観光圏
観光圏(かんこうけん)は日本の一つの都道府県または複数の都道府県にまたがった地域を観光のためにまとめたもので、日本を観光立国とする実現に向けての整備をし、観光旅客の来訪および長期の滞在を促進するために日本の国土交通省の外局である観光庁に認定された地域。ビジット・ジャパン・キャンペーンにも呼応している。
概要
編集従来の観光地と呼ばれる狭い地域だけが取り組んだ観光振興では目指す目的の達成に限界があるとされ、このことから広域の圏と呼ぶその地域の創意工夫を生かした主体的な取組を総合的かつ一体的に推進するため観光圏と呼ぶものを設定している。国または政府によって基本方針を策定し、その地域の関係者との協議を行い地方自治体である市町村や都道府県による観光圏の整備計画の作成とそれらの整備事業の実施に必要な事を関係する観光などの事業者とともに行い、その圏の発展を促すことを目指すもの。
これは「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律(平成20年5月23日法律第39号)[1]」(略称:観光圏整備法[2])に基づくものであり、政府の立場からは国土交通省が音頭を取っている[3]。観光圏の整備計画とその実施を目指す地域は所管する大臣に申請し認定を受ける。整備実施計画の認定を受けると観光圏として特例が適用され、また場合により交付金も受けられる。認定の期間は原則2年間、最大で5年間[4]。
支援内容の例
編集観光圏整備実施計画が認定されると、事業に対して以下のような支援がある。
- 観光旅客の来訪・滞在の促進に効果や成果の見込まれる事業に係る補助金の交付(補助率上限40%)
- 着地型旅行商品の販売に係る旅行業法の特例
- 周遊割引券の導入に係る運送関係法令の手続緩和
- 宿泊施設に係る設備投資に対する財政投融資など
観光圏整備実施計画の認定
編集観光圏整備法とその関連省令・基本方針は2008年(平成20年)7月23日に施行・公表され、同年より観光圏整備実施計画の認定が開始された。以後毎年認定が行われ、2012年までに全国49地域が認定された。しかし地域間で整備実施計画の推進状況に差が生じていることから基本方針の見直しが行われ、2012年12月27日に改正、初年度に認定された整備実施計画の期間が5年間の満了を迎える2013年(平成25年)の3月1日に施行された[5]。旧来の基本方針のもとで認定を受けた観光圏は、認定期間の満了までに新しい基本方針に基づき整備実施計画を定めて再申請を行えば「新観光圏」に移行することができ、申請を行わなければ期間満了とともに認定は解消される[6]。
2015年現在、新たな基本方針のもとで整備実施計画の認定を受けている観光圏は13地域で、うち12地域が旧来の観光圏から移行してきた地域である(残る1地域は2013年以降新規に認定された地域)。加えて旧来の基本方針のもとで認定を受け、認定期間の満了を迎えていない観光圏が2地域ある。
観光圏の一覧
編集- 観光圏整備実施計画が認定されたそれぞれの観光圏について、圏域名、コンセプト(またはキャッチコピー)、圏域を構成する市町村を記す。
2013年度認定
編集- 認定期間は特記事項がなければ2017年度末までの5年間。
2014年度認定
編集- 認定期間は2018年度末までの5年間。
- ニセコ観光圏
- 浜名湖観光圏
- 海の京都観光圏
- 豊の国千年ロマン観光圏
2015年度認定
編集- 認定期間は2019年度末までの5年間。
- 水のカムイ観光圏
- トキめき佐渡・にいがた観光圏
- 香川せとうちアート観光圏
2018年度認定
編集- 認定期間は2022年度末までの5年間。
- 富良野・美瑛観光圏
- コンセプト - 富良野・美瑛田園休暇 ~世界で最も豊かで美しい四季彩の大地へ~
- 対象市町村 - 北海道:富良野市、美瑛町、上富良野町、中富良野町、南富良野町、占冠村
- 雪国観光圏
- 対象市町村 - 新潟県:魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、群馬県:みなかみ町、長野県:栄村
- 八ヶ岳観光圏
- 対象市町村 - 山梨県:北杜市、長野県:富士見町、原村
- にし阿波~剣山・吉野川観光圏
- コンセプト - 「千年のかくれんぼ」 ~分け入るごとに、時は巡り~
- 対象市町村 - 徳島県:美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町
- 「海風の国」佐世保・小値賀観光圏
- コンセプト - 暮らしを育む海舞台 -浦々の四季で迎える西海物語-
- 対象市町村 - 長崎県:佐世保市、小値賀町
- 阿蘇くじゅう観光圏
- コンセプト - “阿蘇カルデラ” ~命きらめく草原の王冠~
- 対象市町村 - 熊本県:阿蘇市、南小国町、小国町、産山村、高森町、西原村、南阿蘇村、山都町、大分県:竹田市、宮崎県:高千穂町
旧基本方針のもとで認定された観光圏の一覧
編集- 観光圏整備実施計画が認定されたそれぞれの観光圏について、圏域名、コンセプト(またはキャッチコピー)、圏域を構成する市町村を記す。
- 認定期間が継続中の吉野大峯・高野観光圏と信越観光圏以外は新観光圏に移行、または期間満了につき認定を解消済み。
2008年度認定
編集- 認定期間は特記事項がなければ2012年度末までの5年間。
- 富良野・美瑛広域観光圏(→富良野・美瑛観光圏として2013年度再認定)
- コンセプト - ちょっと暮らすように旅をする ~ふらのびえい田園休暇街道
- 対象市町村 - 北海道:富良野市、美瑛町、上富良野町、中富良野町、南富良野町、占冠村
- 伊達な広域観光圏
- 会津・米沢地域観光圏
- やさしさと自然の温もりふくしま観光圏[註 2]
- 水戸ひたち観光圏
- 南房総地域観光圏
- 富士山・富士五湖観光圏
- 雪国観光圏(→2013年度再認定)
- コンセプト - こころ、真っ白
- 対象市町村 - 新潟県:魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、群馬県:みなかみ町、長野県:栄村
- 伊勢志摩地域観光圏
- 京都府丹後観光圏(→対象市町村を増やし、海の京都観光圏として2014年度再認定)
- コンセプト - ゆるり ぐるり ほっこり 丹後
- 対象市町村 - 京都府:舞鶴市、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町
- 特記事項 - 認定期間は2012年度末までだったが、基本方針改正に伴う特例として2013年度末まで1年間延長[6]
- 淡路島観光圏
- 山陰文化観光圏[註 3]
- 広島・宮島・岩国地域観光圏
- にし阿波観光圏(→にし阿波~剣山・吉野川観光圏として2013年度再認定)
- コンセプト - 歴史や伝説に彩られた日本の原風景の中で過ごす心豊かな時間の創造
- 対象市町村 - 徳島県:美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町
- 阿蘇くじゅう観光圏(→2013年度再認定)
- コンセプト - 風と歩く、光に逢う、彩に酔う 阿蘇くじゅう時遊空間
- 対象市町村[註 5] - 熊本県:阿蘇市、南小国町、小国町、産山村、高森町、南阿蘇村、西原村、山都町、大分県:竹田市、宮崎県:高千穂町
- 新東九州観光圏
2009年度認定
編集- 認定期間は特記事項がなければ2013年度末までの5年間。
- さっぽろ広域観光圏
- 知床観光圏
- 新たな青森の旅・十和田湖広域観光圏
- 日本海きらきら羽越観光圏
- 日光観光圏
- 富山湾・黒部峡谷・越中にいかわ観光圏
- 能登半島観光圏
- 福井坂井奥越広域観光圏[註 6]
- 浜名湖観光圏(→2014年度再認定)
- コンセプト - 未知なる香りに誘われて、ちょっぴり感動の旅 ~ぐるっと浜名湖ツーリズム~
- 対象市町村 - 静岡県:浜松市、湖西市
- びわ湖・近江路観光圏
- 聖地熊野を核とした癒しと蘇りの観光圏
- 四万十・足摺エリア(幡多地域)観光圏
- 平戸・佐世保・西海ロングスティ観光圏(→対象市町村を変更し、「海風の国」佐世保・小値賀観光圏として2013年度再認定)
- 雲仙天草観光圏
2010年度認定
編集- 認定期間は特記事項がなけれ2014年度末までの5年間。
- はこだて観光圏
- 釧路湿原・阿寒・摩周観光圏(→水のカムイ観光圏として2015年度再認定)
- コンセプト - アジアの宝を見に来ませんか
- 対象市町村 - 北海道:釧路市、弟子屈町
- めでためでた♪ 花のやまがた観光圏
- 箱根・湯河原・熱海・あしがら観光圏
- 八ヶ岳観光圏(→2013年度再認定)
- コンセプト - 豊かな自然と歴史文化、芸術に彩られた上質な日常を、暮らすように旅する滞在型観光地
- 対象市町村 - 山梨県:北杜市、長野県:富士見町、原村
- 特記事項 - 認定期間は2014年度末までの5年間であったが、2013年度に新観光圏に移行したため実質3年間
- トキめき佐渡・にいがた観光圏(→2015年度再認定)
- コンセプト - さあ船出しよう!この港はトキめきの旅の始まり
- 対象市町村 - 新潟県:新潟市、佐渡市
- 越中・飛騨観光圏
- 立山黒部アルペンルート広域観光圏
- 伊豆観光圏
- 知多半島観光圏
- 東紀州地域観光圏
- 瀬戸内しまなみ海道地域観光圏
- 香川せとうちアート観光圏(→2015年度再認定)
- コンセプト - 海をわたりアートの聖地へ こころの旅が今はじまる
- 対象市町村 - 香川県:高松市、丸亀市、坂出市、善通寺市、観音寺市、さぬき市、東かがわ市、三豊市、土庄町、小豆島町、三木町、直島町、宇多津町、綾川町、琴平町、多度津町、まんのう町
- 玄界灘観光圏
- 豊の国千年ロマン観光圏(→2014年度再認定)
- コンセプト - 別府・中津・宇佐・国東半島千年の歴史を体感する旅
- 対象市町村 - 大分県:別府市、中津市、豊後高田市、杵築市、宇佐市、国東市、姫島村、日出町
- 特記事項 - 認定期間は2014年度末までの5年間であったが、2014年度に新観光圏に移行したため実質4年間
2011年度認定
編集- 認定期間は北海道登別洞爺広域観光圏と盛岡・八幡平広域観光圏が2014年度末まで、吉野大峯・高野観光圏が2015年度末まで。
- 北海道登別洞爺広域観光圏
- 盛岡・八幡平広域観光圏
- 吉野大峯・高野観光圏
2012年度認定
編集- 認定期間は2016年度末までの5年間。
注釈
編集脚注
編集- ^ 観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律 - e-Gov法令検索
- ^ 観光圏の整備について - 観光庁、2015年5月16日閲覧。
- ^ 観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律案について国土交通省
- ^ 平成20年度観光圏整備事業に係る補助金交付の公募開始について - 国土交通省、2015年5月16日閲覧。
- ^ 観光圏整備基本方針を変更しました - 観光庁、2015年5月16日閲覧。
- ^ a b c d e “観光圏整備法改正、新観光圏に6地域が移行”. 観光経済新聞. (2013年4月20日) 2015年5月16日閲覧。
- ^ “伊達な広域観光圏整備計画” (pdf). 伊達な広域観光推進協議会. p. 17. 2015年5月28日閲覧。
- ^ “観光圏整備法”. 観光庁. 2009年7月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月23日閲覧。
- ^ “山陰文化観光圏の概要” (pdf). 島根県. 2015年5月28日閲覧。
- ^ “阿蘇くじゅう観光圏整備計画” (pdf). 阿蘇くじゅう地域デザイン会議. p. 1. 2015年5月28日閲覧。
- ^ “組合の概要”. 福井坂井地区広域市町村圏事務組合. 2015年5月28日閲覧。
- ^ “はこだて観光圏、国への申請見送り”. 函館新聞. (2013年4月2日) 2015年5月18日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- 観光圏の整備について - 観光庁
- 旧基本方針の下で認定された49の観光圏の概要図(上記ページの2012年11月1日時点でのアーカイブより)