害であり、個人の尊厳の尊重と婚姻関係における男女平等を実現するために選択的夫婦別氏制度を導入すべき、としている[18]日本学術会議水野紀子(法学者)は、同氏強要は個人の尊厳・両性の平等を定める憲法第14条憲法第24条に抵触する[18][778]、と主張。日本弁護士連合会は、一方の氏の変更を強要する夫婦同氏制は、憲法第13条で保証された人格権を尊重していないと主張[41]。2011年訴訟の原告団も、婚姻に当たりの氏変更を強制する民法750条は、憲法13条が保障する人格権のうちの氏名権を侵害する、と主張した[56]。日本学術会議や二宮周平(法学者)は、民法2条の解釈基準と矛盾をきたす、としている[18][779]

佐々木くみ(東北学院大学・法学者)は、民法750条における婚姻時の氏の変更という要件は、憲法第13条人格権としての「氏の変更を強制されない自由」と憲法第24条で保障される「婚姻の自由」の双方の自由を同時に満たすことができず、十分な合理性も認められず憲法第24条に違反する、としている[400][780][781]

宮内義彦オリックス元会長・社長・グループCEO)らは、現制度のように法律婚が強制力を持つ社会は窮屈で非寛容である[782][783]、と主張している。

吉田晋(朝日新聞記者)は、利便性や不利益のみにではなく、姓を人格の象徴と考える人たちの「個人の尊厳」が問われている、としている[784]

山田昌弘(社会学者)は選択肢が広がることはよいと主張[785]。また、反対論は感情論に過ぎないと批判した[786]

福岡県弁護士会は、「選択制」であるから、別氏にすると家庭が崩壊すると思う人は同氏を選択すればよいとしている[787][788]

朝日新聞は社説で、「別姓反対を叫ぶ人たちには、他人への寛容さが欠けている。それは、自分なりの生き方を選ぶ少数者に対する差別や偏見にさえつながりかねない」[789]、と主張している。

林美子(ジャーナリスト)は、夫婦別姓を認めない同一化圧力が気持ち悪い、とする。個人の尊厳やアイデンティティーは大切であり、違う立場や考え方や感じ方の人を認めようとしないのは全体主義への下り坂だ、と反対論者を批判している[790]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、現状の通称使用では、「青野」と婚姻の氏の併用を余儀なくされることで、人格が分離したような感覚を受け、精神的苦痛が大きいとしている[791]

松浦千誉(拓殖大学教授)は、1976年に、「夫婦は一体ではなく、夫や妻という個人が全面に出てきた時、夫婦別姓は当然のこととして受けれられるだろう。」「現在を女にとって独立の人格の権利・義務の過渡期としてとらえる時、別姓でも同姓でも選べる道を開いておく制度が望ましい」と述べている[792][5]

山田卓生(法学者)は、1984年に、「氏不変の原則と自己決定権から『別姓を原則として改姓したいものは改姓してもよい』とする方がよりスッキリする」と述べている[793][5]

立石直子(法学者)は、1960年代、1970年代の民法改正を通じて導入された婚氏続称制度、縁氏続称制度と比較したとき、婚氏ならば制限なく、離婚や離縁において縁氏ならば7年以上の実績によりその続称が保障されるのに対し、婚姻前の氏については、少なくとも16年以上の使用実績があるにもかかわらず制度保障がないことは整合性を欠く、としている[242]

稲田朋美(政治家)は、2010年の時点では、選択的夫婦別氏運動は「一部の革新的左翼運動、秩序破壊運動」に利用されている、と主張、「女性蔑視だとか女性を家庭に閉じ込めておこうとする古い考えの持ち主」と批難されることを恐れ「反対が言いにくい空気がある」ことが厄介だとし、民主党が提出した民法改正案について、婚姻届の提出時に生まれてくる子の姓を決めて提出せねばならず、年齢や健康上の事情により子が授からない場合にも選択させるのは人権侵害だと批判していた[794]。ただし、2018年に「通称使用で2つも姓を用いるのは混乱を招く」「高齢者同士の結婚も多い」としている[537]

宮崎哲弥(評論家)は、1996年の著書において、夫婦同姓の強制は人格権侵害というが、親の姓の使用強制(例えば親の離婚や再婚によって親権が変わることで子供の姓が変わることなど)や親による子の命名も同様に人格権の侵害に当たるはず、と主張し、人格権を根拠にするならば姓氏全廃を主張しないとおかしい、と主張している[795]

多様性・多様な価値観

日本学術会議は日本社会は1980年代後半以降、国際的な男女平等の潮流と女性の経済的自立の傾向から、家族観、婚姻観、男女の生き方や役割観に変化があり、社会における男女の働き方、家族形態は多様化し、夫婦同氏制を支 える立法事実は変化している、としている[18]

出口治明ライフネット生命保険会長兼CEO)らは、多様な価値観を認めることが現代の日本では求められている、としている[783][796][59]

宮崎裕子(最高裁判所判事)は、最高裁判所判事として初めて結婚前の旧姓を使い始めたことについて「選択的夫婦別姓なら全く問題ない。価値観が多様化する中、可能な限り選択肢を用意することが非常に重要」としている[797]

佐藤莉乃(公益財団法人せんだい男女共同参画財団)は多様な家族の形を尊重すべき[798]と主張。

日本経済新聞は、別姓強制ではなく希望する人には認めようとするもので、多様性を認める発想こそ社会に必要と主張[659]

プライバシー論

井戸田博史は、婚姻により強制的に氏を変更させられ新たな氏を世間に公表させられることはプライバシー侵害と主張[81]

ジョン・C.マーハ(地域研究学者)は、「夫婦同姓は人権問題にもなるだろう。強制的に世間に対して自分は既婚である、離婚した、再婚したということを公表させられることで、女性のプライバシー権が侵害されるからである。」としている[799]

西日本新聞は、「姓がころころ変わるのは、親しくない人にまで離婚や再婚を宣言しているようで、変えたくない」ために事実婚を選択した例を紹介[800]

2018年1月に選択的夫婦別姓を認めない戸籍法を国に訴えた裁判で原告は、夫婦別氏制度を認めない現行法はプライバシー権を侵害している、と主張。登記制度や登録制度、裁判の判決文のような公の文書において、氏の変更の記載がされることで、当該人物が婚姻婚姻状態にあることが公にされることは、プライバシー権の侵害となる、としている[801]

平等・差別論

民法の規定は、夫又は妻の氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねているものの、実際には妻の側が改氏する割合が2014年の厚生労働省の調査で全体の96.1%[802][803]といわれており、日本学術会議などは、女性の間接差別に当たり男女平等に反すると主張している[18][802][74][56]林陽子(国連女子差別撤廃委員会委員長)も、夫婦の98%[81](2015年の報道では96%[802])において女性が改姓することは、女性の間接差別にあたる[804]、と主張している。

選択的夫婦別姓を求める2018年5月訴訟において原告は、夫婦同姓を望むか、別姓を望むかは、個人の生き方に関するものであり、「信条」によって差別的取り扱いをすることは、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する、と主張している[805]。さらに、2016年には約96%の夫婦において、妻が改姓しており、夫婦間の「実質的な平等」は保たれていない。これは、憲法24条に定めた「婚姻の自由」に違反する、とも主張している[805]

村上春樹(作家)は、「結婚したからどちらかが姓を変えなくちゃならないというのは、憲法に保障された男女同権とあきらかに矛盾することです。そんなの不公平」と述べている[806]

二宮周平(法学者)は、国際結婚では現在の制度でも夫婦別姓が可能であるが、日本国民同士の婚姻で夫婦別姓が認められないのは不公平と主張[74][807]

日本学術会議は、国民の意識が変化しつつあり、別氏が選択でないため事実婚で我慢せざるを得ず婚姻の自由が侵害されている人たちにも平等に婚姻の権利を与える必要がある[18]、と主張している。

大塚玲子(ジャーナリスト)は、離婚時に離婚前の姓と旧姓を選べるのに、結婚時に旧姓を選べないのはおかしい[43]、とする。

土堤内昭雄(日本フィランソロピー協会シニアフェロー)は、結婚観が多様な現代において同姓規定が問われるようになっているとし、氏にアイデンティティを感じている人同士で一方が改姓しなければならない場合は、人権侵害にあたる可能性があるとしている[808]

國重徹(政治家・弁護士)は、男女で同じ名前をつけることも増えており、現制度では同姓同名を避けられない場合がありうるため不合理としている[809]

久保利英明(弁護士)は「別姓がだめなら、仮に亀井静香という人がいて、荒川静香という人と結婚したらどうする」と述べている[810]

秦郁彦(現代史家)は、夫婦の96.1%が夫の姓を選んでいることについて、この数字には養子による改姓が除外されており、もし改姓したくない女性が相手に改姓をお願いすれば受け入れる男性も多いのではないか、と主張している[667]

社会システム・コスト編集

積極論 消極論
社会的損失・経済的損失・コスト・利便性 江上敏哲(情報学者)らは、職業上、氏の変更が業績の連続性や信用、キャリアにとって損害となる場合もある、と主張している[811][59][42][38]

井戸田博史(法史学者)は、現在の制度において、長年月社会生活を行ってきた者が姓を変えることは、多大の社会的損失[81][74]ならびに個人的損失[812][813][814]をもたらす、とする。氏の変更の際の様々な手続きは面倒でコストがかかる(朝日新聞[812])、などの指摘もある。

三浦義隆(弁護士)は、姓は変わらない方が便利とする[815]

宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)は、社会で活躍している女性などが結婚によって姓を変更するときに周囲に与える混乱を指摘する[782]

奥野正寛(経済学者)は、結婚しても旧姓を選択できれば、女性の国際的な活躍の場を広げられるとする[816]

旧姓を用いていた期間は晩婚化によって以前よりも長く、共働き家庭も増えており、損失はより大きくなっている[817][818]。1997年にはすでに、共働き世帯の数が専業主婦世帯の数よりも多くなっており[812]、2014年時点では共働き世帯が1077万世帯、男性雇用者と専業主婦からなる世帯は720万世帯、と共働き世帯が大幅に専業主婦世帯を上回っている[819][486]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、ビジネスにおいて名前はブランドであり、変えると経済的にも損失と述べている[813]

安里睦子(ナンポー代表取締役社長)は、制度を変えない限り「女性で役員や経営者になる人ほど、ビジネスの場で壁にぶつかる」としている[820]

小川淳子(ゴルフライター)は、プロアスリートにとっても、改姓のデメリットがあるとしている[821]

八幡彩子(熊本大教授・教育学)は、名刺、戸籍名だけでは結婚前と同一人物の論文だと理解してもらえず、使い分けは煩雑、と述べる[822]

岩田規久男(経済学者)は、夫婦別氏を選択できるようになることによって、ほかの人が不利益をこうむることはない、と主張している[823]

牟田和恵(大阪大学)は、現実の不便や苦労を感じなくても良い人々が反対するのはおかしい、と主張している[824]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、選択的夫婦別姓制度の導入はパレート改善的であり、自由主義的社会制度設計の基本概念にかかわるもので、自由至上主義者、社会民主主義者などの立場に関係なく支持できるとしている[133]

串田誠一(政治家)は、「夫婦が同姓同名だった場合、不動産登記簿謄本はどうなるのか。強制執行したときに、夫のものだと思ったら妻のものだったということもあり、家庭内の問題ではなく、社会的な混乱」と主張した[825]

黒岩幸子(岩手県立大教授・外国語教育学者)は、女性の自立や男女平等といったことではなく、人生の途中で姓が変わるのは不便であり、単に選択的夫婦別姓の方が合理的、としている[826]

八木秀次日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、職業上の不便も各業界や組織・団体、あるいは個別法規の改正で足り、民法改正の必要性とするには足りない[827]、と主張している。
旧姓通称使用をめぐる問題

朝日新聞は、社説において、旧姓通称使用は中途半端で限界があり、住民票などのシステム改修だけで自治体に176億円の補助を行うのは税金の無駄遣いとして、選択制導入を主張している[674]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、「旧姓との使い分けに日々無駄なコストを払うのは社会全体にとっても非効率。法的根拠を与えればそれだけで済む」と主張 [828] 、「マイナンバーカード等に旧姓を併記できるようにする」ためのシステム改修に100億円の予算を取るという総務省発表について、戸籍法上の不備があるために、国民が税金として納付した公金を100億円も支出せざるを得なくなった事態は国家的損失としか表現できない、と国家にも不利益とする[791]。また「サイボウズ社の契約を結ぶ時、必ず法務部に確認をして、通称名である「青野」か、婚姻の姓で署名すべきか区別した上で、契約書作成をする必要がある。このタイムラグが迅速な経済活動が求められる株式会社において大きなロス」とする[791]

稲田朋美(政治家)は、2018年に、「通称使用で2つの姓を用いるのは混乱を招く」と指摘している[537]

冷泉彰彦(作家)は、パスポートの旧姓併記について、トラブルがおきないように運用するのは困難であり、選択的夫婦別姓を導入するのが現実的、と指摘している[829]

関口礼子(元図書館情報大学教授・旧姓通称使用訴訟原告)は、「根本的に、女性を一人の人間として認めるというものではない。中途半端な修正でお茶を濁すというものでしかない」とし、「これでは、優秀な女性たちが海外に出てしまうか、結婚しようとしないかで、日本の将来にかかわってくるのが目にみえている」とする[243]

森沢恭子(政治家)は、旧姓では場合によっては選挙の立候補ができないなどハードルがある、としている[830]

鬼丸かおる(元最高裁判事)は、「通称を名乗ることを認められていても、通称はあくまで通称であって、本当の名前ではない。かえって、通称を認めるということは税金や年金などの公的制度を利用する度に複雑な手続きが要求される」としている[831]

日本会議は、旧姓使用拡大で不利益は解消できる、と主張している[243]

少子化問題 山田昌弘(社会学者)は、家名存続のために選択的夫婦別姓を求める声も多いことからもわかるように、夫婦同姓強制は婚姻の障害になっており、少子化の一因となっていると指摘している[832]

板本洋子(全国地域結婚支援センター代表)は、婚姻率が下がっていることが少子化の大きな原因であり、選択的夫婦別姓を認めることは婚姻率を高める可能性が高く、少子化対策として非常に有効な施策であると考えられ、特に農村などでは特に跡取り男女の未婚者も多く夫婦同姓の規定は結婚の障害となっている、とする[833]

小笠原泰明治大学教授)、渡辺智之(一橋大学教授)は、出生率を改善するには、選択的夫婦別姓制度すら認めないような家族観は抜本的に見直す必要があると主張している[834]

冷泉彰彦(作家)は、必要な理由の一つとして「『嫁入りして家長の姓に合わせる』という価値観が男尊女卑につながり、結果として家事や育児の共同分担が遅れ、非婚少子化を招いているという深刻な問題に重なっている」ことを挙げている[835]

夏野剛ドワンゴ代表取締役社長)は、子育てのセーフティネットを手厚くすることで出生率の2が見えてくる、と主張している[836]

勝間和代(評論家・株式会社監査と分析取締役)は、少子化を食い止めるには、選択制を含む少子化対策や男女共同参画社会の推進に役たちそうなものはすべて実施すべきと主張[837]

伝統・家族制度編集

積極論 消極論
伝統 日本学術会議は、日本の伝統文化ではなく、明治民法において家制度が確立した結果生じたもの、としている[18]

千田有紀(武蔵大教授・現代社会論)は、「明治以降の夫婦同姓が家族本来のかたち、という考え自体が『日本の伝統』と呼べるのかは疑問」だとし、「別姓を認めると家族の一体感が損なわれる」という反対論に根拠はないとしている[838]

出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)は、夫が妻のもとに通っていた妻問婚であった平安時代などを想起すれば日本も夫婦別姓の国だったことがすぐにわかる、とした上で、経済協力開発機構(OECD)に加盟している世界の先進国で法律婚の条件に同姓であることを強要している国が日本のみであることを指摘している[783]

野田聖子(政治家)は、夫婦別姓の歴史は明治時代以降のものであり、郵便局の歴史と同じである、とし、その郵便局も民営化という改革がなされたのに、明治時代の役人が決めた夫婦同姓を日本の伝統だと言い続ける保守の政治家には違和感を覚える、としている[839]

山田昌弘(社会学者)は、夫婦別姓が日本の伝統で、現在の夫婦同姓制度は、明治政府が西洋化政策の一環として法律で強制したものとし、多様性を認めるべきと主張[840][841]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、古いものを何も考えずに残そうという惰性が「伝統」ではない、とし、また、選択的夫婦別姓制度導入は同姓か別姓かを「選べるようにしよう」という動きであり、同姓の文化も残る上に別姓という新しい文化もできる、その並存こそが次世代の人たちにとっての「伝統」となっていく、と主張している[842]

吉田信一(法学者)はたとえ僅か100年程度の歴史しかない夫婦同氏を日本の伝統であると仮に認めたとしても、「伝統の強制」はするべきではない[34]、と主張している。

田中優子法政大学総長)は江戸時代の武家は夫婦別姓だったので同姓という選択肢はなく、今は別姓という選択肢がないが、選択肢がある方がよいと主張している[843]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、「夫婦同姓(同氏)」が法制化したのは、改正民法が公布された明治31年以降であり、これは当時のドイツ(ドイツ帝国)をモデルにしたものと考えられており日本の伝統とは言えない。また、女性の職業人が大多数となった現代には、何が伝統であろうと個人の選好を尊重しない制度の継続は全く合理的でない、としている[133]

産経新聞は、「同姓がもたらす家族の一体感」は、日本の伝統・文化である、と主張している[775]
家名祭祀 阪井裕一郎(福岡県立大学)は、「家族の継承」を理由に別姓の法制化の実現を願う「保守層」も多く、一方逆に別姓反対を掲げるフェミニストもおり、反対派の多くがジェンダー運動への反対から選択的夫婦別姓を批判しているのは的外れだと指摘している[844]

日本農業新聞は、例えば長男長女が結婚した場合、選択的夫婦別姓制度導入により双方のを守る選択肢が従来より増える可能性もあると指摘している[59]

祭祀の主宰やおの継承は別姓でも可能である。「○○家の墓」は普遍的なものではないし、「○○家の墓」には「○○」以外の氏の人の遺骨を納めてはいけないという規制はない。また、少子化のため、一人っ子同士の結婚が増えており、別姓問題に関係なく、自由な方法が工夫されつつある(日本弁護士連合会[41])。

「実家の名前を継承したい姉妹の会」は、氏の継承問題の解決のために選択制を求めている[582][583]

戸籍制度 阪井裕一郎(福岡県立大学)は、選択的夫婦別氏の導入を希望する人には、「家名の継承のため」求めるグループ、戸籍については問題にしないグループ、戸籍の廃止と同制度を求めるグループがある、としている。ただし、戸籍廃止を求める人の中には、逆に法律婚自体に批判的で選択的夫婦別氏に批判的なグループも存在する、としている[844]

橋下徹(政治家・弁護士)は、現在の戸籍制度は廃止あるいは、完全個人戸籍とするべき、とし、マイナンバー制度などを用いれば、しっかりした制度を構築することが可能、としている。あるいはその次善策として、現戸籍制度を維持しつつ、夫婦別姓(氏)にしたときだけ個人単独戸籍とすることも可能、としている。反対派が「戸籍に一緒に入ることで家族の一体性が確保できる」と主張するのであれば、外国人にも適用するよう主張するべきで、反対派は論理が破綻している、としている[540]

木村草太(法学者)は、「現在の戸籍は、『夫婦同一戸籍原則』と、『同一戸籍同氏原則』の2原則に基づき編さんされているが、外国人にはこれが適用されていないことからもわかるように、法律婚の効果を享受するための必須な原則ではない。日本人同士の婚姻でも、夫婦別々に単独戸籍を作ることは容易なはず。」としている[845]

大前研一(経営コンサルタント)は、青野慶久らの主張に賛同するとともに、その本質には、社会的な不平等を生んでいる「戸籍制度」がある、としている。「できちゃった結婚」や人工妊娠中絶が世界の中で日本で多いのは、この男性中心の「家族集団単位」で把握する戸籍制度が理由として批判している[846]

松田澄子(山形県立米沢女子短期大学)は、日本が戸籍制度を輸出した台湾韓国では現在別姓となっており、別姓制度は導入可能だとし、別姓を選んだ夫婦別々の戸籍を作ればよいと主張している[847]。また、松田は、完全夫婦別姓論者の代表として佐藤文明をあげ、夫婦別姓を求めるのであれば、戸籍制度を廃止して個人の身分登録制とし、「家」ごとの登録を崩すことで、女性だけではなく在日外国人や非嫡出子も含めた社会的弱者への差別の根源をなくすべきという主張を紹介している[847]

小島慶子(エッセイスト)は、現在の戸籍制度は、非婚化が進みパートナーシップや生き方が多様化した今の日本ではもう無理があるのでは、と述べている[848]

新見正則(医学者)は、家族のあり方もいろいろであってよく、選択的夫婦別姓制度をあえて否定する理由はない、個人番号があれば姓に関係なく個人の特定が可能であるため、「結婚したら全く新しい姓を名乗るようなシステム」でも良いと述べている[849]

大藪順子(フォトジャーナリスト、元全米性暴力調査センター名誉役員)も、マイナンバー制度に全ての人が登録されることで戸籍制度は必要なくなり、選択的夫婦別姓制度を導入する好機である、と主張している[850]

阪井裕一郎(福岡県立大学)は、選択的夫婦別姓に反対・批判的な人には、戸籍制度も問題視せず(あるいは堅持を主張し)「夫婦同姓原則」を原理主義的に主張するグループと、戸籍制度の廃止を目指し法律婚自体に批判的なグループ(選択的夫婦別姓法制化にも批判的)、の二つの異なるグループがある、とする[844]

秦郁彦(現代史家)は、戸籍制度を持たない国と夫婦の姓に関する仕組みを比較することはできない、と主張している[667]

久武綾子(歴史学者)は1989年の論考において、日本の氏は戸籍と密接な関係にあるため、簡単に選択制は導入できないし、夫婦同姓も別姓も文化であり、国によって違いがあってもよいし、十分な議論がなされておらず時期尚早、と主張していた[847]

家族のあり方編集

法務委員会調査室の内田亜也子は、選択的夫婦別姓に対する賛成論と反対論は、伝統的家族モデルの維持に関する議論において大きく対立している、とする[19]

積極論 消極論
家族観 多くの選択的夫婦別姓制度賛成論において、日本の「家族の一体感が損なわれるなどを理由とした」反対論は、時代遅れ、との主張が見られる[46][851][840][852][853][854][855][856][857]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、反対論でよく見られる「選択的別姓が家族を崩壊させる」という主張について、理論的にも離婚率への影響もなく、選択制を導入した国で離婚率が上がったという実証例もないとしている[133]

琉球新報は社説において、家族の絆が壊れるなどとの指摘に根拠はなく、自分の姓を大切にし事実婚を選んだ人の家族に一体感がないと決めつけるのは失礼と主張[858]

井戸田博史(歴史学者)は、現在の制度では夫の氏を婚氏とする(夫婦同姓の98%[81]、2015年の報道では96%[802])ことは、夫の「家」に入ることになり、「嫁」と意識されることに結びつき、結婚する女性にとっては、姓の変更が男性への従属を意味するように感じられる、と主張している[81]

奈良新聞のコラム「国原譜」では、結婚によって女性が夫の「家」に入るという意識は今も根強く、その延長に夫婦別姓に対する違和感がある、と指摘している[859]

青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)は、夫婦別姓が進めば、固定したまま長く続いてきてしまった「男女の役割分担観」や「日本の家庭こうあるべき」みたいなのが、いろいろあるようになってよい、と述べる[486]

師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)は、「日本の強制的な同姓制度で無理やり繋ぎ止められた家族が幸せとは思えない」として、家族の絆を重視するならば導入を検討するべきだ、としている[860]

夫婦同姓制度とは家父長制度父権制であり、あるいはそれに準じる意識がDVの原因となっているとの指摘がある(R.E. Dobash[861],K. Yllo[862],[863],松島京[864])。

水無田気流(社会学者)は、選択的夫婦別姓は、同姓を選択したい夫婦はこれまで通り同姓を選択し得る以上、「家族を壊す」との批判には当たらない、と主張している。選択的夫婦別姓が導入されても恐らく多数派は選択しないと考えられるが、切実に必要とする人たちがいることは事実であり、「他人の生き方」まで拘束したいという意見はおかしいのではないか、形骸化した「理念としての家族像」ではなく生きた現実の家族生活を見るべき、と述べている[865]

榊原富士子(弁護士)によれば、反対論に民法750条の立法目的が「家族の一体感の醸成」であったなどという主張が見られることがあるが、東京地方裁判所は平成25年の判決において、そのような主張は明確に退け、立法時の資料に忠実に同姓を強制する制度が「婚姻制度に必要不可欠のものであるとも、婚姻の本質に起因するものであるとも説明されていない」と認定している[866][867]

稲田朋美(政治家)は、2018年に「高齢者同士の結婚も多い」と指摘している[537]

内田亜也子(法務委員会調査室)は、「選択的夫婦別姓は伝統的な家族モデル、親族間関係、家系、慣習(墓、介護問題等)を崩壊させる」といった反対意見がある、としている[19]

百地章(日本会議理事)は、国際規約(10条1項)で国による家族保護が定められている、と主張し、選択的夫婦別姓制度がそれに逆行する、と主張している[868]。また、百地は、現在の夫婦同姓制は「家族を保護」しようとした憲法の精神にふさわしい、などとも主張している[868]。また、百地は、夫婦別姓を導入すると容易に家系をたどれなくなり、「祖先を敬うという日本人の道徳観に悪影響を与える可能性」もある、とも主張している[869]

八木秀次日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、選択的夫婦別姓を認めると、姓は家族の呼称とは呼べなくなるが、これは同姓を選んだ家族にも及ぶため、一国の制度のあり方として国民全員が議論するべき[870][827]、と主張している。

日本会議は、「夫婦同姓制度は『家族』を表すファミリーネームとしての意義がある」と主張し、夫婦同姓・親子同姓の原則を維持すべきだ」などとしている[243]

高橋史朗親学推進協会会長・日本会議政策委員)は、選択的夫婦別姓が家族の絆を崩壊させるとして反対している[629]

神道政治連盟のメディア、神政連Web Newsによれば、森隆夫(教育学者・親学推進協会特別委員)は、夫婦が別姓になれば、家族のきずなが切れたり弱まる、親と異なる姓がトラウマを招く、子ども同士で親と別の姓であることでいじめに発展する危険性がある、孤独感が増すといった問題点がある、と主張している[634]

加藤彰彦(明治大学教授)は、「正論」誌上で、選択的夫婦別姓制度は、親族関係を調整する慣習法の破壊であり、祖父母という子育ての重要なサポート源を失わせ、出生率を低下させる可能性が高い、などと主張している[871]

選択的夫婦別姓に反対する日本政策研究センターの機関誌「明日への選択」によれば、石原輝(弁護士)は、反対する理由として、最小単位の社会集団は夫婦であるべき、と主張している(1995年[872])。

清湖口敏(産経新聞記者)は、姓に固執して結婚をあきらめる女性(または男性)がいるとしたら、その程度のもので「別れたらよい」などとしている[873]

宗教法人の新生佛教教団を母体とする宗教紙の日本時事評論は、選択的夫婦別姓は「離婚奨励」「結婚制度否定」であると主張し、「家族崩壊」につながり「薬物依存症」を増やし犯罪も誘発し社会荒廃を招く、などと主張している[649]

子に関する議論

木村草太(憲法学者)は、民法の同姓規定が、別姓希望カップルやその子どもを法律婚から排除し、家族の一体感にも子どもの利益にもマイナスの影響を与えている、としている[759]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、反対論でよく見られる「両親が別姓だと子どもがいじめにあう」といった意見について、そのようないじめは「他者の自由への不寛容による心理コスト」が原因であり、そのために同姓を強制するのは本末転倒であり、禁止するべきなのはいじめや差別行為の方である、と指摘している[133]

本田和子(児童学者)は、子供への悪影響は不寛容な社会の風潮が原因であり、意識革命によって画一志向を払拭すべきだと主張している[19]

内田亜也子(法務委員会調査室)は、別氏制が法制度化され社会に周知されれば偏見に基づく「いじめ」等もなくなるとの意見がある[19]、とする。

大塚玲子(ジャーナリスト)は、実際に事実婚夫婦の子供にインタビューを行い、その家族は仲が良かったこと、(反対論でよく言われるような)子供がかわいそう、といったことはなかったこと、子供としても選択的夫婦別姓の早期導入を望んでいることを紹介した上で、社会全体が「多様な価値観」を認めるようになれば楽になる人や、力を発揮できる人が増えていく、としている[874]

秦郁彦(現代史家)は、選択的夫婦別姓の問題は親子別姓となる点であり、子の姓を決める名案が存在せず、しわ寄せは子どもにいく、と主張している[667][667]

阿比留瑠比(産経新聞記者)は、選択的夫婦別姓では、別姓を選択した夫婦に子供が生まれた場合、子供は必ず片方の親と別姓になり、夫婦のあり方や親の自由だけの問題ではなく子供の人権にも影響を及ぼす、と主張している[875]

八木秀次(日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、選択的夫婦別姓制度の導入により、夫婦の間に生まれた子供の姓(氏)を夫と妻のどちらの姓にするのか、どの時点で決めるのか、複数生まれた場合はどうするのか、などの問題が生じてくる[827]、と主張している。

百地章(日本会議理事)は、選択制別氏制度導入については、親子別姓をもたらし、「親子の一体感の希薄化や子供の不安感などが生じ、成育に支障を来す」と家族の崩壊につながる、と主張している[868][869]

山口意友玉川大学教授)は、2007年の著書で、夫婦別姓においては、夫婦間で子供を自身の姓にしたいとの争いが起きるなどと主張している。山口は、子供に成年後自ら改姓する選択権を与えるとしたとしてもその選択をさせるのは残酷であるなどと主張している[876]

同性婚との関係

鈴木賢(法学者)は、同性婚について、同性カップルへの法的保障を考えれば同性同士の法律婚も認めていくべき、とし、その上で、実際に同性間での婚姻を認めるとなった場合には、婚姻時にそのどちらかが姓を変えることはおかしいとの声が上がると考えられるため、その場合には異性間の婚姻においても夫婦同姓の規定の改定は避けては通れない、としている[877]

現在の情勢・状況編集

積極論 消極論
世論に関する議論 村木厚子(元事務次官)は、2017年の内閣府による世論調査について、法改正容認派は70歳以上で5割を切るものの、60代では6割、50代以下では8割を超え、いずれの世代でも選択的夫婦別姓容認派が多い、婚姻の中心となる20代、30代で容認派が過半数と指摘。「国民の意見が大きく分かれている」とは言えないとしている[878]

日本政府が世論が分かれていることを法案提出に至らない理由としてあげたことに対して、国際人権規約B規約人権員会は、法に関する態度の正当化のために統計調査を語るべきでないと批判している[18]

国連女性差別撤廃委員会は、本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき、としている[18]

百地章(日本会議理事)は、選択制夫婦別姓に賛成している人の大多数は消極的な賛成であると主張し、少数のために制度を改変するべきではない、と主張している[869]
宗教界の動きに関する議論 川橋範子(宗教学者・名古屋工業大学教授)は、神道界が右傾化するとともに、男女共同参画や夫婦別姓に対し反対運動を行っていることに関して、夫婦別姓に反対といったことは宗教界で言うべきようなことではない、と述べている[879]

井上順孝(宗教学者)は、神社本庁が反対の立場であることについて、夫婦別姓は東アジアでは一般的で、日本が夫婦同姓を義務づけたのは明治期のことであり、神社本庁が明治期に生まれた「創られた伝統」を日本にふさわしい伝統として享受している、と主張している[880]

国際情勢 日本経済新聞は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約批准から30年経っても夫婦同姓を強制している日本は国際的にも非難の対象となると主張している[881]

日本はこれまでに3回、女性差別撤廃委員会から民法750条の改正を勧告されているが、2018年5月訴訟において原告は、日本は自由権規約と女性差別撤廃条約に批准しており、憲法98条2項によって、日本は条約を遵守する義務がある、と主張している[805]

出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)は現行法の状況は「ガラパゴス的」と主張している[783]

国際連合女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない。」として日本法を批判している[882]。その他、米国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書(2015年版)においても、日本の夫婦別姓を認めない民法規定が言及されている[883]

青野慶久(ソフトウエア開発会社社長)は、政府が「世界中で夫婦同氏を義務付けている国は、日本以外に知らない」との答弁を行っている一方で、日本が批准している女子差別撤廃条約の条約機関から日本は3回、夫婦同氏を定めた法律の規定を改定すべきという勧告を受けているが、そのような日本の姿勢は、日本だけでなく国際的な活動を行っている個々の日本企業への信頼をも損なう、としている[791]

棚村政行(法学者・早稲田大学教授)は、「日本は先進国の中でも、アジアの近隣諸国と比べても、選択的夫婦別姓が認められておらず、遅れていることは明らか」としている[884]

黄浄愉(家族法学者・輔仁大学)は、「今日の国際的な立法趨勢として、婚姻の際に、同姓にするか別姓のままにするかは夫婦の選択に任せ、子の姓についても夫婦の協議によって定めることが採用されている。こうして姓は、次第に集団的呼称から個人的呼称になりつつある。」としている[885]

秦郁彦(現代史家)は、世界の姓名事情は多彩であり、「女性差別」とは無関係だと主張している[667]
立法府の動きに関する議論

榊原富士子らは、1996年に法制審議会が答申した民法改正案要綱が、立法府で長期にわたり放置されているのは異常[18][886][866]、と主張する。

葛西大博(毎日新聞記者)は、最高裁判決は「選択的夫婦別姓制度について合理性がないとするものではなく、国会で論じられるべき」としており、それを怠るのは司法の軽視にもあたる[887]、と主張している。

宮内義彦オリックスシニア・チェアマン)は、自民党内で提案された法案が党議拘束によって成立しなかったことについて、「『自分自身で自分の名前を決めよう』という提案に、党議拘束をかける必要はない」「政党内の結束も大事だが、課題の内容によっては、党派色を抜いて一人一人の良識で考え、答えを出すべきもの」として、批判している[888]

河野太郎(行政改革担当相)は、「国会で党議拘束を外して議員が思うところを述べて議論する、決をとることがあってもいい」と述べている[889]

大串博志(政治家)は、女性の政治参画が進んでいけば問題も大きく進む、としている[890]

その他の議論編集

2015年最高裁判決についての論評編集

判決批判 判決支持

木村草太(憲法学者)は、民法750条には「氏の変更を強制されない自由の侵害」も「男女間の不平等」」も存在しないとし、合憲判決へのメディアの反発が強いとはしながらも、「原告の主張に対する法律論としては筋が通っており、やむをえない」と述べている[759]。ただし、男女間の不平等ではないとしながらも、「氏の変更を容認するカップル」と「氏の変更を容認しないカップル」間には不平等が存在するとし、選択制夫婦別姓を認めるか、事実婚にも法律婚と同等の権利を与えることによって解消できるとしている[759][891]。また、民法750条は、「別姓希望カップルやその子どもを法律婚から排除するだけ」とし、「家族の一体感にも子どもの利益にも、かえってマイナスの影響を与えてしまっている」としている[759]

三浦まり(政治学者)は、裁判官出身か弁護士出身かという前職のプロフィルが反映された判決であるとしている[892]

新見正則(医学者)は、裁判官の男女比率が男女ほぼ同数であれば違憲となった可能性を挙げ、個人番号があれば姓に関係なく個人の特定が可能であるため、「結婚したら全く新しい姓を名乗るようなシステム」でも良いのではないかと主張している[849]

下重暁子(作家)は、家族間の殺人等の犯罪が増加する中、「我が家は幸せだ」と言う人は「外にいい顔をしたいだけ」で、「個」の集団の家族を信じるなど幻想にすぎないとし、「先進国で夫婦同姓が残っているのは日本だけ」であり、合憲判決は「時代遅れで恥ずかしい」と主張している[893]

土堤内昭雄(日本フィランソロピー協会シニアフェロー)は、世界的には同性婚の広がりなどがみられるように結婚観が多様になり、家族のあり方として夫婦が同じ姓を名乗ることを、全ての夫婦に対して法律が一律に規定する国は少なく、多様な価値観に基づく議論を大いに期待する、としている。さらに、少子高齢化という人口構造の変化がシルバー民主主義をもたらし、社会制度づくりの意思決定の議論に歪を与えてはならない、とも述べる[894]

伊藤正志(毎日新聞論説委員)は、毎日新聞の論説で、合憲判決について「女性の理解を得られるのかは極めて疑問だ」とし、大抵は女性が改姓することで「屈辱感を抱いたり、不便を感じたりする人は少なくない。」ため、選択的夫婦別姓制度導入を進めるべきだと報じている[39]

東京新聞の社説では、「高裁で人格権の一部だと判断された姓を一方だけが変えなくてはならないのは差別的」と報じている[686]

愛媛新聞は、合憲判決について、「国際的にも時代遅れで、不当な女性差別との批判も強い」とし、家族の絆や「幸せの形」も人によって異なる中、「法が個人を生きづらくし、逆に差別や排除の理由になってしまっては本末転倒」であると報じている[895]

琉球新報は、社説で、国会に判断を委ねる判決であるとし「法の番人」としての責任を果たしていないとし、国会での法改正を急ぐべきと報じている[858]

泉徳治(元最高裁判事)は、国会で改正が進まないのはこの問題が少数の権利にかかわることで、政治家は常に多数を強く意識するから期待するのは難しく、少数者の人権を守ることができるのは裁判所しかないのに、「今回の判決は、裁判所が果たすべき役割を果たしておらず残念」と批判している[896]

山浦善樹(元最高裁判事)は、「家族をめぐる裁判は、裁判官の人生観や家族観に左右される。過去の価値観にとらわれないでほしい」「どんな結論が出ても、繰り返し訴えていくことが大事だ。いずれ、国際基準からみて、日本の状況を恥ずかしいと思う裁判官が多数になる」としている[897]

鬼丸かおる(元最高裁判事)は、判決について、「男性は家の問題になると、他の事案には民主的だった方もかなり強硬に反対された」と述べ、「様々な事件への視点が男女で変わるなら、人口比で女性の最高裁判事を増やすべき」としている[831]

産経新聞は判決は妥当と主張し、別氏を「希望しない」が8割を超えている世論を考慮すべきと主張している[775]。多数の裁判官が「通称使用が広がることにより、不利益は緩和され得る」ために合憲と判断した、と主張している[304]。また、寺田長官は補足意見で、両親と子の姓が異なることについて、「嫡出子との結びつきを前提としつつ、夫婦関係をどうするのかに議論の幅を残す」と補足意見があることに関して、子の姓について、結婚後のどの時点で姓を選択するのか、一組の夫婦に複数の子供ができた場合に子供ごとに姓を選択するのか、きょうだいで統一とするのか、等の議論が存在すると報じている[304]

八木秀次日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、史上初めて最高裁が家族を「社会の構成要素」「社会の自然かつ基礎的な集団単位」と位置づけた判決であり、世界人権宣言第16条と国際人権規約A規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)第10条の内容を踏まえていることから、家族共同体の意義を重視した判決だと主張した[870]

2016年旧姓通称使用訴訟判決に関する論評編集

2016年の女性教諭による旧姓通称使用訴訟の東京地裁判決に関しても様々な論評がある。

  • 日本経済新聞は、2016年10月16日の社説において、判決は社会の流れを理解していないと批判。また2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決で「改姓不利益は通称使用で一定程度は緩和される」と判断したこととも食い違う、と批判している[898]
  • 毎日新聞は、2016年10月13日の社説において、旧姓使用が広がっている実情への理解が欠けた判決だと批判。2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決で、「旧姓使用が社会的に広まることで、改姓することの不利益は一定程度緩和される」としたこととも整合しない、と批判している[899]
  • 二宮周平(法学者)は、この地裁判決は、2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決の前提だった通称使用を『社会的に受け入れられていない』と真っ向から否定しており、最高裁からすれば、選択的夫婦別姓を認めよと言われているようなもの」としている[900]
  • 被告側の理事は、「今回の裁判は、『個人のアイデンティティーvs.学校のアイデンティティー』という構図になってしまった。でも、別姓を認める法律があれば、こんな戦いをせずに済んだはず」としている[900]

夫婦創姓論・結合姓論編集

阪井裕一郎(福岡県立大学)は、選択的夫婦別姓制度への批判をする人の中に「男女平等」の観点から「創姓」や「複合姓(結合姓)」を提唱する論者がいる、と指摘している[844]

鎌田明彦は、選択的夫婦別姓制度は旧姓にこだわりすぎ、などとし、婚姻時などに新たに姓を決める夫婦創姓や、夫婦の旧姓を結合して姓とする夫婦結合姓を含めた制度を、選択的夫婦別姓制度に代わるものとして提案している[901]

批評

鎌田は夫婦創姓について、現実感の乏しい机上の空論である、家族名称に執着するのは時代遅れ、標準的な核家族以外の家族形態に対応できない、実現困難、規制緩和の時代だ、別姓も例外的に認めてもよいという反論を紹介している[901]岩田規久男も、選択的夫婦別姓論者が望んでもいない議論を起こす理由はない、と夫婦創姓論や結合姓論に反論している[823]

各国の状況編集

アジア編集

東アジア編集

血縁意識が強い儒教文化圏では、夫婦別姓・別氏の国が多い[840][902][903][904][840]

  日本
現行法では夫婦同氏。例外は、国際結婚のみ。
  中華民国
夫婦別姓または複合姓(冠姓)の選択が可能。1985年民法では原則冠姓、当事者が別段の取決めをした場合は別姓とされていた[905][885]。1998年の改正で、原則として本姓をそのまま使用し、冠姓にすることもできる、と改められた。職場では以前から冠姓せず本姓を使用することが多かったとされる[906]。子の姓は、原則的に父系の姓が適用されていた(入夫の場合は逆)が、1985年の改正で、母に兄弟がない場合は母の姓にもできるようになっり、兄弟別姓も可能となった[906]。しかし男女平等原則に反するとして、2008年の戸籍法改正で両親が子の姓を合意し、署名を入れ提出することになった。合意がない場合は役所が抽選で決める[907]。さらに養子も本姓を維持可能になった[885]。2010年改正では、成人の自由改姓が認められた[885]
  韓国
各自の氏を称する(夫婦別姓)[908]。子の姓は原則父親の姓としていたが、2005年改正により、父母が婚姻届出の時に協議した場合には母の姓とすることも可能になった[909][910]。なお、古代の律令制導入以来からあった、日本と同様の戸籍制度は、2008年に血統主義に立脚した正当な理由のない制度であるとして廃止されている[911]。また、2008年より、離婚後に子を母親が引き取った場合に、子の姓を母親の姓にすることが可能になった[912][913]。なお、「同姓同本不婚」の規定は、1997年憲法裁判所がこの制度の憲法不合致の決定をし、1999年に廃止された[914]
  北朝鮮
現行法に婚氏に関する規定はなく、各自の姓を継続使用できる(別姓)。夫婦の権利は平等。「同姓同本不婚」の規定は無い[915]
  モンゴル
夫婦別氏[916]。なお、モンゴルの姓名は、姓+父称(父親の名)+名(本人の名)からなっている。姓は1925年に一度廃止されたが、1999年に再び用いるようになった[917]
  中国
夫婦別姓、複合姓(冠姓)、夫婦同姓より選択。1950年の婚姻法において「自己の姓名を使用する権利」が認められた[918][838][919]。1980年改正で、子の姓は両親のいずれかから選択することになり、2001年改正でより夫婦平等な文言となったが、伝統的には父の姓が用いられる[920]。なお中国にも戸籍制度があり、是非には議論がある[921]

東南アジア編集

  タイ
選択制。1913年の個人姓名法により国民全員が氏を持つことが義務化され、別氏または夫の氏。妻は夫の氏を用いるという1941年改正法(12条)は2003年に憲法裁判所より違憲判決が下り[922]、2005年に改正された。現行法では同氏、別氏、結合氏からの選択制になった[238][923][924]。子の氏は父母のどちらかから選択[925]
  フィリピン
2010年以前は、結婚時に、妻は自分の氏に夫の氏をミドルネームとして加えるか、夫の氏を用いるか、夫のフルネームにMrs.をつけるか、からの選択だった。しかし、2010年に、裁判所は、女性の権利を守る観点から、これらに加えて、自分の氏のみを用いてよい、との判断を下した[926]。現在では、夫婦別氏が可能である[927][928]
  マレーシア
婚姻時に氏が変更されない[929][930]
  シンガポール
別氏、同氏を選択可能。多くは別氏[931]
  インドネシア
通常は夫婦別氏。通称として夫の氏を名乗ることも多い。男性側の改氏も可能[932]
  東ティモール
別氏の多い地域も、改氏、複合氏の多い地域もある[933]
  ブルネイ
妻は夫とは別に自身の氏を用いてよい[934]
  ミャンマー
親から名前は継がず、結婚しても配偶者の氏を名乗ることは稀である。名前の節は1つの場合もあれば、多数のお場合もある[935][936][937]
  ベトナム
結婚時に名前が変わらない。名前は2つから5つ程度の名前からなり、最初の名前がファミリーネーム、最後の名前がギブンネームである。両親の伝統や好みによって、ミドルネームはない場合もあれば、複数ある場合もある[938][939]。ベトナム政府は2017年に、戸籍制度の撤廃を発表している[940]
  カンボジア
婚姻で氏が変わらない[941]。名前は「氏、名」の順[942][943]。姓としては、中国やベトナムと同じ姓も多い[944]。多くの場合子の氏は父親の氏をつけるが、父親の名を子の氏とすることなどもあり、兄弟が異なる氏を持つこともある[945]
  ラオス
別氏または同氏[946][947]

南アジア編集

  インド
婚姻時の厳密な法規定は無い。氏名は自由に変更できる[948][949]。もっとも、平成13年時点では、インドは「同氏制」とする報告もみられる(男女共同参画会議基本問題専門調査会)[908]。2012年以降婚姻の登録が義務となったが、登録時には、改氏する場合には新氏を届ける[950]ヒンズー教徒は夫婦同氏とする[60]一方、シーク教徒は常に男性は「Singh」、女性は「Kaur」を氏として持ち、婚姻でその氏が変化することはない[951]マハーラーシュトラ州では、婚姻時に婚前の氏を保持できることが2011年に明文化されている[952]。2017年にはナレンドラ・モディ首相が、女性が結婚後にパスポートを変更する必要はない、と述べている[953]。変更の必要は以前よりなかったとも報道されている[953]
  ネパール
婚姻すると、女性は、自身の父親の氏、自身の母親の氏、あるいは夫の氏のいずれかを用いることができる[954]
  ブータン
氏は「家の名」ではなく個人それぞれに名付けられる。婚姻による変更は無い[955]
  バングラデシュ
婚姻時に改氏する女性もいる[956]
  スリランカ
何も手続きを行わなければ、婚姻時に改氏はない。改氏したい場合は婚姻時より使いはじめ、証明などの必要が出た際に手続きを行う[957][958]
  パキスタン
別氏または夫の氏。イスラム法では夫の氏に変えることを求めておらず、イスラム系住民は別氏が多い[959]
  アフガニスタン
女性は伝統的には婚姻時に改氏しない。英語圏で改氏する女性もいる[960]

中央アジア編集

  カザフスタン
別氏、同氏、複合氏から選択。すでに複合氏の場合追加できない。改氏しても離婚時に戻せる[961]
  ウズベキスタン
別氏、同氏から選択[244]
  キルギス
別氏、同氏、複合氏から選択。すでに複合氏の場合追加はできない。改氏しても離婚時に戻せる[962]
  トルクメニスタン
別氏、同氏、複合氏から選択[963]
  タジキスタン
別氏、同氏、複合氏から選択[244]

南コーカサス編集

  アゼルバイジャン
別氏、同氏、複合氏から選択[964]
  アルメニア
別氏、同氏、複合氏から選択[965]
  ジョージア
別氏、同氏、複合氏から選択[966]

中東・西アジア編集

中東や北アフリカのアラブ諸国では、イスラム教徒の女性は伝統的には婚姻時に改氏しない[967]

  トルコ
同氏、別氏、複合氏からの選択制。2001年の法改正により女性の複合氏がまず認められ[968]、2014年に婚前の氏のみを名乗ることを認めないことの違憲判決が下され、婚前の氏をそのまま用いることができるようになった[969][970][971]
  イスラエル
別氏、同氏の選択制。ミドルネームも使える[972]
  イラン
通常、婚姻時に改氏しないが、夫の氏を後ろに加える女性もいる[967]。1976年までは妻を含め家族の氏を決める権利が夫にあったが、現在では、家族のいずれの成員も氏を自身で決めることができる[973][974]
  イラク
通常は婚姻時に改氏しないが、西欧風に夫の氏にする女性もいる[967]
  サウジアラビア
婚姻時に改氏しない[975]。養子縁組でも同じ[288]
  クウェート
婚姻時、女性は改氏しない[976]
  バーレーン
婚姻時、女性は改氏しない[976]
  カタール
婚姻時に改氏できない[977]
  アラブ首長国連邦
伝統的に婚姻時に改氏しない[978]
  シリア
イスラム教徒の女性は婚姻時に改氏しない。改氏する女性もいる[979]
  オマーン
女性は婚姻の際に改氏しない権利を持つ[980]

ヨーロッパ編集

西ヨーロッパ編集

  イギリス
伝統的に氏に関する法律の規定はなく、詐害の意図がない限り氏を自由に変更でき、同氏も別氏も複合氏も選択できる。伝統的には妻が夫の氏を称する[908][288]。子の氏は公序良俗に反しなければ自由につけられる[981]
  アイルランド
別氏、同氏、複合氏(自己の氏をミドルネームとし配偶者の氏を称する)から選択[982]。子の氏は父、母、あるいはその両方から選択する[983]
  フランス
前述のように妻は夫の氏を通称として名乗ることができる[984][985]2013年には夫にも妻の氏を通称として使用可能になった[986][987]。2004年以前は子の氏は父の氏としていたが、2005年改正法は父母のどちらかか、両者の氏をハイフンでつないだ複合氏を選択可能にしている[988][981][989]。2013年からは、夫婦が子の氏について一致できなかった際は父母の氏のアルファベット順の結合氏となる。養子は結合氏となる[238]
  オランダ
別氏、同氏、複合氏(選択配偶者の氏の後に自己の氏を後置)から選択[990]2001年時点では、夫の氏は不変、妻は夫の氏(同氏)または自己の氏(別氏)を称する。妻は自己の氏を後置することもできる、と報告されている[908]。かつては、婚姻後妻は夫の氏に改姓する、とされていたが、氏名法が改正され選択制となった[991]。子の氏はどちらの氏でも構わないが、同じ両親の子の氏はいずれも同じとしなければならない[992]
  ベルギー
婚姻によっては氏は変更されない[993][929]。子の氏は父のみだったが、2008年より母の氏も選択可能になった[994]
  ルクセンブルク
婚姻によって法的な氏が変更されない。ただし、配偶者の許諾があれば、配偶者の氏を(通称として)用いることができる。離婚後も元配偶者の許諾があれば用い続けることができる。なお、1982年より、氏あるいは名の変更が可能となった(十分な変更理由が必要)[995][996][997]。子の氏に関しては、かつては父の氏と定められていたが、2006年の法改正により父の氏、母の氏、複合氏(順序は問わない)より選ぶことが可能となった[998][999]
  ドイツ
かつては夫の出生氏での同氏が民法で規定されていたが、1976年に妻の出生氏や複合氏の選択が認められた。さらに1993年の民法改正で、夫婦の氏を定めない場合は別氏になる選択的夫婦別氏となった[1000][54]。子の氏に関しては、親権が父母それぞれにある場合には、どちらの氏とすることも可能であるが、子一人ごとに氏を変えることはできない。婚姻で氏を変更して後離婚・死別した場合には、旧氏に戻す選択肢の他、旧姓を婚氏に加える二重氏を選択することもできる[1001][288]。ドイツ語協会(GfDS)の2016年の調査によると、婚姻時の氏の選択は、夫氏婚が約75%、別氏婚(夫婦双方とも改氏しない)約12%、複合氏が約8%、妻氏婚約6%だった[1002]。そのほか、養子の氏に関しては、養親の氏、あるいは養子縁組前の氏と養親の氏の複合氏から選択することが可能[1000]
  オーストリア
2013年までは、原則夫の氏、決定がある場合は妻の氏を称する、あるいは自己の氏を後置する複合氏[908]、とされていたが、2013年4月以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則別氏になった[1003][1004]。夫の氏に変更、あるいは複合氏を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない[1004]。子の氏に関しては出生時に定めるものとされる。父母が別氏の場合は、父の氏、母の氏、それらの複合氏のいずれかから選択可能である。子の氏を定めない場合は母の氏となる[238]。2013年以前は父の氏だった[238]
  スイス
2013年以前は、夫の氏が優先。正当な利益があれば妻の氏を称したり、自己の氏を前置する複合氏も可能[908]とされていたが、2013年以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則別氏に変更された。配偶者の氏や複合氏を選択するためには婚姻前に手続きが必要[1005]。別氏の場合、子の氏は婚姻時あるいは第一子の出生時に、父あるいは母の氏より選択する。第二子以降は第一子と同じ氏とする[1006]
  リヒテンシュタイン
同氏、別氏、複合氏から選択。子の氏は親が決定[1007]

南ヨーロッパ編集

  イタリア
選択制。1975年まで、婚姻時に妻が夫の氏にならうという民法規定が存在していたが、1961年の最高裁判決で「妻は婚姻で本来の姓を使用する権利を失うのではなく、夫の姓を使用する権利を得る」と解釈され夫婦別姓が可能となった[1008]。さらに、1975年に民法が改正され、明示的にも同姓、別姓、結合姓より選択することが可能となった[1009]。一方、子の姓に関しては法的な規定はなく、慣習法として父親の姓としていた。これに対し、母親の姓を子の姓として選択できるようにするべき、との判決が2014年に欧州人権裁判所において出され[1010]、さらに2016年には国内の憲法裁判所においても子の姓として父親の姓しか選択できないのは違憲とされた[1011][1012]。現在では、子の氏として、従来どおり父親の氏をつける選択肢に加え、父親の姓に母親の氏を加えた複合氏をつける選択肢がある。また、未婚の母親で、父親が認知していない場合には母親の氏のみを子の氏としてつけることができる。出生時に決定する[1013][1014][1015]。なお、イタリアは極めて離婚が少ない国として知られている[1016]
  スペイン
個人の名は、一般的には「名、父方の祖父の氏、母方の祖父の氏」だが、1999年に「名、母方の祖父の氏、父方の祖父の氏」でもよいと法改正された。順序は父母の合議による。兄弟でこの順序は統一される。夫婦の氏に関する規定は民法にはなく、婚姻によって名前を変える必要はないが、女性はその他の選択肢として「de+夫の父方の姓」を後置する、「母方の祖父の姓」を「夫の父方の姓」に置き換える、「母方の祖父の姓」を「de+夫の父方の姓」に置き換える、などの選択が可能である[238][1017]
  ポルトガル
別氏、または複合氏(配偶者の氏を自己の氏に前置または後置)から選択可能。1977年の法改正で別氏を選択可能になった[1018]。2011年の時点では、既婚女性の60%が婚前の姓をそのまま用いている[1019][1020]。子の姓は父の姓と母の姓を付与するが、順序は定められておらず、また兄弟で順序が異なってもよい[238]
  ギリシャ
別氏、同氏、複合氏から選択。妻が婚姻時に夫の氏に倣うのが伝統[1021]だったが、1983年の法改正で改められた[1022][1023][1021]。その後、2008年の法改正で、自身の姓に配偶者の姓をハイフンで結び付加する複合姓も選択可能となった[1022][1021]
  マルタ
別氏、同氏、複合氏から選択。複合は稀[1024]

北ヨーロッパ編集

  スウェーデン
選択制で、同氏または別氏、自己の氏または配偶者の氏を中間氏にもできる(1983年氏名法)[908]。両親が別氏の場合、父の氏か母の氏から選択する。複数の子がいるときは同じ氏とする[238][1025]
  ノルウェー
選択制。婚姻時、妻が夫の氏に加え自己の氏を中間氏とするのが46%、夫の氏に変更するのは34%、別氏は20%、と2016年に報告されている[1026]。1923年以前は父称を用いており、婚姻時に改氏する伝統もなかったが、1923年の氏名法によって、婚姻時に妻が夫の氏に改氏する(夫婦同氏)と定められた。しかしその後、1965年に氏名法が改正され、現在のような制度となった[1027]
  デンマーク
同氏、別氏、配偶者の氏をミドルネームとすることから選択。1981年までは、特段の書類による定めによらない限り夫婦は同氏とされていたが、1981年の法改正で婚姻前の氏を原則とし、届け出によって氏を変更するとされた。氏は祖父母の氏や許諾を得た別人の氏を用いることも可能[1028][1029]
  フィンランド
同氏、別氏、複合氏、創氏(新しい氏を作成)から選択[1030][1031]1930年の婚姻法では妻が夫の氏を用いることが義務付けられていたが、1985年8月の改正で別姓(非改姓婚)が可能となった[1030][1031][1032]。さらに2018年1月の法改正によって、複合氏のバリエーションが増えるとともに、新しい氏を作ることも可能となった[1030]。また、事実婚の場合も夫婦を同氏とすることが可能となった[1030]。子の氏に関しては、親が同氏(複合氏で同氏の場合を含む)の場合はその氏、そうでない場合は、出生後に届け出た氏(父親・母親いずれかの氏)とする。ただし、複数の子がある場合はいずれの子も同じ氏とする[1032]。子につけられる名前は2018年の法改正で最大3つから4つに増えた[1030]
  アイスランド
特に請求がない限り別氏[1033]。なお、アイスランドでは「家族の氏」という概念はなく、原則として、父の名前、母の名前、あるいはその双方それぞれに「の息子」の意を表す-sonあるいは「の娘」の意を表す-dóttirを付けたもの(父称)を氏として名乗る[1034]

バルト諸国編集

  リトアニア
別氏、同氏、複合氏から選択[1035]
  ラトビア
別氏、同氏、複合氏から選択[1036]
  エストニア
別氏、同氏、複合氏(配偶者の氏を後置)から選択[1037]

東ヨーロッパ編集

  ロシア
選択制。1995年家族法典では別氏、同氏、複合氏から選択が選択できる(第32条1項)[1038][1039]。名前は、名、父称、姓からなる[1040]。子の姓は、両親の協議により父親の姓か母親の姓から選択する[1039]。14歳以上ならば、姓も名も父称も自分の意思で変更可能である[588]
  ポーランド
別氏、同氏、複合氏から選択[1041]。ただし複合姓にする場合、3つ以上の姓をつなげてはいけない[1042](1964年)。
  チェコ
別氏、同氏、複合氏から選択[1043]
  スロバキア
別氏、同氏から選択[244]
  ハンガリー
別氏、同氏、複合氏(順序はいずれでもよい。ハイフンでつなぐ)から選択、自らのフルネームを配偶者のフルネームにnéを付加したものに変更する(この場合出生時の氏名は失われる)、配偶者のフルネームにnéを付加したものに自己のフルネームを加えたものを自己のフルネームとする(この場合フルネームは4つの名からなる)、自己の氏の前に配偶者の氏にnéを付加したものを追加する(自己の氏は中間氏となる)、などより選択できる[1044]。伝統的には、妻が夫のフルネームにnéを付加したフルネームに改名し、出生時の名前は失われていた。その後、1895年、1953年、1974年、2004年などの改正を経て選択肢が増えた[1044]。なお、ハンガリーでは、日本同様、姓が名の前に来る[1044]
  ルーマニア
別氏、同氏から選択。子の氏はどちらかの氏とする。両親の合意が無い場合裁判所が決定[1045]
  ウクライナ
別氏、同氏、複合氏から選択[1046][1047]
  モルドバ
別氏、同氏から選択[244]
  ベラルーシ
別氏、同氏、複合氏から選択[1048]

バルカン諸国編集

  ブルガリア
別氏、同氏、複合氏から選択[1049]
  セルビア
別氏、同氏、複合氏から選択[1050][1051]
  クロアチア
別氏、同氏、複合氏から選択[1052]
  北マケドニア
選択制。伝統的には女性は婚姻時に夫の氏の女性形に改氏していたが、近年では別氏、夫の氏、複合氏を用いる女性もいる[967]
  コソボ
別氏、同氏、複合氏から選択[1053]
  アルバニア
別氏、同氏から選択[1054]
  モンテネグロ
別氏、同氏、複合氏、一方の配偶者のみ複合氏、から選択できる[1055]

アメリカ編集

北アメリカ編集

  アメリカ合衆国
婚姻関係の法は州ごとに定められている。1970年代から選択的夫婦別氏が認められ、別氏の他にミドルネームなど概ね5つの選択肢がある[1056]。2015年より全州で認められている同性結婚でも選択的夫婦別氏が同様に認められている[1057]。合衆国憲法上は子の姓に関してはそれを定める法はなく、どのような姓をつけてもよいとされており[1058]、ケンタッキー州ではどのような姓を子につけてもよいとされている一方、州によっては可能な姓が定められている。ジョージア州においては子の姓は父母いずれかの姓、またはその複合姓に限られる。ルイジアナ州、テネシー州では、子の姓は原則として父親の姓とするが、両親の合意の上変更可能である。アリゾナ州、ワシントン州、マサチューセッツ州では、姓の長さの規定がある。テキサス州ではアクセントやウムラウトなどに制限がある。ニュージャージー州では公序良俗に反する姓は禁止されている[981][1059]。一方、子に氏を付ける権利について、1970年代までは父親が持つとする州が多かったが、その後夫婦間で平等になるよう改正されてきた。合意できない場合は、多くの州では裁判所が決定するとされているが、フロリダ州、ニュージャージー州では両親の氏のアルファベット順による複合氏になる[1060][1061]
  カナダ
婚姻関係の法は州ごとに定められている。ケベック州では1981年以降婚姻による改氏が禁じられている[1062][1063][1064]。同州では、子の氏は、父、母、父母の氏の複合姓のいずれかより選択する[1065]。オンタリオ州では、婚姻しても出生証明書の氏名は変わらないが、運転免許証等では配偶者の氏を用いることができる[1066]。子の氏は、父の氏、母の氏、父母の氏の複合氏から選択するが、子の氏について両親が同意に至らない場合は、両親の氏のアルファベット順の複合氏とする[1067]。アルバータ州では、別氏、同氏、結合氏から選択[1068]。ブリティッシュコロンビア州では、同氏、別氏、複合氏から選択。直前の氏、出生時の氏、配偶者の氏を使用可能[1069]。ニューブランズウィック州では、婚姻しても氏は変わらないが改姓の手続きをすれば配偶者の氏に改氏できる[1070]

中央アメリカ編集

  メキシコ
一般的に女性は改氏しない[1071]。各個人は二つの氏を持ち、伝統的には、父親の第一氏と母親の第一氏が子の第一氏と第二氏となるが、2017年には両親双方の第二氏を子の氏とすることが認められた[1072]
  コスタリカ
妻の氏は不変だが、夫の氏を使った結合氏は可能[238]
  ジャマイカ
法の規定は無い。慣習では夫婦は同氏[60]。夫は妻の氏に変えないが、婚姻の際妻が夫の氏にならうか、複合氏を名乗ることがある[1073][1074][1075][1076][1077]。その場合、パスポート申請時に婚姻証明書を提出しなければならない[1078]

南アメリカ編集

  ブラジル
別氏、同氏、複合氏から選択。1977年以前は妻は結合氏を義務付けられていたが、1977年の改正で別氏が可能となり、2002年改正で夫側も結合氏が可能になった[238][1079]。子の氏は一般的には母の氏と父の氏を並べるが、逆の順序も可[238]
  コロンビア
別氏または婚姻時に女性が改氏。父方の氏を夫の父方の氏に置き換えるか、de+夫の父方の氏を後置できる[1080]
  ペルー
別氏または婚姻時に女性が改氏。「de+夫の氏」を後置する[1081]
  チリ
通常、婚姻によって改氏しない。社交上「de+夫の氏」を追加した複合氏を用いることもあるが、廃れつつある[1082]
  アルゼンチン
別氏または婚姻時に女性が改氏。de+夫の氏を追加した複合氏にできる[1083]

オセアニア編集

  ニュージーランド
別氏、結合氏、同氏から選択。結合氏の場合、つなげる順序はどちらが先でもよく、ハイフンで結んでも、間にスペースを入れて結んでもよい[1084]。伝統的には女性が男性の姓を名乗ることが多いとされる[1085]。子の姓は公序良俗に反しなければどのような姓でも自由につけることができる[981]。また18歳以上であれば、ほぼ自由に改姓することも可能である[1086]
  オーストラリア
別氏、結合氏、同氏から選択。氏名の変更も比較的容易に可能[1087][1088][1089]。また、子の姓を定める法的な規則は存在しておらず、公序良俗に反する姓でなければいかなる姓を子につけてもよい。したがって、父の姓、母の姓、複合姓が可能であるだけでなく、新たに創姓することも可能である。また複数の子が異なる姓であっても構わない[1090]。子の姓について夫婦が同意に至らなかった場合は、ビクトリア州法では、登記官あるいは裁判所が決定できる[1091]

アフリカ編集

北アフリカ編集

北アフリカや中東のアラブ諸国では、イスラム教徒の女性は伝統的には婚姻時に改氏しない[967]

  エジプト
多くの女性は婚姻時に改氏しないが、改氏する女性もいる[1092]

東アフリカ編集

  エチオピア
婚姻してもほとんどの女性は改氏しない[1093]
  エリトリア
婚姻してもほとんどの女性は改氏しない[1093]
  ソマリア
ソマリ人は伝統的には結婚しても改氏しない。一方、西欧社会的な家庭では、妻は夫の氏を用いる[967]
  ケニア
結婚時に改氏することもしないことも可能[1094]
  ウガンダ
結婚時に改氏することもしないことも可能[1095]
  ルワンダ
氏が同じことは親類関係を意味せず、氏は家族間で異なるのが一般的。慣習では、子には家族のいずれとも異なる氏をつける。家族がすべて同じ氏を持つことは極めて稀[1067]

西アフリカ編集

  ナイジェリア
伝統的には結婚時に女性が夫の氏にならうが、法的には自由。別氏、複合氏も近年増加[1096][1097]
  ガーナ
別氏または夫の氏から選択[1098]

中部アフリカ編集

  カメルーン
別氏、同氏から選択[1099]
  ガボン
別氏または夫の氏、複合氏から選択[1100]
  アンゴラ
別氏、同氏、複合氏から選択[1101]

南部アフリカ編集

  南アフリカ共和国
別氏または夫の氏からの選択[1102]。1997年からは複合姓も可能となった[1103]。子の姓に関しては、父親姓、母親姓、それらの複合姓のいずれも可能[1067]
  ナミビア
同氏、別氏ともに可能。子は両親のいずれかの氏とする。2013年現在、子の氏に選択肢を広げる議論がある[1067]
  ボツワナ
婚姻時に女性は、別氏、同氏、複合氏、夫の氏名に「Mrs.」を追加したものを用いる、のうちより選択する。伝統的には女性が夫の氏にならう[1104]
  ジンバブエ
結婚時の氏に関する法はなく、婚前の氏を用いることも、夫の氏に変更することも可能[1105]
  マラウイ
婚姻時に改氏する必要は無い。とくに北部では伝統的に改氏しない[1106]

脚注編集

[脚注の使い方]

出典編集

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