放射線・環状線
放射線・環状線(ほうしゃせん・かんじょうせん)とは、それぞれ放射状に延びる路線、環状になっている路線である。ここでは道路・鉄道について記載する。中心都市から放射線が延び、その都市の内部又は外縁部に環状線が形成され、相互に接続する状態がよく見られる。
概要
編集都市に放射方向以外の道路が存在しなかった場合、異なる放射方向間を移動する自動車が、全て都心を通ることになり、都心の道路が渋滞する。これを解消するため、都心を目的地としない自動車が、都心を迂回する道路が必要となる[注釈 1]。
放射方向が2本のみの場合、すなわち1本の道路が都心を貫通している場合には、この迂回路はバイパス道路となる。多数の放射方向のある都市の場合、これらを効率良く連絡する道路として環状道路が整備される。
大規模な都市には複数の環状道路が整備されることがある。これは、環状道路自体の混雑が激しくなった場合、都市の郊外に向かう自動車、他の都市を目指す自動車など、さらに細かく交通を分離するためである。
鉄道の環状線の機能はおおむね次のように分類できる。
- 都市に複数のターミナル駅がある場合、それらを相互に結ぶもの。JRの山手線や大阪環状線がその例である。大きな都市の場合、ターミナル駅を一箇所に集約することは、用地や費用の面で難しい。そこで、複数のターミナル駅を連絡する路線が必要となる。通常、旅客はターミナル駅で放射線の列車と環状線の列車を乗り換える。ただし列車自体が複数の放射線同士を直通するものもある。なお、ターミナル駅相互の連絡には、環状線以外に都心を貫通する地下鉄が用いられることもある。
- ターミナル駅よりも郊外側で放射線と交わり、複数の放射線をターミナル駅を経由することなく結ぶもの。武蔵野線に代表される。道路の環状線と同様、ターミナル駅周辺の混雑を解消するために使用される。
- 都市の郊外で放射線の沿線にない地域を放射線と結ぶもの。横浜線や東武野田線などが該当する。通常このような路線は放射線の支線であるとみなされることが多い。しかし、路線が長距離にわたり多数の放射線と交わる、放射線と運営する鉄道事業者が異なる等の理由で特定の放射線の支線とはみなし難い場合、「環状線」と呼ばれることがある。横浜線のように放射線と環状線を兼ねている路線も少なくない。
なお、完全な環状になっていなくても、複数の放射線を相互連絡する路線であれば環状線と呼ばれることがある。また、環状運転を行っている路線(系統)、または複数の路線を経由して周回することが出来る路線(区間)のことを指して「環状線」と呼ぶこともあるが、本記事でいう「環状線」とは必ずしも一致しない。
道路
編集日本
編集路線名称 | 全線 供用 |
道路 規格 |
1周 | 最高速度 | |
---|---|---|---|---|---|
方向 | 距離 | ||||
仙台都市圏環状自動車専用道路 | 2010年 | 第1種 | 両回り | 58.9 km | 70 - 100 km/h |
首都高速都心環状線 | 1967年 | 第2種 | 両回り | 14.8 km | 40 - 50 km/h |
首都高速中央環状線+湾岸線 | 2015年 | 両回り | 56.7 km | 60 - 80 km/h | |
名古屋高速都心環状線 | 1995年 | 時計回り | 10.3 km | 50 - 60 km/h | |
名古屋第二環状自動車道+伊勢湾岸自動車道 | 2021年 | 第1種、第2種 | 両回り | 66.2 km | 60 - 100 km/h |
阪神高速1号環状線 | 1967年 | 第2種 | 時計回り | 10.3 km | 50 - 60 km/h |
福岡高速環状線 | 2012年 | 両回り | 35 km | 60 - 80 km/h |
東京圏
編集高速道路
編集高速道路には9本の放射方向の道路と、それらを連絡する3本の環状道路を整備中である[1]。これを3環状9放射という。 また、首都高速道路はそれ自体が放射線と環状線からなるネットワークを形成している。 これらの詳細については、それぞれの項目を参照のこと。
- 環状線
- 放射線
- ☆:3環状9放射
一般道路
編集- 一般国道の環状線
- 東京都市計画道路の放射線
- 放射第1号線(六本木通り、東京都道415号高輪麻布線、桜田通り、第二京浜)
- 放射第2号線(東京都道418号北品川四谷線、中原街道)
- 放射第3号線(目黒通り)
- 放射第4号線(青山通り、玉川通り)
- 放射第5号線(新宿通り、甲州街道、東八道路)
- 放射第6号線(靖国通り、青梅街道ほか)
- 放射第7号線(新目白通り、目白通り)
- 放射第8号線(春日通り、川越街道)
- 放射第9号線(白山通り、中山道)
- 放射第10号線(本郷通り、北本通り)
- 放射第11号線(尾久橋通り)
- 放射第12号線(昭和通り、日光街道)
- 放射第13号線(水戸街道)
- 放射第14号線(蔵前橋通り)
- 放射第15号線(靖国通り、京葉道路)
- 放射第16号線(永代通り)
- 放射第16号線 (永代通り)
- 放射第17号線 (産業道路)
- 放射第18号線 (海岸通り)
- 放射第19号線 (第一京浜)
- 放射第20号線 (日比谷通り)
- 放射第21号線 (桜田通り)
- 放射第22号線 (六本木通り)
- 放射第23号線 (井の頭通り)
- 放射第24号線(青梅街道)
- 放射第34号線(晴海通り)
- 放射第35号線(新大宮バイパスほか)
- 放射第36号線(要町通り)
- 東京都市計画道路の環状線
- 横浜国際港都建設計画道路(都市計画道路)の環状線
京阪神
編集高速道路
編集京阪神の高速道路には、4本の環状道路を整備中である。これを関西4環状ネットワークという。放射方向の道路が環状道路の一部にもなっており、それらと連絡する[2][3]。関西大環状道路においては、京都都市圏からの視点では京奈和自動車道が放射方向の道路、北側を構成する新名神高速道路が南側の環状線に相当する[4]。
また、阪神高速道路は1号環状線を中心とする放射線からなるネットワークを形成している(当該項目を参照のこと)。
- 環状線
- 阪神高速1号環状線
- 大阪都市再生環状道路(阪神高速6号大和川線、阪神高速2号淀川左岸線、阪神高速4号湾岸線、近畿自動車道)☆
- 大阪湾環状道路(大阪湾岸道路、神戸淡路鳴門自動車道、紀淡連絡道路)☆
- 関西中央環状道路(近畿自動車道、中国自動車道、山陽自動車道、神戸淡路鳴門自動車道、紀淡連絡道路)☆
- 関西大環状道路(京奈和自動車道・新名神高速道路・神戸淡路鳴門自動車道・紀淡連絡道路)☆
- ☆:関西4環状ネットワーク
一般道路
編集大阪府は1960年より、十大放射三環状線計画をもとに、整備を進めていた。1987年策定の大阪府道路整備長期計画では主要幹線道路を「軸」ととらえ、大阪都心部を中心とする7放射3環状軸の整備を行っている(当該項目を参照のこと)。京都を中心とする環状線には京滋バイパス・京都第二外環状道路がある。
中京圏
編集高速道路
編集中京圏の高速道路は東海環状自動車道が整備中である。名古屋第二環状自動車道と総称して名古屋圏環状道路[5]と呼ぶ。伊勢湾岸自動車道は新東名高速道路、新名神高速道路の一部をなすとともに環状線と接続され、合わせて中京圏における環状道路を形成している。
また、名古屋高速道路は都心環状線を中心とする放射線からなるネットワークを形成している(当該項目を参照のこと)。
- 環状線
- 名古屋高速都心環状線
- 名古屋第二環状自動車道☆、伊勢湾岸自動車道
- 東海環状自動車道☆、伊勢湾岸自動車道
- ☆:名古屋圏環状道路
一般道路
編集- 放射線
- 国道1号(東海道)
- 国道19号(春日井バイパス)
- 国道41号(名濃バイパス)
- 国道22号(名岐バイパス)
- 国道23号(名四国道)
- 国道153号(豊田西バイパス)
- 国道247号(西知多産業道路)
- 愛知県道50号名古屋碧南線、国道366号(師崎街道)
- 愛知県道60号名古屋長久手線、愛知県道6号力石名古屋線(グリーンロード)
- 愛知県道15号名古屋多治見線(竜泉寺街道、愛岐道路)
- 愛知県道29号弥富名古屋線
- 愛知県道55号名古屋半田線(半田街道)
- 愛知県道56号名古屋岡崎線(岡崎街道)
- 愛知県道58号名古屋豊田線(飯田街道)
- 愛知県道61号名古屋瀬戸線(瀬戸街道)
- 愛知県道63号名古屋江南線(名草線)
- 愛知県道68号名古屋津島線(名古屋津島バイパス)
- 愛知県道70号名古屋十四山線
- 愛知県道200号名古屋甚目寺線、愛知県道79号甚目寺佐織線
北九州・福岡圏
編集高速道路
編集- 環状線
- 放射線
一般道路
編集- 環状線
- 放射線
- 福岡圏
- 北九州圏
その他の都市圏
編集- 札幌都市圏[6](2環状5放射)
- 旭川都市圏[6](2環状8放射)
- 環状線
- 北海道道90号旭川環状線(環状1号線・旭川内環状道路[7])(一般道路)
- 北海道道37号鷹栖東神楽線(旭川外環状道路[7]、旭川十勝道路として整備中)(一般道路)
- 放射線
- 国道12号(一般道路)
- 国道39号(一般道路)
- 国道40号(一般道路)
- 国道237号(一般道路)
- 北海道道72号旭川幌加内線(一般道路)
- 北海道道140号愛別当麻旭川線(旭山動物園通り)(一般道路)
- 北海道道294号東川東神楽旭川線(一般道路)
- 北海道道1160号旭川旭岳温泉線(一般道路)
- 環状線
- 函館都市圏[8](4環状6放射)
- 環状線
- 函館江差自動車道・函館新外環状道路(一般国道自動車専用道路)
- 北海道道100号函館上磯線(外環状線)(一般道路)
- 北海道道83号函館南茅部線・北海道道571号五稜郭公園線(一般道路)
- 放射線
- 国道5号(一般道路)
- 国道227号(一般道路)
- 国道228号(一般道路)
- 国道278号(一般道路)
- 北海道道347号赤川函館線(一般道路)
- 北海道道1132号函館臨空工業団地線(一般道路)
- 環状線
- 釧路都市圏
- 環状線
- 釧路新道(国道38号バイパス)(一般道路)
- 釧路外環状道路(一般国道自動車専用道路)
- 環状線
- 八戸都市圏
- 環状線(三環状線)
- 八戸市道白銀沼館環状線(市道環状線)(一般道路)
- 青森県道29号八戸環状線(県道環状線)(一般道路)
- 八戸久慈自動車道および八戸自動車道(国道環状線)(一般国道自動車専用道路および高速自動車国道)
- 環状線(三環状線)
- 仙台都市圏
- 郡山都市圏
- 宇都宮都市圏
- 環状線
- 宇都宮環状道路 (一般道路)
- 環状線
- 高崎都市圏
- 環状線
- 高崎市道高崎環状線 (一般道路)
- 環状線
- 甲府都市圏
- 環状線
- 新山梨環状道路 (一般道路・高速自動車国道)
- 環状線
- 新潟都市圏
- 環状線
- 新潟中央環状線(一般道路)
- 環状線
- 金沢都市圏
- 環状線
- 金沢外環状道路(一般道路)
- 環状線
- 長野都市圏
- 環状線
- 長野環状道路(一般道路)
- 環状線
- 岐阜都市圏
- 環状線
- 岐阜県道77号岐阜環状線(一般道路)
- 環状線
- 大垣都市圏
- 環状線
- 岐阜県道50号大垣環状線(一般道路)
- 環状線
- 静岡都市圏
- 環状線
- 静岡県道354号静岡環状線(一般道路)
- 環状線
- 浜松都市圏
- 環状線
- 静岡県道65号浜松環状線(一般道路)
- 環状線
- 松山都市圏
- 徳島都市圏
- 環状線
- 徳島環状道路(一般道路)
- 環状線
- 佐賀都市圏
- 環状線
- 佐賀県道333号佐賀環状東線(環状東通り)・国道208号線(環状西通り・環状南通り)・国道34号線(北部バイパス) (一般道路)
- 環状線
- 熊本都市圏
- 環状線
- 熊本環状道路(一般道路)
- 環状線
- 宮崎都市圏
- 環状線
- 宮崎内環状道路(宮崎県道11号宮崎島之内線・宮崎県道17号南俣宮崎線・宮崎県道333号下北方古墳線・宮崎県道341号宮崎港宮崎停車場線・市道)(一般道路)
- 宮崎環状道路(住吉道路・宮崎西環状線・宮崎南バイパス)(一般道路)
- 宮崎東環状道路(一ツ葉道路・広瀬バイパス・春田バイパス)(一般道路)
- 放射線
- 環状線
日本国外
編集パリ、ウィーンなどヨーロッパの大都市の環状道路の歴史は19世紀に遡る。当時の再開発に伴い、既に無用の長物と化していた城郭都市の市壁、城壁を撤去し、跡地に環状道路が造られた[9][10][11]。
アジアの環状道路
編集ヨーロッパの環状道路
編集- リングシュトラーセ( オーストリア・ウィーン)
- ブルヴァール・デ・マレショー( フランス・パリ)、ペリフェリックも参照
- ロカード( フランス・ボルドー)
- グランデ・ラッコルド・アヌラーレ( イタリア・ローマ)
- アウトバーン 10( ドイツ・ベルリン)
- 環状道路A10( オランダ・アムステルダム)
- モーターウェイ25号線、ロンドン内環状道路( イギリス・ロンドン)
- モスクワ環状道路、 モスクワ大環状道路、 サンクトペテルブルク環状道路( ロシア・モスクワ & サンクトペテルブルク)
アメリカの環状道路
編集鉄道
編集ここで挙げた路線は主要なもののみである。小規模な路線や、放射線・環状線としての機能が明確でない路線は記載していない。
日本
編集日本では、ターミナル間を結ぶ環状線としては山手線や大阪環状線が有名である。反面、ターミナルではない近郊を結ぶ旅客列車については、ターミナル駅へ向かう列車とターミナル駅を経由しない列車を別々に設定することは非効率であるから、このような環状線を利用する列車は「はまかいじ」、「むさしの号」やおおさか東線の直通快速などわずかである。しかし貨物列車の場合は、貨物駅が郊外に移転しつつあることもあり、このような環状線を経由する列車が多く運転される。武蔵野線や城東貨物線(おおさか東線)がその例である。また、放射線のない地域と放射線を結ぶ環状線としては、上述の貨物線を旅客化したものなどがある。
首都圏
編集放射線
編集環状線
編集近畿圏
編集放射線
編集京都都市圏からの視点では、JR西日本の東海道本線(JR京都線・琵琶湖線)・山陰本線(嵯峨野線)・湖西線・奈良線・草津線や、近鉄京都線などが放射状の路線にあたる[12]。神戸都市圏からの視点では、JR西日本の和田岬線・加古川線・播但線・赤穂線・姫新線などが放射状の路線にあたる。
環状線
編集中京圏
編集放射線
編集- 東海旅客鉄道(JR東海)
- 名古屋鉄道
- 近畿日本鉄道
- 名古屋臨海高速鉄道
- 名古屋ガイドウェイバス
環状線
編集日本国外
編集アジア
編集幹線が台湾のほぼ海岸線に沿って一周している(環島 (台湾))。時計回りを順行、反時計回りを逆行として運行している。
- 軽鉄(香港)705線、706線
- 広州地下鉄11号線(建設中)
- ハルビン地下鉄3号線(全線開業後に環状線化)
- 大田都市鉄道2号線(計画中)
- 光州都市鉄道2号線(計画中)
- MRT環状線(一部開業)
ヨーロッパの環状線
編集パリ
編集市境界(内側からの順)
- プティト・サンチュール
- パリ市を取り囲む環状鉄道の廃線。現在も多くの部分が線路のまま放置されている。
- グランド・サンチュール
- パリ郊外の街を環状で結んだ鉄道。旅客用としては一部が既存路線の延長として営業を続け、その他の路線も貨物用としては機能している。
- LGV東連絡線
- パリの中心部を経由しないで、LGV南東線とLGV北線を連絡する。
ロンドン
編集グラスゴー
ベルリン
編集モスクワ
編集ナポリ
編集アメリカ
編集シカゴ
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 国土交通省関東地方整備局. “3環状マップ(2020年3月現在)” (PDF). 2020年6月9日閲覧。
- ^ 国土交通省. “近畿地方整備局 高規格幹線道路網図”. 2020年6月7日閲覧。
- ^ 国土交通省. “高速道路ネットワークの整備状況について”. 2020年6月7日閲覧。
- ^ 国土交通省近畿整備局京都国道事務所. “広域道路ネットワークの形成”. 2018年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月24日閲覧。
- ^ 国土交通省中部地方整備局道路部
- ^ a b “平成26年度北海道渋滞対策協議会の開催”. 北海道渋滞対策協議会. 2019年2月3日閲覧。
- ^ a b “一般国道12号旭川新道再評価原案準備書説明資料”. 北海道開発局. p. 8. 2019年2月3日閲覧。
- ^ “国土交通省 函館圏将来像の見直し”. 国土交通省. 2019年2月3日閲覧。
- ^ “city_wall”. www2.open.ac.uk. オープン大学. 2023年9月7日閲覧。
- ^ “From fortification to promenade” (英語). Die Welt der Habsburger. 2023年9月7日閲覧。
- ^ ntatschl (2014年12月26日). “Geschichte der Wiener Ringstraße: Von der Stadtmauer zur Mehrspurstraße”. vienna.at. 2023年9月7日閲覧。
- ^ “令和2年度国の施策・予算に関する緊急提案・要望”. 京都市. 2021年8月13日閲覧。