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夫婦別姓(ふうふべっせい)、あるいは夫婦別氏(ふうふべっし・ふうふべつうじ)とは、夫婦結婚後も改姓せずそれぞれの婚前の名字苗字[注 1]を名乗る婚姻および家族形態あるいはそのような制度のことである[2][注 2]。これに対し、婚姻時に両者の姓を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことを「夫婦同姓」(ふうふどうせい)あるいは「夫婦同氏」(ふうふどうし)という。

夫婦別姓と夫婦同姓を選択できる制度を、「選択的夫婦別姓」(せんたくてきふうふべっせい)、あるいは「選択的夫婦別氏」(せんたくてきふうふべっし・せんたくてきふうふべつうじ)と呼ぶ[3][6][注 3]。日本では現在、民法750条により夫婦同氏と定められ、夫婦別氏は国際結婚の場合[注 4]を除き認められていないため、別氏のまま婚姻することを選択できる選択的夫婦別姓制度の導入の是非が議論されている。

目次

概要編集

日本においては、現在、民法750条で夫婦の同氏が規定されており、戸籍法によって夫婦同氏・別氏が選択可能な国際結婚の場合を除き、婚姻を望む当事者のいずれか一方が氏を変えない限り法律婚は認められていない[14]。そのため、特に近年、別氏のまま婚姻することを選択できる選択的夫婦別姓制度を導入することの是非が議論されている[15][14]。なお、日本で夫婦同氏が定められたのは明治民法が施行された明治31年(1898年)からであり[16]、明治民法施行以前は明治9年(1876年)の太政官指令によって「婦女は結婚してもなお所生の氏(婚姻前の氏)を用いること」、すなわち夫婦は別氏と規定されていた[17]

過去には、日本以外にもドイツオーストリアスイストルコタイ王国など夫婦同氏が規定されている国もあったが[18]、ドイツは1993年、タイ王国は2003年、オーストリア、スイスは2013年、トルコは2014年にそれぞれ制度を改正するなどした結果、2014年時点で、法的に夫婦同氏と規定されている国家は日本のみとなった[19][16][20][21][22][注 5]。日本においては、1996年に法制審議会が夫婦別氏を選択的に認める民法改正案を法務大臣に答申したものの、いまだ実現に至っていない[24][25][26]。日本は2003年以降、日本の民法が定める夫婦同姓が「差別的な規定」であるとして、国際連合女子差別撤廃委員会より度重なる是正勧告を受けている[27][16]

導入要請・希望の背景編集

現在の日本においては、このように夫婦同氏が民法で規定されているため、何らかの理由で当事者の双方が自分の氏を保持したい場合、結婚ができない[14]。現状ではそのような場合の他の選択肢として、旧姓の通称使用あるいは事実婚も考えられるが、それぞれ様々な問題の指摘がある[14]。(「#旧姓通称使用」および「#事実婚」を参照)

そのため、間接差別の解消[16][28]、離再婚やその際の子の氏の問題への対応[29][30]、多様な価値観の尊重、個人の尊重人権アイデンティティプライバシー男女共同参画、社会・経済コスト、少子化解消、家名存続など、様々な観点から選択的夫婦別姓制度を求める動きがある[16][15][14][25]。 (詳細は「#賛否の論点」を参照)

また、国際連合で1979年に採択され日本も1985年に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では選択的夫婦別氏制度の導入が要求され、日本は国際連合の女子差別撤廃委員会(CEDAW)より度重なる改善勧告を受けているなど、国際的な要求もある[16]。(詳細は「#国連女子差別撤廃委員会の勧告」を参照)

このような背景から、選択的夫婦別姓制度の導入の是非に関する議論がなされている[14]。さらには、これらの問題をめぐり、訴訟なども提議されるようになった[31][32][33][34]。(詳細は「#選択的夫婦別姓訴訟」を参照)

旧姓通称使用編集

旧姓通称として使用することを旧姓の通称使用あるいは旧姓の通称利用という。 婚姻によって氏名が変わることは仕事上不利でもあるため、仕事の便をはかるために、職場・職種によってはその使用が認められる場合がある[35]。1988年に富士ゼロックスで導入されるまでそのような旧姓通称使用は通常認められていなかったが、その後、国家公務員でも2001年から認められるようになり[35]、2010年の時点では、産労総合研究所の調査で回答があった192社のうち旧姓使用を認めている企業は55.7%、従業員1千人以上の企業で71.8%となっている[36]

しかし、旧姓の通称使用には多くの問題点も指摘されている[37][38][39]戸籍姓しか認められない職場も多く、旧姓通称使用できない人も存在すること[37]、運転免許証等の証明書類や様々な公的書類上で旧姓を用いることができないこと[37]、そもそも二重の姓を使い分けるのは不便であること[40][41]、アイデンティティ上の問題があること[41]、通称使用は二つの名前の管理が必要であり企業の負担が大きくなること[42][43][44]などの指摘がある。

また、旧姓通称使用を雇用側に求める裁判がこれまで2件行われたが、いずれも訴えは認められず棄却されている(和解は成立)。

事実婚編集

事実婚は法的には婚姻に当たらないため、法的問題、日常生活上の不都合など、以下のように様々な問題が指摘されている[45][46][47][48][49][50][51]

子がいる場合には戸籍上非嫡出子(婚外子)として扱われ[46]、片方の親のみの単独親権に服する(父母が共同で親権を行うことができない)こと[45]相続の際の法定相続権、遺留分、配偶者控除、相続税の基礎控除や優遇措置、居住用不動産の贈与についての特例などが認められないなどの問題[52][45]成年後見の問題[51]、入院時などの家族関係の証明の問題[47]、税法上や日常生活上の様々な不利益の問題[45][49]、海外赴任時の配偶者ビザの問題[51]、などの指摘がある。

国連女子差別撤廃委員会の勧告編集

日本を含む130カ国の賛成で、国際連合で1979年に採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に、日本は1980年に署名し、1985年に批准した[53]。この条約では、選択的夫婦別氏の導入が要求されている[16][37][54][55][56][57][注 6]。そのため、国際連合女子差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本の民法が定める夫婦同氏が「差別的な規定」であるとし、これを改善することを、2003年、2009年、2016年の3度にわたり勧告している[27][16]

2003年8月の勧告では、委員会は婚姻最低年齢、離婚届後の女性の再婚禁止期間の男女差、非嫡出子の扱いと共に「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な法規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」と日本に勧告した[59]

日本国政府は2008年4月に選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう努めていると報告したが[60]、2009年8月に再度、委員会は前回の勧告にもかかわらず、差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有すると勧告したほか、「本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき」と勧告した[27][61]

日本国政府は、2014年8月にも報告書を提出したが[62]、2016年に委員会は再度、「過去の勧告が十分に実行されていない」「実際には女性に夫の姓を強制している」と勧告した[63][64]

2016年には、国連女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、日本の夫婦別姓を認めない規定について、「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない。」と述べている[65]

その他、アメリカ合衆国国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書(2015年版)においても、日本の夫婦別姓を認めない民法規定が言及されている[66]

民法改正案編集

これまでいくつかの選択的夫婦別姓の導入のための民法改正案が提案されている。主なものとして、1996年の法制審議会答申で出された民法改正案[24]、その法制審答申民法改正案に至る検討段階の1994年に法務省民事局参事官室より提示された3案からなる「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」[67][68]、超党派野党や公明党などが2015年などに提示した案、選択的夫婦別姓訴訟原告などが提示している案、自民党内で「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」が2002年に提案した案などがある。

法制審答申民法改正案編集

最終答申(1996年)編集

1991年1月に設置された法制審議会身分法小委員会での5年にわたる審議を経て、法制審議会は、1996年の法制審議会答申において以下のような民法改正案を法務大臣に提示した[24][25][26]。法務省は2001年11月[69]、2010年2月[70]にも同様の案を再度提示している。

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

この審議に合わせ、民事行政審議会は、「別氏夫婦に関する戸籍の取り扱い」についても法務大臣に答申している。これは以下のような内容となっている[71][注 7]

  • 戸籍は夫婦およびその双方又は一方と氏を同じくする子ごとに編製する。
  • 別氏夫婦の戸籍の氏名の記載は、子が称する氏として定めた氏を称する者、その配偶者の順に記載する。
  • 別氏夫婦の戸籍には、現行の戸籍において名を記載している欄に氏名を記載する。

要綱試案(1994年)編集

1996年の法制審議会答申に至る以前にも、1994年に法務省民事局参事官室は、以下の3つの検討案を「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」として提示している[67][25]。これらの案をもとにさらに議論を経て、1996年の法制審議会答申では、現行制度の枠組みを維持しつつ希望者に別氏を認めるA案に同氏・別氏を対等とする修正を加え、論理的にはA案とB案の中間の立場を採った要綱案が作成された[25][53][74]

なお法務省は2001年に法制審議会答申案が再度見送りになった直後の2002年4月に、A案と同様の、同姓を原則とし、別姓は例外とする「例外的夫婦別姓案」を提示しているが、やはりこの案も見送りとなっている[69]

A案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するものとする(同氏が原則)。ただし、この定めをしないこととすることもできるものとする(別氏夫婦)。
  • 別氏夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻のいずれかの氏を、子が称する氏として定めなければならないものとする。
  • 別氏夫婦は、嬌姻後、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、夫又は妻の氏を称することができるものとする。
B案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称することができるものとする(別氏が原則だが、婚姻の際に特段の合意がされた場合にかぎり、同氏を称することができる)。
  • 婚姻後の別氏夫婦から同氏夫婦ヘの転換、及び、同氏夫婦から別氏夫婦への転換はいずれも認めない。
  • 別氏夫婦の子の氏は、その出生時における父母の協議により定める。
C案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するものとする。
  • 婚姻により氏を改めた夫又は妻は、相手方の同意を得て、婚姻の届出と同時に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を自己の呼称とすることができるものとする。
  • 婚姻前の氏を自己の呼称とする夫又妻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その呼称を廃止することができるものとする。
批評

A案、B案について日本弁護士連合会は、夫婦同氏、別氏のいずれかを原則としているが、同氏夫婦、別氏夫婦に優劣をつけるべきではない、としている[68]。C案については日本弁護士連合会は、氏の二重制を認めるものでわかりづらく、実質的平等を確保できておらず到底採用できるものではない、本来の選択的夫婦別氏制とすら言えない、として批判している[68]。また、子の氏については、日本弁護士連合会はその都度選択可能なB案を支持する、としている[68]。ただし、B案について、日本弁護士連合会は、協議が調わない場合又は協議をすることができない場合には家庭裁判所の審判で定めることを提言している[68]

超党派野党案/公明党案編集

法制審議会答申以来、野党は超党派でほぼ会期ごとに民法改正案を国会に提出し続けているが、審議されないまま廃案と再提出が繰り返されている[75][76][77](「#年表」を参照)。その他公明党も2001年に改正案を単独で提出している[78]民主党が2015年に、社民党日本共産党等と共同で参議院に提出した案は以下のような案である[79][80]。2018年に、立憲民主党国民民主党無所属の会、日本共産党、自由党社民党の5野党1会派が提出した案の内容も同様である[81]公明党が2001年に提出した案も同様の内容である[78]

これらは法制審答申民法改正案とほぼ同じ内容である[69]が、さらに日本弁護士連合会の提言に沿ったものとなっている[68]

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から2年以内に別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができる。
  • 別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称するものとする。
  • ただしその協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができる。

戸籍法改正による選択的夫婦別氏案編集

2018年1月に国に対して提訴された訴訟で、原告は、婚氏続称制度を念頭に、「戸籍上の氏」と「民法上の氏」を分け[注 8]、戸籍法上の届け出をすれば、民法上の旧姓を戸籍上の氏、すなわち本名として「称する」ことができるよう戸籍法を改正すべき、との主張をしている[82][83][84][85][86]。具体的には、戸籍法に以下の条文を加えることで、民法を改正することなく選択的夫婦別姓を実現できる、と原告らは主張している[86]

  • 婚姻により氏を変えた者で婚姻の前に称していた氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届出に記載して、その旨を届け出なければならない

この案に関連しては、2019年に国民民主党代表の玉木雄一郎が、日本人同士が結婚時に夫婦別姓の選択を可能とする戸籍法改正を目指す考えを示している[87]

家裁許可制夫婦別氏案編集

2002年7月16日に発足した、野田聖子自民党一部議員による「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」が提案した案。職場の事情や祖先祭祀の必要など特段の事由がある場合に、家庭裁判所による許可を得て認める、とする案である。議員立法として自民党法務部会に提出されたものの党内合意に至らず国会提出は見送られた[88][89][90][91][92]

この案は以下のようになっている[88][71]

  • 職業生活上の事情、祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を称する必要がある場合において、別氏夫婦となるための家庭裁判所の許可を得ることができる。
  • 夫婦同氏が原則とし、別氏夫婦から同氏夫婦への転換は認める。逆は認めない。
  • 別氏夫婦は、婚姻時に「子が称すべき氏」を定める。
批評

村上まどかは、この案について、強硬な反対論者を説得するための苦肉の案で、現状ではやむをえない、と評している[71][93]。一方、多賀愛子は、「両性の合意」以外に家裁の許可を必要とするのは憲法違反であり、また、職業による差別、家制度の復活などにつながる恐れもある、と批判している[71][94]

その他編集

その他にも以下のようないくつかの案が議論されている。また関連した法案に同姓婚法案がある。

旧姓続称制度(1997年)

自民党・社会党・さきがけ政権時の1997年に自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で検討された案として「旧姓続称制度」[95][69][96]がある。旧姓続称制度は、配偶者の同意を得た上で届け出れば、社会生活上の全ての場面で旧姓を使うことができるようにしようというもの[95][96][97][注 9]

日本弁護士連合会は、この案について、自民党内での議論にとどまっており内容は流動的ながら、「仮に戸籍に旧姓を通称として記載し、公的には旧姓しか使用できないとするのであれば、社会的には選択的夫婦別姓制度と変わらず、なぜ戸籍上の同姓強制に固執するのか疑問」であり、「旧姓使用の範囲を一定範囲に限定するのであれば、個人が社会生活上、2つの姓を持つこととなり、社会的混乱も予想される」として、選択的夫婦別姓制度の導入を求める会長声明を出している[98]

例外的夫婦別姓案(2001年)

2001年に法務省は法制審答申案と同様の案を再提出したものの見送りとなったため、翌2002年4月、法務省は、要綱試案A案と同様の、同姓を原則とし、別姓は例外とする「例外的夫婦別姓案」を提示した。しかしこの案も見送りとなっている[69]

通称使用の法制化案(2002年)

2002年、選択的夫婦別姓に反対する高市早苗は、野田聖子らによる「家裁許可制夫婦別氏案」が自民党内で検討された際に、「対案」として「通称使用の法制化」を主張した[96]。高市のこの案に対しては、2002年当時、当時の法務大臣の森山真弓が、「二つの名前を一人の人が公式に使うとなると、混乱を生じ、犯罪に使われる可能性がある」と否定的な見解を述べた[96]

日本維新の会マニフェスト(2019年)

2019年、日本維新の会は、参議院選挙の公約(マニフェスト)に、選択的夫婦別姓に関連し、「同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら旧姓使用にも一般的な法的効力を」を掲げた[99][100]

同姓婚法案(2019年)との関連

2019年6月3日に立憲民主党、共産党、社民党は日本で初めて同性の当事者間による婚姻を法制化する「民法の一部を改正する法律案」(通称:婚姻平等法案)を衆議院に提出している[101][102]。同法案の提出においては、野党超党派による選択的夫婦別姓法案に対する新旧対照表が示されている[101]

これまでの経緯編集

変遷編集

中世まで編集

平安中期以前編集

」(うぢ、うじ)・「氏名」(うじな)と「」(かばね)があった。例としては「藤原」(氏)、「朝臣」(姓)が挙げられる。夫婦の氏の記録としては、筑前国島郡川辺里戸籍(702年)では、夫婦はすべて別氏である[103]。大宝2年(702年)御野国加毛郡半布里戸籍、同年豊前国仲津郡丁里戸籍、養老5年(721年)下総国葛飾郡大嶋郷戸籍、延喜2年(902年)阿波国板野郡田上郷戸籍等では夫婦同氏と別氏が見られ、寛弘元年(1004年)讃岐国入野郷戸籍・同年国郡未詳戸籍では19夫婦の全てが同氏となっているが、日本には「同姓不婚」の習慣はなく、養老令の戸令にも改姓規定がないため、この同氏は同族婚とする説がある[104]。この時期、女性名には「刀自売(とじめ)」「二子」「定子」「犬子」などの型があった[105]。但し嵯峨天皇期(809-823年)には下の名前の唐風化が行われ、「童名(わらわな)」(幼名)と「諱(いみな)=実名(じつみょう)」(成人名)の区別がなされるようになり、また、男性の実名に「嘉字」(縁起のよい字)と「系字」(輩字)が導入された。系字は同一世代の男性に同じ一字を共有するもので、例としては「正良」「秀良」「業良」といったものが挙げられる。これは父系親族組織内の世代序列を示すものである。女性の実名は「2音節の嘉字+子」が内親王に導入された[106]

平安後期から中世前期編集

氏姓に加え名字が発生。系字は横(同一世代)の共有字であったが、11-12世紀頃に縦(父-子)の「通字(とおりじ)」へと変化した。これは「家」の形成に伴い、家系を示すものとされる[107]。例としては、桓武平氏の本流において「盛」を通字として用いた例などがある。但し藤原摂関家で「忠実-忠通-基実-基通」のように「実」「通」を交互に継承した例も見られる[108]。坂田聡によれば、氏姓は夫婦別氏姓であり名字は夫婦同名字である[109]。但し「北条」の子が「北条」を名乗らない例もあった[110]。名字はその世代限りで用いられ、代々継承される永続的な組織の名(家名)ではなかった[111]。坂田聡によれば、鎌倉時代までは貴族・武士・庶民とも氏(姓)の使用の方が一般的であり、夫婦別氏であった[112]。下の名前は、実名・諱(例:「頼朝」)のほか、仮名(けみょう)・字(あざな)・通称(例:「犬次郎」)を持ち、同一人物が社会関係に応じて両者を使い分けた[71][113]。女性名は「刀自売」型から「鶴女」型へ移り、13世紀に比率が高まる。「二子」型は13世紀までは半分以上を占めるがやがて減少する。また「紀氏女」型が11世紀後半に現れた[105]。男性名は氏(姓)を含む字(例:「源次」)、国名や役職名を用いる字(例:「和泉大夫」、「左衛門」)、童名の字(例:「犬次郎」)、法名(例:「西念」)、その他の字(例:「孫太郎」)があった[109]

中世後期編集

家産家業などを継承する永続的な「家」が成立するとともに夫婦同名字が一般化し、名字が家名となった[114][109]摂関家も夫婦別氏・同名字であった[115]。また父親の字(例:「平三郎」)が長男へ継承され続けたと思われる例が近江国菅浦(すがのうら)の文書(13世紀-16世紀)に多数見られ、そのような人名が家名化したとする説がある[109]。庶民の女性名は「紀氏女」型も「二子」型も姿を消し、「鶴女」のような童名や「兵衛女」のように「男性名+女」の型、「妙賢禅尼」のような法名を名乗った。殊に戦国期以降はかなりの割合が童名型を生涯名乗るようになった[114][109]

江戸期編集

近世(江戸期)になると、「名字」と「姓」の区別が曖昧になり混同されることが多くなるとともに、「名字」は「苗字」と書かれるのが普通になった[109]。同じ人物が複数の異なる名前を名乗ることも多かった[116]。一方、士分以外の者(庶民)は一部を除き氏・苗字の使用が禁止された(1801年(享和元年)の禁令)[117]。妻は生家の氏を名乗り、夫の氏にはならず、夫婦別氏であった[113][118][109][117]

なお、庶民に禁止されていたのは「名乗る」ことで、氏・苗字を持つ庶民もみられた、との説もある[119]。その苗字は必ずしも生涯不変ではなかったともされる[113]。ただし「家名」として通用していたのは苗字ではなく通称(「○左右衛門」や「○兵衛」など)や屋号であったとする説もある[120]。井戸田博史は、庶民の氏には、公称を許された氏と、私称している氏があった、としている[117]。庶民の妻については、単に「女房」とのみ記されることも多く、実態は不明である。氏・苗字を持つ場合には女性は実家の父方のものを用いることが一般的で婚姻によって苗字を変えることはなかった、との説がある[121][注 10]一方で、おそらく庶民の間では夫婦同苗字の方が一般的であったとする説もある[109]。井戸田博史は、役儀等の事由で庶民が氏の公称が許された場合に、氏を名乗れるのは当主を中心とする男子のみで、女性には氏は無縁(別氏)であったとしている[117]

明治維新後編集

明治維新以前、氏を称することができたものは士分以上の者に限られ、国民の94.5%は氏を名乗ることができなかった[71]。これに対し、明治政府は、1870年(明治3年)9月19日、太政官布告を布告。平民に氏使用が許可された[124][71]。さらに、1872年3月9日(明治5年2月1日)には、徴税、徴兵、治安維持などのために国民の現況を把握する目的で、戸籍法(壬申戸籍)が施行された[125][71]。1872年(明治5年)5月7日の太政官布告では、一人一名主義が徹底された。さらに、1872年(明治5年)8月24日の太政官布告で改姓・改名が禁止された。それに続き、1875年(明治8年)2月13日の太政官布告22号では、兵籍取調の必要から苗字の使用が義務化された[124]

夫婦の氏に関しては、夫婦同氏は歴史に反するとし、明治維新以前の士分の「伝統」にしたがって、1876年(明治9年)3月17日の太政官指令15号によって、妻の氏は実家の氏を用いるとされた(夫婦別氏の原則[124][注 11]

1878年、民法について、フランスからジョルジュ・ブスケギュスターヴ・ボアソナードを招聘し起草に当たらせた。フランス民法典(ナポレオン法典)の影響が強い案が起草されたが、民法典論争によって施行されなかった[128]。1880年(明治13年)1月13日の太政官指令では、改名禁止が緩和された。1890年(明治23年)には、民法草案が法律28号として制定される(「旧民法」)も、実施はされなかった[129]

1898年(明治31年)に明治民法が成立。当時まだ編纂段階にあったドイツ民法草案を参考に編纂された[71]。ここで日本の法制上初めて「夫婦同氏」を定める規定が制定された[124]。戸主制度(家父長制)を導入した家制度を構築し、戸籍は家を体現するものと位置づけた上で「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」とされ(明治民法788条)、その上で「戸主及ヒ家族ハ其ノ家ノ氏ヲ称スル」(明治民法746条)、とされた[130][125][73][131][注 12]

戦後編集

改正民法・改正戸籍法の成立編集

1947年(昭和22年)、改正民法が成立[124][12]。夫婦の氏は、婚姻前の夫のものか、妻のものかのいずれかを選ぶことは可能となったものの、夫婦同氏の規定はそのまま残った(民法750条)。夫婦の一方の改氏による夫婦同氏は、届出の際に必須の形式的要件となっている(民法750条、戸籍法74条1項)。この改正民法においては、明治民法における家制度が廃止され、それまでは戸主の同意を必要としていた婚姻も、20歳以上で両性の同意のみがあれば可能となった(日本国憲法第24条)。なお、この民法改正の際には、戸籍の廃止(個人編製への移行)についても議論がなされたが、紙や手数などにかかるコストを理由に戸籍の廃止は見送られた[125]

1948年(昭和23年)、改正戸籍法が施行される。現行戸籍の開始。戸籍は戸主と家族を記載するの登録から、個人の登録へと変わった。ただし戸籍の編成基準が一組の夫婦とその夫婦と氏を同じくする子(戸籍法6条)であることが明記された[133]

1980年代までの動き編集

改正民法は早急に制定されたことから、1954年7月、法務大臣から法制審議会に対し「民法に改正を加える必要があるとすれば、その要綱を示されたい」との諮問がなされ、民法部会が設置され、親族法の改正についての審議が行われた。1955-1959年に公表された「法制審議会民法部会身分法小委員会における親族編の仮決定及び留保事項」では、留保事項のひとつとして、民法750条の夫婦同姓規定に関して「夫婦異姓を認むべきか」が挙げられた[134][73]

1960年代にはいると、選択的夫婦別姓への支持やその立法論に関する学説が出てくるようになる[135]

1975年に参議院に選択的夫婦別姓制度のための民法改正を求める請願が初めて提出される(佐々木静子[136][133]

1976年には、離婚時に妻が婚姻時の氏を保持できず復氏しなければならない民法の規定が、女性の地位向上の観点から見直され、離婚後も婚姻時の氏を保持することを選択可能とする婚氏続称制度が導入された[25][注 13]

1984年には、「夫婦別氏をすすめる会」(現、「夫婦別姓選択制をすすめる会」)が東京で結成され、具体的な夫婦別氏を求める動きがみられるようになった[137]

1985年には日本政府が女性差別撤廃条約を批准。政府としても議論が必要となり、婦人問題企画推進本部(男女平等を推進する政府機関)は、「西暦2000年に向けての新国内行動計画 - 男女共同参画型社会を目指す」の基本的施策(1987年~2000年)において、「社会情勢の変化に対応して婚姻および親子に関する法制の見直しについて検討する」とした[135]

1987年には、養子離縁時の縁氏続称が認められた[138][139]

1988年には、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求め、訴訟を起こしている[140](1993年東京地裁棄却、1998年和解、「#国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟」参照)

1989年、岐阜県各務原市の夫婦が市が別姓の婚姻届を受理しなかったことに対し家裁に対し不服申し立てを行ったものの、却下された(夫婦別姓#1989年申立参照)。同年、法務大臣諮問機関である婦人問題有識者会議において、選択的夫婦別姓問題が取り上げられた[103]

1990年代以降の動き編集

1991年には法制審議会が「民法の婚姻・離婚制度の見直し審議」を開始した[16]。1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申した[16]。しかし、保守系国会議員らの反対・慎重論によって同年5月に国会上程が見送りとなった[141]

1997年にも自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で「旧姓続称制度」が検討されたが見送られた[95][69][96]。また、この頃より、民法を改正し婚姻時に夫婦が同姓か別姓かを選択する「選択的夫婦別姓制度」とする民法改正案が、国会に議員立法により提出されるようになった[135]

その後も、1999年の男女共同参画社会基本法の成立および男女共同参画局の設立により選択的夫婦別姓はその政策の中心的課題と位置づけられ、政策的にさまざまな推進策が展開された[142][注 14]

2001年11月に法務省は選択的夫婦別姓案を再提示したが見送られた。2002年4月には、法務省は原則は同姓で別姓は例外とする「例外的夫婦別姓」案を提示した。しかしこれも意見集約を見ず見送りとなった[69]。同年7月には、自民党内の選択的夫婦別姓制度を求める議員ら(野田聖子ら「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」)が法案の国会提出を模索し、党内反対派に譲歩し、家裁の許可を要件とすることを盛り込んだ例外的夫婦別氏制度を議員立法で自民党法務部会に提出した。しかし党内合意に至らず国会提出は見送られた。以後、自民党内ではほぼ議論はなされないまま今日に至っている[89][90][91][92]

一方、立憲民主党国民民主党、およびそれらの政党の改編前政党である民進党(およびその前身の民主党)や、社民党共産党などは、法制審答申以来、超党派で会期ごとに民法改正案を国会に提出し続けているが、審議されないまま廃案と再提出が繰り返されている[75][76][77]

2010年には、民主党社民党国民新党の連立政権において法案提出について議論がなされ、同年2月には1996年の法制審議会答申に沿った内容の改正案が法務省政策会議で示された[70]。しかし連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出に至らなかった[92][53]

これらの国内の動きの一方で、2003年(平成15年)国際連合女子差別撤廃委員会が、婚姻最低年齢、離婚届後の女性の再婚禁止期間の男女差、非嫡出子の扱いと共に「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な法規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」と日本に勧告した[59]。その後も、同勧告に対し改善が見られないとして、2009年2016年にも再々度、勧告を受けている状況にある[63][64][61]。(「#国連女子差別撤廃委員会の勧告」参照)

また、選択的夫婦別姓をめぐって、多くの訴訟が起こされている。2006年に別姓婚姻届不受理取り消しの申立てがあったものの却下。2011年に国に対し択的夫婦別姓制度導入を求める訴訟が提議。これに対し2015年に最高裁は棄却。しかしその後も、国に対し選択的夫婦別姓制度導入を求める訴訟が4件、2018年1月、5月、6月、8月に次々と提議されている(#選択的夫婦別姓訴訟参照)。

その一方で、2016年には、結婚後に職場で旧姓の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴。同年棄却[33][145]。2017年に和解している[146](「#女性教諭旧姓通称使用訴訟」参照)。

また、2018年以降、地方自治体に選択的夫婦別姓制度の法制化を国に求める意見書の請願を求める動きが広がっており、三重県議会[147]、東京都議会[148]等、多数の地方自治体において相次いで請願が可決されている[149][29][150]

2019年の参議院選挙では、選択的夫婦別姓制度の是非が争点の一つに挙げられた[151][152][153]

1996年法制審議会答申編集

国際連合の1975年の国際婦人年から始まる国際的な女性の権利保障の推進運動や、1985年に日本も批准した女性差別撤廃条約などを受け、1991年、日本は国内の男女平等施策を推進するための国内行動計画を策定するとともに、法制審議会において家族法の見直し作業に着手した[154]

法制審議会の審議は5年にわたって行われ、1992年、1995年の2回の中間報告、1994年の要綱試案の発表などを経て、1996年2月、法務大臣の諮問機関である法制審議会が、家族法の見直しを含む民法改正案要綱を法務大臣に答申した[154]

答申の主な内容は以下の4点である[154]

  • 世界の趨勢に合わせ、婚姻年齢を男女とも18歳に統一
  • 女性のみに課せられている再婚禁止期間の短縮
  • 選択的夫婦別姓の実現[注 15]
  • 婚外子相続分差別の廃止

これらのうち、婚姻年齢の統一は2018年に成立(2022年令和4年)4月1日施行)[155]、再婚禁止期間の短縮は(再婚禁止期間訴訟の最高裁判決により)2015年12月16日に実施[156]、婚外子の相続分差別の廃止は(最高裁判所の違憲判決により)2013年に[157]、それぞれ実現している一方で、2018年時点で選択的夫婦別姓の実現のみ、未達の状況となっている。

選択的夫婦別姓訴訟編集

選択的夫婦別姓制度導入をめぐっては、1989年、2006年に家裁への不服申し立て[134][6]、2011年に国家賠償訴訟が提議され、いずれも訴えは退けられた[158]。しかしその後、2018年1月に戸籍法規定に関する国家賠償訴訟、同年5月に事実婚夫婦による国家賠償訴訟、同年6月に、外国で結婚した日本人別姓夫婦による別姓での婚姻を確認する訴訟、同年8月に再婚同士でそれぞれ連れ子のいる夫婦による国家賠償訴訟、と次々に関連した訴訟が提議されている状況である[159]

1989年申立編集

1989年5月12日、岐阜県各務原市の夫婦が、市が別姓の婚姻届を受理しなかったことは基本的人権の侵害であり、憲法に違反するとして、岐阜家庭裁判所不服申立書を提出した[160]。これに対し、同家裁は同年6月23日「夫婦の同姓は一体感を高める上で役立ち、第三者に夫婦であることを示すためには必要」として、申立てを却下している[134][53][161][162][6][73]

2006年申立編集

2006年にも別姓婚姻届不受理取り消しの申立てがなされ、これに対し東京家裁は同年4月25日、夫婦同氏を定めるかは「立法政策の問題であることは確定した解釈」であるとして、申立てを却下している[6][163]

2011年訴訟編集

2011年(平成23年)2月に、元高校教師らが、夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定が、憲法13条14条1項24条1項及び2項に違反するとして訴えた[32][164][165]。通称「第一次夫婦別姓訴訟[166]

これに対し、2015年(平成27年)12月16日に、最高裁判所大法廷は「名字が改められることでアイデンティティが失われるという見方もあるが、旧姓の通称使用で緩和されており、日本国憲法に違反しない」「我が国に定着した家族の呼称として意義があり、呼称を1つに定めることには合理性が認められる」として、現在の民法規定を合憲とし訴えを棄却した[167][168][169]

ただし、判決において多数意見は、姓の変更で「仕事上の不利益」「アイデンティティーの喪失感」などが生じることを一定程度認め、さらに、裁判長寺田逸郎は補足意見で「人々のつながりが多様化するにつれて、窮屈に受け止める傾向が出てくる」と指摘している[170][171]。その上で、議論されている選択的夫婦別姓制度について「合理性がないと断ずるものではない」と指摘するとともに「この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである」と記し、夫婦別姓を認めるべきかどうかは国会での議論に委ねられるとの見解を示した[172][173]

この裁判においては、15名の裁判官の意見は分かれ、15名のうち、寺田逸郎(裁判官出身)、千葉勝美(裁判官)、大谷剛彦(裁判官)、大橋正春(弁護士)、小貫芳信(検察官)、山本庸幸(行政官)、山崎敏充(裁判官)、池上政幸(検察官)、大谷直人(裁判官)、小池裕(裁判官)の男性裁判官10名が合憲とした一方、女性裁判官の3名全員(鬼丸かおる(弁護士出身)・岡部喜代子民法学者)・桜井龍子労働省出身))及び、弁護士出身の男性裁判官2名(山浦善樹木内道祥)の併せて5名が「違憲である」反対意見を表明した。また、そのうち山浦善樹は、立法の不作為を理由に国の損害賠償責任も認めた[158][174]

2018年1月訴訟編集

2018年1月9日、ソフトウエア開発会社「サイボウズ」社長の青野慶久ら男女4人[注 16]が、戸籍法の規定で、日本人と外国人との結婚では同姓か別姓かを選べるのに、日本人同士の結婚だと選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反するとして、国へ提訴した[34][176][177][178][82][179][180][181][182]。通称「ニュー選択的夫婦別姓訴訟[183]。2019年3月25日に東京地裁において棄却[184][185]。原告は控訴[186]

2018年5月訴訟編集

夫婦別姓の婚姻届が受理されず、法律婚ができないのは違憲だとして、選択的夫婦別姓を求める事実婚当事者のグループ7名が2018年5月10日、国に損害賠償を求め、東京地裁、東京地裁立川支部、広島地裁で提訴した[187][188][189]。通称「第二次夫婦別姓訴訟[190]。これに先立ち、2018年3月に、原告の一部を含む東京都と広島県の事実婚のカップル4組が、別姓の婚姻届が不受理とされたため、東京家裁と同立川支部、広島家裁の3カ所で別姓の婚姻届の受理を求める審判の申し立てを行っている[188][187][191][192][191][192][193][194][195][196][注 17]

この訴訟においては、同姓を選んだカップルは法律婚ができるにもかかわらず、別姓を選んだカップルは法律婚ができない、という状況が「信条」による差別であり、憲法14条違反であるとして、民法だけではなく、民法と戸籍法の双方の違憲性を問う、としている[187][198][195]

また、法律婚のみに与えられている法益権利や法的利益(共同親権相続権、税法上の優遇措置、不妊治療など)が与えられない、夫婦であることの社会的承認も得られないなどの点でも、差別があることを問う他、両性の実質平等が保たれていないことが憲法第24条に違反し、また、国際人権規約である自由権規約女性差別撤廃条約に違反していることも問う、としている[195]

原告は2011年訴訟とは異なるが、弁護団は2011年訴訟と同じ弁護士が中心となって担当している[199]

2019年10月2日、この訴訟のうち東京地裁における事実婚当事者3名による訴訟が棄却された[200]。原告は控訴する方針[201]

2018年6月訴訟編集

2018年6月18日、アメリカ合衆国で法律婚をしたにもかかわらず、日本の戸籍に婚姻が記載されないのは立法に不備があるとして、映画監督の想田和弘と舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子の夫妻が、国を相手取り婚姻関係の確認などを求めて東京地方裁判所に提訴した[202]。通称「夫婦別姓確認訴訟[203]。原告夫妻は、アメリカ合衆国ニューヨーク州に在住の日本人で、1997年にニューヨーク市庁舎で夫婦別氏を選び結婚。海外で結婚する場合は、現地の法律に基づいて行われれば、国内でも婚姻は成立しているとみなされるが、立法上の不備により、現在戸籍上で婚姻関係を公証することができない状態にある、と主張している。そのため、確認請求を求めると同時に、この法の不備が結婚の自由を定めた憲法24条違反に違反するとして、慰謝料合計20万円を求めている[202][204][205]

2018年8月訴訟編集

2018年8月10日、東京都文京区の弁護士と女性が、民法750条の夫婦同氏強制は初婚しか想定しておらず、立法府が選択的夫婦別姓を認める法改正を怠ったことによって精神的苦痛を受けたとして、国を相手取って損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告夫婦双方に元配偶者との間の子(連れ子)がいるが、夫婦同姓を規定する現民法はそのような状況での子どもへの影響等を想定しておらず、選択的夫婦別姓のための法改正が必要、と主張している[30]。これに対し、2019年9月30日、東京地裁は、最高裁大法廷判決以後、「議論の高まりは見られることなどが認められる」としながらも、夫婦同姓の規定が憲法に違反するといえるような事情の変化は認められないなどとして棄却[206][207]。同10月11日、東京高裁に控訴[208]

旧姓通称使用訴訟編集

一方、通称として旧姓を使用する権利を求めた民事裁判として、国立大学教授夫婦別姓通称使用訴訟(1993年東京地裁判決)と、女性教諭通称使用訴訟(2016年東京地裁判決)がある。いずれも地裁にて棄却後、高裁にて和解が成立している(以下参照)。

国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟編集

1988年、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求め、訴訟を起こした[140]1993年に東京地裁は判決で、通称名も法的保護の対象になりうるが[注 18]、同一性を把握する手段として戸籍名の使用は合理性があり、通称名が国民生活に根づいていない、また大学は業績の公表などで通称使用を配慮しており、よって大学側の規制に違法性はないとして訴えを棄却[209][210]。控訴の後、1998年、東京高裁にて旧姓使用を認める和解が成立した[31]。国は研究報告や論文などで通称使用を認め、こうした流れを受けて2001年には、公務員の通称使用が認められた[140]

女性教諭旧姓通称使用訴訟編集

2016年には、結婚後に職場で旧姓の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴[33]。東京地裁は同年に「旧姓を戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまではいえず、職場で戸籍姓の使用を求めることは違法ではない」などとして請求を棄却[145]。その後、控訴審で高裁より和解勧告が出され、2017年に学校側が、時間割などの文書や日常的な呼び方で旧姓の使用を全面的に認める形で和解が成立した[146]

年表編集

年月日 出来事
1876年02月13日 太政官指令、「婦女は結婚してもなお所生の氏(婚姻前の氏)を用いること」(夫婦別氏)が原則とされた[17][211]
1898年07月16日 明治民法制定、家制度の導入。妻は婚姻により夫の家に入り、家の氏を称する。このことにより夫の氏を称する夫婦同氏制に転換することとなった[212]
1948年01月01日 民法改正、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」[12]。家制度は廃止され、夫婦の氏として妻の氏を称する選択肢が可能となったが、夫婦同氏の規定は存続
1955年07月05日 法制審議会民法部会、夫婦異姓を認める案を論議[15]
1959年 パスポート、別名併記を一部認める[213]
1959年06月29日-30日 法制審議会民法部会、夫婦異姓を認むべきか否かの問題はなお検討の必要があるとする[15]
1975年09月26日 選択的夫婦別姓制度のための民法改正を求める初めての請願が参議院に提出される[136][133]
1976年06月15日 民法改正、離婚時の婚氏続称可能に[214][215]
1984年05月25日 国籍法改正、国際結婚の際に外国姓への改姓(同姓)可能に[216]
1985年06月24日 女性差別撤廃条約、日本国批准[217]
1987年09月26日 民法改正、養子離縁時の縁氏続称可能に[138][139]
1988年05月09日 事実婚夫婦、住民票続柄記載差別訴訟、東京地裁(1991年敗訴、2005年最高裁棄却)[218]
1988年11月28日 国立大学女性教授通称使用を求める訴訟、東京地裁(1993年敗訴、1998年東京高裁で和解)[219]
1988年12月 富士ゼロックス、旧姓通称使用実施[35]
1989年01月20日 東京弁護士会が「選択的夫婦別姓採用に関する意見書」を法務省に提出[220]
1989年05月12日 岐阜県各務原市の新婚夫婦、別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立を提出[161]
1989年06月23日 別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立について、岐阜家裁、却下[162]
1991年01月29日 法制審議会、婚姻・離婚制度全般の改正に関する論議を開始[211]
1992年12月01日 法務相民事局参事官室「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」、夫婦同氏制度と夫婦が別氏を称することのできる制度との対比[15]
1993年11月19日 国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟、東京地裁、棄却[221]
1994年07月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」A案B案C案の3案が俎上に[15]
1995年08月26日 法制審議会民法部会、子の姓は婚姻時に統一するA案を軸にまとまる[222]
1995年09月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度の見直し審議に関する中間報告」[26]
1996年01月16日 法制審議会民法部会、「民法改正要綱案」決定[223]
1996年02月26日 法制審議会、民法の一部を改正する法律案要綱[224]を法相に答申。(これより政府案としてこの民法改正案を軸に国会提出を与党内で模索する。)
1996年03月22日 徳島県議会、選択的夫婦別姓に反対する趣旨の意見書を提出[225]
1996年06月18日 長尾立子法務大臣、法案の提出を正式に断念。埼玉県新座市、市職員の旧姓使用を4月に遡って実施[226]
1996年06月20日 茨城県議会、選択的夫婦別姓に反対する趣旨の意見書を提出[225]
1996年07月12日 千葉県議会、選択的夫婦別姓に反対する趣旨の意見書を提出[225]
1996年10月25日 日本弁護士連合会、選択的夫婦別姓制導入並びに非嫡出子差別撤廃の民法改正を求める決議[227]
1997年03月13日 民主党、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15]
1997年03月14日 長崎県議会、選択的夫婦別姓に反対する趣旨の意見書を提出[225]
1997年03月27日 法学者260人「選択的夫婦別姓制度の導入と婚外子相続分の平等化の実現を求めるアピール」。なお、このうち婚外子相続分の平等化については、2013年9月4日、最高裁判所は、相続において婚外子を差別する民法の規定が違憲であるとの判断を下した[228]
1997年06月05日 社民さきがけ、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15]
1997年06月06日 平成会、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15]
1997年09月29日 熊本県議会、選択的夫婦別姓に反対する趣旨の意見書を提出[225]
1998年06月08日 超党派野党(平和・改革、共産、社民、さきがけ)、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75][15]
1998年07月25日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第4回報告、選択制を「引き続き検討」[229]
1999年12月10日 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、衆参両議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75][15]
2000年01月20日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15][15]
2000年10月31日 超党派野党(民主、共産、社民、無所属の会)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75][15]
2001年05月08日 民主党、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15][230]
2001年05月10日 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75][15]
2001年07月03日 千葉県議会、「民法改正法案の採択を求める意見書」を提出[225]
2001年06月20日 公明党、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15][78]
2001年10月01日 国家公務員の旧姓使用が可能に[231][35]
2001年10月11日 内閣府男女共同参画会議基本問題専門調査会、「選択的夫婦別姓制度に関する審議の中間まとめ」発表[231]
2001年11月13日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15]
2001年11月13日 自民党法務部会に法務省「選択的夫婦別氏制」民法改正試案および反対議員作成の通称使用を認める戸籍法改正案が提示[15]
2002年04月10日 自民党法務部会に例外的夫婦別氏制度の法務省試案が提示[15]
2002年07月24日 自民党法務部会に例外的に夫婦の別姓を実現させる会が法案を提示[89][90][91][92][15]
2002年09月13日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第5回報告、選択制「制度の導入に向けて努力」[232]
2003年05月27日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15]
2003年07月08日 女子差別撤廃条約実施状況第4回・第5回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終コメント、「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」[233]
2004年03月11日 自民党、職業上の理由などで必要な場合に家庭裁判所の許可を得て別姓を認める改正案の国会提出を見送る[234][235]
2004年05月14日 超党派野党(民主、共産、社民)、衆参両議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75][15]
2005年03月30日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75][15]
2006年03月20日 パスポートに旧姓を併記し得る基準が緩和され、学者や記者だけでなく、「職場で旧姓使用が認められており、業務により渡航する者」も可能となる[236]
2006年04月25日 別姓婚姻届不受理処分の撤回を求める不服申立て、東京家裁、却下[237][6]
2006年05月31日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[238][75]
2006年06月08日 超党派野党(民主、共産、社民)、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75]
2007年05月18日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[15]
2008年04月22日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[239][75][15]
2008年04月30日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第6回報告、「選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き努めている」[60]
2009年04月24日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[75]
2009年08月07日 女子差別撤廃条約実施状況第6回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終見解、「夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する」[240]
2010年02月19日 法務省政策会議で、選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案が提示[70]
2010年03月24日 岩手県議会、「夫婦別姓制度の導入及び婚外子相続差別の撤廃のための民法の一部改正を求める意見書」を提出[241]
2011年02月14日 男女5人、違憲を争い選択的夫婦別姓を求める国家賠償提訴、東京地裁[242][243]
2011年02月24日 別姓婚姻届3度提出、不受理処分の撤回を求め、却下、東京地裁[244]
2013年05月29日 男女5人、違憲を争い損害賠償請求、棄却、東京地裁[245][246]
2013年09月10日 別姓婚姻届訴訟、却下、最高裁[247][211]
2014年03月28日 男女5人、控訴棄却、東京高裁[248]
2014年06月23日 日本学術会議が、提言「男女共同参画社会の形成に向けた民法改正」において選択的夫婦別姓制度の導入を提言[16][249]
2014年09月05日 第2次安倍改造内閣松島みどり法務大臣は就任直後の会見で、旧姓使用など現実的な運用の改善を検討する意向[250][92]
2015年02月15日 改正商業登記規則が施行され、役員登記において旧姓の併記を行うことが認められた[251]
2015年02月18日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷は、審理を大法廷に回付し、憲法判断される[252]
2015年06月12日 超党派野党(民主、共産、社民、および無ク・無所属議員)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[253][254]
2015年12月16日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所大法廷は、民法の規定を合憲との判断を示し棄却[255]。ただし裁判官15人のうち、5人は違憲とする判断。特に女性裁判官3人は、全員が違憲判断を示した[158][256][257][258][259]
2016年03月07日 国連女性差別撤廃委員会が日本に対し、「過去の勧告が十分に実行されていない」「実際には女性に夫の姓を強制している」として、選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正を求める再度の勧告[63]
2016年05月12日 超党派野党(民進、共産、社民、生活)、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[260][77]
2016年06月03日 東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴[33]
2016年10月11日 東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴した裁判で、東京地裁は棄却(後に和解)[145]
2017年03月17日 東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴した裁判で、和解成立。旧姓使用を認める内容[146]
2018年01月09日 ソフトウエア開発会社「サイボウズ」社長の青野慶久ら男女4人、日本人と外国人との結婚では同姓か別姓かを選べるのに対し日本人同士の結婚だと選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反するとして、国家賠償提訴[34]
2018年03月14日 東京と広島の事実婚のカップル4組が、東京家裁、同立川支部、および広島家裁に別姓の婚姻届の受理を求める審判の申し立て[191][192]
2018年05月10日 東京と広島の事実婚当事者計7名が、東京地裁、同立川支部、および広島地裁に、別姓の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、国家賠償提訴[187][188]
2018年06月14日 超党派野党(立憲、国民、無所属の会、共産、自由、社民)、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[76][261][262]
2018年06月18日 国外で別姓で結婚した、映画監督の想田和弘および妻でプロデューサーの柏木規与子が、夫婦であることの確認を求め、東京地裁において国家賠償提訴[204]
2018年06月19日 超党派野党(立憲、共産、希望の会(自由・社民)、沖縄の風)、参議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[263]
2018年08月10日 東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻が、現民法の夫婦同姓規定が連れ子再婚を想定しておらず問題があるにも関わらず、立法府が選択的夫婦別姓を認める法改正を怠ったとして、東京地裁に国家賠償提訴[30]
2019年03月15日 三重県議会、選択的夫婦別姓の法制化を求める意見書を採択[147]
2019年03月25日 ソフトウエア開発会社「サイボウズ」社長ら男女4人による訴訟、棄却、東京地裁[185]
2019年06月03日 超党派野党(立憲、共産、社民)、衆議院に同性婚を認める民法改正案を提出[101]
2019年06月19日 東京都議会、「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」可決[148]
2019年07月21日 参議院選挙で選択的夫婦別姓が争点の一つに[151][152][153]
2019年09月30日 再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、棄却、東京地裁[207]
2019年10月02日 東京と広島の事実婚当事者計7名による訴訟のうち、東京地裁における事実婚当事者3名による訴訟、棄却、東京地裁[200]

賛否の状況編集

世論調査編集

内閣府による世論調査編集

内閣府は、1996年から約5年ごとに「家族の法制に関する世論調査」を実施し、選択的夫婦別姓制度についての世論調査を行っている[264]。これまで、1996年[265][注 19]、2001年[266][注 20]、2006年[267][注 21]、2012年[268][注 22]、2017年[271]に行われた。

2017年11月-12月に内閣府が行った5回目の「家族の法制に関する世論調査」[271]によれば、選択的夫婦別姓制度の導入に向けて民法を改正すべきかを問うと「改めて(改正して)も構わない」とする賛成が42.5%で、「必要はない」とする反対(29.3%)を上回った[264][272][273][274][注 23]。「旧姓を通称としてどこでも使えるように法律を改めてもよい」は24.4%、「わからない」は3.8%だった[271]。反対の割合は過去最少、賛成の割合は過去最高となった[273]。世代別で見ると、60代までは賛成が上回った[264]。特に、18-39歳では賛成が5割を超えた[272]。一方、70歳以上では反対が52.3%と過半数を占めた[264]。法律が変わって旧姓を名乗ることができるようになれば利用したいかとの問いでは「希望する」が19.8%、「希望しない」が47.4%。別姓を希望する人は一人っ子で最も多く31.7%だった[272]。双方が名字を変えたくないという理由で正式な夫婦となる届け出をしない人がいると思うかとの問いには「いると思う」が67.4%(前回比6.1ポイント増)だった[272]

その他の世論調査編集

政府系機関による調査
  • 1976年の総理府「婦人に関する世論調査」では、「夫婦が別々の姓を名のることを認めた方がよいと思う」が20.3%、「認めない方がよいと思う」が62.1%だった[275]
  • 1977年、内閣総理大臣官房婦人問題担当室による「婦人問題に関する有識者調査」では、賛成43.4%、反対45.8%であった[1]
  • 総理府の「女性に関する世論調査」では、1987年実施の調査で「夫婦別姓をみとめる方がよい」に対し賛成は13%、1990年実施の調査で同設問に対し賛成29.5%だった。1994年の総理府「基本的法制度に関する世論調査」では「選択的夫婦別姓制度」に対し賛成が27.4%であった[103][注 24]
  • 2018年の国立社会保障・人口問題研究所による既婚女性に対する「全国家庭動向調査」では、「夫、妻は別姓であってもよい」に既婚女性の50.5%が賛成だった[277][注 25]
大手メディアによる調査
  • 1994年9月27日の朝日新聞の調査では、賛成58%、反対34%。要綱試案A案には賛成51%だった[1]
  • 2009年の大手新聞3紙の世論調査において、いずれの調査においても選択的夫婦別姓制度への賛成が反対を上回っていた[154]。産経新聞の調査[279]では賛成48%、反対41%、毎日新聞の調査[280]では、賛成50%、反対42%、朝日新聞の10月の調査[281]では、賛成48%、反対41%、同じく朝日新聞の12月の調査[282]では、賛成49%、反対43%だった。
  • 2009年の読売新聞による国会議員意識調査[283]では、賛成43%、反対40%、と賛成議員が反対議員を上回っていた[154]
  • 2014年の毎日新聞の調査では、選択的夫婦別姓制度への賛成は52%、反対は40%だった[284]
  • 2015年の日本経済新聞調査によれば、働く既婚女性の77%、仕事上の旧姓使用者の83%が、選択的夫婦別姓制度に賛成だった[285]
  • 2015年の朝日新聞の調査では、選択的夫婦別姓への賛成が52%、反対が34%だった[286]
  • 2015年のNHKによる「夫婦別姓に関する世論調査」(RDD追跡法)では、夫婦は「同じ名字 名乗るべき」に対し、賛成が45.9%、反対が49.7%、だったが、年代別では、反対が賛成を上回ったのは70代以上のみで、50代以下では賛成が6割を超えた[287][288][289]
  • 2015年の毎日新聞の世論調査では選択的夫婦別姓制度への賛成は51%、反対は36%だった。また、73%が同姓を、13%が別姓を選ぶとした[290][291]
  • 2015年12月の産経新聞社とフジニュースネットワークの合同世論調査で、選択的夫婦別姓制度賛成は51.4%、反対42.3%であり、別姓を選択できる場合に別姓を希望するかについては、13.9%、20代では21.1%が「希望する」だった[292]
  • 2016年の読売新聞世論調査(郵送方式)では、選択的夫婦別姓制度への賛成が38%、反対が61%だった。賛成する理由のトップは「夫婦別姓を認めることは時代の流れだから」の48%、反対する理由のトップは「子どもと親で姓が異なることに違和感があるから」の75%だった[293]
  • 2017年の朝日新聞世論調査では、選択的夫婦別姓制度への賛成が58%で、反対が38%だった。50代以下では賛成が6割を超える一方、70代以上では反対が52%を占めた[294]

各種団体の賛否状況編集

国政政党編集

党として選択的夫婦別姓制度導入を支持・推進しているとされる政党・院内会派
  • 立憲民主党: 2017年の衆議院選挙[295][296]、2019年の参議院選挙[297][298][299]において選択的夫婦別姓の実現を公約として挙げた。2018年には、超党派で民法改正案を衆議院に提出している[261]
  • 公明党: 選択的夫婦別姓制度は「男女共同参画に必要な制度」[92]であり、一貫して導入に努力してきたとする[300][301]。2001年に民法改正案を衆議院に提出[15]。2010年参議院選挙においては、マニフェストに選択的夫婦別姓制度の導入を挙げた[302][12]。一方で、連立政権の足並みの乱れを生じさせたくないため、自民党を積極的に説得していない、との報道(2015年12月)も見られる[303]
    • 2019年に東京都議会において「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」が出され可決された際に都民ファーストの会などとともに賛成している。なお反対した政党は自民党のみだった[148]
    • 2015年に幹事長の井上義久は、進行中の選択的夫婦別姓訴訟について「最高裁の判断を待つことなく、立法府の責任として選択的夫婦別姓を認める法改正をすべき」と述べている[304]。また、2015年の最高裁判決を受け、参議院会長の魚住裕一郎は、選択的夫婦別姓について「国会で議論を巻き起こしたい」と述べた[303]。さらに2016年には代表の山口那津男が「時代に応じた立法政策を決めていくのが政治の責任だ」と述べている[305][306]
  • 国民民主党: 2019年参議院選挙公約において、選択的夫婦別姓実現を挙げている[307][308]。2018年に、超党派で民法改正案を衆議院に提出[261]
    • 2019年1月22日には、党代議士会長の小宮山泰子が、「企業も対応に苦慮しているのではないか」と指摘するとともに、選択的夫婦別姓は与野党を超えて賛成の声が多いにもかかわらず、国会での議論が全く進んでいない現状について、「なんらかの打開策を考えなければならない」として、国民民主党としても取り組んでいくことを表明している[309]。2019年3月25日には、代表の玉木雄一郎が、日本人同士が結婚時に夫婦別姓の選択を可能とする戸籍法改正を目指す考えを示し、「多様な生き方や女性の社会進出を推進する意味で、法改正を検討すべきだ」とした[87]ほか、同年6月6日には、党男女共同参画推進本部長の徳永エリが、「男女共同参画推進本部として参院選でも最重点政策として頑張っていきたい」と表明している[310]
  • 日本共産党: 審議には至っていないものの衆参両院において法案を提出してきた[311]。家族に関する法律上の差別を全面的に改正したい、としている[312][313]。委員長の志位和夫は「本当の意味での両性の平等、個人の尊厳、基本的人権の観点から認めるべきだ」と訴えている[92]
  • 社会民主党: 選択的夫婦別姓に積極的に賛成している[92]。2009年衆議院選挙[314]、2016年参議院選挙[315]、2017年衆議院選挙[316]、2019年参議院選挙[317]等、積極的に選挙公約に導入の実現を盛り込んでいる。2018年、超党派での民法改正案の衆議院への提出にも参加[261]
  • 沖縄の風: 2018年に民法改正案を参議院に超党派で共同提出している[318]
    • 代表の糸数慶子は導入に積極的で、政府世論調査について「結婚改姓をしている女性たちは圧倒的に選択的夫婦別姓を容認している。男女とも反対は60歳以上だが、60歳以上に反対が多いから必要ないということでは、若い世代をないがしろにしていると言われても仕方がない。」とコメントした[319][320]他、この問題は国連人権委員会から勧告されている人権問題である、としている[321]
  • 社会保障を立て直す国民会議: 同会派を含む5野党・会派と市民連合は、その共通政策として「選択的夫婦別姓の実現」を掲げている[322]
  • れいわ新選組: 2019年に、mネットによるアンケート調査に対し、「賛成する」と回答している[323]
    • 代表の山本太郎は、選択的夫婦別姓に「賛成」であるとしている[324][325]ほか、第189回国会法務委員会では「選択的夫婦別姓の導入など民法等の改正を求めることに関する請願」の紹介議員となっている[326]。また、朝日新聞による2019年参議院選挙候補者アンケート調査では、同党の回答のあった全候補者が選択的夫婦別姓に「賛成」と回答した[325][327]
党として選択的夫婦別姓に反対・否定的とされる政党
  • 自由民主党: 2015年時点で、党の姿勢として選択的夫婦別氏制度に「反対」、あるいは積極的でない、と報道されている[92][303][57]。2019年にも選択的夫婦別姓に「後ろ向き」と報道された[328]。議員単位では、賛成議員も反対議員もみられる[329][325][327]。野田聖子が2002年に例外的に夫婦の別姓を実現させる会を立ち上げ選択的夫婦別姓制度の導入を目指したが断念[89][90][91][92]。その後自民党は、野党であった2010年の党公約においては反対を掲げた[330][303][331][注 26]。2012年の政権公約でも、「子どもは両親のどちらかと違う『親子別姓』になる。わが党は民主党の夫婦別姓制度導入法案に反対し、日本の家族の絆を守る。」などとしている[334]。2019年にも、mネットのアンケートに対し、「反対する」と回答した[323]
    • 2019年、東京都議会において「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」が可決された際、反対した政党は自民党のみだったと報道されている。都民ファーストの会、公明党等の賛成で可決された[148]
    • 安倍晋三は2010年に、「夫婦別姓は家族の解体を意味する。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという左翼的かつ共産主義ドグマだ」と述べた[335]。2016年2月29日に衆議院予算委員会で岡田克也からこの発言の真意を質問され、「(民法750条を合憲とした)最高裁判決における指摘や国民的議論の動向を踏まえながら慎重に対応する必要がある」と回答した[336][337]。2019年7月2日には、野党との党首討論において選択的夫婦別姓の是非について聞かれ、「いわば経済成長とは関わりがないというふうに考えています」などと答えた[338][339]。また、同月3日の党首討論においても、「選択的夫婦別姓に賛成の方は挙手を」との質問に対し、出席した党首の中で唯一挙手しなかった[340]
    • 2018年3月、法務大臣(当時)の上川陽子は、政府見解として、内閣府世論調査の結果を受け、「引き続き国民の意見を幅広く聞き、国会の議論の推移をよく注視しながら、慎重に対応を検討していきたい」と述べ、制度の導入には慎重な姿勢を示している[341]
    • 2018年に、外務大臣(当時)の河野太郎は、選択的夫婦別姓問題について、政府に特定の立場はないが社会の一部の関心が高い問題、と述べている[342]
    • 野田聖子は、党内で選択的夫婦別氏が推進されない背景に神社庁(神社本庁)の反対があると述べている[343]。また、野田は、党の女性活躍政策に対して「女性が別姓を名乗れないことによる損失をわかっていない」と批判し[344]立法府が時代に適応した法律を作らないのは立法府の怠慢であるとしている[345]
    • 首相(当時)の小泉純一郎は2004年、石井郁子の質問に対し、夫婦同氏が「男女平等に反する」という意見があるが、民法の規定は、氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねており、男女平等に反しないと答弁した[346]
党としての他の代替案を主張している政党
  • 日本維新の会: 2019年参議院選挙の公約(マニフェスト)において、「同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら旧姓使用にも一般的な法的効力を」を掲げている[99][100]。同年のmネットによる選択的夫婦別姓への賛否についてのアンケートでは、「どちらとも言えない」と回答している[323]
    • 同党発足時の暫定代表だった橋下徹は選択的夫婦別姓制度導入に賛成しており、「認めない政治家は大馬鹿野郎。その筆頭は自民党の一部と日本維新の会。選択的夫婦別姓を否定している政党は消滅した方が良い。」「選択制であり、家族が壊れるという考えの人は同姓にすればよく、誰にも迷惑かけない。」[347]「現在の戸籍制度は廃止あるいは、完全個人戸籍とするべき」[348]としている。橋下は2010年の大阪府議会において、選択的夫婦別姓への反対論として挙げられる「家族のきずな」について、自身も母親と姓が異なるが子どもの立場で悪影響を受けたこともなく、姓と家族のきずなというものを簡単に同一視することは危険だと批判している[349]
党としての賛否が不明な政党・院内会派
過去の政党
  • 自由党: 2018年、超党派での民法改正案の衆議院への提出に参加している[261]
  • 民進党: 民法改正に意欲的であった[351]。前身の民主党も審議には至っていないものの衆参両院において法案を提出してきた[75][352][353][354][253][254][355]。しかし、民主党政権時には連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出には至らなかった[92][356]。民主党から民進党への党名変更時には、党の柱として挙げる「民進党11の提案(共生イレブン)」の中に、選択的夫婦別姓の実現を盛り込んでいる[357]。2016年には、民進党を含む超党派野党4党が選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案を衆議院に提出している[260][77]
  • 希望の党: 2017年の結党会見において細野豪志が、女性も男性も活躍できる社会づくりの一環として、選択的夫婦別姓にも取り組んでいく、と述べた[358]。同年衆議院選挙における公約において、夫婦別姓の容認を加えることを検討していることが報道された[359]。2018年5月に解党。
  • 日本のこころ: 幹事長(当時)の中野正志が選択的夫婦別姓に反対する談話を出すなど、党として反対の立場をとっていた[360]
  • 維新の党: 党分裂前の2014年の時点では「選択的夫婦別姓について反対」を掲げていた[361]。しかし、2015年の党分裂後の賛否は不明と報道された[92]。さらにその後、2016年2月に民主党と共同で選択的夫婦別姓と再婚禁止期間短縮等を柱とする「民法の一部を改正する法律案」を共同議員立法として登録した[362]
  • 国民新党: 2010年に出した政策宣言において、「反対」としていた[12]
  • 新党さきがけ: 選択的夫婦別姓導入のための民法改正案を、1997年から2001年にかけて、2000年を除き毎年提出していた[15]
  • 新進党: 選択的夫婦別姓法案を議員立法で国会に提出している[363]

学術団体編集

選択的夫婦別姓制度導入に賛成・支持
  • 日本学術会議は、選択的夫婦別姓制度の導入および女性の再婚禁止期間の短縮・廃止などを提言している[364]
  • 日本女性学会は夫婦同姓の強制が差別的規定であるとして法改正を要望している[365]
  • 総合女性史学会は、「選択的夫婦別姓(氏)」は家族の多様性を許容し、個人の尊重の上に立つ制度であり、個々の人格権は決して侵害されてはならないとして、現行の民法750条を早急に改正し、「選択的夫婦別姓(氏)」の実現を国会に強く要請している[366]

職能団体編集

選択的夫婦別姓制度導入に賛成・支持
  • 日本弁護士連合会は、選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案を国会で積極的に審議することを求めている[367]
  • 全国労働組合総連合は、夫婦同姓の強制は差別的規定であり、ただちに法改正が必要との事務局長談話を発表している[368]
  • 全国司法書士女性会は、姓名はのれん、看板名、という財産的価値を持ち、婚姻後も業務を継続するためには選択的夫婦別姓制度が必要、としている[369]
  • 全国女性税理士連盟は選択的的夫婦別姓制度導入を要望し、各党に要望をするなどの活動を行っている[370][371]
  • 日本女性法律家協会は、民法750条について、選択的夫婦別姓を盛り込む法改正を求めている[372]

メディア編集

選択的夫婦別姓制度導入に賛同・肯定的
  • 日本経済新聞は、2015年の記事において、多様性の観点から選択的夫婦別姓制度に前向きな姿勢を示している[373]。また、同年12月17日の社説においても選択的夫婦別姓の国民的議論を喚起している[374]。2018年1月11日の社説では、2018年1月のソフトウェア開発会社社長らによる訴訟に関連して、真剣にこの問題に向き合うべきとしている[375]。さらに2019年2月25日の記事においては、海外との比較から日本も本格的な検討が迫られているとしている[376]。2019年6月3日の社説においても、多様な結婚の後押しとなるとしている[377]
  • 朝日新聞は選択的夫婦別姓制度賛成の立場をとっている[378]。2009年10月16日の社説では、政府に法案提出を促し、国会に対し決着をつけるべき、としている[379]。2010年3月4日の社説では、多様な生き方、女性の働きやすい環境、少子化などの観点から、進めるべきとしている[380]。2015年11月7日の社説では「個を大切にし多様な家族を認め合う寛容な社会をめざすべき」「実質的に女性が姓の変更を強いられており正当化できない」とし、「家族の一体感が損なわれるなどを理由とした」反対論は「今の時代にそぐわない」としている[381]。2018年1月16日の社説でも、別姓反対論が荒唐無稽であるとし、(2018年1月の)提訴を機に改めて議論を起こすべきとしている[382]。さらに2018年12月20日の社説では、選択的夫婦別姓を認めない「政治の後進ぶり」を批判している[383]。2019年3月27日の社説においても、ソフトウェア開発会社社長らによる訴訟に対し東京地裁が棄却したことを批判している[384]
  • 毎日新聞は、2009年10月6日の社説で、制度導入に前向きの姿勢で臨むべき、とした[385]。2018年1月6日の社説では、女性の活躍には民法を見直し夫婦別姓を認めることが抜本的な解決策、としている[386]。また、2018年4月23日の社説でも、日本以外に夫婦同姓を義務づける国はなく、旧姓使用の拡大は根本的な解決にはならない、としている[387]
  • 讀賣新聞は、選択的夫婦別姓制度について、「多様な価値観に配慮を」としている[388]ほか、2015年12月16日の選択的夫婦別姓訴訟の最高裁棄却に関して、「最高裁の合憲判断と制度変更の是非とは、必ずしも論点が一致しない」[389]、「家族に関する法制度に関し、議論を深めるべき時にきている」[390]と国民的議論を喚起している。
  • 東京新聞中日新聞は、2012年11月23日の社説で、国連や司法の勧告を受け止め、国会は早急に改正を実現させるべき、としている[391]。2014年11月15日の社説では、姓は人格権の一部であり個人の権利であるとして、民法を改正するのが筋、としている[392]。2015年11月5日の社説でも、選択的夫婦別姓問題は人権問題であり現状は女性差別撤廃条約にも反する、としている[393]。2018年1月11日の社説において、「強硬に反対する人々は明治民法の『家制度』が頭から離れないのではと疑うほど」と反対論者を批判している[394]。2018年2月23日の社説では、選択的夫婦別姓導入に賛成する人の割合が内閣府の調査で過去最高となったことについて「国民の意識変化を映した結果」とし、旧姓使用を認めるだけでは根本的な解決にはならず、人権の課題で働く女性だけの問題ではない、としている[395]。2019年3月26日の社説においても、選択的夫婦別姓について、国会でも戸籍法の矛盾の修正が求められる、としている[396]
  • 日本農業新聞は、同姓でなければ夫婦は破綻しやすい、夫婦間の子どもの成長に影響が出るなどということはなく、夫婦同姓の強要による弊害に目を向け、多様な生き方を認める社会を国民全体で考えるべき、としている[57]
  • 北海道新聞は、2018年1月15日の社説において、「家族のあり方が多様化する中で、別姓を選べる制度の実現は時代の要請」「姓名は人格の象徴であり、時代からも国際的な潮流からも取り残された制度は、見直してしかるべき」としている[397]
  • 陸奥新報は、2019年3月29日の社説で、多様化する家族観に今の日本の法が追い付いていない、としている[398]
  • 河北新報は、2017年11月1日の社説において、通称使用で不利益は解決されず、憲法24条の『個人の尊厳と両性の本質的平等』に立ち返った制度を本格的に議論するべき、と論じている[399]。また、2019年4月7日の社説においても、選択的夫婦別姓を求める訴訟や請願の動きが広まっており、社会や意識の変化に司法や国政が鈍感であってはいけない、としている[400]
  • 千葉日報は、2015年12月21日の社説で、「国は国民的議論を促し、時代や社会環境の変化に即した対応をすべき」としている[401]
  • 神奈川新聞は、2018年1月15日の社説で、「国連女性差別撤廃委員会からも3度勧告を受け、夫婦同姓を定めた民法は明治時代から根強く残る家族制度に依拠し、今や日本以外にはほとんど見られない。」と指摘し、立法府の議論がないことは怠慢だとして批判している[402]
  • 信濃毎日新聞は、2018年1月10日の社説で、「氏名は人格の基礎。姓を変えない選択は、尊厳や人格に関わる権利として尊重されなければならない。」として選択的夫婦別姓制度を支持している[403]。また、2019年3月26日の社説においても、別姓は家族を崩壊させるといった反対論は根拠を欠くとし、家族の多様なあり方を踏まえた制度に改めていくため、立法と司法それぞれが自らの責務を果たさなくてはならない、としている[404]
  • 京都新聞は、2019年4月3日の社説で、選択的夫婦別姓訴訟における原告のソフトウェア開発会社社長らの主張は当然であるとし、家族や生き方の多様性を認め合うために国会や裁判所は責任を果たすべき、としている[405]
  • 神戸新聞は、2018年1月29日の社説で、「1996年に法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を法相に答申したが、保守派の国会議員の抵抗で実現せず棚上げ状態にある。現制度が時代に合っていないのは明らかで見直しの議論を急ぐべき」としている[406]。2019年3月27日の社説でも、結婚で姓を変える、変えないを選べる制度への理解は広がっており、司法が動かずとも国会の怠慢は許されないとしている[407]、2019年7月11日の社説でも、国会の議論が停止していることを批判している[408]
  • 中国新聞は、2018年1月14日の社説において、「夫婦同姓は古来からの伝統とはいえず、世界的に見てもそれを法律で義務付けているのは日本くらい」「多様な選択を認めることは民主的な社会において当然」であるとし、国会に対しても「時代に即した議論」を促している[409]。2019年3月28日の社説では、旧姓通称使用に法的な裏付けのないことを指摘するとともに、時代とともに変化する価値観と向き合い国会も司法も責務を果たすべきであり、国民を巻き込んだ本格的な議論を起こすべき、としている[410]
  • 徳島新聞は、2016年1月16日の社説で、「女性の活躍の推進には選択的夫婦別姓の導入が必要」としている[411]。さらに2018年1月30日の社説でも、「多様な生き方を認め、選択肢を広げる『選択的夫婦別姓』の導入は、時代の要請」としている[412]
  • 愛媛新聞は、2018年1月16日の社説で「夫婦の形や個人の価値観が多様化した今、明治の家制度を色濃く残す規定は実情にそぐわない。伝統と言っても、夫婦同姓はようやく明治31年から。今や日本以外に同種規定を持つ国はほぼなく、どの国も別姓で家族の一体感が損なわれることはない。選択制は『家族は同姓でいたい』と思う人を否定しない。」とし、選択的夫婦別姓制度を支持している[413]。2019年3月27日の社説でも、国会が1996年の法務省の審議会の答申や、国連からの度重なる勧告を受けても放置してきた、とし、社会の家族観は変化し、多様化している。判決を契機として、幅広い国民のニーズに見合った法制度となるよう議論を深めるべき、としている[414]
  • 西日本新聞は、2018年3月4日の社説で、「現在の制度で不利益を被る人がいるのなら、改善していくのは当然。姓を選ぶ自由は基本的人権にも関わる。時代の要請を踏まえた論議を加速する必要がある、」としている[415]
  • 南日本新聞は、2018年2月19日の社説で、直近の内閣府調査では選択的別姓制度導入の賛成派が過去最高となっり、女性の社会進出が進み別姓を望む人も増えたことを指摘し、同姓でも別姓でも希望がかなう社会へ向け、裁判所や国は思いを汲むべき、としている[416]
  • 宮崎日日新聞は、2019年7月23日の社説で、選択的夫婦別姓について、女性議員の拡大とともに、時代に合わなくなった従来の制度の見直しを進めることが必要、としている[417]
  • 沖縄タイムスは、2016年1月4日の社説において、「夫婦同姓を規定する国は日本以外にはなく、世界標準から大きく乖離している」「女性の約96%が改姓している現実は明らかに偏っている」と指摘している[418]。2018年1月13日の社説においても、法律で同姓を規定する国は日本以外になく、別姓を選ぶ自由は、個々の人権が尊重される社会をつくる上で不可欠だ、としている[419]
  • 琉球新報は、2018年1月16日の社説において、強制的同姓にしている国は日本しかなく、不利益を受ける人がいれば、選択の幅を広げるべきで、見直しを始めるときだ、としている[420]
  • 日本の華字紙、日本新華僑報 (日本新華僑通信社)は、2009年9月28日、民主党政策について、「日本の伝統的な家族制度に打撃を与えることになるが、日本人に嫁ぐ中国人女性には福音だ」と報じている[421]
選択的夫婦別姓制度導入に反対・否定的
  • 産経新聞は、2015年の記事で、家族の絆を重んじる立場から別姓に反対する、としている[422]。2009年10月1日の社説では家族の絆を壊しかねないなどとして反対を表明している[423]。2010年4月16日の社説でも、「別姓制度が男女共同参画社会につながるという考え方は安易」などと主張している[424]。2015年12月17日の社説では、「導入されれば、親子が別々の姓になる事態も起きる。」などとして反対を表明している[425]。2015年12月17日の、産経デジタルが運営する産経WESTの「浪速風」では、夫婦同姓は社会に定着してきた、と主張している[426]

政治/社会運動団体編集

選択的夫婦別姓制度導入に賛成・支持
  • 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は、選択的夫婦別姓制度の法制化を求める市民団体[427]。会員制交流サイト(SNS)で同じ思いを抱く人たちがつながり、2018年より活動を始めた[149]。選択的夫婦別姓問題は「イデオロギーの話ではなく、生活上の困りごと」とし、各地方議会に陳情する人の支援を行っているほか、地方議会の議員に勉強会を呼び掛けている[149][428][429]
  • NPO法人の「mネット・民法改正情報ネットワーク」は、選択的夫婦別姓のための民法改正を求めて運動を行っている[430][431]。情報共有を重視し、2001年より情報発信を開始している[211]
  • 国連NGO女性団体の「新日本婦人の会」は、選択的夫婦別姓制度の実現を求めている[432][433]
  • 「日本婦人団体連合会」は選択的夫婦別姓の実現を求めている[434][433]。同団体は女性団体や労働組合女性部など23団体から構成される団体。構成団体参加人数は90万人、としている[434]
  • 「実家の名前を継承したい姉妹の会」は、氏の継承問題の解決のため選択的夫婦別姓を求める運動を行っている[435][436][341]
  • 「夫婦別姓選択制実現協議会」は、「夫婦別姓のままで法律婚ができるように民法を改正してもらう」活動を行っている。顧問に野田聖子[437][438]
  • 「夫婦別姓選択制をすすめる会」は、1984年に発足した、選択的夫婦別姓制度の実現を目指している市民団体[439][440][441]
  • 「選択的夫婦別姓を実現する会・富山」は、2011年夫婦別姓訴訟支援者らでつくられた、選択的夫婦別姓のための民法改正を求める団体[442][443][444]
  • 「別姓訴訟を支える会2018」は、選択的夫婦別姓裁判を支援し、選択的夫婦別姓の早期実現を目指す団体[445][446]
  • 「NPO法人関西選択的夫婦別姓の実現を願う会」は関西地区で選択的夫婦別姓の実現を目指す団体。現制度の不利益に関する情報を積極的に発信するとともに、全国に支部を置き、現制度で困っている人に対する相談業務も行っている。弁護士、司法書士、行政書士による相談業務を行っている[447][448]
  • 「別姓を考える会」は宮城県を中心に活動している、選択的夫婦別姓について考える団体[449][450][451]
選択的夫婦別姓制度導入に反対

宗教団体編集

選択的夫婦別姓制度導入に賛成・肯定的
  • 公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会は、現状の民法において夫婦別姓を認められていないことで多くの女性が不利を強いられ、国際社会からも度々男女の不平等が指摘されていることから、選択的夫婦別姓制度を導入を求め、民法の改正を求める活動を行っている[483][484]
  • 真宗大谷派解放運動推進本部女性室の発行する広報誌『あいあう』では、夫婦別姓訴訟原告によるコラムなどを掲載しているほか、女性室スタッフの本多祐徹は「家族形態が多様化している今日、夫婦別姓の問題はこれからの寺院・教団の姿を問いかける」としている[485]
選択的夫婦別姓制度導入に反対・否定的
  • 宗教法人の神社本庁を母体とする神道政治連盟は、積極的にジェンダーバッシングの運動を行っており[456]、「職業生活上で結婚前の姓を使い続けたいのであれば通称使用で十分」であるとし、通称使用を可能とする関連法の改正を行えば、選択的夫婦別氏制度の導入は不要であると主張し[486]、選択的夫婦別姓反対を国会議員に働きかけてきた、とされる[487]。「祖先の祭祀」については、姓が変わった子孫が行う例は多いとし、「姓の継承とは全く別物」とした上で、選択的夫婦別氏制導入は危険だと主張している[486]。神社本庁は、その機関誌「神社新報」においても反対論を展開している[488][489]
    • 塚田穂高は、同団体と日本会議の関係について、日本会議の顧問5名がのうち3名が神道関係者であり、神社本庁関係者も参画しているということ、日本会議の理念と神社本庁ならびに神道政治連盟の理念に、明確な違いがほとんど見られないことを指摘している[461][460]
    • 1996年の法制審議会で中村敦夫は、神道政治連盟国会議員懇談会に属する議員や大臣が、その懇談会の意向を政策にしたがって選択的夫婦別氏導入に関する法案を論ずることは政教分離に反し憲法違反ではないかと質問し[490]、これに対し臼井日出男国務大臣は、「一般論として申し上げるならば、そうした各宗教団体と宗教団体のカウンターパートである議連、必ずしも考え方が一緒であるということではない、それぞれお互いの意見を交換しながらより理解を深めていく、こういう形になろうかと思います。」と答弁した[490]
    • しんぶん赤旗は、1996年に法制審議会が答申した際、神社本庁や日本遺族会を背景とした自民党議員などから唐突に選択的夫婦別姓反対の声があがった、と報道している[491]
    • 福島みずほによれば、個人的には選択的夫婦別姓に賛成であっても、神道政治連盟の推薦を受けているために賛成することができない自民党若手女性議員がいるとされる[492]
  • 宗教法人の世界平和統一家庭連合(統一教会)は、「猛烈に」ジェンダーバッシングを行っており[456]、選択的夫婦別姓が危険なものであるとしている[493]。同宗教団体を母体とする宗教紙の世界日報は、2010年11月25日の社説で「選択的夫婦別姓はジェンダーフリーを盛り上げるのに利用される危険性がある」[494]、2018年2月19日の社説では「別姓になれば家族が根底から崩れかねない」「(選択的)夫婦別姓を突破口にわが国の伝統的な家族を解体し、『個』社会へ誘導しようとの動きがある」[495]などと主張して導入に反対している。また、関連政治団体に国際勝共連合があり、運動方針の一つとして、「選択的夫婦別姓に潜む共産主義の策動を阻止する」をあげている[496]
    • 鈴木エイトは、同宗教団体と日本会議との関係について、日本会議の前身の日本を守る国民会議の発起人に多数の同団体関係者が入っており、また、統一教会の上層部には日本会議の会員も多く、世日クラブ(統一教会を母体とする宗教紙「世界日報」の読者向けクラブ)にも日本会議関係者が多数いる、としている[497]
  • 宗教法人の新生佛教教団は、特に2000年代前半に男女共同参画に反対する活動を積極的に行っていた[463]。同団体を母体とする宗教紙の日本時事評論が、積極的に男女共同参画に反対する活動を行い、2001年5月18日の号外記事では、選択的夫婦別姓に関して、「家族の解体を狙っている」などと論じている[498]。その後、同紙は、活動の軸を男女共同参画関連の活動よりも原子力発電所推進に置くようになっているともされる[463]が、2018年3月2日の記事においても、家族解体につながるなどとして選択的夫婦別姓に反対している[499]
    • 同教団は、日本会議の構成団体であり[463]、現教団代表の秋本和徳は日本会議の代表委員に名を連ねている[500]
  • 宗教法人幸福の科学を母体とするWeb媒体TheLibertyWebは、選択的夫婦別姓に否定的な記事をたびたび掲載している[501][502]。同宗教団体を母体とする政治団体の幸福実現党の総務会長の矢内筆勝は、2010年に、選択的夫婦別姓法案について、国家解体法案であると主張している[503]
その他の立場の宗教団体
  • 天理教の表統庁に直属する諮問機関である「天理やまと文化会議」は、2004年の出版物において、同教団が世界のどの社会にも文化にも妥当する世界宗教であるとし、夫婦同姓であるべきとか夫婦別姓であるべきという形式にこだわることなく、それぞれの社会や文化の状況に応じて対処してくという姿勢が妥当、としている[504]

賛否の論点編集

人権・多様性に関する議論編集

選択的夫婦別姓(氏)制度に賛成・肯定的 選択的夫婦別姓(氏)制度に反対・否定的
個人の尊重・人格権・自己決定権・アイデンティティー 日本学術会議は、夫婦同氏の強制は人格権の侵害であり、個人の尊厳の尊重と婚姻関係における男女平等を実現するために選択的夫婦別氏制度を導入すべき、としている[16]日本学術会議水野紀子(法学者)は、同姓の強要は、男女における個人の尊厳・両性の平等を定める憲法第14条憲法第24条に抵触する[16][505]、と主張している。日本弁護士連合会は、一方の姓の変更を強要する夫婦同氏制は、憲法第13条で保証された人格権を尊重しているとは言えない、としている[37]。2011年訴訟の原告団も、婚姻に当たり姓の変更を強制する民法750条は、憲法13条が保障する人格権のうちの氏名権を侵害する、と主張した[54]。日本学術会議や二宮周平(法学者)は、民法上でも民法2条の解釈基準と矛盾をきたす、としている[16][506]

佐々木くみ(東北学院大学・法学者)は、民法750条における婚姻時の氏の変更という要件は、憲法第13条人格権としての「氏の変更を強制されない自由」と憲法第24条で保障される「婚姻の自由」の双方の自由を同時に満たすことができず、またそのような要件を課す十分な合理性があるとも認められず、民法750条は憲法第24条に違反する、としている[246][507][508]

宮内義彦オリックス元会長・社長・グループCEO)らは、社会、国のあるべき姿として、現在の制度のように、法的婚姻によって社会生活上の不便を強いたり使い慣れた姓を捨てさせるような強制力を持つ社会は窮屈で非寛容である[509][510]、と主張している。

吉田晋(朝日新聞記者)は、選択的夫婦別姓の問題は、利便性や不利益のみにではなく、姓を人格の象徴と考える人たちの「個人の尊厳」が問われている、としている[511]

山田昌弘(社会学者)は選択肢が広がることはよいと主張[512]。また、反対論は結局、理屈ではなく感情であり、その底にあるのは、社会の同調圧力であると批判した[513]

福岡県弁護士会は、議論されている制度は「選択制」であるから、別氏にすると家庭が崩壊すると思う人は同氏を選択すればよいだけである、としている[514][515]

朝日新聞は社説で、「別姓反対を叫ぶ人たちには、他人への寛容さが欠けている。それは、自分なりの生き方を選ぶ少数者に対する差別や偏見にさえつながりかねない」[516]、と主張している。

林美子(ジャーナリスト)は、夫婦別姓を認めようとしない同一化圧力が気持ち悪い、とする。個人の尊厳やアイデンティティーは大切であり、違う立場や考え方や感じ方の人を認めようとしないのは全体主義への下り坂だ、と選択的夫婦別姓反対論者を批判している[517]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、現状の通称使用では、「青野」と婚姻の氏の併用を余儀なくされることで、人格が分離したような感覚を受け、精神的苦痛が大きいとしている[518]

松浦千誉(拓殖大学教授)は、1976年に、「夫婦は一体ではなく、夫や妻という個人が全面に出てきた時、夫婦別姓は当然のこととして受けれられるだろう。」「現在を女にとって独立の人格の権利・義務の過渡期としてとらえる時、別姓でも同姓でも選べる道を開いておく制度が望ましい」と述べている[519][1]

山田卓生(法学者)は、1984年に、「氏不変の原則と自己決定権から『別姓を原則として改姓したいものは改姓してもよい』とする方がよりスッキリすると思われる」と述べている[520][1]

立石直子(法学者)は、1960年代、1970年代の民法改正を通じて導入された婚氏続称制度、縁氏続称制度と比較したとき、婚氏ならば制限なく、離婚や離縁において縁氏ならば7年以上の実績によりその続称が保障されるのに対し、婚姻前の氏については、少なくとも16年以上の使用実績があるにもかかわらず制度保障がないことは整合性を欠く、としている[139]

稲田朋美(政治家)は、民主党が提出した民法改正案について、婚姻届の提出時に生まれてくる子の姓を決めて提出せねばならず、年齢や健康上の事情により子が授からない場合にも選択させるのは人権侵害だ、と(賛成に転じる以前の)2010年の時点では主張していた[521][注 32]

宮崎哲弥(評論家)は、1996年の著書において、夫婦同姓の強制は人格権侵害というが、親の姓の使用強制(例えば親の離婚や再婚によって親権が変わることで子供の姓が変わることなど)や親による子の命名も同様に人格権の侵害に当たるはず、と主張し、人格権を根拠にするならば姓氏全廃を主張しないとおかしい、と主張している[523]

多様性・多様な価値観

日本学術会議は日本社会は1980年代後半以降、国際的な男女平等の潮流と女性の経済的自立の傾向から、家族観、婚姻観、男女の生き方や役割観に変化があり、社会における男女の働き方、家族形態は多様化し、夫婦同氏制を支 える立法事実は変化している、としている[16]

出口治明ライフネット生命保険会長兼CEO)らは、多様な価値観を認めることが現代の日本では求められている、としている[510][524][57]

宮崎裕子(最高裁判所判事)は、最高裁判所判事として初めて結婚前の旧姓を使い始めたことについて「選択的夫婦別姓なら全く問題ない。価値観が多様化する中、可能な限り選択肢を用意することが非常に重要」としている[525]

佐藤莉乃(公益財団法人せんだい男女共同参画財団)は家族の形が多様になる中、選択的夫婦別姓制度を認め、いろいろな夫婦、家族のあり方を尊重することが大事[526]と主張している。

日本経済新聞は、別姓を求める声はさまざまで、自分の姓に強い愛着を持つ人もいれば、少子化のなか実家の姓を残したい、という人もいる。さらに、仕事に支障が生じるという声が少なくない、選択的夫婦別姓制度は、別姓を強制するものではなく、あくまで希望する人には認めようとするもので、そのようなな多様性を認める発想こそ成熟した社会に必要、と主張している[373]

プライバシー論

井戸田博史(歴史学者)は、婚姻により強制的に氏を変更させられ新たな姓を世間に公表させられることはプライバシー侵害であると主張している[71]

ジョン・C.マーハ(地域研究学者)は、「夫婦同姓は人権問題にもなるだろう。強制的に世間に対して自分は既婚である、離婚した、再婚したということを公表させられることで、女性のプライバシー権が侵害されるからである。」としている[527]

西日本新聞は、「姓がころころ変わるのは、親しくない人にまで離婚や再婚を宣言しているようで、変えたくない」ために事実婚を選択した例を紹介している[528]

2018年1月に選択的夫婦別姓を認めない戸籍法を国に訴えた裁判で原告は、夫婦別氏制度を認めない現行法はプライバシー権を侵害している、と主張している。登記制度や登録制度、裁判の判決文のような公の文書において、氏の変更の記載がされることで、当該人物が婚姻婚姻状態にあることが公にされることは、プライバシー権の侵害となる、としている[529]

平等・差別論

民法の規定は、夫又は妻の氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねているものの、実際には妻の側が改氏する割合が全体の96%[530][注 33]といわれており、日本学術会議などは、これは女性の間接差別に当たり男女平等に反する、と主張している[16][530][154][54]林陽子(国連女子差別撤廃委員会委員長)も、夫婦の98%[71](2015年の報道では96%[530])において女性が改姓することは、女性の間接差別にあたる[531]、と主張している。

選択的夫婦別姓を求める2018年5月訴訟において原告は、夫婦同姓を望むか、別姓を望むかは、個人の生き方に関するものであり、「信条」によって差別的取り扱いをすることは、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する、と主張している[532]。さらに、2016年には約96%の夫婦において、妻が改姓しており、夫婦間の「実質的な平等」は保たれていない。これは、憲法24条に定めた「婚姻の自由」に違反する、とも主張している[532]

村上春樹(作家)は、「結婚したからどちらかが姓を変えなくちゃならないというのは、憲法に保障された男女同権とあきらかに矛盾することです。そんなの不公平」と述べている[533]

二宮周平(法学者)は、国際結婚では現在の制度でも夫婦別姓が可能であるが、日本国民同士の婚姻で夫婦別姓が認められないのは不公平である、と主張している[154][534]

日本学術会議は、国民の意識が変化しつつあり、別氏が選択でないため事実婚で我慢せざるを得ず婚姻の自由が侵害されている人たちにも平等に婚姻の権利を与える必要がある[16]、と主張している。

大塚玲子(ジャーナリスト)は、離婚時に離婚前の姓と旧姓を選べるのに、結婚時に旧姓を選べないのはおかしい[41]、とする。

土堤内昭雄(日本フィランソロピー協会シニアフェロー)は、同性婚などの結婚観が多様な広がりがある現代において、法律による同姓規定が問われるようになっているとし、同姓をアイデンティティと感じられる夫婦は良いが、氏にアイデンティティを感じている人同士で一方が改姓しなければならない場合は、人権侵害にあたる可能性があるとしている[535]

國重徹(政治家・弁護士)は、近年の男女の命名の変化で男女で同じ名前をつけることも増えてきており、夫婦で同姓同名は紛らわしいにもかかわらずそれを避けたいと思ったカップルに夫婦同氏を強制する現制度は、酷で不合理な制度である、としている[536]

久保利英明(弁護士)は「別姓がだめなら、仮に亀井静香という人がいて、荒川静香という人と結婚したらどうする」と述べている[537]

秦郁彦(現代史家)は、夫婦の96.1%が夫の姓を選んでいることについて、この数字には養子による改姓が除外されており、もし改姓したくない女性が相手に改姓をお願いすれば受け入れる男性も多いのではないか、と主張している[378]

稲田朋美(政治家)は、選択的夫婦別姓運動は「一部の革新的左翼運動、秩序破壊運動」に利用されている、と(賛成に転じる以前の)2010年の時点では主張[521]するとともに、「女性蔑視だとか女性を家庭に閉じ込めておこうとする古い考えの持ち主」と批難されることを恐れ「反対が言いにくい空気がある」ことが厄介だ、と主張していた[521][注 34]

社会システム・コストに関する議論編集

選択的夫婦別姓(氏)制度に賛成・肯定的 選択的夫婦別姓(氏)制度に反対・否定的
社会的損失・経済的損失・コスト・利便性 江上敏哲(情報学者)らは、職業上、氏の変更が業績の連続性や信用、キャリアにとって損害となる場合もある、と主張している[538][57][40][42]

井戸田博史(歴史学者)等は、現在の制度において、長年月、社会生活を行ってきた者が、その姓を変えることは、多大の社会的損失[71][154][539]ならびに個人的損失[540][541][542]をもたらす、とする。氏の変更の際の様々な手続きは面倒でコストがかかる(朝日新聞[540])、などの指摘もある。三浦義隆(弁護士)は、姓は変わらない方が便利である、とする[543]

宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)は、現在の制度において、社会で活躍している女性などが結婚によってそれまで通用していた姓を変更すると、周りに混乱を起こしてしまうことがある、と述べる[509]

奥野正寛(経済学者)は、結婚しても旧姓を選択できれば、女性の国際的な活躍の場を広げられるとする[544]

旧姓を用いていた期間は晩婚化によって以前よりも長くなっており、さらに共働き家庭も増えており、そのような損失はより大きくなっている[545][546]。1997年にはすでに、共働き世帯の数が専業主婦世帯の数よりも多くなっており[540]、2014年時点では共働き世帯が1077万世帯、男性雇用者と専業主婦からなる世帯は720万世帯、と共働き世帯が大幅に専業主婦世帯を上回っている[547][306]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、ビジネスにおいて名前はブランドであり、変えると、今まで積み上げてきたものをリセットしなければならず、経済的にも損失である、と述べている[541]

安里睦子(ナンポー代表取締役社長)は、制度を変えない限り「女性で役員や経営者になる人ほど、ビジネスの場で壁にぶつかる」としている[548]

小川淳子(ゴルフライター)は、プロアスリートにとっても、改姓した場合、旧姓を使用する・しないにかかわらずデメリットがあるとしている[549]

八幡彩子(熊本大教授・教育学)は、名刺、戸籍名だけでは結婚前と同一人物の論文だと理解してもらえず、使い分けは煩雑、と述べる[550]

岩田規久男(経済学者)は、夫婦別氏を選択できるようになることによって、ほかの人が不利益をこうむることはない、と主張している[551]

牟田和恵(大阪大学)は、現実の不便や苦労を感じなくても良い人々が反対するのはおかしい、と主張している[552]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、選択的夫婦別姓制度の導入はパレート改善的であり、自由主義的社会制度設計の基本概念にかかわるもので、自由至上主義者、社会民主主義者などの立場に関係なく支持できるものだとしている[132]

串田誠一(政治家)は、「夫婦が同姓同名だった場合、不動産登記簿謄本はどうなるのか。強制執行したときに、夫のものだと思ったら妻のものだったということもあり、家庭内の問題ではなく、社会的な混乱」と指摘した[553]

黒岩幸子(岩手県立大教授・外国語教育学者)は、女性の自立や男女平等といったことではなく、人生の途中で姓が変わるのは不便であり、単に選択的夫婦別姓の方が合理的、としている[554]

八木秀次日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、職業上の不便も各業界や組織・団体、あるいは個別法規の改正で足り、民法改正の必要性とするには足りない[555]、と主張している。
旧姓通称使用をめぐる問題

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、「旧姓との使い分けに日々無駄なコストを払うのは社会全体にとっても非効率。法的根拠を与えればそれだけで済む」と主張する[181]。青野は、国家にも不利益とする。「マイナンバーカード等に旧姓を併記できるようにする」ためのシステム改修に100億円の予算を取るという総務省発表について、戸籍法上の不備があるために、国民が税金として納付した公金を100億円も支出せざるを得なくなった事態は国家的損失としか表現できない、としている[518]。また、青野は「サイボウズ社の契約を結ぶ時、必ず法務部に確認をして、通称名である「青野」か、婚姻の姓で署名すべきか区別した上で、契約書作成をする必要がある。このタイムラグが迅速な経済活動が求められる株式会社において大きなロス」とする[518]

稲田朋美(政治家)は、2018年に、「通称使用で2つの姓を用いるのは混乱を招く」と指摘している[522]

冷泉彰彦(作家)は、パスポートの旧姓併記について、トラブルがおきないように運用するのは困難であり、選択的夫婦別姓を導入するのが現実的、と指摘している[556]

関口礼子(元図書館情報大学教授・旧姓通称使用訴訟原告)は、旧姓通称使用について、「根本的に、女性を一人の人間として認めるというものではない。中途半端な修正でお茶を濁すというものでしかない」とし、「これでは、優秀な女性たちが海外に出てしまうか、結婚しようとしないかで、日本の将来にかかわってくるのが目にみえている」とする[140]

森沢恭子(政治家)は、旧姓では場合によっては選挙の立候補ができないなどハードルがある、としている[557]

日本会議は、結婚、改姓後の社会生活上の不利益は、旧姓使用を拡大していくことで解消できる、と主張している[140]

少子化問題 山田昌弘(社会学者)は、家名存続のために選択的夫婦別姓を求める声も多いことからもわかるように、夫婦同姓強制は婚姻の障害になっており、少子化の一因となっていると指摘している[558]

板本洋子(全国地域結婚支援センター代表)は、婚姻率が下がっていることが少子化の大きな原因であり、選択的夫婦別姓を認めることは婚姻率を高める可能性が高く、少子化対策として非常に有効な施策であると考えられ、特に農村などでは特に跡取り男女の未婚者も多く夫婦同姓の規定は結婚の障害となっている、とする[559]

小笠原泰明治大学教授)、渡辺智之(一橋大学教授)は、出生率を改善するには、選択的夫婦別姓制度すら認めないような家族観は抜本的に見直す必要があると主張している[560]

冷泉彰彦(作家)は、夫婦別姓が必要な理由の一つとして「『嫁入りして家長の姓に合わせる』という価値観が男尊女卑につながり、結果として家事や育児の共同分担が遅れ、非婚少子化を招いているという深刻な問題に重なっている」ことを挙げている[561]

夏野剛ドワンゴ代表取締役社長)は、夫婦別姓を実現し、子育てのセーフティネットを手厚くすることで出生率の2が見えてくる、と主張している[562]

勝間和代(評論家・株式会社監査と分析取締役)は、少子化を食い止めるには、夫婦別姓選択制を含む少子化対策や男女共同参画社会の推進に役たちそうなものはすべて実施することが基本、としている[563]

伝統・家族制度に関する議論編集

選択的夫婦別姓(氏)制度に賛成・肯定的 選択的夫婦別姓(氏)制度に反対・否定的
伝統 日本学術会議は、日本の伝統文化ではなく、明治民法において家制度が確立した結果生じたもの、としている[16]

千田有紀(武蔵大教授・現代社会論)は、「明治以降の夫婦同姓が家族本来のかたち、という考え自体が『日本の伝統』と呼べるのかは疑問」だとし、「別姓を認めると家族の一体感が損なわれる」という反対論に根拠はないとしている[564]

出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)は、夫が妻のもとに通っていた妻問婚であった平安時代などを想起すれば日本も夫婦別姓の国だったことがすぐにわかる、とした上で、経済協力開発機構(OECD)に加盟している世界の先進国で法律婚の条件に同姓であることを強要している国が日本のみであることを指摘している[510]

野田聖子(政治家)は、夫婦別姓の歴史は明治時代以降のものであり、郵便局の歴史と同じである、とし、その郵便局も民営化という改革がなされたのに、明治時代の役人が決めた夫婦同姓を日本の伝統だと言い続ける保守の政治家には違和感を覚える、としている[565]

山田昌弘(社会学者)は、夫婦別姓が日本の伝統で、現在の夫婦同姓制度は、明治政府が西洋化政策の一環として法律で強制したものであるとし、多様性を認めるべきであると主張している[566][567]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、古いものを何も考えずに残そうという惰性が「伝統」ではない、とし、また、選択的夫婦別姓制度導入は同姓か別姓かを「選べるようにしよう」という動きであり、同姓の文化も残る上に別姓という新しい文化もできる、その並存こそが次世代の人たちにとっての「伝統」となっていく、と主張している[568]

吉田信一(法学者)はたとえ僅か100年程度の歴史しかない夫婦同氏を日本の伝統であると仮に認めたとしても、「伝統の強制」はするべきではない[13]、と主張している。

田中優子法政大学総長)は江戸時代の武家は夫婦別姓だったので同姓という選択肢はなく、今は別姓という選択肢がないが、選択肢がある方がよいと主張している[569]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、「夫婦同姓(同氏)」が法制化したのは、改正民法が公布された明治31年以降であり、これは当時のドイツ(ドイツ帝国)をモデルにしたものと考えられており日本の伝統とは言えない。また、女性の職業人が大多数となった現代には、何が伝統であろうと個人の選好を尊重しない制度の継続は全く合理的でない、としている[132]

産経新聞は、「同姓がもたらす家族の一体感」は、日本の伝統・文化である、と主張している[426]
家名祭祀 阪井裕一郎(福岡県立大学)は、「家族の継承」を理由に別姓の法制化の実現を願う「保守層」も多く、一方逆に別姓反対を掲げるフェミニストもおり、反対派の多くがジェンダー運動への反対から選択的夫婦別姓を批判しているのは的外れだと指摘している[570]

日本農業新聞は、例えば長男長女が結婚した場合、選択的夫婦別姓制度導入により双方のを守る選択肢が従来より増える可能性もあると指摘している[57]

祭祀の主宰やおの継承は別姓でも可能である。「○○家の墓」は普遍的なものではないし、「○○家の墓」には「○○」以外の氏の人の遺骨を納めてはいけないという規制はない。また、少子化のため、一人っ子同士の結婚が増えており、別姓問題に関係なく、自由な方法が工夫されつつある(日本弁護士連合会[37])。

「実家の名前を継承したい姉妹の会」は、氏の継承問題の解決のために選択的夫婦別姓を求める運動を行っている[435][436]

戸籍制度 阪井裕一郎(福岡県立大学)は、選択的夫婦別姓制度の導入を希望する人には、「家名の継承のため」に同制度を求めるグループ、「法律婚の中で別姓の選択をすること」を求め戸籍については問題にしていないグループ、戸籍の廃止と同制度を求めるグループがある、としている。ただし、戸籍制度の廃止を求める人の中には、逆に法律婚自体に批判的で選択的夫婦別姓に批判的なグループも存在する、としている[570]

橋下徹(政治家・弁護士)は、現在の戸籍制度は廃止あるいは、完全個人戸籍とするべき、とし、マイナンバー制度などを用いれば、しっかりした制度を構築することが可能、としている。あるいはその次善策として、現戸籍制度を維持しつつ、夫婦別姓(氏)にしたときだけ個人単独戸籍とすることも可能、としている。反対派が「戸籍に一緒に入ることで家族の一体性が確保できる」と主張するのであれば、外国人にも適用するよう主張するべきで、反対派は論理が破綻している、としている[348]

木村草太(法学者)は、「現在の戸籍は、『夫婦同一戸籍原則』と、『同一戸籍同氏原則』の2原則に基づき編さんされているが、外国人にはこれが適用されていないことからもわかるように、法律婚の効果を享受するための必須な原則ではない。日本人同士の婚姻でも、夫婦別々に単独戸籍を作ることは容易なはず。」としている[571]

大前研一(経営コンサルタント)は、選択的夫婦別姓制度を求め国を訴えたサイボウズ社長青野慶久らの、日本人と外国人との結婚では同姓か別姓かを選択できるのに日本人同士の結婚だと選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反するとの主張に賛同するとともに、その本質には、社会的な不平等を生んでいる「戸籍制度」がある、としている。「できちゃった婚」や人工妊娠中絶が世界の中で日本で多いのは、この男性中心の「家族集団単位」で把握するシステムである戸籍制度が理由だとして批判している[572]

松田澄子(山形県立米沢女子短期大学)は、日本が戸籍制度を輸出した台湾韓国では現在別姓となっており、別姓制度は導入可能だとし、別姓を選んだ夫婦別々の戸籍を作ればよいと主張している[573]。また、松田は、完全夫婦別姓論者の代表として佐藤文明をあげ、夫婦別姓を求めるのであれば、戸籍制度を廃止して個人の身分登録制とし、「家」ごとの登録を崩すことで、女性だけではなく在日外国人や非嫡出子も含めた社会的弱者への差別の根源をなくすべきという主張を紹介している[573]

小島慶子(エッセイスト)は、現在の戸籍制度は、非婚化が進みパートナーシップや生き方が多様化した今の日本ではもう無理があるのでは、と述べている[574]

新見正則(医学者)は、家族のあり方もいろいろであってよく、選択的夫婦別姓制度をあえて否定する理由はない、個人番号があれば姓に関係なく個人の特定が可能であるため、「結婚したら全く新しい姓を名乗るようなシステム」でも良いのではないかと述べている[575]

大藪順子(フォトジャーナリスト、元全米性暴力調査センター名誉役員)も、マイナンバー制度は、それによって全ての人が登録されることで戸籍制度は必要なくなり、選択的夫婦別姓制度を導入する好機である、と主張している[576]

阪井裕一郎(福岡県立大学)は、選択的夫婦別姓に反対・批判的な人には、戸籍制度も問題視せず(あるいは堅持を主張し)「夫婦同姓原則」を原理主義的に主張するグループと、戸籍制度の廃止を目指し法律婚自体に批判的なグループ(選択的夫婦別姓法制化にも批判的)、の二つの異なるグループがある、とする[570]

秦郁彦(現代史家)は、戸籍制度を持たない国と夫婦の姓に関する仕組みを比較することはできない、と主張している[378]

久武綾子(歴史学者)は1989年の論考において、日本の氏は戸籍と密接な関係にあるため、簡単に選択制は導入できないし、夫婦同姓も別姓も文化であり、国によって違いがあってもよいし、十分な議論がなされておらず時期尚早、と主張していた[573]

家族のあり方に関する議論編集

法務委員会調査室の内田亜也子は、選択的夫婦別姓に対する賛成論と反対論は、伝統的家族モデルの維持に関する議論において大きく対立している、とする[15]

選択的夫婦別姓(氏)制度に賛成・肯定的 選択的夫婦別姓(氏)制度に反対・否定的
家族観 多くの選択的夫婦別姓制度賛成論において、日本の「家族の一体感が損なわれるなどを理由とした」反対論は、時代遅れ、との主張が見られる[47][577][566][578][579][580][581][582][583]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、反対論でよく見られる「選択的別姓が家族を崩壊させる」という主張について、理論的にも選択的夫婦別姓は離婚率への影響もなく、実際選択的別姓を導入した国で、導入後その理由で離婚率が上がったという実証例もなく、全く根拠がないもの、としている[132]

琉球新報は社説において、家族の絆が壊れるなどとの指摘に根拠はなく、自分の姓を大切にし事実婚を選んだ人の家族に一体感がないと決めつけるのは失礼である、と主張している[584]

井戸田博史(歴史学者)は、現在の制度では夫の氏を婚氏とする(夫婦同姓の98%[71]、2015年の報道では96%[530])ことは、夫の「家」に入ることになり、「嫁」と意識されることに結びつき、結婚する女性にとっては、姓の変更が男性への従属を意味するように感じられる、と主張している(井戸田博史[71]、奈良新聞[585])。

青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)は、夫婦別姓が進めば、固定したまま長く続いてきてしまった「男女の役割分担観」や「日本の家庭こうあるべき」みたいなのが、いろいろあるようになってよい、と述べる[306]

師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)は、「日本の強制的な同姓制度で無理やり繋ぎ止められた家族が幸せとは思えない」として、家族の絆を重視するならば導入を検討するべきだ、としている[586]

夫婦同姓制度とは家父長制度父権制であり、あるいはそれに準じる意識がDVの原因となっているとの指摘がある(R.E. Dobash[587],K. Yllo[588],[589],松島京[590])。

水無田気流(社会学者)は、選択的夫婦別姓は、同姓を選択したい夫婦はこれまで通り同姓を選択し得る以上、「家族を壊す」との批判には当たらない、と主張している。選択的夫婦別姓が導入されても恐らく多数派は選択しないと考えられるが、切実に必要とする人たちがいることは事実であり、「他人の生き方」まで拘束したいという意見はおかしいのではないか、形骸化した「理念としての家族像」ではなく生きた現実の家族生活を見るべき、と述べている[591]

榊原富士子(弁護士)によれば、反対論に民法750条の立法目的が「家族の一体感の醸成」であったなどという主張が見られることがあるが、東京地方裁判所は平成25年の判決において、そのような主張は明確に退け、立法時の資料に忠実に同姓を強制する制度が「婚姻制度に必要不可欠のものであるとも、婚姻の本質に起因するものであるとも説明されていない」と認定している[592][593]

稲田朋美(政治家)は、2018年に、「高齢者同士の結婚も多い」と指摘している[522]

内田亜也子(法務委員会調査室)は、「選択的夫婦別姓は伝統的な家族モデル、親族間関係、家系、慣習(墓、介護問題等)を崩壊させる」といった反対意見がある、としている[15]

百地章(日本会議理事)は、国際規約(10条1項)で国による家族保護が定められている、と主張し、選択的夫婦別姓制度がそれに逆行する、と主張している[594]。また、百地は、現在の夫婦同姓制は「家族を保護」しようとした憲法の精神にふさわしい、などとも主張している[594]。また、百地は、夫婦別姓を導入すると容易に家系をたどれなくなり、「祖先を敬うという日本人の道徳観に悪影響を与える可能性」もある、とも主張している[595]

八木秀次日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、選択的夫婦別姓を認めると、姓は家族の呼称とは呼べなくなるが、これは同姓を選んだ家族にも及ぶため、一国の制度のあり方として国民全員が議論するべき[596][555]、と主張している。

日本会議は、「夫婦同姓制度は『家族』を表すファミリーネームとしての意義がある」と主張し、夫婦同姓・親子同姓の原則を維持すべきだ」などとしている[140]

高橋史朗親学推進協会会長・日本会議政策委員)は、選択的夫婦別姓が家族の絆を崩壊させるとして反対している[481]

神道政治連盟のメディア、神政連Web Newsによれば、森隆夫(教育学者・親学推進協会特別委員)は、夫婦が別姓になれば、家族のきずなが切れたり弱まる、親と異なる姓がトラウマを招く、子ども同士で親と別の姓であることでいじめに発展する危険性がある、孤独感が増すといった問題点がある、と主張している[486]

加藤彰彦(明治大学教授)は、「正論」誌上で、選択的夫婦別姓制度は、親族関係を調整する慣習法の破壊であり、祖父母という子育ての重要なサポート源を失わせ、出生率を低下させる可能性が高い、などと主張している[597]

選択的夫婦別姓に反対する日本政策研究センターの機関誌「明日への選択」によれば、石原輝(弁護士)は、反対する理由として、最小単位の社会集団は夫婦であるべき、と主張している(1995年[598])。

宗教法人の新生佛教教団を母体とする宗教紙の日本時事評論は、選択的夫婦別姓は「離婚奨励」「結婚制度否定」であると主張し、「家族崩壊」につながり「薬物依存症」を増やし犯罪も誘発し社会荒廃を招く、などと主張している[499]

子に関する議論

木村草太(憲法学者)は、民法の同姓規定が、別姓希望カップルやその子どもを法律婚から排除し、家族の一体感にも子どもの利益にもマイナスの影響を与えている、としている[418]

山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、反対論でよく見られる「両親が別姓だと子どもがいじめにあう」といった意見について、そのようないじめは「他者の自由への不寛容による心理コスト」が原因であり、そのために同姓を強制するのは本末転倒であり、禁止するべきなのはいじめや差別行為の方である、と指摘している[132]

本田和子(児童学者)は、子供への悪影響は不寛容な社会の風潮が原因であり、意識革命によって画一志向を払拭すべきだと主張している[15]

内田亜也子(法務委員会調査室)は、別氏制が法制度化され社会に周知されれば偏見に基づく「いじめ」等もなくなるとの意見がある[15]、とする。

大塚玲子(ジャーナリスト)は、実際に事実婚夫婦の子供にインタビューを行い、その家族は仲が良かったこと、(反対論でよく言われるような)子供がかわいそう、といったことはなかったこと、子供としても選択的夫婦別姓の早期導入を望んでいることを紹介した上で、社会全体が「多様な価値観」を認めるようになれば楽になる人や、力を発揮できる人が増えていく、としている[599]

秦郁彦(現代史家)は、選択的夫婦別姓の問題は親子別姓となる点であり、子の姓を決める名案が存在せず、しわ寄せは子どもにいく、と主張している[378][378]

阿比留瑠比(産経新聞記者)は、選択的夫婦別姓では、別姓を選択した夫婦に子供が生まれた場合、子供は必ず片方の親と別姓になり、夫婦のあり方や親の自由だけの問題ではなく子供の人権にも影響を及ぼす、と主張している[600]

八木秀次(日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、選択的夫婦別姓制度の導入により、夫婦の間に生まれた子供の姓(氏)を夫と妻のどちらの姓にするのか、どの時点で決めるのか、複数生まれた場合はどうするのか、などの問題が生じてくる[555]、と主張している。

百地章(日本会議理事)は、選択制別氏制度導入については、親子別姓をもたらし、「親子の一体感の希薄化や子供の不安感などが生じ、成育に支障を来す」と家族の崩壊につながる、と主張している[594][595]

山口意友玉川大学教授)は、2007年の著書で、夫婦別姓においては、夫婦間で子供を自身の姓にしたいとの争いが起きるなどと主張している。山口は、子供に成年後自ら改姓する選択権を与えるとしたとしてもその選択をさせるのは残酷であるなどと主張している[601]

同性婚との関係

鈴木賢(法学者)は、同性婚について、同性カップルへの法的保障を考えれば同性同士の法律婚も認めていくべき、とし、その上で、実際に同性間での婚姻を認めるとなった場合には、婚姻時にそのどちらかが姓を変えることはおかしいとの声が上がると考えられるため、その場合には異性間の婚姻においても夫婦同姓の規定の改定は避けては通れない、としている[602]

現在の情勢・状況に関する議論編集

選択的夫婦別姓(氏)制度に賛成・肯定的 選択的夫婦別姓(氏)制度に反対・否定的
世論に関する議論 村木厚子(元事務次官)は、2017年の内閣府による世論調査について、夫婦別姓を認めない現行制度について法律改正容認派は、70歳以上でこそ5割を切るものの、60代では6割、50代以下では8割を超え、多くの世代で法改正を認める声が多数である、と指摘している。そのうえで法改正の内容としては、いずれの世代でも、選択的夫婦別姓容認派が旧姓使用容認派よりも多い、と指摘している。また、婚姻という行動の中心となる20代、30代で選択的夫婦別姓容認派が過半数である、とも指摘している。「国民の意見が大きく分かれている」などということはない、としている[603]

日本政府が世論が分かれていることを法案提出に至らない理由としてあげたことに対して、国際人権規約B規約人権員会は、法に関する態度を正当化するために統計調査を語るるべきではなく、国家は規約に署名することによってそれを適用することになっている、何事にも統計調査が指示されるのならば、規約に署名する国はない、と批判している[16]

国連女性差別撤廃委員会は、本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき、としている[16]

百地章(日本会議理事)は、選択制夫婦別姓に賛成している人の大多数は消極的な賛成であると主張し、少数のために制度を改変するべきではない、と主張している[595]
宗教界の動きに関する議論 川橋範子(宗教学者・名古屋工業大学教授)は、神道界が右傾化するとともに、男女共同参画や夫婦別姓に対し反対運動を行っていることに関して、夫婦別姓に反対といったことは宗教界で言うべきようなことではない、と述べている[604]

井上順孝(宗教学者)は、神社本庁が選択的夫婦別姓に反対の立場であることについて、夫婦別姓は東アジアでは一般的で、日本が夫婦同姓を義務づけたのは明治期のことであり、神社本庁が夫婦の姓に関して、明治期に生まれた「創られた伝統」を日本にふさわしい伝統として享受している、と指摘している[605]

国際情勢 日本経済新聞は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約批准から30年経っても、まだ夫婦同姓を強制している日本の異様さは、国際的にも非難の対象となると主張している[606]

日本はこれまでに3回、女性差別撤廃委員会から民法750条の改正を勧告されているが、選択的夫婦別姓を求める2018年5月訴訟において原告は、日本は自由権規約と女性差別撤廃条約に批准しており、憲法98条2項によって、日本はこれらの条約を遵守する義務がある、と主張している[532]

出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)は日本において選択的夫婦別姓が認められていない状況は、歴史的、世界的に見れば極めて特殊であり、「ガラパゴス的」とも言える、と主張している[510]

国際連合女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、日本の夫婦別姓を認めない規定について、「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない。」としている[607]。その他、米国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書(2015年版)においても、日本の夫婦別姓を認めない民法規定が言及されている[608]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、政府が「世界中で夫婦同氏を義務付けている国は、日本以外に知らない」との答弁を行っている一方で、日本が批准している女子差別撤廃条約の条約機関から日本は3回、夫婦同氏を定めた法律の規定を改定すべきという勧告を受けているが、そのような日本の姿勢は、日本だけでなく国際的な活動を行っている個々の日本企業への信頼をも損なう、としている[518]

棚村政行(法学者・早稲田大学教授)は、「日本は先進国の中でも、アジアの近隣諸国と比べても、選択的夫婦別姓が認められておらず、遅れていることは明らか」としている[609]

黄浄愉(家族法学者・輔仁大学)は、「今日の国際的な立法趨勢として、婚姻の際に、同姓にするか別姓のままにするかは夫婦の選択に任せ、子の姓についても夫婦の協議によって定めることが採用されている。こうして姓は、次第に集団的呼称から個人的呼称になりつつある。」としている[610]

秦郁彦(現代史家)は、世界の姓名事情は多彩であり、「女性差別」とは無関係だ、と主張している[378]
立法府の動きに関する議論

榊原富士子らは、1996年に法制審議会が答申した民法改正案要綱が、立法府においてきわめて長期間にわたり放置されている状況は、異常である[16][611][592]、と主張する。

葛西大博(毎日新聞記者)は、最高裁判決は「選択的夫婦別姓制度について合理性がないとするものではなく、国会で論じられるべき」としており、それを怠るのは司法の軽視にもあたる[612]、と主張している。

宮内義彦オリックスシニア・チェアマン)は、かつて自民党内で提案された選択的夫婦別姓法案が党議拘束によって成立しなかったことについて、「『自分自身で自分の名前を決めよう』という提案に、党議拘束をかける必要はない」「政党内の結束も大事だが、課題の内容によっては、党派色を抜いて一人一人の良識で考え、答えを出すべきもの」として、批判している[613]

大串博志(政治家)は、男女同数をめざして女性の政治参画が進んでいけば、このような選択的夫婦別姓の問題も大きく進む、としている[614]

その他の議論編集

2015年最高裁判決についての論評編集

2011年訴訟の2015年最高裁判決に対しては様々な論評がある。

判決批判 判決支持

木村草太(憲法学者)は、民法750条には「氏の変更を強制されない自由の侵害」も「男女間の不平等」」も存在しないとし、合憲判決へのメディアの反発が強いとはしながらも、「原告の主張に対する法律論としては筋が通っており、やむをえない」と述べている[418]。ただし、男女間の不平等ではないとしながらも、「氏の変更を容認するカップル」と「氏の変更を容認しないカップル」間には不平等が存在するとし、選択制夫婦別姓を認めるか、事実婚にも法律婚と同等の権利を与えることによって解消できるとしている[418][615]。また、民法750条は、「別姓希望カップルやその子どもを法律婚から排除するだけ」とし、「家族の一体感にも子どもの利益にも、かえってマイナスの影響を与えてしまっている」としている[418]

三浦まり(政治学者)は、裁判官出身か弁護士出身かという前職のプロフィルが反映された判決であるとしている[616]

新見正則(医学者)は、裁判官の男女比率が男女ほぼ同数であれば違憲となった可能性を挙げ、個人番号があれば姓に関係なく個人の特定が可能であるため、「結婚したら全く新しい姓を名乗るようなシステム」でも良いのではないかと主張している[575]

下重暁子(作家)は、家族間の殺人等の犯罪が増加する中、「我が家は幸せだ」と言う人は「外にいい顔をしたいだけ」で、「個」の集団の家族を信じるなど幻想にすぎないとし、「先進国で夫婦同姓が残っているのは日本だけ」であり、合憲判決は「時代遅れで恥ずかしい」と主張している[617]

土堤内昭雄(日本フィランソロピー協会シニアフェロー)は、世界的には同性婚の広がりなどがみられるように結婚観が多様になり、家族のあり方として夫婦が同じ姓を名乗ることを、全ての夫婦に対して法律が一律に規定する国は少なく、多様な価値観に基づく議論を大いに期待する、としている。さらに、少子高齢化という人口構造の変化がシルバー民主主義をもたらし、社会制度づくりの意思決定の議論に歪を与えてはならない、とも述べる[618]

伊藤正志(毎日新聞論説委員)は、毎日新聞の論説で、合憲判決について「女性の理解を得られるのかは極めて疑問だ」とし、大抵は女性が改姓することで「屈辱感を抱いたり、不便を感じたりする人は少なくない。」ため、選択的夫婦別姓制度導入を進めるべきだと報じている[43]

東京新聞の社説では、「高裁で人格権の一部だと判断された姓を一方だけが変えなくてはならないのは差別的」と報じている[393]

愛媛新聞は、合憲判決について、「国際的にも時代遅れで、不当な女性差別との批判も強い」とし、家族の絆や「幸せの形」も人によって異なる中、「法が個人を生きづらくし、逆に差別や排除の理由になってしまっては本末転倒」であると報じている[619]

琉球新報は、社説で、国会に判断を委ねる判決であるとし「法の番人」としての責任を果たしていないとし、国会での法改正を急ぐべきと報じている[584]

泉徳治(元最高裁判事)は、国会で改正が進まないのはこの問題が少数の権利にかかわることで、政治家は常に多数を強く意識するから期待するのは難しく、少数者の人権を守ることができるのは裁判所しかないのに、「今回の判決は、裁判所が果たすべき役割を果たしておらず残念」と批判している[620]

山浦善樹(元最高裁判事)は、「家族をめぐる裁判は、裁判官の人生観や家族観に左右される。過去の価値観にとらわれないでほしい」「どんな結論が出ても、繰り返し訴えていくことが大事だ。いずれ、国際基準からみて、日本の状況を恥ずかしいと思う裁判官が多数になる」としている[621]

産経新聞は、選択的夫婦別姓導入について、「国会で論じられ、判断されるべきだ」とした判決は妥当と主張し、別姓を「希望しない」が8割を超えている世論を考慮すべき、と主張している[426]。多数の裁判官が「通称使用が広がることにより、不利益は緩和され得る」ために合憲と判断した、と主張している[171]。また、寺田長官は補足意見で、両親と子の姓が異なることについて、「嫡出子との結びつきを前提としつつ、夫婦関係をどうするのかに議論の幅を残す」と補足意見があることに関して、子の姓について、結婚後のどの時点で姓を選択するのか、一組の夫婦に複数の子供ができた場合に子供ごとに姓を選択するのか、きょうだいで統一とするのか、等の議論が存在すると報じている[171]

八木秀次日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、この裁判は史上初めて最高裁が家族を「社会の構成要素」「社会の自然かつ基礎的な集団単位」であると位置づけた判決であり、この文言は世界人権宣言第16条と国際人権規約A規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)第10条の内容を踏まえていることから、判決が家族共同体の意義を重視したもの、と主張した[596]

2016年旧姓通称使用訴訟判決に関する論評編集

2016年の女性教諭による旧姓通称使用訴訟の東京地裁判決に関しても様々な論評がある。

  • 日本経済新聞は、2016年10月16日の社説において、判決は社会の流れを理解していないとらえ方といわざるを得ない、として批判している。また2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決で「改姓不利益は通称使用で一定程度は緩和される」と判断したこととも食い違う、と批判している[622]
  • 毎日新聞は、2016年10月13日の社説において、旧姓使用が社会の多方面で認められ広がっている実情への理解が欠けた判決だ、と批判している。2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決で、「旧姓使用が社会的に広まることで、改姓することの不利益は一定程度緩和される」としたこととも整合しない、と批判している[623]
  • 二宮周平(法学者)は、この地裁判決は、2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決の前提だった通称使用を『社会的に受け入れられていない』と真っ向から否定しており、最高裁からすれば、選択的夫婦別姓を認めよと言われているようなもの」としている[624]
  • 被告側の理事は、「今回の裁判は、『個人のアイデンティティーvs.学校のアイデンティティー』という構図になってしまった。でも、別姓を認める法律があれば、こんな戦いをせずに済んだはず」としている[624]

夫婦創姓論・結合姓論編集

阪井裕一郎(福岡県立大学)は、選択的夫婦別姓制度への批判をする人の中に「男女平等」の観点から「創姓」や「複合姓(結合姓)」を提唱する論者がいる、と指摘している[570]

鎌田明彦は、同姓制度と同様に「家族の姓を定めて名称夫婦・家族の一体性」を「夫妻平等」に実現するなら、夫妻とも氏を変えるべきではないか、あるいは反対に、選択的夫婦別姓制度は「旧姓にこだわりすぎた制度である」、「そもそも選択をみとめるならば、夫婦いずれかの姓以外の選択肢(創姓など)もみとめるべきではないか」といった反対意見をあげ、それらを解決するためのものとして、婚姻時などに新たに姓を決める夫婦創姓や、夫婦の旧姓を結合して姓とする夫婦結合姓を含めた制度を、選択的夫婦別姓制度に代わるものとして提案している[625]

批評

鎌田は、夫婦の姓を創成する案について、現実感の乏しい机上の空論である、家族名称に執着するのは時代遅れだ、標準的な核家族以外のいろいろな家族形態に対応できないのではないか、規制緩和の時代だ、実現は困難だ、別姓も例外的に認めてもよいのではないかという反論があることを紹介している[625]岩田規久男も、選択的夫婦別姓論者が望んでもいない議論を起こす理由はない、と、これらの夫婦創姓論や結合姓論に対し反論している[551]

各国の状況編集

現在、夫婦別氏を認めず夫婦同氏を法で規定している国家は、日本のみである[16]。かつては、ドイツ、オーストリア、スイス、オランダ、ノルウェー、フィンランド、トルコ、タイ王国など夫婦同氏を法で規定していた国は日本以外にも多く存在していたが、そのいずれの国においても現在では別氏を選択できるよう法改正されている[16]。同様に、同氏あるいは複合姓のみの選択しかなかったフィリピンも、婚前氏をそのまま用いる別氏を選択できるよう法改正されている(以下参照)。

アジア編集

東アジア編集

東アジア地域においては、夫婦別姓を伝統としてきた国が多い。山田昌弘は、日本においても、中国や韓国と同じく夫婦別姓が伝統であり、これを明治時代に強制して同姓に直したというのが現状だとしている [566][注 35]

  日本
同氏制[629]。明治9年太政官指令では夫婦別氏が規定されていたが[16]1898年(明治31年)に施行された明治民法により「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」(民法750条)と変更された。以来、夫婦同氏が原則である。現民法でも、民法750条で、夫婦は同氏が原則とされており、婚姻を望む当事者のいずれか一方が氏を変えなければ法律婚は認められない[14]。なお、明治以前は、多様な氏姓制度が存在していた[16]
夫婦同氏を法で定めている国家は現在、日本のみである[16][20][21][22]。日本が1985年に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では選択的夫婦別氏の導入が要求されており、そのため国際連合の女子差別撤廃委員会より度重なる改善勧告を受けている[16][37]。そのような状況のもと、夫婦同氏と夫婦別氏を選択することが可能な選択的夫婦別姓制度の導入について、近年議論が活発になされている[14]
なお、日本においても、国際結婚の場合は、夫婦同氏・別氏を選択することが可能である[630]
  台湾
夫婦別姓あるいは複合姓(冠姓)より選択が可能。1985年民法においては、冠姓が義務づけられている(原則とされている)ものの、当事者が別段の取り決めをした場合はその取り決めに従う(別姓も可能)、とされていた[631][610]。その後1998年の改正で、原則として本姓をそのまま使用し、冠姓にすることもできる、と改められた。職場では以前から冠姓せず本姓を使用することが多かったとされる[632]。子の姓は、原則的に父系の姓が適用されていた(入夫の場合は逆)が、1985年の改正で、母に兄弟がない場合は母の姓にすることもできるようになった[632]。このとき、兄弟が別姓となることも可能となった[632]。しかしこの改正についても男女平等原則に反するとして、2008年の戸籍法改正で父の姓か母の姓か両親が子の姓を合意し、両方の署名を入れ役所に提出することとなった。合意に至らない場合は役所が抽選で決める、としている[633]。さらには、養子についても、本姓を維持できるようになった[610]。2010年改正では、成人による自由改姓が認められた[610]。2019年には、アジアで初めて同性婚が認められた[634]
  韓国
各自の氏を称する(夫婦別姓)[629]。子の姓に関しては、原則的に父親の姓としていたが、2005年改正により、子の姓が、父母が婚姻届出の時に協議した場合には母の姓に従うこともできるようになった[635][636]。なお、古代の律令制導入以来からあった、日本と同様の戸籍制度は、2008年に血統主義に立脚した正当な理由のない制度であるとして廃止されている[637]。また、2008年より、離婚後に子を母親が引き取った場合に、子の姓を母親の姓にすることが可能になった[638][639]。なお、「同姓同本不婚」の規定は、1997年憲法裁判所がこの制度の憲法不合致の決定をし、1999年に廃止された[640]
  北朝鮮
各自の姓を継続使用する慣行はあったが、現行法において婚氏に関する規定はない。「同姓同本不婚」の規定もない[35]
  モンゴル
結婚しても改姓をすることはなく、夫婦は別姓である[641]。なお、モンゴルの姓名は、姓+父称(父親の名)+名(本人の名)からなっている。姓は1925年に一度廃止されたが、1999年にふたたび用いるようになった[642]
  中国
夫婦別姓、複合姓(冠姓)、夫婦同姓より選択が可能。1950年の婚姻法において「自己の姓名を使用する権利」が認められ、夫婦双方が自己の姓名を用いることができる、とされた。これは相手方の家族の成員になった場合でも妨げられない。また夫婦自らの意志で夫婦同姓や複合姓(冠姓)を用いることもできる[643][564][644][645]。1980年改正で、子の姓は両親のいずれかから選択することになり、さらに2001年改正でより夫婦平等な文言となった[646]。なお、伝統的には子の姓には父の姓が用いられることが多い[646]

東南アジア編集

  タイ
現在は選択制。1913年の個人姓名法により国民全員が名字(姓)を持つことが義務化された。この時点では、妻は夫または自身の姓を用いることができるとされ、選択的夫婦別姓が認められていた。しかし、1941年に妻は夫の姓を用いる、と改正(12条)。これに対し2003年にタイの憲法裁判所は「夫の姓を名乗るとする条項は違憲である」との判決[647]を出し、2005年に同12条が改正された。現行の同12条では夫婦の姓は合意によりいずれの姓を選び同姓とすることも、またそれぞれ改姓せず別姓とすることも可能となった[648][649]。子の姓は父の姓あるいは母の姓より選択する[650]
  フィリピン
2010年以前は、結婚時に、妻は自分の姓を保持しつつ夫の姓をミドルネームとして加えるか、夫の姓を用いるか、夫のフルネームにMrs.をつけるか、より選択する、とされていた。しかし、2010年に、裁判所は、女性の権利を守る観点から、これらに加えて、改姓することなく自分の姓のみを用いてよい、との判断を下した[651]。現在では、改姓せず結婚すること(夫婦別姓)が可能である[652][653]
  マレーシア
婚姻時に姓が変更されることはない[654][655]
  シンガポール
別姓、同姓を選択可能。多くの場合婚姻前の姓をそのまま名乗るが、配偶者の姓に変更することも可能である[656]
  インドネシア
通常は夫婦は別姓。ただし通称として夫の姓を名乗ることも多い。男性側が改姓することも可能[657]
  ブルネイ
妻は夫とは別に自身の姓を用いてよい[658]
  ミャンマー
親から名前は継ぐことはなく、結婚しても配偶者の名前を名乗ることは稀である。名前の節は1つである場合もあれば、多数からなる場合もある[659][660][661]
  ベトナム
結婚時に名前が変わることはない。名前は2つから5つ程度の名前からなり、最初の名前がファミリーネーム、最後の名前がギブンネームである。両親の伝統や好みによって、ミドルネームはない場合もあれば、複数ある場合もある[662][663]
  カンボジア
婚姻で姓が変わることはない[664]。名前は「姓、名」の順[665][666]。姓としては、中国やベトナムと同じ姓も多い[667]
  ラオス
婚姻時、妻が夫の姓に改姓し同姓とする場合もあれば、改姓せず別姓とする場合もある[668][669]

南アジア編集

  インド
氏名を自由に変更することが可能で、結婚時の姓に関する厳密な法律的な規定は存在しない。地域・宗教によって様々な習慣がある[670][注 36]。2012年以降婚姻の登録が義務となったが、婚姻の登録時には、改姓する場合には新姓を届けるが、改姓しないことも可能である[671]ヒンズー教徒は夫婦同姓とするとされる[27]一方、シーク教徒は常に男性は「Singh」、女性は「Kaur」を氏として持ち、婚姻でその氏が変化することはないとされる[672]マハーラーシュトラ州では、婚姻時に婚前の姓を保持できることが2011年に明文化されている[673]。2017年にはナレンドラ・モディ首相が、女性が結婚後にパスポートを変更する必要はない、と述べている[674][注 37]
  パキスタン
結婚時に結婚前の姓をそのまま用いることも、夫の姓に変えることも可能。イスラム法では夫の姓に変えることを求めておらず、イスラム系住民は婚前の姓をそのまま用いることが多い[675]
  ブータン
氏は「家の名」ではなく個人それぞれに名付けられる。婚姻によって改姓することはない[676]
  バングラデシュ
婚姻時に改姓する女性もいればそうしない女性もいる[677]
  スリランカ
何も手続きを行わなければ、婚姻時に改姓することはなく夫婦は別姓にでき生来姓を保持できる。改姓したい場合は婚姻時より使いはじめ、証明などの必要が出た際に手続きを行えばよい[678][679]

中央アジア編集

  カザフスタン
婚姻時に、婚姻前の姓を保持する(別姓)か、共通の姓(同姓)か、複合姓に改姓することから選択することが可能である。すでに複合姓である場合にさらに追加することはできない。改姓した場合、離婚時には、婚姻時の姓を保持することも元の姓に戻すことも可能である[680]
  ウズベキスタン
自己の姓(別姓)、配偶者の姓より選択する[103]
  キルギス
婚姻時に、婚姻前の姓を保持する(別姓)か、共通の姓(同姓)か、複合姓に改姓することから選択することが可能である。すでに複合姓である場合にさらに追加することはできない。改姓した場合、離婚時に元の姓に戻すことも可能である[681]
  トルクメニスタン
婚姻時に、婚姻前の姓を保持する(別姓)か、共通の姓(同姓)かを選択することができる[682]
  タジキスタン
婚姻時に、婚姻前の姓を保持する(別姓)か、共通の姓(同姓)か、複合姓に改姓することから選択することが可能である[103]

南コーカサス編集

  アゼルバイジャン
結婚する者はそれまでの姓をそのまま用いる権利を持つ。どちらかの姓に統一することも、複合姓とすることも可能である[683]
  アルメニア
婚姻時、改姓しない(別姓)、どちらかの配偶者の姓に統一する(同姓)、複合姓を用いる、のいずれも可能である[684]
  ジョージア
婚姻時、改姓しない(別姓)、どちらかの配偶者の姓に統一する(同姓)、複合姓を用いる、のいずれも可能である[685]

中東・西アジア編集

中東や北アフリカのアラブ諸国においては、イスラム教徒の女性は伝統的には婚姻時に改姓しない[686]

  トルコ
同姓、別姓、複合姓からの選択制。2001年の法改正により女性の複合姓がまず認められ[687]、さらに2014年に、最高裁において婚前の姓のみを名乗ることを認めないことは憲法違反との判決が下され、婚前の姓をそのまま結婚後も用いることができるようになった[688][689][690]
  イスラエル
選択制。婚姻時あるいは出生時の姓をそのまま用いることも(別姓)、配偶者と同姓とすることも、ミドルネームを用いることもできる[691]
  イラン
通常、婚姻時に改姓することはないが、夫の姓を後ろに加える女性もいる[686]。1976年までは妻を含め家族の氏を決める権利が夫にあったが、現在では、家族のいずれの成員も自身の姓を自身で決めることができる[692][693]
  イラク
通常は婚姻時に改姓することはないが、西欧風に夫の姓に改姓する女性もいる[686]
  サウジアラビア
婚姻時に改姓することはない[694]。養子縁組であっても、改姓しない[6]
  シリア
イスラム教徒の女性は婚姻時に改姓することはない。改姓する女性もいる[695]

ヨーロッパ編集

西ヨーロッパ編集

  イギリス
伝統的に氏に関する法律の規定はなく、詐害の意図がない限り自己の氏を自由に変更でき、同氏も別氏も夫婦の氏を合わせた複合氏も自由に選択できる。伝統的には妻が夫の氏を称するのが通例[629][6]。子の氏はいかなる氏でも公序良俗に反しなければ自由につけることができる[696]
  アイルランド
選択制。自己の氏を称すること(夫婦別姓)も、配偶者の氏を称すること(夫婦同姓)も、結合氏を称することも、自己の氏をミドルネームとし配偶者の氏を称することも可能である[697]2015年からは同性婚も可能となった[698]。子の姓は、父親の姓、母親の姓、あるいはその両方のいずれかより選択する[699]
  フランス
法的には規定がない。近代化に伴い、人民管理が容易となる「氏名不変の原則」が唱えられるようになり(それまでは明治以前の日本と同様、随時、氏を変えることは禁止されていなかった)、婚姻によって姓が強制的に変わることはない。妻には夫の姓を通称として名乗る選択肢が与えられている[700][701]2013年より夫が妻の姓を通称として使用することもできるようになった[702][6][703]。2004年以前は子の姓は父親の姓としていたが、2005年の法改正によって、子の姓は父か母の姓、あるいは父母の姓をハイフンでつないだ複合姓を選ぶことができるようになった[704][696][705]。また同年より同性婚も可能となった[706]
  オランダ
選択制。夫も妻も、そのままの姓で結婚すること(夫婦別姓)も、配偶者の姓に変更すること(同姓)も、配偶者の姓の後に自己の姓を後置すること(複合姓)も可能である[707][注 38]。かつては、婚姻後妻は夫の姓に改姓する、とされていたが、氏名法が改正され選択制となった[708]。子の姓はどちらの姓でも構わないが、同じ両親の子の姓はいずれも同じとしなければならない[709]。2001年より同性婚も可能となった[707]
  ベルギー
婚姻によって、法的な姓が変更されることはない(夫婦別姓)[710][654]。子の姓に関しては、以前は父親の姓のみだったが、2008年より、母親の姓も選択できるようになった[711]。2003年より、同性婚も可能となった[712]
  ルクセンブルク
いかなる者も、婚姻によって法的な氏が出生時の氏から変更されることはない。ただし、配偶者の許諾があれば、配偶者の氏を(通称として)用いることができる。離婚後も元配偶者の許諾があれば、その氏を用い続けることができる。なお、1982年より、氏あるいは名の変更が可能となった(十分な変更理由が必要)。2014年より、同性婚も可能となった[713][714][715]。子の氏に関しては、かつては父の氏と定められていたが、2006年の法改正により父の氏、母の氏、複合氏(順序は問わない)より選ぶことが可能となった[716][717]
  ドイツ
かつては夫の出生氏での同氏が民法で規定されていたが、1976年に妻の出生氏を夫婦の婚氏として選択すること、ならびに複合氏が認められた。さらに1993年の民法改正で、夫婦の氏を定めない場合は別氏になるという形で選択的夫婦別氏となった[19][53]。子の氏に関しては、親権が父母それぞれにある場合には、どちらの氏とすることも可能であるが、子一人ごとに氏を変えることはできない。婚姻で氏を変更して後離婚・死別した場合には、旧氏に戻す選択肢の他、旧姓を婚氏に加える二重氏を選択することもできる[718][6]。ドイツ語協会(GfDS)の2016年の調査によると、婚姻時の氏の選択は、夫氏婚が約75%、別氏婚(夫婦双方とも改氏しない)約12%、複合氏が約8%、妻氏婚約6%だった[719]。そのほか、養子の氏に関しては、養親の氏、あるいは養子縁組前の氏と養親の氏の複合氏から選択することが可能である[19]。2017年からは、同性婚も可能となった[720]
  オーストリア
2013年までは、原則として夫または妻の氏(その決定がない場合は夫の氏)を称する(同氏)、あるいは自己の氏を後置することもできる(複合氏)[629]、とされていたが、2013年4月以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則として婚前の氏を保持する、と変更された[721][722]。夫の氏に変更、あるいは複合氏を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない[722]。また、2019年には同性婚が可能となった[723]
  スイス
2013年以前は、夫の氏が優先。正当な利益があれば、妻の氏を称することもできる(同氏)、あるいは自己の氏を前置することもできる(複合氏)[629]、とされていたが、2013年以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則として婚前の氏を保持する(別氏)、と変更された。配偶者の氏に変更、あるいは複合氏を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない[724]。別氏の場合、子の氏は婚姻時あるいは第一子の出生時に、父親の氏あるいは母親の氏のいずれかより選択する。第二子以降は第一子と同じ氏とする[725]

南ヨーロッパ編集

  イタリア
選択制。1975年まで、婚姻時に妻が夫の姓に改姓するという民法の規定が存在していたが、1961年の最高裁判決で「妻は婚姻で本来の姓を使用する権利を失うのではなく、夫の姓を使用する権利を得る」と解釈され夫婦別姓が可能となった[726]。さらに、1975年に民法が改正され、明示的にも同姓、別姓、結合姓より選択することが可能となった[727]。一方、子の姓に関しては法的な規定はなく、慣習法として父親の姓としていた。これに対し、母親の姓を子の姓として選択できるようにするべき、との判決が2014年に欧州人権裁判所において出され[728]、さらに2016年には国内の憲法裁判所においても子の姓として父親の姓しか選択できないのは違憲とされた[729][730]。現在では、子の姓として、従来どおり父親の姓をつける選択肢に加え、父親の姓に母親の姓を加えた複合姓をつける選択肢が加えられている。また、未婚の母親で、父親が認知していない場合には母親の姓のみを子の姓としてつけることができる。これらは出生時に決定する[731][732][733]。なお、イタリアは極めて離婚が少ない国として知られている[734]
  スペイン
個人の名は、一般的には「名、父方の祖父の姓、母方の祖父の姓」であるが、1999年に「名、母方の祖父の姓、父方の祖父の姓」でもよい、と法律が改正された。婚姻によって名前を変える必要はないが、女性はその他の選択肢として「de+夫の父方の姓」を後置する、「母方の祖父の姓」を「夫の父方の姓」に置き換える、「母方の祖父の姓」を「de+夫の父方の姓」に置き換える、などの選択が可能である[735]。2005年からは同性婚が可能となった[736]
  ポルトガル
婚姻の際には、自己の姓を用い続ける(夫婦別姓)、あるいは、配偶者の姓を自己の姓に前置、あるいは後置することを選択することが可能である。1977年の法改正で別姓を選択できるようになった[737]2011年の時点では、既婚女性の60%が婚前の姓をそのまま用いている[738][739]。また、2010年からは、同性同士の婚姻(同性婚)が認められるようになった[740][741]
  ギリシャ
夫婦別姓および複合姓から選択可能。1982年までは伝統的に妻が婚姻時に夫の姓に改姓していた[742]が、1983年の法改正で、婚姻時に婚前姓を変えないこと(夫婦別姓)が義務付けられた[743][744][742]。その後、2008年の法改正で、自身の姓に配偶者の姓をハイフンで結び付加する複合姓も選択可能となった[743][742]
  マルタ
選択制。夫婦別姓、夫婦同姓、結合姓から選択することが可能。ただし、結合姓を選択することは稀とされる[745]。2017年からは同性婚も可能となった[746]

北ヨーロッパ編集

  スウェーデン
選択制で、夫婦同氏もしくは別氏、自己の氏または配偶者の氏を中間氏とすることもできる(1983年氏名法)[629]。両親が別氏の場合、子の氏は、両親の複合氏となる[747]。2009年より同性婚も認められている[748]
  ノルウェー
選択制。婚姻時、妻が夫の氏に加え自己の氏を中間氏とするのが46%、夫の氏に変更するのは34%、自己の氏をそのまま用いるのは20%、と2016年に報告されている[749]。1923年以前は父称を用いており、婚姻時に改氏する伝統もなかったが、1923年の氏名法によって、婚姻時に妻が夫の氏に改氏する(夫婦同氏)と定められた。しかしその後、1965年に氏名法が改正され、現在のような制度となった[750]。2009年より同性婚も認められた[751]
  デンマーク
選択制。自己の氏を保持することも、配偶者の氏に変更することも、配偶者の氏をミドルネームとすることも可能。1981年までは、特段の書類による定めによらない限り夫婦は同氏とされていたが、1981年の法改正で婚姻前の氏を用いることを原則とし、届け出によって氏を変更する、とされた。氏は祖父母の氏や許諾を得た別人の氏を用いることも可能[752][753]。2012年には同性婚も可能になった[754]
  フィンランド
選択制。配偶者の氏に変える同氏、自己の氏を保持する別氏、複合氏(自己の氏が先、ハイフンでつなげる)からの選択が可能である[755][756]1930年の婚姻法では妻が夫の氏に改氏することが義務付けられていたが、1985年に改正された[755]。子の氏に関しては、親が同氏(複合氏で同氏の場合を含む)の場合はその氏、そうでない場合は、出生後に届け出た氏(父親・母親いずれかの氏)とする。ただし、複数の子がある場合はいずれの子も同じ氏とする[756]。2017年より同性婚も可能となった[757]
  アイスランド
特に請求がない限り、婚姻してもそれまでの氏を名乗る[758]。なお、アイスランドでは「家族の氏」という概念はなく、原則として、父の名前、母の名前、あるいはその双方それぞれに「の息子」の意を表す-sonあるいは「の娘」の意を表す-dóttirを付けたもの(父称)を氏として名乗る[759]。2010年より、同性婚も認められている[760]

バルト諸国編集

  リトアニア
選択制。非改姓(別姓)、どちらかの姓への統一(同姓)、複合姓、いずれも可能[761]
  ラトビア
選択制。非改姓(別姓)、どちらかの姓への統一(同姓)、複合姓、いずれも可能[762]
  エストニア
選択制。婚前姓を保持する(別姓)も、共通の姓として夫婦いずれかの姓に統一する(同姓)ことも、配偶者の姓を後置する(複合姓)とすることもできる[763]

東ヨーロッパ編集

  ロシア
選択制。1995年家族法典では同姓、別姓、結合姓が選択できる(第32条1項)[764][765]。名前は、名、父称、姓からなる[766]。子の姓は、両親の協議により父親の姓か母親の姓から選択する[765]。14歳以上ならば、姓も名も父称も自分の意思で変更可能である[441]
  ポーランド
選択制。婚姻後の姓はどちらかの姓に統一しても良いし(同姓)、変えなくても良い(別姓)し、婚姻前の自分の姓の後に配偶者の姓をつなげて複合姓としてもよい[767]。ただし複合姓にする場合、3つ以上の姓をつなげてはいけない[768](1964年)。
  チェコ
選択制。同姓、別姓、結合姓が選択できる[769]
  スロバキア
自己の姓(別姓)、配偶者の姓より選択する[103]
  ハンガリー
選択制。自己の姓(別姓)、配偶者の姓、複合姓(順序はいずれでもよい。ハイフンでつなぐ)、自らのフルネームを配偶者のフルネームにnéを付加したものに変更する(この場合は出生時の姓名はともに失われる)、配偶者のフルネームにnéを付加したものに自己のフルネームを加えたものを自己のフルネームとする(この場合は、フルネームは4つの名からなる)、自己の姓の前に配偶者の姓にnéを付加したものを追加する(自己の姓は中間姓となる)、などより選択することが可能である[770]。伝統的には、妻が夫のフルネームにnéを付加したフルネームに改名し、出生時の名前は失われていた。その後、1895年、1953年、1974年、2004年などの改正を経て、現在では、男女の公平性が高められ、選択肢の多い制度となった[770]。なお、ハンガリーでは、日本同様、姓が名の前に来る[770]
  ルーマニア
選択制。改姓せず別姓とすることも、いずれかの姓に統一し同姓とすることも可能である。子の姓は両親のいずれかの姓とする。両親の合意が得られない場合は裁判所が子の姓を決定する[771]
  ウクライナ
選択制。改姓せず別姓とすることも、いずれかの姓に統一し同姓とすることも、複合姓とすることも可能である[772][773]
  モルドバ
自己の姓(別姓)、配偶者の姓より選択する[103]
  ベラルーシ
選択制。改姓せず別姓とすることも、いずれかの姓に統一し同姓とすることも、複合姓とすることも可能である[774]

バルカン諸国編集

  ブルガリア
選択制。改姓せず別姓とすることも、いずれかの姓に統一し同姓とすることも、配偶者の姓を加えることも可能である[775]
  セルビア
婚姻時、改姓しないことも、配偶者の姓に改姓することも、複合姓とすることも可能[776][777]
  クロアチア
選択制。婚姻時、改姓しないことも、配偶者の姓に改姓することも、複合姓とすることも可能[778]
  北マケドニア
選択制。伝統的には女性は婚姻時に夫の姓の女性形に改姓していたが、近年では、夫の姓に改姓する女性や、改姓しない女性、複合姓を用いる女性もいる[686]
  コソボ
選択制。婚姻前の姓を保持する(別姓)、配偶者の姓への改姓(同姓)、複合姓より選択できる[779]

アメリカ編集

北アメリカ編集

  アメリカ合衆国
婚姻関係の法は州ごとに定められている。1970年代から選択的夫婦別姓が認められ、別姓の他にミドルネームなど概ね5つの選択肢が与えられている[780]。合衆国憲法上は子の姓に関してはそれを定める法はなく、どのような姓をつけてもよいとされており[781]、ケンタッキー州ではどのような姓を子につけてもよいとされている一方、州によっては可能な姓が定められている。ジョージア州においては子の姓は父母いずれかの姓、またはその複合姓に限られる。ルイジアナ州、テネシー州では、子の姓は原則として父親の姓とするが、両親の合意の上変更可能である。アリゾナ州、ワシントン州、マサチューセッツ州では、姓の長さの規定がある。テキサス州ではアクセントやウムラウトなどに制限がある。ニュージャージー州では公序良俗に反する姓は禁止されている[696][782]。一方、子に姓を付ける権利について、1970年代までは父親が持つとする州が多かったが、その後夫婦間で平等になるよう改正されてきた。子の姓について夫婦間で合意できない場合は、多くの州においては裁判所が決定するとされているが、フロリダ州、ニュージャージー州では両親の姓のアルファベット順による複合姓とすると定められている[783][784]。同性婚については、すべての州で2015年より認められている[785]
  カナダ
婚姻関係の法は州ごとに定められている。ケベック州では1981年以降婚姻による改姓が禁じられ、夫婦別姓が法で規定されている[786][787][788]。同州では、子の姓は、父の姓、母の姓、父母の姓の複合姓のいずれかより選択する[789]。オンタリオ州では、婚姻しても出生証明書の氏名は変わらないが、運転免許証等では配偶者の氏を用いることができる[790]。同州では、子の姓は、父の姓、母の姓、父母の姓の複合姓のいずれかより選択するが、子の姓について両親が同意に至らない場合は、両親の姓のアルファベット順の複合姓とする[791]。アルバータ州では、改姓せず別姓婚とすることも、配偶者の姓に改姓し同姓とすることも複合姓とすることも可能である[792]。ブリティッシュコロンビア州では、同姓、別姓、複合姓ともに可能である。その際、直前の姓、出生時の姓、配偶者の姓を使用可能である[793]。ニューブランズウィック州では、婚姻しても姓は変わらないが改姓の手続きをすれば配偶者の姓に改姓することはできる[794]。同性婚は2005年に全州で認められている[795]

中央アメリカ編集

  メキシコ
一般的に婚姻時に女性は改姓しない[796]。各個人は二つの姓を持ち、伝統的には、父親の第一姓と母親の第一姓が子の第一姓と第二姓となるが、2017年には両親双方の第二姓を子の姓とすることが初めて認められた[797]
  ジャマイカ
法の規定はなく、改姓せずに結婚でき、また複合姓も一般的である[798][799][800]。なお、慣習では夫婦は同姓とされる[27]。婚姻時に改姓した女性はパスポート申請時に婚姻証明書を同時に提出する必要があるが、改姓しなかった女性はそのような必要はない[801]

南アメリカ編集

  ブラジル
婚姻の際、改氏せず別氏とすることも、配偶者の氏に改氏し同氏とすることも、配偶者の氏を付加し複合氏とすることも可能。2002年の法改正で別氏が可能となった[802]。さらに、2013年より、同性婚も可能となった[803][804]
  コロンビア
婚姻時に女性が改氏する必要はないが、父方の氏を夫の父方の氏に置き換えるか、de+夫の父方の氏を後置することができる[805]。2016年からは同性婚も可能となった[806]
  ペルー
婚姻時に女性は改氏しない、あるいは、「de+夫の氏」を後置する[807]
  チリ
通常、婚姻によって改氏することはない。社交上「de+夫の氏」を追加した複合氏を用いることもあるが、一般的ではなくなりつつある[808]
  アルゼンチン
婚姻の際、妻は改氏せず自己の氏をそのまま名乗る、あるいはde+夫の氏を追加した複合氏とすることができる[809]。2010年からは同性婚も可能となった[810]

オセアニア編集

  ニュージーランド
別姓、結合姓、同姓いずれも選択可能である。結合姓の場合、つなげる順序はどちらが先でもよく、また、ハイフンで結んでも、間にスペースを入れて結んでもよい[811]。伝統的には女性が男性の姓を名乗ることが多いとされる[812]。子の姓は公序良俗に反しなければどのような姓でも自由につけることができる[696]。また18歳以上であれば、ほぼ自由に改姓することも可能である[813]。2013年には同性婚も可能となった[814]
  オーストラリア
別姓、結合姓、同姓いずれも選択可能である。氏名の変更も比較的容易に可能である[815][816][817]。また、子の姓を定める法的な規則は存在しておらず、公序良俗に反する姓でなければいかなる姓を子につけてもよい。したがって、父の姓、母の姓、複合姓が可能であるだけでなく、新たに創姓することも可能である。また複数の子が異なる姓であっても構わない[818]。子の姓について夫婦が同意に至らなかった場合は、ビクトリア州法では、登記官あるいは裁判所が決定できる、としている[819]。2017年には同性婚も可能となった[820]

アフリカ編集

北アフリカ編集

北アフリカや中東のアラブ諸国においては、イスラム教徒の女性は伝統的には婚姻時に改姓しない[686]

  エジプト
多くの女性は婚姻時に改姓しないが、改姓する女性もいる[821]

東アフリカ編集

  エチオピア
婚姻してもほとんどの女性は改姓しない[822]
  エリトリア
婚姻してもほとんどの女性は改姓しない[822]
  ソマリア
ソマリ人は伝統的には結婚しても改姓しない。一方、西欧社会的な家庭では、妻は夫の姓を用いるとされる[686]
  ケニア
結婚時に改姓することもしないことも可能[823]
  ウガンダ
結婚時に改姓することもしないことも可能[824]
  ルワンダ
姓が同じことは親類関係を意味せず、姓は家族間で異なるのが一般的(別姓)。慣習では、子には家族のいずれとも異なる姓をつける。家族がすべて同じ姓を持つことは極めてまれである[791]

西アフリカ編集

  ナイジェリア
伝統的には結婚時に女性が夫の姓に改姓するが、法的にはどのような姓に改姓することも(しないことも)可能で、改姓しない夫婦別姓も、複合姓も近年増えている[825][826]
  ガーナ
女性は婚姻時に改姓することもしないことも可能[827]

中部アフリカ編集

  カメルーン
選択制。婚前の姓をそのまま改姓せず用いること(別姓)も、夫の姓に変更すること(同姓)も可能[828]
  ガボン
婚姻しても女性は改姓しないが、夫の姓を用いる、あるいは加えることもできる[829]

南部アフリカ編集

  南アフリカ共和国
選択制。婚前の姓をそのまま改姓せず用いることも、夫の姓に変更することも可能[830]。1997年からは複合姓も可能となった[831]。子の姓に関しては、父親姓、母親姓、それらの複合姓のいずれも可能[791]。2006年からは同性婚も可能となった[832]
  ナミビア
同姓、別姓ともに可能。子の姓に関しては、両親のいずれかの姓とする。2013年現在、子の姓についてより選択肢を広げる法改正について議論がなされている[791]
  ボツワナ
伝統的には女性が夫の姓に改姓するが、法的にはそのような拘束はない。婚姻時に女性は、改姓せず婚前姓をそのまま用いる(夫婦別姓)、妻が夫の姓へ改姓する、複合姓に改姓する、夫の氏名に「Mrs.」を追加したものを用いる、のうちより選択する[833]
  ジンバブエ
結婚時の姓に関する法はなく、婚前の姓を改姓せずそのまま用いることも、夫の姓に変更することも可能[834]
  マラウイ
婚姻時に改姓する法的な必要はない。とくに北部においては伝統的に改姓しない[835]

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 「姓」は「氏」、「名字」、「苗字」ともよばれる。歴史的にはこれらは意味の異なる語であるが、現代においては同義語として扱われている[1]。(#変遷を参照)
  2. ^ 日本法では「」ではなく「」が用いられているため、法的な議論では「夫婦別氏」が使われることが多い[3]。なお、このほか、現行制度の下での非法律婚(事実婚)のことを「夫婦別姓」と呼ぶことがある[4][5]が、本項目では混乱を避けるため、現行制度の下での非法律婚のことは「事実婚」と表記するものとする。
  3. ^ 選択的夫婦別姓あるいは選択的夫婦別氏について、「夫婦別姓選択制」[7]あるいは「夫婦別氏選択制」[8]と呼ぶ場合もある。また、夫婦同姓と夫婦別姓のどちらも選択できることから、「選択的夫婦同姓」[9]、「夫婦同姓別姓選択制」[10]と呼ぶべき、とする意見もある。いずれも同義である。法務省ホームページでは、「選択的夫婦別氏」(せんたくてきふうふべつうじ)と記載している[11]
  4. ^ 国際結婚の場合、原則としては夫婦は別氏であるが、戸籍法上の届け出をすれば、戸籍上は配偶者と同氏とすることが可能である。ただし、その場合、戸籍法上は改氏され夫婦同姓となるが、民法上は改氏されないとみなされ、民法上は夫婦別氏の状態となっている。戸籍法上の届け出をしない場合は民法上も戸籍法上も夫婦別氏となる[12][13]。なお、戸籍法上と民法上の氏が異なる場合、民法上の氏は戸籍実務においての概念上のみに用いられ、日常生活上の法的な氏、すなわちいわゆる本名としては戸籍法上の氏が用いられる。
  5. ^ 第196回国会衆議院法務委員会においては、法務省民事局長が「法務省が把握している限りでは、現在、婚姻後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならない夫婦同氏制を採用している国は、我が国以外にはございません。」と答弁している[23]
  6. ^ 同条約16条の以下の規定が民法改正に関わるとされる[58]
    • 16条1: 締結国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
      • (g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)
  7. ^ この答申においては、親子関係や相続関係を一覧的に把握できる現行制度の利点に鑑み、戸籍編製基準を現行戸籍法が採る夫婦及び親子の単位のままとすることとされた。これについて原優は、この答申に沿って選択的夫婦別氏制度が導入されたとして、現行の戸籍制度の基本枠組には変更はない、としている[72][73]
  8. ^ 戸籍実務においては、「戸籍上の氏」と「民法上の氏」は異なるものとして区別して運用されている。戸籍上の氏と民法上の氏が異なるケースとして、外国人との国際結婚時に改氏する場合、離婚時に婚氏を引き続き用いる場合(婚氏続称)、養子離縁時に縁氏を引き続き称する場合(縁氏続称)がある[12][13]。戸籍法上と民法上の氏が異なる場合、民法上の氏は戸籍実務においての概念上のみに用いられ、日常生活上の法的な氏、すなわち本名としては戸籍法上の氏が用いられる。
  9. ^ 大脇雅子は、法案が提出されなかった原因として、法案の提出には20名の賛同者が必要で、自社さ政権では「3、2、1の法則」があり自民党側でうち10名の提案者が必要だったが揃わず、また自民党のバックの宗教団体の反対署名も多くあったことを挙げている[96]
  10. ^ 芦東山の妻が夫の幽閉赦免願書に「飯塚妱【女へんに召】」(いいづかちょう)と生家の苗字での署名がある例や、松尾家に嫁いだ妻多勢(たせ)が平田国学に入門した際の誓詞帳に「松尾佐治右衛門妻 竹村多勢子」と実家の姓名で署名する例や、夫婦別苗字の墓標がある例がみられる[122]。また、妻の死後実家の墓地に「帰葬」する習慣が北陸から東北にかけて広く分布する[123]
  11. ^ 森謙二によれば、太政官法制局は、妻が夫の氏を称することを不可とした理由について「妻は夫の身分に従うとしても、姓氏と身分は異なる」「皇后藤原氏であるのに皇后を王氏とするのはおかしい」「歴史の沿革を無視」の3点を指摘している[126]。なお、増本敏子らは、地方によっては、民間普通の慣例によれば婦は夫の氏を称しその生家の氏を称する者は極めて僅かであった[127]、としている。
  12. ^ 明治民法で夫婦同氏を定めた理由としては、明治民法では家制度を定め、氏を「家」の氏と考えており、妻を夫の家に従属させるものとした[71]、庶民は夫の氏を称することが多かった[71]、当時のドイツをモデルにした[132]、などが挙げられる。
  13. ^ 婚氏続称制度導入の中心となったのは当時参議院議員だった佐々木静子。吉田信一によれば、佐々木らの本来の目標は選択的夫婦別姓制度導入であった、とされる[13]
  14. ^ 一方で、これらの男女共同参画や選択的夫婦別姓制度を求める運動が、日本会議神道政治連盟など家族観における保守層による、それらの運動への反対を掲げる「バックラッシュ」とも呼ばれる運動も呼び起こしたことを山口智美らは指摘している[142][143][144]
  15. ^ 選択的夫婦別姓の実現に関して要綱試案では、それを答申する理由として以下の3点を挙げた[25]
    • 国民の価値観・人生観が多様化してきたことを背景に、国民のかなりの層に選択的夫婦別氏制の採用を求める声があり、画一的に同氏とするのではなく、個人の人生観・価値観の違いを許容する制度に改めるべきだと考えられる。
    • 法理論の面において、個人の尊厳に対する自覚が高まりを見せている状況を考慮すれば、個人の氏に対する人格利益を法律上保護すべき時期が到来している。
    • 世界の諸国で、夫婦別氏を許容する制度が採用されていることからも、夫婦別氏が夫婦・親子関係の本質なり理念に反するものではないことは明らか。
  16. ^ 訴えているのは青野慶久の他、神奈川県の女性、事実婚の男女の計4名[175]
  17. ^ これらのうち東京家裁と同立川支部においては、2019年3月28日、申し立ては却下され、申立人は即時抗告を検討している、と報道されている[197]
  18. ^ 「人が個人として尊重される基礎となる法的保護の対象たる名称として、その個人の人格の象徴となりうる可能性を有する」
  19. ^ 1996月の「家族の法制に関する世論調査」では、法改正に反対が39.8%、選択的夫婦別姓の法制化に賛成が32.5%、通称の法制化に賛成が22.5%
  20. ^ 2001月の「家族の法制に関する世論調査」では、法改正に反対が29.9%、選択的夫婦別姓の法制化に賛成が42.1%、通称の法制化に賛成が23.0%
  21. ^ 2006月の「家族の法制に関する世論調査」では、法改正にに反対が35.0%、選択的夫婦別姓の法制化に賛成が36.6%、通称の法制化に賛成が25.1%
  22. ^ 2012年12月の「家族の法制に関する世論調査」では、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と答えた者の割合が36.4%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」と答えた者の割合が24.0%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えた者の割合が35.5%だった[268]。なお、回答数を年齢ごとの人口分布に重み付けし直し回答結果を人口構成に補正すると、選択的夫婦別姓制度導入への賛成は36.6%、法改正反対は34.6%と逆転することが、参議院法務委員会で報告されている[269][270]
  23. ^ 2017年11~12月に全国の男女5000人を対象にした。回収率は59.0%[264]
  24. ^ 同時期の大手メディアの調査による数字と乖離があることについて、総理府調査の設問の問い方が「他人がそうしたいなら認めてよい」という意識ではなく、「自分の問題」として受け止めてしまうようなものとなっていた、と朝日新聞や高橋菊江は指摘している[103][276]
  25. ^ この調査は、出産・子育ての現状や家族関係の実態を把握するために、既婚女性を対象に5年ごとに行われており、1993年の調査では同じ設問への賛成は35.4%、1998年は39.0%、2003年は46.0%、2008年は42.8%、2013年は41.5%だった[278]
  26. ^ 2014年に男女共同参画担当大臣であった森まさこは、自民党の野党時代の2010年の公約における選択的夫婦別姓制度への反対は、「民主党が当時提出した法案への反対」であった、と説明した[332][333]
  27. ^ 「日本女性の会」の参加者・関係者としては、西川京子高市早苗長谷川三千子市田ひろみ[456]小野田町枝桂由美[457]らがいる。
  28. ^ 過去に、日本会議の構成団体でもある「キリストの幕屋」が「新しい歴史教科書をつくる会」に信者を大量動員したことも知られている[471][472]。また、同団体の内紛によって分裂してできた団体に、「日本教育再生機構」がある[473]。日本教育再生機構は育鵬社による教科書を広める活動を行っている[474]。日本教育再生機構も、複数の顧問が日本会議の幹部でもあり、組織面・運動面で関係が深い、と報道されている[475]
  29. ^ 木村治美は、日本会議の関連団体である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」代表発起人も務めている[476]
  30. ^ 高橋史朗は「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長も務めている[478]
  31. ^ 「親学」に対しては、非科学的であり、障害者への差別・誤解を生むとする批判が報じられている[479]
  32. ^ ただし、その後、稲田朋美は2018年に「これまで親子別姓となる選択的夫婦別姓には反対してきた」ものの「通称使用で2つも姓を用いるのは混乱を招く」「高齢者同士の結婚も多い」として、賛成の意を表明している[522]
  33. ^ 厚生労働省の2014年の調査で96.1%[28]
  34. ^ なお、その後稲田朋美は2018年に選択的夫婦別姓に賛成する意見を表明している[522]
  35. ^ 東アジア地域において夫婦別姓を原則とした国が多い理由については諸説ある。青山道夫らは儒教的な文化が強いためと主張している[626]大村敦志らは、血縁意識が強いため、と主張している[627][628]
  36. ^ なお、平成13年時点で、男女共同参画会議基本問題専門調査会ではインドは「同氏制」とする報告があった[629]
  37. ^ なお、同報道では、そのような変更の必要は以前よりなかったとしている[674]
  38. ^ 2001年時点では、オランダでは、夫の氏は不変、妻は夫の姓(同姓)または自己の姓(別姓)を称する。妻は自己の姓を後置することもできる、と報告されている[629]

出典編集

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関連項目編集

外部リンク編集